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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01H |
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管理番号 | 1323157 |
審判番号 | 不服2016-6508 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-05-02 |
確定日 | 2017-01-17 |
事件の表示 | 特願2013-164982「トリガースイッチ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月19日出願公開、特開2015- 35301、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年8月8日の出願であって、平成27年7月27日付けで拒絶理由が通知され、同年9月1日付けで手続補正がされ、平成28年2月1日付け(発送日:同年2月4日)で拒絶査定がされ、これに対し、同年5月2日に拒絶査定不服審判が請求され、その請求と同時に手続補正がされたものである。 第2 平成28年5月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否 1 補正の内容 本件補正は、補正前の請求項2及び7ないし12と、補正前の請求項6のうち請求項3を引用しない部分とを削除し、それに伴って、請求項の引用関係を整えるとともに請求項の順番を繰り上げたものである。 2 補正の適否 本件補正は、その内容からみて、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 3 まとめ よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし5に係る発明は、本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 スイッチ機構を密閉状態で配置してなるスイッチ室を有するケースと、 前記スイッチ機構に連設したプランジャーの一端に係合係止してスイッチの操作に用いられる操作部と、 を備えたトリガースイッチであって、 前記プランジャーに貫通孔を備え、前記貫通孔をとおして前記スイッチ室に空気を流入させることにより、前記スイッチ室の隙間から粉塵及び水分が流入するのを防ぐ ことを特徴とするトリガースイッチ。」 第4 原査定の理由の概要 平成27年9月1日付けの手続補正により補正された請求項1、2、4ないし12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1 請求項1について 刊行物1の「ハウジング11」、「操作軸71」、「トリガ70」はそれぞれ、請求項1に係る発明における「ケース」、「プランジャー」、「操作部」に相当する(引用例1の段落[0018]、[0019]、[図3]。)。 刊行物1に記載された発明は、請求項1に係る発明における「貫通孔」に相当する構成を有していないが、該点は刊行物2に記載されている(刊行物2の、シャフト7の貫通孔5、第3図。)。 刊行物1に記載された発明は防塵性・防水性を確保するという課題を解決するものであるから(刊行物1の段落[0004]。)、該課題の認識の下、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された発明を適用することは、当業者が容易になし得たことである。 <刊行物一覧> 刊行物1.特開2011-146197号公報 刊行物2.実公昭36-16340号公報 刊行物3.特開2013-54310号公報 刊行物4.特開2005-203290号公報 刊行物5.実願昭63-85808号(実開平2-8826号)のマイクロフィルム 第5 当審の判断 1 刊行物1及び2 (1)刊行物1に記載された発明 拒絶理由において通知され、本願の出願前に頒布された刊行物である刊行物1の、段落【0004】、【0007】、【0016】ないし【0024】及び図1ないし図5には、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 [引用発明] 「接点機構をシールした状態で配置してなるベース40を有するハウジング11と、 前記接点機構に取り付けたプランジャ50の一端にスライド係合してスイッチの操作に用いられるトリガ70と、 ハウジング11に設けた通気孔を被覆するフィルタ107 を備えたトリガスイッチ10」 (2)刊行物2に記載された事項 拒絶理由において通知され、本願の出願前に頒布された刊行物である刊行物2には、次の事項が記載されている。(注:下線は当審で付したものである。) 「本実用新案の作用について説明するに、先ずスイツチの遅動開閉操作をなすときに、キヤツプAを内方に押圧するとばね10に抗してシヤフト7が内方に進むと共にカツプ11を押撃して内部の空気を排出し萎縮する。而してキヤツプAを手離すとキヤツプAの通気孔13及びシヤフト7の貫通孔5によつて連なる狭あいな空気通路からカツプ11の空気室内に空気が吸入されて該カツプ11は徐々に復元すると共にばね10の復元力でシヤフト7が後退するが、斯るシヤフト7の後退復元時にカム9がラチェット4を駆動廻転せしめ、この操作軸3の廻転によつてスイツチ2内で電気回路が開く。 このようにしてキヤツプAの押圧時からカツプ11及びシヤフト7の復元完了に到るまでの時間を消費した後、スイツチ2が遅れて作動する。」(第1ページ左欄第30行ないし右欄第8行) 2 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「接点機構」は本願発明の「スイッチ機構」に相当し、以下同様に、「シールした状態」は「密閉状態」に、「ベース40」は「スイッチ室」に、「ハウジング11」は「ケース」に、「取り付けた」ことは「連設した」ことに、「プランジャ50」は「プランジャー」に、「スライド係合」することは「係合係止」することに、「トリガ70」は「操作部」に、「トリガスイッチ10」は「トリガースイッチ」に、それぞれ相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 [一致点] 「スイッチ機構を密閉状態で配置してなるスイッチ室を有するケースと、 前記スイッチ機構に連設したプランジャーの一端に係合係止してスイッチの操作に用いられる操作部と、 を備えたトリガースイッチ」 [相違点] 本願発明は、「前記プランジャーに貫通孔を備え、前記貫通孔をとおして前記スイッチ室に空気を流入させることにより、前記スイッチ室の隙間から粉塵及び水分が流入するのを防ぐ」のに対し、引用発明は、ハウジング11に設けた通気孔を被覆するフィルタ107を備えたものである点。 3 判断 上記相違点について検討する。 引用発明は、防塵性・防水性を確保しつつ、操作性の良いトリガスイッチを提供することを課題としており(刊行物1の段落【0004】)、刊行物2に記載された「キヤツプAの通気孔13及びシヤフト7の貫通孔5によつて連なる狭あいな空気通路」は、「スイツチの遅動開閉操作」を目的としており、そもそも引用発明に、刊行物2の「キヤツプAの通気孔13及びシヤフト7の貫通孔5によつて連なる狭あいな空気通路」を適用する動機付けはない。 また、仮に引用発明のプランジャ50に、刊行物2の「キヤツプAの通気孔13及びシヤフト7の貫通孔5によつて連なる狭あいな空気通路」を適用したとしても、「スイツチの遅動開閉操作」が実現されるだけであって、本願発明の「スイッチ室12に留まっている空気はスイッチ機構14の移動により加圧されることなく貫通孔16を経由して排出されるため、スイッチ室12での加圧或いは減圧による僅かな隙間からの粉塵及び水分の流入を防ぐことができる」(本願明細書の段落【0024】)という作用効果は生じない。 よって、上記相違点に係る本願発明の構成は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たものでない。 したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることできたとはいえない。 そして、本願の請求項2ないし5に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることできたとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願の請求項1ないし5に係る発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることできたものでないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-01-05 |
出願番号 | 特願2013-164982(P2013-164982) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01H)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 片岡 弘之 |
特許庁審判長 |
阿部 利英 |
特許庁審判官 |
内田 博之 小関 峰夫 |
発明の名称 | トリガースイッチ |
代理人 | 特許業務法人東京アルパ特許事務所 |