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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1322667
審判番号 不服2016-6819  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-09 
確定日 2016-12-08 
事件の表示 特願2015-502774「触感呈示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 4日国際公開、WO2014/132629〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2014年(平成26年)2月25日(優先権主張2013年(平成25年)2月26日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成27年8月31日付けで拒絶理由が通知され、同年11月9日付けで手続補正がなされたが、平成28年1月29日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、同年5月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年11月9日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの
「パネルと、
前記パネルを振動させることにより触感を呈示する触感呈示部と、
筐体と、
前記パネル背面と前記筐体との間に取り付けられ、前記筐体外部から前記筐体内部への塵又は水の侵入を抑制するための略U字形状のシリコンゴムと、
を備えた触感呈示装置。」
にあるものと認める。


第3 引用発明

(1)原査定の拒絶の理由において引用された国際公開第2012/137443号(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。


「[0009]本発明によれば、外観を構成するパネルを備え、当該パネルを振動させる電子機器につき、パネルの振動を阻害しにくくし、且つ防塵性、防水性を向上させることができる。」(下線は、注目箇所に当審が付した。以下、同様。)


「[0013]図1に示すように、本実施の形態に係る電子機器1は、外観上、上部筐体10aと、下部筐体10bと、タッチパネル20と、を備えている。
[0014]上部筐体10aおよび下部筐体10bは、両者が一体に組み合わさることにより、筐体10を構成する。この上部筐体10aは、両面テープまたは接着剤などを用いて、下部筐体10bに接着する。これら上部筐体10aと下部筐体10bとの間は、これらが一体に組み合わされた状態において、ある程度密閉される構造にしても良い。上部筐体10aおよび下部筐体10bは、例えば樹脂製のケースなどとして、ある程度の衝撃に耐えうる素材により構成するのが好適である。なお、上部筐体10aを下部筐体10bと一体化させた構成にできる場合、上部筐体10aは、下部筐体10bと別部材として設ける必要はない。
[0015]なお、上部筐体10aは、例えばベゼル等の各種の部材とすることができるが、本明細書においては「上部筐体」と総称する。上部筐体10aをベゼルとする場合、当該上部筐体10aは、例えば金属製、プラスチック製、ABS等の樹脂製などとすることができ、ある程度の強度を有する素材で構成するのが好適である。
[0016]タッチパネル20は、通常、後述する表示部80の前面に配置して、表示部80に表示したオブジェクトに対する操作者の指やスタイラスペン等(以下、単に「接触物」と総称する)による接触を、対応するタッチパネル20のタッチ面において検出する。したがって、本実施の形態において、「タッチパネル」とは、例えばLCD等とすることができる表示部80の前面に配置する、即ち当該表示部80とは別に設けられる部材を想定して説明する。また、タッチパネル20は、タッチ面に対する接触物の接触の位置を検出し、当該検出した接触の位置を制御部(図示せず)に通知する。」


「[0019]図2は、図1に示した電子機器1において、上部筐体10aを下部筐体10bと分離させた状態、すなわち筐体を分解した状態にしてから、さらにタッチパネル20に係る周辺要素を取り外した状態を示す斜視図である。
[0020]図2に示すように、上部筐体10aは、枠状の部材とし、前面(上面)に窓(開口部)が形成されるようにする。この窓により、電子機器1を組み立てた状態において、操作者は後述の表示部80の表示を外部から視認することができ、さらに操作者がタッチパネル20に接触することができる。なお、下部筐体10b内側の底部には、後述するように、例えばLCDなどの表示部やLCDホルダ、また各種の基板などの種々の部品を設置することができるが、図2においては、そのような部品の図示は省略してある。
[0021]図2から分かるように、下部筐体10bと上部筐体10aとを組み合わせた状態においては、タッチパネル20は、図に示す各種の部材に支持されながら、下部筐体10bと上部筐体10aとの間に配置される。これら各種の部材について、以下説明する。
[0022]上部筐体10aとタッチパネル20との間には、図2に示すように、細長状の弾性部材70が配置される。図2において、弾性部材70は、タッチパネル20の表面(前面)において、タッチパネル20の縁辺部分のうち2つの長辺に沿って配置されている。ここで、タッチパネル20の長辺とは、タッチパネル20において図2に示すY軸方向に平行な方向の辺を意味する。
[0023]タッチパネル20の前面側に配置される細長状の弾性部材70は、例えばスポンジ等の伸縮性の材料、またはウレタンフォームなどの弾性および伸縮性を有する柔軟な材料とするのが好適である。また、この弾性部材70は、上部筐体10aおよびタッチパネル20に対して、例えば両面テープまたは接着剤などにより接着するのが好適である。このように、本実施の形態においては、タッチパネル20の表面(前面)において、対向する2つの縁辺部分と上部筐体10aとの間に、それぞれ弾性部材70を介在させる。
[0024]また、図2から分かるように、下部筐体10bの内部には、支柱30および柔軟性シール部材40が配置される。タッチパネル20は、これらの支柱30および柔軟性シール部材40によって支持される。なお、本発明の弾性部材には、弾性部材70および柔軟性シール材料40のいずれも含まれるものとする。
[0025]タッチパネル20を支持する支柱30は、下部筐体10bの内部の四隅にそれぞれ配置される。この支柱30は、例えばシリコンゴムなどの弾性材料製として、例えばJIS-A硬度50?60度程度とする。このように、弾性材料性の支柱30を用いることにより、タッチパネル20を振動させる際に、当該振動の減衰を低減するようにする。
[0026]また、タッチパネル20を支持する柔軟性シール部材40は、タッチパネル20の裏面(背面)において、タッチパネル20の縁辺部分のうち2つの短辺に沿って配置される。ここで、タッチパネル20の短辺とは、タッチパネル20において図2に示すX軸方向に平行な方向の辺を意味する。すなわち、タッチパネル20の対向する2つの短辺は、対向する2つの長辺と直角を成す。この柔軟性シール部材40は、例えば支柱30よりも硬度の低い、即ち柔らかいシリコンゴムまたは防水ゲルなどを用いるのが好適である。いずれの場合も、柔軟性シール部材40は、伸縮性に富み、圧縮した状態においては復元力が作用する材料を用いるようにする。また、柔軟性シール部材40は、例えば発泡性材料のように気泡を含む材料などとすることもできるが、少なくともダストや塵などを通過させることのない材料、つまり防塵に好適な材料を用いるようにする。
[0027]図2に示す柔軟性シール部材40は、両側の支柱30の間に挟み込まれる前の状態を表している。このように、柔軟性シール部材40の長手方向の長さは、支柱30の間に挟み込まれる前の状態においては、支柱30同士の間の寸法よりも若干大きめにする。そして、柔軟性シール部材40を支柱30同士の間に挿入する際には、柔軟性シール部材40が横方向に若干圧縮された状態で、各支柱30に挟み込まれるようにする。さらに、柔軟性シール部材40の高さも、タッチパネル20を取り付ける前の状態においては、支柱30の高さよりも若干大きめにする。そして、タッチパネル20が各支柱30に取り付けられる際には、柔軟性シール部材40が縦方向に若干圧縮された状態で、タッチパネル20と下部筐体10bの凸部12bとの間に挟み込まれるようにする。このように、本実施の形態においては、タッチパネル20の裏面(背面)において、対向する2つの縁辺部分と下部筐体10bとの間に、それぞれ柔軟性シール部材40を圧入させる。
[0028]なお、図2に示すように、下部筐体10bの内部には、支柱30および柔軟性シール部材40を配置するための凸部12bが形成されている。この凸部12bの高さは、支柱30および柔軟性シール部材40の寸法に応じて、タッチパネル20が適切な高さの位置に保たれるように設計する。さらに、例えば支柱30の下側(すなわち支柱30と下部筐体10bの凸部12bとの間)に所定の高さのスペーサを挿入すれば、さらにタッチパネル20の高さを微調整することができる。また、柔軟性シール部材40は、タッチパネル20の裏面または下部筐体10b(の凸部12b)のうち少なくとも一方と、例えば両面テープまたは接着剤などにより接着するのが望ましい。」


「[0029]図3は、図2に示したタッチパネル20および当該タッチパネル20の周辺要素をさらに説明する図である。上述したように、タッチパネル20の表面(前面)側において、細長の弾性部材70が、タッチパネル20の縁辺部分のうち対抗する2つ長辺に沿って配置される。なお、図3に示すように、本実施の形態において、タッチパネル20は矩形状のものとするのが好適である。
[0030]図3に示すように、タッチパネル20の裏面には、その上下の縁辺(図の奥側および手前側の辺)付近に、振動部50が取り付けられる。振動部50は、タッチパネル20の裏面に例えば両面テープまたは接着剤などにより接着するのが好適である。この振動部50は、例えば圧電素子で構成し、タッチパネル20を湾曲させることにより振動させる。
[0031]図3に示した実施の形態においては、振動部50をタッチパネル20の裏面から貼り付けるようにしたが、本発明において、振動部50はタッチパネル20に振動を伝達させるものである。したがって、振動部50は、圧電素子などをタッチパネル20または当該タッチパネル20を保持するパネルホルダ(図示せず)などの任意の位置に接着するなどして固定し、タッチパネル20を振動させるものとすることもできる。しかしながら、タッチパネル20を良好に振動させることができるように、振動部50は、タッチパネル20の裏面に貼り付けられた圧電素子とするのが好適である。
[0032]この振動部50は、所定の振動パターンによる振動を発生させることにより、タッチパネル20のタッチ面に接触している接触物に対して触感を呈示する。本実施の形態において、振動部50は、例えば図示しない制御部から供給される駆動信号に基づいて振動を発生する。」


「[0035]図4に示すように、本実施の形態において、上部筐体10aとタッチパネル20との間には、弾性部材70を介在させてある。この弾性部材70は、防塵に適した材料であり、上部筐体10aおよびタッチパネル20と接着されている。したがって、この弾性部材70によって、タッチパネル20の長辺側において、下部筐体10bの内部すなわちタッチパネル20の背面側に、ダストや埃が侵入することは阻止される。
[0036]また、図4に示すように、本実施の形態において、タッチパネル20と下部筐体10b(の凸部12b)との間には、支柱30および柔軟性シール部材40を介在させてある。この柔軟性シール部材40は、支柱30同士の間、およびタッチパネル20の裏面と下部筐体10b(の凸部12b)との間に圧縮された状態で圧入されている。したがって、タッチパネル20の表面側に弾性部材70が設けられていない縁辺側(短辺側)においては、この柔軟性シール部材40によって、下部筐体10bの内部すなわちタッチパネル20の背面側に、ダストや埃が侵入することは阻止される。
[0037]一方、図4に示すように、タッチパネル20に直接接触しているのは、弾性部材70、弾性材料性の支柱30、および柔軟性シール部材40である。したがって、タッチパネル20が振動していない状態においては、弾性材料性の支柱30および圧縮された状態の柔軟性シール部材40によって、タッチパネル20は安定的に支持される。しかしながら、振動部50がタッチパネル20を振動させる際に、弾性部材70、弾性材料性の支柱30、および柔軟性シール部材40のいずれも、当該振動を大きく減衰させることはないため、振動の減衰を低減させることができる。」


「[0041]図5に示すように、電子機器1を切断する位置によっては、タッチパネル20の裏面に振動部50が接着されている。なお、図5においては、下部筐体10bの内部に、LCD等の表示部80、および各種の基板90を示してある。これらの表示部80および基板90は種々の部材を例示したものであり、例えば表示部80を、当該表示部を支持する表示部ホルダにしたり、または基板90を他の支持部材にするなど、各種の部材とすることができる。本実施の形態においては、一般的なタッチパネルを備えた装置の場合と同様に、図5に示すように、タッチパネル20の背面側(すなわち振動部50が配置された面の側)に表示部80を配置するのが好適である。」


「[0048]このように、本実施の形態によれば、タッチパネルを湾曲振動させる電子機器において、振動の減衰を低減させつつ防塵対策を施すことができる。また、本実施の形態によれば、柔軟性シール部材40および弾性部材70に用いる素材によっては、ある程度の防水効果も期待できる。」


「[0051]また、上述した上部筐体10aおよび下部筐体10b、柔軟性シール部材40および弾性部材70などの部材は、本発明による効果が得られる限りにおいて、種々の形状とすることができる。例えば、柔軟性シール部材40および弾性部材70は、適当な防塵が図られるのであれば、例えば中空構造にするなど各種の構成とすることができる。
[0052]また、上述した実施の形態において、支柱30は必須の構成要素ではなく、柔軟性シール部材40がある程度の形状を保つことによりタッチパネル20の高さが保たれるのであれば、本発明において支柱30を用いない構成とすることもできる。」

以上の記載によれば、以下のことがいえる。

a
上記段落[0013]、[0014]、[0020]、[0021]の記載によれば、引用文献1には、
「上面に開口部が形成された上部筐体10aと、下部筐体10bと、タッチパネルとを備えた電子機器であって、
上部筐体10aと下部筐体10bとは、一体に組み合わされ、筐体10を構成し、
タッチパネル20は、組み合わされた状態で、下部筐体10bと上部筐体10aとの間に配置され、操作者は、上部筐体10aの開口部により、タッチパネル20に接触できる、
電子機器。」が記載されている。

b
上記段落[0022]、[0024]-[0026]、[0052]の記載によれば、支柱30を用いない構成とすることもできるから、引用文献1には、
上部筐体10aとタッチパネル20との間には、タッチパネル20の前面の長辺に沿って弾性部材70が配置され、タッチパネル20の背面の短辺に沿って、柔軟性シール部材40が配置され、柔軟性シール部材40によって、タッチパネル20は支持されることが記載されている。

c
上記段落[0027]、[0028]の記載によれば、引用文献1には、
柔軟性シール部材40には、シリコンゴムまたは防水ゲルなどが用いられ、
下部筐体10bには、凸部12bが形成され、柔軟性シール部材40は、縦方向にタッチパネル20と下部筐体10bの凸部12bとの間に若干圧縮された状態で、挟み込まれるように配置され、柔軟性シール部材40は、タッチパネル20の裏面または下部筐体10b(の凸部12b)のうち少なくとも一方と接着されることが記載されている。

d
上記段落[0030]、[0032]の記載によれば、引用文献1には、
タッチパネル20の裏面には、振動部50が取り付けられ、タッチパネル20を振動させることにより、タッチパネル20のタッチ面に接触している接触物に対して触感を提示することが記載されている。

e
上記段落[0036]、[0048]、[0051]の記載によれば、引用文献1には、
柔軟性シール部材40により、下部筐体10bの内部すなわちタッチパネル20の背面側に、ダストや埃が侵入することが阻止され、柔軟性シール部材40の素材によっては、ある程度の防水効果が期待され、柔軟性シール部材40は、種々の形状とすることができ、適当な防塵が図られるのであれば、例えば中空構造にするなど各種の構成とすることができることが記載されている。

f
上記段落[0041]の記載によれば、下部筐体内部には、表示部80が設けられる。

以上によれば、引用文献1には、
「上面に開口部が形成された上部筐体10aと、下部筐体10bと、タッチパネル20とを備えた電子機器であって、
上部筐体10aと下部筐体10bとは、一体に組み合わされ、筐体10を構成し、
下部筐体内部には、表示部80が設けられ、
タッチパネル20は、組み合わされた状態で、下部筐体10bと上部筐体10aとの間に配置され、操作者は、上部筐体10aの開口部により、タッチパネル20に接触でき、
上部筐体10aとタッチパネル20との間には、タッチパネル20の前面の長辺に沿って弾性部材70が配置され、タッチパネル20の背面の短辺に沿って、柔軟性シール部材40が配置され、柔軟性シール部材40によって、タッチパネル20は支持され、
柔軟性シール部材40には、シリコンゴムまたは防水ゲルなどが用いられ、
下部筐体10bには、凸部12bが形成され、柔軟性シール部材40は、縦方向にタッチパネル20と下部筐体10bの凸部12bとの間に若干圧縮された状態で、挟み込まれるように配置され、柔軟性シール部材40は、タッチパネル20の裏面または下部筐体10b(の凸部12b)のうち少なくとも一方と接着され、
タッチパネル20の裏面には、振動部50が取り付けられ、タッチパネル20を振動させることにより、タッチパネル20のタッチ面に接触している接触物に対して触感を提示し、
柔軟性シール部材40により、下部筐体10bの内部すなわちタッチパネル20の背面側に、ダストや埃が侵入することが阻止され、柔軟性シール部材40の素材によっては、ある程度の防水効果が期待され、柔軟性シール部材40は、種々の形状とすることができ、適当な防塵が図られるのであれば、例えば中空構造にするなど各種の構成とすることができる、
電子機器。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

(2)同じく、原査定の拒絶の理由において引用された特開2006-174004号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。


「【0004】
図15に示すように、1は透明パネル2とアクチュエータ3と枠状支持部材4とから成る平面スピーカである。6はスポンジ等のクッション性部材から成る枠状のシールであり、表示窓枠21aの背面とLCD23との間にLCD23を囲むように配設されている。平面スピーカ1は、透明パネル2の周縁部のみで枠状支持部材4によりケース21に支持されているので、アクチュエータ3の駆動信号で透明パネル2が振動し、広帯域かつ高音圧で音を発するこことができる。図16において、スピーカとは、大きな入力信号をアクチュエータに加え、振動板から10cm離れた点での音圧の周波数特性を測定したものであり、レシーバとは、小さな入力信号をアクチュエータに加え、振動板に耳を密着させて聞いた状態を模擬的に再現し測定した周波数特性を示している。
【特許文献1】特表2002-533957号公報(図1-図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のこのような構成の平面スピーカ1では、上記のように、LCD23の表示面上の空間8は透明パネル2背面の隙間を通じてアクチュエータ3周辺の空間9とつながっている。このため、空間9の領域にあるアクチュエータ3及びその他の物に付着しているゴミは空間8に入り込む可能性がある。空間8はケース21の表示窓からLCD23の表示面を見る際に眼につく場所なので、そこにゴミが見えると外観上の問題を引き起こす要因となってしまう。そこで、空間8を空間9から隔離するための実験をした。図17は従来の平面スピーカの実験例を示す要部断面図であり、図18は図17の実験例の音響特性を示す波形図である。図17に示すように、ここではLCD23は表示窓枠21aの内側に配設され、枠状のシール6がLCD23上面と透明パネル2とに当接している。シール6は空間8を空間9から遮る防塵用部材としての機能を果たしており、枠状支持部材4とほぼ同じ厚みを有している。ところが、このようにLCD23と透明パネル2との間に枠状支持部材4とほぼ同じ厚みのシール6を設けると、透明パネル2の自由な振動が妨げられて図18に示すように音圧が不足する部分が生じて音響特性が悪化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、音響特性を低下させることなく表示装置の外観品質を向上させることができる平面スピーカを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための本発明の手段は、表示装置付機器のケースの表示用窓枠に周縁部を支持され、前記表示装置の保護を兼ねる音響用振動板としての透明パネルと、この透明パネルを前記表示用窓枠に支持するための枠状支持部材と、前記表示装置を避けて前記透明パネルの内面に固定され電気音響信号を機械振動に変換するアクチュエータとから成る平面スピーカにおいて、前記表示装置の表示面上の空間をこの空間の外側の空間から隔離するように防塵用部材を配設したことを特徴とする。」(下線は、注目箇所に当審が付した。以下、同様)


「【0018】
まず、本発明の第一の実施の形態である平面スピーカの構成を図面を参照して説明する。図1及び図2において、1は平面スピーカを示しており、透明パネル2、アクチュエータ3、サスペンション4から成る。15はスポンジ状部材又はゴム成形部材又は樹脂フィルム状部材等の柔軟部材(例えば日東化工(株)のポロンL24)から成る防塵膜を示しており、振動板裏面の空間分断、且つ振動を妨げないという機能を果たしている。防塵膜15の上下面には粘着剤を有している。
【0019】
防塵膜15は略S字型の断面を有し、一端は透明パネル2の裏面と、他端は枠状支持部材4の厚みを越えてLCD23の表面にシール6の外壁と接するように接着されており、両接着部の間には透明パネル2にもLCD23にも固定されてない部分αを有する。LCD23の表示面上の空間8は透明パネル2と表示窓枠21aとサスペンション4と防塵用部材であるシール6及び防塵膜15とによって密閉されており、アクチュエータ3の周辺の空間9から隔離されている。その他の構成は従来技術で説明したものと同様であるから、同一構成要素には同じ符号と名称と付して詳細な説明を省略する。
【0020】
次に、本発明の第二の実施の形態である平面スピーカについて図面を参照して説明する。図3は第二の実施の形態である平面スピーカを示す要部断面図である。図3において、25は一端が透明パネル2の背面に他端がLCD23の側面に固定されている防塵膜を示している。防塵膜25とシール6とは隙間なく接していることが望ましい。空間8はLCD23と透明パネル2と表示窓枠21aとサスペンション4と防塵用部材であるシール6及び防塵膜25とによって密閉されており空間9から隔離されている。
【0021】
次に、本発明の第三の実施の形態である平面スピーカについて図面を参照して説明する。図4は第三の実施の形態である平面スピーカを示す要部断面図である。図4において、35は略U字型の断面を有している防塵膜を示している。LCD23の表示面上ではシール6は枠状に存在し、アクチュエータ3側の外壁に接して防塵膜35の一部が固定されている。空間8はLCD23と透明パネル2と表示窓枠21aとサスペンション4と防塵用部材であるシール6及び防塵膜35とによって密閉されており空間9から隔離されている。」

ウ 上記下線部の記載によれば、引用文献2は、
「表示装置付機器のケースの表示用窓枠に周縁部を支持され、前記表示装置の保護を兼ねる音響用振動板としての透明パネルと、この透明パネルを前記表示用窓枠に支持するための枠状支持部材と、前記表示装置を避けて前記透明パネルの内面に固定され電気音響信号を機械振動に変換するアクチュエータとから成る平面スピーカにおいて、前記表示装置の表示面上の空間をこの空間の外側の空間から隔離するように防塵用部材を配設し、当該防塵用部材は、ゴム成形部材又は樹脂フィルム状部材等の柔軟部材からなる略U字型の断面を有し、透明パネルの自由な振動を妨げないものである、平面スピーカ。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。


第4 対比

本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1の「タッチパネル20」は、本願発明の「パネル」に相当する。
(2)引用発明1の「タッチパネル20の裏面」に取り付けられ、「タッチパネル20を振動させることにより、タッチパネル20のタッチ面に接触している接触物に対して触感を提示」する「振動部50」は、本願発明の「前記パネルを振動させることにより触感を提示する触感提示部」に相当する。
(3)引用発明1の「上部筐体10aと下部筐体10bと」が、「一体に組み合わされ」た「筐体10」は、本願発明の「筐体」に相当する。
(4)引用発明1の「柔軟性シール部材40」は、「タッチパネル20の背面の短辺に沿って」配置され、「タッチパネル20」と「筐体」を構成する「下部筐体10bの凸部12bとの間」に挟み込まれるから、引用発明1の「柔軟性シール部材40」は、本願発明と同様に「前記パネル背面と前記筐体との間に取り付けられ」るものといえる。
また、引用発明1の「柔軟性シール部材40」には、「シリコンゴム」などが用いられ、「下部筐体10bの内部すなわちタッチパネル20の背面側に、ダストや埃が侵入することが阻止」するものであり、「柔軟性シール部材40の素材によっては、ある程度の防水効果」が期待されるものであるから、引用発明1の「柔軟性シール部材」は、「前記筐体外部から前記筐体内部への塵又は水の侵入を抑制するためのシリコンゴム」といえる。
よって、引用発明1の「柔軟性シール部材40」と本願発明の「前記パネル背面と前記筐体との間に取り付けられ、前記筐体外部から前記筐体内部への塵又は水の侵入を抑制するための略U字形状のシリコンゴム」とは、いずれも、「前記パネル背面と前記筐体との間に取り付けられ、前記筐体外部から前記筐体内部への塵又は水の侵入を抑制するためのシリコンゴム」である点で共通する。
(5)引用発明1の「電子機器」は、触感を提示する構成を有しているから、「触感提示装置」ともいい得るものである。

以上によれば、本願発明と引用発明1とは、以下の一致点、相違点を有している。
[一致点]
「パネルと、
前記パネルを振動させることにより触感を呈示する触感呈示部と、
筐体と、
前記パネル背面と前記筐体との間に取り付けられ、前記筐体外部から前記筐体内部への塵又は水の侵入を抑制するためのシリコンゴムと、
を備えた触感呈示装置。」

[相違点]
シリコンゴムが、本願発明では「略U字形状」であるのに対し、引用発明1では、種々の形状とすることができ、適当な防塵が図られるのであれば、例えば中空構造にするなど各種の構成とすることができるものの、「略U字形状」とは特定されていない点。

第5 判断

(1)[相違点]について
相違点について検討する。
引用発明1では、シリコンゴムの形状は、種々の形状とすることができ、適当な防塵が図られるのであれば、例えば中空構造にするなど各種の構成とすることができるから、その断面形状は、筐体外部と筐体内部とを隔離できればどのような形状でもよいものである。また、引用文献1の段落[0037]の記載によれば、柔軟性シール部材40は、パネルの振動の減衰を低減させるものであるから、柔軟性シール部材40としては、パネルの振動を減衰させない形状を採用する方が望ましいことは当業者にとって明らかである。
そして、引用発明2は、引用発明1と同様の表示装置、パネルを備え、パネルを振動させる電子機器において、ゴム成形部材からなる略U字型の断面を有する防塵用部材を外側の空間から隔離するように配設するものであり、パネルの振動を妨げないものであるから、引用発明1の筐体外部と筐体内部とを隔離するシリコンゴムの断面形状として引用発明2を採用し、「略U字形状」とすることは当業者が容易に想到し得た事項である。

(2)本願発明の効果について
本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用文献1、2の記載事項から当業者が予測し得る範囲を超えるものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明1および引用発明2から、当業者が容易に発明をすることができた発明である。


第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用文献1、引用発明2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-03 
結審通知日 2016-10-04 
審決日 2016-10-17 
出願番号 特願2015-502774(P2015-502774)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 海江田 章裕上嶋 裕樹  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山澤 宏
高瀬 勤
発明の名称 触感呈示装置  
代理人 杉村 憲司  
代理人 石井 裕充  
代理人 河合 隆慶  
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