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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1322674
審判番号 不服2016-6987  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-12 
確定日 2016-12-27 
事件の表示 特願2011-210700「電子部品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月22日出願公開、特開2013- 74027、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成23年9月27日の出願であって、平成27年1月26日付けで拒絶理由が通知され、同年3月12日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月25日付けで拒絶理由が通知され、同年10月23日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年3月24日(発送日:同年3月29日)に拒絶査定がされ、これに対し、同年5月12日に拒絶査定に対する審判の請求がされると同時に、手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がされたものである。

第2.平成28年5月12日の特許請求の範囲を補正する手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.本件補正の内容
本件補正は、本件補正により補正される前の(すなわち、平成27年10月23日の手続補正書により補正された)下記Aに示す請求項1の記載を、下記Bに示す請求項1の記載へと補正することを含むものである。
A 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
レジストパターンを有する電子部品の製造方法であって、
得られるレジストパターンの縁部である第1の領域に対応する位置の基板上に、第1のレジスト材料(JIS K2283に準拠して測定された25℃での粘度が、150mPa・s以下の第1のレジスト材料を除く)を配置して、第1のレジスト層を形成する工程と、
前記第1の領域とは異なる第2の領域に対応する位置の前記基板上に、第2のレジスト材料(JIS K2283に準拠して測定された25℃での粘度が、150mPa・s以下の第2のレジスト材料を除く)を配置して、第2のレジスト層を形成する工程と、
前記第1,第2のレジスト層を硬化させて、レジストパターンを形成する工程とを備え、
前記基板上に、前記第1,第2のレジスト材料を、インクジェット装置から吐出して配置し、
前記第1のレジスト材料により形成されたレジストパターンの前記第1の領域部分と前記第2のレジスト材料により形成されたレジストパターンの前記第2の領域部分とが連なっているレジストパターンを形成する、電子部品の製造方法。」

B 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
レジストパターンを有する電子部品の製造方法であって、
得られるレジストパターンの縁部である第1の領域に対応する位置の基板上に、第1のレジスト材料(JIS K2283に準拠して測定された25℃での粘度が、150mPa・s以下の第1のレジスト材料を除く)を配置して、第1のレジスト層を形成する工程と、
前記第1の領域とは異なる第2の領域に対応する位置の前記基板上に、第2のレジスト材料(JIS K2283に準拠して測定された25℃での粘度が、150mPa・s以下の第2のレジスト材料を除く)を配置して、第2のレジスト層を形成する工程と、
前記第1,第2のレジスト層を硬化させて、レジストパターンを形成する工程とを備え、
前記基板上に、前記第1,第2のレジスト材料を、インクジェット装置から吐出して配置し、
前記第1のレジスト材料により形成されたレジストパターンの前記第1の領域部分と前記第2のレジスト材料により形成されたレジストパターンの前記第2の領域部分とが連なっているレジストパターンを形成し、
前記第1のレジスト材料及び前記第2のレジスト材料がそれぞれ、極性官能基を有し、かつ光の照射により硬化可能な硬化性化合物を含み、
前記第1のレジスト材料に含まれている前記硬化性化合物全体での前記極性官能基の総数が、前記第2のレジスト材料に含まれている前記硬化性化合物全体での前記極性官能基の総数よりも多い、電子部品の製造方法。」(上記アンダーラインは補正箇所を示すもので請求人が付したものである。)

2.本件補正の適否
本件補正は、「第1のレジスト材料」及び「第2のレジスト材料」に関して、「前記第1のレジスト材料及び前記第2のレジスト材料がそれぞれ、極性官能基を有し、かつ光の照射により硬化可能な硬化性化合物を含み、前記第1のレジスト材料に含まれている前記硬化性化合物全体での前記極性官能基の総数が、前記第2のレジスト材料に含まれている前記硬化性化合物全体での前記極性官能基の総数よりも多い」との限定を付加するものであって、また、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明1」という。)及び本件補正発明1を引用する請求項2ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本件補正発明2」ないし「本件補正発明4」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

2-1.刊行物の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2006-253247号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面(特に、【図1】及び【図2】参照。)とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0030】
図示フレキシブルプリント配線板は、まずは可撓性と絶縁性を有するプラスチックフィルム状の絶縁基板10の片面上に接着剤11を貼り付けたものを用い、それに金型を用いてパーフォレーション12、フレックススリット13、デバイスホール14などを一定間隔置きに連続的に打ち抜く。プラスチックフィルム状の絶縁基板10は、一般的には、50?125μmの厚さとし、例えば宇部興産株式会社製の商品名『ユーピレックス』や、東レ・デュポン株式会社製の商品名『カプトン』などを用いる。」

イ.「【0033】
次いで、ともに印刷法により、導体パターン16のインナーリード16aやアウターリード16bなどの接続端子部に隣接する領域上に、耐すずめっき液性に優れている第1のソルダーレジスト27を設けてから、導体パターン16を保護すべく、少なくとも導体パターン16の接続端子部を除いて導体パターン16上に、可撓性に優れている第2のソルダーレジスト17を設ける。」

ウ.「【0035】
耐すずめっき液性に優れている第1のソルダーレジスト27としては、例えば株式会社アサヒ化学研究所製の商品名『CCR232GF』などを用いる。また、可撓性に優れている第2のソルダーレジスト27としては、例えば宇部興産株式会社製の商品名『FS‐510T』や、味の素株式会社製の商品名『AR‐7100』などを用いる。」

エ.上記ア.及びイ.の記載並びに【図1】及び【図2】によれば、第2のソルダーレジスト17は第1のソルダーレジスト27が設けられる領域とは異なる領域に設けられ、第1のソルダーレジスト27による第1のソルダーレジスト層と第2のソルダーレジスト17による第2のソルダーレジスト層とから絶縁基板10上に連なっているレジストパターンが形成されていることが分かる。

オ.上記ウ.の記載から、第1のソルダーレジスト27及び第2のソルダーレジスト17として用いられるソルダーレジストは、基板に設けられた後に硬化されるものであることは明らかである。

上記の記載事項及び認定事項及び図面の記載を総合し、本件補正発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「レジストパターンを有するフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
接続端子部に隣接する領域に対応する位置の絶縁基板10上に、第1のソルダーレジスト27を配置して、第1のソルダーレジスト層を形成する工程と、
前記接続端子部に隣接する領域とは異なる領域に対応する位置の前記絶縁基板10上に、第2のソルダーレジスト17を配置して、第2のソルダーレジスト層を形成する工程と、
前記第1,第2のソルダーレジスト層を硬化させて、レジストパターンを形成する工程とを備え、
前記絶縁基板10上に、前記第1のソルダーレジスト27及び第2のソルダーレジスト17を、印刷により配置し、
前記第1のソルダーレジスト27により形成されたレジストパターンの前記接続端子部に隣接する領域部分と前記第2のソルダーレジスト17により形成されたレジストパターンの前記接続端子部に隣接する領域とは異なる領域部分とが連なっているレジストパターンを形成した、フレキシブルプリント配線板の製造方法。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第2004/099272号(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア.「[0005]本発明は、前記したような従来技術の問題を解消するためになされたものであり、その主たる目的は、プリント配線基板にインクジェットプリンターを用いてソルダーレジストインクとして直接描画可能な耐熱性のある光硬化性・熱硬化性組成物を提供しようとするものである。
[0006]さらに本発明の目的は、かかる光硬化性・熱硬化性組成物を用いて直接描画された耐熱性のあるソルダーレジストパターンを形成したプリント配線板を提供することにある。
発明の開示
[0007]前記目的を達成するために、本発明によれば、(A)分子内に(メタ)アクリロイル基と熱硬化性官能基を有するモノマー、(B)重量平均分子量700以下の前記(A)成分以外の光反応性希釈剤、及び(C)光重合開始剤を含有し、粘度が 25℃で150mPa・s以下であることを特徴とする耐熱性のあるインクジェット用光硬化性・熱硬化性組成物が提供される。
[0008]ここでいう粘度は、JIS K2283に従って常温(25℃)で測定した粘度をいう。前記したように、インクジェット方式の場合、インクの粘度は塗布時の温度において約20mPa・s以下であることが必要であるが、常温で150mPa・s以下であれば、加温することによって塗布時にはこの条件を満足することができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基はアクリロイル基及びメタアクリロイル基を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。」

2-2 対比・判断
(1) 本件補正発明1について
本件補正発明1と引用発明とを対比すると、その技術的意義、機能または構造からみて、引用発明における「フレキシブルプリント配線板」は本件補正発明1における「電子部品」に相当し、以下同様に、「絶縁基板10」は「基板」に、「接続端子部に隣接する領域」は「得られるレジストパターンの縁部である第1の領域」に、「接続端子部に隣接する領域とは異なる領域」は「第1の領域とは異なる第2の領域」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「第1のソルダーレジスト27」は、「第1のレジスト材料」という限りにおいて、本件補正発明1の「第1のレジスト材料(JIS K2283に準拠して測定された25℃での粘度が、150mPa・s以下の第1のレジスト材料を除く)」と共通し、引用発明の「第2のソルダーレジスト17」は、「第2のレジスト材料」という限りにおいて、本件補正発明1の「第2のレジスト材料(JIS K2283に準拠して測定された25℃での粘度が、150mPa・s以下の第1のレジスト材料を除く)」と共通する。
そして、引用発明における「印刷により配置」することは、「印刷により配置」することという限りにおいて、本件補正発明1における「インクジェット装置から吐出して配置」することと共通する。

そこで、両者は、本件補正発明1の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「レジストパターンを有する電子部品の製造方法であって、
得られるレジストパターンの縁部である第1の領域に対応する位置の基板上に、第1のレジスト材料を配置して、第1のレジスト層を形成する工程と、
前記第1の領域とは異なる第2の領域に対応する位置の前記基板上に、第2のレジスト材料を配置して、第2のレジスト層を形成する工程と、
前記第1,第2のレジスト層を硬化させて、レジストパターンを形成する工程とを備え、
前記基板上に、前記第1,第2のレジスト材料を、印刷により配置し、
前記第1のレジスト材料により形成されたレジストパターンの前記第1の領域部分と前記第2のレジスト材料により形成されたレジストパターンの前記第2の領域部分とが連なっているレジストパターンを形成した、電子部品の製造方法。」

そして、両者は次の各点で相違する。
[相違点1]
レジスト材料を配置するための印刷手段が、本件補正発明1においては、「インクジェット装置から吐出」するものであるのに対し、引用発明においては、印刷手段が何であるかが明らかでない点。

[相違点2]
第1及び第2のレジスト材料が、本件補正発明では、「第1のレジスト材料(JIS K2283に準拠して測定された25℃での粘度が、150mPa・s以下の第1のレジスト材料を除く)」と「第2のレジスト材料(JIS K2283に準拠して測定された25℃での粘度が、150mPa・s以下の第1のレジスト材料を除く)」であって、「前記第1のレジスト材料及び前記第2のレジスト材料がそれぞれ、極性官能基を有し、かつ光の照射により硬化可能な硬化性化合物を含み、前記第1のレジスト材料に含まれている前記硬化性化合物全体での前記極性官能基の総数が、前記第2のレジスト材料に含まれている前記硬化性化合物全体での前記極性官能基の総数よりも多い」のに対し、引用発明では、係る構成を有するものではない点。

上記相違点2について検討する。
本件補正発明1では、「前記第1のレジスト材料に含まれている前記硬化性化合物全体での前記極性官能基の総数が、前記第2のレジスト材料に含まれている前記硬化性化合物全体での前記極性官能基の総数よりも多い」ものとすることにより、第1のレジスト材料により形成されたレジストパターンの第1の領域部分の基板に対する接着力を、第2のレジスト材料により形成された第2の領域部分の基板に対する接着力よりも高くすることができるものであり(本願明細書段落【0062】を参照。)、また、レジストパターンが縁部を起点として基板から剥離するのを抑制できるものである(本願明細書段落【0012】を参照。)。
刊行物2(前記「2-1(2)」を参照。)には、(メタ)アクリロイル基(本件補正発明1における「極性官能基」に相当。)を有し、かつ光の照射により硬化可能な光硬化性・熱硬化性組成物からなり、JIS K2283に準拠して測定された25℃での粘度が、150mPa・s以下のレジスト材料が記載されている(以下、「刊行物2に記載された事項」という。)。
しかし、刊行物2には、単に、当該レジスト材料が開示されているにとどまり、硬化性化合物全体での(メタ)アクリロイル基の総数に着目して、2種類の光硬化性・熱硬化性組成物を基板に対して同時に使用することに関しては、記載も示唆もなされていない。
また、刊行物1には、引用発明の「第1のソルダーレジスト27」や「第2のソルダーレジスト17」の材料として、少なくとも光硬化性の樹脂を採用することを示す開示はない。
したがって、仮に、引用発明に刊行物2に記載された事項を適用したとしても、第1のソルダーレジスト27の材料(本件補正発明における「第一のレジスト材料」に相当。)に含まれている硬化性化合物全体での極性官能基の総数が、第2のソルダーレジスト17の材料(本件補正発明における「第二のレジスト材料」に相当。)に含まれている硬化性化合物全体での極性官能基の総数よりも多いものとすることは容易に想到し得たとはいえない。
すると、引用発明に刊行物2に記載された事項を適用したとしても、上記相違点2に係る本件補正発明1の構成に至ることが容易想到であるとはいえない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、上記相違点2に係る構成を具備する本件補正発明1は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本件補正発明1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(2)本件補正発明2ないし4について
本件補正発明2ないし4は、本件補正発明1を引用し、本件補正発明1を更に限定するものであるので、本件補正発明1と同様に、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、本件補正発明2ないし4は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

2-3 むすび
以上のことから、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3.本願の請求項1ないし4に係る発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし4に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲並びに願書に最初に添付した明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、上記第2.2-2で検討したとおり、本願の請求項1に係る発明については、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願の請求項2ないし4に係る発明については、いずれも本願の請求項1に係る発明の発明特定事項を全て含むものであるから、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、本願については、原査定の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-14 
出願番号 特願2011-210700(P2011-210700)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
P 1 8・ 572- WY (H05K)
P 1 8・ 575- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中島 昭浩  
特許庁審判長 阿部 利英
特許庁審判官 小関 峰夫
中川 隆司
発明の名称 電子部品の製造方法  
代理人 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所  

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