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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04J
管理番号 1322956
審判番号 不服2015-19282  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-27 
確定日 2016-12-15 
事件の表示 特願2014-121530「端末装置,基地局装置および通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月 6日出願公開,特開2014-209758〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成22年6月14日の出願である特願2010-135055号の一部を,平成23年12月6日に新たな特許出願とした特願2011-266847号の一部を,平成26年6月12日に更に新たな特許出願としたものであって,平成27年7月17日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年10月27日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正がされ,その後,当審において平成28年3月1日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年5月9日付けで手続補正がされたものである。

その請求項5に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成28年5月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項5に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項5】
複数のセルにおいて通信を行う端末装置における通信方法であって,
報告周期を示す情報を取得するためのステップと,
前記複数のセルの各々における,第1の部分プレコーダ情報と,第2の部分プレコーダ情報と,受信品質指標とを,報告するためのステップと,を備え,
前記第1の部分プレコーダ情報と前記第2の部分プレコーダ情報との組み合わせは,1つのプレコーダ行列を示し,
前記報告周期は,前記複数のセルの各々に対して個別に設定されており,
前記複数のセルの各々における前記第1の部分プレコーダ情報を,当該セルの前記報告周期に基づくサブフレームで報告し,
前記複数のセルの各々における前記第2の部分プレコーダ情報および前記受信品質指標を,当該セルの前記報告周期に基づくサブフレームで報告し,
前記複数のセル間で,前記第1の部分プレコーダ情報を報告するサブフレームと,前記第2の部分プレコーダ情報および前記受信品質指標を報告するサブフレームとが同じサブフレームとなった場合,当該サブフレームにおいて前記第1の部分プレコーダ情報を優先して報告し,
前記複数のセルの少なくとも一つにおいて,前記第1の部分プレコーダ情報の報告周期と,前記第2の部分プレコーダ情報の報告周期とが同じである通信方法。」


2 引用発明
当審拒絶理由に引用されたNTT DOCOMO,Views on CSI Reporting Scheme Based on Double Codebook Structure for LTE-Advanced([当審仮訳]:LTE-Advancedのためのダブルコードブック構造に基づくCSI報告スキームについての見解),3GPP TSG-RAN WG1#61 R1-103259,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_61/Docs/R1-103259.zip>,利用可能日:2010年5月4日(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「1. Introduction
At the previous RAN1#60bis meeting in Beijing, the following way forward for Rel-10 feedback in support of enhanced downlink multi-antenna transmission was agreed upon [1].
●A precoder W for a subband is a function of two matrices W_(1) and W_(2), i.e. where W_(1) ∈ C_(1) and W_(2) ∈ C2. The codebooks C_(1) and C_(2) are codebooks one and two, respectively.
-W_(1) targets wideband/long-term channel properties
-W_(2) targets frequency-selective/short-term time channel properties
-For PUCCH, the feedback corresponding to W_(1) and W_(2) can be sent in different or the same subframe (unless it turns out that the payload is too large to ever send W_(1) and W_(2) in the same subframe on PUCCH).」(1ページ)
([当審仮訳]:
1 はじめに
先のRAN1#60bis北京会合において,拡張ダウンリンクマルチアンテナ送信のサポートにおけるRe1-10フィードバックのための以下の方法が合意された。
●サブバンドのためのプリコーダWは,2つの行列W_(1)及びW_(2)の関数であり,ここで,W_(1)∈C_(1),W_(2)∈C_(2)である。コードブックC_(1),C_(2)は,それぞれコードブック1及び2である。
-W_(1)は広帯域/長期間のチャネルプロパティをターゲットとする
-W_(2)は周波数選択性/短期間のチャネルプロパティをターゲットとする
-PUCCHにとって,W_(1)及びW_(2)に関連するフィードバックは,異なるサブフレーム又は同じサブフレームで送信され得る(PUCCH上の同じサブフレームでW_(1)及びW_(2)を送信するのにペイロードが大きすぎることが判明しない限り) )

(2)「3. Views on Periodic CSI Reporting Schemes on PUCCH for Rel-10
(中略)
Following the same principle as for Rel-8 feedback, we consider that the subband size for selecting precoder W_(2) for Rel-10 feedback should be set to the system bandwidth or bandwidth of a component carrier (CC), e.g., 20 MHz, in order to reduce the total feedback overhead of the subband PMI.
Roughly speaking, two alternatives are considered to report the PMIs of W_(1) and W_(2) on the PUCCH.
●Alt. 1: W_(1) and W_(2) are reported in the same subframe
●Alt. 2: W_(1) and W_(2) are reported in different subframes
(中略)
If Alt. 2 is supported, there are some ways that can be considered to multiplex W_(1) and W_(2). Here, since CQI generally track the short-term channel property, we consider that simultaneous reporting of W_(2) and wideband CQI seems more natural for Alt. 2. Furthermore, when W_(1) and W_(2) are reported in different subframes, we need to take care of the impact of error propagation. Taking into account the following factors, two alternatives are considered for Alt. 2.
●Alt. 2-1: W_(2) is reported with wideband CQI, and W_(1) is reported in the same subframe as RI (Fig. 3(a)) [5].
●Alt. 2-2: W_(2) is reported with wideband CQI, and W_(1) is reported in a different subframe from the RI and wideband/subband CQI (Fig. 3(b)).
(中略)


」(2,3,4ページ)
([当審仮訳]:
3.Rel-10のためのPUCCH上での周期的なCSI報告スキームについての見解
(中略)
サブバンドPMIのフィードバックオーバーヘッドの総量を削減するために,Rel-8フィードバックと同じ原理にしたがって,Rel-10フィードバックのための選択プリコーダW_(2)のサブバンドのサイズを,システム帯域幅又はコンポーネントサブキャリアの帯域幅,例えば20MHz,に設定することを検討する。
大雑把に言って,PUCCH上でW_(1)とW_(2)のPMIを報告するために,2つの代替案が検討される。
●代替案1:W_(1)とW_(2)は,同じサブフレームで報告される。
●代替案2:W_(1)とW_(2)は,異なるサブフレームで報告される。
(中略)
もしも代替案2がサポートされるならば,W_(1)とW_(2)を多重化するいくつかの方法が検討され得る。一般にCQIは短期間のチャネルプロパティをトラックするので,W_(2)と広帯域CQIとを同時に報告することは,代替案2にとってより自然であると考える。更に,W_(1)とW_(2)が異なるサブフレームで報告される場合,誤り伝搬の影響について考慮する必要がある。以下の要因を考慮すると,代替案2のために以下の代替案が検討される。
●代替案2-1:W_(2)は広帯域CQIとともに報告され,W_(1)はRIと同じサブフレームで報告される(図3(a))[5]。
●代替案2-2:W_(2)は広帯域CQIとともに報告され,W_(1)はRI及び広帯域/サブバンドCQIとは異なるサブフレームで報告される(図3(b))。
(中略)
(図3は省略。) )

上記(1),(2)の記載及び図面並びに当業者の技術常識を考慮すると,
上記(1)の記載によれば,引用例1には,PUCCH上でW_(1)及びW_(2)に関連するPMIをフィードバックすることを含む,周期的なCSI報告スキームが記載されていると認められる。
ここで,サブバンドのためのプリコーダWは,2つの行列W_(1)及びW_(2)の関数であるから,W_(1)に関連するPMIとW_(2)に関連するPMIとの組み合わせにより特定される,2つの行列W_(1)及びW_(2)の関数であるWが,サブバンドのためのプリコーダとなっているものであることは明らかである。
そして,上記(2)の記載及び図3(b)によれば,W_(2)に関連するPMIは広帯域CQIと同じサブフレームで周期的に報告され,W_(1)に関連するPMIはRIや広帯域/サブバンドCQIとは異なるサブフレームで周期的に報告されることがみてとれる。

以上を総合すると,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「周期的なCSI報告スキームであって,
W_(1)に関連するPMIと,W_(2)に関連するPMIと,広帯域CQIとを,報告するためのステップと,を備え,
前記W_(1)に関連するPMIと前記W_(2)に関連するPMIとの組み合わせは,1つのプレコーダ行列Wを示し,
前記W_(1)に関連するPMIを,所定のサブフレームで周期的に報告し,
前記W_(2)に関連するPMI及び前記広帯域CQIを,別の所定のサブフレームで周期的に報告する,周期的なCSI報告スキーム。」

当審拒絶理由に引用されたPanasonic,Periodic CQI Reporting for Carrier Aggregation([当審仮訳]:キャリアアグリゲーションのための周期的なCQI報告),3GPP TSG-RAN WG1#60b R1-102028,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_60b/Docs/R1-102028.zip>,利用可能日:2010年4月6日(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
(3)「2.1 Periodic CQI/PMI/RI Reporting and Configuration in Release 8
In Release 8, it is basically the job of the RRC configuration to assign proper values for all aspects of periodic reports. Among these are
●Subband CQI cycle factor
●Rank report time offset and multiplier
●PUCCH resource index
●CQI/PMI periodicity and time offset
2.2 Situation in carrier aggregation
In order to map multiple periodic CSI reports corresponding to multiple CC to a single UE specific CC, it is possible to assign different periodicities, PUCCH resources, and offset values to the different CC reports. Consequently, by careful eNB configuration, it is possible that the methods existing in Release 8 are sufficient without further need for PUCCH payload improvement or PUCCH overhead reduction. However, in our view this would impose too many restrictions on the reporting, particularly if many UEs are active in many downlink component carriers at the same time.
Consequently, we propose to study methods how to allow the handling of cases where in one subframe, CQI/PMI/RI should be reported for multiple component carriers.
(中略)
Case 4: Prioritization of CQI/PMI/RI
Already in Release 8, it is specified that CQI/PMI reporting is dropped in case it collides with an RI reporting instance. This principle can be extended to the carrier aggregation scenario by transmitting only the CQI/PMI or RI value(s) which is configured with the largest periodicity value, i.e. the one which occurs most infrequently is prioritised. All other CQI/PMI/RI content is dropped from transmission in that subframe. By this, the single-carrier property of Release 8 is maintained, and no payload extension needs to be specified either.」(1,2ページ)
([当審仮訳]:
2 検討
2.1 周期的CQI/PMI/RI報告及びリリース8における設定
リリース8では,周期的な報告の全ての側面のための適切な値の割り当ては,基本的にRRC設定の仕事である。
●サブバンドCQIサイクル要因
●ランク報告タイムオフセット及び多重化
●PUCCHリソースインデックス
●CQI/PMI周期及びタイムオフセット
2.2 キャリアアグリゲーションのおける状況
複数のCCに関連する複数の周期的なCSI報告を単一のUE特有CCにマップするために,異なるCC報告に,異なる周期,PUCCH資源及びオフセット値を割り当てることができる。その結果,注意深いeNB設定により,PUCCHペイロードの改良又はPUCCHオーバーヘッドの削減をすることなく,リリース8における既存の手法が十分なものとすることができる。しかしながら,特に多数のダウンリンクコンポーネントキャリアで多数のUEが同時にアクティブである場合,これは報告にあまりに多くの制約を課していると考える。
したがって,1つのサブフレームにおいて複数のコンポーネントキャリアのためのCQI/PMI/RIが報告されるケースを扱うことを可能とする
手法を検討することを提案する。
(中略)
ケース4:CQI/PMI/RIの優先順位
既にリリース8において,RI報告時に衝突した場合はCQI/PMI報告を落とすことが明記されている。この原理は,最も周期が長く調整されたCQI/PMI又はRI値のみを伝送することにより,キャリアアグリゲーションシナリオに拡張することができる,すなわち,発生する頻度が最も少ない報告が優先される。その他の全てのCQI/PMI/RIは,そのサブフレームの伝送から落とされる。これにより,リリース8のシングルキャリア特性は維持され,ペイロードの拡張を明記する必要もない。)

上記(3)の「2.2」の記載によれば,引用例2には,「複数のコンポーネントキャリア(CC)に対応する複数の周期的なCSI報告を1つのUE特有CCにマッピングする際に,異なるCC報告に,異なる周期,PUCCH資源及びオフセット値を割り当てる。」こと(以下,「公知技術1」という。),及び「複数のCCに対するCQI/PMI/RIを1つのサブフレームで報告する場合の取扱いに関し,CQI/PMI/RIのうち最も優先度の高いものを報告し,他の全ての報告を落とす(報告しない)。」こと(以下,「公知技術2」という。)が記載されていると認められる。

当審拒絶理由に引用されたNokia Siemens Networks, Nokia,CSI reporting for Carrier Aggregation([当審仮訳]:キャリアアグリゲーションのためのCSI報告),3GPP TSG-RAN WG1#60b R1-101894,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_60b/Docs/R1-101894.zip>,利用可能日:2010年4月6日(以下,「周知例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
(4)「1. Introduction
In order to be able to efficiently operate the LTE-Advanced systems with carrier aggregation, there need to be mechanisms to support channel state information (CSI) feedback signalling for multiple component carriers (CC). At the same time it would be highly desirable to reutilize the work carried out during LTE Release-8 and Release-9 standardization to large extent to avoid having excessive number of options complicating the implementation.
(中略)
Proposal 2: Periodic CSI reporting on PUCCH is configured independently for each component carrier with RRC signalling similar to LTE Rel-8 (periodicity, subframe offset, reporting mode, resource allocation etc.) 」(1,2葉)
([当審仮訳]:
1.はじめに
キャリアアグリゲーションを伴うLTE-Advancedシステムの効率的な動作を可能とするために,複数のコンポーネントキャリア(CC)のためのチャネル状態情報(CSI)フィードバックシグナリングをサポートするメカニズムが必要とされる。同時に,実施を複雑化する過度の数のオプションを避けるために,リリース8及びリリース9の標準化の間に実行された作業を最大限再利用することが強く望まれる。
(中略)
提案2:PUCCH上の周期的なCSI報告は,LTEのRel-8と同じようなRRCシグナリング(周期,サブフレームオフセット,報告モード,資源割り当て等)で,各コンポーネントキャリアのために独立して設定される。)

例えば上記(3)の「2.2」及び上記(4)の「1.はじめに」の記載からも明らかなように,「LTE Re1-10ではキャリアアグリゲーションが検討されている。」ことは,当業者における技術常識である。
また,上記(3)の「2.1」及び上記(4)の「提案2」にも記載されているように,「周期的なCSI報告の設定をRRCシグナリングにより行う。」ことは,周知技術である。

当審拒絶理由に引用された国際公開第2010/064521号(以下,「周知例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
(5)「[0155] また,コンポーネントキャリアは,単にセルと解釈することもでき,移動局装置が複数のセルのシステム情報を管理すると解釈することもできる。」(30ページ)

例えば上記(5)にも記載されているように,「コンポーネントキャリアがセルと解釈できる。」ことは,当業者における技術常識である。

本願の遡及出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったZTE,Discussion in unified framework for multi-granular feedback([当審仮訳]:マルチ解像度フィードバックのための統一されたフレームワークの議論),3GPP TSG-RAN WG1#60b R1-101838,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_60b/Docs/R1-101838.zip>,利用可能日:2010年4月8日(以下,「周知例3」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
(6)「2 Multi-granular feedback schemes
In general, multi-granular feedback can be expressed as:W = F(W_(PMI1),W_(PMI2)) as stated in [2]. Under this feedback framework, there are different feedback schemes which make use of correlation properties differently.
(中略)
3 Unified framework for multi-granular feedback
3.1 Multi-level codebook - unification of adaptive codebook and differential codebook
There are some similarities between adaptive codebook and differential codebook. Multi-granular codebook with multi-level structure proposed in [5] can be one way to unify these two schemes. Figure 4 illustrates the concept of using 2 level codebook:
(中略)
Rel-8 codebook can be re-used as the base L1 codebook corresponding to which targets the principal eigenvector of channel covariance matrix. There are two approaches to generate L2 codebook to do refinement depending on the channel correlation.



(中略)
One difference between differential codebook and this multi-level codebook idea is the base. If differential codebook is done in time, transformation is applied to the differential codebook in the previous time instant. On the other hand, transformation is always applied to one base codebook (i.e. Rel-8 codebook) for multi-level codebook. This avoids the error propagation issue.
For long term/short term or wideband/subband division, we can feed back L1 PMI (from Rel-8 codebook) as a long term/wideband feedback as illustrated in figure 4. And then we do refinement based on the L2 codebook to track the short term/subband channel variation. 」(1,4,5葉)
([当審仮訳]:
2 マルチ解像度フィードバックスキーム
一般に,マルチ解像度フィードバックは,[2] に述べられているように,(数式は省略。)として表されることができる。このフィードバックフレームワークの下で,異なる相互関係特性を用いる異なるフィードバックスキームが存在する。
(中略)
3 マルチ解像度フィードバックのための統一されたフレームワーク
3.1 マルチレベルコードブック-適応コードブックと差動コードブックの統合
適応コードブックと差動コードブックとの間には,いくつかの類似点がある。[5] で提案されたマルチレベル構造のマルチ解像度コードブックは,これら2つのスキームを統合する1つの方法となり得る。図4は,2レベルコードブックを使用する概念を示している。
(中略)
Rel-8コードブックは,チャネル共分散行列の主固有ベクトルをターゲットとするPMI_(1)に関連するベースL1コードブックとして,再利用できる。チャネル相関に依存して精緻化を行うL2コードブックを生成するために,2つのアプローチが存在する。
(図4は省略。)
(中略)
差動コードブックとこのマルチレベルコードブックのアイデアとの相違の1つは,そのベースである。差動コードブックが時間軸でなされる場合,変換は先の時間的瞬間の差動コードブックについてなされる。他方,マルチレベルコードブックでは,変換は常に1つのベースコードブック(すなわち,Rel-8コードブック)に適用される。これは,誤り伝播の問題を避ける。
長期/短期,又は広帯域/サブバンドの分割のために,図4に示されるように長期/広帯域フィードバックとして,L1 PMI(Rel-8コードブックから)をフィードバックすることができる。そして,その後,短期/サブバンドのチャネル変動を追うため,L2コードブックに基づいて精緻化する。)

例えば上記(6)にも記載されているように,「複数のコードブックを組み合わせて使用するものにおいて,第1のコードブックは,長期又は広帯域のチャネル状況に対応する,主となるものであり,第2のコードブックは,それを精緻化するための,短期又はサブバンドのチャネル変動に対応するものである。」ことは,当業者における技術常識である。

本願の遡及出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったNokia Siemens Networks, Nokia,Feedback design and signaling considerations for dual codebook operation([当審仮訳]:デュアルコードブック動作のためのフィードバック設計及びシグナリングの検討),3GPP TSG-RAN WG1#61 R1-102959,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_61/Docs/R1-102959.zip>,利用可能日:2010年5月4日(以下,「周知例4」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
(7)「2 Signalling considerations for dual codebook based UE feedback
The previous meeting left open possibilities for the UL signalling:
●For PUCCH, the feedback corresponding to W1 and W2 can be sent in different or the same subframe (unless it turns out that the payload is too large to ever send W1 and W2 in the same subframe on PUCCH).
(中略)
Option A
In this scenario the long term component takes the form of a wideband PMI, while the short term component operates in a frequency selective fashion as sub-band PMI on an equivalent channel with lower dimensionality.
(中略)
Feedback Payload: Considering the above mentioned codebook sizes, and assuming a 20 MHz system bandwidth (100 PRB) with a granularity of 8 PRB for the short term PMI, a total of 44 bits is needed for the whole PMI feedback itself (long- and short-term components). Accounting for wideband CQI bits for up to two codewords as well as an 8-bit CRC, one gets a report with 60 bits and the total feedback rate amounts to 6000 bps assuming 10 ms reporting periodicity (see Table 1).



(中略)
Option B
In this scenario we allow time averaging for the long term component Moreover, in order to take full benefit of time averaging, we consider the case of narrowband feedback for W1. The short term component operates as in the previous case, narrowband.
(中略)
Feedback Payload: Building on the previous numerology, codebook sizes, and considering W1 feedback granularity of 8 PRB, the report size for the long term PMI component is 65 bits while the short term PMI component report comes at the expense of 39 bits. Considering different reporting intervals for the two components, if one assumes 100 ms periodicity for the long term component and 10 ms for the short term one, as well as wideband CQI for two codewords and 8-bit CRC for each report (in order to make each report standalone), one gets 81 bits for the long term report and 55 bits for its short term counterpart. The corresponding feedback rate amounts to 6310 bps (see Table 2).



」(2,3,4ページ)
([当審仮訳]:
2 デュアルコードブックに基づくUEフィードバックのためのシグナリングの検討
先の会合ではULシグナリングの可能性についての議論が残されていた。
●PUCCHのため,W1及びW2に関連するフィードバックは,異なるサブフレーム又は同じサブフレームで送ることができる(PUCCH上の同じサブフレームでW1及びW2を送るのにペイロードがあまりに大きいことが判明しない限り)。
(中略)
オプションA
このシナリオでは,長期構成要素は広帯域PMIの形態をとり,短期構成要素は,低次の同等チャネル上でサブバンドPMIとして周波数選択的に動作する。
(中略)
フィードバックペイロード:上述のコードブックサイズを考慮し,システム帯域20MHz(100PRB)で短期PMIのための解像度が8PRBと仮定すると,全PMIフィードバック(長期及び短期構成要素)のための総計44ビットが必要とされる。8ビットのCRCと2コードワードまでの広帯域CQIのために60ビットの報告を得,報告周期が10msと仮定すると,総フィードバックレートは6000bpsとなる。
(表1は省略。)
オプションB
このシナリオでは,長期構成要素のために時間平均を許容する。さらに,時間平均の利益を十分に得るために,W1に対する狭帯域フィードバックのケースを検討する。先のケースでは,短期構成要素は,狭帯域として動作する。
(中略)
フィードバックペイロード:先の数字,コードブックサイズの上に構築し,W1のフィードバック解像度を8PRBと考えると,長期PMI構成要素のための報告サイズは65ビットで,一方,短期PMI構成要素は39ビットかかる。2つの構成要素に対して異なる報告間隔を考慮して,長期構成要素のためにの周期を100ms,短期構成要素のために10msと仮定すると,各報告のため(各報告をスタンドアローンにするため)に,2コードワードの広帯域CQIと8ビットのCRCで,長期構成要素のために81ビット,対応する短期構成要素のために55ビット得る。対応するフィードバックレートは合計6310bpsとなる(表2参照。)。
(表2は省略。) )

上記(2)及び上記(7)の記載によれば,「W_(1)及びW_(2)に関連するフィードバックを,異なるサブフレーム又は同じサブフレームでフィードバックする。」ことは周知技術である。ここで,W_(1)及びW_(2)に関連するフィードバックを同じサブフレームでフィードバックする場合は,W_(1)のフィードバックの周期とW_(2)のフィードバックの周期は当然に同じである。一方,W_(1)及びW_(2)に関連するフィードバックを異なるサブフレームでフィードバックする場合は,W_(1)のフィードバックの周期とW_(2)のフィードバックの周期は,同じこともあれば,引用例1のFig.3(b)のように異なることがあることも,当然の事実である。
また,上記(7)の記載によれば,「W_(1)に関連するフィードバックと高解像度のW_(2)に関連するフィードバックとを同じ周期とすることと,W_(1)に関連するフィードバックを同じ解像度のW_(2)に関連するフィードバックより長周期とすること,とは適宜選択し得る。」ことがみてとれる。
してみれば,「W_(1)のフィードバックの周期とW_(2)のフィードバックの周期とを,それぞれ異なる周期とするか又は同じ周期とする。」ことも周知技術であるといえる。


3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると,
a 引用例1は,3GPPの無線アクセスネットワークに係る提案文書であり,PUCCHは端末装置から基地局へのアップリンクの無線通信チャネルであるから,引用発明の「周期的なCSI報告スキーム」は,「通信を行う端末装置における通信方法」である点で,本願発明と共通している。

b 本願の平成28年5月9日付け意見書には補正の根拠が本願明細書の【0062】,図17とされているから,本願発明は本願明細書の【0062】,図17の実施形態に対応するものと認められるところ,図17には報告される情報として「PI_(1)」,「PI_(2)」,「W-CQI」が示されている。そして,本願明細書の【0043】?【0045】によれば,部分プレコーダ情報1(PI_(1))として4ビットで表すことができるインデクスiを指定することによりiに対応するW^(1)_(i)が一意に決定し,部分プレコーダ情報2(PI_(2))として2ビットで表すことができるインデクスjを指定することによりjに対応するW^(2)_(j)が一意に決定するものである。してみると,引用発明の「W_(1)に関連するPMI」,「W_(2)に関連するPMI」,「広帯域CQI」は,明らかに本願発明の「第1の部分プレコーダ情報」,「第2の部分プレコーダ情報」,「受信品質指標」に含まれる。

c 本願発明は,「前記複数のセルの各々における前記第1の部分プレコーダ情報を,当該セルの前記報告周期に基づくサブフレームで報告し,前記複数のセルの各々における前記第2の部分プレコーダ情報および前記受信品質指標を,当該セルの前記報告周期に基づくサブフレームで報告」するものである。
ここで,「第1の部分プレコーダ情報」,「第2の部分プレコーダ情報および前記受信品質指標」は,いずれも「当該セルの前記報告周期に基づくサブフレームで報告」されるものであるが,これは両者の報告周期が同じであることを意味しているのではなく,当該セルの「第1の部分プレコーダ情報についての報告周期」に対応するサブフレームで当該情報を報告し,また,当該セルの「第2の部分プレコーダ情報および受信品質情報についての報告周期」に対応するサブフレームでこれらの情報を報告することを意味していると認められる。そして,「前記複数のセルの少なくとも一つにおいて,前記第1の部分プレコーダ情報の報告周期と,前記第2の部分プレコーダ情報の報告周期とが同じである」のとおり,「複数のセルの少なくとも一つにおいて」両報告周期が同じなのである。
他方,引用発明は,「W_(1)に関連するPMI」を所定のサブフレームで周期的に報告し,「W_(2)に関連するPMI及び広帯域CQI」を,別の所定のサブフレームで周期的に報告するものであり,「W_(1)に関連するPMI」を報告する周期と「W_(2)に関連するPMI及び広帯域CQI」する周期とがそれぞれ存在することは明らかである。
そうすると,本願発明と引用発明とは,「前記第1の部分プレコーダ情報を,当該情報の報告周期に基づくサブフレームで報告し,前記第2の部分プレコーダ情報および前記受信品質指標を,これらの情報の報告周期に基づくサブフレームで報告する」点で共通する。

したがって,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。
(一致点)
「通信を行う端末装置における通信方法であって,
第1の部分プレコーダ情報と,第2の部分プレコーダ情報と,受信品質指標とを,報告するためのステップを備え,
前記第1の部分プレコーダ情報と前記第2の部分プレコーダ情報との組み合わせは,1つのプレコーダ行列を示し,
前記第1の部分プレコーダ情報を,当該情報の報告周期に基づくサブフレームで報告し,
前記第2の部分プレコーダ情報および前記受信品質指標を,これらの情報の報告周期に基づくサブフレームで報告する,通信方法。」

(相違点1)
「通信を行う端末装置」に関し,本願発明の端末装置は「複数のセルにおいて通信を行う」ものであるのに対し,引用発明は当該事項が明らかでない点。

(相違点2)
本願発明は,「報告周期を示す情報を取得するためのステップ」を有し,「前記報告周期は,前記複数のセルの各々に対して個別に設定されており」,「前記複数のセルの各々における前記第1の部分プレコーダ情報を,当該セルの前記報告周期に基づくサブフレームで報告し,前記複数のセルの各々における前記第2の部分プレコーダ情報および前記受信品質指標を,当該セルの前記報告周期に基づくサブフレームで報告」するのに対し,引用発明はこれらの事項が明らかでない点。

(相違点3)
上記相違点1及び2に伴い,本願発明は「前記複数のセル間で,前記第1の部分プレコーダ情報を報告するサブフレームと,前記第2の部分プレコーダ情報および前記受信品質指標を報告するサブフレームとが同じサブフレームとなった場合,当該サブフレームにおいて前記第1の部分プレコーダ情報を優先して報告」するのに対し,引用発明は当該事項が明らかでない点。

(相違点4)
上記相違点1及び2に伴い,本願発明は「前記複数のセルの少なくとも一つにおいて,前記第1の部分プレコーダ情報の報告周期と,前記第2の部分プレコーダ情報の報告周期とが同じである」のに対し,引用発明は当該事項が明らかでない点。

まず,相違点1,相違点2について纏めて検討する。
引用例1はLTE Re1-10についての提案であるところ,「LTE Re1-10ではキャリアアグリゲーションが検討されている。」こと,「キャリアアグリゲーションにおけるコンポーネントキャリアがセルと解釈できる。」ことは,いずれも当業者における技術常識である。してみると,引用発明において「複数のセルにおいて通信を行う」ものとすることは,引用発明においても当然に想定されていること,あるいは容易になし得ることに過ぎない。
そして,「周期的なCSI報告の設定をRRCシグナリングにより行う。」ことは周知技術であるから,「報告周期を示す情報を取得するためのステップ」を備えることは,何ら格別な技術的特徴を有するものではなく,引用発明においても当然に有していると解するのが自然であるし,そうでなくとも容易になし得ることである。
また,公知技術1のとおり,「複数のコンポーネントキャリア(CC)に対応する複数の周期的なCSI報告を1つのUE特有CCにマッピングする際に,異なるCC報告に,異なる周期,PUCCH資源及びオフセット値を割り当てる。」ことも公知であるから,「前記報告周期は,前記複数のセルの各々に対して個別に設定されて」いる点は,なんら格別な技術的特徴を有するものではない。そして,異なるCC報告に異なる周期を割り当てた場合,報告がなされる単一のUE特有CCにおいて,あるCCに関するCSI報告は,当該CCの報告周期に基づくサブフレームで報告され,別のCCに関するCSI報告は,当該別のCCの報告周期に基づくサブフレームで報告されること明らかである。
したがって,「前記報告周期は,前記複数のセルの各々に対して個別に設定されており」,「前記複数のセルの各々における前記第1の部分プレコーダ情報を,当該セルの前記報告周期に基づくサブフレームで報告し,前記複数のセルの各々における前記第2の部分プレコーダ情報および前記受信品質指標を,当該セルの前記報告周期に基づくサブフレームで報告」する点は,引用発明におけるCSI報告を行う主体である端末装置を「複数のセルにおいて通信を行う」ものとする際に,適宜なし得ることに過ぎない。

次に,相違点3について検討する。
公知技術2のとおり,「複数のCCに対するCQI/PMI/RIを1つのサブフレームで報告する場合の取扱いに関し,CQI/PMI/RIのうち最も優先度の高いものを報告し,他の全ての報告を落とす(報告しない)。」ことは,公知である。
そして,「複数のコードブックを組み合わせて使用するものにおいて,第1のコードブックは,長期又は広帯域のチャネル状況に対応する,主となるものであり,第2のコードブックは,それを精緻化するための,短期又はサブバンドのチャネル変動に対応するものである。」ことは,当業者における技術常識である。
してみると,引用発明のCSI報告スキームにおいて,主となる「W_(1)に関連するPMI」を優先して,「前記複数のセル間で,前記第1の部分プレコーダ情報を報告するサブフレームと,前記第2の部分プレコーダ情報および前記受信品質指標を報告するサブフレームとが同じサブフレームとなった場合,当該サブフレームにおいて前記第1の部分プレコーダ情報を優先して報告」することは,格別困難なことではなく,当業者が容易になし得ることに過ぎない。

次に,相違点4について検討する。
引用例1の図3に例示されているものは,W_(1)に関連するPMIを報告する周期とW_(2)に関連するPMI及び広帯域CQIを報告する周期とが異なるものである。しかしながら,「W_(1)及びW_(2)に関連するフィードバックを,異なるサブフレーム又は同じサブフレームでフィードバックする。」こと及び「W_(1)のフィードバックの周期とW_(2)のフィードバックの周期とを,それぞれ異なる周期とするか又は同じ周期とする。」ことは周知技術であることに鑑みれば,引用発明においてW_(1)に関連するPMIを報告する周期とW_(2)に関連するPMIを報告する周期をそれぞれどのようにするかは適宜選択し得ることにすぎず,「前記複数のセルの少なくとも一つにおいて,前記第1の部分プレコーダ情報の報告周期と,前記第2の部分プレコーダ情報の報告周期とが同じである」ことは適宜なし得ることに過ぎない。


4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び公知技術並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-11 
結審通知日 2016-10-18 
審決日 2016-11-02 
出願番号 特願2014-121530(P2014-121530)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷川 篤男菊地 陽一  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 菅原 道晴
山中 実
発明の名称 端末装置、基地局装置および通信方法  
代理人 西澤 和純  
代理人 三木 雅夫  
代理人 覚田 功二  
代理人 野村 進  

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