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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01N |
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管理番号 | 1322735 |
審判番号 | 不服2016-3870 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-03-14 |
確定日 | 2017-01-10 |
事件の表示 | 特願2012- 19851「粒子径計測装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月19日出願公開、特開2013-160514、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成24年2月1日を出願日とする出願であって,平成27年7月16日付けで拒絶理由が通知され,同年9月28日に手続補正がなされ,同年12月11日付けで拒絶査定がなされ,平成28年3月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同年10月14日に当審において面接審理を行い、同月17日付けで当審からの拒絶理由(以下、当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月8日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-3に係る発明は、平成28年11月8日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。また、下線は補正箇所を示す。)。 「 【請求項1】 被測定粒子群を含む被測定物を通過させる測定空間に測定光を出射する光源と、 前記光源からの測定光を前記被測定物に照射することにより発生する光強度分布をN個の光検出素子で検出する検出器と、 N個の光検出素子からのN個のアナログ信号をN個の二値化信号に変換させた後、N個の二値化信号を出力する変換ハードウェアと、 前記変換ハードウェアからのN個の二値化信号に基づいて、各二値化信号についてそれぞれ前記被測定粒子が測定空間を通過したと認識する粒子個数計測部と、 N個の光検出素子の内のX個の光検出素子からのX個のアナログ信号を出力する出力ファームウェアと、前記出力ファームウェアからのX個のアナログ信号に基づいて、 各アナログ信号についてそれぞれ前記測定空間を通過した被測定粒子の粒子径区分を分類して、各粒子径区分における粒子個数を計測する粒子径計測部と、 前記粒子径計測部で計測された各粒子径区分における粒子個数を表示器に表示させるとともに、前記粒子個数計測部で計測された粒子個数を表示器に表示する制御が可能となっている表示制御部とを備える粒子径計測装置であって、 前記表示制御部は、前記粒子径計測で計測された全粒子個数に対する各粒子径区分における粒子個数の割合を円グラフで表示する制御が可能となっていることを特徴とする粒子径計測装置。 【請求項2】 X個のアナログ信号から得られた各粒子径区分における粒子個数の積算値を棒グラフで表示する機能を有しており、 前記粒子径計測部で計測した粒子を粒子径ごとの積算値で確認する場合には前記棒グラフ表示を、前記円グラフ表示と切り換えて選択表示することが可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の粒子径計測装置。 【請求項3】 前記表示制御部は、所定の時間区間での円グラフと、開始時間から現時間までの円グラフとを表示することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粒子径計測装置。」 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由の概要 「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項1?3 ・引用文献等1-5 1.特開平01-184442号公報 2.特開2003-177086号公報(周知技術を示す文献) 3.特表2006-511822号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2000-046719号公報 5.特開2002-316279号公報(周知技術を示す文献)」 2 原査定の理由の判断 (1)刊行物の記載事項 ア 刊行物1に記載された事項及び刊行物1に記載された発明について (ア) 「2 特許請求の範囲 被測定試料を複数個の流体流に分割して単一の光線の光路に分散して交差させる試料分割手段と、前記複数個の流体流中の粒子による散乱光をそれぞれ集光して光電変換する各複数個の集光光学系および光電変換素子とを備えてなる光散乱式粒子計数装置。」(第1頁左下欄4?10行) (イ) 「[実施例〕 第1図?第3図はこの発明の一実施例を示し、第1図において、試料空気は複数個の流れに分割され、レーザ光1の光路に紙面に垂直に交差され、複数個の照射領域4a、4b、・・・、4nが形成される。 これらの照射領域4a、4b、・・・、4nにおいて試料中の粒子によって生じた散乱光は、各照射領域4a、・・・、4nに対応して配置された複数個の集光光学系5a、5b、・・・、5nによって複数個の光電変換素子6a、6b、・・・、6nのそれぞれに入射される。 光電変換素子6a、6b、・・・、6nからそれぞれ出力される各系統の出力信号は、それぞれ信号保持回路7a、7b、・・・、7nに一時蓄積され、切換器8で順次読出すと同時に消去、次の信号の到来に備え待機する。 第2図は試料分割手段等の要部を示し、試料空気吸引口9より吸引した試料空気は、分配チャンバ10によってn個のノズル11へほぼ等量ずつ分配される。一列に配列されたノズル11の先端はレーザ光1の中心軸を通り、減圧ポンプ12に接続された排出口13に正対させる。n個のノズル11の先端から噴出した試料空気流は、シースエア吸引口14から吸引された清浄空気に包まれ、一様な、乱れの少ない流れとなり、排出口13へ流入する。 試料空気中の粒子15がレーザ光1と交差通過する際に散乱する散乱光16は、複数個の集光レンズでなる集光光学系5によってそれぞれ集光され、それぞれ独立した素子からなる光電変換素子アレイ6へ入射する。光電変換素子アレイの素子数はn個以上で、n個のノズル11のいずれから噴出された試料空気流に含まれる粒子の散乱光であっても、必ずいずれかの光電変換素子で捕捉される構造になっている。光電変換素子アレイ6のn個以上の光電変換素子はそれぞれ独立した電気量保持機能を持ち、外部から与えられる指示信号により、逐次、試料全量について出力し、そのあと次に到来する散乱光に対して待機状態となる。上記の読出し指示信号は、水晶振動子のような、周期が正確であって、かつ、同一変換素子に1個以上の粒子散乱光が蓄積されない程度に高速のものが好適である。 光電変換素子アレイ6から取出される信号は第3図のごときもので、この信号に基づき、そのパルス高から粒子の大きさを、パルス数から粒子数(吸引試料空気量で除せば個数濃度)を求めることができる。」(第2頁左上欄13行?右下欄17行) (ウ)上記(ア)、(イ)の記載事項を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。 「被測定試料を複数個の流体流に分割して単一の光線の光路に分散して交差させる試料分割手段と、前記複数個の流体流中の粒子による散乱光をそれぞれ集光して光電変換する各複数個の集光光学系および光電変換素子アレイ6とを備えてなる光散乱式粒子計数装置であって、 n個の光電変換素子アレイ6から取出される信号に基づき、そのパルス高から粒子の大きさを、パルス数から粒子数を求める装置。」(以下,「引用発明1」という。) イ 刊行物2には「粒子計数装置の計数方法」に関する発明が記載されている。 ウ 刊行物3には「空中浮遊病原体検出システム及び方法」に関する発明が記載されている。 エ 刊行物4には「粒子個数計測方法および粒子計測装置」に関する発明が記載されている。 オ 刊行物5には「レーザ加工方法およびレーザ加工装置」に関する発明が記載されている。 (2)対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「被測定試料」は、本願発明1の「被測定粒子群を含む被測定物」に相当する。 引用発明1は「被測定試料を複数個の流体流に分割して単一の光線の光路に分散して交差させる」のであるから、交差する部分において「被測定試料」が「光線の光路」と交差している。 また、引用発明1において、光源を備えており、「光線の光路」が光源からのものであることは明らかである。 そうすると引用発明1の「被測定試料を複数個の流体流に分割して単一の光線の光路に分散して交差させる」ことの光源は、本願発明1の「被測定粒子群を含む被測定物を通過させる測定空間に測定光を出射する光源」に相当する。 イ 散乱光は、測定するための光線の照射によるものであるから、引用発明1の「複数個の流体流中の粒子による散乱光をそれぞれ集光して光電変換する各複数個の集光光学系および光電変換素子アレイ6」は、本願発明1の「前記光源からの測定光を前記被測定物に照射することにより発生する光強度分布をN個の光検出素子で検出する検出器」に相当する。 ウ 引用発明1の「n個の光電変換素子アレイ6から取出される信号に基づき、そのパルス高から粒子の大きさを、パルス数から粒子数を求める装置」と、 本願発明1の「N個の光検出素子からのN個のアナログ信号をN個の二値化信号に変換させた後、N個の二値化信号を出力する変換ハードウェアと、 前記変換ハードウェアからのN個の二値化信号に基づいて、各二値化信号についてそれぞれ前記被測定粒子が測定空間を通過したと認識する粒子個数計測部と、 N個の光検出素子の内のX個の光検出素子からのX個のアナログ信号を出力する出力ファームウェアと、前記出力ファームウェアからのX個のアナログ信号に基づいて、 各アナログ信号についてそれぞれ前記測定空間を通過した被測定粒子の粒子径区分を分類して、各粒子径区分における粒子個数を計測する粒子径計測部と、 前記粒子径計測部で計測された各粒子径区分における粒子個数を表示器に表示させるとともに、前記粒子個数計測部で計測された粒子個数を表示器に表示する制御が可能となっている表示制御部とを備える粒子径計測装置」とは、 「N個の光検出素子からのN個の信号からの、粒子個数計測と粒子径計測をする構成を備えた、 粒子径計測装置」の点で共通する。 そうすると、両者は、 <一致点> 「測定粒子群を含む被測定物を通過させる測定空間に測定光を出射する光源と、 前記光源からの測定光を前記被測定物に照射することにより発生する光強度をN個の光検出素子で検出する検出器と、 N個の光検出素子からのN個の信号からの、粒子個数計測と粒子径計測をする構成を備えた、 粒子径計測装置。」 である点で一致し、以下の点で相違するといえる。 <相違点1> N個の光検出素子からのN個の信号からの、粒子個数計測と粒子径計測をする構成について、 本願発明1では、N個の信号は、光強度分布を検出するN個のアナログ信号であり、「N個のアナログ信号をN個の二値化信号に変換させた後、N個の二値化信号を出力する変換ハードウェアと、 前記変換ハードウェアからのN個の二値化信号に基づいて、各二値化信号についてそれぞれ前記被測定粒子が測定空間を通過したと認識する粒子個数計測部と、 N個の光検出素子の内のX個の光検出素子からのX個のアナログ信号を出力する出力ファームウェアと、前記出力ファームウェアからのX個のアナログ信号に基づいて、 各アナログ信号についてそれぞれ前記測定空間を通過した被測定粒子の粒子径区分を分類して、各粒子径区分における粒子個数を計測する粒子径計測部」であるのに対して、 引用発明1では、N個の信号について、光強度分布を検出するとも、N個のアナログ信号であるとも特定されていないが、そのパルス高から粒子の大きさを、パルス数から粒子数を求めるものであり、そのための構成は特定していない点 <相違点2> 本願発明1では、「粒子径計測部で計測された各粒子径区分における粒子個数を表示器に表示させるとともに、前記粒子個数計測部で計測された粒子個数を表示器に表示する制御が可能となっている表示制御部とを備え」、「前記表示制御部は、前記粒子径計測で計測された全粒子個数に対する各粒子径区分における粒子個数の割合を円グラフで表示する制御が可能となっている」のに対して、 引用発明1では、表示については特定していない点。 (3)判断 上記相違点について検討する。 ア 相違点1について 相違点1について検討するに、刊行物2?5のいずれにも、N個の信号は、光強度分布を検出するN個のアナログ信号であり、「N個のアナログ信号をN個の二値化信号に変換させた後、N個の二値化信号を出力する変換ハードウェアと、 前記変換ハードウェアからのN個の二値化信号に基づいて、各二値化信号についてそれぞれ前記被測定粒子が測定空間を通過したと認識する粒子個数計測部と、 N個の光検出素子の内のX個の光検出素子からのX個のアナログ信号を出力する出力ファームウェアと、前記出力ファームウェアからのX個のアナログ信号に基づいて、 各アナログ信号についてそれぞれ前記測定空間を通過した被測定粒子の粒子径区分を分類して、各粒子径区分における粒子個数を計測する粒子径計測部」からなる構成は記載されてなく、また、そのような構成を示唆する記載もない。 また、そのような構成が周知であるともいえない。 したがって、引用発明1において、本願発明1の上記相違点1に係る構成は、刊行物2?5に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 (4)小括 以上のとおりであるから、相違点2を検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明1及び刊行物2?5に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 また、本願発明2-3は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が引用発明1及び刊行物2?5に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 「理由1(特許法第36条第6項第2号違反について) 本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 1 請求項1には、「N個の光検出素子からのN個のアナログ信号をN個のデジタル信号に変換させた後、N個のデジタル信号を出力する変換ハードウェア」と記載されているが、ここでいう「デジタル信号に変換」とは2値化の意味なのか、それとも例えば256階調等の多値化も含むものなのか不明確である。 2 請求項1には、「・・・前記表示制御部は、全粒子個数に対する各粒子径区分における粒子個数の割合・・・・」と記載されているが、「全粒子個数」が「粒子個数計測部」で計測されたものなのか、「粒子径計測部」で計測されたものなのか明確でない。 3 請求項1には、「・・・前記粒子径計測部で計測された各粒子径区分における粒子個数を表示器に表示させるとともに、前記粒子個数計測部で計測された粒子個数を表示器に表示させることが可能となっている表示制御部とを備える粒子径計測装置であって、 前記表示制御部は、全粒子個数に対する各粒子径区分における粒子個数の割合を円グラフで表示させることが可能となっている・・・・」と記載されている。 しかし、ここでの「表示させることが可能」とは、表示させることが可能なソフトウエアをインストールすることができる、あるいは、表示させることが可能なソフトウエアをインストールすると表示させることができるという「表示制御部」の性能とも解釈することができるし、表示させることが可能なように制御するという「表示制御部」の制御内容とも解釈することができるので明確でない。 してみると、請求項1に係る発明と、請求項1を直接または間接に引用する請求項2?3に係る発明は、明確でない。」 2 当審拒絶理由の「理由1(特許法第36条第6項第2号)」の判断 平成28年11月8日付け手続補正書によって、本願の請求項1は「第2 本願発明」に記載したとおり補正された。 当審拒絶理由で指摘した記載不備1?3に対して、それぞれ「デジタル信号」が「二値化信号」と補正され、「全粒子個数に対する各粒子径区分における粒子個数の割合」が「前記粒子径計測で計測された全粒子個数に対する各粒子径区分における粒子個数の割合」と補正され、「表示させることが可能となっている表示制御部」が「表示する制御が可能となっている表示制御部」と補正されたことにより、請求項1に係る発明は明確となった。 また、本件補正前の請求項2?3に対応する本件補正後の請求項2?3に係る発明も明確となった。 よって、当審拒絶理由は解消した。 第5 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審で通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-12-21 |
出願番号 | 特願2012-19851(P2012-19851) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01N)
P 1 8・ 537- WY (G01N) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 磯田 真美、萩田 裕介、▲高▼見 重雄 |
特許庁審判長 |
郡山 順 |
特許庁審判官 |
▲高▼橋 祐介 信田 昌男 |
発明の名称 | 粒子径計測装置 |
代理人 | 江口 裕之 |
代理人 | 喜多 俊文 |
代理人 | 阿久津 好二 |