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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05B |
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管理番号 | 1323054 |
審判番号 | 不服2015-5347 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-03-20 |
確定日 | 2016-12-22 |
事件の表示 | 特願2013-544466「センサ・データを同期させるためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年6月21日国際公開,WO2012/082207,平成25年12月26日国内公表,特表2013-546096〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2011年(平成23年)9月23日(パリ条約による優先権主張,2010年(平成22年)12月15日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成25年8月13日 :翻訳文提出 同年9月30日 :手続補正書の提出 平成26年7月1日付け:拒絶理由の通知 同年8月21日 :意見書,手続補正書の提出 平成27年2月3日付け:拒絶査定(同月5日謄本の送達) 同年3月20日 :審判請求,同時に手続補正書の提出 同年8月26日 :上申書の提出 第2 平成27年3月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成27年3月20日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 (1)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。) 「双方向ノードを備えるセンサであって、前記双方向ノードにおいて受け取られたトリガ信号に応答して、センサ・データを、単一方向信号フォーマットを有するシリアル・データ信号で前記双方向ノードにおいて伝達すると共に、前記センサ・データを前記センサ内に格納するように構成される、センサ。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の,平成26年8月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。 「双方向ノードを備えるセンサであって、前記双方向ノードにおいて受け取られたトリガ信号に応答して、センサ・データを、単一方向信号フォーマットを有するシリアル・データ信号で前記双方向ノードにおいて伝達するように構成される、センサ。」 2 補正の適否 (1)当初明細書等に記載された事項 本願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には,段落0008,0009,0014,0015,0019,0020,0032,0052,0058,0061,0062,0063によると,センサ・データをセンサ内に格納し,その後に格納したデータを伝達することが記載されているのみであり,本件補正により追加された「センサ・データを・・・伝達すると共に、前記センサ・データを前記センサ内に格納する」という,まず,データの伝達が行われ,それと共に格納が行われることは,当初明細書等には記載されていない。 (2)判断 上記補正により追加された「と共に、前記センサ・データを前記センサ内に格納する」ことは,センサ・データの伝達を行ってから格納するという新たな技術事項を導入するものであり,本件補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明 上記第2のとおり,平成27年3月20日にされた手続補正は却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成26年8月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし27に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,上記第2 1(2)のとおりのものである。 第4 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は,次のとおりである。 「この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1 ・引用文献等 特開2003-279651号公報」 第5 引用例 1 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物である,特開2003-279651号公報(平成15年10月2日出願公開。以下,「引用例」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 (1)「【0018】各センサ11?14は、超音波を送信する送信部aと、超音波の反射波を受信する受信部bと、超音波が障害物に当たり反射して再び戻ってくるまでの時間を測定すると共にECU18との通信を行う制御回路cとを備える。ECU18は、各センサ11?14に各種指令を送信すると共に、各センサ11?14が測定した時間を受信してその測定した時間に基づいて障害物の位置を計算する。また、ECU18は外部のセンサとも接続されている。外部のセンサとしては車速センサ22とシフトポジションセンサ24とがある。」 (2)「【0021】まずS100では、ECU18が第1のセンサ11に送信指令を、第1?第4のセンサ11?14に測定指令を送信する。これらの指令は図3(a)に示すフレームを用いる。図3(a)は左上方向が上位ビットを表し、右下方向が下位ビットを表す(フレームの説明は以降同様とする)。1段目の左半分の1?4ビット目がフレーム種別を表し、1段目の右半分の5?8ビット目がフレーム長を表す。9?16ビット目は超音波を送信するセンサを指定する。ここでは、9ビット目が第1のセンサ11に対応し、10ビットが目が第2のセンサ12に対応し、11ビット目が第3のセンサ13に対応し、12ビット目が第4のセンサ14に対応し、13?16ビット目は使用しない。 【0022】3段目の17?24ビット目は反射波の測定を行うセンサを指定する。これも同様に、17ビット目から順に第1のセンサ11、第2のセンサ12、第3のセンサ13、第4のセンサ14と対応し、21?24ビット目は使用しない。4段目左半分の25?28ビット目は送信する超音波のパルス数を指定し、4段目右半分の29?32ビット目は送信する超音波の周波数を指定する。5段目の33?40ビット目はチェックサムである。尚、本フレームは特許請求の範囲で言うところのA情報とB情報とを含んでいるフレームである。 【0023】図2に戻り、続いてS110では、指定したセンサによって送信された超音波が所定の範囲の障害物に反射して、測定指令を出したセンサに確実に届くまでの時間(以下、測定が完了するまでの時間という)だけ待機する。続いて検知処理はS120?S150を繰り返す。この繰り返しの処理は測定指令を出したセンサの数だけ行い、本実施例では第1?第4のセンサ11?14に測定指令を出したので4回繰り返す。S120では、第1のセンサ11に対して測定結果を送信する旨のフレームを送信する。このフレームは図3(b)に示すフレーム構造を有し、1段目左半分の1?4ビット目はフレーム種別を表し、1段目右半分の5?8ビット目はフレーム長を表し、2段目の9?16ビット目は測定結果を送信する対象センサを表し、3段目の17?24ビット目はチェックサムである。尚、本フレームは特許請求の範囲で言うところのC情報を含んでいるフレームである。」 (3)「【0028】S220では、フレームに指定された周波数及びパルス数の超音波を送信する。そして、本処理は終了する(測定対象でもある場合はS230以降の処理の終了を待って本処理を終了する)。一方S230では、センサ内に持っているタイマを用いてカウントを開始する。そして反射波を受信したらS240でカウントを停止し、そのカウント値(結果)を保持しながらECU18からカウント値の送信要求があるまで待機する。 【0029】S250では、ECU18からカウント値の送信要求を意味するフレーム(図3(b))を受信する。そして続くS260では、受信したフレームにエラーがあるか否かをチェックサムを用いて判定する。エラーがあれば測定処理を終了し、エラーがなければS270に進む。 【0030】S270では、自センサがカウント値を送信する対象であるか否かを図3(b)に示すフレーム中の対象センサビット(9?16ビット目)に基づいて判定する。対象でなければS250に戻り、ECU18からカウント値の送信要求を意味するフレームが送られてくるまで待機する。一方、カウント値を送信する対象であればS280に進む。 【0031】S280では、図3(c)に示す構造のフレームを用いてECU18にカウント値を送信する。このフレームは、1段目左半分の1?4ビット目にフレーム種別が配置され、1段目右半分の5?8ビット目にフレーム長が配置され、2段目の9?16ビット目にカウント値が配置され、3段目の17?24ビット目にチェックサムが配置されている。本フレームは特許請求の範囲で言うところのD情報を含んでいるフレームである。尚、このフレームを送信すると測定処理は終了する。」 (4)「【0034】このようにして、本実施例の障害物検出装置2は複数のセンサを用いて障害物までの距離を測定しているため正確に障害物の位置を算出することができる。また、測定処理を実行する各センサ11?14が一旦測定結果を保持するため、ECU18が即座に測定結果を処理する必要がなく、順に各センサ11?14から測定結果を取得し、その後に障害物の位置を算出している。したがって、ECU18はリアルタイム性を要求されないため、従来に比べてより多くのセンサを制御することができ、更にセンサを増やすことも可能である。また、ECU18と各センサ11?14との間の通信線16はバス状に敷設されているため、スター状に敷設する場合と比べ省線化が実現できる。したがって障害物検知装置2は、複数のセンサによって正確な障害物の位置を検出できる上に省線化も実現されていると言える。」 2 上記記載から,引用例には,次の技術的事項が記載されている。 (1)各センサ11?14は,ECU18との通信を行う制御回路cを備え,ECU18からの各種指令を受信し,測定した時間を送信する(【0018】)。 (2)ECU18が,第1のセンサ11に対して測定結果を送信する旨のフレームを送信する(【0023】)。これは,図5ないし図7において「結果要求」という用語を用いているものである。 (3)各センサは,フレームを用いてECU18に測定したカウント値を送信する(【0028】-【0031】)。 (4)ECU18と各センサ11?14との間の通信線16はバス状に敷設されており,測定処理を実行する各センサ11?14が一旦測定結果を保持するため,ECU18が即座に測定結果を処理する必要がなく,順に各センサ11?14から測定結果を取得している(【0034】)。 3 これらのことから,引用例には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「送受信の通信を行う制御回路を備えるセンサであって,制御回路において受け取られた結果要求に応答して,測定したカウント値を,バス状に敷設された通信線を通じてフレームを用いて制御回路において伝達するように構成される,センサ。」 第6 対比 1 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「送受信の通信を行う制御回路」は,双方向に通信するのであるから,本願発明の「双方向ノード」に相当する。 (2)引用発明の「結果要求」は,測定結果を送信する旨を指令するのであるから,本願発明の「トリガー信号」に相当する。 (3)引用発明の「測定したカウント値」は,センサが測定したデータであるから,本願発明の「センサ・データ」に相当する。 2 以上のことから,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。 【一致点】 「双方向ノードを備えるセンサであって,前記双方向ノードにおいて受け取られたトリガ信号に応答して,センサ・データを,前記双方向ノードにおいて伝達するように構成される,センサ。」 【相違点】 本願発明は,「センサ・データを,単一方向信号フォーマットを有するシリアル・データ信号で伝達する」のに対し,引用発明は,「センサ・データを,バス状に敷設された通信線を通じてフレームを用いて伝達する」点で,一応相違する。 第7 判断 以下,相違点について検討する。 引用例の「ECU18と各センサ11?14との間の通信線16はバス状に敷設されているため、スター状に敷設する場合と比べ省線化が実現できる。」(【0034】)との記載,図2,4に係るループを含むフローチャート,図3に係るフレームの構造,図5ないし7に係る各センサからの送信時刻を異ならせていることからして,引用例の通信は,少ない通信線で,フレームの各ビット情報を逐次通信しているものと認識でき,引用例の通信をバス状で行う際に,シリアル・データ通信を用いることは十分に認識しうる事項にすぎない。 そして,シリアル通信のフォーマットとして,本願の優先日前に周知なSENTやSPI等を選択することに困難性があったものとは認められず,そのようなフォーマットであれば,「単一方向信号フォーマット」である。 したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第8 請求人の主張について 1 平成27年3月20日にされた手続補正について 平成27年3月20日にされた手続補正により補正された「前記センサ・データを前記センサ内に格納する」点は,上記第2のとおり,いわゆる新規事項により却下されるものである。しかしながら,仮に新規事項でないとしても,上記第5 1(4)「測定処理を実行する各センサ11?14が一旦測定結果を保持する」との記載からして「センサ内に格納する」ことは十分想到しうる事項にすぎない。 2 平成27年8月26日提出の上申書について 平成27年8月26日提出の上申書において「センサ・データを、前記第1の特徴の検出の後、第1の所定の時間で開始して前記センサ内に格納」する点を主張している。しかしながら,格納する点は,上記第8 1に記載したとおりであり,「所定の時間」についても,引用例の第6図に関連して,指令と送信ないし測定との間に「所定の時間」を設けることが示されていることからして,格別のものとは認められない。 さらに,出願の経緯における請求人の主張をみても,請求項に記載された構成が,単に引用文献等に記載されていないと主張するのみであり,センサと周知のシリアル通信を用いた場合に,通常想到し得ない課題が何であり,その課題を解決するためにどのようなことが必要であったのかは不明であり,請求項1以外の請求項をみても格別の創意工夫が必要であった構成は認められない。 第9 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-07-25 |
結審通知日 | 2016-07-26 |
審決日 | 2016-08-12 |
出願番号 | 特願2013-544466(P2013-544466) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G05B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 後藤 健志 |
特許庁審判長 |
西村 泰英 |
特許庁審判官 |
栗田 雅弘 平岩 正一 |
発明の名称 | センサ・データを同期させるためのシステム及び方法 |
代理人 | 山本 修 |
代理人 | 竹内 茂雄 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 鳥居 健一 |