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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1322808
審判番号 不服2015-22089  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-14 
確定日 2017-01-10 
事件の表示 特願2015- 67171「プログラム、制御方法及びサーバ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月27日出願公開、特開2016-185253、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月27日の出願であって、同年7月17日付けで手続補正書が提出され、同年9月16日付けでで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月14日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において、平成28年9月15日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対し、同年10月17日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1乃至10に係る発明は、上記平成28年10月17日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める(以下請求項1乃至10に係る発明を、それぞれ、「本願発明1」、乃至「本願発明10」といい、これらを総称して「本願発明」という。)。
「【請求項1】
端末装置と通信可能なコンピュータに、
前記端末装置に、ユーザの特性のいずれかを判定する選択を要求するステップと、
前記端末装置に前記選択に応じたゲームを提供するステップと、
前記ゲームの結果に基づいて判定される前記ユーザの特性の度合いを算出するステップと、
前記ユーザと、前記算出された前記ユーザの特性の度合いに応じたゲーム媒体とを対応付けて記憶するステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項2】
請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記ゲーム中の前記ユーザの動作情報を前記端末装置のセンサから取得するステップを更に実行させ、
前記算出するステップは、更に前記動作情報に基づいて前記特性の度合いを算出することを含む、プログラム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプログラムにおいて、
前記特性に応じたゲーム媒体とは、前記特性とは反対の特性を有するゲーム媒体である、プログラム。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項に記載のプログラムにおいて、
前記算出するステップは、更に前記ユーザによる他のユーザとの交流状況に基づいて前記特性の度合いを算出することを含む、プログラム。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載のプログラムにおいて、
前記算出するステップは更に、前記特性の度合いに応じて前記特性を数値化した値を判定することを含み、
前記記憶するステップは、前記値が高いほど、前記ユーザに対応付けるゲーム媒体の価値を高くすることを含む、プログラム。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載のプログラムにおいて、
前記特性は、思考パターン、タイプ又は性格の少なくとも1つを含む、プログラム。
【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項に記載のプログラムにおいて、
前記記憶するステップは更に、前記特性の度合いに応じてどのようにゲームを進行するかのアドバイスを対応付けることを含む、プログラム。
【請求項8】
請求項1?7のいずれか一項に記載のプログラムにおいて、
前記判定される特性は、互いに反対な2つの特性から選択される、プログラム。
【請求項9】
提供部により、端末装置にユーザの特性のいずれかを判定する選択を要求し、前記端末装置に前記選択に応じたゲームを提供するステップと、
判定部により、前記ゲームの結果に基づいて判定される前記ユーザの特性の度合いを算出するステップと、
記憶部により、前記ユーザと、前記算出された前記ユーザの特性の度合いに応じたゲーム媒体とを対応付けて記憶するステップと、
を有する制御方法。
【請求項10】
端末装置にユーザの特性のいずれかを判定する選択を要求し、前記端末装置に前記選択に応じたゲームを提供する提供部と、
前記ゲームの結果に基づいて判定される前記ユーザの特性の度合いを算出する判定部と、
前記ユーザと、前記算出された前記ユーザの特性の度合いに応じたゲーム媒体とを対応付けて記憶する記憶部と、
を有するサーバ装置。」


第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1、9-10
・引用文献等 1

・請求項 2-3
・引用文献等 1-2

・請求項 4-7
・引用文献等 1-3

<引用文献等一覧>
1.特開平11-076608号公報
2.特開2012-105902号公報
3.特開2002-215552号公報

2.原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項
ア.刊行物1
本願の出願日前である平成11年3月23日に頒布された特開平11-76608号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項5】 表示装置を具備したコンピュータをビデオゲーム装置として機能させるゲームプログラムがコンピュータ可読の形態で記録された記録媒体であって、前記ゲームプログラムが、
遊技者によって操作されるプレイヤキャラクタと会話または対戦を行う複数の相手キャラクタ,及び前記プレイヤキャラクタが行動するときの行動環境をゲームシナリオに従って前記表示装置に表示させる処理、
前記プレイヤキャラクタが応対すべき所定の選択肢のいずれかに人間の性格を考慮した性格別ポイントを対応付けるとともに各選択肢を遊技者に提示する処理、
前記提示に対して応対がある度に当該応対結果に対応する性格別ポイントを累積する処理、
この性格別ポイントの累積値に基づいて遊技者の性格を類型化する処理、前記プレイヤキャラクタに対する相手キャラクタの会話または対戦の内容及び前記行動環境の少なくとも一方を前記類型化された性格に応じた内容に動的に変更する処理、
を前記コンピュータに実行させるものであることを特徴とする記録媒体。」
(イ)「【0004】本発明は、かかる従来の問題点を解消すべく、RPGにおいて遊技者の知らない間に性格診断を行いながらその診断結果に基づいてゲームの展開を制御して面白さを増大させるゲームの展開制御方法を提供することにある。本発明の他の課題は、上記ゲームの展開制御方法の実施に適したビデオゲーム装置、及びコンピュータと一体になって特徴的なビデオゲームを実現する記録媒体を提供することにある。」
(ウ)「【0021】すなわち、このビデオゲーム装置2は、キャラクタ表示制御部71、指示解読部72、プレイヤキャラクタ管理部73、相手キャラクタ管理部74、選択肢管理部75、性格別ポイント管理部76、性格別ポイント格納部77、性格類型化部78の各機能ブロックを含んで構成される。
【0022】キャラクタ表示制御部71は、遊技者により操作されるプレイヤキャラクタ,複数の相手キャラクタのオブジェクトをオブジェクトボックス711に保持しており、ゲームシナリオに従って行動環境作成部712で作成した行動環境上に、各キャラクタと後述する選択肢管理部75からの選択肢の選択画面を随時重畳させてディスプレイ装置25に表示させるものである。ここで行動環境とは、プレイヤキャラクタが行動するときの環境、例えば店舗や道路、その他の背景環境等をいう。
【0023】指示解読部72は、コントローラ52からの指示内容を解読して所要の制御を行う。ここでの指示内容としては、ゲーム開始/中断/再開/終了、プレイヤキャラクタの挙動指示等のような遊技上不可欠なもののほか、選択肢の選択によるプレイヤキャラクタ(遊技者の意図)の言動特定等のようなものがある。指示解読部72は、また、ゲーム開始ないし再開時にはCD-ROM44内のゲームプログラムやメモリカード53内のセーブデータをメインメモリ13に展開してゲーム遂行に必要な環境を整える。また、ゲーム中断または終了時にはそれまでの性格別ポイント等のゲームデータをメモリカード53にセーブする。
【0024】プレイヤキャラクタ管理部73は、指示解読部72の解読結果がプレイヤキャラクタの挙動指示である場合に、ディスプレイ装置25に表示されているプレイヤキャラクタにその挙動指示に対応するアクションをおこさせる。
【0025】相手キャラクタ管理部74は、複数の相手キャラクタの挙動、言動等をキャラクタ別に管理するとともに各相手キャラクタの挙動や言動を遊技者によらず、後述の性格類型化部78の出力に基づいて自律的に制御するものである。ここで相手キャラクタには、プレイヤキャラクタとの対戦相手となるキャラクタ、対戦は行わないがプレイヤキャラクタと会話を行うキャラクタ、一方的にプレイヤキャラクタに話しかけるキャラクタ、プレイヤキャラクタとの会話は行わないが種々の個性を発揮するキャラクタ、対戦も会話も行わずに第三者として登場するキャラクタ、ゲーム終了時におまけで登場するキャラクタ等がある。
【0026】選択肢管理部75には、遊技者への提示対象となる複数の選択肢を有する設問(どの道を最先に通るか等)、複数の選択肢からなるガイダンス情報とその回答、ゲームシナリオに則ってプレイヤキャラクタが相手キャラクタに話しかける会話内容の選択肢、その他の選択肢が保持されており、各選択肢の一部には、それぞれ人間の性格を考慮した性格別ポイントが対応付けられている。ここで考慮する人間の性格として、本実施形態では、「真面目」、「ひねくれ」、「几帳面(まめ)」、「ユニーク」、「えっち」の5つを定めている。そして、遊技者が選択可能な選択肢のうち、優等生的なもの、あるいは正解と思われるものに「真面目」を表す記号m、比較的嫌みと思われるものに「ひねくれ」を表す記号h、面白い(おふざけ)と思われるものに「ユニーク」を表す記号o、えっちなものに「えっち」を表す記号eを設定し、それぞれにポイント加点式を割り付けておく。
【0027】例えば、図3の例では、プレイヤキャラクタ(名称B:遊技者)が喫茶店に入った場合の会話の選択肢を示したもので、「はじめましてBです」の選択肢は、比較的普通の内容なので「m+1(1点増加させる式)」、「君、ちょっと変わっているね」の選択肢は、かなりひねくれた内容なので「h+2」、「じゃあレモンティー1つ」の選択肢は、ユニークな内容なので「o+2」が割り付けられている。選択肢に割り付けられた式は、遊技者が最先に選択したものが有効となる。図示の例では、ひねくれた内容の選択肢についての性格別ポイントが加算されるようになる。
【0028】また、図4の例では、必ずしもデータセーブを行う必要がない場面であるにも拘わらず、1回目、2回目、・・・と、データセーブする選択肢が選ばれている。この選択肢は、かなり几帳面(まめ)な内容なので「k+3」が割り付けられる。図5は、駅の切符売り場での選択肢であり、切符売り場に、二人の女の子がいることを想定している。2番目及び3番目の選択肢はえっちな内容なので、それぞれ「e+2」が割り付けられている。また、各選択肢に必ず性格別ポイントが付けられるものではなく、一部には性格別ポイントが付かないものも混在している。
【0029】なお、性格別ポイントは、通常、選択肢の内容に応じた値に割り付けられるが、選択肢によってはランダムな値に割り付けられる場合もある。例えば、同一内容の複数の会話が種々の場面で交わされる場合において、ある会話における選択肢についての性格別ポイントと他の会話における選択肢についての性格別ポイントとを場面毎に乱数的に変化させたり、あるいは、ゲーム過程で取得した特定の機能アイテムを使用する度に、ポイントを割り付けるべき性格をランダムに変えたりする場合がある。後者の例の場合は、例えばポイント加点式として「x+5」をある特定の選択肢に割り付けておき、機能アイテムに応じて性格を表す「x」を変えるようにする。但し、この場合は、どの性格を割り当てたかを画面表示を通じて遊技者に提示する。このように、性格別ポイントをランダム値にする場面を用意することで、性格診断の手法により変化をもたせ、ゲーム全体の面白さを高めることができるようになる。
【0030】性格別ポイント管理部76は、ゲームシナリオに従って、上記選択肢をキャラクタ表示制御部71、ディスプレイ装置25を通じて遊技者に提示させる。また、これらの選択肢に対して遊技者が応対する度に、選択肢に対応付けられた性格別ポイントを性格別ポイント格納部77に累積する。この性格別ポイント格納部77の内容の一例を示したのが図6である。
【0031】性格類型化部78は、性格別ポイント格納部77に累積された性格別ポイントから遊技者の性格を上記5つのいずれかに類型化する。具体的には、累積値の最も高い性格別ポイントに対応する性格を、遊技者の性格と認定する。図6の例からは、「えっち」が認定されることになる。この認定結果は、相手キャラクタ管理部74に通知される。相手キャラクタ管理部74は、認定された性格に応じて表示すべき相手キャラクタの会話内容を変える。このことを例示したのが図7(a)?(d)である。ここでは、認定された性格に応じて、ある宿屋の主人がプレイヤキャクタに提示する宿賃が変化する様子を表している。(a)は「真面目」の場合、(b)は「ひねくれ」の場合、(c)は「ユニーク」の場合、(d)は「えっち」の場合である。
【0032】次に、以上のように構成されるビデオゲーム装置2のゲーム手順を図8を参照して説明する。図8において、コントローラ52を通じてゲーム開始または再開が指示されると(ステップS101:Yes)、指示解読部72は、新規ゲームか継続かを判定する(ステップS102)。新規ゲームの場合はその旨をキャラクタ表示制御部71に伝えて必要な項目を設定するための初期設定画面を表示させる(ステップS103)。その後、遊技者の名前登録を行い(ステップS104)、キャラクタや行動環境の画像を表示させる(ステップS105)。これにより、遊技者はコントローラ52を通じてプレイヤキャラクタを操作し、ゲームを開始することが可能になる。一方、ステップS102において、継続と判定した場合は、当該遊技者に関わるセーブデータを読み出し(ステップS102:継続、S106)、中断時の画面を表示させる(ステップS107)。これにより、遊技者は、中断した時点からのゲーム再開が可能になる。
【0033】ゲームシナリオに従って遊技者からのコントローラ52の操作内容を実行するとともに(ステップS108)、ゲーム中断または終了が指示されたかどうか、性格のチェックが指示されたかどうかを常時監視する(ステップS109,S110)。性格のチェックは、現在の性格別ポイントがどの程度かを遊技者の意思でチェックするものである。これは、例えば行動環境の画像中に占い館を設けておき、プレイヤキャラクタをこの占い館に訪問させることによって行う。これにるいては後述する。
【0034】ゲーム中断等及び性格チェックが指示されない場合において(ステップS109:No、S110:No)、会話表示がなされ、且つその会話に選択肢がある場合は(ステップS111:Yes、S112:Yes)、性格別ポイント管理部76において選択肢を特定し、対応する性格別ポイントを累積する(ステップS113,S114)。以上の処理をゲームの中断等がコントローラ52を通じて指示されるまで繰り返し(ステップS109:No)、ゲームの中断等が指示された場合はデータセーブを行って処理を終える(ステップS109:Yes、S115)。
【0035】図9は、ステップS110において性格チェックを行う場合の手順図、図10は、この性格チェックを行う場合の占い館の表示画面例を表した図である。すなわち、プレイヤキャラクタが占い館に入ることによって、性格別ポイント管理部76が性格別ポイントを読み出し(ステップS201)、累積値が最も高い性格別ポイントを特定して類型化を行う(ステップS202)。そして、その性格に応じたメッセージを音響効果と共に、図10に示すような形態で画面表示する(ステップS203)。遊技者による表示終了指示後は、図8のステップ108に戻る(ステップS204)。
【0036】ゲームストーリが完結した場合は、相手キャラクタ管理部74がおまけのキャラクタを選定して画面表示させるようにする。このとき、おまけキャラクタから、上記のようにして類型化した性格に応じた台詞を遊技者に提示する。このようにすることで、ゲームの面白さを増大させることができる。
【0037】なお、上記例では、会話の選択肢のみに基づいて遊技者の性格を診断する場合について説明したが、会話の選択肢以外の他の選択肢を組み合わせて遊技者の性格を診断することも可能である。例えばプレイヤキャラクタが行動するときの行動環境、具体的には店舗や道路等において、どの店舗に行くか、あるいはどの道を最先に通るか等の選択肢に性格別ポイントを割り付けておき、会話の選択と併せてこれらの行動環境を選択する際にも性格別ポイントが増加するようにする。このようにすれば、遊技者が選択肢を選択する場面が多くなり、遊技者の心理状態をより忠実に性格に反映できるようになる。」
(ウ)上記(ア)より、記録媒体に、コンピュータ可読の形態で記録されたゲームプログラムは、「表示装置を具備したコンピュータをビデオゲーム装置として機能させるゲームプログラムが、遊技者によって操作されるプレイヤキャラクタと会話または対戦を行う複数の相手キャラクタ、及び前記プレイヤキャラクタが行動するときの行動環境をゲームシナリオに従って前記表示装置に表示させる処理、前記プレイヤキャラクタが応対すべき所定の選択肢のいずれかに人間の性格を考慮した性格別ポイントを対応付けるとともに各選択肢を遊技者に提示する処理、前記提示に対して応対がある度に当該応対結果に対応する性格別ポイントを累積する処理、この性格別ポイントの累積値に基づいて遊技者の性格を類型化する処理、前記プレイヤキャラクタに対する相手キャラクタの会話または対戦の内容及び前記行動環境の少なくとも一方を前記類型化された性格に応じた内容に動的に変更する処理、を前記コンピュータに実行させるものである、ゲームプログラム。」といえる。

そうすると、上記(ア)乃至(ウ)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「表示装置を具備したコンピュータをビデオゲーム装置として機能させるゲームプログラムが、遊技者によって操作されるプレイヤキャラクタと会話または対戦を行う複数の相手キャラクタ、及び前記プレイヤキャラクタが行動するときの行動環境をゲームシナリオに従って前記表示装置に表示させる処理、前記プレイヤキャラクタが応対すべき所定の選択肢のいずれかに人間の性格を考慮した性格別ポイントを対応付けるとともに各選択肢を遊技者に提示する処理、前記提示に対して応対がある度に当該応対結果に対応する性格別ポイントを累積する処理、この性格別ポイントの累積値に基づいて遊技者の性格を類型化する処理、前記プレイヤキャラクタに対する相手キャラクタの会話または対戦の内容及び前記行動環境の少なくとも一方を前記類型化された性格に応じた内容に動的に変更する処理、を前記コンピュータに実行させるものである、ゲームプログラム。」

イ.刊行物2
本願の出願日前である平成24年6月7日に頒布された特開2012-105902号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【0010】
本発明の第1の側面は,入力装置に入力された指令情報に基づいて動作するキャラクタを,表示装置に表示するゲームを実行可能なゲーム装置に関する。
本発明に係るゲーム装置は,称号データベース,モーション情報データベース,称号データ抽出部,称号記憶部,動作態様決定部,及びキャラクタ表示部を含む。
称号データベースは,ゲームの進行上設定されている複数の特定条件のそれぞれについて,その特定条件を達成した場合にキャラクタに対して付与される称号のデータを,関連付けて記憶している。
モーション情報データベースは,称号データベースに記憶されている複数の称号のデータそれぞれについて,その称号が付与されたキャラクタの動作態様を決定するモーション情報を,関連付けて記憶している
称号記憶部は,ゲームの進行上キャラクタがある特定条件を達成した場合には,その特定条件と関連付けて称号データベースに記憶されている称号を読み出す。
称号記憶部には,称号データ抽出部により読み出された称号のデータが記憶される
動作態様決定部は,称号記憶部に記憶されている称号の中から入力装置により選択入力された任意の称号と関連付けてモーション情報データベースに記憶されているモーション情報に基づいて,キャラクタの動作態様を決定する。
キャラクタ表示部は,動作態様決定部により決定された動作態様のキャラクタを表示装
置に表示する。
【0011】
このような構成を有することにより,本発明は,ゲームの進行に応じて取得可能な称号に応じて,キャラクタのモーションパターンを増やすとことができる。また,プレイヤは,任意の称号を選択することにより適宜キャラクタのモーションパターンを変化させることができる。従って,本発明によれば,RPGのようにプレイヤが一定のキャラクタを長期間使用してゲームを進行するような場合であっても,プレイヤが,使用キャラクタのモーションパターンに飽きてしまうことがないゲームを提供することができる。
【0012】
ここで,本発明においては,モーション情報を,キャラクタの動作内容を示すモーションデータとし,動作態様決定部は,称号記憶部に記憶されている称号の中から入力装置により選択入力された任意の称号と関連付けて前記モーション情報データベースに記憶されているモーションデータに基づいて,キャラクタの動作態様を決定し,キャラクタ表示部は,モーションデータを再生することにより,動作態様決定部により決定された動作態様のキャラクタを表示装置に表示することとしてもよい。
【0013】
本発明の好ましい形態において,モーション情報は,表示装置に表示されるキャラクタの各種動作の態様を決定するためのモーションパラメータである。
そして,本発明の好ましい形態においては,さらに,入力部に設けられたセンサキーによって,ゲーム装置に対する指令情報の入力が検知されたときの検知情報を抽出する検知情報抽出部を含む。
ここで,検知情報抽出部によって抽出される検知情報には,少なくとも,センサキーによって指令情報の入力が検知されたときのセンサキーに対する押圧力,センサキーによって指令情報の入力が検知された間隔,及び所定時間内においてセンサキーが指令情報の入力を検知した回数を含む。
この場合に,動作態様決定部は,称号記憶部に記憶されている称号の中から入力装置により選択入力された任意の称号と関連付けてモーション情報データベースに記憶されているモーションパラメータを,検知情報抽出部によって抽出された検知情報に基づいて変更し,キャラクタの各種動作の変更後のパラメータを求めることにより,キャラクタの動作態様を決定する。
【0014】
このような構成を有することにより,本発明は,例えばプレイヤの無意識のうちにセンサキーが連打されているような場合に,センサキーが連打されたという検知情報に基づいて,ユーザが操作するキャラクタのモーションパラメータを変更することができる。要するに,本発明は,ユーザのキー操作の癖という客観的な情報に基づいて,キャラクタのモーションパラメータを変更するものである。従って,本発明の好ましい形態によれば,プレイヤの性格を客観的に把握することができ,把握したプレイヤの客観的な性格に基づいて,操作キャラクタの動作のパタメータを変化させるゲームを提供することができる。さらに,本発明の好ましい形態によれば,プレイヤの無意識のうちにキャラクタのパラメータを変更することができるため,操作キャラクタのパラメータが,プレイヤの性格を反映しつつ,プレイヤの予想外の動作をするように設定されるゲームを提供することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態においては,性格データベース,性格モーションデータベース,キャラクタ性格決定部,性格モーション再生部をさらに有する。
性格データベースは,称号記憶部に記憶されている称号の中から入力装置により選択入力された任意の称号と関連付けてモーション情報データベースに記憶されているモーションパラメータが,動作態様決定部により変更された変化度と関連付けて,ゲームキャラクタの性格の情報を記憶している。
性格モーションデータベースは,性格データベースに記憶されているゲームキャラクタ
の性格の情報のそれぞれについて,キャラクタの動作内容を示すモーションデータを記憶している。
キャラクタ性格決定部は,称号記憶部に記憶されている称号の中から入力装置により選択入力された任意の称号と関連付けてモーション情報データベースに記憶されているモーションパラメータが,動作態様決定部により変更された変化度の情報に基づいて,前記性格データベースを参照し,そのキャラクタの性格を決定する。
性格モーション再生部は,前記キャラクタ性格決定部により決定されたキャラクタの性格と関連付けて記憶されているモーションデータを性格モーションデータベースから読み出し,表示装置において再生する。
【0016】
このような構成を有することにより,本発明の好ましい形態においては,プレイヤの性格に応じたキャラクタのモーションデータを再生することができるため,プレイヤがキャラクタに対して愛着を持つようになる。また,プレイヤの性格(キャラクタの性格)は,キーセンサによって検知された検知情報に応じてプレイヤの無意識のうちに決定されるものであるため,キャラクタの性格に基づくモーションデータはプレイヤの予想外のものが再生されることとなる。」

そうすると、上記(ア)の記載事項から、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「入力装置に入力された指令情報に基づいて動作するキャラクタを,表示装置に表示するゲームを実行可能なゲーム装置であって、
称号データベース,モーション情報データベース,称号データ抽出部,称号記憶部,動作態様決定部,及びキャラクタ表示部を含み、
性格データベース,性格モーションデータベース,キャラクタ性格決定部,性格モーション再生部をさらに有し、
キャラクタ性格決定部は,称号記憶部に記憶されている称号の中から入力装置により選択入力された任意の称号と関連付けてモーション情報データベースに記憶されているモーションパラメータが,動作態様決定部により変更された変化度の情報に基づいて,前記性格データベースを参照し,そのキャラクタの性格を決定する、ゲーム装置。」

ウ.刊行物3
本願の出願日前である平成14年8月2日に頒布された特開2002-215552号公報(以下「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項29】 通信回線を介して接続された複数のユーザー端末に対してオンラインによるコミュニケーションサービスを提供するためのプログラムであって、
コミュニケーションに参加しているメンバーの紹介情報を前記メンバーそれぞれのユーザー端末に提供する情報提供処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを含み、
前記情報提供処理は、前記メンバーの性格情報を、前記紹介情報の一部として提供する性格情報提供処理を含むことを特徴とするオンラインコミュニケーション用プログラム。
【請求項30】 前記メンバーが行った性格診断テストの結果を取得するテスト結果取得処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを含み、
前記性格情報提供処理では、その性格診断テストの結果が前記性格情報とされることを特徴とする請求項29記載のオンラインコミュニケーション用プログラム。
【請求項31】 前記メンバーの、他のメンバーの発言に対する返答率を取得する返答率取得処理と、
前記返答率を、所定の規則に従って前記性格情報に変換する第1変換処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラムを含むことを特徴とする請求項29記載のオンラインコミュニケーション用プログラム。」
(イ)「【0077】その結果、返答率データが存在すると判別された場合は、予め定められている規則にその返答率データを当てはめることにより性格情報が生成される(ステップ122)。ここで、性格情報は、例えば、返答率が高いほど面倒見がよく、その返答率が低いほど無関心といったように生成することができる。」

そうすると、上記(ア)及び(イ)の記載事項から、刊行物3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「通信回線を介して接続された複数のユーザー端末に対してオンラインによるコミュニケーションサービスを提供するためのプログラムであって、
コミュニケーションに参加しているメンバーの紹介情報を前記メンバーそれぞれのユーザー端末に提供する情報提供処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを含み、
前記情報提供処理は、前記メンバーの性格情報を、前記紹介情報の一部として提供する性格情報提供処理を含み、
前記メンバーが行った性格診断テストの結果を取得するテスト結果取得処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを含み、
前記性格情報提供処理では、その性格診断テストの結果が前記性格情報とされ、
前記メンバーの、他のメンバーの発言に対する返答率を取得する返答率取得処理と、
前記返答率を、所定の規則に従って前記性格情報に変換する第1変換処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラムを含むオンラインコミュニケーション用プログラム。」

(2)対比
そこで、本願発明1と引用発明1とを対比すると、
ア.後者の「表示装置を具備したコンピュータ」は、ビデオゲーム装置として機能するものであるから、前者の「端末装置」に相当する。
イ.後者の「遊戯者」、及び「ゲームプログラム」は、それぞれ、前者の「ユーザ」、及び「プログラム」に相当する。
ウ.後者の「遊戯者の性格」は、遊戯者の特性の一種であるから、「ユーザの特性」といえる。
エ.後者のゲームプログラムにより、表示装置を具備したコンピュータが、ビデオゲーム装置として機能するものであるから、「端末装置にゲームを提供するステップ」を有するといえる。
オ.後者の「選択肢」は、ゲームシナリオに従って表示装置に表示されたものであって、「応対結果」は、遊技者へ提示された前記選択肢に対する遊戯者が操作するプレイヤキャラクタの応対であるから、「ゲームの結果」といえる。そして、後者の「前記提示に対して応対がある度に当該応対結果に対応する性格別ポイントを累積する処理」は、「ユーザの特性の度合いを算出するステップ」といえる。

したがって、両者は、
「端末装置と、
前記端末装置にゲームを提供するステップと、
前記ゲームの結果に基づいて判定される前記ユーザの特性の度合いを算出するステップと、
を実行させるプログラム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明1が、端末装置と「通信可能なコンピュータ」に、実行させるプログラムであるのに対し、引用発明1では、表示装置を具備したコンピュータをビデオゲーム装置として機能させるゲームプログラムである点。

[相違点2]
本願発明1が、端末装置に、「ユーザの特性のいずれかを判定する選択を要求するステップ」と、端末装置に「前記選択に応じた」ゲームを提供するステップを備えているのに対し、引用発明1は、そのようなステップを有していない点。

[相違点3]
本願発明1が、「ユーザと、前記算出された前記ユーザの特性の度合いに応じたゲーム媒体とを対応付けて記憶するステップ」を備えているのに対し、引用発明1は、そのようなステップを備えていない点。

(3)判断
上記相違点2について検討する。
上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は、周知の技術事項ともいえないし、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
また、上記(1)イ.及びウ.のとおり、引用発明2及び引用発明3にも、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は示されていない。
そして、本願発明1は、上記相違点1乃至相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「ユーザにあった興趣性のある報酬を付与し、もってユーザがゲームを継続する動機を高めることができる。」(段落【0015】)という作用効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(4)本願発明2乃至10について
本願発明2乃至8は、本願発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであり、本願発明9及び10は、本願発明1の「プログラム」を、それぞれ、「制御方法」、「サーバ装置」とカテゴリーを変えたものであって、実質的に本願発明1と相違しないから、本願発明2乃至10は、上記(3)と同様の理由により、引用発明1乃至3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
理由1:この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1、9及び10の「いずれの特性」との特定だけでは、発明の詳細な説明に記載された「ユーザの特性」以外の特性も包含してしまう。
(2)請求項1、9及び10の「特性を判定する」との特定では、動作情報に基づいて判定する互いに反対の特性(【0048】?【0054】)も包含してしまう。
しかし、『動作情報に基づいて判定する互いに反対の特性(【0048】?【0054】)』は、「いずれの特性を判定するかの選択」は行わないし、「判定された特性に応じたゲーム媒体とを対応付けて記憶」しないから、矛盾することとなる。

理由2:この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1、9及び10の「いずれの特性」とは、何の特性なのか定かでない。また、「ゲームの結果に基づいてユーザの特性を判定するステップ」及び「判定された特性」における「特性」との関係も不明である。
(2)請求項1、9及び10の「特性を判定する」との特定では、『動作情報に基づいて互いに反対の特性を判定すること』(【0048】?【0054】)なのか、『ゲームの結果に基づいてユーザの特性(男の脳なのか女の脳なのか)の度合いを判定』(【0047】)なのか、定かでない。
(3)請求項6の「性別」には、「度合い」がないから、度合いを判定する特性として矛盾する。

理由3:この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 1?10
・引用文献等 1?3

<引用文献等一覧>
1.特開平11-76608号公報
2.特開2012-105902号公報
3.特開2002-215552号公報

2.当審拒絶理由の判断
(1)理由1及び理由2について
平成28年10月17日に提出された手続補正書において、上記第2のとおり、請求項1乃至10の記載は補正されたことにより、請求項1乃至10に係る発明の記載不備は解消された。

(2)理由3について
上記第3(3)のとおり、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は、上記いずれの引用文献にも記載されていないし、周知の技術事項ともいえないし、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
よって、本願発明1は、引用発明1乃至3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本願発明2乃至10も、上記第3(4)のとおり、引用発明1乃至3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

したがって、当審拒絶理由は解消した。


第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1乃至3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとものとすることはできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-27 
出願番号 特願2015-67171(P2015-67171)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
P 1 8・ 537- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 久則坪内 優佳大熊 靖夫  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
藤本 義仁
発明の名称 プログラム、制御方法及びサーバ装置  
代理人 杉村 憲司  
代理人 岡野 大和  

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