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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1322953
審判番号 不服2015-18221  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-06 
確定日 2016-12-15 
事件の表示 特願2013-229533「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月14日出願公開、特開2014-144242〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成23年10月6日に出願された特願2011-222341号の一部を平成25年11月5日に新たな特許出願としたものであって,平成26年12月26日付けで拒絶理由が通知され,それに対し,平成27年3月6日に意見書及び手続補正書が提出され,同年7月2日付けで拒絶査定され,これに対し,同年10月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同日付けで手続補正がなされ,当審において,平成28年7月19日付けで拒絶理由が通知され,これに対し同年9月14日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
平成28年9月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
可変表示を行い,遊技者にとって有利な有利状態に制御可能であり,所定条件の成立に基づいて低確率状態よりも前記有利状態に制御されやすい高確率状態に制御可能な遊技機であって,
前記有利状態に制御するか否かを決定する決定手段と,
前記決定手段による決定結果に基づいて,可変表示を開始した後,表示結果が導出されるまでにおける第1のタイミングと該第1のタイミングよりも遅い第2のタイミングとにおいて,前記有利状態となる可能性が異なる複数種類の演出を実行可能な演出実行手段とを備え,
前記演出実行手段は,
前記第1のタイミングにおいて,少なくとも第1通常演出と該第1通常演出よりも信頼度が高い第1特定演出とのうちいずれかを実行可能であり,
前記第2のタイミングにおいて,少なくとも第2通常演出と該第2通常演出よりも信頼度が高い第2特定演出とのうちいずれかを実行可能であり,
前記第1通常演出と前記第2通常演出とは信頼度が異なるとともに,前記第1特定演出と前記第2特定演出とは信頼度が異なり,
前記演出実行手段は,前記第1のタイミングにおいて前記第1特定演出が実行される場合に,前記第2のタイミングにおいて前記第2通常演出が実行されないまたは実行されにくいように演出を実行可能である,
ことを特徴とする遊技機。」

3.当審における拒絶理由
当審における平成28年7月19日付けの拒絶理由の概要は次のとおりである。

(1)本願の請求項1に係る発明は,その出願(遡及日)前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

(2)本願の請求項1に係る発明は,その出願(遡及日)前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開2011-143176号公報

4.刊行物
当審における平成28年7月19日付けの拒絶理由において刊行物1として引用した特開2011-143176号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0001】
本発明は,ぱちんこ遊技機等の弾球遊技機に関し,特に弾球遊技機における遊技の演出に用いられるデータの設計技術に関する。
・・・
【0020】
図1は,ぱちんこ遊技機の前面側における基本的な構造を示す。
以下,弾球遊技機として従来にいういわゆる第1種ぱちんこ遊技機を例に説明する。ぱちんこ遊技機10は,主に遊技機枠と遊技盤で構成される。ぱちんこ遊技機10の遊技機枠は,外枠11,前枠12,透明板13,扉14,上球皿15,下球皿16,および発射ハンドル17を含む。外枠11は,開口部分を有し,ぱちんこ遊技機10を設置すべき位置に固定するための枠体である。前枠12は,外枠11の開口部分に整合する枠体であり,図示しないヒンジ機構により外枠11へ開閉可能に取り付けられる。前枠12は,遊技球を発射する機構や,遊技盤を着脱可能に収容させるための機構,遊技球を誘導または回収するための機構等を含む。
・・・
【0029】
遊技球が始動口62に落入すると,特別図柄表示装置61および演出表示装置60において特別図柄192および装飾図柄190が変動表示される。特別図柄192および装飾図柄190の変動表示は,表示に先だって決定された表示時間の経過後に停止される。停止時の特別図柄192および装飾図柄190が大当りを示す図柄である場合,通常遊技よりも遊技者に有利な遊技状態である特別遊技に移行し,大入賞口66の開閉動作が開始される。このときスロットマシンのゲームを模した装飾図柄190は,3つの図柄を一致させるような表示態様をとる。特別遊技において,大入賞口66は,約30秒間開放された後,または9球以上の遊技球が落入した後で一旦閉鎖される。このような大入賞口66の開閉が所定回数,例えば15回繰り返される。
【0030】
特別遊技が終了した後の通常遊技において実行される特定遊技の一つである変動時間短縮遊技(以下,適宜「時短」という)が開始される。変動時間短縮遊技においては,特別図柄および装飾図柄の変動時間が通常より短縮される。特別図柄および装飾図柄の変動時間は,所定の変動回数の変動表示がなされた後で元の変動時間に戻される。特別遊技が発生した場合であってそのときの当り停止図柄が特定の態様であった場合,特別遊技の終了後に特定遊技の一つである確率変動遊技(以下,適宜「確変」という)がさらに開始される。確率変動遊技においては,通常の確率状態より大当りの確率が高い抽選が行われ,比較的早期に新たな特別遊技が発生する。」

(イ)「【0036】
当否抽選手段112は,始動口62への遊技球の入球を契機として,通常遊技より遊技者に有利な状態である特別遊技へ移行するか否かを判定するために乱数の値を当否抽選値として取得する。たとえば,当否抽選値は「0」から「65535」までの値範囲から取得される。なお,本願にいう「乱数」は,数学的に発生させる乱数でなくてもよく,ハードウエア乱数やソフトウエア乱数などにより発生させる疑似乱数でもよい。当否抽選手段112は,当否判定で参照する当否テーブルを複数保持する。複数の当否テーブルには,大当りまたは外れの判定結果と当否抽選値とが対応付けられており,対応付けられた大当りの範囲設定に応じて当否確率が定まる。
【0037】
当否抽選手段112は,通常時には通常確率による当否判定のための当否テーブルを参照し,確率変動時には通常確率より大当りの確率が高くなる当否テーブルを参照する。当否抽選手段112は,複数の当否テーブルのうちいずれかを参照し,当否抽選の結果が大当りであるか否かを判定する。当否抽選手段112は,図柄変動を開始するにあたり,その図柄変動に対応する抽選の結果を演出決定手段132へ送信する。当否抽選手段112による判定結果は,特別図柄表示装置61において特別図柄の形で変動表示される。また,当否抽選手段112による判定結果を演出的に示す装飾図柄が演出表示装置60において変動表示される。」

(ウ)「【0057】
演出表示制御手段134は,当否抽選手段112による当否抽選の結果として,選択された変動演出パターンデータにしたがって演出表示装置60へ装飾図柄を含む演出画像を変動表示させる。演出表示制御手段134は,予告演出を表示させる旨が演出決定手段132により決定された場合,選択された予告演出パターンにしたがった予告演出を演出表示装置60へ表示させる。演出表示制御手段134は,遊技効果ランプ90の点灯および消灯や,スピーカ18からの音声出力などの演出処理をさらに制御する。
・・・
【0059】
次に,本実施例の特徴的構成および動作について説明する。
本実施例では,変動パターンとして擬似連続変動パターンが選択されることにより,変動演出パターンとして擬似連続変動演出パターンが選択された場合,段階的な演出により当り期待度を示唆する特殊予告演出がその擬似連続変動の仮変動ごとに実行される。この特殊予告演出は,いわゆるステップアップ予告とカットイン予告を組み合わせたような予告演出として構成され,擬似的な図柄変動ごとの到達段階数やその段階的な演出過程で割り込むように表示されるキャラクタ(演出要素)によって当否抽選の結果が大当りである期待度(当り期待度)を示唆する。」
・・・
【0062】
この特殊予告演出は,複数種の敵キャラクタのいずれかが登場して主人公キャラクタMと対峙する演出である。主人公キャラクタMが,最強の敵キャラクタと対峙したり,数多くの敵キャラクタと対峙するように演出内容が展開されれば,相対的に当り期待度が高いことが示される。すなわち,ステップアップ予告の段階数や特殊予告演の演出上の到達レベルによって変化するキャラクタの種類,その種類の数,キャラクタの数等によっても当り期待度の高さが示される。本実施例では,新たな敵キャラクタが登場する際に,その敵キャラクタの静止画像が割り込むように表示されるカットイン予告演出が表示される。
・・・
【0064】
図5(a)には,ステップアップ予告におけるステップ1において主人公キャラクタMのみが登場するパターンが示されている。図5(b)には,ステップ2においてステップ1のキャラクタMが滞在したまま新たにキャラクタCがカットインされるパターンが示されている。図5(c)には,ステップ3においてステップ2のキャラクタが滞在したまま新たにキャラクタBがカットインされるパターンが示されている。図5(d)には,最終ステップであるステップ4においてステップ3のキャラクタが滞在したまま新たにキャラクタAがカットインされるパターンが示されている。画面上の各カットインの境界には区切りが示されている。このように,ステップアップ予告の段階が進むにつれて,キャラクタの種類の数が増えるようになる。一方,図5(e)には,ステップ4においてステップ3のキャラクタが滞在したまま新たにキャラクタAが2つカットインされるパターンが示されている。さらに図5(f)には,ステップ4においてステップ3のキャラクタが滞在したまま新たにキャラクタAが3つカットインされるパターンが示されている。同じステップ4であっても,このように敵キャラクタの数が多いほど(同時にカットインされる敵キャラクタが多いほど)当り期待度も高くなる。なお,図5(e)および(f)にはキャラクタAが複数出現する例を示したが,キャラクタB,Cがそれぞれ複数出現するステップも設けられている。」

(エ)「【0070】
図8?図11は,擬似連続変動パターンが選択された場合に用いられる予告決定テーブルのデータ構造図である。図8および図9は,特殊予告演出の演出系統を決定するために参照されるパターン設定テーブルを示している。図8は,当否抽選の結果が大当りであった場合に参照されるテーブルであり,図9は,当否抽選の結果が外れであった場合に参照されるテーブルである。図10および図11は,特殊予告演出のレベル系統を決定するために参照されるレベル設定テーブルを示している。図10は,当否抽選の結果が大当りであった場合に参照されるテーブルを示し,図11は,当否抽選の結果が外れであった場合に参照されるテーブルを示している。
【0072】
なお,各図における「SU」は特殊予告演出を構成するステップアップ予告演出における到達段階(ステップ)を示し,「CUT-LV」は特殊予告演出における演出上の到達レベルを示している。到達段階が高いほど,また到達レベルが高いほど,当り期待度が高くなる。また,「M」は主人公キャラクタMを示し,「A」は敵キャラクタAを示し,「B」は敵キャラクタBを示し,「C」は敵キャラクタCを示している。矢印(←)の左側にはステップ1で出現するキャラクタが示され,右側にはステップ2,3,4で出現するキャラクタが順次示されている。
例えば,演出系統10のレベル1(CUT-LV1)に対応する「SU4:M←C,B,A」は,図5(a)?(d)に示すように演出が進行するパターンを示している。すなわち,そのステップアップ予告においてステップ4まで到達し,ステップ1でキャラクタMが出現し,ステップ2でキャラクタCがカットインされ,ステップ3でキャラクタBがカットインされ,ステップ4でキャラクタAがカットインされることを示している。なお,本実施例では,一旦出現したキャラクタはそのステップアップ予告が終了するまでは滞在し続けるため,この例では,ステップ1でキャラクタMが表示され,ステップ2でキャラクタM,Cが表示され,ステップ3でキャラクタM,C,Bが表示され,ステップ4でキャラクタM,C,B,Aが表示されることになる。
同様に,演出系統8のレベル3(CUT-LV3)に対応する「SU4:M←C,B,AAA」は,図5(a)?(c)および(f)に示すように演出が進行するパターンを示している。すなわち,そのステップアップ予告においてステップ4まで到達し,ステップ1でキャラクタMが出現し,ステップ2でキャラクタCがカットインされ,ステップ3でキャラクタBがカットインされ,ステップ4でキャラクタAが3つカットインされることを示している。また,演出系統10のレベル3に対応する「SU4:M←C,B,集合AAABC」は,図5(a)?(c)および(h)に示すように演出が進行するパターンを示している。すなわち,そのステップアップ予告においてステップ4まで到達し,ステップ1でキャラクタMが出現し,ステップ2でキャラクタCがカットインされ,ステップ3でキャラクタBがカットインされ,ステップ4でキャラクタAが3つカットインされると同時に全キャラクタが集合することを示している。」

(オ)「【0075】
各演出系統においては,その到達レベルが変化してもその前後のレベル間で演出のストーリー展開の整合が確保されるように特殊予告演出パターンの組み合わせが設定されている。また,各演出系統においてステップアップ予告の段階や到達レベルが進むにつれてキャラクタの種類や数によって定まる当り期待度が同等以上に変化し,いわゆる成り下がりが発生しないように特殊予告演出パターンの内容および組み合わせが設定されている。レベル0?3のどこまで到達するかは,後述するレベル設定抽選により決定される。図示のように,当否抽選の結果が大当りである場合には,ステップアップ予告の段階数が最終ステップであるステップ4まで進み,登場するキャラクタの種類や数も多く,また強敵であるキャラクタAが出現する演出内容が選択されやすくなっている。逆に,当否抽選の結果が外れである場合には,ステップアップ予告の段階数が最終ステップまでは到らず,登場するキャラクタの種類や数も少なく,また弱いキャラクタCが出現する演出内容が選択されやすくなっている。
【0076】
演出決定手段132は,このようにしていずれかの演出系統を決定すると,続いて,その演出系統においてどのレベルまで到達するかを決定するためのレベル設定抽選を実行する。すなわち,演出決定手段132は,図10または図11に示されるレベル設定テーブルを用いて特殊予告演出の到達レベルを決定する。演出決定手段132は,その到達レベルの決定に先立って,レベル設定抽選値を「0?255」の範囲から取得し,当否抽選の結果が大当りである場合には図10のテーブルを参照し,外れである場合には図11のテーブルを参照する。」

(カ)【図10】及び【図11】には,擬似連続変動回数が「3」または「4」の行において,擬似連続変動の「2変動目」の各行には「CUT-LV1」または「CUT-LV2」の2種類が記載され,「3変動目」の各行には「CUT-LV1」,「CUT-LV2」または「CUT-LV3」の3種類が記載されている。
また,擬似連続変動回数が「3」または「4」の行において,擬似連続変動の「2変動目」に「CUT-LV2」が記載されている行では,「3変動目」に「CUT-LV2」と「CUT-LV3」は記載されているが,「CUT-LV1」は記載されていない。

(キ)上記(ア)の段落【0020】には,ぱちんこ遊技機10であること,段落【0029】には,装飾図柄190が変動表示され,停止時の装飾図柄190が大当りを示す図柄である場合,遊技者に有利な遊技状態である特別遊技に移行すること,段落【0030】には,特別遊技が発生した場合の当り停止図柄が特定の態様であった場合,特別遊技の終了後に確率変動遊技がさらに開始され,確率変動遊技においては,通常の確率状態より大当りの確率が高い抽選が行われること,とが記載されていることから,装飾図柄190が変動表示され,停止時の装飾図柄190が大当りを示す図柄である場合,遊技者に有利な遊技状態である特別遊技に移行し,特別遊技が発生した場合の当り停止図柄が特定の態様であった場合,特別遊技の終了後に通常の確率状態より大当りの確率が高い抽選が行われる確率変動遊技がさらに開始されるぱちんこ遊技機10が記載されているといえる。

(ク)上記(イ)の段落【0036】には,当否抽選手段112は,特別遊技へ移行するか否かを判定するために乱数の値を当否抽選値として取得すること,段落【0037】には,当否抽選手段112は,当否抽選の結果が大当りであるか否かを判定することが記載されていることから,特別遊技へ移行するか否かを判定するために乱数の値を当否抽選値として取得し,当否抽選の結果が大当りであるか否かを判定する当否抽選手段112を有することは明らかである。

(ケ)上記(ウ)の段落【0057】には,演出表示制御手段134は,当否抽選手段112による当否抽選の結果として,選択された変動演出パターンデータにしたがって装飾図柄190を含む演出画像を変動表示させること,段落【0059】には,変動演出パターンとして擬似連続変動演出パターンが選択された場合,段階的な演出により当り期待度を示唆する特殊予告演出がその擬似連続変動の仮変動ごとに実行されること,特殊予告演出は,いわゆるステップアップ予告とカットイン予告を組み合わせたような予告演出として構成されること,上記(エ)の段落【0072】には,特殊予告演出における演出上の到達レベルが高いほど,当り期待度が高くなること,が記載されていることから,当否抽選の結果として,選択された変動演出パターンデータにしたがって装飾図柄190を変動表示させ,変動演出パターンとして擬似連続変動演出パターンが選択された場合,擬似連続変動の仮変動ごとに,演出上の到達レベルが高いほど,当り期待度が高くなる特殊予告演出を実行させる演出表示制御手段134を有することは明らかである。

(コ)上記(エ)の段落【0072】には,「CUT-LV」は特殊予告演出における演出上の到達レベルを示していること,特殊予告演出における演出上の到達レベルが高いほど,当り期待度が高くなること,上記(オ)の段落【0076】には,演出決定手段132は,図10または図11に示されるレベル設定テーブルを用いて特殊予告演出の到達レベルを決定すること,とが記載され,また,上記(カ)の図10及び図11には,擬似連続変動回数が「3」または「4」の行において,擬似連続変動の「2変動目」の各行には「CUT-LV1」または「CUT-LV2」の2種類が記載され,「3変動目」の各行には「CUT-LV1」,「CUT-LV2」または「CUT-LV3」の3種類が記載されていることから,擬似連変動の「2変動目」には,特殊予告演出「CUT-LV1」と,特殊予告演出「CUT-LV1」よりも当り期待度が高い特殊予告演出「CUT-LV2」が実行可能であり,擬似連変動の「3変動目」には,特殊予告演出「CUT-LV1」と,特殊予告演出「CUT-LV1」よりも当り期待度が高い特殊予告演出「CUT-LV2」または「CUT-LV3」が実行可能であるといえる。

(サ)上記(オ)の段落【0075】には,ステップアップ予告の到達段階や到達レベルが進むにつれてキャラクタの種類や数によって定まる当り期待度が同等以上に変化し,いわゆる成り下がりが発生しないことが記載され,また,上記(カ)の【図10】及び【図11】には,擬似連続変動の「2変動目」に「CUT-LV2」が記載されている行では,「3変動目」に「CUT-LV1」は記載されていないことから,擬似連変動の「2変動目」には,特殊予告演出「CUT-LV1」よりも当り期待度が高い特殊予告演出「CUT-LV2」が実行される場合には,擬似連変動の「3変動目」には,特殊予告演出「CUT-LV1」は実行されないといえる。

したがって,上記(ア)?(カ)の記載事項及び上記(キ)?(サ)の認定事項を総合すると,刊行物1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「装飾図柄190が変動表示され,停止時の装飾図柄190が大当りを示す図柄である場合,遊技者に有利な遊技状態である特別遊技に移行し,特別遊技が発生した場合の当り停止図柄が特定の態様であった場合,特別遊技の終了後に通常の確率状態より大当りの確率が高い抽選が行われる確率変動遊技がさらに開始されるぱちんこ遊技機10において,(認定事項(キ))
特別遊技へ移行するか否かを判定するために乱数の値を当否抽選値として取得し,当否抽選の結果が大当りであるか否かを判定する当否抽選手段112と,(認定事項(ク))
当否抽選の結果として,選択された変動演出パターンデータにしたがって装飾図柄190を変動表示させ,変動演出パターンとして擬似連続変動演出パターンが選択された場合,擬似連続変動の仮変動ごとに,演出上の到達レベルが高いほど,当り期待度が高くなる特殊予告演出を実行させる演出表示制御手段134とを有し,(認定事項(ケ))
擬似連変動の「2変動目」には,特殊予告演出「CUT-LV1」と,特殊予告演出「CUT-LV1」よりも当り期待度が高い特殊予告演出「CUT-LV2」が実行可能であり,
擬似連変動の「3変動目」には,特殊予告演出「CUT-LV1」と,特殊予告演出「CUT-LV1」よりも当り期待度が高い特殊予告演出「CUT-LV2」または「CUT-LV3」が実行可能であり,(認定事項(コ))
擬似連変動の「2変動目」には,特殊予告演出「CUT-LV1」よりも当り期待度が高い特殊予告演出「CUT-LV2」が実行される場合には,擬似連変動の「3変動目」には,特殊予告演出「CUT-LV1」は実行されない,(認定事項(サ))
ぱちんこ遊技機10。」

5.対比
本願発明と引用発明とを比較する。

(a)引用発明の「装飾図柄190が変動表示され」ることは,本願発明の「可変表示を行」うことに相当し,引用発明の「遊技者に有利な遊技状態である特別遊技」,「特別遊技が発生した場合の当り停止図柄が特定の態様であった場合」及び「通常の確率状態より大当りの確率が高い抽選が行われる確率変動遊技」は,それぞれ本願発明の「遊技者にとって有利な有利状態」,「所定条件の成立」及び「低確率状態よりも前記有利状態に制御されやすい高確率状態」に相当する。
また,引用発明の「ぱちんこ機10」は,本願発明の「遊技機」に相当する。
これらのことから,引用発明の「装飾図柄190が変動表示され,停止時の装飾図柄190が大当りを示す図柄である場合,遊技者に有利な遊技状態である特別遊技に移行し,特別遊技が発生した場合の当り停止図柄が特定の態様であった場合,特別遊技の終了後に通常の確率状態より大当りの確率が高い抽選が行われる確率変動遊技がさらに開始されるぱちんこ遊技機10」は,本願発明の「可変表示を行い,遊技者にとって有利な有利状態に制御可能であり,所定条件の成立に基づいて低確率状態よりも前記有利状態に制御されやすい高確率状態に制御可能な遊技機」に相当する。

(b)引用発明の「特別遊技へ移行するか否かを判定するために乱数の値を当否抽選値として取得し,当否抽選の結果が大当りであるか否かを判定する当否抽選手段112」は,本願発明の「前記有利状態に制御するか否かを決定する決定手段」に相当する。

(c)引用発明の「当否抽選の結果」及び「当り期待度」は,それぞれ本願発明の「決定結果」及び「有利状態となる可能性」に相当する。
また,引用発明の擬似連変動は装飾図柄190の変動表示されてから停止表示されるまでに行われるものであり,擬似連変動における初変動,2変動目,3変動目及び4変動目について,初変動が実行されるタイミングより2変動目が実行されるタイミングが遅いことは明らかであり,2変動目以降についても同様である。
さらに,引用発明の「擬似連続変動の仮変動ごとに」実行される「演出上の到達レベルが高いほど,当り期待度が高くなる特殊予告演出」とは,初変動,2変動目,3変動目及び4変動目のそれぞれにおいて,当り期待度の異なる複数種類の特殊予告演出が実行される演出であることは,明らかである。
よって,引用発明の「当否抽選の結果として,選択された変動演出パターンデータにしたがって装飾図柄190を変動表示させ,変動演出パターンとして擬似連続変動演出パターンが選択された場合,擬似連続変動の仮変動ごとに,演出上の到達レベルが高いほど,当り期待度が高くなる特殊予告演出を実行させる演出表示制御手段134」は,本願発明の「前記決定手段による決定結果に基づいて,可変表示を開始した後,表示結果が導出されるまでにおける第1のタイミングと該第1のタイミングよりも遅い第2のタイミングとにおいて,前記有利状態となる可能性が異なる複数種類の演出を実行可能な演出実行手段」の機能を有している。

(d)上記(c)で検討したように,引用発明の擬似連変動の「2変動目」と「3変動目」とのタイミングを比較すると,「2変動目」のタイミングより「3変動目」のタイミングが遅いことは明らかであるから,引用発明の「擬似連変動の「2変動目」」及び「擬似連変動の「3変動目」」は,それぞれ本願発明の「第1のタイミング」及び「第2のタイミング」に相当する。
そして,引用発明の「2変動目」における「特殊予告演出「CUT-LV1」」は,本願発明の「第1通常演出」に相当し,引用発明の「2変動目」における「特殊予告演出「CUT-LV1」よりも当り期待度が高い特殊予告演出「CUT-LV2」」は,本願発明の「該第1通常演出よりも信頼度が高い第1特定演出」に相当する。
また,引用発明の「3変動目」における「特殊予告演出「CUT-LV1」」は,本願発明の「第2通常演出」に相当し,引用発明の「3変動目」における「特殊予告演出「CUT-LV1」よりも当り期待度が高い特殊予告演出「CUT-LV2」または「CUT-LV3」」は,本願発明の「該第2通常演出よりも信頼度が高い第2特定演出」に相当する。
以上のことから,引用発明の「擬似連変動の「2変動目」には,特殊予告演出「CUT-LV1」と,特殊予告演出「CUT-LV1」よりも当り期待度が高い特殊予告演出「CUT-LV2」が実行可能であり,擬似連変動の「3変動目」には,特殊予告演出「CUT-LV1」と,特殊予告演出「CUT-LV1」よりも当り期待度が高い特殊予告演出「CUT-LV2」または「CUT-LV3」が実行可能であ」ることは,本願発明の「前記第1のタイミングにおいて,少なくとも第1通常演出と該第1通常演出よりも信頼度が高い第1特定演出とのうちいずれかを実行可能であり,前記第2のタイミングにおいて,少なくとも第2通常演出と該第2通常演出よりも信頼度が高い第2特定演出とのうちいずれかを実行可能であ」ることに相当する。

(e)引用発明の「擬似連変動の「2変動目」」及び「擬似連変動の「3変動目」」は,それぞれ本願発明の「第1のタイミング」及び「第2のタイミング」に相当する。
また,引用発明の「擬似連変動の「2変動目」」の「特殊予告演出「CUT-LV1」よりも当り期待度が高い特殊予告演出「CUT-LV2」」は,本願発明の「第1特定演出」に相当し,引用発明の「擬似連変動の「3変動目」」の「特殊予告演出「CUT-LV1」」は本願発明の「第2通常演出」に相当する。
これらのことから,引用発明の「擬似連変動の「2変動目」には,特殊予告演出「CUT-LV1」よりも当り期待度が高い特殊予告演出「CUT-LV2」が実行される場合には,擬似連変動の「3変動目」には,特殊予告演出「CUT-LV1」は実行されない」ことは,本願発明の「前記第1のタイミングにおいて前記第1特定演出が実行される場合に,前記第2のタイミングにおいて前記第2通常演出が実行されない」ことに相当する。

上記(a)?(e)により,本願発明と引用発明とは,
「可変表示を行い,遊技者にとって有利な有利状態に制御可能であり,所定条件の成立に基づいて低確率状態よりも前記有利状態に制御されやすい高確率状態に制御可能な遊技機であって,
前記有利状態に制御するか否かを決定する決定手段と,
前記決定手段による決定結果に基づいて,可変表示を開始した後,表示結果が導出されるまでにおける第1のタイミングと該第1のタイミングよりも遅い第2のタイミングとにおいて,前記有利状態となる可能性が異なる複数種類の演出を実行可能な演出実行手段とを備え,
前記演出実行手段は,
前記第1のタイミングにおいて,少なくとも第1通常演出と該第1通常演出よりも信頼度が高い第1特定演出とのうちいずれかを実行可能であり,
前記第2のタイミングにおいて,少なくとも第2通常演出と該第2通常演出よりも信頼度が高い第2特定演出とのうちいずれかを実行可能であり,
前記演出実行手段は,前記第1のタイミングにおいて前記第1特定演出が実行される場合に,前記第2のタイミングにおいて前記第2通常演出が実行されないまたは実行されにくいように演出を実行可能である,
ことを特徴とする遊技機。」
である点で一致し,以下の点で一応相違する。

[相違点1]
「第1通常演出」の信頼度と「第2通常演出」の信頼度との関係において,本願発明は,信頼度が異なるのに対し,引用発明では擬似連変動の「2変動目」の特殊予告演出「CUT-LV1」の信頼度と擬似連変動の「3変動目」の特殊予告演出「CUT-LV1」の信頼度が異なるか不明である点。

[相違点2]
「第1特定演出」の信頼度と「第2特定演出」の信頼度との関係において,本願発明は,信頼度が異なるのに対し,引用発明では擬似連変動の「2変動目」の特殊予告演出「CUT-LV2」の信頼度と擬似連変動の「3変動目」の特殊予告演出「CUT-LV3」の信頼度は異なるが,擬似連変動の「2変動目」の特殊予告演出「CUT-LV2」の信頼度と擬似連変動の「3変動目」の特殊予告演出「CUT-LV2」の信頼度が異なるか不明である点。

6.判断
上記相違点1,2は技術的に関連するので,まとめて検討する。

刊行物1には,段落【0062】に数多くの敵キャラクタと対峙するように演出内容が展開されれば,相対的に当り期待度が高く,ステップアップ予告の段階数や特殊予告演出の演出上の到達レベルによって変化するキャラクタの種類,その種類の数,キャラクタの数等によっても当り期待度の高さが示されること,段落【0064】にステップアップ予告の段階が進むにつれて,キャラクタの種類の数が増えることと,が記載されている。
一方,刊行物1の段落【0072】には,「SU」は特殊予告演出を構成するステップアップ予告演出における到達段階(ステップ)を示し,「CUT-LV」は特殊予告演出における演出上の到達レベルを示していること,演出系統10のレベル1(CUT-LV1)に対応する「SU4:M←C,B,A」は,図5(a)?(d)に示すようにステップアップ予告においてステップ4まで到達し,ステップ1でキャラクタMが出現し,ステップ2でキャラクタCがカットインされ,ステップ3でキャラクタBがカットインされ,ステップ4でキャラクタAがカットインされ,一旦出現したキャラクタはそのステップアップ予告が終了するまでは滞在し続けるため,ステップ1でキャラクタMが表示され,ステップ2でキャラクタM,Cが表示され,ステップ3でキャラクタM,C,Bが表示され,ステップ4でキャラクタM,C,B,Aが表示されること,が記載されていることから,演出上の到達レベルがCUT-LV1であっても,ステップアップ予告のステップ1(初変動)ではキャラクタMのみ(図5(a)),ステップ2(2変動目)ではキャラクタMとC(図5(b)),ステップ3(3変動目)ではキャラクタMとCとB(図5(c)),ステップ4(4変動目)ではキャラクタMとCとBとA(図5(d))とが表示されるというように,演出上の到達レベルが同じであっても,ステップアップ予告演出におけるステップ数が大きくなるごとに,特殊予告演出のキャラクタの種類の数が増えることが記載されている。
また,刊行物1の段落【0072】には,「到達段階が高いほど,また到達レベルが高いほど,当り期待度が高くなる」ことが記載されている。
以上のことから,刊行物1には,特殊予告演出において,演出上の到達レベルが同じであっても,表示時のステップアップ予告演出におけるステップ数が大きいほどキャラクタの種類の数が多いので,どのステップで表示された特殊予告演出であるかによって,大当り期待度が異なること,すなわち,キャラクタの種類の数が多いほど,大当り期待度が高くなることが,実質的に記載されているといえる。
そして,引用発明における「第1通常演出」(「2変動目」における特殊予告演出「CUT-LV1」)の信頼度と,「第2通常演出」(「3変動目」における特殊予告演出「CUT-LV1」)の信頼度との関係に,上記刊行物1の記載事項を照らしてみれば,引用発明の「第1通常演出」と「第2通常演出」とは演出上の到達レベルが同じであるが,「第1通常演出」(2変動目)と,「第2通常演出」(3変動目)とは,表示されるステップ数(何変動目か)が異なるから,「第1通常演出」の信頼度と「第2通常演出」の信頼度とを異ならせる構成とすることは,当業者が適宜行えることである。
したがって,引用発明の「第1通常演出」の信頼度と「第2通常演出」の信頼度との関係において,「第1通常演出」の信頼度と「第2通常演出」の信頼度とを異ならせることは,刊行物1に実質的に記載されているといえる。

また,相違点2についても同様に,引用発明の「第1特定演出」の信頼度と「第2特定演出」の信頼度との関係において,「第1特定演出」の信頼度と「第2特定演出」の信頼度とを異ならせることは,刊行物1に実質的に記載されているといえる。

したがって,本願発明は,刊行物1に記載された発明であるので,特許法第29条第1項第3号に該当する。
仮にそうでないとしても,上記において検討したように,引用発明が刊行物1の記載事項に基づいて,本願発明の上記相違点にかかる構成を具備することは,当業者が容易になし得たものである。
そして,本願発明の作用効果は,引用発明及び刊行物1の記載事項からみて格別なものではない。

7.むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第1項第3号に該当し,または特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,本願は拒絶すべきである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-14 
結審通知日 2016-10-18 
審決日 2016-10-31 
出願番号 特願2013-229533(P2013-229533)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 洋行▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 平城 俊雅
加舎 理紅子
発明の名称 遊技機  
代理人 木村 満  

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