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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03G |
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管理番号 | 1322902 |
審判番号 | 不服2016-1284 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-01-28 |
確定日 | 2017-01-10 |
事件の表示 | 特願2014- 36239「画像形成装置及び該装置の起動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月 7日出願公開、特開2015-161756、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年2月27日の出願であって、平成27年11月10日付けでで拒絶査定がされ、これに対し、平成28年1月28日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされ、その後、当審において、同年9月20日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対し、同年11月10日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1乃至6に係る発明は、上記平成28年11月10日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める(以下請求項1乃至6に係る発明を、それぞれ、「本願発明1」、乃至「本願発明6」といい、これらを総称して「本願発明」という。)。 「【請求項1】 定着ローラを有する画像形成部と、該画像形成部による画像形成時に前記定着ローラの表面温度を、画像形成可能な定着温度まで上げるエンジン制御部とを備える画像形成装置であって、 待機状態で消費電力を節減する省エネルギーモードへの移行及び省エネルギーモードからの起動を制御し、前記定着ローラの表面温度の制御を前記エンジン制御部に指示する電力制御部と、 前記省エネルギーモードから起動させる時刻スケジュールが設定されたタイマ部とを備え、 前記電力制御部は、前記タイマ部に設定された時刻スケジュールに従って前記画像形成装置を前記省エネルギーモードから起動した場合、前記画像形成部の前記定着ローラの表面温度を前記定着温度よりも低い温度に制御することを特徴とする画像形成装置。 【請求項2】 各ジョブの実行時にジョブ毎に実行時刻を記憶した記憶部と、前記タイマ部に設定された時刻スケジュールに従って前記画像形成装置を前記省エネルギーモードから起動した時刻を含む時間帯に実行されたジョブ数を前記記憶部から取得するジョブ数取得部とを備え、 前記電力制御部は、前記ジョブ数取得部により取得されたジョブ数が所定値より少ない場合に、前記画像形成装置を前記省エネルギーモードから起動した後、ユーザによる前記画像形成装置への操作が有ったと判定されるまで、前記定着ローラの表面温度を前記定着温度よりも低い第1の温度に制御し、前記ジョブ数取得部により取得されたジョブ数が所定値以上の場合に、前記画像形成装置を前記省エネルギーモードから起動した後、ユーザによる前記画像形成装置への操作が有ったと判定されるまで、前記定着ローラの表面温度を前記第1の温度よりも高く前記定着温度よりも低い第2の温度に制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。 【請求項3】 各ジョブの実行時にジョブ毎に実行時刻を記憶した記憶部と、前記タイマ部に設定された時刻スケジュールに従って前記画像形成装置を前記省エネルギーモードから起動した時刻を含む時間帯に実行されたジョブ数を前記記憶部から取得するジョブ数取得部とを備え、 前記電力制御部は、前記ジョブ数取得部により取得されたジョブ数と、複数の所定値とを比較し、前記画像形成装置を前記省エネルギーモードから起動した後、ユーザによる前記画像形成装置への操作が有ったと判定されるまで、前記ジョブ数が前記所定値よりも少ない程、比較結果に応じて、前記定着ローラの表面温度を、前記定着温度よりも低い温度に段階的に制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。 【請求項4】 各ジョブの実行時にジョブ毎に実行時刻及びカラー/モノクロの別を記憶した記憶部と、前記タイマ部に設定された時刻スケジュールに従って前記画像形成装置を前記省エネルギーモードから起動した時刻を含む時間帯に実行されたカラージョブ数及びモノクロジョブ数を前記記憶部から取得するジョブ数取得部とを備え、 前記電力制御部は、前記ジョブ数取得部により取得されたカラージョブ数がモノクロジョブ数より少ない場合に、前記画像形成装置を前記省エネルギーモードから起動した後、ユーザによる前記画像形成装置への操作が有ったと判定されるまで、前記定着ローラの表面温度を前記定着温度よりも低い第1の温度に制御し、前記ジョブ数取得部により取得されたカラージョブ数がモノクロジョブ数以上の場合に、前記画像形成装置を前記省エネルギーモードから起動した後、ユーザによる前記画像形成装置への操作が有ったと判定されるまで、前記定着ローラの表面温度を前記第1の温度よりも高く前記定着温度よりも低い第2の温度に制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。 【請求項5】 前記電力制御部は、ユーザによる操作に従って前記画像形成装置を前記省エネルギーモードから起動した場合、前記画像形成部の前記定着ローラの表面温度を前記定着温度まで上げることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の画像形成装置。 【請求項6】 定着ローラを有する画像形成部と、該画像形成部による画像形成時に前記定着ローラの表面温度を、画像形成可能な定着温度まで上げるエンジン制御部とを備える画像形成装置の起動方法であって、 タイマ部に設定された時刻スケジュールに従って、待機状態で消費電力を節減する省エネルギーモードから起動するタイマ起動ステップと、 該タイマ起動ステップにて前記省エネルギーモードから起動した場合に、前記画像形成部の前記定着ローラの表面温度を前記定着温度よりも低い温度に制御する温度制御ステップとを備えたことを特徴とする画像形成装置の起動方法。」 第3 原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項 1-6 ・引用文献等 1-7 ・備考 (1)請求項1、6について 引用文献1には、画像形成部による画像形成時に定着ローラの表面温度を、画像形成可能な定着温度まで上げる画像形成装置であって、待機状態で消費電力を節減する省エネルギーモードへの移行及び省エネルギーモードからの起動を制御する電力制御部と、省エネルギーモードから起動させる時刻スケジュールが設定されたタイマ部を備え、電力制御部は、タイマ部に設定された時刻スケジュールに従って画像形成装置を省エネルギーモードから起動する画像形成装置が記載されている(特に段落【0008】を参照されたい。)。 請求項1、6に係る発明と引用文献1に記載された発明を対比すると、請求項1、6に係る発明は、省電力モードから復帰する場合に、定着ローラの表面温度を定着温度よりも低い温度に制御するものであるのに対して、引用文献1に記載された発明は、そのような構成が明確でない点(以下、「相違点」という。)で相違する。 上記相違点について検討すると、引用文献2には、省電力モードから復帰する場合に、待機モードとし、定着ローラの表面温度を定着温度よりも低い温度に制御すること(特に段落【0009】、【0032】、【0033】を参照されたい。)が記載されており、この技術を引用文献1に記載された発明に適用し、請求項1、6に係る発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。 <引用文献等一覧> 1.特開2007-274487号公報 2.特開2010-86371号公報 3.特開2013-231803号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2008-292713号公報(周知技術を示す文献) 5.特開2008-85925号公報 6.特開2009-104067号公報(周知技術を示す文献) 7.特開2013-186196号公報(周知技術を示す文献) 2.原査定の理由の判断 (1)刊行物の記載事項 ア.刊行物1 本願の出願日前である平成19年10月18日に頒布された特開2007-274487号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 外部装置と通信を行う通信手段を備えた画像処理装置であって、 画像処理に関する部品若しくは部品の集合である1又は複数の機能ブロックに対し、前記通信手段に対する通電とは独立して通電するか否かを切り替える通電切替手段と、 前記機能ブロックの通電制御に関する予め定められた時刻スケジュールを記憶する時刻スケジュール記憶手段と、 前記通信手段が兼ね備えるものであり、前記機能ブロックが通電無し状態である場合に、前記時刻スケジュール記憶手段に記憶された前記時刻スケジュールに従って前記制御部通電切替手段を制御することにより、前記機能ブロックを通電有り状態に切り替えるスケジュール起動制御手段と、 を具備してなることを特徴とする画像処理装置。」 (イ)「【0008】 本発明に係る画像処理装置は、通信手段が、予め定められた時刻スケジュールに従って省電力状態から稼働状態へ自動復帰する機能を実現する。従って、当該画像処理装置は、夜間や休日などの使用頻度が低い時刻(予め定められた時刻)に、通信手段を通電有りの状態に維持しつつ、その他の機器である前記機能ブロックを通電無しの状態(省電力状態)にすることができる。その結果、当該画像処理装置は、省電力状態において、消費電力を極力抑えつつ、外部装置との通信処理を実行可能な状態に維持できる。 また、前記スケジュール起動制御手段が、各々個別に通電するか否かの切り替えが可能に構成された複数の機能ブロック各々について、個別に通電状態を切り替えることにより、必要最小限の機能ブロックのみを必要なタイミングで起動する(通電有り状態に切り替える)ことができる。その結果、さらなる省電力化が図れる。 特に、前記スケジュール起動制御手段が、予め定められた手順に従って、複数の前記機能ブロック各々を起動時間(通電開始時から動作準備完了状態となるまでの時間)が長いものから順に起動し、それらがほぼ同時に動作準備完了状態となるようにすれば、起動時間の短い機能ブロックが、先に立ち上がって無駄に消費する電力を低減すことができる。 また、通信手段において、前記クロック信号生成手段が生成するクロック信号の積算結果に基づいて時刻を計時し、その計時時刻の校正を、前記基準時刻計時手段を備える機能ブロックが通電有り状態であるときに行えば、通信手段に時計ICのような高度な部品を新たに設けることなく、前記スケジュール起動制御手段を実現できる。」 (ウ)「【0011】 [画像処理装置X] 画像処理装置Xは、例えばLAN及びインターネット等からなるネットワーク30を介して、情報配信サーバ31(外部装置の一例)やホスト装置32と通信可能に構成され、その通信を行う通信手段の一例として、ネットワークインターフェースカード5(以下、NICという)を備えている。ここで、情報配信サーバ31は、Webサーバ機能を備えたコンピュータである。また、ホスト装置32は、パーソナルコンピュータなどの計算機である。 画像処理装置Xは、図1に示すように、前記NIC5に加え、操作・表示部2、ハードディスクドライブ3(以下、HDDと称する)、画像処理演算部4、スキャナ制御部6、スキャナ部6a、プリント制御部7、プリント部7a、後処理制御部8、シフター8a、パンチャー8b、ステイプラー8c、メイン制御部9、通電切替回路10、メイン電源21、サブ電源22等を備えている。 さらに、スキャナ部6aは、自動原稿搬送装置6b(以下、ADFと称する)を備え、プリント部7aは定着用ヒータ7bを備えている。 また、図1に示す例では、メイン制御部9、画像処理演算部4、NIC5、スキャナ制御部6、プリント制御部7、後処理制御部8及び通電切替回路10は、バス11により相互に接続されている。 操作・表示部2は、情報を入力するための操作入力手段と、情報の表示手段とを備えるものである。その操作入力手段は、例えば、シートキーや液晶表示装置の表面に設けられたタッチパネル等から構成されるものである。また、その表示手段は、例えば、液晶表示装置やLEDランプ等から構成されるものである。この操作・表示部2により、利用者に対するマンマシンインターフェースが構成されている。 … 【0014】 プリント制御部7は、画像形成処理に関する処理を実行するプリント部7aに対して制御信号を出力することにより、プリント部7aを制御するものである。 プリント部7aは、不図示の給紙カセットに収容された記録紙を、1枚ずつ順次送り出し、所定の画像形成位置を経て排紙トレイまで搬送するものとともに、その画像形成位置において、スキャナ部6aにより原稿から読み取られた原稿の画像データや、画像処理演算部4により生成された印刷データ等に基づいて、記録紙に画像を形成(出力)するものである。ここで、当該画像処理装置Xは、原稿の画像データに基づく画像形成処理を行うことによって複写機として機能し、ホスト装置32から受信したプリント要求(印刷ジョブ)に基づく画像形成処理を行うことによってプリンタとして機能する。 このプリント部7aは、例えば、像を担持する感光体ドラム、その感光体ドラムに対し帯電を行う帯電装置、与えられた画像データや印刷ジョブに基づく静電潜像を感光体ドラム表面に書き込む露光装置、その静電潜像をトナー像として現像する現像装置、感光体ドラム上のトナー像を記録紙に転写する転写装置、感光体ドラムや記録紙搬送用のローラを駆動するモータ等を備えている。 さらに、プリント部7aは、記録紙に転写されたトナー画像を、加熱して定着させる定着装置を備え、この定着装置は、定着用ヒータ7bが内装された加熱ローラと、トナー画像が転写された記録紙を前記加熱ローラに対して圧接させる加圧ローラと、各ローラを駆動するモータ等も備えている。 … 【0016】 NIC5は、例えば標準規格IEEE802.3に準拠したLAN及びインターネット等からなるネットワーク30を通じて、情報配信サーバ31との間でデータの送受信を行う通信インターフェースである(通信手段の一例)。また、NIC5は、例えば、画像処理演算部4により生成された画像データや、スキャナ部6aで読み取られた画像データ、或いはHDD3に保存されているデータを、ネットワーク30に接続されたホスト装置32へ送信する処理、さらには、そのホスト装置32から各種のデータ処理要求を受信する処理等も行う。ここで、データ処理要求には、記録紙に画像形成を行うことを要求するプリント要求(いわゆる、印刷ジョブ)、原稿から画像を読み取ることを要求するスキャン要求、前記データファイリング処理を行うことを要求するデータファイリング要求等が含まれる。 メイン電源21及びサブ電源22は、当該画像処理装置Xの各構成要素に対して電力を供給する電源回路である。 通電切替回路10は、NIC5から受ける制御信号に従って、サブ電源22の1つについて、これを商用電源に接続するか否かを切り替えることにより、メイン制御部9及びその他の制御部6?8を含む各機能ブロックに対して通電を行うか否かを切り替えるスイッチ回路である。この通電切替回路10は、NIC5に対する通電とは独立して各制御部6?9各々に対して個別に通電するか否かを切り替え可能に構成されている(制御部通電切替手段の一例)。 【0017】 メイン制御部9は、操作・表示部2、HDD3及び画像処理演算部4の各々を制御するものであり、さらに、スキャナ制御部6、プリント制御部7及び後処理制御部8各々との間で、それら各制御部が実行するデータ処理に必要な情報や、そのデータ処理によって得られる情報の授受を行うものである。 例えば、メイン制御部9は、プリント制御部7に対し、画像形成先となる記録紙のサイズや、出力画像の縮倍率や濃度補正値、カラー画像形成処理を行うかモノクロ画像形成処理を行うか等の情報を引き渡す一方、プリント制御部7からは、何枚目の記録紙への画像形成まで終了したかの情報や、プリント部7aで発生したエラーの情報等を取得する。さらに、メイン制御部9は、スキャナ制御部6に対し、原稿における画像読み取り範囲の情報等を引き渡す一方、スキャナ制御部7からは、ADF6bを用いて何枚目の原稿まで画像読み取りが終了したかの情報や、スキャナ部6aによって読み取られた画像データ、ADF6bで発生したエラーの情報等を取得する。また、メイン制御部9は、後処理制御部8に対し、シフター8aによる仕分け処理の種類に関する情報や、パンチャー8bやステイプラー8cにより穴開け処理やステイプル綴じ処理を施す記録紙の枚数情報等を引き渡す一方、後処理制御部8からは、シフター8a、パンチャー8b及びステイプラー8cで発生したエラー情報等を取得する。 以上に示したように、メイン制御部9、HDD3、スキャナ制御部6、スキャナ部6a、プリント制御部7、プリント部7a、後処理制御部8、後処理実行部8a?8cは、各々機能に応じて区分された部品若しくは部品の集合として構成された機能ブロックである。」 (エ)「【0023】 [電源系統] 次に、図4に示す電源系統図を参照しつつ、画像処理装置Xにおける各機能ブロックに対する電源の接続関係の一例について説明する。 なお、図4では、電源供給ラインを実線で表し、その他の信号伝送ラインを破線で表している。 図4に示す例では、画像処理装置Xは、9個のサブ電源22を備えている。以下、それぞれ第1サブ電源221?第9サブ電源229と称する。 前記メイン電源21は、NIC5及び通電切替回路10に対して電力を供給する電源である。 このメイン電源21は、当該画像処理装置X全体に対する根元の電力供給源となる商用電源50に対し、手動操作に応じて電源供給ラインを導通させるか遮断するかを手動で切り替える手動切替スイッチ40を介して接続されている。利用者がこの手動切替スイッチ40の切り替え操作をすることにより、NIC5及び通電切替回路10に対して通電されるか否かが切り替えられる。従って、NIC5及び通電切替回路10は、当該画像処理装置Xが商用電源50に接続されている状態では、利用者の操作によって手動切替スイッチ40が導通状態から遮断状態に切り替えられない限り、常に通電された状態となる。また、手動切替スイッチ40が遮断状態に切り替えられると、当該画像処理装置X全体が非通電状態(停止状態)となる。 【0024】 一方、第1サブ電源221は、メイン制御部9、操作・表示部2及び画像処理演算部4に対して電力を供給する電源回路である。 また、第2サブ電源222、第3サブ電源223及び第4サブ電源224は、それぞれスキャナ制御部6、プリント制御部7及び後処理制御部8の各々に対して電力を供給する電源回路である。 また、第5サブ電源225、第6サブ電源226及び第9サブ電源229は、それぞれHDD3、スキャナ部6a、後処理実行部8a?8cの各々に対して電力を供給する電源回路である。 また、第7サブ電源227は、プリント部7aのうちの定着用ヒータ7bを除く機器に対して電力を供給する電源回路であり、第8サブ電源228は、定着用ヒータ7bに対して電力を供給する電源回路である。 【0025】 また、第1サブ電源221?第9サブ電源229各々は、商用電源50に対し、前記手動切替スイッチ40と、所定の制御信号に基づいて電源供給ラインを導通させるか遮断するかを切り替える自動切替スイッチ41?49とを介して接続されている。なお、図4から明らかなように、自動切替スイッチ41と第1サブ電源221、自動切替スイッチ42と第2サブ電源222、…、自動切替スイッチ449と第9サブ電源229が各々対応関係にある。 これにより、手動切替スイッチ40が導通状態にされた上で、さらに自動切替スイッチ41?49の各々が導通状態となって初めて、サブ電源221?229各々が通電状態となる。 以下、電源供給ラインを導通させること及び遮断することを、各々ONする及びOFFするという。同様に、電源供給ラインが導通した状態のこと及び遮断した状態のことを、各々ON状態及びOFF状態という。 そして、自動切替スイッチ41?49は、その各々がON状態となるかOFF状態となるかにより、各機能ブロック6?10、6a、7a、8a?8c各々に対して個別に通電するか否かを切り替える通電切替手段として機能する。 これ以降、画像処理装置Xにおいて、NIC5が通電有りの状態(手動切替スイッチ40が導通状態)であり、全ての機能ブロック6?10、6a、7a、8a?8cが通電無しである状態(自動切替スイッチ41?49の全てがOFF状態)をスリープモードという。一方、NIC5及び全ての機能ブロック6?10、6a、7a、8a?8cが通電有りである状態を稼働モードという。なお、状況に応じて、画像処理装置Xは、NIC5及び一部の機能ブロックのみが通電有りの状態である待機モード(準稼動モードといってもよい)となる場合もある。例えば、定着ヒータ7bやHDD3などの一部の機能ブロックのみが通電無しの状態となる場合がある。」 (オ)「【0028】 [第1のスリープ条件] 第1のスリープ条件は、現在の日時が、予め定められた1週間分の時刻スケジュール(以下、週間スケジュールという)において、全ての機能ブロックが通電無し状態となるように設定されている時間帯に属しているという条件である。この週間スケジュールは、NIC5のフラッシュメモリ66に記憶される(時刻スケジュール記憶手段の一例)。以下、予め定められた週間スケジュール(時刻スケジュールの一例)に従って自動切替スイッチ41?49を制御することにより、機能ブロック各々の通電状態を制御することを、ウィークリータイマ制御という。このウィークリータイマ制御を実行するNIC5のMPU63が、スケジュール制御手段の一例である。 図6は、ウィークリタイマ制御の週間スケジュールWSの内容を模式的に表したものである。図6中の各升目は、曜日(月曜日?日曜日)及び時刻(00時台?23時台)によって規定される時間帯である。また、空欄の升目は、通電無し状態となるよう設定されている時間帯を表し、*印が記されている升目は、通電有り状態となるよう設定されている時間帯を表す。 この週間スケジュールWSは、予め区分された複数の機能ブロック群(機能ブロックの集合)ごとに設定される。具体的には、スキャン処理を実行するために必要なスキャン機能ブロック群、プリント処理及び後処理を実行するために必要なプリント機能ブロック群、データファイリング処理を実行するために必要なデータファイリング機能ブロック群の各々について設定される。 ここで、スキャン機能ブロック群には、メイン制御部9、HDD3、スキャナ制御部6、スキャナ部6aが含まれる。 また、プリント機能ブロック群には、メイン制御部9、HDD3、プリント制御部7、プリント部7a、後処理制御部8、後処理実行部8a?8cが含まれる。 また、データファイリング機能ブロック群には、メイン制御部9、HDD3が含まれる。 これら機能ブロック群ごとの週間スケジュールWSにより、全ての機能ブロックが通電無し状態となるよう設定されている時間帯が、スリープモードに設定されている時間帯であり、現在時刻がそのような時間帯に属しているという条件が、第1のスリープ条件である。 NIC5のMPU63は、図6に示す週間スケジュールWSの情報を、予めメイン制御部9から取得してフラッシュメモリ66に予め記憶させておく。 さらに、NIC5のMPU63は、前記機能ブロック群各々について、前述したクロック発振器63aを用いて計時した現在の曜日及び時刻が、フラッシュメモリ66に記憶された週間スケジュールWSにおいて、通電無し状態(空欄)と通電有り状態(*印)のいずれに設定されている時間帯であるのかを判別する。そして、NIC5のMPU63は、その判別結果に応じて、通電切替回路10を通じて自動切替スイッチ41?49を制御することにより、各機能ブロックを通電有り状態から通電無し状態へ切り替えたり、通電無し状態から通電有り状態へ切り替えたりする。 なお、メイン制御部9は、操作・表示部2を制御することにより、利用者が週間スケジュールWSの内容を設定可能とする週間スケジュール設定機能を備えている。この週間スケジュール設定機能により設定された週間スケジュールWSは、メイン制御部9からNIC5に伝送され、NIC5のMPU63がフラッシュメモリ66に格納する。」 そうすると、上記(ア)乃至(オ)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「外部装置と通信を行う通信手段を備えた画像処理装置であって、 画像処理に関する部品若しくは部品の集合である1又は複数の機能ブロックに対し、前記通信手段に対する通電とは独立して通電するか否かを切り替える通電切替手段と、 前記機能ブロックの通電制御に関する予め定められた時刻スケジュールを記憶する時刻スケジュール記憶手段と、 前記通信手段が兼ね備えるものであり、前記機能ブロックが通電無し状態である場合に、前記時刻スケジュール記憶手段に記憶された前記時刻スケジュールに従って前記制御部通電切替手段を制御することにより、前記機能ブロックを通電有り状態に切り替えるスケジュール起動制御手段と、 画像処理装置は、NICに加え、操作・表示部、ハードディスクドライブ(以下、HDDと称する)、画像処理演算部、スキャナ制御部、スキャナ部、プリント制御部、プリント部、後処理制御部、シフター、パンチャー、ステイプラー、メイン制御部、通電切替回路、メイン電源、サブ電源等を備え、 プリント部は、記録紙に転写されたトナー画像を、加熱して定着させる定着装置を備え、この定着装置は、定着用ヒータが内装された加熱ローラと、トナー画像が転写された記録紙を前記加熱ローラに対して圧接させる加圧ローラと、各ローラを駆動するモータ等も備え、 メイン電源及びサブ電源は、当該画像処理装置の各構成要素に対して電力を供給する電源回路であり、 通電切替回路は、NICから受ける制御信号に従って、サブ電源の1つについて、これを商用電源に接続するか否かを切り替えることにより、メイン制御部及びその他の制御部を含む各機能ブロックに対して通電を行うか否かを切り替えるスイッチ回路であり、この通電切替回路は、NICに対する通電とは独立して各制御部各々に対して個別に通電するか否かを切り替え可能に構成され、 画像処理装置は、9個のサブ電源を備え、 第8サブ電源は、定着用ヒータに対して電力を供給する電源回路であり、 NICのMPUは、週間スケジュールの情報を、予めメイン制御部から取得してフラッシュメモリに予め記憶させておき、 さらに、NICのMPUは、前記機能ブロック群各々について、前述したクロック発振器を用いて計時した現在の曜日及び時刻が、フラッシュメモリに記憶された週間スケジュールにおいて、通電無し状態(空欄)と通電有り状態(*印)のいずれに設定されている時間帯であるのかを判別し、そして、NICのMPUは、その判別結果に応じて、通電切替回路を通じて自動切替スイッチを制御することにより、各機能ブロックを通電有り状態から通電無し状態へ切り替えたり、通電無し状態から通電有り状態へ切り替えたりする、 画像処理装置。」 イ.刊行物2 本願の出願日前である平成22年4月15日に頒布された特開2010-86371号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【0011】 図1は、本発明の実施の形態による情報処理装置の概略構成の一例を示したブロック図であり、情報処理装置の一例としてファクシミリ(FAX)送受信機能及び印刷機能を有する複合機1が示されている。この複合機1は、電源供給部10、CPU20、FAX送受信部21、操作部22、用紙検出部23、スキャナ部24、フラッシュメモリ25、SDRAM26、プリンタ部29、表示制御部32、LCD33及びバックライト34により構成される。」 (イ)「【0017】 プリンタ部29は、画像データを用紙に印刷する静電転写方式の印刷部であり、感光体ドラム、帯電器、現像装置、転写装置及び定着装置などによって構成される。定着装置は、定着ローラ31と、定着ローラ31を加熱する加熱ヒータ30などによって構成される。」 (ウ)「【0023】 メインプログラムA2は、待機動作を行うとともに、FAX送受信部21によるファクシミリ送受信、スキャナ部24による原稿の読み取りによる印刷トリガ信号に基づいてプリンタ部29に印刷処理を開始させる動作プログラムである。待機動作としては、プリンタ部29の加熱ヒータ30を制御して定着ローラ31を一定温度に保持する予熱制御、プリンタ部29に対して印刷処理の開始を指示する印刷トリガ信号を検出する処理が行われる。また、CPU20の実行対象をフラッシュメモリ25上の省電力プログラムA3に切り替える処理、表示制御部32を制御してバックライト34を点灯させる処理も行われる。 【0024】 印刷トリガ信号としては、FAX送受信部21からのファクシミリ着信信号、印刷を指示するためのキー操作に基づく入力信号、用紙検出部23による検出信号、或いは、LANを介して他の端末装置から受信するプリント指令パケットの受信信号などが想定される。例えば、印刷ジョブとして予め指定された画像データをSDRAM26から読み出し、プリンタ部29に印刷させる処理が行われる。 【0025】 省電力プログラムA3は、省電力動作を行う動作プログラムであり、省電力動作として、加熱ヒータ30及び表示制御部32に対する電源供給を遮断し、消費電力を待機動作時よりも減少させる処理が行われる。また、印刷トリガ信号を検出する処理、その検出結果に基づいて、CPU20の実行対象をSDRAM26上のメインプログラムA2に切り替える処理が行われる。」 (エ)「【0030】 図2は、図1の複合機1の要部における構成例を示したブロック図であり、CPU20内の機能構成の一例が示されている。このCPU20は、初期動作実行部41と、予熱制御部43、印刷制御部44、切替判別部45及び実行対象切替部46からなる待機動作実行部42と、リフレッシュ指示部48、電源供給制御部49及び実行対象切替部50からなる省電力動作実行部47とにより構成される。 【0031】 初期動作実行部41は、フラッシュメモリ25にアクセスし、フラッシュメモリ25上の起動プログラムA1に基づいて初期動作を行うプログラム実行部である。初期動作として、メインプログラムA2をフラッシュメモリ25からSDRAM26内の所定領域に読み出し、CPU20の実行対象をフラッシュメモリ25上の起動プログラムA1からSD RAM26上のメインプログラムA2に切り替える処理が行われる。 【0032】 待機動作実行部42は、SDRAM26にアクセスし、SDRAM26上のメインプログラムA2に基づいて待機動作を行うプログラム実行部である。予熱制御部43は、プリンタ部29の加熱ヒータ30を制御し、待機モードとして定着ローラ31を一定温度に保持する動作を行っている。 【0033】 印刷制御部44は、印刷トリガ信号を検出し、その検出結果に基づいてプリンタ部29に印刷処理を開始させる動作を行っている。プリンタ部29による印刷処理時には、定着ローラ31の温度を待機モード時よりも上げる制御が加熱ヒータ30に対して行われる。 【0034】 切替判別部45は、動作モードを待機モードから省電力モードに切り替えるか否かを判別する動作を行っている。例えば、待機状態が一定時間を越えて継続した場合に自動的に省電力モードに切り替えさせるために、最後の印刷処理が終了してから経過した時間に基づいて、省電力モードに切り替えるか否かが判別される。或いは、特定の時刻に自動的に省電力モードに切り替えさせるために、予め設定された時刻情報に基づいて、省電力モードに切り替えるか否かが判別される。 【0035】 実行対象切替部46は、切替判別部45による判別結果に基づいて、CPU20の実行対象をSDRAM26上のメインプログラムA2からフラッシュメモリ25上の省電力プログラムA3に切り替える動作を行っている。 【0036】 省電力動作実行部47は、フラッシュメモリ25にアクセスし、フラッシュメモリ25上の省電力プログラムA3に基づいて省電力動作を行うプログラム実行部である。リフレッシュ指示部48は、動作モードが待機モードから省電力モードに切替えられた際に、SDRAM26のリフレッシュ部28にリフレッシュ動作の開始を指示する動作を行っている。例えば、CPU20が、所定の開始コマンドをリフレッシュ部28に入力することによって、SDRAM26が外部リフレッシュモードからセルフリフレッシュモードに切り替えられる。 【0037】 電源供給制御部49は、加熱ヒータ30への電源供給を遮断し、省電力モードとして消費電力を待機モード時よりも減少させる動作が行われる。具体的には、電源供給部10を制御し、加熱ヒータ30に対する電源供給を遮断することによって、定着ローラ31の温度を待機モード時よりも下げる動作が行われる。」 (オ)「【0047】 図4のステップS101?S115は、図1の複合機1の動作の一例を示したフローチャートである。まず、CPU20の初期動作実行部41は、電源SW11をオンすることによって電源供給が開始された際に、フラッシュメモリ25内のブートセクタ51にアクセスし、起動プログラムA1を実行して初期動作を行う(ステップS101)。 【0048】 このとき、フラッシュメモリ25内のメインプログラムA2がSDRAM26にコピーされ、実行対象がSDRAM26上のメインプログラムA2に切り替えられる(ステップS102,S103)。 【0049】 次に、待機動作実行部42は、SDRAM26上のメインプログラムA2を実行して待機動作を行う(ステップS104)。このとき、印刷トリガ信号の入力が検出されれば、プリンタ部29による印刷処理が開始される(ステップS105,S115)。一方、印刷トリガ信号の入力がない状態が一定時間以上経過した場合には、省電力モードに動作モードが切り替えられる(ステップS105,S106)。 【0050】 待機動作実行部42は、動作モードを省電力モードに切り替える際、メインプログラムA2の実行位置を示すアドレス情報をフラッシュメモリ25内に書き込み(ステップS107)、実行対象をフラッシュメモリ25上の省電力プログラムA3に切り替える(ステップS108)。 【0051】 次に、省電力動作実行部47は、フラッシュメモリ25上の省電力プログラムA3を実行し、SDRAM26をセルフリフレッシュモードに切り替えるとともに、印刷トリガ信号の入力を検出する動作を行う(ステップS109,S110)。このとき、印刷トリガ信号の入力が検出されれば、省電力モードは解除され、SDRAM26のセルフリフレッシュモードが解除される(ステップS111,S112)。そして、実行対象がSDRAM26上のメインプログラムA2に切り替えられ(ステップS113)、待機動作が再開され、印刷処理が開始される(ステップS114)。印刷処理の終了後は、ステップS105以降の処理手順が繰り返される。」 そうすると、上記(ア)乃至(オ)の記載事項から、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「複合機1は、電源供給部10、CPU20、FAX送受信部21、操作部22、用紙検出部23、スキャナ部24、フラッシュメモリ25、SDRAM26、プリンタ部29、表示制御部32、LCD33及びバックライト34により構成され、 プリンタ部29は、画像データを用紙に印刷する静電転写方式の印刷部であり、感光体ドラム、帯電器、現像装置、転写装置及び定着装置などによって構成され、定着装置は、定着ローラ31と、定着ローラ31を加熱する加熱ヒータ30などによって構成され、 複合機1の要部のCPU20は、初期動作実行部41と、予熱制御部43、印刷制御部44、切替判別部45及び実行対象切替部46からなる待機動作実行部42と、リフレッシュ指示部48、電源供給制御部49及び実行対象切替部50からなる省電力動作実行部47とにより構成され、 予熱制御部43は、プリンタ部29の加熱ヒータ30を制御し、待機モードとして定着ローラ31を一定温度に保持する動作を行い、 プリンタ部29による印刷処理時には、定着ローラ31の温度を待機モード時よりも上げる制御が加熱ヒータ30に対して行われ、 切替判別部45は、動作モードを待機モードから省電力モードに切り替えるか否かを判別する動作を行い、例えば、待機状態が一定時間を越えて継続した場合に自動的に省電力モードに切り替えさせるために、最後の印刷処理が終了してから経過した時間に基づいて、省電力モードに切り替えるか否かが判別され、或いは、特定の時刻に自動的に省電力モードに切り替えさせるために、予め設定された時刻情報に基づいて、省電力モードに切り替えるか否かが判別され、 電源供給制御部49は、加熱ヒータ30への電源供給を遮断し、省電力モードとして消費電力を待機モード時よりも減少させる動作が行われ、具体的には、電源供給部10を制御し、加熱ヒータ30に対する電源供給を遮断することによって、定着ローラ31の温度を待機モード時よりも下げる動作が行われ、 印刷トリガ信号の入力が検出されれば、省電力モードは解除され、SDRAM26のセルフリフレッシュモードが解除され(ステップS111,S112)、そして、実行対象がSDRAM26上のメインプログラムA2に切り替えられ(ステップS113)、待機動作が再開され、印刷処理が開始される(ステップS114)、複合機1。」 ウ.刊行物3 本願の出願日前である平成25年11月14日に頒布された特開2013-231803号公報(以下「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【0054】 表1に示すように、薄紙では、定着ローラ51からの分離性を確保して巻き付きジャムを防止するために、目標温度を低めに抑える必要がある。厚紙は、定着ローラ51の熱負荷が大きいため、トナー像の定着性を確保すべく、目標温度は高めの温度設定である。各坪量範囲の記録材における、画像性(定着オフセット性、画像光沢)と搬送性(しわ、分離性)とを両立させるため、記録材の熱容量が大きいほど供給熱量を多くするように設定している。厚紙4は、記録材の熱容量が最も大きいため、ニップ部における記録材の搬送速度が通常の半分である。 (1)薄紙(52?63[g/m2])の目標温度は130℃、プロセススピードは320[mm/sec]である。 (2)普通紙(64?105[g/m2])の目標温度は150℃、プロセススピードは320[mm/sec]である。 (3)厚紙1(106?128[g/m2])の目標温度は160℃、プロセススピードは320[mm/sec]である。 (4)厚紙2(129?157[g/m2])の目標温度は170℃、プロセススピードは320[mm/sec]である。 (5)厚紙3(158?209[g/m2])の目標温度は180℃、プロセススピードは320[mm/sec]である。 (6)厚紙4(210?256[g/m2])の目標温度は160℃、プロセススピードは160[mm/sec]である。 【0055】 画像形成装置100は、定着ローラ51に比較的熱容量の大きい部材を使用しているため、初期の温度立上げ(ウォームアップ)に時間を要する。このため、プリント信号を受け付けてから温度調整の目標温度に短時間で移行できるように、通常のプリント動作をしていない時も、スタンバイ温度調整の制御をするようにしている。スタンバイ温度調整の目標温度については、初期設定として、薄紙(52?63[g/m2])及び普通紙(64?105[g/m2])において最速プリントができるように140℃としている。定着ローラ51のスタンバイ温度の初期設定を140℃とすることにより、使用頻度の高い普通紙で待機時間が発生することなく、画像形成を即時実行可能に待機することができる。また、スタンバイ温度は、操作部142からの温度調整の目標温度の設定変更が可能に なっている。厚紙の使用頻度が高い、厚紙を多く使用するユーザーであれば、操作部142を通じて150℃、160°、170°等に設定変更することができる。 【0056】 給紙許可温度とは、制御部141がジョブの開始信号を出すと同時に温度調整の目標温度を上記のように切り替えた後、給紙部10を動作させて画像形成を開始するためのトリガとする定着ローラ51の温度である。制御部141内の給紙動作制御部144は、温度センサ205による定着ローラ51の検出温度が給紙許可温度を上回ったときに、給紙部10を作動させる。 【0057】 制御部141は、ジョブのプリント枚数(A4換算値)によって給紙許可温度を選択するように、参照するテーブルを複数持つ。実施例1では、プリント枚数が5枚以上(A4換算値)の場合と5枚未満(A4換算値)の場合との2水準のテーブルを有している。プリント枚数が5枚未満であれば、通紙開始時の定着ローラ51の温度が低くても、通紙開始後の温度低下が許容範囲を下回る前に画像形成ジョブを終了できるからである。 (1)薄紙の場合、給紙許可温度を120℃から110℃に低下させる。 (2)普通紙の場合、給紙許可温度を140℃から130℃に低下させる。 (3)厚紙1の場合、給紙許可温度を150℃から140℃に低下させる。 (4)厚紙2の場合、給紙許可温度を160℃から150℃に低下させる。 (5)厚紙3の場合、給紙許可温度を170℃から160℃に低下させる。 (6)厚紙4の場合、給紙許可温度を150℃から140℃に低下させる。 【0058】 図3を参照して図4に示すように、制御部141は、スタンバイ状態にて待機中に画像形成ジョブの実行を受け付けると画像形成の準備を開始する(S1)。ここでは、一例として、制御部141は、A4サイズの厚紙3(158?209[g/m2])を100枚片面印刷する画像形成ジョブを受けたとする(S1)。 【0059】 制御部141は、ジョブ情報保有部143による記録材情報とプリント枚数情報に基づき表1のテーブルを参照して、ジョブ搬送速度と、定着温度調整の目標温度A℃、給紙許可温度B℃を決定する(S2)。制御部141は、表1により、搬送速度:等速、定着ローラ51の温度調整の目標温度:180℃、給紙許可温度:170℃、と決定する(S2)。 【0060】 制御部141は、装置内各所(画像形成部、定着装置等)を、決められた搬送速度での動作を始める(S3)。 【0061】 制御部141の定着温度制御部145は、温度センサ205からの温度情報に基づき、加熱素子201を制御して、定着ローラ51の昇温を開始する(S4)。スタンバイ温調140℃から厚紙3の温度調整の目標温度である180℃に向けて、加熱素子201を作動させる。これにより、定着ローラ51の温度が上昇を始める。 【0062】 制御部141は、定着ローラ51の現在温度による記録材P(厚紙3)の給紙判定を行う(S5)。給紙許可温度が170℃であるため、温度センサ205による定着ローラ51の検出温度が170℃を上回るまで、画像形成を待機させる(S6)。定着ローラ51が加熱されて温度が上昇し(S4?S6)、定着ローラ51の温度が171℃>給紙許可温度170℃、となったときに、制御部141は、給紙部10へ給紙動作信号を発信する(S7)。 【0063】 制御部141は、その後、温度調整の目標温度を180℃に設定した状態で、連続プリント動作を実行する(S8)。」 エ.刊行物4 本願の出願日前である平成20年12月4日に頒布された特開2008-292713号公報(以下「刊行物4」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【0025】 こうした定着温度の設定処理は繰返し行われてプレスローラの表面温度の変化に応じて定着温度が変更されるようになる。この場合、基準温度Tcを複数設定してさらにきめ細かく段階的に定着温度を変更させるようにしてもよい。」 オ.刊行物5 本願の出願日前である平成20年4月10日に頒布された特開2008-85925号公報(以下「刊行物5」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【0032】 そして、出力設定決定モジュール206は、ベイズ理論などの統計的手法を用いて、過去の印刷ジョブのカラー/白黒画素比率、過去の印刷ジョブのカラー/白黒モードの選択、現在の印刷ジョブのカラー/白黒画素比率の3つの要素から、現在の印刷ジョブをカラー/白黒いずれのモードで印刷すべきかの確率を算出する。」 (イ)「【0037】 ステップS220では、出力設定決定モジュール206が、ステップS218で求めた確率値であるカラージョブ確率を予め設定された閾値と比較する。閾値以上の場合はカラーモード、下回る場合は白黒モードが選択される。つまり、閾値以上の場合はステップS228へ進み、そうでない場合はステップS222へ進む。なお、ここで用いる閾値は、製造・出荷時に設定される場合、またはユーザー、管理者等により設定される場合などがある。 ステップS222およびステップS228では、ジョブ登録モジュール207が、処理中の印刷ジョブに関する情報をジョブ履歴記憶モジュール205に登録する。 ステップS224およびステップS230では、出力モジュール208が、出力設定決定モジュール206で決定されたカラー設定(カラーモードまたは白黒モード)とジョブ情報を受け取り、そのカラー設定に従って記録媒体上への印刷処理を実行する。そして、指定された印刷は終了する(ステップS226、ステップS232)。」 カ.刊行物6 本願の出願日前である平成21年5月14日に頒布された特開2009-104067号公報(以下「刊行物6」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【0026】 なお、プリンタ1が、カラー画像を印刷するカラーモードで動作する場合には、加熱ローラ12bの表面温度はカラー画像定着温度になるように制御され、溶解温度がカラートナーよりも低いモノクロトナーだけで作像されるモノクロ画像を印刷するモノクロモードで動作する場合には、加熱ローラ12bの表面温度はカラー画像定着温度よりも低いモノクロ画像定着温度になるように制御されるものとする。」 キ.刊行物7 本願の出願日前である平成25年9月19日に頒布された特開2013-186196号公報(以下「刊行物7」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【0035】 省電力モードにおいてユーザーからの解除指示を受け付けると(時点te)、ヒーター53への供給電力を最大にして定着ローラー51を待機温度Twから昇温させ(ウォームアップ)、定着ローラー51の温度が定着温度Tsに達すると(時点tf)、画像形成ジョブが実行可能なレディ状態に遷移する。 省電力モードに入ったときに検出された熱流出量の大きさに基づき決定された待機温度Twからウォームアップを開始するので、定着ローラー51の熱流出量が多くても少なくても、復帰時間tuに大きな差が生じることがなく、復帰時間のばらつきを抑制することができる。以下、図1に戻り、制御部7の各部の構成を具体的に説明する。 (3)制御部7の構成 制御部7は、電力検出部71と、待機温度決定部72と、基準待機温度決定部73と、復帰時間決定部74と、電力制御部75と、全体制御部76と、待機温度移行時間決定部77と、待機温度移行時間記憶部78と、温度検出部79と、定着温度記憶部80と、省電力モード時間履歴記憶部81と、タイマー82と、基準供給電力決定部83と、復帰時間記憶部84を備える。」 (2)対比 そこで、本願発明1と引用発明1とを対比すると、 ア.後者の「定着用ヒータが内装された加熱ローラ」、「プリント部」、「画像処理装置」及び「時刻スケジュール」は、それぞれ、前者の「定着ローラ」、「画像形成部」、「画像形成装置」及び「時刻スケジュール」に相当する。 イ.後者の「第8サブ電源」は、定着用ヒータに対して電力を供給する電源回路であって、通電切替回路によって、商用電源に接続するか否かを切り替えられ、通電するか否かを切り替えられる、という二者択一の制御を行うものである。そして、定着用ヒータに対する通電における二者択一の制御といえば、画像形成時に定着用ヒータを画像形成可能な定着温度まで上げるか、否かという二者択一の制御しかありえないことは、定着ローラの技術から明らかである。そうすると、後者の「第8サブ電源」は、画像形成部による画像形成時に定着ローラの表面温度を、画像形成可能な定着温度まで上げるエンジン制御部を備えるといえる。 ウ.後者の「スケジュール起動制御手段」は、「機能ブロックが通電無し状態である場合に、前記時刻スケジュール記憶手段に記憶された前記時刻スケジュールに従って前記制御部通電切替手段を制御することにより、前記機能ブロックを通電有り状態に切り替える」ものであって、上記イ.のとおり、制御部通電切替手段、すなわち、通電切替回路によって、定着用ヒータに対する通電における二者択一の制御が行われるものであるから、起動を制御し、定着ローラの表面温度の制御をエンジン制御部に指示する電力制御部と、時刻スケジュールが設定されたタイマ部とを備え、タイマ部に設定された時刻スケジュールに従って画像形成装置を制御する、電力制御部を有する、といえる。 したがって、両者は、 「定着ローラを有する画像形成部と、該画像形成部による画像形成時に前記定着ローラの表面温度を、画像形成可能な定着温度まで上げるエンジン制御部とを備える画像形成装置であって、 起動を制御し、前記定着ローラの表面温度の制御を前記エンジン制御部に指示する電力制御部と、 起動させる時刻スケジュールが設定されたタイマ部とを備え、 電力制御部は、前記タイマ部に設定された時刻スケジュールに従って前記画像形成装置を制御する、画像形成装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願発明1が、「待機状態で消費電力を節減する省エネルギーモードへの移行及び省エネルギーモードからの」起動を制御し、定着ローラの表面温度の制御をエンジン制御部に指示する電力制御部を備えるのに対し、引用発明1は、定着用ヒータに対して電力を供給する電源回路である第8サブ電源について、商用電源に接続するか否かを切り替える通電切替回路を備えている点。 [相違点2] 本願発明1が、「省エネルギーモードから」起動させる時刻スケジュールが設定されたタイマ部を備えるのに対し、引用発明1は、時刻スケジュール記憶手段に記憶された前記時刻スケジュールに従って前記制御部通電切替手段を制御することにより、前記機能ブロックを通電有り状態に切り替えるスケジュール起動制御手段を備えている点。 [相違点3] 本願発明1が、電力制御部は、タイマ部に設定された時刻スケジュールに従って「画像形成装置を省エネルギーモードから起動した場合、画像形成部の定着ローラの表面温度を定着温度よりも低い温度に制御する」ものであるのに対し、引用発明1は、そのような構成を備えていない点。 (3)判断 上記相違点3について検討する。 引用発明2の「定着ローラ31の温度」及び「印刷処理時」は、それぞれ、本願発明1の「定着ローラの表面温度」及び「画像形成時」に相当し、引用発明2の「定着ローラ31の温度」は、「待機モードとして定着ローラ31を一定温度に保持する動作を行い」、「印刷処理時には、定着ローラ31の温度を待機モード時よりも上げる制御が加熱ヒータ30に対して行われ」、「省電力モードとして消費電力を待機モード時よりも減少させる動作が行われ、具体的には、…、定着ローラ31の温度を待機モード時よりも下げる動作が行われる」ものであるから、引用発明2の「省電力モード」、「待機モード」及び「印刷処理時」は、それぞれ、本願発明1の「省エネルギーモード」、「待機状態」及び「画像形成時」に相当する。 しかし、引用発明2は、省電力モードで、印刷トリガー信号が入力されると、待機動作が再開され、印刷処理が開始されるもので、印刷トリガー信号以外のトリガーで、省電力モードから待機動作に移行し、待機動作を維持する、すなわち、定着ローラの表面温度を印刷処理時より低い温度にする制御はなされないものである。 してみると、引用発明2は、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものではない。 そうすると、引用発明1と引用発明2とを組み合わせたとしても、タイマ部に設定された時刻スケジュールに従って、省エネルギーモードから起動した場合、待機状態から画像形成時に移行し、定着ローラの表面温度は、画像形成時の定着温度に制御することとなり、画像形成時の定着温度よりも低い温度に制御することにはなり得ない。 よって、相違点3に係る本願発明1の発明特定事項は、引用発明1及び2から、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 また、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項は、原審で提示された刊行物3乃至7にも示されていないし、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。 そして、本願発明1は、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「予め定められた時刻スケジュールに従って自動的に省エネルギーモードから起動させる際に、定着ローラの表面温度を、画像形成可能な定着レディ状態における定着温度よりも低い温度に制御することができるため、無駄な電力消費を抑えることができる。」(【0014】)という作用効果を奏するものである。 したがって、本願発明1は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (4)本願発明2乃至6について 本願発明2乃至6は、本願発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本願発明2乃至6は、上記(3)と同様の理由により、引用発明1乃至7に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 第4 当審拒絶理由について 1.当審拒絶理由の概要 理由1:この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (1)請求項2?4の「電力制御部」が表面温度を制御する時間が特定されていないから、発明の詳細な説明に記載も示唆もされていないジョブ数取得部が取得した時間帯以外の時間帯の表面温度を制御する事項を包含することとなる。 (2)請求項3の特定では、「ジョブ数取得部により取得されたジョブ数」が「所定値」よりも少ない程、定着温度よりも段階的に高く制御するような事項も包含する。 理由2:この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (1)請求項1及び6の「画像形成可能な定着温度まで上げる」の主体が不明である。 (2)請求項2?4の「電力制御部」は、いつの表面温度を制御するのか不明である。 2.当審拒絶理由の判断 平成28年11月10日に提出された手続補正書において、上記第2のとおり、請求項1乃至6の記載は補正されたことにより、請求項1乃至6に係る発明の記載不備は解消された。 したがって、当審拒絶理由は解消した。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1乃至7に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとものとすることはできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-12-19 |
出願番号 | 特願2014-36239(P2014-36239) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G03G)
P 1 8・ 121- WY (G03G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 齋藤 卓司 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 吉村 尚 |
発明の名称 | 画像形成装置及び該装置の起動方法 |
代理人 | 坪井 健児 |
代理人 | 岡田 宏之 |