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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06T
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06T
管理番号 1322753
審判番号 不服2015-19095  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-23 
確定日 2017-01-10 
事件の表示 特願2012- 2805「画像処理プログラムおよび画像処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月22日出願公開、特開2013-142997、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願の手続の概要は以下のとおりである。

平成24年 1月11日 特許出願
平成26年12月22日 拒絶理由通知
平成27年 2月27日 意見書、手続補正書
平成27年 7月21日 拒絶査定
平成27年10月23日 審判請求、手続補正書
平成28年 1月 5日 前置報告
平成28年 3月11日 上申書

第2.平成27年10月23日付けの手続補正
1.特許請求の範囲の記載
平成27年10月23日付けの手続補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のように補正された。

「 第1画像および第2画像のうち、前記第2画像を用いず、前記第1画像のみから、画像処理のパラメータを算出しつつ、前記パラメータを用いて、前記第1画像に対し前記画像処理を実行するステップと、
前記第2画像を用いて前記パラメータを微調整し、当該微調整されたパラメータを用いて、前記第2画像に対し前記画像処理を実行するステップと
をコンピュータに実行させる、
画像処理プログラム。」

上記補正は、補正前の請求項1を引用する請求項4の
「前記第2画像に対し前記画像処理を実行するステップは、前記パラメータを微調整し、当該微調整されたパラメータを用いて、前記第2画像に対し前記画像処理を実行するステップ」
を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであ
る。
請求項8に対する補正も同様である。
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」とい
う。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.原査定の理由
拒絶査定の理由となった平成26年12月22日付けの拒絶理由通知の理由は、以下のとおりである。
「[理由1]
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1,2,4,5,7
・引用文献等 1
・備考
引用文献1(特に、段落【0066】-【0071】,【図6】参照)には、第1画像および第2画像のうちの第1画像(代表領域を含む画像データP3)から、画像処理のパラメータ(ノイズ低減処理、輪郭強調処理
(シャープネス処理)等のパラメータ)を算出しつつ、パラメータを用い
て、第1画像に対し画像処理を実行し、パラメータを用いて、第2画像(画像データP1等)に対し画像処理を実行することが記載されている。
よって、本願の請求項1に係る発明と、引用文献1に記載された発明は、発明の発明特定事項に差異がない。
本願の請求項2,4,5,7に係る発明についても、上記請求項1と同様である。

[理由2]
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1,2,4,5,7
・引用文献等 1
・備考
本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者
が容易に発明をすることができたものである。
本願の請求項2,4,5,7に係る発明についても、上記請求項1と同様に、
当業者が容易に発明をすることができたものである。

・請求項 3
・引用文献等 1,2
・備考
異なるタイムライン上の画像についても画像処理を行うことは周知である(例えば、引用文献2 段落【0022】-【0026】参照)から、本願の請求項3に係る発明についても、引用文献1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

・請求項 6
・引用文献等 1
・備考
画像処理を実行する指示を受け付けることは、当業者が必要に応じて適宜成し得る設計的事項にすぎないから、本願の請求項6に係る発明について
も、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


引 用 文 献 等 一 覧

1.特開2008-278354号公報
2.特開平6-311425号公報」

3.引用発明
上記引用文献1(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像して複数の画像データを取得する、連写機能を有する撮像手段と、
前記複数の画像データの各々から所定の対象物を検出する対象物検出手段と、
該対象物検出手段により検出された対象物の前記各画像データにおける領域を表わす領域情報を記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶された1つ以上の前記対象物を示す領域情報に基づい
て、1つの代表領域を選択する選択手段と、
該選択手段により選択された代表領域を表す領域情報に基づいて、該代表領域を含む画像データに対して画像処理を施す画像処理パラメータを算出する画像処理パラメータ算出手段と、
前記連写により取得された全ての画像データに対して、前記画像処理パラメータ算出手段により算出された画像処理パラメータを適用して画像処理を施す画像処理手段とを備えてなることを特徴とする撮像装置。」

(2)「【発明の効果】
【0011】
本発明の撮像装置によれば、連写により取得された全ての画像データに対して、対象物領域に基づいて算出された同一の画像処理パラメータを適用するので、連写時に取得した画像において顔等の対象物が未検出の画像があったときでも、連写時に取得した全ての画像を対象物に照準の合った最適な画質にすることができると共に、連写中、画角にずれ等が生じた場合であっても全ての画像を安定した画質にすることができる。さらに1つの画像データに対してのみ画像処理パラメータを算出すればよいので、連写における処理を高速化することができる。」

(3)「 【0058】
次に、以上の構成のデジタルカメラ1において連写時に行われる処理について説明する。図5は顔検出連写モードが選択されたときのデジタルカメラ1の連写処理のフローチャート、図6は連写処理を説明する図である。なお本実施形態では連写の一例として撮影枚数を5枚として以下説明する。
……
【0066】
上記のようにして代表領域(本実施形態では顔F3の領域)を選択すると(ステップS7)、次に、この代表領域を含む画像データP3に対して画像処理パラメータ算出部81Aが画像処理パラメータとして、ホワイトバランスの調整処理のパラメータ(WBゲイン)、ノイズ低減処理のパラメータ、輪郭強調処理(シャープネス処理)のパラメータをそれぞれ算出する(ス
テップS8)。
【0067】
そして画像処理部68が、図6に示す如く、連写により取得した全ての画像データP1?P5に対して画像処理を施す(ステップS9)。ここで本発明において特徴的なのは、この画像処理部68が、選択部80により上述のように選択された代表領域(本実施形態では顔F3の領域)を含む画像データP3に対して画像処理パラメータ算出部81Aが算出した画像処理パラ
メータすなわちホワイトバランスの調整処理、ノイズ低減処理、輪郭強調処理(シャープネス処理)のパラメータを上記全ての画像データP1?P5に適用して画像処理を施していることである。
【0068】
こうすることにより、図6中に示すように、例えば人物が下を向く等して顔が検出できなかった画像データP4においても、顔F3が検出されたときの画像データP3に基づいて算出された画像処理パラメータを適用して画像処理が施されるので、顔領域付近に明るさ(輝度)やピント(合焦位置)、ホワイトバランス等の照準のあった画像を取得することができる。
【0069】
そしてCPU75は、ステップS9にて画像処理が施された画像データ
を、それぞれメディア制御部67を介して外部記録メディア70に記録する(ステップS10)。なおこのとき画像処理が施された本画像データに対してさらに圧縮/伸長処理部65によって圧縮処理が施されて画像ファイルが生成されてもよい。
【0070】
そしてCPU75は、メディア制御部67を介してステップS10にて外部記録メディア70に記録された画像ファイルを読み出し、表示制御部71を介して液晶モニタ18に一覧表示する(ステップS11)。このようにしてデジタルカメラ1は、被写体の連写を行う。
【0071】
以上のようなデジタルカメラ1によれば、連写により取得された全ての画像データP1?P5に対して、顔領域に基づいて算出された同一の画像処理パラメータを適用するので、連写時に取得した画像P1?P5において顔Fが未検出の画像P4があったときでも、連写時に取得した全ての画像P1?P5を顔に照準の合った最適な画質にすることができると共に、連写中、画角にずれ等が生じた場合であっても全ての画像P1?P5を安定した画質にすることができる。さらに1つの画像データP3に対してのみ画像処理パラメータを算出すればよいので、連写における処理を高速化することができ
る。」

したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

被写体を撮像して複数の画像データを取得する撮像手段と、
画像データに対して画像処理を施す画像処理パラメータを、1つの画像
データに対してのみ算出する画像処理パラメータ算出手段と、
全ての画像データに対して、前記画像処理パラメータ算出手段により算出された画像処理パラメータを適用して画像処理を施す画像処理手段とを備えてなることを特徴とする撮像装置。

4.対比
引用発明の「画像データに対して画像処理を施す画像処理パラメータを、1つの画像データに対してのみ算出する」とある「1つの画像データ」は、その画像のみから画像処理のパラメータを算出するので、本願補正発明の
「前記第1画像のみから、画像処理のパラメータを算出しつつ」とある「第1画像」に対応し、引用発明の「複数の画像データ」のうち、「1つの画像データ」以外の画像データのいずれかが、本願補正発明の「第2画像」に対応する。
引用発明は、「全ての画像データに対して、前記画像処理パラメータ算出手段により算出された画像処理パラメータを適用して画像処理を施す」とするものであるから、本願補正発明が「前記パラメータを用いて、前記第1画像に対し前記画像処理を実行する」とする点、及び「第2画像」に対し画像処理を実行する点で共通する。
引用発明は、画像処理を施す画像処理手段を備えてなることを特徴とする撮像装置であり、本願補正発明は画像処理プログラムであるので、両者は、画像処理に関する発明である点で共通する。
したがって、本願補正発明と引用発明とを対比すると、以下の点で一致
し、また相違する。

一致点
第1画像および第2画像のうち、前記第2画像を用いず、前記第1画像のみから、画像処理のパラメータを算出しつつ、前記パラメータを用いて、前記第1画像に対し前記画像処理を実行し、
前記第2画像に対し前記画像処理を実行する
画像処理に関する発明。

相違点1
本願補正発明はコンピュータで実行する画像処理プログラムであるのに対して、引用発明は画像処理を施す画像処理手段を備えてなることを特徴とする撮像装置である点。

相違点2
第2画像に対する画像処理が、本願補正発明は「前記第2画像を用いて前記パラメータを微調整し、当該微調整されたパラメータを用いて、前記第2画像に対し前記画像処理を実行する」ものであるのに対して、引用発明は微調整することについて特定がない点。

5.判断
上記相違点について検討する。

相違点1について
画像処理をコンピュータで実行することは周知のことであり、当業者であれば、引用発明の画像処理をコンピュータで実行させる画像処理プログラムを開発することに、困難な点はない。

相違点2について
前置報告書において
「 しかしながら、自動的に決定された、ある程度きれいに修整された(一定品質の)画像を取得可能とする修整パラメータについて、補正したイメージ画像を表示するなど画像を用いて好み等により微調整することは、当業者が適宜行うことのできる設計的事項にすぎない(例えば、引用文献3 段落[0065]-[0072],[0080]参照)から、引用文献1に記載された発明において、画像を用いてパラメータを微調整する構成とし、本願の請求項1に係る発明とすることは、当業者が容易に成し得たことであ
る。」
とあるように、引用文献3として引用された特開2000-215306号公報には、微調整を行うこと自体は記載されている。
しかし、引用文献3のものは、操作者が画像を目視して微調整を行うものであって、コンピュータが画像を用いてパラメータを微調整するものではないから、引用発明を引用文献3のもののような微調整を行うものとしても、本願補正発明と同様なものとはならない。
また、引用文献2にも、本願補正発明のようにして微調整を行うことは、記載も示唆もされていない。

したがって、本願補正発明は、引用発明と同一の発明ではなく、また、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。
また、他に拒絶の理由を発見しない。
請求項8に係る発明は、
「……前記第2画像を用いて前記パラメータを微調整し、当該微調整されたパラメータを用いて、前記第2画像に対し前記画像処理を実行する第2画像処理部と
を備える、
画像処理装置。」
であるから、本願補正発明と同様に、拒絶の理由を発見しない。他の請求項は、請求項1または8を引用するものであるから、それらの請求項に係る発明についても同様である。

6.むすび(手続補正について)
以上のとおり、平成27年10月23日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、独立して特許を受けることができるものであり、この手続補正は適法なものである。

第3.本願発明
上記「第2」のとおり、平成27年10月23日付けの手続補正は適法なものであるから、本願の請求項1-9に係る発明は、この手続補正によって補正された特許請求の範囲の各請求項に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして上記「第2」と同様の理由で、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-27 
出願番号 特願2012-2805(P2012-2805)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G06T)
P 1 8・ 575- WY (G06T)
P 1 8・ 121- WY (G06T)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 実  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 加藤 恵一
水野 恵雄
発明の名称 画像処理プログラムおよび画像処理装置  
代理人 立花 顕治  
代理人 松井 宏記  
代理人 山田 威一郎  
代理人 田中 順也  

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