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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1322917
審判番号 不服2016-6816  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-09 
確定日 2017-01-10 
事件の表示 特願2012- 63998「ケーブルおよびケーブル判別方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月30日出願公開、特開2013-196960、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月21日の出願であって、平成27年11月26日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月9日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?7に係る各発明は、特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
両端にコネクタを有するケーブルにおいて、
少なくとも一方の端部の、第1のコネクタにおいて、異なる2面に光の入射を兼ねる各々1つの光出射部と、
もう一方の端部の、第2のコネクタにおいて、光の出射を兼ねる、光入射部と、
前記光出射部と、前記光入射部と、の全てを繋ぐ1つの導光体と、
を備え、
前記異なる2面の一方の前記光出射部は、コネクタが接続された状態において、隠れない位置に配置されていることを特徴とするケーブル。」

第3 原査定の理由の概要
1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(進歩性)について

・請求項 1乃至7
・引用文献等 1乃至2
・備考

引用文献1(特に、段落【0002】、【0011】、【0012】の記載を参照)には、
内部に短尺の光ファイバを接続したファイバ接続部を設け、このファイバ接続部により生じる可視光の一部を漏洩光として外部に導出させる光導出機構を備えたことを特徴とする光コネクタに関して、
ファイバ接続部は、フェルール内に設ける構成とすることができ、フェルールは、漏洩光を散乱・透過させる材料で形成されていることが望ましいこと、
また、前記のファイバ接続部をフェルールの外に形成する場合は、ファイバ接続部を保護する部材が漏洩光を散乱・透過させる材料で形成されていることが望ましいこと、
が開示されている。

また、引用文献1に開示された技術を、引用文献2(本願明細書段落【0004】にて説明されている文献であるので仔細は省略する。)にあるような周知のLANケーブルに適用するか否かは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。


<引用文献等一覧>
1.特開2009-175612号公報
2.特開2005-166317号公報

出願人は、意見書において、
「本件発明は、「第1のコネクタにおいて、異なる2面に…光射出部」を備えます。すなわち、本件発明は、「光出射部がコネクタの異なる2面に形成されている点」を特徴とします。これに対して、引用発明1の「光導出機構(窓部26)」は、光の出射部が光コネクタの1面にしか形成されていません(参照箇所:〔0027〕〔図1〕〔図2〕等)。したがって、本件発明は、「光出射部がコネクタの異なる2面に形成されている点」で、引用発明1と相違します(相違点1)。」
と主張している。

しかしながら、引用文献1の光コネクタは、光を導出することが可能な「窓部26」とは別の面に、光を導出可能な「フェノール22」の外端を備えていることから、出願人の主張は、引用文献1に基づくものではないので採用しない。

また、出願人は、
「また、本件発明は、「光の入射を兼ねる各々一つの光出射部」を備えます。すなわち、本件発明は、「光出射部が光の出射と光の入射を兼ねている点」を特徴としています。これに対して、引用発明1の「光導出機構(窓部26)」が放光させることは記載されていますが、光を入射することは記載されていません(参照箇所:〔0027〕〔0029〕)。したがって、本件発明は、「光出射部が光の出射と光の入射を兼ねている点」で、引用発明1と相違します(相違点2)。」
と主張している。

しかしながら、引用文献2(特に、【図4】及び【図5】を参照)には、コネクタとは別に設けられた、識別用光の入射と識別用光の出射が兼用できる端部を設ける技術が開示されているのであるから、
引用文献1に開示された「窓部26」を、識別用光の出射専用とするのではなく、識別用光の入射も兼用できるようにすることに格別な技術的困難性はないので、出願人の主張は採用しない。

第4 当審の判断
1.引用例の記載事項、引用例記載の発明
原査定で引用された、特開2009-175612号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a)「【0013】
本発明によれば、光コネクタを接続アダプタ等に接続しない状態での心線対照も可能とするが、光コネクタが接続され光信号の伝送状態を維持したままで心線対照を行うことができる。この場合、光通信に悪影響を及ぼすことなく、光コネクタの外部に漏れる可視光を視認するだけで容易に行うことができる。また、下流側に多段に設置された他の光コネクタにおいても心線対照を可能とし、光コネクタの誤挿抜を軽減し、作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明に係わる心線対照システムの一例を説明する図で、前記特許文献1に開示のシステム例を参照したものである。図中、1は光伝送装置、2はスターカプラー架、3は光ケーブル成端架、4(4a?4d)は光ケーブル(光ファイバ心線)、5(5a?5d)は加入者端末、6(6a?6d)は光ファイバ(分岐光ファイバ)、7a?7dはジャンパー線、8,9は光接続部材、10a,10bは光配線盤、11(11a?11d)は光分岐モジュール(光カプラー)、12,13は分岐光ファイバ、14は光スイッチ、15は制御装置、16は可視光光源、17は光パルス試験器、18は損失試験用光源を示す。
【0015】
光伝送装置1(OLT)は、加入者端末5(ONT)のそれぞれに伝送すべき信号光を、光ファイバ6を介してスターカプラー架2に送出する。スターカプラー架2では、光伝送装置1から信号光を多数の加入者端末5に分配するために、光ファイバ6をスターカプラー2aにより分岐光ファイバ6a?6dに多分岐( 図1では、4分岐の例で示している)し、それぞれに信号光が分配されて送出される。分岐光ファイバ6a?6dの出力端は、光配線盤10aに高密度で配設された光接続部材8に接続される。なお、説明を簡略にするために、光ファイバの心線数を4本で示すが、実際は数十?数百本の心線数で構成されている。
【0016】
スターカプラー架2からの信号光は、ジャンパー線7a?7dを経て光ケーブル成端架3の光ファイバ心線に送出される。光ケーブル成端架3は、光配線盤10b、光分岐モジュール11、光スイッチ14を備える。光配線盤10bには、光伝送装置1からの信号光をジャンパー線7a?7dにより受信する多数の光接続部材9が高密度で配設されている。なお、本発明で用いる光接続部材8,9とは、「光コネクタ+光コネクタ」による接続、「光コネクタ+接続アダプタ+光コネクタ」による接続形態を言うものとする。
【0017】
光接続部材9には、受信した信号光を加入者端末5側に送出するための光ファイバ心線4a?4dの入力端が接続される。光分岐モジュール11は、多数の光カプラー11a?11dを有し、光ケーブル4の各光ファイバ心線4a?4dのそれぞれの布設経路上に設けられる。光カプラ11a?11dのそれぞれには、例えば、2本の分岐光ファイバ12,13を有していて、光スイッチ14によって接続が選択される構成となっている。
【0018】
例えば、光カプラー11aの分岐光ファイバ12に、心線対照用の可視光光源16から可視光が送出されると、光ファイバ心線4aを介して加入者端末5a側に向けて可視光が伝送される。一方、分岐光ファイバ13に、可視光光源16から可視光が送出されると、光ファイバ心線4aを介して光接続部材9側に向けて可視光が伝送される。分岐光ファイバ12,13の選択は、制御装置15により制御される光スイッチ14により行われる。また、この光スイッチ14は、心線対照用の可視光の送出選択を行う以外に、パルス光を送出する光パルス試験器17、伝送損失を試験するための損失試験用光源18の選択にも用いられる。」(【0013】?【0018】の記載。下線は当審で付与。以下、同様。)

b)「【0023】
図2および図3は、本発明による第1の実施形態を説明する図で、図2は第2の実施形態を説明する図である。図中、20は光コネクタ、21は光ファイバ心線(光ファイバコード)、21aは先端部、21bは短尺光ファイバ、22はフェルール、23はフェルール押え、24はコネクタ筐体、25はスプリング、26は窓部、27はファイバ接続部、28はブーツ、29は補強スリーブ、30はメカニカルスプライサを示す。
【0024】
本発明による光コネクタ20は、図2,3に示すように、光ファイバ心線21(光ファイバコードともいう)内に送出された可視光を漏洩させ外部に散乱・透過させるために、光コネクタ20内にファイバ接続部27を設けていることを特徴としている。光コネクタ20内にファイバ接続部27を有する構成とするために、光ファイバ心線21の先端部21aに、短尺の光ファイバ21bを接続することで、ファイバ接続部27を設けることができる。なお、ファイバ接続部27は、融着接続またはメカニカルな突き合わせ接続で形成することができる。
【0025】
光ファイバ心線21内に送出された可視光の漏洩は、光ファイバ同士の接続部での僅かな軸ズレにより発生させることができる。したがって、光コネクタ20内にファイバ接続部27を設けることにより、光ファイバ心線21に信号光と共に送出された可視光の一部を光コネクタ20内に漏洩させることができる。そして、光コネクタ20内に漏洩された可視光を散乱・透過させ、これを光コネクタの外面に達する窓部26等の光導出機構を通して、光コネクタ20の外部に漏洩させることにより、光ファイバ心線21の識別を可能としている。また、漏洩されない残りの可視光は、光コネクタ20内をスルーして下流側の光コネクタに送出される。したがって、下流側で上記の光コネクタが用いられる場合は、同様に光ファイバ心線21の識別を行うことができる。
【0026】
図2(A)は、上記の光コネクタ20の一例を示すもので、ファイバ接続部27をフェルール22内に設ける例である。この例では、フェルール22のファイバ挿通孔内に、光ファイバ心線21の被覆が除去された先端部21aと短尺光ファイバ21bとで、融着あるいは突き合わせにより形成されたファイバ接続部27が設けられる。そして、光ファイバ心線21の先端部21a、ファイバ接続部27および短尺光ファイバ21bを、フェルール22内に接着材等により保持固定して一体化する。
【0027】
また、光コネクタ20内に漏洩された漏洩光を外部に放光させるための窓部26が、ファイバ接続部27が位置する部分またはその近傍に形成される。この窓部26は、光コネクタ20内に漏洩した可視光が、光コネクタ筐体24の外面に達するように形成され、例えば、光コネクタの筐体面に小さい窓孔が複数設けられた形態で形成することができる。また、可視光の外部への放光を効果的に行うために、ファイバ接続部27を覆っているフェルール22が、漏洩された可視光を散乱・透過させる材料で形成されていることが望ましい。したがって、フェルール22の材料としては、透光性と光散乱性を有するガラス、セラミック、プラスチック等を用いることができるが、特に、製造精度、コスト等の観点から結晶化ガラスを用いることが好ましい。
【0028】
その他の光コネクタ20の構成は、一般的な光コネクタ構造と同じで、例えば、フェルール22は、フェルール押え23により保持され、コネクタ筐体24にスプリング25等により軸方向に付勢された状態で装着される。光ファイバ心線21の引出し部分は、ゴム等の弾力性のある材料で形成されたブーツ28で保護される。また、光コネクタの外観形状は、図2(B)に示すように、コネクタ筐体24に光コネクタ20の挿抜を操作するラッチレバー24a等が一体に設けられ、コネクタ筐体24先端からフェルール22が、僅かに突き出るように構成される。
【0029】
窓部26を通して外部に放光される可視光は、図2(B)に示すように、コネクタ筐体24の側面に設けた窓部26の出口部分を光らせ、外部からも視覚により容易に確認することができる。この結果、光ファイバ心線21に、可視光が送られていることを検知することができる。したがって、図1の光接続部材8,9の光コネクタに、図2の光コネクタ20を用いることで、光コネクタを外すことなく心線対照を容易に行うことができる。」(【0023】?【0029】の記載。)

c)「【0038】
また、本発明による光コネクタは、光コネクタ内で漏洩する漏洩光の他に、光ファイバ内をスルーする可視光もある。このため、1本の光ファイバ心線の経路上で、複数の光コネクタが多段的に使用されている場合においても、検出される漏洩光の光量は減少して光の強度は弱くなるが、下流側に接続される他の光コネクタにおいても心線対照を行うことができる。また、アダプタを介して光コネクタ同士を接続する場合、アダプタの両側の光コネクタで心線対照ができ、特に、隔壁の両側に光コネクタが配されるような場合の心線対照が容易になる。なお、アダプタを介することなく光コネクタ同士を直接接続するような場合においても、心線対照を行うことができる。」(【0038】の記載。)

d)図2には、フェルール22先端部より可視光が双方向へ伝搬(入出力)することが示されている。

上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用例には以下の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されている。

「光コネクタ20は、光ファイバ心線(光ファイバコード)21、先端部21a、短尺光ファイバ21b、フェルール22、フェルール押え23、コネクタ筐体24、窓部26を備え、
光コネクタ20は、光ファイバ心線21内に送出された可視光を漏洩させ外部に散乱・透過させるために、光コネクタ20内にファイバ接続部27を設け、
ファイバ接続部27を有する構成とするために、光ファイバ心線21の先端部21aに、短尺の光ファイバ21bを接続し、
光コネクタ20内にファイバ接続部27を設けることにより、光ファイバ心線21に信号光と共に送出された可視光の一部を光コネクタ20内に漏洩させ、光コネクタ20内に漏洩された可視光を散乱・透過させ、これを光コネクタの外面に達する窓部26等の光導出機構を通して、光コネクタ20の外部に漏洩させることにより、光ファイバ心線21の識別を可能とし、
光コネクタ20内に漏洩された漏洩光を外部に放光させるための窓部26は、光コネクタ20内に漏洩した可視光が、光コネクタ筐体24の外面に達するように、例えば、光コネクタの筐体面に小さい窓孔が複数設けられた形態で形成され、
可視光の外部への放光を効果的に行うために、ファイバ接続部27を覆っているフェルール22が、漏洩された可視光を散乱・透過させる材料で形成され、
窓部26を通して外部に放光される可視光は、コネクタ筐体24の側面に設けた窓部26の出口部分を光らせ、外部からも視覚により容易に確認することができ、
光接続部材8,9の光コネクタに、光コネクタ20を用いることで、光コネクタを外すことなく心線対照を容易に行うことができ、
光コネクタは、光コネクタ内で漏洩する漏洩光の他に、光ファイバ内をスルーする可視光もあり、1本の光ファイバ心線の経路上で、複数の光コネクタが多段的に使用されている場合においても、検出される漏洩光の光量は減少して光の強度は弱くなるが、下流側に接続される他の光コネクタにおいても心線対照を行うことができ、
光コネクタ同士を直接接続するような場合においても、心線対照を行うことができる、
フェルール22先端部より可視光が双方向へ伝搬(入出力)する
光コネクタ。」

2.対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比する。

ア.引用例記載の発明は、「光コネクタ20」は、本願発明の「コネクタ」に相当し、引用例記載の発明の「光ファイバコード21」は「光コネクタ同士を直接接続する場合」があるものであるから、引用例記載の発明の当該「光コネクタ同士を直接接続」した「光ファイバコード」は、本願発明の「両端にコネクタを有するケーブル」に相当する。

イ.引用例記載の発明の「光コネクタ20」は、「漏洩光を外部に放光させるための窓部26」を有すると共に、「フェルール22先端部より可視光が双方向へ伝搬(入出力)する」ものであるから、上記「窓部26」は「光出射部」と、上記「フェルール22先端部」は「光の入射を兼ねる光出射部」ともいい得るものであり、引用例記載の発明の「光ファイバ心線」の両端に設けられた「光コネクタ」のうち一方の「光コネクタ」は、本願発明の「少なくとも一方の端部の、第1のコネクタにおいて、異なる2面に光の入射を兼ねる各々1つの光出射部」を備えることと、「少なくとも一方の端部の、第1のコネクタにおいて、異なる2面に各々1つの光出射部」を備える点で一致する構成を有するといえる。

ウ.上記イ.に記載した様に、引用例記載の発明の「光コネクタ20」は、「フェルール22先端部より可視光が双方向へ伝搬(入出力)する」ものであり、当該「フェルール22先端部」は「光の出射を兼ねる光入射部」ともいい得るものであるから、引用例記載の発明の「光ファイバ心線」の両端に設けられた「光コネクタ」のうち他方の「光コネクタ」は、本願発明の「もう一方の端部の、第2のコネクタにおいて、光の出射を兼ねる、光入射部」を備えることに相当する構成を有する。

エ.引用例記載の発明の「光ファイバコード20」において、「光コネクタ同士を直接接続する」場合、「光ファイバ心線」により、両「光コネクタ」の「窓部26」と「フェルール22先端部」に光が伝搬されていることは明らかであるから、引用例記載の発明は、本願発明の「前記光出射部と、前記光入射部と、の全てを繋ぐ1つの導光体」に相当する構成を有するといえる。

オ.引用例記載の発明の「窓部26」は、「窓部26を通して外部に放光される可視光は、コネクタ筐体24の側面に設けた窓部26の出口部分を光らせ、外部からも視覚により容易に確認することができ、光接続部材8,9の光コネクタに、光コネクタ20を用いることで、光コネクタを外すことなく心線対照を容易に行うことができ」るものであるから、本願発明の「異なる2面の一方の前記光出射部は、コネクタが接続された状態において、隠れない位置に配置されている」ことに相当する構成を有するといえる。

したがって、両者は以下の一致点と相違点とを有する。

〈一致点〉
「両端にコネクタを有するケーブルにおいて、
少なくとも一方の端部の、第1のコネクタにおいて、異なる2面に各々1つの光出射部と、
もう一方の端部の、第2のコネクタにおいて、光の出射を兼ねる、光入射部と、
前記光出射部と、前記光入射部と、の全てを繋ぐ1つの導光体と、
を備え、
前記異なる2面の一方の前記光出射部は、コネクタが接続された状態において、隠れない位置に配置されていることを特徴とするケーブル。」

〈相違点〉
本願発明は、「第1のコネクタにおいて、異なる2面に光の入射を兼ねる各々1つの光出射部」のに対し、引用例記載の発明では、「窓部26」は光を「光コネクタ20の外部に漏洩させる」ものであるが、「光の入射を兼ねる」ものではない点。

3.判断
〈相違点〉についての判断
例えば、引用例記載の発明の「フェルール22先端部」のように、「光出射部」を「光の入射を兼ねる」ものとすること自体は、本願出願前周知技術であったものと認められる。

しかしながら、引用例記載の発明の「窓部26」は、「ファイバ接続部27を設けることにより、光ファイバ心線21に信号光と共に送出された可視光の一部を光コネクタ20内に漏洩させ、光コネクタ20内に漏洩された可視光を散乱・透過させ」たものを「光コネクタ20の外部に漏洩させる」ため、「例えば、光コネクタの筐体面に小さい窓孔が複数設けられた形態」で形成されるものであり、当該「窓部26」に光を入射したとしても、必ずしも当該入射光を「光ファイバ心線21」に入射し得るものとは認められないから、引用例記載の発明の「窓部26」は、そのままで「光の入射を兼ねる」ことができるものとは認められない。
また、引用例は、上記摘記事項a)の【0017】、【0018】に記載されるように、「光コネクタ」の「窓部26」とは別に設けられた「光分岐モジュール11」に可視光を送出し「光ファイバ心線」に可視光を伝送するものであり、「窓部26」より光を入射するものに変更することを示唆する記載もない。

したがって、「光出射部」を「光の入射を兼ねる」ものとすること自体が本願出願前周知技術であることのみからは、引用例記載の発明の「窓部26」を「光の入射を兼ねる」ものとすることが、当業者が容易になし得たこととすることはできず、引用例記載の発明において相違点に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
本願の請求項2?7に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用例記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1?7に係る発明は、いずれも、当業者が引用例記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶するべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-28 
出願番号 特願2012-63998(P2012-63998)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 山田 正文
山澤 宏
発明の名称 ケーブルおよびケーブル判別方法  
代理人 机 昌彦  
代理人 下坂 直樹  

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