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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1322866
審判番号 不服2015-16069  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-31 
確定日 2017-01-10 
事件の表示 特願2012- 79822「ゲーム機、それに用いる制御方法及び、コンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月10日出願公開、特開2013-208220、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成24年3月30日の出願であって、平成26年10月24日付けで拒絶理由が通知され、同年12月26日付けで手続補正がされ、平成27年5月29日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年6月2日)、これに対し、同年8月31日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、その後、当審において平成28年9月14日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)が通知され、同年11月7日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成28年11月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められる。本願の請求項1ないし6に係る発明(以下、順に「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
通信回線を介して接続された複数の端末間にて、各端末のプレイヤに対応する各プレイヤオブジェクトの移動に使用されるゲームフィールドをゲームの進行に利用するゲームシステムに適用され、前記複数の端末の一つとして機能することが可能なゲーム機であって、
前記ゲームフィールド内における各プレイヤオブジェクト間の距離を判別する距離判別手段と、
前記距離判別手段の判別結果に基づいて、いずれか一のプレイヤオブジェクトを基準として当該一のプレイヤオブジェクトを含む少なくとも2つのプレイヤオブジェクトが所定の距離内に存在している場合に満たされる所定の距離条件を満たしているか否か判別する距離条件判別手段と、
前記距離条件判別手段の判別結果に基づいて、前記所定の距離条件を満たす場合に、前記ゲームの進行に所定の特典を付与する特典付与手段と、を備え、
前記所定の距離内は、前記一のプレイヤオブジェクトからの距離に応じて複数の領域に分類され、
前記距離条件判別手段は、前記所定の距離条件を満たす各プレイヤオブジェクトのうち前記一のプレイヤオブジェクトとは別の他のプレイヤオブジェクトが位置する領域と前記一のプレイヤオブジェクトが位置する領域との間の位置関係を判別し、
前記特典付与手段は、前記所定の距離条件を満たす場合に、前記位置関係に応じて、前記所定の特典の内容を変更し、
前記距離条件判別手段は、前記ゲームフィールド内に存在する全てのプレイヤオブジェクトが前記所定の距離内に存在している場合に前記所定の距離条件を満たしたと判別する、ゲーム機。
【請求項2】
前記特典付与手段は、前記他のプレイヤオブジェクトが位置する領域が前記一のプレイヤオブジェクトが位置する領域に近いほど、前記所定の特典の利益が高まるように、前記位置関係に応じて前記所定の特典の内容を変更する、請求項1に記載のゲーム機。
【請求項3】
前記ゲームとして、前記ゲームフィールド中に攻撃対象のオブジェクトが出現し、各プレイヤオブジェクトによる前記攻撃対象のオブジェクトへの攻撃を進行に含むゲームが利用され、
前記特典付与手段は、前記所定の特典として、前記所定の距離条件を満たす各プレイヤオブジェクトの前記攻撃対象のオブジェクトに対する攻撃力が向上する特典を付与する、請求項1又は2に記載のゲーム機。
【請求項4】
前記特典付与手段は、前記所定の特典として、前記ゲーム中で選択可能なオプションが増加する特典を付与する、請求項1又は2に記載のゲーム機。
【請求項5】
通信回線を介して接続された複数の端末間にて、各端末のプレイヤに対応する各プレイヤオブジェクトの移動に使用されるゲームフィールドをゲームの進行に利用するゲームシステムに適用され、前記複数の端末の一つとして機能することが可能なゲーム機に組み込まれるコンピュータに、
前記ゲームフィールド内における各プレイヤオブジェクト間の距離を判別する距離判別工程と、
前記距離判別工程の判別結果に基づいて、いずれか一のプレイヤオブジェクトを基準として当該一のプレイヤオブジェクトを含む少なくとも2つのプレイヤオブジェクトが所定の距離内に存在している場合に満たされる所定の距離条件を満たしているか否か判別する距離条件判別工程と、
前記距離条件判別工程の判別結果に基づいて、前記所定の距離条件を満たす場合に、前記ゲームの進行に所定の特典を付与する特典付与工程と、を実行させ、
前記所定の距離内は、前記一のプレイヤオブジェクトからの距離に応じて複数の領域に分類され、
前記距離条件判別工程では、前記所定の距離条件を満たす各プレイヤオブジェクトのうち前記一のプレイヤオブジェクトとは別の他のプレイヤオブジェクトが位置する領域と前記一のプレイヤオブジェクトが位置する領域との間の位置関係が判別され、
前記特典付与工程では、前記所定の距離条件を満たす場合に、前記位置関係に応じて、前記所定の特典の内容が変更され、
前記距離条件判別工程では、前記ゲームフィールド内に存在する全てのプレイヤオブジェクトが前記所定の距離内に存在している場合に前記所定の距離条件を満たしたと判別される、制御方法。
【請求項6】
通信回線を介して接続された複数の端末間にて、各端末のプレイヤに対応する各プレイヤオブジェクトの移動に使用されるゲームフィールドをゲームの進行に利用するゲームシステムに適用され、前記複数の端末の一つとして機能することが可能なゲーム機に組み込まれるコンピュータを、
前記ゲームフィールド内における各プレイヤオブジェクト間の距離を判別する距離判別手段、前記距離判別手段の判別結果に基づいて、いずれか一のプレイヤオブジェクトを基準として当該一のプレイヤオブジェクトを含む少なくとも2つのプレイヤオブジェクトが所定の距離内に存在している場合に満たされる所定の距離条件を満たしているか否か判別する距離条件判別手段、及び、前記距離条件判別手段の判別結果に基づいて、前記所定の距離条件を満たす場合に、前記ゲームの進行に所定の特典を付与する特典付与手段として機能させるとともに、
前記所定の距離内は、前記一のプレイヤオブジェクトからの距離に応じて複数の領域に分類され、
前記距離条件判別手段を、前記所定の距離条件を満たす各プレイヤオブジェクトのうち前記一のプレイヤオブジェクトとは別の他のプレイヤオブジェクトが位置する領域と前記一のプレイヤオブジェクトが位置する領域との間の位置関係を判別する手段として、前記特典付与手段を、前記所定の距離条件を満たす場合に、前記位置関係に応じて、前記所定の特典の内容を変更する手段として、前記距離条件判別手段を、前記ゲームフィールド内に存在する全てのプレイヤオブジェクトが前記所定の距離内に存在している場合に前記所定の距離条件を満たしたと判別する手段として、それぞれ更に機能させるように構成されたゲーム機用のコンピュータプログラム。」

第3 原査定の理由について

1.原査定の理由の概要

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・請求項 1-7
・引用文献等 1,2

引用文献1.特開2005-6976号公報
引用文献2.特開2002-143557号公報

2.原査定の理由の判断

(1)引用例
原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2005-6976号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0023】
このゲーム装置で実行されるゲームは、装置本体1とは別の外部記録媒体に記録されたゲームプログラムを読み込むことで実行される。」

イ.「【0036】
なお、本実施例にかかるゲームには、プレイヤの操作に基づいて行動する主キャラクタとゲームプログラムに基づいて行動する敵キャラクタが登場し、この双方のキャラクタ間の戦闘を中心として展開するゲームがディスプレイ上で実現される。また、本実施例では、主キャラクタとして、例えば主キャラクタA、主キャラクタB等の複数の主キャラクタが登場し、ゲームはこの複数の主キャラクタから形成されるパーティ単位で行動するものとする。また、各キャラクタ毎に、予め各種のステータスが設定されている。このステータスには、ゲーム回数や敵キャラクタを倒した回数等によって加算される経験値、所持金、武器、能力、後述の連携パラメータ等が定められている。」

ウ.「【0039】
[メインゲーム処理等]
再び図4において、「ワールドマップ」上に表示される選択項目のいずれかが選択されたときは(ST5で”YES”)、選択に応じた「サブマップ」の開始画面が表示され、主キャラクタのパーティは当該「サブマップ」上で行動を開始する(ST6)。一方、上記ST5で”NO”のときは、「ワールドマップ」上で□ボタン14が操作され「メニュー画面」の表示要求があるかどうかを判別する(ST21)。ここで”YES”のときは、「メニュー画面」を表示すると共に、プレイヤの操作に応じて例えばアイテムの使用等の種々のコマンドを入力することにより種々の設定処理を行う(ST22)。ここで、「サブマップ」上での行動とは、主キャラクタが歩いたり、通行人に話しかけたり、買物をしたり、アイテムを拾得したりといった行動である。」

エ.「【0160】
連携パラメータは、各主キャラクタ間の繋がり度合いを示すものであり、主として戦闘シーンにおいて主キャラクタ間で連携して戦闘を行った頻度を示すものである。本発明では、戦闘シーンにおいてこの連携パラメータを参照し、後述の「複数人技」、「コンボ」等の複数の主キャラクタで行う連携攻撃、不利な状態(HP減少)となった主キャラクタの身代わりとなって他のキャラクタが敵キャラクタの攻撃を受ける「かばう」等の各処理を行うものである。」

オ.「【0175】
尚、本実施形態では、「複数人技」が実行され、ジャッジメントリングを成功させたと判定された場合に、連携パラメータが”1”ポイント加算される処理が行われることとしたが、本発明はジャッジメントリングを成功させたと判定された場合に限らず、失敗したと判定された場合にも連携パラメータを”1”ポイント加算させることとしてもよい。すなわち、「複数人技」コマンドを入力したことにより連携パラメータを”1”加算させるものであっても良い。また、本発明は、「複数人技」を実行した(「複数人技」コマンドを入力した主キャラクタを中心とした所定の範囲にいると判定された)主キャラクタの連携パラメータを加算させることとしたが、本発明は「複数人技」を実行した特定の主キャラクタに限らず、戦闘に参加したすべての主キャラクタの連携パラメータを加算させることとしても良い。さらに、連携パラメータは1回の「複数人技」の使用で”1”ポイント加算することとしたが、本発明はこれに限らず、加算する数値は任意に設定変更可能である。」

カ.「【0241】
一例として図40のネットワークゲームシステムを用いて説明する。このネットワークゲームシステムでは、上述のゲームを行う端末としての携帯電話53A,53B,53Cは、基地局52A,52Bを介して、例えばパケット通信が可能なPDC網51に接続し、プレイヤの操作やゲーム状態に応じて、このPDC網51を介して情報センタ55にアクセスする。」

上記の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「ゲームを行う端末としての携帯電話53A,53B,53Cは、基地局52A,52Bを介して、パケット通信が可能なPDC網51に接続し、
このゲーム装置で実行されるゲームは、装置本体1とは別の外部記録媒体に記録されたゲームプログラムを読み込むことで実行され、
ゲームには、プレイヤの操作に基づいて行動する複数の主キャラクタが登場し、ゲームはこの複数の主キャラクタから形成されるパーティ単位で行動するもので、
主キャラクタのパーティは「サブマップ」上で行動を開始し、
「サブマップ」上での行動とは、主キャラクタが歩いたりといった行動であり、
各キャラクタ毎に、予め各種のステータスが設定され、このステータスには、連携パラメータ等が定められ、
戦闘シーンにおいてこの連携パラメータを参照し、「複数人技」、「コンボ」等の複数の主キャラクタで行う連携攻撃、不利な状態(HP減少)となった主キャラクタの身代わりとなって他のキャラクタが敵キャラクタの攻撃を受ける「かばう」等の各処理を行い、
「複数人技」を実行した(「複数人技」コマンドを入力した主キャラクタを中心とした所定の範囲にいると判定された)主キャラクタの連携パラメータを加算させる、
ゲーム装置。」

同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である引用文献2(特開2002-143557号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

キ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、集団キャラクタ戦闘方法、記録媒体及びゲーム装置に係り、特に、3次元仮想空間上に表示され複数のキャラクタが敵味方の集団を形成して互いに戦闘する集団キャラクタ戦闘方法、該方法を記録した記録媒体及びゲーム装置に関する。」

ク.「【0013】本態様では、キャラクタ毎に、当該キャラクタの攻撃値及び/又は防御値が該キャラクタの近傍に存在する他の味方キャラクタのキャラクタとの密集度に基づいて演算されるので、密集度が高く近傍に他の味方キャラクタが多く存在する場合には、該キャラクタの攻撃力及び/又は防御力が大きくなる。本態様によれば、集団を形成するキャラクタ毎に攻撃値及び/又は防御値が演算されるので、集団全体の攻撃力及び/又は防御力の強弱箇所の偏在を表すことができる。このような密集度については、例えば、3次元仮想空間上の任意大きさの領域毎にキャラクタについて高低を演算しても、キャラクタ毎に3次元空間の任意大きさの領域について高低を演算するようにしてもよい。」

ケ.「【0014】本態様の形態として、3次元仮想空間上のキャラクタの位置を演算し、キャラクタの所定領域内に存在する他の味方キャラクタのキャラクタ数を演算し、キャラクタ数に基づいて、キャラクタの攻撃力及び/又は防御力を表す攻撃値及び/又は防御値を演算するステップを含むようにしたり、又は、3次元仮想空間上のキャラクタの位置を演算し、キャラクタのうち1のキャラクタの所定範囲内に他の味方キャラクタが存在するときに該1のキャラクタを他の味方キャラクタに対し支援可能なキャラクタとしてキャラクタ毎に他の味方キャラクタについての支援可能なキャラクタ数を累積し、累積されたキャラクタ数に基づいて、キャラクタの攻撃力及び/又は防御力を表す攻撃値及び/又は防御値を演算するステップを含むようにしてもよい。」

上記の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「3次元仮想空間上に表示され複数のキャラクタが敵味方の集団を形成して互いに戦闘する集団キャラクタ戦闘方法を記録したゲーム装置であって、
キャラクタ毎に、当該キャラクタの攻撃値及び/又は防御値が該キャラクタの近傍に存在する他の味方キャラクタのキャラクタとの密集度に基づいて演算され、
3次元仮想空間上のキャラクタの位置を演算し、キャラクタの所定領域内に存在する他の味方キャラクタのキャラクタ数を演算し、キャラクタ数に基づいて、キャラクタの攻撃力及び/又は防御力を表す攻撃値及び/又は防御値を演算するゲーム装置。」

(2)対比

本願発明1と引用発明1とを対比する。

後者の「パケット通信が可能なPDC網51」は、その構造、機能、作用等からみて、前者の「通信回線」に相当し、以下同様に、「ゲーム装置」は「ゲーム機」に、「プレイヤ」は「プレイヤ」に、「主キャラクタ」は「プレイヤオブジェクト」に、「サブマップ」は「ゲームフィールド」に、それぞれ相当する。

引用発明1の「主キャラクタ」を「「複数人技」コマンドを入力した主キャラクタを中心とした所定の範囲にいると判定」することが、「「複数人技」コマンドを入力した主キャラクタ」と他の「主キャラクタ」との距離を特定すること、及び、当該距離が「所定の範囲」内であるか否かを判定することを含むことは明らかである。また、「このゲーム装置で実行されるゲームは、装置本体1とは別の外部記録媒体に記録されたゲームプログラムを読み込むことで実行され」るのだから、「ゲーム装置」が「ゲームプログラム」を実行する各種の手段を有することも明らかである。そうすると、引用発明1には、本願発明1の「距離判別手段」及び「距離条件判別手段」に相当するものを備えていることは明らかである。

また、引用発明1は「所定の範囲にいると判定された」「主キャラクタの連携パラメータを加算させる」ものであって、「連携パラメータ」は「戦闘シーンにおいてこの連携パラメータを参照し、「複数人技」、「コンボ」等の複数の主キャラクタで行う連携攻撃、不利な状態(HP減少)となった主キャラクタの身代わりとなって他のキャラクタが敵キャラクタの攻撃を受ける「かばう」等の各処理を行」うものであるから、「主キャラクタの連携パラメータを加算させる」ことが「特典」であることは明らかである。そうすると、引用発明1には、本願発明1の「特典付与手段」に相当するものを備えていることは明らかである。

したがって、両者は、

「通信回線を介して接続された複数の端末間にて、各端末のプレイヤに対応する各プレイヤオブジェクトの移動に使用されるゲームフィールドをゲームの進行に利用するゲームシステムに適用され、前記複数の端末の一つとして機能することが可能なゲーム機であって、
前記ゲームフィールド内における各プレイヤオブジェクト間の距離を判別する距離判別手段と、
前記距離判別手段の判別結果に基づいて、いずれか一のプレイヤオブジェクトを基準として当該一のプレイヤオブジェクトを含む少なくとも2つのプレイヤオブジェクトが所定の距離内に存在している場合に満たされる所定の距離条件を満たしているか否か判別する距離条件判別手段と、
前記距離条件判別手段の判別結果に基づいて、前記所定の距離条件を満たす場合に、前記ゲームの進行に所定の特典を付与する特典付与手段と、を備える、ゲーム機。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明1は、「所定の距離内は、一のプレイヤオブジェクトからの距離に応じて複数の領域に分類され、距離条件判別手段は、所定の距離条件を満たす各プレイヤオブジェクトのうち前記一のプレイヤオブジェクトとは別の他のプレイヤオブジェクトが位置する領域と前記一のプレイヤオブジェクトが位置する領域との間の位置関係を判別し、特典付与手段は、前記所定の距離条件を満たす場合に、前記位置関係に応じて、所定の特典の内容を変更する」のに対して、引用発明1は、所定の距離内は、複数の領域に分類されたものではなく、距離条件判別手段は、他のプレイヤオブジェクトが位置する領域と一のプレイヤオブジェクトが位置する領域との間の位置関係を判別するものではなく、特典付与手段は、位置関係に応じて、所定の特典の内容を変更するものではない点。

[相違点2]
本願発明1の距離条件判別手段は、「ゲームフィールド内に存在する全てのプレイヤオブジェクトが所定の距離内に存在している場合に所定の距離条件を満たしたと判別する」のに対して、引用発明1は、ゲームフィールド内に存在する全てのプレイヤオブジェクトが所定の距離内に存在していることを条件とするものではない点。

(3)判断

上記相違点2について検討する。

引用発明2は、「キャラクタの所定領域内に存在する他の味方キャラクタのキャラクタ数」に基づいて「キャラクタの攻撃力及び/又は防御力を表す攻撃値及び/又は防御値を演算する」ものであるから、「所定領域内に存在する他の味方キャラクタのキャラクタ数」を条件とするものであって、全てのキャラクタが所定の距離内に存在していることを条件とするものではない。

そうすると、引用発明2は、上位相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものではない。

また、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。

そうすると、引用発明1において、引用発明2を適用したとしても、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。

(4)小括
したがって、本願発明1は、当業者が引用発明1及び2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

本願発明2ないし4は、本願発明1をさらに限定したものである。

また、本願発明5及び6は、本願発明1をそれぞれ制御方法及びプログラムとしたものであって、本願発明5の「前記距離条件判別工程では、前記ゲームフィールド内に存在する全てのプレイヤオブジェクトが前記所定の距離内に存在している場合に前記所定の距離条件を満たしたと判別される」点、及び、本願発明6の「前記距離条件判別手段を、前記ゲームフィールド内に存在する全てのプレイヤオブジェクトが前記所定の距離内に存在している場合に前記所定の距離条件を満たしたと判別する手段として」「更に機能させる」点は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項と実質的に同一の発明特定事項である。

すると、本願発明2ないし6は、本願発明1と同様に、当業者が引用発明1及び2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について

1.当審拒絶理由の概要

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・請求項 1?2、4?7
・引用文献等 A?B

引用文献A.特開2004-187806号公報
引用文献B.特開2005-6976号公報(引用文献1と同じ文献)

2.当審拒絶理由の判断

(1)引用例
当審における拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である引用文献A(特開2004-187806号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0014】
上記ビデオゲーム装置において、前記位置判断手段は、各プレイヤキャラクタが前記オブジェクトを中心とした一定の距離によって規定される所定範囲に存在するかどうかを判断することができる。この場合、前記ゲーム進行制御手段は、前記位置判断手段による各プレイヤキャラクタが所定範囲に存在するかどうかの判断結果に応じて、ゲームの進行の有利さ度合いまたは容易さ度合いの少なくとも一方をプレイヤキャラクタ毎に変化させることができる。」

イ.「【0018】
さらに、前記所定範囲は、前記オブジェクトからの距離に応じて複数の範囲が定められてもよい。この場合において、前記位置判断手段は、各プレイヤキャラクタがいずれの範囲に存在するかどうかを判断することができ、前記ゲーム進行制御手段は、前記位置判断手段による各プレイヤキャラクタがいずれの範囲に存在するかの判断結果に応じて、ゲームの進行の有利さ度合いまたは容易さ度合いの少なくとも一方をプレイヤキャラクタ毎に変化させることができる。」

ウ.「【0057】
コントローラ214は、ビデオゲーム装置100のコントローラ161と同様に方向キー及び複数の操作ボタンを備え、コントローラ161のキーまたはボタンと同様にしてプレイヤからの指令を入力する。LCD215は、CPU211によるゲームプログラムの実行に従った画面を表示する。LCD215には、ビデオゲーム装置100から送られてきた画像を表示する場合もある。スピーカ216は、CPU211によるゲームプログラムの実行に従って、ゲームの進行状況に応じた効果音などを出力する。通信ポート217は、前述のケーブルを介してビデオゲーム装置100に接続され、ビデオゲーム装置100と情報を送受信する。」

エ.「【0058】
この実施の形態にかかるビデオゲームは、3次元ビデオゲームであり、複数(最大4人)のプレイヤがコントローラ161(またはコントローラ214)の操作により各々のプレイヤキャラクタを仮想3次元空間内で移動させながら、ゲームが進行していく。」

オ.「【0131】
上記の実施の形態では、視軸304の方向を定める基準となるオブジェクト500は、プレイヤキャラクタともノンプレイヤキャラクタとも別個に仮想3次元空間内に存在するものであった。しかしながら、特にゲームの内容によっては、特定のプレイヤキャラクタまたはノンプレイヤキャラクタをオブジェクトとして扱って、これを基準にして視軸304の方向を定めるものとしてもよい。」

上記の記載事項を総合すると、引用文献Aには、次の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されているものと認められる。

「通信ポート217は、ケーブルを介してビデオゲーム装置100に接続され、ビデオゲーム装置100と情報を送受信し、
ビデオゲームは、3次元ビデオゲームであり、複数(最大4人)のプレイヤが各々のプレイヤキャラクタを仮想3次元空間内で移動させながら、ゲームが進行していき、
位置判断手段は、各プレイヤキャラクタがオブジェクトを中心とした一定の距離によって規定される所定範囲に存在するかどうかを判断し、
ゲーム進行制御手段は、位置判断手段による各プレイヤキャラクタが所定範囲に存在するかどうかの判断結果に応じて、ゲームの進行の有利さ度合いまたは容易さ度合いの少なくとも一方をプレイヤキャラクタ毎に変化させ、
前記所定範囲は、前記オブジェクトからの距離に応じて複数の範囲が定められてもよく、この場合において、前記位置判断手段は、各プレイヤキャラクタがいずれの範囲に存在するかどうかを判断することができ、前記ゲーム進行制御手段は、前記位置判断手段による各プレイヤキャラクタがいずれの範囲に存在するかの判断結果に応じて、ゲームの進行の有利さ度合いまたは容易さ度合いの少なくとも一方をプレイヤキャラクタ毎に変化させることができ、
特定のプレイヤキャラクタをオブジェクトとして扱ってもよい、ビデオゲーム装置100。」

引用文献Bは、原査定に係る拒絶理由で引用された引用文献1と同じ文献であって、第3の2.(1)に示した引用発明1が記載されている。

(2)対比

本願発明1と引用発明Aとを対比する。

後者の「ビデオゲーム装置100」、「プレイヤ」、「プレイヤキャラクタ」及び「仮想3次元空間」は、その構造、機能、作用等からみて、それぞれ前者の「ゲーム機」、「プレイヤ」、「プレイヤオブジェクト」及び「ゲームフィールド」に相当する。

引用発明Aの「位置判断手段」は、「各プレイヤキャラクタがオブジェクトを中心とした一定の距離によって規定される所定範囲に存在するかどうかを判断」するものであり、当該判断を行うために「オブジェクト」と「各プレイヤキャラクタ」との距離を特定していることは明らかであるから、「特定のプレイヤキャラクタをオブジェクトとして扱ってもよい」ことを踏まえると、本願発明1の「前記ゲームフィールド内における各プレイヤオブジェクト間の距離を判別する距離判別手段」、及び、「前記距離判別手段の判別結果に基づいて、いずれか一のプレイヤオブジェクトを基準として当該一のプレイヤオブジェクトを含む少なくとも2つのプレイヤオブジェクトが所定の距離内に存在している場合に満たされる所定の距離条件を満たしているか否か判別する距離条件判別手段」に相当するものであることは明らかである。

引用発明Aの「ゲーム進行制御手段」は、「位置判断手段による各プレイヤキャラクタが所定範囲に存在するかどうかの判断結果に応じて、ゲームの進行の有利さ度合いまたは容易さ度合いの少なくとも一方をプレイヤキャラクタ毎に変化させ」るから、本願発明1の「前記距離条件判別手段の判別結果に基づいて、前記所定の距離条件を満たす場合に、前記ゲームの進行に所定の特典を付与する特典付与手段」に相当する。

引用発明Aの「前記所定範囲は、前記オブジェクトからの距離に応じて複数の範囲が定められてもよ」い点は、「特定のプレイヤキャラクタをオブジェクトとして扱ってもよい」ことを踏まえると、本願発明1の「前記所定の距離内は、前記一のプレイヤオブジェクトからの距離に応じて複数の領域に分類され」る点に相当する。

引用発明Aの「前記位置判断手段は、各プレイヤキャラクタがいずれの範囲に存在するかどうかを判断することができ」る点は、本願発明1の「前記距離条件判別手段は、前記所定の距離条件を満たす各プレイヤオブジェクトのうち前記一のプレイヤオブジェクトとは別の他のプレイヤオブジェクトが位置する領域と前記一のプレイヤオブジェクトが位置する領域との間の位置関係を判別」する点に相当する。

引用発明Aの「前記ゲーム進行制御手段は、前記位置判断手段による各プレイヤキャラクタがいずれの範囲に存在するかの判断結果に応じて、ゲームの進行の有利さ度合いまたは容易さ度合いの少なくとも一方をプレイヤキャラクタ毎に変化させることができ」る点は、本願発明1の「前記特典付与手段は、前記所定の距離条件を満たす場合に、前記位置関係に応じて、前記所定の特典の内容を変更」する点に相当する。

したがって、両者は、

「通信回線を介して接続された複数の端末間にて、各端末のプレイヤに対応する各プレイヤオブジェクトの移動に使用されるゲームフィールドをゲームの進行に利用するゲームシステムに適用され、前記複数の端末の一つとして機能することが可能なゲーム機であって、
前記ゲームフィールド内における各プレイヤオブジェクト間の距離を判別する距離判別手段と、
前記距離判別手段の判別結果に基づいて、いずれか一のプレイヤオブジェクトを基準として当該一のプレイヤオブジェクトを含む少なくとも2つのプレイヤオブジェクトが所定の距離内に存在している場合に満たされる所定の距離条件を満たしているか否か判別する距離条件判別手段と、
前記距離条件判別手段の判別結果に基づいて、前記所定の距離条件を満たす場合に、前記ゲームの進行に所定の特典を付与する特典付与手段と、を備え、
前記所定の距離内は、前記一のプレイヤオブジェクトからの距離に応じて複数の領域に分類され、
前記距離条件判別手段は、前記所定の距離条件を満たす各プレイヤオブジェクトのうち前記一のプレイヤオブジェクトとは別の他のプレイヤオブジェクトが位置する領域と前記一のプレイヤオブジェクトが位置する領域との間の位置関係を判別し、
前記特典付与手段は、前記所定の距離条件を満たす場合に、前記位置関係に応じて、前記所定の特典の内容を変更する、ゲーム機。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点A]
本願発明1の距離条件判別手段は、「ゲームフィールド内に存在する全てのプレイヤオブジェクトが所定の距離内に存在している場合に所定の距離条件を満たしたと判別する」のに対して、引用発明Aは、ゲームフィールド内に存在する全てのプレイヤオブジェクトが所定の距離内に存在していることを距離条件とするものではない点。

(3)判断

上記相違点Aについて検討する。

引用文献Bは、原査定に係る拒絶理由で引用された引用文献1と同じ文献である。そうすると、引用文献Bに記載された発明は、上記第3の2.(1)のとおり相違点1及び2で本願発明1と相違するものであって、ゲームフィールド内に存在する全てのプレイヤオブジェクトが所定の距離内に存在していることを条件とするものではないから、上記相違点Aに係る本願発明1の発明特定事項を備えるものではない。

また、上記相違点Aに係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。

そうすると、引用発明Aにおいて、引用文献Bに記載された発明を適用したとしても、上記相違点Aに係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。

(4)小括
したがって、本願発明1は、当業者が引用発明A及び引用文献Bに記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。

本願発明2ないし4は、本願発明1をさらに限定したものである。

また、本願発明5及び6は、本願発明1をそれぞれ制御方法及びプログラムとしたものであって、本願発明5の「前記距離条件判別工程では、前記ゲームフィールド内に存在する全てのプレイヤオブジェクトが前記所定の距離内に存在している場合に前記所定の距離条件を満たしたと判別される」点、及び、本願発明6の「前記距離条件判別手段を、前記ゲームフィールド内に存在する全てのプレイヤオブジェクトが前記所定の距離内に存在している場合に前記所定の距離条件を満たしたと判別する手段として」「更に機能させる」点は、上記相違点Aに係る本願発明1の発明特定事項と実質的に同一の発明特定事項である。

すると、本願発明2ないし6についても、本願発明1と同様に、当業者が引用発明A及び引用文献Bに記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえなくなった。

そうすると、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-19 
出願番号 特願2012-79822(P2012-79822)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宇佐田 健二  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 森次 顕
藤本 義仁
発明の名称 ゲーム機、それに用いる制御方法及び、コンピュータプログラム  
代理人 山本 晃司  

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