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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1323166
審判番号 不服2016-3462  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-07 
確定日 2017-01-23 
事件の表示 特願2014-139894「プリント配線板用基板及びプリント配線板用基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月 2日出願公開、特開2014-187403、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年10月23日(優先権主張平成21年4月24日)に出願した特願2009-244273号の一部を平成24年10月11日に新たな特許出願とした特願2012-225817号の一部を平成26年7月7日に新たな特許出願としたものであって、平成27年3月5日付けで拒絶理由が通知され、同年5月18日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月2日付け(発送日:同年12月7日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年3月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、同年7月7日に上申書が提出され、その後、当審において同年8月25日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年10月11日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成28年10月11日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「 【請求項1】
絶縁性の基材と、該絶縁性の基材の上に積層される第1導電層と、該第1導電層の上に積層される第2導電層とを有し、前記第1導電層は、導電性インクに含まれる平均粒子径が30nm?100nmである銅の金属粒子が、前記基材の上に熱処理物として固着形成された金属層と、無電解銅めっきによって前記金属層の表面連通の空隙部に充填された無電解銅めっき層とで構成されていると共に、前記第2導電層は、電気銅めっきによる電気銅めっき層として構成されており、且つ前記第1導電層の総厚みが0.05μm?2μmであると共に、前記第2導電層の総厚みが前記第1導電層の総厚みよりも大きく、前記絶縁性の基材が、ポリイミド、ポリエステル等のフレキシブル材、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、テフロン(登録商標)等のリジッド材、硬質材料と軟質材料とを複合したリジッドフレキシブル材のうち何れか一つで構成されていることを特徴とするプリント配線板用基板。
【請求項2】
ポリイミド、ポリエステル等のフレキシブル材、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、テフロン(登録商標)等のリジット材、硬質材料と軟質材料とを複合したリジッドフレキシブル材のうち何れか一つで構成されるフィルム若しくはシートからなる絶縁性の基材の上に、30nm?100nmの平均粒子径をもつ銅の金属粒子を分散させた導電性インクを塗布する工程、
熱処理を行うことにより前記塗布された導電性インクに含まれる有機物を除去すると共に前記銅の金属粒子を金属層として前記絶縁性の基材上に固着させる工程、及び
前記基材上に固着された銅の金属粒子間に生じる表面連通の空隙部を、無電解銅めっきで充填して無電解銅めっき層を形成する無電解銅めっき工程を備える第1導電層を構成する工程と、
電気銅めっきを行うことにより前記第1導電層の上に電気銅めっき層を積層させて第2導電層を構成する工程と、
を少なくとも有すると共に、前記第1導電層を構成する工程では、第1導電層の総厚みを0.05μm?2μmに形成し、且つ前記第2導電層を構成する工程では、第2導電層の総厚みを前記第1導電層の総厚みよりも大きく形成することを特徴とするプリント配線板用基板の製造方法。
【請求項3】
導電性インクの熱処理を、250℃?400℃の温度で、非酸化性雰囲気若しくは還元性雰囲気で行うことを特徴とする請求項2に記載のプリント配線板用基板の製造方法。」

第3.原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
平成27年5月18日付けの手続補正により補正された請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:特開平8-167768号公報

刊行物1の段落【0014】には、「無機セラミックス系材料を基板とする場合には、高温で熱処理を行うことにより有機バインダが分解し還元された金属のみが基板に残留して無電解めっきの核となり、還元された金属がめっき膜をアンカー(投錨)効果により基板に密着させる。」と記載されている。
上記の記載から、刊行物1には、金属層(コーティング膜)が、導電性インク(ペースト)に含まれる有機物(有機バインダ)が除去されて残る金属粒子が基材(基板)の上に固着されて形成されたものであること、金属層(コーティング膜)の表面連通の空隙部に無電解金属めっきが充填されることが、記載されていると認められる。
また、刊行物1の段落【0020】には、金属粒子の平均粒径が0.1μm(100nm)である例が、記載されている。
また、刊行物1の段落【0020】には、第1導電層(導電性インク(ペースト)中の金属および無電解Cuめっきからなる層)の総厚みおよび第2導電層(電気Cuめっきからなる層)の総厚みの合計値が5μmである点が、記載されているものの、それぞれの導電層の総厚みについてまでは特定されていない。
しかしながら、プリント配線板の技術分野において、無電解めっき層よりも電気めっき層を厚く形成することは、例示するまでもない周知技術にすぎない。よって、刊行物1に記載された発明に上記の周知技術を適用して、電気Cuめっきからなる第2導電層の総厚みを、無電解Cuめっきを含む第1導電層の総厚みよりも大きくすることは、当業者にとって容易である。また、その際の第1導電層の厚みを、本願発明と同程度(0.05μm?2μm)とすることにも、格別な困難性は認められない。
したがって、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項により、特許を受けることができない。

2.原査定の理由の判断
2-1.刊行物の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開平8-167768号公報)には、「回路パターンの形成方法及びそのペースト」に関し、次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、回路基板を製造する際の基板に回路パターンを形成する方法及びこのパターン形成用のペーストに関する。更に詳しくは貴金属酸化物を加熱分解することによりファインラインでファインピッチの微細な回路パターンを形成するに適した方法及びそのペーストに関するものである。」

イ.「【0012】
(b)所定のパターンのコーティング膜の形成
本発明の回路パターンを形成するための非導電性基板は、後工程の100?1200℃の熱処理で変質又は変形しないことが必要である。この非導電性基板としては、有機プラスチック系材料、無機セラミック系材料又は無機・有機複合系材料がある。有機プラスチック系材料としては、紙フェノール、ガラスエポキシ、ポリイミド、フッ素樹脂、ポリサルフォナイド等が例示され、無機セラミック系材料としては、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ケイ素、結晶化ガラス等が例示され、更に無機・有機複合系材料としては、石英-エポキシ等が例示される。
また、上記基板に所定のパターンでコーティング膜を形成する方法としては、[1](注:刊行物1では丸付き数字の1)スクリーン印刷法により基板に直接パターンを描き熱処理後に無電解めっきを行う方法(フルアディティブ法)、[2](注:刊行物1では丸付き数字の2)スピンコーターやディッピングにより基板全面にペーストを塗布、熱処理後、エッチングによりパターンを形成し、無電解めっきを行う方法(セミアディティブ法)、[3](注:刊行物1では丸付き数字の3)スピンコーターやディッピングにより基板全面にペーストを塗布、熱処理後、無電解めっき、必要に応じて更に電気めっきを行い、エッチングによりパターンを形成する方法(サブトラクト法)のいずれかを用いる。
【0013】(c)コーティング膜中の金属酸化物の還元
コーティング膜中に含まれる金属酸化物は大気中100?1200℃の温度で熱処理を行うことにより金属酸化物から金属に還元される。例えば、酸化Ag(II)(AgO)は100℃以上、酸化Ag(I)(Ag_(2)O)は160℃以上、酸化Au(III)(Au_(2)O_(3))は250℃以上、酸化Pd(II)(PdO)は700℃以上でそれぞれ徐々に分解して金属であるAg、Au又はPdに還元される。従って、酸化Ag(I)(II)を用いて低温で還元することにより有機プラスチック系材料の基板の使用が可能となる。無機セラミック系材料を基板とする場合はいずれの金属酸化物でも使用可能である。
【0014】(d)コーティング膜の基板への接着
コーティング膜と基板との接着メカニズムは、ペーストの組成と用いる基板材料により異なる。例えば、[1](注:刊行物1では丸付き数字の1)ビークルに金属アルコキシドを含まず、無機セラミックス系材料を基板とする場合には、高温で熱処理を行うことにより有機バインダが分解し還元された金属のみが基板に残留して無電解めっきの核となり、還元された金属がめっき膜をアンカー(投錨)効果により基板に密着させる。密着力が不足する場合には、[2](注:刊行物1では丸付き数字の2)ビークルに金属アルコキシドを含有させ、大気中で熱処理を行い加水分解又は重縮合させ、その反応物を金属酸化物に変えることによりコーティング膜を基板に接着する。また、[3](注:刊行物1では丸付き数字の3)有機プラスチック系材料を基板とする場合には、低温で熱処理を行うため有機バインダは接着剤の役割を果たしてコーティング膜を基板に接着する。更に、[4](注:刊行物1では丸付き数字の4)金属アルコキシドを含有させる場合には、有機バインダは粘度調整として機能し、接着は主に金属アルコキシドの加水分解又は重縮合により行われる。
【0015】(e)コーティング膜への無電解めっき
このようにして形成されたコーティング膜に無電解めっきを行うことにより、金属層を析出させる。還元されたAu、Pd、Ag等の金属を核として無電解めっきを行うが、無電解めっき反応を開始させ得る触媒性が不足している場合は、必要によりPd置換又はガルバニックイニシエーション等により初期駆動力を付与することにより無電解めっき反応を開始させる。例えば、還元された金属がAgの場合には、この金属をPdで置換する。無電解めっきの金属種としてはAu、Pd、Ag、Cu、Ni等が挙げられるが、析出速度、コスト、ハンドリングの面から特にCu又はNiが好ましい。無電解めっきにより析出された金属層は下層のコーティング膜と強く密着して積層される。
【0016】
【作用】従来法で用いられる金属粉末は一般に水溶液から還元析出法により製造されるが、還元反応をコントロールすることによる粒径制御が難しく、一次粒子が成長し易く凝集も起こり易い。更に、展延性があるため解砕も困難となり、5μm以下の微粉末を得ることが非常に難しい。一方、本発明の方法で用いられる金属酸化物は水溶液から沈殿法により製造されるので一次粒子は基本的に粒径5μm以下の微粉末であり、凝集しても展延性がなく脆いので解砕も容易でファインライン化、ファインピッチ化に対応することができる。
【0017】また、金属酸化物は比重も小さいので均一なペーストとなり、例えばスクリーン印刷などによりファインラインを描いても固形分の沈殿によるペースト垂れが発生せずフルアディティブ法によりファインライン化及びファインピッチ化を図ることができる。或いは、エッチングを利用したサブトラクト法、セミアディティブ法にも対応可能である。いずれの場合も、金属酸化物は大気中100?1200℃の温度で熱処理を行うことにより、金属に還元され次工程の無電解めっきの核となる。更に、無電解めっきを行うことにより一体化した導電層が得られ、基板との密着性にも優れている。」

ウ.「【0020】<実施例3> エチルセルロース10gをターピネオール90gに溶解し、この溶液に平均粒径0.1μmのAg_(2)O80gをビーズミルを用いて均一に分散させ、ペーストを調製した。このペーストをスピンコータでAl_(2)O_(3)基板の表面に塗布した。この基板を150℃で10分乾燥し、次いで850℃で10分熱処理することによりAg_(2)OをAgに還元した。この基板を200ppmのPdCl_(2)水溶液に浸漬してAgとPdを置換させた後、無電解Cuめっきを行い、続いて電気Cuめっきを行い基板全面に膜厚5μmのCu膜を形成した。この基板にレジストをパターン幅50μm、パターン間100μmとなるようにポジ型レジストでパターンを形成し、レジストが塗布されていない部分のCuをエッチングにより除去した。レジストを除去して膜厚5μmのCuのパターンを得た。」

エ.「【0021】
・・・(略)・・・
<比較例1>
エチルセルロース15gを35%エチルシリケートエタノール溶液85gに溶解し、この溶液に平均粒径8μmのCu粉末20gをビーズミルを用いて均一に分散させ、ペーストを調製した。このペーストをパターン幅50μm、パターン間100μmとなるようにスクリーン印刷によりAl_(2)O_(3)基板の表面に塗布したが、パターン切れが観察された。」

オ.上記ウ.の「このペーストをスピンコータでAl_(2)O_(3)基板の表面に塗布した。この基板を150℃で10分乾燥し、次いで850℃で10分熱処理することによりAg_(2)OをAgに還元した。この基板を200ppmのPdCl_(2)水溶液に浸漬してAgとPdを置換させた後、無電解Cuめっきを行い、続いて電気Cuめっきを行い基板全面に膜厚5μmのCu膜を形成した。」との記載によれば、Al_(2)O_(3)基板の上にPd及び無電解Cuめっきからなる層が積層され、このPd及び無電解Cuめっきからなる層と電気Cuめっき層の厚みが5μmであることが分かる。

カ.上記イ.の段落【0012】の「有機プラスチック系材料としては、紙フェノール、ガラスエポキシ、ポリイミド、フッ素樹脂、ポリサルフォナイド等が例示され」との記載によれば、絶縁性の基材として、紙フェノール、ガラスエポキシ、ポリイミド等が用いられることが分かる。

キ.上記エ.の「平均粒径8μmのCu粉末20gをビーズミルを用いて均一に分散させ、ペーストを調製した。このペーストをパターン幅50μm、パターン間100μmとなるようにスクリーン印刷によりAl_(2)O_(3)基板の表面に塗布した」との記載によれば、導電性のペーストとして、平均粒径8μmのCu粉末が用いられることが分かる。

上記記載事項及び認定事項を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「Al_(2)O_(3)基板と、該Al_(2)O_(3)基板の上に積層されるPd及び無電解Cuめっきからなる層と、該Pd及び無電解Cuめっきからなる層の上に積層される電気Cuめっきによる電気Cuめっき層とを有し、且つPd及び無電解Cuめっきからなる層及び電気Cuめっき層の厚みが5μmである回路基板。」

2-2.対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、その技術的意義、機能または構造からみて、引用発明における「Al_(2)O_(3)基板」は本願発明1における「絶縁性の基材」に相当し、以下同様に、「Pd及び無電解Cuめっきからなる層」は「第1導電層」に、「電気Cuめっきによる電気Cuめっき層」は「第2導電層」及び「電気銅めっきによる電気銅めっき層」に、「回路基板」は「プリント配線板用基板」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、次の点で一致する。
[一致点]
「絶縁性の基材と、該絶縁性の基材の上に積層される第1導電層と、該第1導電層の上に積層される第2導電層とを有し、前記第2導電層は、電気銅めっきによる電気銅めっき層として構成されているプリント配線板用基板。」

そして、両者は次の各点で相違する。
[相違点1]
第1導電層が、本願発明1においては、「導電性インクに含まれる平均粒子径が30nm?100nmである銅の金属粒子が、前記基材の上に熱処理物として固着形成された金属層と、無電解銅めっきによって前記金属層の表面連通の空隙部に充填された無電解銅めっき層とで構成されている」のに対し、引用発明においては、Pd及び無電解Cuめっきからなる層である点。

[相違点2]
本願発明1においては、「前記第1導電層の総厚みが0.05μm?2μmであると共に、前記第2導電層の総厚みが前記第1導電層の総厚みよりも大きい」のに対して、引用発明においては、Pd及び無電解Cuめっきからなる層と電気Cuめっき層の厚みが5μmであるものの、それぞれの層の厚みは不明である点。

[相違点3]
絶縁性の基材が、本願発明においては、「ポリイミド、ポリエステル等のフレキシブル材、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、テフロン(登録商標)等のリジッド材、硬質材料と軟質材料とを複合したリジッドフレキシブル材のうち何れか一つで構成されている」のに対して、引用発明においては、Al_(2)O_(3)基板である点。

2-3.判断
上記相違点について検討するに、まず、相違点1について検討する。
本願発明1は、本願明細書の段落【0020】に「前記導電性インクに含まれる金属粒子の大きさは、粒子径が1?500nmのものを用いる。この粒子径は通常の塗装用のものに比べて著しく小さく、緻密な導電薄膜を得るのに適したものとされている。粒子径が1nm未満の場合は、インク中での分散性、安定性が必ずしもよくないのと、粒子が小さすぎて積層に係る塗装に手間がかかる。また500nmを超える場合は、沈殿しやすく、また塗布した際にムラが出やすくなる。分散性、安定性、ムラ防止等を考慮して、好ましくは30?100nmがよい。」と記載されているように、粒子径として30?100nmの金属粒子を用いることにより、緻密な導電薄膜を得るものである。
一方、引用発明のPdは、平均粒径0.1μmのAg_(2)Oを用いて形成されたものであり(段落【0020】)、刊行物1には、銅の金属粒子について、平均粒径3μmのCu粉末を用いることは記載されているものの(段落【0021】)、その銅の金属粒子の粒径は、30nm?100nmではなく、その銅粒子が熱処理により基板に固着されているとも示唆されていない。
してみると、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本願発明1は、相違点2及び3を検討するまでもなく、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2-4.小括
以上のように、本願発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
なお、本願発明2及び3は、原査定の対象とはなっていない。

第4.当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1及び2における「ポリイミド、ポリエステル等のフレキシブル材、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、テフロン(登録商標)、ガラス基材等のリジッド材、硬質材料と軟質材料とを複合したリジッドフレキシブル材のうち何れか一つで構成」との記載は、絶縁性の基材として「ガラス基材」が含まれており、審判請求書における主張と整合しないため当該記載が明確であるとはいえない。

(2)請求項1は、「プリント配線板用基板」という物の発明であるが、「熱処理によって導電性インクに含まれる有機物が除去された」との記載は、プリント配線板用基板の製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえる。
ここで、物の発明に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、平成24年(受)第2658号)。
しかしながら、本願明細書等には不可能・非実際的事情について何ら記載がなく、当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるとも言えない。
したがって、請求項1に係る発明は明確でない。

2.当審拒絶理由の判断
平成28年10月11日付けの手続補正により、請求項1及び2における「ガラス基材」は削除され、また、同手続補正により、請求項1における「前記第1導電層は、熱処理によって導電性インクに含まれる有機物が除去された状態で、残る平均粒子径が30nm?100nmである銅の金属粒子が前記基材の上に固着されて形成された金属層」は「前記第1導電層は、導電性インクに含まれる平均粒子径が30nm?100nmである銅の金属粒子が、前記基材の上に熱処理物として固着形成された金属層」と補正された。
よって、当審拒絶理由(1)及び(2)は解消した。

第5.むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-05 
出願番号 特願2014-139894(P2014-139894)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
P 1 8・ 537- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 飯星 潤耶小林 大介  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 内田 博之
中川 隆司
発明の名称 プリント配線板用基板及びプリント配線板用基板の製造方法  
代理人 特許業務法人ハートクラスタ  

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