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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01H
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01H
管理番号 1322834
審判番号 不服2016-3600  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-08 
確定日 2017-01-10 
事件の表示 特願2012- 5437「リミットスイッチ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月25日出願公開、特開2013-145675、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年1月13日の出願であって、平成27年1月9日付けで手続補正がされ、平成27年9月4日付けで拒絶理由が通知され、平成27年11月6日付けで手続補正がされたが、平成27年12月2日付け(発送日:平成27年12月8日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して平成28年3月8日に拒絶査定不服審判が請求され、その請求と同時に手続補正がされ、その後、当審において平成28年10月13日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成28年11月21日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成28年11月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

[本願発明]
「【請求項1】
正面に開口部を有するハウジング内にスイッチ本体を固定するとともに、前記ハウジングの底面にリード線を引き込む接続孔を有する一方、前記スイッチ本体の正面を上下に複数段の階段状に仕切るとともに、各段に一対の固定接点端子を埋設し、前記スイッチ本体の天井面から露出する操作軸を軸心方向に駆動して接点を開閉するリミットスイッチであって、
上段に位置する固定接点端子を、下段に位置する固定接点端子よりも手前側に迫り出すように配置し、
前記スイッチ本体の正面の各段に埋設した固定接点端子の間に、突部を突設するとともに、
前記上段の下辺縁部に、正面下側へ傾斜する仕切り用リブを設けたことを特徴とするリミットスイッチ。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:実願昭51-130339号(実開昭53-46572号)のマイクロフィルム
刊行物2:実願平5-60715号(実開平7-27063号)のCD-ROM
刊行物3:特開昭58-181274号公報
刊行物4:特開2002-305810号公報

刊行物1に記載された発明(明細書第1ページ11行-同書第5ページ5行及び第1図-第4図)は、電気開閉器2とともにスイッチ本体を構成する蓋体21において、上段に位置する端子装置17と下段に位置する端子装置17との間に、上記上段に位置する端子装置17の下辺縁部に沿って仕切り用リブが突設されていない点で、請求項1に係る発明とは相違する。

しかしながら、刊行物2ないし4に記載されるように、上段と下段とに分かれて端子を配置する端子台において、上段側の端子と下段側の端子との間に突設した壁部を設けることは、従来周知の技術といえる(刊行物2の[0009]及び[図1]-[図3]における上部前壁21b、刊行物3の第3ページ右下欄1行-14行及びFIG.1-FIG.2におけるカバー条片15のカバー条片16との間にある壁部、刊行物4の[図1]に例示される階段部200aの階段部200bとの間にある壁部)。
そして、端子台において、上段側の端子と下段側の端子との間に突設した壁部を設けることによって、上段側の端子と下段側の端子との間の沿面距離が長くなるとの効果は、技術常識である。

したがって、上記刊行物1に記載された発明において、上記周知技術を採用し、上記蓋体21において、上記上段に位置する端子装置17と上記下段に位置する端子装置17との間に突設した壁部を設けること、すなわち、上記上段に位置する端子装置17の下辺縁部に沿って突設した壁部を設けることによって、上記上段に位置する端子装置17と上記下段に位置する端子装置17との間の沿面距離の増大を図ることは、当業者であれば容易に想到できたことである。

2 原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項
ア 刊行物1
原査定の拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物1(実願昭51-130339号(実開昭53-46572号)のマイクロフィルム)には、明細書及び図面の記載内容(特に明細書第1ページ12行ないし同書第5ページ5行及び第1図ないし第4図参照。)を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、リミットスイッチに関して次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

[引用発明]
「正面に開口部を有するケース1内に電気開閉器2を装着するとともに、前記ケース1の底面に電線7を引き込む導入口6を有する一方、前記電気開閉器2の正面を上下に複数段の階段状に仕切るとともに、各段に一対の端子8,8を埋設し、前記電気開閉器2の天井面から露出する操作体18を軸心方向に駆動して可動接点12及び固定接点13を開閉するリミットスイッチであって、
上段に位置する端子8,8を、下段に位置する端子8,8よりも手前側に迫り出すように配置し、
前記電気開閉器2の正面の各段に埋設した端子8,8の間に、囲壁22を突設するとともに、
前記上段の下辺縁部に、囲壁22を設けたリミットスイッチ。」

イ 刊行物2
(ア)原査定において周知技術を示す文献として引用され、本願出願前に頒布された刊行物である刊行物2(実願平5-60715号(実開平7-27063号)のCD-ROM)には、以下の事項が記載されている。
「また、図3に示すように、各仕切り壁21aと長手方向同位置に、上部前壁21bよりも前方(図3では下方)に突出する位置決め用突起21cを有している。」(段落【0009】)

(イ)刊行物2の【図1】及び【図2】からは、垂直な上部前壁21bが見て取れる。

ウ 刊行物3
原査定において周知技術を示す文献として引用され、本願出願前に頒布された刊行物である刊行物3(特開昭58-181274号公報)のFIG.2及び3からは、カバー条片15とカバー条片16との間に、垂直な壁部が見て取れる。

エ 刊行物4
原査定において周知技術を示す文献として引用され、本願出願前に頒布された刊行物である刊行物4(特開2002-305810号公報)の【図1】からは、階段部200aと階段部200bとの間に、垂直な壁部が見て取れる。

(2)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ケース1」は本願発明の「ハウジング」に相当し、以下同様に、「電気開閉器2」は「スイッチ本体」に、「装着」は「固定」に、「電線7」は「リード線」に、「導入口6」は「接続孔」に、「端子8,8」は「固定接点端子」に、「操作体18」は「操作軸」に、「可動接点12及び固定接点13を開閉する」は「接点を開閉する」ことに、「囲壁22を突設する」ことは「突部を突設する」ことに、それぞれ相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。

[一致点]
「正面に開口部を有するハウジング内にスイッチ本体を固定するとともに、前記ハウジングの底面にリード線を引き込む接続孔を有する一方、前記スイッチ本体の正面を上下に複数段の階段状に仕切るとともに、各段に一対の固定接点端子を埋設し、前記スイッチ本体の天井面から露出する操作軸を軸心方向に駆動して接点を開閉するリミットスイッチであって、
上段に位置する固定接点端子を、下段に位置する固定接点端子よりも手前側に迫り出すように配置し、
前記スイッチ本体の正面の各段に埋設した固定接点端子の間に、突部を突設するリミットスイッチ。」

[相違点]
本願発明は、「前記上段の下辺縁部に、正面下側へ傾斜する仕切り用リブを設けた」のに対し、引用発明は、このような構成を有しない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
刊行物2ないし4には、垂直な壁状のリブが記載されているものの、これに留まり「上段の下辺縁部に、正面下側へ傾斜する仕切り用リブ」は記載されておらず、「上段の下辺縁部に、正面下側へ傾斜する仕切り用リブ」を設けることが従来周知の技術であったとは認められない。
そして、本願発明は、「正面下側へ傾斜する仕切り用リブ」によって、垂直な壁状のリブでは達成できない程度で「延面距離が長くなる」(段落【0025】参照)という作用・効果を奏するものと認められ、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、引用発明及び刊行物2ないし4に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たことではない。

(4)小括
したがって、本願発明は引用発明及び刊行物2ないし4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願の請求項2ないし5に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、同様に、当業者が引用発明及び刊行物2ないし4に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

請求項1に「前記上段の下辺縁部に沿って仕切りリブを突設した」との記載があるが、「沿って」及び「突設」に関して、出願当初の明細書や特許請求の範囲には記載がなく、図面を参酌しても、「沿って」及び「突設」が、どのような状態なのか不明確である。
よって、請求項1に係る発明は明確でない。

2 当審拒絶理由の判断
平成28年11月21日付けの手続補正により、本願の請求項1の「前記上段の下辺縁部に沿って仕切りリブを突設した」との記載は「前記上段の下辺縁部に、正面下側へ傾斜する仕切り用リブを設けた」と補正された。
このことにより、請求項1に係る発明は明確となった。
よって、当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-28 
出願番号 特願2012-5437(P2012-5437)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01H)
P 1 8・ 537- WY (H01H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高橋 学  
特許庁審判長 阿部 利英
特許庁審判官 小関 峰夫
内田 博之
発明の名称 リミットスイッチ  
代理人 山田 卓二  
代理人 田中 光雄  
代理人 中嶋 隆宣  

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