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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06T 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06T |
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管理番号 | 1322719 |
審判番号 | 不服2015-22138 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-12-15 |
確定日 | 2017-01-04 |
事件の表示 | 特願2012-281813「画像処理システムおよび画像処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月20日出願公開、特開2013-122770、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成23年4月7日に出願した特願2011-85838号の一部を平成24年12月25日に新たな特許出願としたものであって、平成27年4月17日(起案日)付けで拒絶の理由が通知され、それに応答して平成27年6月19日付けで手続補正がなされたが、平成27年9月8日(起案日)付けで拒絶査定がなされた。 これに対し、平成27年12月15日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたが、その後当審において、平成28年8月18日(起案日)付けで拒絶理由が通知され、それに応答して平成28年10月18日付けで手続補正がなされたものである。 第2.本願発明 本願の請求項1ないし15に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明15」という。)は、平成28年10月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 【請求項1】 所定の視差数の視差画像を用いて構成される立体視画像を表示可能な複数の立体表示装置と、 3次元の医用画像データであるボリュームデータに対してレンダリング処理を行なうレンダリング処理部、前記レンダリング処理部が前記ボリュームデータから生成した前記複数の立体表示装置の前記所定の視差数のうち最大視差数以上の視差画像群を記憶部に格納させる格納制御部を備えた画像処理装置と、 を備え、 前記立体表示装置は、前記記憶部に格納された前記最大視差数以上の視差画像群の中から前記所定の視差数の視差画像を選択して構成される立体視画像を表示し、前記レンダリング処理部は、所定形状の図形を形成する直線若しくは曲線に基づいてレンダリング処理を実行するための視点を前記最大視差数以上設定することで、前記視差画像群を生成することを特徴とする画像処理システム。 【請求項2】 操作者が指定したボリュームデータから生成された前記最大視差数以上の視差画像群から前記所定の視差数の視差画像を前記記憶部から取得し、当該取得した前記所定の視差数の視差画像を用いて構成される立体視画像を前記立体表示装置にて表示させるように制御する表示制御部、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。 【請求項3】 前記レンダリング処理部は、前記ボリュームデータのレンダリング対象となる領域であるレンダリング領域外に視点が位置されるように前記所定形状の図形を設定し、当該設定した図形を形成する直線若しくは曲線に基づいて前記視差画像群を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理システム。 【請求項4】 前記レンダリング処理部は、前記所定形状の図形を形成する直線若しくは曲線に沿ってレンダリング処理を実行するための視点を前記最大視差数以上設定することを特徴とする請求項1?3のいずれか1つに記載の画像処理システム。 【請求項5】 前記レンダリング処理部は、前記所定形状の図形を形成する直線若しくは曲線上に設定された点における接線に沿ってレンダリング処理を実行するための視点を前記最大視差数以上設定することを特徴とする請求項1?3のいずれか1つに記載の画像処理システム。 【請求項6】 前記レンダリング処理部は、前記所定形状の図形を形成する直線若しくは曲線上に設定された複数の点における各接線方向沿ってレンダリング処理を実行するための視点を設定することを特徴とする請求項1?3のいずれか1つに記載の画像処理システム。 【請求項7】 前記レンダリング処理部は、前記ボリュームデータのレンダリング対象となる領域であるレンダリング領域内に視点が位置されるように前記所定形状の図形を設定し、当該設定した図形を形成する直線若しくは曲線に基づいて前記視差画像群を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理システム。 【請求項8】 前記レンダリング処理部は、前記所定形状の図形を複数設定することを特徴とする請求項1?7のいずれか1つに記載の画像処理システム。 【請求項9】 前記表示制御部は、前記記憶部から前記所定の視差数の視差画像を順次選択することにより複数の立体視画像を前記立体表示装置にて順次表示させるように制御することを特徴とする請求項2に記載の画像処理システム。 【請求項10】 前記表示制御部は、選択する前記所定数の視差数の視差画像相互間の視差角を変更させることを特徴とする請求項2に記載の画像処理システム。 【請求項11】 前記レンダリング処理部は、前記視差画像群を構成する各画像の解像度が、前記所定の立体表示装置の解像度より高くなるように、当該視差画像群を生成することを特徴とする請求項1?10のいずれか1つに記載の画像処理システム。 【請求項12】 前記レンダリング処理部は、前記視差画像群を、医用画像を送受信するための標準規格に基づく形式に規格化した規格化データとし、更に、前記格納制御部は、前記標準規格にて用いられる付帯情報を当該規格化データに付与したうえで、前記記憶部に格納するように制御し、前記表示制御部は、前記操作者が指定したボリュームデータの規格化データを前記記憶部から取得し、当該取得した規格化データに付与された付帯情報に基づいて、当該規格化データが前記視差画像群であるか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理システム。 【請求項13】 前記レンダリング処理部は、前記標準規格に基づいて、前記視差画像群を動画形式の動画データとし、更に、前記格納制御部は、前記標準規格にて用いられる付帯情報を当該動画データに付与したうえで、前記記憶部に格納するように制御し、前記表示制御部は、前記操作者が指定したボリュームデータの動画データを前記記憶部から取得し、当該取得した動画データに付与された付帯情報に基づいて、当該動画データが前記視差画像群であるか否かを判定することを特徴とする請求項12に記載の画像処理システム。 【請求項14】 前記レンダリング処理部は、複数のボリュームデータが時系列に沿って生成されている場合、各ボリュームデータから時系列に沿った複数の視差画像群を生成し、生成した前記複数の視差画像群を前記標準規格にて用いられる動画形式の動画データとし、更に、前記格納制御部は、前記標準規格にて用いられる付帯情報を当該動画データに付与したうえで、前記記憶部に格納するように制御し、前記表示制御部は、操作者が指定した複数のボリュームデータの動画データを前記記憶部から取得し、当該取得した動画データに付与された付帯情報に基づいて、当該動画データが動画表示用の時系列に沿った複数の視差画像群であるか否かを判定することを特徴とする請求項13に記載の画像処理システム。 【請求項15】 所定の視差数の視差画像を用いて構成される立体視画像を表示可能な複数の立体表示装置に接続された画像処理装置が、3次元の医用画像データであるボリュームデータに対してレンダリング処理を行なうレンダリング処理部が前記ボリュームデータから生成した前記複数の立体表示装置の前記所定の視差数のうち最大視差数以上の視差画像群を記憶部に格納させるステップ、 を含み、 前記所定の視差数の視差画像を用いて構成される立体視画像を表示可能な前記立体表示装置が、前記記憶部に格納された前記最大視差数以上の視差画像群の中から前記所定の視差数の視差画像を選択して構成される立体視画像を表示するステップ、 を含み、 前記画像処理装置は、所定形状の図形を形成する直線若しくは曲線に基づいてレンダリング処理を実行するための視点を前記最大視差数以上設定することで、前記視差画像群を前記レンダリング処理部に生成させる、ことを特徴とする画像処理方法。 第3.原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 本願の平成27年6月19日付け手続補正による請求項1ないし17に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記(引用文献) 引用文献1:特開2006-101329号公報 引用文献2:特開平9-186957号公報 2.原査定の理由の判断 2-1.本願発明1について (1)本願発明1 本願発明1は、上記「第2.本願発明」の請求項1に記載した事項により特定される次のとおりのものである。 なお、本願発明1の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成(A)、構成(B)などと称する。 (本願発明1) (A)所定の視差数の視差画像を用いて構成される立体視画像を表示可能な複数の立体表示装置と、 (B)3次元の医用画像データであるボリュームデータに対してレンダリング処理を行なうレンダリング処理部、前記レンダリング処理部が前記ボリュームデータから生成した前記複数の立体表示装置の前記所定の視差数のうち最大視差数以上の視差画像群を記憶部に格納させる格納制御部を備えた画像処理装置と、 を備え、 (C)前記立体表示装置は、前記記憶部に格納された前記最大視差数以上の視差画像群の中から前記所定の視差数の視差画像を選択して構成される立体視画像を表示し、 (D)前記レンダリング処理部は、所定形状の図形を形成する直線若しくは曲線に基づいてレンダリング処理を実行するための視点を前記最大視差数以上設定することで、前記視差画像群を生成する (E)ことを特徴とする画像処理システム。 (2)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である特開2006-101329号公報には、「立体視画像観察装置ならびにその共有サーバ、クライアント端末およびピア・ツー・ピア端末、レンダリング画像生成方法および立体視画像表示方法ならびにそのプログラムおよび記憶媒体」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 なお、下線は強調のために当審で付したものである。 【0001】 本発明は、立体視画像観察装置ならびにその共有サーバ、クライアント端末およびピア・ツー・ピア端末に係り、特に、CTやMRI等の医療用画像診断機器により得られた3次元医用画像データの遠隔観察に好適な立体視画像観察装置ならびにその共有サーバ、クライアント端末およびピア・ツー・ピア端末に関する。 【0002】 CTやMRI等の医療用画像診断機器により得られた3次元の画素配置をもつ医用画像データ(以下、ボリュームデータと表現する)に光の透過係数などを設定し、陰影を追加することで立体的な2次元CG画像を作成するレンダリング技術が確立されている。また、立体視表示が行える表示装置を用いることにより、単に2次元画像ではなく、視点の空間座標が異なる2つの画像を右眼と左眼別々に入力することができ、奥行きを持った立体的な空間として視覚的に認識される。 【0006】 本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、同一のボリュームデータを複数の表示端末で観察する立体視画像観察装置において、いずれかの表示端末において視点等の観察条件が変更されると、これが全ての表示端末に反映され、全ての表示端末において常に同一画像の観察が可能になる立体視画像観察装置ならびにその共有サーバ、クライアント端末およびピア・ツー・ピア端末、レンダリング画像生成方法および立体視画像表示方法ならびにそのプログラムおよび記憶媒体を提供することにある。 【0010】 以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る立体視画像観察装置の構成を示したブロック図であり、ここでは、3次元の画素配置を持つボリュームデータから立体視用のレンダリング画像を生成する共有サーバ1と、この共有サーバ1上でボリュームデータを共有し、その立体視画像を同一視点で表示する複数のクライアント端末2とがネットワーク3を介して接続され、サーバ・クライアント型のシステムを構成している。 【0011】 図2は、前記共有サーバ1の主要部の構成を示したブロック図であり、ボリュームデータのデータベース(DB)101には、3次元空間上の各点が値を有する状態をモデル化した各種のボリュームデータが蓄積されている。このボリュームデータDB101上では、各ボリュームデータが識別情報で一義的に管理されている。レンダリング処理部102は、制御部100から提供される、少なくとも視点情報を含むレンダリングパラメータに応じて、前記ボリュームデータに対してレンダリング処理を実施し、視点の異なる複数のレンダリング画像を生成する。 【0012】 送信画像バッファ103には、前記レンダリング処理部102から出力される複数のレンダリング画像が一時的に保持される。圧縮・暗号化処理部104は、前記送信画像バッファ103からレンダリング画像を読み出して符号化圧縮すると共に、必要に応じて暗号化処理を施す。画像送信部105からは、レンダリング画像の符号化データが全てのクライアント端末2に向けて送信される。 【0013】 コマンド受信部106は、レンダリングパラメータを変更するためにクライアント端末2から送信されるレンダリングコマンドや、TV会議への参加を希望するクライアント端末2から送信されるのTV会議接続要求コマンドを受信する。前記制御部100は、受信されたレンダリングコマンドに基づいてレンダリングパラメータを変更し、前記レンダリング処理部102に対して、変更後のレンダリングパラメータによる再レンダリングを指示する。 【0015】 図3は、前記レンダリング処理部102の構成を示したブロック図であり、ここでは、二眼式を例にして説明する。 【0016】 レンダリング処理部102は、ボリュームデータを空間上の任意の視点xから見込んだ2次元のレンダリング画像(右眼画像)を作成する第1レンダリング処理部141aと、前記視点xを右眼視点としたときに、当該視点xとは僅かに離間されて左眼視点となる他の視点x’から同じボリュームデータを見込んだ2次元のレンダリング画像(左眼画像)を作成する第2レンダリング処理部141bとを含む。これ以後、立体視画像を表現するために必要な第1および第2レンダリング画像のペアを単にレンダリング画像と表現する場合もある。前記各視点x,x’の座標位置は、レンダリングパラメータの一部として制御部100から提供される。前記第1および第2レンダリング処理部141a,141bでは、視点以外に関しては同一のレンダリングパラメータを用いてレンダリングが行われる。 【0017】 図4は、前記レンダリング処理部102の他の構成を示したブロック図であり、上記した左右一対のレンダリング処理部141(141a,141b)を複数組設け、それぞれに異なる視点から見込んだレンダリング画像を生成する多眼式の構成を示している。なお、上記した2眼式および多眼式のいずれにおいても、第1および第2レンダリング画像をそのまま出力するのではなく、例えば第1レンダリング画像に対する第2レンダリング画像の差分データを求め、第1レンダリング画像および差分データのペアを立体視用のレンダリング画像として出力するようにしても良い。 【0018】 図5は、前記クライアント端末2の構成を示したブロック図であり、いずれのクライアント端末も同一または同等の構成を備えている。 【0019】 レンダリング通信部212は、前記共有サーバ1の画像送信部105およびコマンド受信部106と通信し、共有サーバ1から送信されるレンダリング画像の受信、および共有サーバ1へのレンダリングコマンドの送信を制御する。画像デコーダ207は、受信されたレンダリング画像の符号化データを復号化して左右一対のレンダリング画像を再生する。なお、レンダリング画像が第1レンダリング画像(右眼画像)および差分データのペアであれば、第1レンダリング画像と差分データとに基づいて第2レンダリング画像(左眼画像)が再生される。立体視画像表示装置202は、前記左右一対のレンダリング画像に基づいて立体視画像を表示する。 【0020】 入力操作子201は、マウス、キーボードあるいはジョイスティック等の入力装置であり、オペレータは入力操作子201を適宜に操作することにより、前記立体視画像表示装置202に表示されている立体視画像の視点変更、カッティングライン変更、画像の拡大や縮小、あるいは色調、明度、コントラストの変更、CT画像であればCT値や透過度の変更といった観察条件の変更を行うことができる。コマンド生成部206は、前記入力操作子201に対する操作に基づいて観察条件の変更要求を検知し、この観察条件に応じてレンダリングパラメータの変更を共有サーバ1に対して要求するためのレンダリングコマンドを生成する。このレンダリングコマンドは、前記レンダリング通信部212から共有サーバ1へ送信される。 【0029】 図8は、本発明の第2実施形態に係る共有サーバ1の主要部の構成を示したブロック図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。 【0030】 本実施形態では、観察条件の変更内容を予測する変更予測部100aを制御部100に設けると共に、その予測結果に基づいて生成されたレンダリング予測画像を記憶する予測画像バッファ110を設けた点に特徴がある。前記変更予測部100aは、現在のレンダリングパラメータと前回以前の少なくとも一つのレンダリングパラメータとに基づいて、次回以降に受信するレンダリングコマンドで設定されるレンダリングパラメータを予測する。レンダリング処理部102は、前記レンダリングパラメータの予測結果に基づいてレンダリング画像を予め生成し、これを予測画像バッファ110へ蓄積する。 【0035】 その後、いずれかのクライアント端末2から送信されたレンダリングコマンドがステップS6で受信されると、ステップS10では、受信したレンダリングコマンドで指定されるレンダリングパラメータで予めレンダリングされた予測画像が前記予測画像バッファ110に既登録であるか否かが判定される。未登録と判定されればステップS7へ進み、上記した第1実施形態と同様に、制御部100においてレンダリングパラメータがレンダリングコマンドに基づいて変更され、レンダリング処理部102に対して、変更後のレンダリングパラメータに基づく再レンダリングが指示される。 【0036】 これに対して、レンダリング画像が予測画像バッファ110に既登録であればステップS11へ進み、当該レンダリング予測画像が予測画像バッファ110から抽出され、ステップS3,4,5において全てのクライアント端末2へ送信される。 【0037】 本実施形態によれば、共有サーバ1がレンダリングパラメータの履歴に基づいて今後の推移を予測し、待機時間を利用してレンダリング予測画像を予め生成するので、レンダリングコマンドに応答した立体視画像を表示させるための応答時間を短縮できるようになる。 (3)引用文献1に記載された発明 a.立体視画像観察装置 引用文献1の段落【0001】,【0002】,【0006】,【0010】の記載によれば、引用文献1には、CTやMRI等の医療用画像診断機器により得られた3次元医用画像データ(ボリュームデータ)を複数のクライアント端末で観察する立体視画像観察装置であって、3次元の画素配置を持つボリュームデータから立体視用のレンダリング画像を生成する共有サーバと、全てのクライアント端末において常に同一画像の観察が可能となるように、その立体視画像を同一視点で表示する複数のクライアント端末を備えた立体視画像観察装置に関する発明が記載されている。 すなわち、引用文献1には、『CTやMRI等の医療用画像診断機器により得られた3次元医用画像データ(ボリュームデータ)から立体視用のレンダリング画像を生成する共有サーバと、全てのクライアント端末において常に同一画像の観察が可能となるように、その立体視画像を同一視点で表示する複数のクライアント端末を備えた立体視画像観察装置』に関する発明が記載されている。 b.共有サーバ 引用文献1の段落【0011】?【0013】の記載によれば、引用文献1の共有サーバは、クライアント端末から受信されるレンダリングコマンドに基づいてレンダリングパラメータを変更する制御部、その視点情報を含むレンダリングパラメータに応じて、ボリュームデータに対してレンダリング処理を実施し、視点の異なる複数のレンダリング画像を生成するレンダリング処理部と、レンダリング処理部から出力される複数のレンダリング画像が一時的に保持される送信画像バッファを備え、送信画像バッファからレンダリング画像を全てのクライアント端末に送信する。 また、段落【0015】?【0017】の記載によれば、レンダリング処理部は、二眼式又は多眼式の視点の異なる複数のレンダリング画像を生成する。 これらのことから、引用文献1の共有サーバは、『クライアント端末から受信されるレンダリングコマンドに基づいたレンダリングパラメータに応じて、ボリュームデータに対してレンダリング処理を実施し、二眼式又は多眼式の視点の異なる複数のレンダリング画像を生成するレンダリング処理部と、レンダリング処理部から出力される視点の異なる複数のレンダリング画像が一時的に保持される送信画像バッファを備え、送信画像バッファから視点の異なる複数のレンダリング画像を全てのクライアント端末に送信』するものである。 c.複数のクライアント端末 引用文献1の段落【0018】?【0020】の記載によれば、引用文献1の複数のクライアント端末は、同一または同等の構成を備えており、共有サーバへレンダリングコマンドを送信し、共有サーバから送信されるレンダリング画像を受信し、受信されたレンダリング画像に基づいて立体視画像を表示する。 ここで、共有サーバから送信されるレンダリング画像は、視点の異なる複数のレンダリング画像である。 よって、引用文献1の複数のクライアント端末は、『同一または同等の構成を備えており、共有サーバへレンダリングコマンドを送信し、共有サーバから送信される視点の異なる複数のレンダリング画像を受信し、受信された視点の異なる複数のレンダリング画像に基づいて立体視画像を表示する。 d.予測画像バッファ 引用文献1の段落【0029】,【0030】,【0035】?【0037】の記載によれば、引用文献1に記載される発明の第2実施形態は、発明の第1実施形態の共有サーバに、観察条件の変更内容を予測する変更予測部と、その予測結果に基づいて生成されたレンダリング予測画像を記憶する予測画像バッファを設けたものであり、変更予測部は、現在のレンダリングパラメータと前回以前の少なくとも一つのレンダリングパラメータとに基づいて、次回以降に受信するレンダリングコマンドで設定されるレンダリングパラメータを予測し、レンダリング処理部は、前記レンダリングパラメータの予測結果に基づいてレンダリング画像を予め生成し、これを予測画像バッファへ蓄積する。 そして、いずれかのクライアント端末から送信されたレンダリングコマンドで指定されるレンダリングパラメータで予めレンダリングされた予測画像が前記予測画像バッファに既登録であるか否かが判定され、レンダリング画像が予測画像バッファに既登録であれば、当該レンダリング予測画像が予測画像バッファから抽出され、全てのクライアント端末へ送信される。 ここで、レンダリング処理部で生成され予測画像バッファに蓄積されるレンダリング画像は、第1実施形態と同様に、二眼式又は多眼式の視点の異なる複数のレンダリング画像である。 すなわち、引用文献1の第2実施形態の共有サーバは、『次回以降に受信するレンダリングコマンドで設定されるレンダリングパラメータを予測し、その予測結果に基づいてレンダリング処理部が予め生成した二眼式又は多眼式の視点の異なる複数のレンダリング画像を蓄積する予測画像バッファを備え、予測画像バッファから視点の異なる複数のレンダリング画像を全てのクライアント端末に送信』するものである。 e.まとめ 上記a.ないしd.で認定した事項から、引用文献1の第2実施形態を引用発明として捉えると、引用文献1には、次の発明(以下、引用発明という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) (a)CTやMRI等の医療用画像診断機器により得られた3次元医用画像データ(ボリュームデータ)から立体視用のレンダリング画像を生成する共有サーバと、全てのクライアント端末において常に同一画像の観察が可能となるように、その立体視画像を同一視点で表示する複数のクライアント端末を備えた立体視画像観察装置であって、 (b)クライアント端末から受信されるレンダリングコマンドに基づいたレンダリングパラメータに応じて、ボリュームデータに対してレンダリング処理を実施し、二眼式又は多眼式の視点の異なる複数のレンダリング画像を生成するレンダリング処理部と、レンダリング処理部から出力される視点の異なる複数のレンダリング画像が一時的に保持される送信画像バッファ、及び、次回以降に受信するレンダリングコマンドで設定されるレンダリングパラメータを予測し、その予測結果に基づいてレンダリング処理部が予め生成した二眼式又は多眼式の視点の異なる複数のレンダリング画像を蓄積する予測画像バッファを備え、送信画像バッファ及び予測画像バッファから視点の異なる複数のレンダリング画像を全てのクライアント端末に送信する共有サーバと、 (c)同一または同等の構成を備えており、共有サーバへレンダリングコマンドを送信し、共有サーバから送信される視点の異なる複数のレンダリング画像を受信し、受信された視点の異なる複数のレンダリング画像に基づいて立体視画像を表示する複数のクライアント端末と、 (d)を備えた立体視画像観察装置。 (4)他の文献に記載された技術事項 (4-1)引用文献2に記載された技術事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2である特開平9-186957号公報には、「画像記録再生装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 なお、下線は強調のために当審で付したものである。 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は物体を複数の視点位置から見た画像を記録再生する画像記録再生装置に関する。 【0010】 【発明の実施の形態】図1は本発明の第1の実施の形態によるシステム構成図である。本実施の形態は不図示の移動物体を多視点から見た動画像を撮像して記録し、再生時に移動または固定視点位置から見た動画像を生成・表示する装置である。図において、1は被写体の多視点画像を得るために複数の位置に設定された複数の撮像手段、2は各撮像手段1の視線方向(その光軸の向いている方向)、位置データを検出してそれらのデータを生成する生成手段、4は各撮像手段1の視線方向・位置および時間経過に関するインデクス処理ユニット、5は一次配列記憶手段、6は画像表示手段、7は再生時の視点位置・姿勢入力手段である。 【0014】まず画像データのインデクス書き込み制御および転送制御方法について説明する。図2の位置・姿勢・時間データ読み出し手段43は図1の位置・姿勢データ生成手段2からのデータを所定のレートで同期手段44を介して取り込み、インデクスデータを生成して画像データのヘッダ部に付与する。図6に画像記録時のヘッダ部のフォーマット例を示す。図6(c)のrは所定位置からの走行距離などを示す。インデクス付き画像データ書き込み制御手段42は各撮像手段1から得た同時刻の画像データを画像一次記憶手段41に順次に書き込む。図6は各画像に付与されるインデクスの書き込みフォーマット例を示す。 【0016】上記一次配列された画像データは、再生時には、視点運動情報に応じて再配列処理されて二次配列画像データとなり、キャッシュメモリ11に記憶される。 【0017】上記二次再配列処理について説明する。視点変化軌道範囲予測手段8は、再生時の視点入力手段7からの視点運動データとして仮想視点の位置、速度ベクトルなどに基づき現フレームから所定時間分の視点位置(軌道)を予測する。画像データサンプリング手段9は視点の予測軌道と各視点位置の時刻(または経過時間)データに最も近いインデクスを有する画像データを一次配列データを格納した一次配列記憶手段5から抽出し、視点軌道上の視点変化パターンに対応するように画像を再配列する。このようにして得られる画像列が二次配列後の画像データである。二次配列後の画像データは画像データ転送手段10によりキャッシュメモリ11に記憶される。 これらの記載によれば、引用文献2には、『多視点から撮影された動画像データを一次配列記憶手段に記録し、再生時に仮想視点位置から見た動画像データを一次配列記憶手段から抽出し、再配列して生成し、表示する技術』が記載されている。 (4-2)前置報告書において提示された文献に記載された技術事項 前置報告書において周知技術を示す文献として提示された特開2010-250457号公報(以下、「周知文献」という)には、「医用画像管理装置および方法」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 なお、下線は強調のために当審で付したものである。 【0001】 本発明は、医用画像撮影装置により撮影された画像データを保存および管理する医用画像管理装置および方法に関するものである。 【背景技術】 【0002】 近年、CT装置、MRI装置、超音波診断装置等の医用画像生成装置によって生成された画像データを管理サーバーに保存しておき、医用画像表示装置等のクライアント端末からの配信要求に応じて、該当する画像データを転送可能にした医用画像保管通信システム(PACS:Picture Archiving and Communication System)が利用されている。 【0003】 クライアント端末では、被写体の3次元的な構造等の把握を容易にするため、多数の2次元画像の群からなる被写体の3次元画像データを管理サーバーから取得し、コンピュータグラフィックスの技術等を用いて2次元平面上に立体的に可視化した擬似3次元画像(ボリュームレンダリング画像、MIP画像など)を生成・表示する処理が行われている。 【0004】 しかし、その3次元画像を構成する全ての2次元画像データの転送が終了し、さらに擬似3次元画像の生成処理が完了するまでは、所望の擬似3次元画像を表示することができないため、操作者による画像要求に対するレスポンスが遅くなってしまう、という問題がある。 【0009】 本発明は、上記事情に鑑み、疑似3次元画像を初めから作って用意しておくことができ、どの外部端末からの配信要求に対してもすぐに擬似3次元画像データを提供できる医用画像管理装置および方法を提供することを目的とするものである。 【0020】 以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、医用画像管理システム1の概略構成を示すブロック図である。図に示すように、このシステム1では、画像管理サーバー10(医用画像管理装置)と、医用画像生成装置20と、クライアント端末(外部端末)30とが、ネットワーク9を経由して通信可能な状態で接続されている。 【0021】 医用画像生成装置20は、たとえばヘリカルスキャンX線CT装置であり、ヘリカルスキャン方式により、多数の2次元画像の群からなる3次元画像を取得する。この医用画像生成装置20により取得された画像は画像管理サーバー10に送信され、保存される。 【0022】 画像管理サーバー10は、医用画像撮影装置20により撮影された画像をネットワーク9経由で取得し、保存および管理を行なうものであり、通信制御手段11(配信制御手段)、記録手段12、画像生成手段13などを備えている。 【0023】 通信制御手段11は、ネットワーク9を介して他の装置と通信を行い、画像データなどを送信および受信する。たとえば、クライアント端末30からの特定の3次元画像に対する配信要求に応じて、その3次元画像に関連付けて予め記録手段12に記録しておいた擬似3次元画像データの少なくとも1枚とその3次元画像を構成する多数の2次元画像の群とを記録手段12からクライアント端末30に順次送信(配信)する。ここで、少なくとも1枚の擬似3次元画像データは、画像生成手段13により生成された全ての疑似3次元画像のうち予め決めておいた画像生成条件により生成された所定数の疑似3次元画像とする。 これらの記載によれば、周知文献には、『医用画像生成装置において、画像管理サーバーが、予め決めておいた画像生成条件により所定数の疑似3次元画像を予め生成して記録手段に記録し、クライアント端末からの配信要求に応じて、予め記録手段に記録しておいた擬似3次元画像データの少なくとも1枚とその3次元画像を構成する多数の2次元画像の群とを順次送信することによって、疑似3次元画像を初めから作って用意しておくことができ、どの外部端末からの配信要求に対してもすぐに擬似3次元画像データを提供できるようにした技術』が記載されている。 (5)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 a.本願発明1の構成(A)と引用発明の構成(c)との対比 引用発明の複数のクライアント端末は、共有サーバから受信する視点の異なる複数のレンダリング画像を用いて立体視画像を表示するものであって、構成(b)にあるように、共有サーバは、ボリュームデータに対してレンダリング処理を施して二眼式又は多眼式の複数のレンダリング画像を生成してクライアント端末へ送信するものであるから、複数のクライアント端末は『視点の異なる複数のレンダリング画像を用いて立体視画像を表示』するものである。 ここで、本願発明1の「視差画像」は、構成(B)によれば、ボリュームデータからレンダリングにより生成した画像であるところ、引用発明のレンダリング画像もボリュームデータに対してレンダリング処理を施して生成した画像であるから、本願発明1の「視差画像」に相当するものといえる。 また、引用発明の視点の異なる複数のレンダリング画像は、所定の視差数のレンダリング画像であり、すなわち「所定の視差数の視差画像」といえる。 以上のことから、引用発明の『視点の異なる複数のレンダリング画像を用いて立体視画像を表示する複数のクライアント端末』は、本願発明1の「所定の視差数の視差画像を用いて構成される立体視画像を表示可能な複数の立体表示装置」と相違しない。 b.本願発明1の構成(B)と引用発明の構成(b)との対比 引用発明の共有サーバは、ボリュームデータに対してレンダリング処理を実施し、二眼式又は多眼式の視点の異なる複数のレンダリング画像を生成するレンダリング処理部を備えており、このボリュームデータは、構成(a)にあるようにCTやMRI等の医療用画像診断機器により得られた3次元医用画像データであるから、レンダリング処理部は、『3次元医用画像データであるボリュームデータに対してレンダリング処理を実施』するものである。 よって、引用発明のレンダリング処理部は、本願発明1の「3次元の医用画像データであるボリュームデータに対してレンダリング処理を行なうレンダリング処理部」と一致する。 引用発明の共有サーバは、レンダリングコマンドに基づいてレンダリング処理部が生成する視点の異なる複数のレンダリング画像を一時的に保持する送信画像バッファと、次回以降に受信するレンダリングコマンドを予測してレンダリング処理部が生成する視点の異なる複数のレンダリング画像を蓄積する予測画像バッファを備えており、これらの送信画像バッファ及び予測画像バッファは「記憶部」といえる。さらに、レンダリング画像を送信画像バッファ及び予測画像バッファに蓄積するための制御を行う制御部を、当然有しているものといえる。 また、レンダリングコマンドに基づいてレンダリング処理部が生成する視点の異なる複数のレンダリング画像、及び、次回以降に受信するレンダリングコマンドを予測してレンダリング処理部が生成する視点の異なる複数のレンダリング画像は、複数組の視点の異なる複数のレンダリング画像であるからレンダリング画像の群といえ、上記a.において検討したように、レンダリング画像は本願発明1の「視差画像」に相当するものであるから、このレンダリング画像の群は「視差画像群」といえる。 よって、引用発明の共有サーバは、本願発明1と「前記レンダリング処理部が前記ボリュームデータから生成した視差画像群を記憶部に格納させる格納制御部」を備えている点で一致するといえる。 ただし、「視差画像群」が、本願発明1では、「前記複数の立体表示装置の前記所定の視差数のうち最大視差数以上の視差画像群」であるのに対し、引用発明では、「レンダリングコマンドに基づいて生成する視点の異なる複数のレンダリング画像、及び、次回以降に受信するレンダリングコマンドを予測して生成される視点の異なる複数のレンダリング画像」である点で、両者は相違する。 そして、引用発明の共有サーバは、「レンダリング処理部」と「格納制御部」を備えている点で、本願発明1の「画像処理装置」と共通するものである。 以上をまとめると、引用発明の共有サーバは、本願発明1と「3次元の医用画像データであるボリュームデータに対してレンダリング処理を行なうレンダリング処理部、前記レンダリング処理部が前記ボリュームデータから生成した視差画像群を記憶部に格納させる格納制御部を備えた画像処理装置」である点で一致し、記憶部に格納される「視差画像群」に関し、本願発明1では、「前記複数の立体表示装置の前記所定の視差数のうち最大視差数以上の視差画像群」であるのに対し、引用発明では、「レンダリングコマンドに基づいて生成する視点の異なる複数のレンダリング画像、及び、次回以降に受信するレンダリングコマンドを予測して生成される視点の異なる複数のレンダリング画像」である点で、両者は相違する。 c.本願発明1の構成(C)と引用発明の構成(b)、(c)との対比 引用発明において、クライアント端末が共有サーバへレンダリングコマンドを送信すると、共有サーバは、レンダリング処理部が生成する複数組の視点の異なる複数のレンダリング画像を送信画像バッファ及び予測画像バッファに蓄積し、送信画像バッファ及び予測画像バッファから視点の異なる複数のレンダリング画像を全てのクライアント端末に送信する。そして、クライアント端末は、その共有サーバから送信される視点の異なる複数のレンダリング画像を受信し、受信された視点の異なる複数のレンダリング画像に基づいて立体視画像を表示する。 すなわち、引用発明は、クライアント端末が、共有サーバの送信画像バッファ及び予測画像バッファに格納された複数組の視点の異なる複数のレンダリング画像の中から、共有サーバへ送信したレンダリングコマンドに対応する視点の異なる複数のレンダリング画像を取得し、その視点の異なる複数のレンダリング画像に基づいて立体視画像を表示するものである。 ここで、引用発明のクライアント端末、視点の異なる複数のレンダリング画像、複数組の視点の異なる複数のレンダリング画像、送信画像バッファ及び予測画像バッファは、上記a.及びb.において検討したように、それぞれ本願発明1の「立体表示装置」、「所定の視差数の視差画像」、「視差画像群」、「記憶部」に相当し、視点の異なる複数のレンダリング画像は立体視画像を表示するためのものであるから、上記a.において認定した「所定の視差数の視差画像」のことであり、構成(A)において「前記」された「所定の視差数の視差画像」である。 よって、引用発明は、本願発明1と、「前記立体表示装置は、前記記憶部に格納された前記視差画像群の中から前記所定の視差数の視差画像を選択して構成される立体視画像を表示」するものである点で一致する。 ただし、「視差画像群」が本願発明1と引用発明で相違することは、上記b.において認定したとおりである。 d.本願発明1の構成(D)について 上記b.において認定したように、引用発明は、レンダリング処理部が「視差画像群」を生成するものであるから、本願発明1と「前記レンダリング処理部は、前記視差画像群を生成する」という構成を有している点で一致する。 ただし、この「レンダリング処理部」に関し、本願発明1は、「所定形状の図形を形成する直線若しくは曲線に基づいてレンダリング処理を実行するための視点を前記最大視差数以上設定すること」で、前記視差画像群を生成するのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点で、両者は相違する。 e.本願発明1の構成(E)と引用発明の構成(a)との対比 引用発明の立体視画像観察装置は、本願発明1の「画像処理装置」に相当する共有サーバと、本願発明1の「複数の立体表示装置」に相当する複数のクライアント端末を備えている点で、本願発明1の「画像処理システム」と共通するものである。 f.まとめ 上述した対比結果をまとめると、本願発明1と引用発明との[一致点]と[相違点]は以下のとおりである。 [一致点] 所定の視差数の視差画像を用いて構成される立体視画像を表示可能な複数の立体表示装置と、 3次元の医用画像データであるボリュームデータに対してレンダリング処理を行なうレンダリング処理部、前記レンダリング処理部が前記ボリュームデータから生成した視差画像群を記憶部に格納させる格納制御部を備えた画像処理装置と、 を備え、 前記立体表示装置は、前記記憶部に格納された前記視差画像群の中から前記所定の視差数の視差画像を選択して構成される立体視画像を表示し、 前記レンダリング処理部は、前記視差画像群を生成する ことを特徴とする画像処理システム。 [相違点1] 記憶部に格納される「視差画像群」に関し、本願発明1では、「前記複数の立体表示装置の前記所定の視差数のうち最大視差数以上の視差画像群」であるのに対し、引用発明では、「レンダリングコマンドに基づいて生成する視点の異なる複数のレンダリング画像、及び、次回以降に受信するレンダリングコマンドを予測して生成される視点の異なる複数のレンダリング画像」である点。 [相違点2] 「レンダリング処理部」に関し、本願発明1は、「所定形状の図形を形成する直線若しくは曲線に基づいてレンダリング処理を実行するための視点を前記最大視差数以上設定すること」で、前記視差画像群を生成するのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。 (6)相違点についての判断 a.相違点1について 本願発明1の「視差画像群」が「前記複数の立体表示装置の前記所定の視差数のうち最大視差数以上の視差画像群」であることは、本願発明1の所定の視差数の視差画像を用いる複数の立体表示装置にそれぞれ異なる視差数の視差画像を用いる立体表示装置が存在していることを前提として、それらの異なる視差数の視差画像を用いる立体表示装置のうちの最大の視差数の視差画像を用いる立体表示装置に対応させるために、「前記複数の立体表示装置の前記所定の視差数のうち最大視差数以上の視差画像群」を記憶部に格納させるというものである。 引用発明の「次回以降に受信するレンダリングコマンドで設定されるレンダリングパラメータを予測し、その予測結果に基づいてレンダリング処理部が予め生成した二眼式又は多眼式の視点の異なる複数のレンダリング画像を蓄積する」という技術思想、引用文献2に記載される「多視点から撮影された動画像データを一次配列記憶手段に記録し、再生時に仮想視点位置から見た動画像データを一次配列記憶手段から抽出」するという技術思想、及び上記周知文献に記載された「予め決めておいた画像生成条件により所定数の疑似3次元画像を予め生成して記録手段に記録し用意しておくことで、どの外部端末からの配信要求に対してもすぐに擬似3次元画像データを提供できる」ようにするという技術思想から、引用発明において、クライアント端末が要求する視点の異なる複数のレンダリング画像以上のレンダリング画像を予め記憶させておき、クライアント端末からのどのような視点のレンダリング画像の要求に対しても迅速に対応可能とするという技術思想は、当業者が容易に到達し得ることと認められる。 しかしながら、引用発明のクライアント端末は、「同一または同等の構成を備え」ているものであり、「異なる視差数の視差画像を用いる立体表示装置」が存在するものではなく、また、立体画像を表示するシステムにおいて、「異なる視差数の視差画像を用いる立体表示装置」を、ネットワークを介してサーバに同時に接続して利用することが一般的なことであるとも認められないことから、「複数の立体表示装置の所定の視差数のうち最大視差数以上の視差画像群」を記憶部に格納させようとすることは、引用発明、引用文献2及び周知文献に記載される技術から、当業者が容易になし得ることとはいえない。 よって、相違点1に係る構成は、引用発明、引用文献2及び周知文献に記載される技術に基づいて、当業者が容易になし得ることとはいえない。 b.相違点2について 立体表示のための視差画像をレンダリング処理により生成する際に、レンダリング処理を実行するための視点を、所定形状の図形を形成する直線上に置くことや、若しくは曲線上に置くことは、それぞれ周知の技術であって当業者が適宜採用し得ることに過ぎない。 よって、上記相違点2のうち「所定形状の図形を形成する直線若しくは曲線に基づいてレンダリング処理を実行するための視点」という構成を採用することは、当業者が容易になし得ることである。 しかしながら、そのような視点を「前記最大視差数以上設定すること」は、上記の相違点1について検討したことと同様に、引用発明、引用文献2及び周知文献に記載される技術に基づいて、当業者が容易になし得ることとはいえない。 (7)小括 以上のとおり、本願発明1は、引用発明、引用文献2及び周知文献に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2-2.本願発明2ないし15について 本願発明2ないし14は、請求項1を直接的または間接的に引用する発明であり、本願発明15は、本願発明1の「画像処理システム」の物の発明を「画像処理方法」の方法の発明としたものであって、本願発明1と同様の発明特定事項を有するものである。 よって、本願発明2ないし15は、本願発明1と同様に引用発明、引用文献1及び周知文献に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第4.当審拒絶理由について 1.当審拒絶理由の概要 本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1は、「前記レンダリング処理部が前記ボリュームデータから生成した前記複数の立体表示装置の前記所定の視差数のうち最大視差数以上の視差画像群を記憶部に格納させる格納制御部を備えた画像処理装置」と「前記レンダリング処理部は、所定形状の図形を形成する直線若しくは曲線に基づいてレンダリング処理を実行するための視点を前記所定の視差数以上設定することで、前記視差画像群を生成する」の構成が対応していない。 請求項15についても同様である。 (格納制御部が、レンダリング処理部が生成した、複数の立体表示装置の所定の視差数のうち最大視差数以上の視差画像群を記憶部に格納させるものであるのにかかわらず、レンダリング処理部は、レンダリング処理を実行するための視点を所定の視差数以上設定し視差画像群を生成すると特定されているのみである。) 2.当審拒絶理由の判断 平成28年10月18日付けの手続補正書によって、請求項1及び請求項15が「所定形状の図形を形成する直線若しくは曲線に基づいてレンダリング処理を実行するための視点を前記最大視差数以上設定することで、」と補正されたことで、拒絶の理由は解消した。 第5.むすび 以上のとおり、本願の請求項1ないし15に係る発明は、原査定の拒絶理由によっては拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-12-12 |
出願番号 | 特願2012-281813(P2012-281813) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06T)
P 1 8・ 537- WY (G06T) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 真木 健彦 |
特許庁審判長 |
渡邊 聡 |
特許庁審判官 |
清水 正一 小池 正彦 |
発明の名称 | 画像処理システムおよび画像処理方法 |
代理人 | 特許業務法人虎ノ門知的財産事務所 |