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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01C
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01C
管理番号 1322886
審判番号 不服2015-18672  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-15 
確定日 2017-01-10 
事件の表示 特願2011-123382「回転速度センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月15日出願公開、特開2011-252908、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年6月1日の出願(パリ条約による優先権主張2010年(平成22年)6月2日(以下、「優先日」という。)、ドイツ)であって、平成27年2月19日付けの拒絶理由の通知に対し同年5月1日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月28日付けで拒絶査定(同年8月3日謄本送達)(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年10月15日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
その後、当審において平成28年7月22日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、同年10月25日付けで意見書及び手続補正書(同手続補正書でした補正を、以下、「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明(以下、それぞれを「本願発明1」等という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定された、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
- 駆動装置(103,109)と、
- 少なくとも1つのコリオリ素子(113)と、
- 少なくとも2つの検出素子(119)を有する検出装置とを備える回転速度センサ(101)において、
当該の検出素子は、結合装置(121,121a,121b,123)によって互いに結合されており、
- 前記の駆動装置(103,109)は、コリオリ素子(113)を駆動して振動させるため、当該のコリオリ素子(113)に接続されており、
前記の回転速度センサはさらに、
- 前記の検出装置およびコリオリ素子(113)に接続された別の結合装置(127)を有しており、
当該の別の結合装置(127)により、前記のコリオリ素子(113)の振動面にて当該の振動に直交する方向の偏位が、前記の検出装置に結合されており、
前記の結合装置(121,121a,121b,123)には少なくとも1つのダブルシーソ(121)が含まれており、
前記の少なくとも1つのダブルシーソ(121)は、少なくとも2つの前記の検出素子にそれぞれ結合された、2つの結合シーソ(121a,121b)を含んでいる、
ことを特徴とする
回転速度センサ(101)。
【請求項2】
1つのダブルシーソ(121)の前記の2つの結合シーソ(121a,121b)は、前記の2つの検出素子(119)の少なくとも一部分を包囲している、
請求項1に記載の回転速度センサ(101)。
【請求項3】
1つのダブルシーソ(121)の前記の2つの結合シーソ(121a,121b)の間に前記検出装置が配置されている、
請求項1または2に記載の回転速度センサ(101)。
【請求項4】
2つのコリオリ素子(113)が備えられている、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の回転速度センサ(101)。
【請求項5】
前記の結合シーソ(121a,121b)は、少なくとも1つの結合バー(123)によって2つの検出素子(119)に接続されている、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の回転速度センサ。
【請求項6】
前記の2つのコリオリ素子(113)が互いに結合されている、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の回転速度センサのうち、請求項4を引用する回転速度センサ。
【請求項7】
前記の駆動装置(103,109)は、2つの駆動手段(103)を有しており、
該駆動手段は1つコリオリ素子(113)にそれぞれ接続されている、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の回転速度センサのうち、請求項4を引用する回転速度センサ。
【請求項8】
前記の2つの駆動手段(103)が互いに結合されている、
請求項7に記載の回転速度センサ(101)。
【請求項9】
前記の2つの駆動手段(103)は、前記のコリオリ素子(113)を少なくとも部分的に包囲するガイドフレーム(131)によって互い結合されている、
請求項8に記載の回転速度センサ(101)。
【請求項10】
前記のガイドフレーム(131)は、少なくとも2ピース式に構成されており、
当該のガイドフレームの少なくとも2つのピースが互いに結合されている、
請求項9に記載の回転速度センサ。
【請求項11】
前記の検出素子(119)は、相互に平行に配置される複数の第1の検出電極(129)を有する、
請求項1から10までのいずれか1項に記載の回転速度センサ。
【請求項12】
前記のコリオリ素子(113)は、少なくとも1つの第2の検出電極(141)を有する、
請求項11に記載の回転速度センサ。
【請求項13】
前記の第2の検出電極(141)は、コリオリ素子(113)の下に配置されている、
請求項12に記載の回転速度センサ。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、この出願の請求項1?13に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された特開2010-60372号公報(以下、「引用例1」という。)、特開2008-14727号公報(以下、「引用例2」という。)、特表2004-518971号公報(以下、「引用例3」という。)、特開2002-213962号公報(以下、「引用例4」という。)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

2 原査定の理由についての判断
(1)引用例1
ア 記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審で付与した。以下同じ。)。
(a)
「【請求項10】
第1方向に駆動される駆動部(100)と、
前記第1方向に直行する第2方向に可動する検出部(101)と、
前記駆動部(100)と前記検出部(101)とを連結する弾性部材(101b)とを各々有する第1ユニットと第2ユニットとを備え、
前記第1ユニットの検出部(101)の上面と前記第2ユニットの検出部(101)の上面とは,該第1ユニットの駆動部(100)及び該第2ユニットの駆動部(100)の上面と離間する連成梁(104)により接続されることを特徴とする角速度センサ。」

(b)
「【0128】
図5に実施例2における角速度センサの上面図を示す。また、図6は図5におけるB-B線での断面図を示す。
【0129】
図5に示すように、基板層1に駆動梁固定部207によって一端を固定された駆動梁101bに支持された駆動錘100がある。この駆動錘100は、その駆動梁101bによって図示の駆動方向に対しては変位可能であるが、図示の検出方向に対しては変位しない。
【0130】
駆動錘100は、駆動方向に駆動錘100を振動させるために駆動力を発生させる櫛歯型の駆動電極202を備える。この駆動電極202は、駆動錘100から駆動方向に突出した可動駆動電極202aと、駆動電極固定部201aに設置され駆動方向に突出した固定駆動電極202bとで構成され、互いに駆動方向にかみ合わせられた櫛歯型の構造をしている。そして、可動駆動電極202aと固定駆動電極202bとの間に電位差を与えることで静電引力が発生し、駆動錘100は固定駆動電極202b側に引き寄せられる。駆動錘100の駆動方向に対して、駆動錘100の両側にこの駆動電極202を配置し、交互に電位差を加えるとこの駆動錘100はより効率的に駆動方向に振動するようになる。」

(c)
「【0131】
また、駆動錘100に検出梁206で支持された検出錘101を設ける。この検出錘101は、検出方向に弾性を有する検出梁206によって支持されているため、駆動錘100に対して相対的に検出方向へ変位可能である。更に望ましくは、駆動錘100に対して相対的に駆動方向に対しては変位しない構造となっている。」

(d)
「【0132】
検出錘101は、検出方向の変位を検出できるよう駆動方向に突出した可動検出電極204aを備える。この可動検出電極204aは、検出錘101が変位する検出方向において、基板層1に固定された検出電極固定部203から駆動方向に突出した固定検出電極204bと面対向するように配置されている。検出錘101が検出方向に変位すると、可動検出電極204aと固定検出電極204bとの間隔が変化し、それに伴い可動検出電極204aと固定検出電極204bとの間の静電容量が変化する。この静電容量の変化量を検出することによって、検出方向における検出錘101の変位量を得ることができる。なお、既存のC/V変換回路等を用いることで、この静電容量値の変化を電圧値として取り出すことが可能である。」

(e)
「【0133】
詳細な動作説明は前述した実施例1と同等のため省略するが、実施例1同様に本実施例2の構成でも外部加速度成分を除去するためにこれらのユニットを2つ有する。そして、これら各ユニットの検出錘101及び駆動錘100からなる振動子10a,10bの駆動方向への振動を機械的カップリングにより同一周波数でかつ逆相で振動させるための連成梁104を備える。ここでもこの連成梁104は、駆動錘100や検出錘101などとは別の層で作られる。また、連成梁104は、実施例1と同様に連成梁104は、固定ポスト104a-梁部104b-中央部バネ形状部104e-梁部104b-固定ポスト104aの順番で、カップリング対象を接続している。但し、本実施例2と実施例1とは、カップリング対象が異なり、本実施例2では連成梁104は各検出錘101を接続している。」

(f)



・上記記載(a)における「直行」は「直交」の、「弾性部材(101b)」は「弾性部材(206)」の誤記であり(上記記載(c))、また、「第1方向」は「駆動方向」、「第2方向」は「検出方向」である(上記記載(f))から、上記記載(a)より、
(ア)「駆動方向である第1方向に駆動される駆動部(100)と、
前記第1方向に直交する検出方向である第2方向に可動する検出部(101)と、
前記駆動部(100)と前記検出部(101)とを連結する弾性部材(206)とを各々有する第1ユニットと第2ユニットとを備え、
前記第1ユニットの検出部(101)の上面と前記第2ユニットの検出部(101)の上面とは、該第1ユニットの駆動部(100)及び該第2ユニットの駆動部(100)の上面と離間する連成梁(104)により接続されることを特徴とする角速度センサ。」との技術的事項が読み取れる。

・「駆動錘100」は「駆動部(100)」であるから、上記記載(b)より、
(イ)「駆動方向に駆動部(100)を振動させるために駆動力を発生させる櫛歯型の駆動電極」との技術的事項が読み取れる。

・「検出錘101」は「検出部(101)」であるから、上記記載(d)より、
(ウ)「検出部(101)は、検出方向の変位を検出できるよう駆動方向に突出した可動検出電極を備える」との技術的事項が読み取れる。

・上記記載(e)より、
(エ)「連成梁(104)は、固定ポスト104a-梁部104b-中央部バネ形状部104e-梁部104b-固定ポスト104aの順番で、カップリング対象を接続している」との技術的事項が読み取れる

イ 引用発明
以上の技術的事項(ア)ないし(エ)を総合勘案すると、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。

「駆動方向に駆動部(100)を振動させるために駆動力を発生させる櫛歯型の駆動電極と、
駆動方向である第1方向に駆動される駆動部(100)と、
前記第1方向に直交する検出方向である第2方向に可動する検出部(101)と、
前記駆動部(100)と前記検出部(101)とを連結する弾性部材(206)とを各々有する第1ユニットと第2ユニットとを備え、
検出部(101)は、検出方向の変位を検出できるよう駆動方向に突出した可動検出電極を備え、
前記第1ユニットの検出部(101)の上面と前記第2ユニットの検出部(101)の上面とは、該第1ユニットの駆動部(100)及び該第2ユニットの駆動部(100)の上面と離間する連成梁(104)により接続され、
連成梁(104)は、固定ポスト104a-梁部104b-中央部バネ形状部104e-梁部104b-固定ポスト104aの順番で、カップリング対象を接続している、
角速度センサ。」(以下、「引用発明」という。)

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された引用例2には、図面とともに、次の記載がある。
「【0027】
本実施例では、上記構成において、更に連結リンクばね25を設けたことを特徴としている。この連結リンクばね25は第1の振動子11と第2の振動子12とを、駆動方向(Y1,Y2方向)に連結するものであり、本実施例では図中上下に対向するよう1対配設されている。
【0028】
これにより、図4に等価的に示されるように、第1の振動子11と第2の振動子12は、連結リンクばね25により連結された構成となる。即ち、従来では、第1の振動子11は第1の検出ばね18により第1のメインフレーム23と連結され、第2の振動子12は第2の検出ばね19を介して第2のメインフレーム24に連結されたのみで構成であったが、本実施例では、更に連結リンクばね25により第1の振動子11と第2の振動子12は連結された構成となる。
【0029】
この連結リンクばね25は板バネ材により形成されており、第1のリンクばね部26、第2のリンクばね部27、及び第3のリンクばね部28により構成されている。第1のリンクばね部26は、第1の振動子11から矢印Y1,Y2方向に延在するよう設けられた片持ち梁構造とされている。また、第2のリンクばね部27は、第1の振動子11に矢印Y1,Y2方向に延在するよう設けられた片持ち梁構造とされている。」

「【0034】
一方、図3及び図5(B)は、加速度角速度センサ10に角速度(Yaw)が印加されたときの状態及び処理を示している。加速度角速度センサ10に角速度(Yaw)が印加されると(図5(B)のステップ20)、この場合も第1及び第2の振動子11,12にはコリオリ力が発生し、図3に示すように第1及び第2の振動子11,12はX1,X2方向(検出方向)に逆相で変位する(図5(B)のステップ22)。
【0035】
このように、第1及び第2の振動子11,12が逆相で変位することにより、第1の検出ばね18,19(ばね定数k)と共に、連結リンクばね25(ばね定数K)も変形する(図5(B)のステップ24)。よって、角速度(Yaw)の検出時における共振周波数は、各検出ばね18,19のばね定数kと、連結リンクばね25のばね定数Kの双方により決まることとなる(図5(B)のステップ26)。また、角速度(Yaw)の値は、第1の検出電極15で検出される検出信号と、第2の検出電極16で検出される検出信号の差をとることにより求められる。」

(3)引用例3
原査定の拒絶の理由に引用された引用例3には、図面とともに、次の記載がある。
「【0025】
図7に示してある実施例は、ほぼ図4の実施例に相当するものである。同じ構成部分には同じ符合が付けてある。図4に対する相違点として、駆動エレメント102,202もコリオリ・エレメント100,200も、閉じたフレームとしてではなく、互いに向き合う側で開かれているフレームとして形成されている。このような処置によって、評価手段143,243、特に検出フレーム140,240を連結ばね55によって互いに連結することが可能である。さらに、駆動エレメント102,202が連結ばね54によって互いに連結される。連結ばね55がX・方向で評価手段143,243、特に検出フレーム140,240の連結を次のように達成し、即ち、X・方向の同位相若しくは逆位相の振動の固有振動数が互いに異なっている。駆動エレメント102,202のこのような連結によって、Y・方向の同位相及び逆位相の振動の固有振動数が振動数に関連して互いに異なっている。適切な励起振動の選択によって確実に、右側及び左側のエレメントがそれぞれ互いに相対して振動し、即ち駆動エレメント102,202並びに検出エレメント140,240が互いに逆位相で振動する。」

(4)引用例4
原査定の拒絶の理由に引用された引用例4には、図面とともに、次の記載がある。
「【0047】20,20は各外側質量部4に対応する位置で基板2の凹陥部2A内に設けられた固定側検出電極で、該各固定側検出電極20は、例えば金属膜等により図4、図5に示す如く四角形状に形成されている。また、固定側検出電極20は、その一部が凹陥部2Aの外側に延設され、基板2上に突設された電極取出部21に接続されている。
【0048】22,22は各外側質量部4のうち基板2に面した部位により構成された可動側検出電極で、該各可動側検出電極22は、図4に示す如く、固定側検出電極20とZ軸方向の隙間を挟んで対面している。」

(5)引用例5
優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2009/119470号(平成27年12月15日付けの前置報告書においてで引用されたものであり、以下、「引用例5」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「[0043] 次に図1,図3,図4を用いて本実施形態における角速度センサ1の動作について説明する。
[0044] 図1に示す励振部12?15の駆動力により、質量部10,11が図3や図4に示すようにX軸方向に逆位相で励振する。図3は、質量部10,11の間隔が広がる方向に励振している状態を示し、図4は質量部10,11の間隔が狭くなる方向に励振している状態を示す。
[0045] このとき、質量部10,11の励振による振動は、バネ部32?35により吸収されて支持梁16,17に伝達され難くい。特に本実施形態では、図1や図7に示すバネ部32?35の構造にすることで、図7に示すように、質量部10と支持梁16間を連結するバネ部32の第2バネ部32に矢印方向からの振動が及んだとき(図3の励振状態を示す。なお第3バネ部32cは支持梁16との固定側である)、長さ寸法の長い第1バネ部32aが図7の点線で示すようにX軸方向に撓むため、振動を効果的に吸収でき、振動が第3バネ部32cを介して支持梁16には伝達されにくい。他のバネ部33?35についても同様に質量部10,11の励振による振動を吸収し支持梁16,17への伝達を抑制している。
[0046] 図3,図4に示す質量部10,11がX軸方向に逆位相で励振している状態で、Z軸方向を回転軸として角速度Ωが角速度センサ1に加わると、コリオリ力を受けて、質量部10,11がY軸方向に逆位相で振動する(図示せず)。このときの振動がバネ部32?35を介して支持梁16,17に伝わると、支持梁16,17はアンカ部22,23を支点としてシーソー振動する(点線で示す)。振動の伝達は若干、第2バネ部32b及び第3バネ部32cの撓みでバネ部に吸収されるもののY軸方向への振動は、同様にY軸方向に延びる第1バネ部32aが支配的に伝達手段としての役割を担い、振動がバネ部32?35を介して効果的に支持梁16,17にまで伝わる。
[0047] 図3では、質量部10が図示下方向に、質量部11が図示上方向に振動し、アンカ部22,23より図示右側の支持梁16,17が共に矢印C,Dの方向に振動し、一方、アンカ部22,23より図示左側の支持梁16,17が共に矢印E,Fの方向に振動して支持梁16,17が同方向にアンカ部22,23を支点としてシーソー振動している状態を示している。一方、図4では、質量部10が図示上方向に、質量部11が図示した方向に振動し、アンカ部22,23より図示右側の支持梁16,17が共に矢印G,Hの方向に振動し、一方、アンカ部22,23より図示左側の支持梁16,17が共に矢印I,Jの方向に振動して支持梁16,17が同方向で且つ図3とは逆方向にアンカ部22,23を支点としてシーソー振動している状態を示している。
[0048] 図3,図4のように支持梁16,17がシーソー振動することで、支持梁16,17のY軸方向への変位に基づき各検出部18?21の静電容量が変化する。具体的には図3のように支持梁16,17が図示右下がり(左上がり)のシーソー振動をしたとき、図1に示す第1検出部18,第4検出部21の静電容量は小さくなり、第2検出部19,第3検出部20の静電容量は大きくなる。一方、図4のよに支持梁16,17が図示右上がり(左下がり)のシーソー振動をしたとき、図1に示す第1検出部18,第4検出部21の静電容量は大きくなり、第2検出部19,第3検出部20の静電容量は小さくなる。これにより、支持梁16,17の変位量を静電容量変化の差動出力として得ることが出来る。
[0049] 以上のように本実施形態では、支持梁16,17と質量部10,11とをバネ部32?35を介して連結し、支持梁16,17の変位量を検出する検出部18?21を設けた。本実施形態では、X軸方向及びY軸方向に直交するZ軸方向を回転軸として角速度が加わると、X軸方向に逆位相で励振していた質量部10,11がY軸方向にコリオリ力を受けて振動する。このとき、一対の質量部10,11はY軸方向に逆位相で振動し、質量部10,11とバネ部32?35を介して連結された支持梁16,17はY軸方向にアンカ部22,23を支点としてシーソー振動する。本実施形態の構成によれば、漏れ振動の発生を適切に抑制でき、簡単な構造で角速度Ωの検出精度を向上させることができる。」

(6)対比・判断
ア 本願発明1について
(ア)本願発明1と引用発明とを対比する。
a 引用発明における「角速度センサ」は、本願発明1における「回転速度センサ(101)」に相当する。
b 引用発明における「駆動方向である第1方向に駆動される駆動部(100)」は、本願発明1における「少なくとも1つのコリオリ素子(113)」に相当する。また、引用発明における「駆動方向に駆動部(100)を振動させるために駆動力を発生させる櫛歯型の駆動電極」は、本願発明1における「コリオリ素子(113)を駆動して振動させるため、当該のコリオリ素子(113)に接続されて」いる「駆動装置(103,109)」に相当する。
c 引用発明においては、「前記駆動部(100)と前記検出部(101)とを連結する弾性部材(206)とを各々有する第1ユニットと第2ユニットとを備え」るから、「検出部(101)」は2つあるといえる。そうすると、引用発明における「前記第1方向に直交する検出方向である第2方向に可動する検出部(101)」及び「検出方向の変位を検出できるよう駆動方向に突出した可動検出電極」は、本願発明1における「少なくとも2つの検出素子(119)を有する検出装置」に相当する。
d 引用発明における「前記第1ユニットの検出部(101)の上面と前記第2ユニットの検出部(101)の上面とは、該第1ユニットの駆動部(100)及び該第2ユニットの駆動部(100)の上面と離間する連成梁(104)により接続され、連成梁(104)は、固定ポスト104a-梁部104b-中央部バネ形状部104e-梁部104b-固定ポスト104aの順番で、カップリング対象を接続している」ことと、本願発明1における「当該の検出素子は、結合装置(121,121a,121b,123)によって互いに結合されており」、「前記の結合装置(121,121a,121b,123)には少なくとも1つのダブルシーソ(121)が含まれており、前記の少なくとも1つのダブルシーソ(121)は、少なくとも2つの前記の検出素子にそれぞれ結合された、2つの結合シーソ(121a,121b)を含んでいる」ことは、共に、「当該の検出素子は、結合装置(121,121a,121b,123)によって互いに結合されて」いる点で共通する。
e 引用発明における「前記駆動部(100)と前記検出部(101)とを連結する弾性部材(206)」は、本願発明1における「前記の検出装置およびコリオリ素子(113)に接続された別の結合装置(127)」に相当する。また、引用発明においては、「検出部(101)」は、「駆動部(100)」と「弾性部材(206)」で連結され、駆動方向である「第1方向に直交する検出方向である第2方向に可動」であり、「検出方向の変位」が検出されるから、引用発明における「前記第1方向に直交する検出方向である第2方向に可動する検出部(101)と、前記駆動部(100)と前記検出部(101)とを連結する弾性部材(206)とを」有し、「検出部(101)は、検出方向の変位を検出できるよう駆動方向に突出した可動検出電極を備え」ることは、本願発明1における「当該の別の結合装置(127)により、前記のコリオリ素子(113)の振動面にて当該の振動に直交する方向の偏位が、前記の検出装置に結合されて」いることに相当する。

(イ)以上のことから、本願発明1と引用発明とは、
「駆動装置と、
少なくとも1つのコリオリ素子と、
少なくとも2つの検出素子を有する検出装置とを備える回転速度センサにおいて、
当該の検出素子は、結合装置によって互いに結合されており、
前記の駆動装置は、コリオリ素子を駆動して振動させるため、当該のコリオリ素子に接続されており、
前記の回転速度センサはさらに、
前記の検出装置およびコリオリ素子に接続された別の結合装置を有しており、
当該の別の結合装置により、前記のコリオリ素子の振動面にて当該の振動に直交する方向の偏位が、前記の検出装置に結合されている、
回転速度センサ。」
である点で一致する一方、次の点で相違する。

(相違点)
本願発明1においては、「前記の結合装置(121,121a,121b,123)には少なくとも1つのダブルシーソ(121)が含まれており、前記の少なくとも1つのダブルシーソ(121)は、少なくとも2つの前記の検出素子にそれぞれ結合された、2つの結合シーソ(121a,121b)を含んでいる」のに対し、引用発明では、「前記第1ユニットの検出部(101)の上面と前記第2ユニットの検出部(101)の上面」とを接続する「連成梁(104)」が「固定ポスト104a-梁部104b-中央部バネ形状部104e-梁部104b-固定ポスト104aの順番で、カップリング対象を接続」する点。

(ウ)相違点の判断
上記相違点について判断する。
引用発明における「連成梁(104)」は、「第1ユニットの検出部(101)の上面と」「第2ユニットの検出部(101)の上面」とを接続し、「固定ポスト104a-梁部104b-中央部バネ形状部104e-梁部104b-固定ポスト104aの順番で、カップリング対象を接続」する構成であるところ、当該「連成梁(104)」を他の構成のものにするという動機付けを見出すことはできない。また、引用例2ないし5のいずれにも、結合装置が、2つの検出素子にそれぞれ結合された2つの結合シーソを含むダブルシーソを含むことは記載されていないから、仮に、引用発明に引用例2ないし5に記載された発明を適用したとしても、本願発明1の上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
そして、本願発明1は上記相違点に係る構成を有することにより、「障害モードを効果的に抑止してエラー信号を回避する」(本願明細書段落【0007】)という課題を解決できると認められる。

(エ)したがって、本願発明1は、引用例1ないし5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本願発明2ないし13について
本願発明2ないし13は、いずれも、請求項1を直接又間接的に引用するものであるから、本願発明2ないし13は、本願発明1について述べたのと同様の理由により、引用例1ないし5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(7)小括
以上のとおりであるから、原査定の理由によって本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は、概略、以下のとおりである。

「1 本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



請求項1に「前記の少なくとも1つのダブルシーソ(121)は、少なくとも2つの前記の検出素子にそれぞれ結合された、板状の2つの結合シーソ(121a,121b)を含んでいる」と記載されているが、発明の詳細な説明には、2つの結合シーソ(121a,121b)が板状であることは記載されていないため、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

2 本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1に「当該のこのコリオリ素子(113)」と記載されているが、「当該のこの」の意味が不明である。

(2)請求項1に「当該の結合装置により」と記載されているが、「当該の結合装置」が、「結合装置(121,121a,121b,123)」、「別の結合装置(127)」のいずれを指しているのかが不明である。」

2 当審拒絶理由についての判断
(1)本件補正により、本件補正前の請求項1の「板状の」という記載が削除されたため、請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし13に係る発明が発明の詳細な説明に記載されたものになった。
(2)本件補正により、本件補正前の請求項1の「当該のこのコリオリ素子(113)」という記載が「当該のコリオリ素子(113)」と補正され、また、本件補正前の請求項1の「当該の結合装置」という記載が「当該の別の結合装置(127)」と補正されたため、請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし13に係る発明が明確になった。
(3)したがって、当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由及び当審拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-16 
出願番号 特願2011-123382(P2011-123382)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01C)
P 1 8・ 121- WY (G01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梶田 真也  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 関根 洋之
大和田 有軌
発明の名称 回転速度センサ  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  
代理人 高橋 佳大  

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