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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1322962
審判番号 不服2015-21835  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-09 
確定日 2016-12-14 
事件の表示 特願2011- 35463「画素、これを利用した表示装置、及びその駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月 5日出願公開、特開2012-128386〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成23年2月22日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2010年12月10日(以下、「優先日」という。) 韓国)の出願であって、平成27年1月28日付けの拒絶理由通知に対して平成27年3月24日付けで手続補正がなされたが、平成27年8月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年12月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

2 平成27年12月9日付けの手続補正について
(1)補正の概要
平成27年12月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、本件補正前(平成27年3月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲)の請求の範囲の請求項12、13に、
ア 「【請求項12】
有機発光ダイオード;
前記有機発光ダイオードに伝達されたデータ信号による駆動電流を伝達する駆動トランジスタ;
第1走査信号に対応して前記駆動トランジスタに前記データ信号を伝達する第1トランジスタ;
前記駆動トランジスタのゲート電極に初期化電圧を印加する初期化期間の間に、第2走査信号に対応して前記駆動トランジスタのソース電極に第1電源電圧を印加する第2トランジスタ;及び
前記駆動トランジスタのゲート電極に接続する第1電極及び前記第1電源電圧に接続する第2電極を含むキャパシタを含む画素。
【請求項13】
前記初期化期間の間の前記駆動トランジスタのゲート電極の電圧とソース電極の電圧との電圧差は、前記駆動トランジスタを動作させる電圧である、請求項12に記載の画素。」
とあったものを、

イ 「【請求項11】
有機発光ダイオード;
前記有機発光ダイオードに伝達されたデータ信号による駆動電流を伝達する駆動トランジスタ;
第1走査信号に対応して前記駆動トランジスタに前記データ信号を伝達する第1トランジスタ;
前記駆動トランジスタのゲート電極に初期化電圧を印加する初期化期間の間に、第2走査信号に対応して前記駆動トランジスタのソース電極に第1電源電圧を印加する第2トランジスタ;及び
前記駆動トランジスタのゲート電極に接続する第1電極及び前記第1電源電圧に接続する第2電極を含むキャパシタを含み、
前記初期化期間中、前記駆動トランジスタのゲート-ソース電圧差を、前記駆動トランジスタが動作する基準電圧以上の電圧値とする画素。」
とする補正を含むものである(下線は、補正箇所を示す。)。

(2)補正の目的
ア 本件補正前の請求項12を引用する請求項13を、独立形式で記載すれば、次のとおりである。
「有機発光ダイオード;
前記有機発光ダイオードに伝達されたデータ信号による駆動電流を伝達する駆動トランジスタ;
第1走査信号に対応して前記駆動トランジスタに前記データ信号を伝達する第1トランジスタ;
前記駆動トランジスタのゲート電極に初期化電圧を印加する初期化期間の間に、第2走査信号に対応して前記駆動トランジスタのソース電極に第1電源電圧を印加する第2トランジスタ;及び
前記駆動トランジスタのゲート電極に接続する第1電極及び前記第1電源電圧に接続する第2電極を含むキャパシタを含み、
前記初期化期間の間の前記駆動トランジスタのゲート電極の電圧とソース電極の電圧との電圧差は、前記駆動トランジスタを動作させる電圧である、画素。」

イ 本件補正は、初期化電圧及び初期化期間について、本件補正前の請求項13に「前記初期化期間の間の前記駆動トランジスタのゲート電極の電圧とソース電極の電圧との電圧差は、前記駆動トランジスタを動作させる電圧である」とあった記載を、「前記初期化期間中、前記駆動トランジスタのゲート-ソース電圧差を、前記駆動トランジスタが動作する基準電圧以上の電圧値とする」と明確にし、請求項11としたものに相当する。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号(請求項の削除)及び第4号(明瞭でない記載の釈明)に掲げる事項を目的とするものに該当する。

3 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし26に係る発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし26に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項11に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「2」(1)「イ」に記載したとおりのものである。

4 引用例
(1)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である。特開2009-210993号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

「【解決手段】オフセットキャンセル動作を行う前の、駆動用トランジスタの初期化電圧を、トランジスタのゲート電圧-ドレイン電流特性に合わせて、異なる電圧を印加することで、キャンセル時間が短くても駆動用トランジスタの特性バラツキをキャンセルしやすくする。」

「【特許請求の範囲】
【請求項1】
EL素子を有する複数の画素が、縦横にマトリックス状に配置された表示画面を有するEL表示装置において、
前記画素は、駆動電流を前記EL素子に供給する駆動用トランジスタを有し、
前記駆動用トランジスタは、オフセットキャンセル動作を行い、前記オフセットキャンセル動作の前の期間である第1の期間中に前記駆動用トランジスタのゲート電極の電圧を電流により変化させる第1電源を有する、
EL表示装置。
【請求項2】
前記第1の期間の前の期間である第2の期間中に、前記駆動用トランジスタのゲート電極に電圧を印加する第2電源を有する、
請求項1記載のEL表示装置。」

「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機または無機エレクトロルミネッセンス(EL)素子などを用いるEL表示パネル(表示装置)などの自発光表示パネルを用いた、EL表示装置に関するものである。」

「【0003】
有機EL(PLED、OLED、OEL)パネルは、アクティブマトリクス方式の開発が行なわれている。この方式は、各画素回路内部の発光素子に流れる電流を、画素回路内部に設けた能動素子(一般には薄膜トランジスタ、TFT)によって制御するものであり、例えば特許文献1,2が提案されている。」

「【0019】
駆動用トランジスタ11aは、トランジスタ11cのドレイン電極にソース電極が接続される。閾値電圧補償トランジスタ11bのソースまたはドレイン電極と、コンデンサ19aの第1の端子が共通接続され、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧が決定される。したがって、駆動用トランジスタ11aは、ゲート電極に印加された電圧に相当する駆動電流を生成する。」

「【0024】
コンデンサ19aは、第1の電源電圧ラインVddと駆動用トランジスタ11aのゲート電極との間に接続され、第1の電源電圧Vddと駆動用トランジスタ11aのゲート電極に印加される電圧Vdata-Vth[V]の電圧差に該当する電荷を1フレームの間に維持する。
【0025】
(2)ゲート信号線
ゲート信号線17に印加される電圧は、オフ電圧(VGH)とオン電圧(VGL)であり、VGH電圧の印加により、スイッチ用トランジスタ11b、11c、11d、11e、11fがオフし、VGL電圧の印加により、スイッチ用トランジスタ11b、11c、11d、11e、11fがオンする。」

【0065】
初期化トランジスタであるスイッチ用トランジスタ11fは、リセット電圧ラインVrstとコンデンサ19aの第1の端子との間に接続され、ゲート電極に接続したn-1番目ゲート信号線17aのスキャン信号に応答して、先行フレームのとき前記コンデンサ19aに充填された電荷は前記リセット電圧ラインVrstを介して放電させることによって、コンデンサ19aを初期化させる。

「【0124】
図35はゲート信号線をトランジスタ11eと11dで個別制御にした回路構成を示している。1画素において、1フレームは、リセット期間361、映像信号書き込みと特性キャンセル期間362、非発光期間363、発光期間364からなる。駆動用トランジスタ11aの初期化(リセット)を行う電源が、電圧源331、電流源312の2つがあり、電圧源331が印加されるリセット期間を365、電流源312が印加されるリセット期間を366とする。なおリセット期間361は電流源312から出力される電流を元に駆動用トランジスタ11aを初期化し、かつ同一列で同一のリセット線311を利用して画素にリセット電圧及び電流を書き込むことから、1水平走査期間以内で実施する必要がある。映像信号書き込みと特性キャンセル期間362は、同一列で同一のソース信号線18から映像信号に対応する電圧が供給されることから、1水平走査期間以内で実施する必要がある。リセット及び特性キャンセルに時間がかからない場合においては、リセット期間361と映像信号書き込みと特性キャンセル期間362を1水平走査期間内に実施してもよい。
【0125】
本実施形態の方式においては、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧の初期化を、電圧源331ばかりでなく、電流源312を用いて実施することが特徴である。図36に示すようにリセット期間361のうちの期間365において、従来と同様に電圧源331により駆動用トランジスタ11aのゲート電圧をVrstに初期化する。このときゲート信号線17e及び17cによりトランジスタ11e及び11bについては、オンでもオフでも構わないが、Vdd電源からVrst電源に駆動用トランジスタ11aの特性により貫通電流が流れることを防止する観点から少なくとも一方のトランジスタについてはオフにすることが好ましい。本実施形態ではリセット期間361の間にさらに期間366を設け、切り替え手段333の接続を切り替え、電流源312により駆動用トランジスタ11aの初期化を行う。電流源312の電流が駆動用トランジスタ11aのドレイン電流となるように、トランジスタ11f、11b、11eをオン状態とする。電流源312の電流値は、期間366において、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧が電圧源331のVrst付近になるような電圧に設定することが好ましい。駆動用トランジス11aの特性バラツキがあるため、EL表示装置に形成された画素の平均電圧がVrstであってもよい。期間366により駆動用トランジスタ11aのゲート電圧はVrst+ΔV1に変化する。ここでΔV1は電流源312の電流(Irst)を流したときのゲート電圧ばらつきに相当する。
【0126】
映像信号書き込みと特性キャンセル期間362においてソース信号線18から映像信号が入力され、トランジスタ11bがオン状態であり、トランジスタ11fがオフ状態であることで、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧は映像信号電圧をVsとするとVs-Vth(Vthは閾値電圧)となるまで変化する。Vs-Vthとなるのは、特性キャンセル期間が十分長い時間である場合であって、1水平走査期間で362の期間を終わらせる必要があることから、特性キャンセル期間は40μ秒程度しか取れない。」

「【0129】
図40に異なる電流-電圧特性を持つ駆動用トランジスタ11aに対する、リセット期間361を電圧源のみで実現した場合(a)と、電流源を用いて実現した場合(b)の映像信号書き込みと特性キャンセル期間362終了後の電流値の違いを示す。
【0130】
図40(a)では電圧源のみで駆動用トランジスタ11aの初期化を行っているため、401と402の特性を示す2つの画素の駆動用トランジスタ11aにおいて、ゲート電圧がVrstとなるが、そのときの電流値はIrst1、Irst2と異なる値となる。401の特性では点403a、402の特性では点403bである。次に映像信号書き込みと特性キャンセル期間362において、駆動用トランジスタ11aのソース電位に映像信号が書き込まれゲート電位は、閾値キャンセル動作によりソース電位から閾値電圧分下がった点まで変化しようとする。変化に要する時間は100μ秒程度かかるので、1水平走査期間では、十分にキャンセル電圧406にまで変化せず、405に示す点までの変化となる。電圧変化量は流れる電流と浮遊容量により決められ、電圧変化量ΔV=i×T/C(ここでi:流れる電流、T:キャンセル期間362の長さ、C:浮遊容量)であらわされ、403a点の方が、403b点に比べて電流が多いことから、曲線401で示されるトランジスタの方が電位変化量が大きく、V2まで電圧が変化する。曲線402では、点403bでの電流が少ないため変化量が少なくなり、V1までしか電圧が変化しない。点405a及び405bでのドレイン電流がI2とI1で異なり、この差が表示ムラとして視認される可能性がある。一方で電流源を用いてリセットを実施した場合には、図40(b)に示すように、リセット期間361の終了時には、ドレイン電流がIrst、ゲート電圧が曲線401と402で異なり、Vrst1、Vrst2となる。(点404a、404b)次に映像信号書き込みと特性キャンセル期間362においてキャンセルを行うと、流れる電流はIrstと同じで、浮遊容量にばらつきがなく、キャンセル時間は同一パネルであることから同一に設定できるため、ΔVは曲線401、402とも同一となり、それぞれ同一電位だけシフトしたV1及びV2の電圧となる。(点405c、405d)このときのドレイン電流はいずれもI1となり、駆動用トランジスタ11aの特性に違いがあったとしても特性キャンセル期間362終了後の書き込まれた電流値が同一となり、表示ムラがなくなる構成を実現できた。
【0131】
リセット期間で、一定電流により駆動用トランジスタ11aのゲート電圧を個別に設定することで、キャンセル期間が短いことにより駆動用トランジスタ11aのゲート電圧が完全に特性キャンセルされた電圧とずれたとしても、電流ばらつきが小さい構成を実現することができた。期間365はなく、期間366の電流源のみでのリセットをおこなってもよいが、電流源312によりVrst電圧付近までゲート電圧を変化させるのに時間がかかることから、予め電圧源331によりVrst付近まで電圧を変化させてから電流源312によるリセットを行うことが好ましい。リセット期間361が長く、電流源312のみでVrst+ΔV1まで電圧が変化できるのであれば、電圧源331、切り替え手段333、期間365はなくてもよい。」

「【0134】
図37の構成や、図35の構成において、リセット線311に切り替え手段333を介して電流源312、電圧源331が接続されているが、電圧源311がなくても、1水平走査期間以内に、電流源312によって、所定の初期化電位になるまで、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧を変化させることができれば、電流源のみでリセット期間361を構成することができる。このとき図39に示すような1フレーム期間の動作となる。電流源312のみでのリセット(初期化)動作のため変化に時間がかかるが、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧はVrst+ΔV1に収束する。電圧源331を併用した場合でも図36、図38に示すようにVrst+ΔV1と同一値であり、初期化の効果はかわらず同等であるため、電流源のみの構成でもよい。」

「【図35】駆動用トランジスタ11aの初期化電圧を特性ばらつきに応じて異ならせるための画素回路を示した図である。
【図36】図35の画素構成におけるゲート信号線17、切り替え手段333、ソース信号線18の入力パターンと、トランジスタ11aのゲート電圧、EL素子15の動作を示した図である。」

図35におけるトランジスタ11b、11c、11d、11e、11fがスイッチ用であることは明らかであるから、図35には、
「画素16が、駆動トランジスタ11aと、EL素子15と、スイッチ用トランジスタ11b、11c、11d、11e及び11fと、コンデンサ19aとを含み、
駆動トランジスタ11aのゲート電極が、コンデンサ19aを介して、第1の電源電圧Vddと接続され、また、スイッチ用トランジスタ11bを介して、駆動トランジスタ11aのドレイン電極と接続され、さらに、スイッチ用トランジスタ11fを介してリセット線311と接続され、
コンデンサ19aは、上記接続により、スイッチ用トランジスタ11fを介してリセット線311と接続され、
駆動トランジスタ11aのソース電極が、スイッチ用トランジスタ11cを介して、ソース信号線18と接続され、また、スイッチ用トランジスタ11eを介して、第1の電源電圧Vddと接続され、
駆動トランジスタ11aのドレイン電極が、さらに、スイッチ用トランジスタ電極11dを介してEL素子15と接続され、
リセット線311は、切り替え手段333を介して、電圧源331または電流源312と接続され、
スイッチ用トランジスタ11bのゲート電極は、ゲート信号線17cに接続され、
スイッチ用トランジスタ11cのゲート電極は、ゲート信号線17aに接続され、
スイッチ用トランジスタ11dのゲート電極は、ゲート信号線17bに接続され、
スイッチ用トランジスタ11eのゲート電極は、ゲート信号線17eに接続され、
スイッチ用トランジスタ11fのゲート電極は、ゲート信号線17dに接続された、
画素回路。」が記載されている。

図36には、
「リセット期間(361)において、ゲート信号線17dがVGL、ゲート信号線17bがVGH、ゲート信号線17aがVGH、ソース信号線18がVs、EL素子15が0であり、リセット期間(361)の前半の期間365において、ゲート信号線17cがVGHまたはVGL、ゲート信号線17eがVGHまたはVGL、切り替え手段333が電圧源、であり、リセット期間(361)の後半の期間366において、ゲート信号線17cがVGL、ゲート信号線17eがVGL、切り替え手段333が電流源、であり、
映像信号書き込みと特性キャンセル期間(362)において、ゲート信号線17dがVGH、ゲート信号線17bがVGH、ゲート信号線17aがVGL、ソース信号線18がVs、ゲート信号線17cがVGL、ゲート信号線17eがVGH、EL素子15が0であり、
非発光期間(363a)において、ゲート信号線17dがVGH、ゲート信号線17bがVGH、ゲート信号線17aがVGH、ゲート信号線17cがVGH、ゲート信号線17eがVGH、EL素子15が0であり、
発光期間(364)において、ゲート信号線17dがVGH、ゲート信号線17bがVGL、ゲート信号線17aがVGH、ゲート信号線17cがVGH、ゲート信号線17eがVGL、EL素子15がBである、
図35の画素構成の動作。」
が記載されている。

上記記載から、引用例には、次の技術的事項が記載されている。
ア 【請求項1】及び図35より、
「EL素子を有する複数の画素が、縦横にマトリックス状に配置された表示画面を有するEL表示装置において、
画素16が、駆動電流を前記EL素子に供給する駆動トランジスタ11aと、EL素子15と、スイッチ用トランジスタ11c及び11eと、コンデンサ19aとを有する。」
との技術事項を読み取ることができる。

イ 図35には、「駆動トランジスタ11aのゲート電極が、コンデンサ19aを介して、第1の電源電圧Vddと接続され」ることが記載されている。

ウ 段落【0124】及び図36より、
「1画素において、1フレームは、リセット期間361、映像信号書き込みと特性キャンセル期間362、非発光期間363、発光期間364からなる。」
との技術事項を読み取ることができる。

エ 段落【0124】、【0125】及び図35,図36より、
「駆動用トランジスタ11aのゲート電圧の初期化(リセット)を行う電源には、電圧源331、電流源312の2つがあり、電圧源331が印加されるリセット期間を期間365、電流源312が印加されるリセット期間を期間366とする。」との技術事項を読み取ることができる。

オ 段落【0125】に「リセット期間361のうちの期間365において」「ゲート信号線17e及び17cによりトランジスタ11e及び11bについては、オンでもオフでも構わない」と記載されているから、リセット期間361のうちの期間365において、ゲート信号線17eによりスイッチ用トランジスタ11eはオンでもオフでも構わず、駆動トランジスタ11aのソース電極に、第1の電源電圧Vddが印加されても印加されなくてもよいことがわかる。
よって、段落【0125】、【0126】及び図35,図36より、
「リセット期間361のうちの期間365において、電圧源331により駆動用トランジスタ11aのゲート電圧をVrstに初期化するが、ゲート信号線17eによりスイッチ用トランジスタ11eはオンでもオフでも構わず、駆動トランジスタ11aのソース電極に、第1の電源電圧Vddが印加されても印加されなくてもよい。」との技術事項を読み取ることができる。

カ 段落【0025】に記載されているとおり、スイッチ用トランジスタ11b、11c、11d、11e、11fは、ゲート信号線17に印加されるオフ電圧(VGH)の印加により、オフし、オン電圧(VGL)の印加により、オンするものである。
そして、図35、図36より、リセット期間361の後半の期間366において、ゲート信号線17cがVGLとなって、スイッチ用トランジスタ11bがオンとなり、駆動トランジスタ11aがダイオード接続されていることがわかる。また、ゲート信号線17eがVGLとなって、スイッチ用トランジスタ11eがオンとなり、駆動トランジスタ11aのソース電極に第1の電源電圧Vddが印加されていることがわかる。
よって、段落【0025】、【0125】、【0126】及び図35、図36より、
「リセット期間361のうちの期間366において、電流源312により駆動用トランジスタ11aの初期化を行い、電流源312の電流が駆動用トランジスタ11aのドレイン電流となるように、駆動トランジスタ11aがダイオード接続され、ゲート信号線17eがVGLとなって、スイッチ用トランジスタ11eがオンとなり、駆動トランジスタ11aのソース電極に第1の電源電圧Vddが印加され、電流源312の電流値は、期間366において、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧が電圧源331のVrst付近になるような電圧に設定することが好ましい。」
との技術事項を読み取ることができる。

キ 段落【0134】より、
「電圧源311がなくても、電流源312によって、所定の初期化電位になるまで、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧を変化させることができれば、電流源のみでリセット期間361を構成することができる。」
との技術事項を読み取ることができる。

ク 図35、図36より、映像信号書き込みと特性キャンセル期間362において、ゲート信号線17aがVGLとなって、スイッチ用トランジスタ11cがオンとなり、ソース信号線18が駆動用トランジスタ11aのソース電極に接続されていることがわかる。また、スイッチ用トランジスタ11bがオンであるから、このときの駆動用トランジスタ11aはダイオード接続されていることがわかる。そして段落【0126】には、「映像信号書き込みと特性キャンセル期間362においてソース信号線18から映像信号が入力され、トランジスタ11bがオン状態であり、トランジスタ11fがオフ状態であることで、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧は映像信号電圧をVsとするとVs-Vth(Vthは閾値電圧)となるまで変化」すると記載されているから、コンデンサ19aには、段落【0024】の記載と同様に、「第1の電源電圧Vddと駆動用トランジスタ11aのゲート電極に印加される電圧Vs-Vthの電圧差に該当する電荷」が蓄積され、維持されることがわかる。
よって、図35、図36、段落【0126】、【0024】より、
「映像信号書き込みと特性キャンセル期間362において、ゲート信号線17aがVGLとなって、スイッチ用トランジスタ11cがオンとなり、ソース信号線18が、ダイオード接続された駆動用トランジスタ11aのソース電極に接続され、ソース信号線18から映像信号が入力され、ダイオード接続された駆動用トランジスタ11aのゲート電圧は映像信号電圧をVsとするとVs-Vth(Vthは閾値電圧)となるまで変化し、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧は、コンデンサ19aで維持される。」
との技術事項を読み取ることができる。

ケ 段落【0025】に記載されているとおり、スイッチ用トランジスタ11b、11c、11d、11e、11fは、ゲート信号線17に印加されるオフ電圧(VGH)の印加により、オフし、オン電圧(VGL)の印加により、オンするものである。
そして、図35、図36より、発光期間(364)において、ゲート信号線17dがVGH、ゲート信号線17bがVGL、ゲート信号線17aがVGH、ゲート信号線17cがVGH、ゲート信号線17eがVGLであるから、図35の画素回路において、スイッチ用トランジスタ11d、11eがオン、他のスイッチ用トランジスタ11b、11c、11fがオフであり、駆動トランジスタ11aによって、電源VddからEL素子15に駆動電流が流れ、EL素子15が発光していることがわかる。また、段落【0019】に記載されているとおり、「駆動用トランジスタ11aは、ゲート電極に印加された電圧に相当する駆動電流を生成する」ものであるから、駆動トランジスタ11aは、映像信号書き込みと特性キャンセル期間(362)で書き込まれ、コンデンサ19aで維持されているゲート電圧Vs-Vth(Vthは閾値電圧)に相当する駆動電流を生成しているといえる。
よって、上記クを踏まえれば、段落【0019】、【0025】、図35、図36より、
「発光期間364において、駆動トランジスタ11aは、映像信号書き込みと特性キャンセル期間362で書き込まれコンデンサ19aで維持されているゲート電圧Vs-Vth(Vthは閾値電圧)に相当する駆動電流を生成し、EL素子15に流す。」
との技術事項を読み取ることができる。

コ 【解決手段】及び、段落【0131】より、
「駆動用トランジスタ11aの初期化電圧を、トランジスタのゲート電圧-ドレイン電流特性に合わせて、異なる電圧を印加することで、キャンセル時間が短くても駆動用トランジスタの特性バラツキをキャンセルしやすくした。」
との技術事項を読み取ることができる。

上記ア?コより、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「EL素子を有する複数の画素が、縦横にマトリックス状に配置された表示画面を有するEL表示装置において、
画素16が、駆動電流を前記EL素子に供給する駆動トランジスタ11aと、EL素子15と、スイッチ用トランジスタ11c及び11eと、コンデンサ19aとを有し、
駆動トランジスタ11aのゲート電極が、コンデンサ19aを介して、第1の電源電圧Vddと接続され、
1画素において、1フレームは、リセット期間361、映像信号書き込みと特性キャンセル期間362、非発光期間363、発光期間364からなり、
駆動用トランジスタ11aのゲート電圧の初期化(リセット)を行う電源には、電圧源331、電流源312の2つがあり、電圧源331が印加されるリセット期間を期間365、電流源312が印加されるリセット期間を期間366とすると、
リセット期間361のうちの期間365において、電圧源331により駆動用トランジスタ11aのゲート電圧をVrstに初期化するが、ゲート信号線17eによりスイッチ用トランジスタ11eはオンでもオフでも構わず、駆動トランジスタ11aのソース電極に、第1の電源電圧Vddが印加されても印加されなくてもよく、
リセット期間361のうちの期間366において、電流源312により駆動用トランジスタ11aの初期化を行い、電流源312の電流が駆動用トランジスタ11aのドレイン電流となるように、駆動トランジスタ11aがダイオード接続され、ゲート信号線17eがVGLとなって、スイッチ用トランジスタ11eがオンとなり、駆動トランジスタ11aのソース電極に第1の電源電圧Vddが印加され、電流源312の電流値は、期間366において、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧が電圧源331のVrst付近になるような電圧に設定することが好ましく、
電圧源311がなくても、電流源312によって、所定の初期化電位になるまで、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧を変化させることができれば、電流源のみでリセット期間361を構成することができ、
映像信号書き込みと特性キャンセル期間362において、ゲート信号線17aがVGLとなって、スイッチ用トランジスタ11cがオンとなり、ソース信号線18が、ダイオード接続された駆動用トランジスタ11aのソース電極に接続され、ソース信号線18から映像信号が入力され、ダイオード接続された駆動用トランジスタ11aのゲート電圧は映像信号電圧をVsとするとVs-Vth(Vthは閾値電圧)となるまで変化し、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧は、コンデンサ19aで維持され、
発光期間364において、駆動トランジスタ11aは、映像信号書き込みと特性キャンセル期間362で書き込まれコンデンサ19aで維持されているゲート電圧Vs-Vth(Vthは閾値電圧)に相当する駆動電流を生成し、EL素子15に流し、
駆動用トランジスタ11aの初期化電圧を、トランジスタのゲート電圧-ドレイン電流特性に合わせて、異なる電圧を印加することで、キャンセル時間が短くても駆動用トランジスタの特性バラツキをキャンセルしやすくした、
EL表示装置。」

5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「EL素子」は、引用例の段落【0003】に記載されているとおり、OLEDを含むから、本願発明における「有機発光ダイオード」に相当する。

イ 引用発明における「駆動トランジスタ11a」は、「発光期間364において」、「映像信号書き込みと特性キャンセル期間362で書き込まれコンデンサ19aで維持されているゲート電圧Vs-Vth(Vthは閾値電圧)に相当する駆動電流を生成し、EL素子15に流」すから、本願発明における「前記有機発光ダイオードに伝達されたデータ信号による駆動電流を伝達する駆動トランジスタ」に相当する。

ウ 一般に、アクティブマトリクス方式の有機ELパネル(引用例の段落【0003】参照)において、ゲート信号線はスキャン信号線である(引用例の段落【0065】参照。)から、引用発明の「EL素子を有する複数の画素が、縦横にマトリックス状に配置された表示画面を有するEL表示装置」における「ゲート信号線17a」は、スキャン信号線であって、本願発明の「第1走査信号」に相当する。

エ 引用発明では、「映像信号書き込みと特性キャンセル期間362」において、「ゲート信号線17aがVGLとなって、スイッチ用トランジスタ11cがオンとなり、ソース信号線18が、ダイオード接続された駆動用トランジスタ11aのソース電極に接続され、ソース信号線18から映像信号が入力され、ダイオード接続された駆動用トランジスタ11aのゲート電圧は映像信号電圧をVsとするとVs-Vth(Vthは閾値電圧)となるまで変化し、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧は、コンデンサ19aで維持され」ている。
よって、引用発明における「ソース信号線18」から「入力され」、オンとなった「スイッチ用トランジスタ11c」を介して「駆動用トランジスタ11a」に「映像信号」を伝えることが、本願発明における「データ信号を伝達する」ことに相当する。
同様に、引用発明の「スイッチ用トランジスタ11c」は、「ゲート信号線17a」に応じてオンとなり、「ソース信号線18から」「入力され」た「映像信号」を、「駆動用トランジスタ11a」に伝えているから、上記ウを踏まえると、本願発明における「第1走査信号に対応して前記駆動トランジスタに前記データ信号を伝達する第1トランジスタ」に相当するといえる。

オ 引用発明における「リセット期間361」では、「リセット期間361のうちの期間365において、電圧源331により駆動用トランジスタ11aのゲート電圧をVrstに初期化」している。また、「リセット期間361のうちの期間366において、電流源312により駆動用トランジスタ11aの初期化を行」い、「駆動用トランジスタ11aの初期化電圧を、トランジスタのゲート電圧-ドレイン電流特性に合わせて、異なる電圧を印加」している。
よって、引用発明における「リセット期間361」が、本願発明における「前記駆動トランジスタのゲート電極に初期化電圧を印加する初期化期間」に相当するといえる。

カ 上記ウで述べたおり、一般に、ゲート信号線はスキャン信号線であるから、引用発明における「ゲート信号線17e」が、本願発明における「第2走査信号」に相当する。

キ 引用発明における「スイッチ用トランジスタ11e」は、「リセット期間361のうちの期間365において」、「ゲート信号線17eによりスイッチ用トランジスタ11eはオンでもオフでも構わず、駆動トランジスタ11aのソース電極に、第1の電源電圧Vddが印加されても印加されなくてもよく」、「リセット期間361のうちの期間366において」、「ゲート信号線17eがVGLとなって、スイッチ用トランジスタ11eがオンとなり、駆動トランジスタ11aのソース電極に第1の電源電圧Vddが印加され」ている。また、「リセット期間361のうちの期間366において、電流源312により駆動用トランジスタ11aの初期化を行い、電流源312の電流が駆動用トランジスタ11aのドレイン電流となるように、駆動トランジスタ11aがダイオード接続され、ゲート信号線17eがVGLとなって、スイッチ用トランジスタ11eがオンとなり、駆動トランジスタ11aのソース電極に第1の電源電圧Vddが印加され、電流源312の電流値は、期間366において、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧が電圧源331のVrst付近になるような電圧に設定」している。よって、
(ア)引用発明の「リセット期間361のうちの期間365において」、「ゲート信号線17eによりスイッチ用トランジスタ11e」が「オン」され、「駆動トランジスタ11aのソース電極に、第1の電源電圧Vddが印加」されている場合、「リセット期間361のうちの期間366」において、「ゲート信号線17eがVGLとなって、スイッチ用トランジスタ11eがオンとなり、駆動トランジスタ11aのソース電極に第1の電源電圧Vddが印加され」ることと合わせて、「リセット期間361」中に「ゲート信号線17e」により「スイッチ用トランジスタ11e」が「オン」となり、「駆動トランジスタ11aのソース電極」に、「第1の電源電圧Vddが印加され」ることになる。
よって、引用発明における「スイッチ用トランジスタ11e」は、本願発明における「前記駆動トランジスタのゲート電極に初期化電圧を印加する初期化期間の間に、第2走査信号に対応して前記駆動トランジスタのソース電極に第1電源電圧を印加する第2トランジスタ」に相当するものといえる。
(イ)引用発明の「リセット期間361のうちの期間365において」、「ゲート信号線17eによりスイッチ用トランジスタ11e」が「オン」されず、「駆動トランジスタ11aのソース電極に、第1の電源電圧Vddが印加」されていない場合でも、引用発明の「リセット期間361」に代えて「リセット期間361のうちの期間366」が、本願発明における「初期化期間」に相当するものと考える(この場合、以下の「リセット期間361」を「リセット期間361のうち期間366」と読み替える。)か、あるいは、「電流源312によって、所定の初期化電位になるまで、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧を変化させ」、「電流源のみでリセット期間361を構成」して、「駆動用トランジスタ11aの初期化電圧を、トランジスタのゲート電圧-ドレイン電流特性に合わせて、異なる電圧を印加する」構成を選択すれば、引用発明における「スイッチ用トランジスタ11e」は、「リセット期間361」の間に、「ゲート信号線17eがVGLとなって、スイッチ用トランジスタ11eがオンとなり、駆動トランジスタ11aのソース電極に第1の電源電圧Vddが印加され」ることになるから、本願発明における「前記駆動トランジスタのゲート電極に初期化電圧を印加する初期化期間の間に、第2走査信号に対応して前記駆動トランジスタのソース電極に第1電源電圧を印加する第2トランジスタ」に相当するものといえる。
(ウ)よって、(ア)および(イ)のいずれでの場合であっても、引用発明における「スイッチ用トランジスタ11e」は、本願発明における「前記駆動トランジスタのゲート電極に初期化電圧を印加する初期化期間の間に、第2走査信号に対応して前記駆動トランジスタのソース電極に第1電源電圧を印加する第2トランジスタ」に相当するものといえる。

ク 引用発明では、「駆動トランジスタ11aのゲート電極が、コンデンサ19aを介して、第1の電源電圧Vddと接続され」ている。そして、コンデンサが第1電極と第2電極とで構成されることはいうまでもないことであるから、上記接続は、「駆動トランジスタ11aのゲート電極」が「コンデンサ19a」の第1電極に接続され、「第1の電源電圧Vdd」が「コンデンサ19a」の第2電極に接続されていることを意味している。よって、引用発明における「コンデンサ19a」が、本願発明における「前記駆動トランジスタのゲート電極に接続する第1電極及び前記第1電源電圧に接続する第2電極を含むキャパシタ」に相当する。

ケ 引用発明において、
(ア)上記「キ」「(ア)」の場合に、「リセット期間361のうちの期間365において、電圧源331により駆動用トランジスタ11aのゲート電圧をVrstに初期化」し、「リセット期間361のうちの期間366において、電流源312により駆動用トランジスタ11aの初期化を行い」、「電流源312の電流値は、期間366において、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧が電圧源331のVrst付近になるような電圧に設定する」こと、
あるいは、
(イ)上記「キ」「(イ)」の場合に、「電流源312によって、所定の初期化電位になるまで、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧を変化させること」と、
本願発明における「前記初期化期間中、前記駆動トランジスタのゲート-ソース電圧差を、前記駆動トランジスタが動作する基準電圧以上の電圧値とする」こととは、「前記初期化期間中、前記駆動トランジスタのゲート電圧を、初期化が可能な電圧値とする」点で共通する。

コ 引用発明における「画素」は、「駆動電流を前記EL素子に供給する駆動トランジスタ11aと、EL素子15と、スイッチ用トランジスタ11c及び11eと、コンデンサ19aとを有し」ているから、本願発明における「有機発光ダイオード;」「駆動トランジスタ;」「第1トランジスタ;」「第2トランジスタ;」及び「キャパシタを含」む「画素」に相当する。

すると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。
(一致点)
「有機発光ダイオード;
前記有機発光ダイオードに伝達されたデータ信号による駆動電流を伝達する駆動トランジスタ;
第1走査信号に対応して前記駆動トランジスタに前記データ信号を伝達する第1トランジスタ;
前記駆動トランジスタのゲート電極に初期化電圧を印加する初期化期間の間に、第2走査信号に対応して前記駆動トランジスタのソース電極に第1電源電圧を印加する第2トランジスタ;及び
前記駆動トランジスタのゲート電極に接続する第1電極及び前記第1電源電圧に接続する第2電極を含むキャパシタを含み、
前記初期化期間中、前記駆動トランジスタのゲート-ソース電圧差を、初期化が可能な電圧値とする画素。」

また、両者は、次の点で一応、相違する。
(一応の相違点)
本願発明では、前記初期化期間中の前記駆動トランジスタのゲート-ソース電圧差を、「前記駆動トランジスタが動作する基準電圧以上の電圧値とする」のに対し、引用発明では、「駆動用トランジスタ11aのゲート電圧の初期化(リセット)」におけるゲート-ソース電圧差を、「駆動トランジスタが動作する基準電圧以上の電圧値とする」とは明記されていない点。

6 判断
以下、一応の相違点について検討する。
ア まず、引用例の段落【0125】には「図36に示すようにリセット期間361のうちの期間365において、従来と同様に電圧源331により駆動用トランジスタ11aのゲート電圧をVrstに初期化する。このときゲート信号線17e及び17cによりトランジスタ11e及び11bについては、オンでもオフでも構わないが、Vdd電源からVrst電源に駆動用トランジスタ11aの特性により貫通電流が流れることを防止する観点から少なくとも一方のトランジスタについてはオフにすることが好ましい。」と記載されている。リセット期間361のうちの期間365において、トランジスタ11eが「オン」となった場合には、駆動用トランジスタ11aのゲート-ソース電位差は、Vdd電源(第1の電源電圧Vdd)とVrst電源(電圧源331)との差電圧である、Vrst-Vddとなるが、このときトランジスタ11bが「オン」となった場合には、上記段落【0125】の記載によれば、トランジスタ11bがオンとなってダイオード接続とされた駆動用トランジスタ11aに「貫通電流」が流れるというのであるから、駆動用トランジスタ11aのゲート-ソース電位差(Vrst-Vdd)は、駆動用トランジスタ11aがダイオード接続とされた場合に「貫通電流」が流れる電圧、すなわち、駆動用トランジスタ11aが動作する基準電圧以上の電圧に設定されている。

イ また、「リセット期間361のうちの期間366」では、「ゲート信号線17eがVGLとなって、スイッチ用トランジスタ11eがオンとなり、駆動トランジスタ11aのソース電極に第1の電源電圧Vddが印加され」、「ダイオード接続され」た「駆動トランジスタ11a」に「電流源312の電流」が「ドレイン電流」として流れているのであるから、駆動トランジスタ11aのゲート-ソース電位差(Vrst付近になるような電圧-Vdd)は、「駆動用トランジスタ11aの初期化電圧を、トランジスタのゲート電圧-ドレイン電流特性に合わせて、異なる電圧を印加」しているとしても、「駆動トランジスタ11a」に「ドレイン電流」が流れる電圧、すなわち、駆動用トランジスタ11aが動作する基準電圧以上に設定されていることは明らかである。

ウ さらに、「電流源312によって、所定の初期化電位になるまで、駆動用トランジスタ11aのゲート電圧を変化させ」、「電流源のみでリセット期間361を構成する」場合にも、同様に、「駆動トランジスタ11a」に「電流源312の電流」が「ドレイン電流」として流れているのであるから、駆動トランジスタ11aのゲート-ソース電位差は、「駆動用トランジスタ11aの初期化電圧を、トランジスタのゲート電圧-ドレイン電流特性に合わせて、異なる電圧を印加」しているとしても、駆動トランジスタ11aに「ドレイン電流」が流れる電圧、すなわち、駆動用トランジスタ11aが動作する基準電圧以上に設定されていることは明らかである。

エ よって、上記「5 対比」「キ」の(ア)および(イ)のいずれの場合にあっても、「リセット期間361」中において、駆動トランジスタ11aのゲート-ソース電位差は、駆動トランジスタ11aに「ドレイン電流」が流れる(「5 対比」「キ」の(ア)の場合にあっては、駆動トランジスタ11aがダイオード接続された場合に貫通電流が流れることとなる)電圧値、すなわち、駆動用トランジスタ11aが動作する基準電圧以上の電圧値に設定されていることは明らかである。

オ よって、上記一応の相違点に係る本願発明の構成は、引用発明が備えている構成であるから、本願発明と引用発明との間に相違点はない。

カ したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。

7 請求人の主張につて
請求人は、審判請求書 「【本願発明が特許されるべき理由】」「5.理由2、理由3について」 において、「本願発明によれば、明細書の段落[0065]にも記載されていますように、初期化期間の間の駆動トランジスタのゲート-ソース電圧差(Vgs)が基準電圧以上であるので、駆動トランジスタ(Md)はオンバイアスされ、全ての画素の駆動トランジスタ(Md)が、このような動作によってオンバイアスされた状態で、データ電圧が駆動トランジスタに書き込まれるので、ヒステリシス特性を改善することができるという格別な効果を奏します。
これに対して、引用文献1には、オフセットキャンセル動作を行う前の、駆動用トランジスタの初期化電圧を、トランジスタのゲート電圧-ドレイン電流特性に合わせて、異なる電圧を印加することが記載されています。・・・(途中省略)・・・しかしながら、引用文献1、2には、初期化期間中、駆動トランジスタのゲート-ソース電圧差を、駆動トランジスタが動作する基準電圧以上の電圧値とする構成についても一切記載も示唆もしていません。」と主張している。
しかし、引用文献1が、オフセットキャンセル動作を行う前の、駆動用トランジスタの初期化電圧として、トランジスタのゲート電圧-ドレイン電流特性に合わせて、異なる電圧を印加しているとしても、その印加電圧が、駆動トランジスタ11aに「ドレイン電流」が流れる電圧、すなわち、駆動用トランジスタ11aが動作する基準電圧以上であることは、上記「6 判断」「イ」で述べたとおりである。
よって、引用発明においても、駆動トランジスタ11aは、リセット期間中(初期化期間中)、オンバイアスされているから、本願発明と同じ作用効果を奏するものと認められる。
従って、請求人の主張は採用できない。

8 小括
以上のとおり、本願のその余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

なお、平成27年12月9日付けの補正は、請求項の削除及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるとして判断したが、請求人が審判請求書の 「【本願発明が特許されるべき理由】」「4.理由1について」において、「「初期化電圧」につきましては、同日付けで提出しました手続補正書により、「初期化期間中、駆動トランジスタのゲート-ソース電圧差を、駆動トランジスタが動作する基準電圧以上の電圧値とする」ことを限定しましたので、初期化電圧及び初期化期間が具体化され、明確になったものと思料いたします。」(下線は、当審で付与した。) と述べていることに鑑み、仮に、平成27年12月9日付けの補正が、本件補正前の請求項13について限定的減縮を目的としているものであるとして、以下判断する。
本件補正後の請求項11に係る発明は、上述したとおり、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、独立して特許を受けることができないものである。
そのため、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
すると、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし29に係る発明は、平成27年3月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし29に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項12を引用する請求項13に係る発明(以下、「請求項13に係る発明」という。)は、上記「2」「(1)」「ア」(独立形式で記載すれば、上記「2」「(2)」「ア」)に記載したとおりのものである。
そして、本願の(本件補正前の)請求項13に係る発明の構成要件を全て含み、さらに他の要件を付加したものに相当する本件補正後の請求項11に係る発明が、上記「5 対比」、「6 判断」で述べたおり、引用例に記載された発明であることから、本願の(本件補正前の)請求項13に係る発明も、同様な理由により、引用例に記載された発明である。
よって、本願の(本件補正前の)請求項13に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、本願の(本件補正前の)その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

9 まとめ
以上のとおり、 本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-07-13 
結審通知日 2016-07-19 
審決日 2016-08-02 
出願番号 特願2011-35463(P2011-35463)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G09G)
P 1 8・ 571- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 悟  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 須原 宏光
高橋 克
発明の名称 画素、これを利用した表示装置、及びその駆動方法  
代理人 阿部 達彦  
代理人 佐伯 義文  
代理人 崔 允辰  

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