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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G01R
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1322975
審判番号 不服2016-4177  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-17 
確定日 2017-01-10 
事件の表示 特願2011- 80198「抵抗プロービング・チップ装置及びロジック・アナライザ・プロービング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月27日出願公開、特開2011-215147、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月31日(パリ条約による優先権主張 2010年3月31日(以下、「優先日」という。)、米国)の出願であって、平成26年12月12日付けの拒絶理由通知に対して、平成27年6月16日付けで手続補正がなされたが、平成27年11月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年3月17日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年3月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1 補正の内容
(1)請求項1について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に、
「【請求項1】
対向する面を有し、対向する上記面の各々にて露出される対向する電気コンタクトを有する複数の抵抗器を保持する少なくとも1つの第1キャリアと、
対向する面を有する第1電気コンタクト・アセンブリであって、該第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の各々にて電気コンタクトが露出され、上記第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の一方にて露出された上記電気コンタクトの各々が上記第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の他方にて露出された対応する上記電気コンタクトに電気的に結合される少なくとも1つの上記第1電気コンタクト・アセンブリと、
上記第1キャリア又は上記第1電気コンタクト・アセンブリの少なくとも一方を回路基板又はプローブ・ヘッドの少なくとも一方に選択的に固定する手段とを具え、
上記第1キャリア及び上記第1電気コンタクト・アセンブリは、互いに選択的に係合し、上記第1キャリアの一方の上記面にて露出された上記電気コンタクトと上記第1電気コンタクト・アセンブリの一方の上記面にて露出された上記電気コンタクトとが互いに接触する抵抗プロービング・チップ装置。」
とあったところを、

「【請求項1】
対向する面を有し、対向する上記面の各々にて露出される対向する電気コンタクトを有する複数のディスクリート抵抗器を保持すると共に、該ディスクリート抵抗器の各々にコンプライアンスを与える少なくとも1つの第1キャリアと、
対向する面を有する第1電気コンタクト・アセンブリであって、該第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の各々にて電気コンタクトが露出され、上記第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の一方にて露出された上記電気コンタクトの各々が上記第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の他方にて露出された対応する上記電気コンタクトに電気的に結合される少なくとも1つの上記第1電気コンタクト・アセンブリと、
上記第1キャリア又は上記第1電気コンタクト・アセンブリの少なくとも一方を回路基板又はプローブ・ヘッドの少なくとも一方に選択的に固定する手段とを具え、
上記第1キャリア及び上記第1電気コンタクト・アセンブリは、互いに選択的に係合し、上記第1キャリアの一方の上記面にて露出された上記電気コンタクトと上記第1電気コンタクト・アセンブリの一方の上記面にて露出された上記電気コンタクトとが互いに接触する抵抗プロービング・チップ装置。」
とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含むものである(下線は、補正箇所を示す。)。

(2)請求項2について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項2について、本件補正前に、
「【請求項2】
対向する面を有し、対向する上記面の各々にて露出される対向する電気コンタクトを有する複数の抵抗器を保持する少なくとも1つの第1キャリアと、
対向する面を有する第1電気コンタクト・アセンブリであって、該第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の各々にて電気コンタクトが露出され、上記第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の一方にて露出された上記電気コンタクトの各々が上記第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の他方にて露出された対応する上記電気コンタクトに電気的に結合された少なくとも1つの上記第1電気コンタクト・アセンブリと、
対向する面を有する第2電気コンタクト・アセンブリであって、該第2電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の各々にて電気コンタクトが露出され、上記第2電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の一方にて露出された上記電気コンタクトの各々が上記第2電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の他方にて露出された対応する上記電気コンタクトに電気的に結合された少なくとも1つの上記第2電気コンタクト・アセンブリと、
上記第1キャリア、上記第1電気コンタクト・アセンブリ又は上記第2電気コンタクト・アセンブリの少なくとも1つを回路基板又はプローブ・ヘッドの少なくとも1つに選択的に固定する手段とを具え、
上記第1キャリア、上記第1電気コンタクト・アセンブリ及び上記第2電気コンタクト・アセンブリが互い選択的に係合し、上記第1キャリア、第1電気コンタクト・アセンブリ及び上記第2電気コンタクト・アセンブリの各々の対向する上記面にて露出された上記電気コンタクトが、上記第1キャリア、第1電気コンタクト・アセンブリ及び上記第2電気コンタクト・アセンブリの互いに係合する上記面にて露出された対応する上記電気コンタクトと選択的に接触する抵抗プロービング・チップ装置。」
とあったところを、

「【請求項2】
対向する面を有し、対向する上記面の各々にて露出される対向する電気コンタクトを有する複数のディスクリート抵抗器を保持すると共に、該ディスクリート抵抗器の各々にコンプライアンスを与える少なくとも1つの第1キャリアと、
対向する面を有する第1電気コンタクト・アセンブリであって、該第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の各々にて電気コンタクトが露出され、上記第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の一方にて露出された上記電気コンタクトの各々が上記第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の他方にて露出された対応する上記電気コンタクトに電気的に結合された少なくとも1つの上記第1電気コンタクト・アセンブリと、
対向する面を有する第2電気コンタクト・アセンブリであって、該第2電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の各々にて電気コンタクトが露出され、上記第2電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の一方にて露出された上記電気コンタクトの各々が上記第2電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の他方にて露出された対応する上記電気コンタクトに電気的に結合された少なくとも1つの上記第2電気コンタクト・アセンブリと、
上記第1キャリア、上記第1電気コンタクト・アセンブリ又は上記第2電気コンタクト・アセンブリの少なくとも1つを回路基板又はプローブ・ヘッドの少なくとも1つに選択的に固定する手段とを具え、
上記第1キャリア、上記第1電気コンタクト・アセンブリ及び上記第2電気コンタクト・アセンブリが互い選択的に係合し、上記第1キャリア、第1電気コンタクト・アセンブリ及び上記第2電気コンタクト・アセンブリの各々の対向する上記面にて露出された上記電気コンタクトが、上記第1キャリア、第1電気コンタクト・アセンブリ及び上記第2電気コンタクト・アセンブリの互いに係合する上記面にて露出された対応する上記電気コンタクトと選択的に接触する抵抗プロービング・チップ装置。」
とする補正(以下、「補正事項2」という。)を含むものである。

(3)請求項3について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項3について、本件補正前に、
「【請求項3】
第1回路基板を少なくとも含み、該第1回路基板上に電気コンタクトを有するプローブ・ヘッドと、
対向する面を有する第1電気コンタクト・アセンブリであって、該第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の各々にて電気コンタクトが露出され、上記第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の一方にて露出された上記電気コンタクトの各々が上記第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の他方にて露出された対応する上記電気コンタクトに電気的に結合された少なくとも1つの上記第1電気コンタクト・アセンブリと、
対向する面を有する第1キャリアであって、該第1キャリアの対向する上記面の各々にて露出された対向する電気コンタクトを有する複数の抵抗器を保持する少なくとも1つの上記第1キャリアと、
上記プローブ・ヘッドに固定されるハウジングであって、上記第1キャリア及び第1電気コンタクト・アセンブリの少なくとも1つを受け、上記電気コンタクト・アセンブリ及び上記第1キャリアの少なくとも1つを上記ハウジング及び上記プローブ・ヘッドの上記第1回路基板の間に捕捉する上記ハウジングとを具え、
上記プローブ・ヘッドの上記第1回路基板、上記第1電気コンタクト・アセンブリ及び上記第1キャリアは、互いに選択的に係合され、上記プローブ・ヘッドの上記第1回路基板、上記第1電気コンタクト・アセンブリ及び上記第1キャリアの上記面にて露出された上記電気コンタクトが、上記プローブ・ヘッドの上記第1回路基板、上記第1電気コンタクト・アセンブリ及び上記第1キャリアの係合される上記面にて露出された対応する上記電気コンタクトに接触するロジック・アナライザ・プロービング装置。」
とあったところを、

「【請求項3】
第1回路基板を少なくとも含み、該第1回路基板上に電気コンタクトを有するプローブ・ヘッドと、
対向する面を有する第1電気コンタクト・アセンブリであって、該第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の各々にて電気コンタクトが露出され、上記第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の一方にて露出された上記電気コンタクトの各々が上記第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の他方にて露出された対応する上記電気コンタクトに電気的に結合された少なくとも1つの上記第1電気コンタクト・アセンブリと、
対向する面を有する第1キャリアであって、該第1キャリアの対向する上記面の各々にて露出された対向する電気コンタクトを有する複数のディスクリート抵抗器を保持すると共に、該ディスクリート抵抗器の各々にコンプライアンスを与える少なくとも1つの上記第1キャリアと、
上記プローブ・ヘッドに固定されるハウジングであって、上記第1キャリア及び上記第1電気コンタクト・アセンブリの少なくとも1つを受け、上記第1電気コンタクト・アセンブリ及び上記第1キャリアの少なくとも1つを上記ハウジング及び上記プローブ・ヘッドの上記第1回路基板の間に捕捉する上記ハウジングとを具え、
上記プローブ・ヘッドの上記第1回路基板、上記第1電気コンタクト・アセンブリ及び上記第1キャリアは、互いに選択的に係合され、上記プローブ・ヘッドの上記第1回路基板、上記第1電気コンタクト・アセンブリ及び上記第1キャリアの上記面にて露出された上記電気コンタクトが、上記プローブ・ヘッドの上記第1回路基板、上記第1電気コンタクト・アセンブリ及び上記第1キャリアの係合される上記面にて露出された対応する上記電気コンタクトに接触するロジック・アナライザ・プロービング装置。」
とする補正(以下、「補正事項3」という。)を含むものである。

2 補正の適否
(1)補正事項1について
本件補正の補正事項1は、
本件補正前の請求項1の「第1キャリア」について、「該ディスクリート抵抗器の各々にコンプライアンスを与える少なくとも1つの第1キャリア」と限定し、「第1キャリア」が保持する「抵抗器」について、「ディスクリート抵抗器」と限定するものである。
したがって、本件補正の補正事項1は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1に係る発明(以下「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)について以下に検討する。

ア 引用文献の記載事項
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2003-227850号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

(a)「【0037】ミクタ又は類似形式のコネクタを用いる既存の多チャネル信号プローブと、本発明の低入力容量の多チャネル信号プローブ・ヘッド装置26と共に用いる被試験装置12上の信号接触子パッド40の新たな構造との間で、逆方向の両立性を維持することも必要である。また、被試験装置に取り付けられたミクタ又は類似形式のコネクタと、本発明による低入力容量の多チャネル信号プローブ・ヘッド装置26との間でも両立性が必要である。この点に関し、図6は、既存の多チャネル信号プローブと、被試験装置12上の接触子パッド40の新たな構造と一緒に利用可能な第1アダプタ200の分解斜視図である。また、図7は、第1アダプタと共に用いる多チャネルの制御されたインピーダンスのコネクタのレセプタクル部分の上から見た斜視図である。既存の多チャネル信号プローブは、高速でインピーダンスが制御されたコネクタ(例えば、ミクタ・コネクタなど)で終端されたプローブ・ヘッドを有する。コネクタは、レセプタクル部分202(図6及び図7)とぴったりと合うプラグ部分を有し、各部分は、伝送線206を包囲するハウジング204を有する。上述の如く、プラグ部分のハウジングの一端から延びる伝送線の端部は、プローブ・ヘッドの電気回路に結合された接触子パッドに接続された縁の平行な行として形成される。ハウジングの端から延びる伝送線の端部は、中央電力接地用波形平面構造接触子により分離された電気接触子の平行な行として形成される。レセプタクル部分202のハウジングの一端から延びる伝送線206の端部は、中央電力接地用接触子210のいずれかの側の接触子パッド208の平行な行として形成される。ハウジング204の他端から延びる伝送線206の端部は、中央電力接地用接触子214により分離された電気接触子212の平行な行として形成される。プラグがレセプタクルに挿入されると、電気接触子及び中央電力接地用接触子が互いにかみ合う。レセプタクル202を被試験装置12の回路基板32、36に取り付ける前に、レセプタクル・ハウジング204をラッチ・ハウジング216に挿入してもよい。多チャネル信号プローブをコネクタのプラグ部分で終端することは一般的であるが、本発明のアダプタは、信号プローブを終端するコネクタのレセプタクル部分により、等しく実現できる。
【0038】アダプタ200は、サブストレート220に取り付けられたコネクタの適合レセプタクル部分202の他の部分を有する。サブストレート220は、上面222を有する。この上面の上に、レセプタクル202の伝送線206の接触子パッド208に対応する接触子パッド224の配列が形成される。スルー・ホール218がサブストレート220に設けられて、電力接地用接触子210を受ける。半田付けや、導電性接着剤などによる接着などの既知の接続技術を用いて、サブストレート220の接触子パッド224にレセプタクル202の接触子パッド208を付着させて、レセプタクルの接触子パッドをサブストレートの接触子パッドに電気的に結合する。サブストレート220の底面226は、被試験装置12の回路基板32、36上の信号接触子パッド40に対応する接触子パッド228の第2配列を有する。導電ラン(図示せず)は、サブストレート220を介して延び、上面222の接触子パッド224の配列を底面226の接触子パッド228の配列に結合する。
【0039】アダプタの構造は、好適には、取り付けラグ230がサブストレート220の底面226から延びている。これらラグ230は、形状が円形であり、そこに形成されたネジ開口232を有する。ラグ230は、サブストレート220の上に位置決めされ、信号接触子パッド40近傍の回路基板32、36内のスルー・ホール44と整列する。
【0040】取り外し可能な信号接触子ホルダ234は、サブストレート220の底面226に隣接して位置決めされ、導電性エラストマ信号接触子236を支持する。接触子ホルダ234は、そこに形成されたスロット238を有し、サブストレート220の底面上の接触子パッド228の第2配列と整列する。開口240が接触子ホルダ234に形成され、サブストレート220の底部に設けられたラグ230と整列する。これらスロット238は、導電性エラストマ信号接触子236を受けて支持し、これら導電性エラストマ信号接触子236は、サブストレート220の底面の接触子パッド228とかみ合う。導電性エラストマ信号接触子236は、低入力容量の多チャネル信号プローブ・ヘッド30の導電性エラストマ信号接触子62を形成するのと同様に、同じ導電性エラストマ・シート材料から形成される。エラストマ材料の高さは、ホルダ234の厚さよりもわずかに大きいので、被試験装置12の回路基板32、36のアダプタ200の下向きの力が、回路基板32、36の信号接触子パッド40と、サブストレート220の接触子パッド228との間の導電性エラストマ信号接触子236を圧縮する。取り外し可能な信号接触子ホルダ234は、ラグ230の上にホルダを挿入することにより、アダプタ200上に位置決めされる。
【0041】アダプタ保持部材242は、被試験装置12の信号接触子パッド40に対して回路基板32、36の反対側に位置決めされ、アダプタ200を被試験装置12に固定するのを助ける。保持部材242は、好ましくは、矩形形状であり、略平坦な上面244を有し、この上面244は、回路基板32、36の底面とかみ合う。開口246を保持部材242に形成するが、この開口246は、信号接触子パッド40近傍の回路基板32、36に形成されたスルー・ホール44と整列する。保持部材の上面から延びる開口の一部は、ボアであり、その直径は、アダプタ・サブストレートのラグをぴったり受ける直径よりもわずかに大きい。保持部材242の底面248から延びる開口246の一部は、ボアであり、その直径は、ラグ230のネジ開口232に延びる取り付け部材250を受けるよりもわずかに大きい。取り付け部材250は、好適には、ネジであり、これらネジが絞められると、取り外し可能な信号接触子ホルダ234及びアダプタ保持部材242の間に被試験装置12の回路基板32、36を捕捉する。ネジ250の内の短い方を0.090インチ(2.286mm)以下の厚さの回路基板に用い、長い方のネジを0.090インチ(2.286mm)より薄い回路基板に用いる。」

(b)図6から 、信号接触子ホルダ234が対向する面を有することが見て取れる。

a 段落【0040】及び図6の記載から、引用文献1には、「信号接触子ホルダ234は対向する面を有し、導電性エラストマ信号接触子236を支持し、エラストマ材料の高さは、ホルダ234の厚さよりもわずかに大きいので、アダプタ200の下向きの力が、回路基板32、36の信号接触子パッド40と、サブストレート220の接触子パッド228との間の導電性エラストマ信号接触子236を圧縮する」ことが記載されている。

b 段落【0038】の記載から、引用文献1には、「サブストレート220は、上面の上に、接触子パッド224の配列が形成され、サブストレート220の底面226は、接触子パッド228を有し、導電ランは、サブストレート220を介して延び、上面222の接触子パッド224の配列を底面226の接触子パッド228の配列に結合する」ことが記載されている。

c 段落【0039】の記載から、引用文献1には、「取り付けラグ230がサブストレート220の底面226から延びて、ネジ開口232を有する」ことが記載されている。

d 段落【0040】の記載から、引用文献1には、「開口240が接触子ホルダ234に形成され、サブストレート220の底部に設けられたラグ230と整列する」ことが記載されている。

e 段落【0041】の記載から、引用文献1には、「開口246を保持部材242に形成し、保持部材の上面から延びる開口の直径は、アダプタ・サブストレートのラグをぴったり受ける直径よりもわずかに大きく、 ラグ230のネジ開口232に取り付け部材250が延び、取り付け部材250は、ネジであり、これらネジが絞められると、取り外し可能な信号接触子ホルダ234及びアダプタ保持部材242の間に被試験装置12の回路基板32、36を捕捉する」ことが記載されている。

f 段落【0040】の記載から、引用文献1には、「導電性エラストマ信号接触子236は、サブストレート220の底面の接触子パッド228とかみ合う」ことが記載されている。

g 段落【0037】の記載から、引用文献1には、「多チャネル信号プローブ・ヘッド装置26」が記載されている。

上記a?gより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「信号接触子ホルダ234は対向する面を有し、導電性エラストマ信号接触子236を支持し、エラストマ材料の高さは、ホルダ234の厚さよりもわずかに大きいので、アダプタ200の下向きの力が、回路基板32、36の信号接触子パッド40と、サブストレート220の接触子パッド228との間の導電性エラストマ信号接触子236を圧縮し、
サブストレート220は、上面の上に、接触子パッド224の配列が形成され、サブストレート220の底面226は、接触子パッド228を有し、導電ランは、サブストレート220を介して延び、上面222の接触子パッド224の配列を底面226の接触子パッド228の配列に結合し、
取り付けラグ230がサブストレート220の底面226から延びて、ネジ開口232を有し、
開口240が接触子ホルダ234に形成され、サブストレート220の底部に設けられたラグ230と整列し、
開口246を保持部材242に形成し、保持部材の上面から延びる開口の直径は、アダプタ・サブストレートのラグをぴったり受ける直径よりもわずかに大きく、
ラグ230のネジ開口232に取り付け部材250が延び、取り付け部材250は、ネジであり、これらネジが絞められると、取り外し可能な信号接触子ホルダ234及びアダプタ保持部材242の間に被試験装置12の回路基板32、36を捕捉し、
導電性エラストマ信号接触子236は、サブストレート220の底面の接触子パッド228とかみ合う多チャネル信号プローブ・ヘッド装置26。」

(イ)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2007-10408号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

(a)「【0036】
接続部120は、半導体チップ30と測定部110との間に介在し、半導体チップ30と測定部110との間で信号を入出力する部品である。接続部120は、ICソケットや評価ボード、プローブカード、その他のいずれかの形態をした部品である。接続部120は、測定部110から取り外し可能な形状に形成されている。なお、ここでは、接続部120がICソケットの形態をしているものとして説明する。」

(b)「【0042】
全てのピン122aとピン122bは、それぞれ、1対1で対応し、かつ、接続部120の内部に設けられた信号線124によって接続されている。
【0043】
各信号線124は、ピン122a,122bとともに、半導体チップ30の信号特性を測定する際に、半導体チップ30と測定部110との間で入出力される信号の経路となる。各信号の経路(すなわち、ピン122a,122bと信号線124)は、導電性素材であって、かつ、抵抗材料として知られている素材によって構成される。具体的には、ピン122a,122bが、表面に金がメッキされたスチール系合金によって構成され、信号線124が、表面にニッケルがメッキされたスチール系合金によって構成される。なお、ピン122a,122bは、スチール系合金の代わりに、Cu-Mn系合金、Cu-Ni系合金、Ni-Cr系合金、Fe-Cr-Al系合金、Fe、Ni、Cu、Mo、W、または、Ptであってもよい。また、信号線124は、スチール系合金の代わりに、Cu-Mn系合金、Cu-Ni系合金、Ni-Cr系合金、Fe-Cr-Al系合金、Fe、Ni、Cu、Mo、W、または、Ptであってもよい。ただし、各信号の経路(主に信号線124)は、抵抗値が1Ω以上となっている。各信号の経路は、抵抗値が1Ω以上となるように、細線化されている。なお、各信号の経路は、径を細くし過ぎると熱が発生して、その熱によって焼き切れる可能性が生じるため、通常の使用において焼き切れることのない太さ以上となっている。他方、接続部120の、信号の経路以外の部分は、絶縁性素材によって構成される。具体的には、絶縁性を有する合成樹脂によって構成される。」

上記記載から、引用文献2には、「プローブカードである接続部120の信号経路であるピン122a,122bと信号線124を、抵抗材料として知られている素材によって構成する技術。」が記載されている。

(ウ)本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2006-337361号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

「【0014】
プローブ101は電気素子105も含み、その電気素子の第1の端部は第1の凹部106内に配置され、第2の端部は第2の凹部107内に配置され、露出した部分が第1のセクション102と第2のセクション103との間にある。第1のセクション102及び第2のセクション103の向かい合った端部間の隙間は、電気素子105の露出した部分の長さに等しく、比較的小さい。1つの具体的な実施形態では、その隙間は約0.0050インチ(0.12700mm)である。
【0015】
電気素子105はプローブ104の先端から或る距離108を置いて配設される。この距離108はスタブ長と呼ばれ、ターゲットと電気素子105との間のプローブ101の部分はスタブと呼ばれる。
【0016】
1つの例示的な実施形態では、電気素子105は抵抗器である。本明細書において詳述されるように、抵抗器105には、比較的高い周波数の電気ターゲット信号をプローブ検査する際に有用な減衰抵抗器を用いることができる。」

上記記載から、引用文献3には「プローブ101の第1のセクション102と第2のセクション103との間に抵抗器を設ける技術。」が記載されている。

イ 対比
本願補正発明1と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「信号接触子ホルダ234」、「サブスレート220」は、それぞれ、本願補正発明1の「第1キャリア」、「第1電気コンタクト・アセンブリ」に相当する。

(イ)引用発明の「エラストマ材料の高さは、ホルダ234の厚さよりもわずかに大き」く、「アダプタ200の下向きの力が、回路基板32、36の信号接触子パッド40と、サブストレート220の接触子パッド228との間の導電性エラストマ信号接触子236を圧縮」するので、「導電性エラストマ信号接触子236」は、「信号接触子ホルダ234」の「対向する面」の各々にて露出しているといえ、引用発明の「導電性エラストマ信号接触子236」と本願補正発明1の「電気コンタクトを有する複数のディスクリート抵抗器」とは、「電気コンタクトを有する複数の導電部材」の点で共通する。
したがって、引用発明の「信号接触子ホルダ234は対向する面を有し、導電性エラストマ信号接触子236を支持し、エラストマ材料の高さは、ホルダ234の厚さよりもわずかに大きいので、アダプタ200の下向きの力が、回路基板32、36の信号接触子パッド40と、サブストレート220の接触子パッド228との間の導電性エラストマ信号接触子236を圧縮し」と、本願補正発明1の「対向する面を有し、対向する上記面の各々にて露出される対向する電気コンタクトを有する複数のディスクリート抵抗器を保持すると共に、該ディスクリート抵抗器の各々にコンプライアンスを与える少なくとも1つの第1キャリア」とは、「対向する面を有し、対向する上記面の各々にて露出される対向する電気コンタクトを有する複数の導電部材を保持する少なくとも1つの第1キャリア」の点で共通する。

(ウ)引用発明の「サブストレート220は、上面の上に、接触子パッド224の配列が形成され、サブストレート220の底面226は、接触子パッド228を有し、導電ランは、サブストレート220を介して延び、上面222の接触子パッド224の配列を底面226の接触子パッド228の配列に結合し」は、本願補正発明1の「対向する面を有する第1電気コンタクト・アセンブリであって、該第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の各々にて電気コンタクトが露出され、上記第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の一方にて露出された上記電気コンタクトの各々が上記第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の他方にて露出された対応する上記電気コンタクトに電気的に結合される少なくとも1つの上記第1電気コンタクト・アセンブリ」に相当する。

(エ)引用発明は「サブストレート220」が「ネジ開口232」を有し、「ネジ開口232」にネジが延び、ネジが絞められると「信号接触子ホルダ234」及び「アダプタ保持部材242」の間に「回路基板32、36」を捕捉されるので、
引用発明の「取り付けラグ230がサブストレート220の底面226から延びて、ネジ開口232を有し、開口240が接触子ホルダ234に形成され、サブストレート220の底部に設けられたラグ230と整列し、開口246を保持部材242に形成し、保持部材の上面から延びる開口の直径は、アダプタ・サブストレートのラグをぴったり受ける直径よりもわずかに大きく、ラグ230のネジ開口232に取り付け部材250が延び、取り付け部材250は、ネジであり、これらネジが絞められると、取り外し可能な信号接触子ホルダ234及びアダプタ保持部材242の間に被試験装置12の回路基板32、36を捕捉し」は、本願補正発明1の「上記第1キャリア又は上記第1電気コンタクト・アセンブリの少なくとも一方を回路基板又はプローブ・ヘッドの少なくとも一方に選択的に固定する手段」に相当する。

(オ)引用発明の「導電性エラストマ信号接触子236」は、「信号接触子ホルダ234」の「対向する面」の各々にて露出しているので(上記(イ))、
引用発明の「信号接触子ホルダ234は対向する面を有し、導電性エラストマ信号接触子236を支持し」「導電性エラストマ信号接触子236は、サブストレート220の底面の接触子パッド228とかみ合う」は、本願補正発明1の「上記第1キャリア及び上記第1電気コンタクト・アセンブリは、互いに選択的に係合し、上記第1キャリアの一方の上記面にて露出された上記電気コンタクトと上記第1電気コンタクト・アセンブリの一方の上記面にて露出された上記電気コンタクトとが互いに接触する」に相当する。

(カ)引用発明の「多チャネル信号プローブ・ヘッド装置26」と、本願補正発明1の「抵抗プロービング・チップ装置」とは、「プロービング装置」の点で共通する。

すると、本願補正発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「対向する面を有し、対向する上記面の各々にて露出される対向する電気コンタクトを有する複数の導電部材を保持する少なくとも1つの第1キャリアと、
対向する面を有する第1電気コンタクト・アセンブリであって、該第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の各々にて電気コンタクトが露出され、上記第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の一方にて露出された上記電気コンタクトの各々が上記第1電気コンタクト・アセンブリの対向する上記面の他方にて露出された対応する上記電気コンタクトに電気的に結合される少なくとも1つの上記第1電気コンタクト・アセンブリと、
上記第1キャリア又は上記第1電気コンタクト・アセンブリの少なくとも一方を回路基板又はプローブ・ヘッドの少なくとも一方に選択的に固定する手段とを備え、
上記第1キャリア及び上記第1電気コンタクト・アセンブリは、互いに選択的に係合し、上記第1キャリアの一方の上記面にて露出された上記電気コンタクトと上記第1電気コンタクト・アセンブリの一方の上記面にて露出された上記電気コンタクトとが互いに接触するプロービング装置。」

(相違点1)
本願補正発明1は、「第1キャリア」が、「複数のディスクリート抵抗器を保持すると共に、該ディスクリート抵抗器の各々にコンプライアンスを与える」のに対して、引用発明は、「信号接触子ホルダ234」が保持するのは「導電性エラストマ信号接触子236」であり、「信号接触子ホルダ234」が、「導電性エラストマ信号接触子236」にコンプライアンスを与えることは特定されていない点。
(相違点2)
プロービング装置が、本願補正発明1は、「抵抗プロービング・チップ装置」であるのに対して、引用発明は、「多チャネル信号プローブ・ヘッド装置」である点

ウ 判断
(ア)上記相違点1について検討する。
引用文献2には、プローブカードである接続部120の信号経路であるピン122a,122bと信号線124を、抵抗材料として知られている素材によって構成する技術が記載されている(上記ア(イ))。
引用文献3には、プローブ101の第1のセクション102と第2のセクション103との間に抵抗器を設ける技術が記載されている(上記ア(ウ))。
しかしながら、引用文献2及び3には、「第1キャリア」が「複数のディスクリート抵抗器を保持すると共に、該ディスクリート抵抗器の各々にコンプライアンスを与える」ことは記載されていない。
してみると、引用発明において、「信号接触子ホルダ234」を、「対向する面を有し、対向する上記面の各々にて露出される対向する電気コンタクトを有する複数のディスクリート抵抗器を保持すると共に、該ディスクリート抵抗器の各々にコンプライアンスを与える少なくとも1つの第1キャリア」とすることは、当業者といえども容易であるということはできない。
したがって、上記相違点1に係る本願補正発明1の構成は、引用発明及び引用文献2,3に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(イ)そして、本願補正発明1は、上記相違点2について検討するまでもなく、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本願補正発明1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(2)補正事項2について
本件補正の補正事項2についても、補正事項1と同様に、本件補正前の請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そして、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項2に係る発明(以下「本願補正発明2」という。)は、本願補正発明1と同様に、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本願補正発明2は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(3)補正事項3について
本件補正の補正事項3についても、補正事項1と同様に、本件補正前の請求項3に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そして、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項3に係る発明(以下「本願補正発明3」という。)は、本願補正発明1と同様に、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本願補正発明3は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

3 むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし3に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものである。

そして、本願補正発明1ないし3は、上記第2 2のとおり、当業者が引用発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

したがって、本願については、原査定の拒絶の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-27 
出願番号 特願2011-80198(P2011-80198)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (G01R)
P 1 8・ 121- WY (G01R)
P 1 8・ 572- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅藤 政明  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 須原 宏光
関根 洋之
発明の名称 抵抗プロービング・チップ装置及びロジック・アナライザ・プロービング装置  
代理人 特許業務法人山口国際特許事務所  

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