ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03G |
---|---|
管理番号 | 1322873 |
審判番号 | 不服2016-1665 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-02-04 |
確定日 | 2017-01-10 |
事件の表示 | 特願2014-162750「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月13日出願公開、特開2014-211656、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年8月26日に出願した特願2011-184586号(以下「原出願」という。)の一部を平成26年8月8日に新たな特許出願としたものであって、平成27年11月19日付けでで拒絶査定がされ、これに対し、平成28年2月4日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、当審において、同年9月20日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対し、同年11月14日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1乃至9に係る発明は、上記平成28年11月14日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至9に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める(以下請求項1乃至9に係る発明を、それぞれ、「本願発明1」、乃至「本願発明9」といい、これらを総称して「本願発明」という。)。 「【請求項1】 用紙剥離手段を駆動するための駆動源を有する定着部と用紙を搬送する用紙搬送ガイドとを備えた画像形成装置であって、 前記用紙搬送ガイドは、用紙支持面に設けられた複数本のガイドリブと複数の通気口とを備え、 前記駆動源は、前記用紙搬送ガイドの前記用紙支持面と反対の面側に備えられ、 前記用紙搬送ガイド上を通過する定着済みの用紙のトナー定着面の反対側の面と前記駆動源とに冷却風を送風する通気路を備え、 前記通気路は前記用紙搬送ガイドの前記用紙支持面と反対の面側に配置され、 前記冷却風は、前記通気路へ供給されることを特徴とする画像形成装置。 【請求項2】 請求項1に記載の画像形成装置であって、 前記剥離手段は、定着ローラに対して当接または離間する剥離爪であることを特徴とする画像形成装置。 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の画像形成装置であって、 前記通気路は、第1通気路と第2通気路によって形成され、前記第2通気路は前記第1通気路から分岐されていることを特徴とする画像形成装置。 【請求項4】 請求項3に記載の画像形成装置であって、 前記第2通気路は、前記第1通気路の分岐部から前記駆動源に対向する先端部に向かうに従って漸次狭くなるテーパ状に形成されていることを特徴とする画像形成装置。 【請求項5】 請求項4に記載の画像形成装置であって、 前記第2通気路の前記先端部には、前記駆動源に向かって冷却風を吹き付ける空気噴出口が設けられ、前記空気噴出口は、先端部内側の内径が大きく、先端部外側の内径が小さいノズル形状に形成されていることを特徴とする画像形成装置。 【請求項6】 請求項4または請求項5に記載の画像形成装置であって、 前記先端部と対向する前記駆動源のケーシング部には、前記第2通気路を通過した冷却風が流れる方向に沿って複数のスリットが設けられていることを特徴とする画像形成装置。 【請求項7】 請求項6に記載の画像形成装置であって、 前記第2通気路の前記先端部と、前記先端部と対向する前記ケーシング部との間に断熱材が設けられていることを特徴とする画像形成装置。 【請求項8】 請求項3から請求項7までのいずれか1項に記載の画像形成装置であって、 前記第1通気路は、前記用紙搬送ガイドの用紙支持面と反対の下面側に配置されて前記用紙搬送ガイドに向けて突出する通気口を有し、前記通気口の先端開口部が前記用紙搬送ガイドに形成されたスリット状の複数の通気口に連通するように配置されていることを特徴とする画像形成装置。 【請求項9】 請求項8に記載の画像形成装置であって、 前記通気口の前記先端開口部と前記用紙搬送ガイドとの間に断熱材が設けられていることを特徴とする画像形成装置。」 第3 原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項1-6 ・引用文献等1-8 ・備考 請求項1に係る発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、請求項1に係る発明は、用紙搬送ガイドは、用紙支持面に設けられた複数本のガイドリブと複数の通気口とを備えるのに対し、引用文献1記載の発明は、そのような構成を有していない点で相違する。 以下、上記相違点について検討する。 例えば、引用文献2[0028]、図4等、引用文献3図4等、引用文献4[0019]等に示すように、複数本のガイドリブと通気口を備える用紙搬送ガイドは周知のものであるから、引用文献1記載の発明において、吹き出し9aを備えるガイドにかえて、複数本のガイドリブと複数の通気口を有するものとすることは、当業者であれば適宜なし得る程度のことである。 <引用文献等一覧> 1.特開2001-5367号公報 2.特開2002-332140号公報 3.特開2003-246490号公報 4.特開2006-58695号公報 5.特開2009-288285号公報 6.特開2007-121789号公報 7.特開2001-13808号公報 8.特開2001-228782号公報 2.原査定の理由の判断 (1)刊行物の記載事項 ア.刊行物1 本願の原出願日前である平成13年1月12日に頒布された特開2001-5367号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 シート材に画像を記録形成する画像形成装置において、 画像が記録形成されたシート材の表面を冷却する冷却手段がシート材の位置や種々のタイミングを検知する検知手段の冷却を兼用することを特徴とする画像形成装置。 【請求項2】 前記検知手段の冷却を前記冷却手段による装置本体外の外気の吸引若しくは外気の吹き出しにより行い、シート材表面の冷却を前記冷却手段の外気の吹き出し若しくは外気の吸引により行うことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。 【請求項3】 前記冷却手段は、前記シート材を搬送する搬送手段を駆動する駆動手段の冷却をも兼用することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。 【請求項4】 前記冷却手段は、該冷却手段から駆動手段の冷却又はシート材表面の冷却若しくはシート材の位置や種々タイミングを検知する検知手段に少なくとも1つ以上に分岐するダクトを具備していることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。」 (イ)「【0015】<実施の形態1>図1は本発明に係る画像形成装置の排紙部近傍の平面図、図2は同側面図である。 【0016】本発明に係る画像形成装置においては、シート材Pは所定の画像形成プロセスを経て不図示の感光ドラムに形成された画像が転写され、これによって該シート材P上に未定着画像が形成される。 【0017】その後、シート材Pは不図示のベルト搬送部によって搬送され、定着入口ガイド7を通過して定着器1に送り込まれ、熱と圧力が印加されて未定着の転写画像が該シート材P上に定着される。 【0018】図2に示す搬送ローラ10aは不図示の駆動モータによって回転駆動され、搬送コロ10bは搬送ローラ10aに従動して回転し、これらの搬送ローラ10aと搬送コロ10bはシート材Pを狭持してこれを排紙ローラ5へと搬送する。 【0019】上記排紙ローラ5は不図示の回転自在に支持されており、これには複数の排紙ローラゴム5aが軸方向に適当な間隔で取り付けられ、各排紙ローラゴム5aには排紙コロ5bが当接し、該排紙コロ5bは排紙ローラゴム5aに従動して回転する。そして、排紙ローラ5の端部には排紙ローラギヤ4が固定されている。 【0020】又、本体の不図示のステーにはフォトインタラプタ11が固定されており、このフォトインタラプタ11はアクチュエータ12を介してシート材Pの位置や種々のタイミングを検知している。 【0021】又、本体の不図示のステーには、画像形成装置本体前側に装着された冷却ファン3が固定されており、この冷却ファン3によってフォトインタラプタ11とシート材Pの表面が冷却される。 【0022】而して、本実施の形態では、上述のようにシート材Pの表面を冷却する冷却ファン3がフォトインタラプタ11の冷却ファンを兼用しているため、冷却ファンを複数設ける必要がなく、ファンの稼働音も低く抑えられ、省スペース化及びコストダウンの実現が可能となる。 【0023】<実施の形態2>次に、本発明の実施の形態2を図3に基づいて説明する。尚、図3は本実施の形態に係る画像形成装置の排紙部近傍の平面図であり、本図においては図1に示したと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての説明は省略する。 【0024】本実施の形態では、画像形成装置本体前側に装着された冷却ファン3のエアー吸引側に第1のダクト8を配置し、エアー吹き出し側に第2のダクト9を配置している。 【0025】而して、冷却ファン3によってフォトインタラプタ11の熱が外気と共に第1のダクト8から吸引され、第2のダクト9の吹き出し口9aからエアーが吹き出てシート材Pの表面が冷却される。 【0026】本実施の形態によれば、前記実施の形態1の効果に加え、より効率良くシート材Pやステッピングモータ2の冷却が可能になる。」 そうすると、上記(ア)及び(イ)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「シート材に画像を記録形成する画像形成装置において、 画像が記録形成されたシート材の表面を冷却する冷却手段がシート材の位置や種々のタイミングを検知する検知手段の冷却を兼用し、 前記検知手段の冷却を前記冷却手段による装置本体外の外気の吸引若しくは外気の吹き出しにより行い、シート材表面の冷却を前記冷却手段の外気の吹き出し若しくは外気の吸引により行い、 前記冷却手段は、前記シート材を搬送する搬送手段を駆動する駆動手段の冷却をも兼用し、 前記冷却手段は、該冷却手段から駆動手段の冷却又はシート材表面の冷却若しくはシート材の位置や種々タイミングを検知する検知手段に少なくとも1つ以上に分岐するダクトを具備し、 シート材はベルト搬送部によって搬送され、定着入口ガイドを通過して定着器に送り込まれ、熱と圧力が印加されて未定着の転写画像が該シート材上に定着される、画像形成装置。」 イ.刊行物2 本願の原出願日前である平成14年11月22日に頒布された特開2002-332140号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 用紙搬送方向の上流側に配置される上流側の用紙搬送手段と、その下流側に配置される下流側の用紙搬送手段と、その上流側及び下流側の用紙搬送手段の間の少なくとも一部区間で用紙搬送方向が曲がる曲げ用紙搬送路を形成するように対向配置される一対の用紙搬送ガイドとを備え、前記上流側の用紙搬送手段の搬送速度よりも前記下流側の用紙搬送手段の搬送速度が速くなることのある用紙搬送装置において、 前記一対の用紙搬送ガイドのうち少なくとも前記曲げ用紙搬送路の用紙搬送方向の内側に配置するガイドとして、空気抜き用の貫通孔を形成してなる用紙搬送ガイド板を配置したことを特徴とする用紙搬送装置。 【請求項2】 前記用紙搬送ガイド板のガイド面に複数のリブが形成されている場合、そのリブどうしの間となるガイド面領域内に前記貫通孔を形成してなる請求項1に記載の用紙搬送装置。」 (イ)「【0028】また、その曲げ用紙搬送路33における用紙搬送方向Aの内側に配置される用紙搬送ガイド板34には、図4?図6に示すように、そのガイド面34bには用紙搬送方向Aと平行する複数本のリブ38が形成されているとともに、そのリブ38どうしの間となるガイド面領域に空気抜き用の貫通孔37が形成されている。なお、この用紙搬送ガイド板34には、下流側の用紙搬送ロール対32を用紙搬送路内に突出させた状態で配置するための突出配置用開口部39も形成されている。」 ウ.刊行物3 本願の原出願日前である平成15年9月2日に頒布された特開2003-246490号公報(以下「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項3】 シート材をシート搬送ガイド上に乗せ、そのシート搬送ガイドで案内して搬送する、画像形成装置のシート搬送装置において、 前記シート搬送ガイドのシートガイド面にガイドリブをシート搬送方向にのばして複数形成するとともに、 前記シート搬送ガイドの前記ガイドリブ間に孔状の開口を、シート搬送方向と直交する方向に並べて複数形成し、 その複数の孔状の開口を形成する領域を、前記シート搬送ガイド上を搬送するシート材の最大シート幅より大きくする、 ことを特徴とする、シート搬送装置。」 (イ)「【0044】ところで、下シートガイド(シート搬送ガイド)42としては、例えば図4(A)および(B)に示すような形状のものを用いても、同様な効果を達成することができる。 【0045】図4(A)および(B)に示す下シートガイド42は、同じく板材で形成してそのシート搬送方向aの先端を上向きに湾曲し、上面のシートガイド面に突出して直線状のガイドリブ47を複数(図示例では5つ)形成する。複数のガイドリブ47は、シート搬送方向aにのばして一定間隔で設ける。 【0046】また、その湾曲位置であって各ガイドリブ47間に孔状の開口48を、シート搬送方向aと直交する方向に並べて複数(図示例では6つ)形成する。そして、その複数の孔状の開口48を形成する領域Lbを、下シートガイド42上を搬送するシート材のうちで、幅がもっとも大きなシートpのシート幅、つまり最大シート幅Lpより大きくする。 【0047】このようにしても、構成簡単でコスト高となったり騒音を発生したりすることなく、またシート材から落下して下シートガイド42上のシート搬送領域内にある紙粉を、下シートガイド42上を移動する以降のシート材により搬送して孔状の開口48に入れることができ、その開口48を通して確実に落下することにより下シートガイド42上に紙粉が堆積することを防止することができる。 【0048】図4(A)および(B)に記載の下シートガイド42を用いれば、さらにシートガイド面にガイドリブ47をシート搬送方向aにのばして複数形成するから、そのガイドリブ47でシート材を案内して例えばシート材の先端が開口48に引っかかることを阻止し、シート材の搬送安定性を向上することができる。また、複数の孔状の開口48を形成する領域Lbを最大シート幅より大きくしても、ガイドリブ47で補強して、下シートガイド42が強度的に弱くなることを防止することができる。」 エ.刊行物4 本願の原出願日前である平成18年3月2日に頒布された特開2006-58695号公報(以下「刊行物4」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 形成した記録画像を加熱して定着する定着装置において、加熱定着する記録画像を担持する被記録媒体を搬入して排出する被記録媒体搬送経路と、上記被記録媒体搬送経路を覆って被記録媒体を搬入する搬入口と排出する排出口を開放するカバー部材と、上記カバー部材で覆われた上記被記録媒体搬送経路を搬送される被記録媒体が担持する記録画像を加熱して定着する加熱定着手段と、上記加熱定着手段の加熱定着時に発生する水蒸気を含む空気を吸引する空気吸引手段と、上記空気吸引手段と連結して吸引する水蒸気を含む空気の流路を形成して循環流路で循環させる循環流路形成手段と、上記循環流路形成手段内の循環流路を形成する水蒸気を含む空気の温度を外部へ放熱する放熱手段とからなることを特徴とする定着装置。 【請求項2】 請求項1に記載の定着装置において、上記被記録媒体搬送経路は、上記加熱定着手段で加熱定着した記録画像を担持する被記録媒体を排出口に案内する少なくとも排紙上ガイドに形成した通気穴からなることを特徴とする定着装置。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の定着装置において、被記録媒体搬送経路は、加熱定着手段で加熱定着した記録画像を担持する被記録媒体を排出口に案内する少なくとも排紙上ガイドに形成したリブ構造からなることを特徴とする定着装置。」 (イ)「【0019】 トナーが未定着の記録画像が記録された記録用紙Pは、図1に示す矢印C方向に回転する上記定着ローラ3aと図示の矢印D方向に回転する加圧ローラ3bの挟持するニップ部Nにて、加熱と加圧力にてトナーを溶融し、記録用紙Pに圧着して加熱定着される。 その後、加熱定着された記録用紙Pは、排紙上ガイド1b1と排紙下ガイド1b2との間を通って、排出口1bからカバー部材2と定着装置0の外部へ、図1に示す矢印B方向の排紙方向に排紙される。 この時、記録用紙P上のトナーと定着ローラ3a間の粘着力により、記録用紙Pが定着ローラ3aに巻きついた時、記録用紙Pを定着ローラ3aから剥すために分離爪3eが定着ローラ3aの長手方向に複数、圧接して配置されている。 この分離爪3eは、定着ローラ3aの表面を磨耗するため、非接触の図示しない分離板などを配置しても良い。 定着ローラ3aには、微量のトナーが付着することがあるため、クリーニング部材としてのクリーニングローラ3fと、クリーニングローラ3fを、更に、クリーニングする第2クリーニングローラ3gが配置されている。 尚、定着装置0は、図1に示す矢印C方向に回転する定着ローラ3aと矢印D方向に回転する加圧ローラ3bの挟持するニップ部Nにて、加熱と加圧力にてトナーを溶融し、記録用紙Pに圧着して加熱定着する加熱定着方式を示したが、他の、加熱定着方式一般にも、広く使用できる。 記排紙上ガイド1b1と排紙下ガイド1b2の構造は、排紙上ガイド1b1と排紙下ガイド1b2間の空気が上方へと通過が容易に可能なように、少なくとも排紙上ガイド1b1に通気穴1b11やリブ構造1b12を、更に、排紙下ガイド1b2に通気穴1b21やリブ構造1b22を有している。 この排紙上ガイド1b1と排紙下ガイド1b2間の空気は、記録用紙Pに含まれる水分が定着ローラ3aと加圧ローラ3bの挟持するニップ部Nで加熱されて蒸発するために、多量の水蒸気を含んでいる。 そのために、この空気を定着装置0の内部に留めておくと、やがて飽和水蒸気量に達して結露し、いろいろな不具合につながることになる。 そこで、定着装置0は、カバー部材2の内部に吸引ダクト4を設置して水蒸気を取り込むようになっている。」 (2)対比 そこで、本願発明1と引用発明1とを対比すると、 ア.後者の「定着器」、「シート材」、「画像形成装置」、及び、冷却手段に具備される「ダクト」は、それぞれ、前者の「定着部」、「用紙」、「画像形成装置」、及び、「冷却風を送風する通気路」に相当する。 イ.後者の冷却手段は、シート材表面の冷却若しくはシート材の位置や種々タイミングを検知する検知手段に少なくとも1つ以上に分岐するダクトを具備するものであるから、冷却風は、通気路へ供給される、といえる。 したがって、両者は、 「定着部を備えた画像形成装置であって、 冷却風を送風する通気路を備え、 前記冷却風は、前記通気路へ供給される画像形成装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 本願発明1が、「用紙剥離手段を駆動するための駆動源を有する」定着部と「用紙を搬送する用紙搬送ガイド」とを備えた画像形成装置であって、「前記用紙搬送ガイドは、用紙支持面に設けられた複数本のガイドリブと複数の通気口とを備え、前記駆動源は、前記用紙搬送ガイドの前記用紙支持面と反対の面側に備えられ」、「用紙搬送ガイド上を通過する定着済みの用紙のトナー定着面の反対側の面と駆動源とに」冷却風を送風する通気路を備え、「前記通気路は前記用紙搬送ガイドの前記用紙支持面と反対の面側に配置され」るのに対し、引用発明1は、そのような構成を備えていない点。 (3)判断 上記相違点について検討する。 一般に、「用紙を搬送する用紙搬送ガイド」であって、「用紙支持面に設けられた複数本のガイドリブと複数の通気口とを備え」る「用紙搬送ガイド」は、上記刊行物2乃至4(上記(1)イ.?エ.参照。)に示されているように、周知の技術事項である。(以下「周知の技術事項1」という。) また、用紙搬送ガイド上を通過する定着済みの用紙のトナー定着面の反対側の面に冷却風を送風する通気路であって、前記用紙搬送ガイドの前記用紙支持面と反対の面側に配置される通気路は、原出願日時点で周知の技術事項である。(例えば、特開2009-192998号公報(【0020】?【0025】参照。)、特開2002-132078号公報(【0012】?【0023】参照。)、特開平9-114286号公報(【0017】?【0025】参照。)、以下「周知の技術事項2」という。) しかし、上記相違点に係る本願発明1の「駆動源に」冷却風を送風する通気路を備え、「前記通気路は前記用紙搬送ガイドの前記用紙支持面と反対の面側に配置される」点は、上記刊行物2乃至4、及び原審で提示された引用文献5乃至8にも示されていないし、周知の技術事項ともいえないし、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。 そして、本願発明1は、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「このような構成によれば、未定着のトナー像を保持した用紙に冷却風の影響を与えることなく、用紙搬送ガイド上を通過する定着済み用紙の冷却と、定着ローラ表面からの用紙剥離爪の離接動作を駆動する駆動源の電気部品(以下、発熱体ともいう。)であるソレノイドの冷却とを効率的に行うことができる。」(【0011】)という作用効果を奏するものである。 したがって、本願発明1は、引用発明1、並びに周知の技術事項1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (4)本願発明2乃至9について 本願発明2乃至9は、本願発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本願発明2乃至9は、上記(3)と同様の理由により、引用発明1、周知の技術事項1及び2、並びに引用文献5乃至8に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 第4 当審拒絶理由について 1.当審拒絶理由の概要 理由1:この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 請求項1の「電機部品」という特定には様々な事項が包含されるが、発明の詳細な説明には、「搬送された用紙を剥離する剥離手段を駆動するための駆動源」しか記載されておらず、また、発明の課題を解決するための手段の前提条件からみても、「搬送された用紙を剥離する剥離手段を駆動するための駆動源」しかあり得ない。 理由2:この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 請求項1の「電機部品を有する定着部」という特定では、「電機部品」に定着部のヒータも包含される。 しかし、未定着トナーを熱定着させるための定着部のヒータに冷却風を送風することは、技術的に矛盾することである。 2.当審拒絶理由の判断 平成28年11月14日に提出された手続補正書において、上記第2のとおり、請求項1、3乃至10の記載は補正されたことにより、請求項1、3乃至10に係る発明の記載不備は解消された。 したがって、当審拒絶理由は解消した。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明1乃至9は、引用発明1、周知の技術事項1及び2、並びに引用文献5乃至8に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとものとすることはできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-12-21 |
出願番号 | 特願2014-162750(P2014-162750) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G03G)
P 1 8・ 537- WY (G03G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 目黒 光司、中澤 俊彦 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 吉村 尚 |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 特許業務法人あーく特許事務所 |