• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G11B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G11B
管理番号 1323190
審判番号 不服2016-303  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-07 
確定日 2017-01-16 
事件の表示 特願2014-503813「磁気記録媒体用スパッタリングターゲット及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年9月12日国際公開、WO2013/133163、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)3月1日(優先権主張2012年3月9日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成26年7月25日付けで手続補正がなされ、平成27年2月12日付けで拒絶理由が通知され、同年4月2日付けで手続補正がなされたが、同年10月29日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対し、平成28年1月7日付けで拒絶査定不服の審判が請求され、同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成28年9月13日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月2日付けで手続補正がなされたものである。

第2 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
[A]平成28年1月7日付け手続補正書に記載の請求項1、2、4、7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術(引用文献2ないし4参照)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:米国特許第6521062号明細書
引用文献2:特開平7-118818号公報
引用文献3:特開平5-247638号公報
引用文献4:特開2000-282229号公報

[B]本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

平成28年1月7日付け手続補正書に記載の請求項5の「さらに冷間圧延を1回以上含む総圧下率1.0?10%で熱間圧延と冷間圧延(二次圧延)を行って」という記載からみて、請求項5に係る発明は、二次圧延として冷間圧延だけでなく熱間圧延も行うものであると認められるのに対して、明細書には二次圧延として熱間圧延を行うことは記載も示唆もされていない。
よって、請求項5並びに請求項5を引用する請求項6及び7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

2.当審拒絶理由の判断
(1)本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成28年11月2日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、独立請求項である請求項1及び3に係る発明(以下、「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は次のとおりのものである。

<本願発明1>
「【請求項1】
Cr:1?40at%、Pt:1?26at%、B:1?15at%、残部Co及び不可避的不純物からなるCo-Cr-Pt-B系スパッタリングターゲットであって、Bリッチ相の平均粒子面積が90μm^(2)以下であり、最大透磁率(μmax)が50以下であり、Bリッチ相の割れが2500個以下/mm^(2)であることを特徴とする磁気記録媒体用スパッタリングターゲット。」
<本願発明2>
「【請求項3】
Cr:1?40at%、Pt:1?26at%、B:1?15at%、残部Co及び不可避的不純物からなるCo-Cr-Pt-B系合金鋳造インゴットを熱処理した後、少なくとも冷間圧延を1回以上含む総圧下率10?90%で、熱間圧延と冷間圧延(一次圧延)を行い、さらに総圧下率1.0?10%となるよう冷間圧延(二次圧延)を行って、Bリッチ相の平均粒子面積を90μm^(2)以下とした後、機械加工してターゲットを作製することを特徴とする磁気記録媒体用スパッタリングターゲットの製造方法。」

(2)理由[A]について
(2-1)本願発明1について
引用文献1には、スパッタリングターゲットに関して、以下の事項が図面とともに記載されている。
ア.データストレージディスク(a data/storage disk)の磁性層(a magnetic layer)を形成するために用いられるCo系合金からなるスパッタリングターゲット(a sputtering target)。(「FIELD OF THE INVENTION」の欄(第1欄)及び「SUMMARY OF THE INVENTION」の欄(第2-3欄)を参照。)
イ.EXAMPLE 1(第6-7欄を参照。)について、上記Co系合金はCo-18Cr-6Pt-6B(各数値はatomic %)を含む。
ウ.EXAMPLE 1について、マトリックス相(the matrix phase)はCo, Cr及びPtからなり、析出相(the precipitate phase)はおおよそCo_(3)Cr_(2)Bの組成である。
エ.EXAMPLE 1について、析出相(the precipitate phase)の平均サイズは1μmである。

そして、上記アのデータストレージディスクは磁性層を有することからみて磁気記録媒体であり、上記イのCo系合金の成分組成は、本願発明1の「Cr:1?40at%、Pt:1?26at%、B:1?15at%、残部Co及び不可避的不純物」という成分組成に含まれるものである。
また、上記ウのとおり、析出相(the precipitate phase)は、周囲のマトリックス(the matrix phase)よりもBを多く含有しているから本願発明1の「Bリッチ相」に相当し、上記エの記載事項に加えてFig.4に示される顕微鏡写真中の析出相(dark appearing phase)の形状・大きさも勘案すると、当該析出相の平均粒子面積は90μm^(2)を越えるものではないと推察される。

以上を総合勘案した上で、本願発明1と引用文献1に記載された発明とを対比すると、次の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点1>
本願発明1では、スパッタリングターゲットの最大透磁率(μmax)が50以下であるのに対して、引用文献1に記載された発明では、最大透磁率について特定されていない点。
<相違点2>
本願発明1では、Bリッチ相の割れが2500個以下/mm^(2)であるのに対して、引用文献1に記載された発明では、Bリッチ相の割れの個数について特定されていない点。

上記相違点2について検討すると、引用文献2ないし4には、Co系合金のスパッタリングターゲットを低透磁率化するために、その透磁率を50以下とすることは記載されている(例えば、引用文献2(段落【0002】-【0003】、【0027】、表1参照。)、引用文献3(段落【0001】-【0003】、【0005】、表1、表2参照。)、引用文献4(段落【0001】-【0003】、表2(特に、試料番号4及び5)参照)。)ものの、Bリッチ相の割れを2500個以下/mm^(2)とすることについては記載も示唆もされていない。
そして、本願発明1は、Bリッチ相の割れを2500個以下/mm^(2)とすることによって、「Bリッチ相の割れを起点とするアーキングが発生せず、スパッタリング時の放電が安定し、ノジュール又はパーティクル発生を効果的に防止又は抑制することが可能となる」という効果を奏するものである。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、同様の理由で、本願発明1の発明特定事項を全て含む請求項2に係る発明についても、引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
なお、前置報告において審査官が新たに引用した特開平6-104120号公報及び国際公開第2005/083148号に記載されている技術事項を勘案しても、本願発明1及び請求項2に係る発明は、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-2)本願発明2について
引用文献1には、スパッタリングターゲットに関する(2-1)のアないしエの記載事項に加えて、その製造方法に関する次の事項も記載されている。
オ.EXAMPLE 1について、2000°Fから2500°Fでアニールした後に、その温度の間で総圧下率(a total reduction)が80%の圧延を行い、さらに、1000°Fから1800°Fの間で圧下率が20%の圧延を行う。
そして、上記オの圧延はいずれも熱間圧延であり、それらの合計の総圧下率は84%になる。
したがって、以上の記載事項も踏まえて、本願発明2と引用文献1に記載された発明とを対比すると、次の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点3>
本願発明2では、少なくとも冷間圧延を1回以上含む総圧下率10?90%で、熱間圧延と冷間圧延(一次圧延)を行い、さらに総圧下率1.0?10%となるよう冷間圧延(二次圧延)を行っているのに対して、引用文献1に記載された発明では、総圧下率84%となるように熱間圧延を行っている点。
<相違点4>
本願発明2では、一次圧延及び二次圧延を行った後に、機械加工してターゲットを作製するのに対して、引用文献1に記載された発明では、最終的な機械加工について特定されていない点。

上記相違点3について検討すると、例えば、引用文献2(段落【0004】、【0025】参照。)、引用文献3(段落【0009】、【0012】参照。)、引用文献4(段落【0006】参照。)に記載されているように、スパッタリングターゲットを低透磁率化するために、熱間圧延を行った後に、さらに本願発明2の二次圧延に相当する冷間圧延を行うことは周知技術にすぎないが、当該二次圧延の前に行われる一次圧延において、少なくとも冷間圧延を1回以上含めることは、引用文献2ないし4には記載も示唆もされていない。
そして、本願発明2は、一次圧延に少なくとも冷間圧延を1回以上含めることよってBリッチ相の割れを少なくし、その結果、「Bリッチ相の割れを起点とするアーキングが発生せず、スパッタリング時の放電が安定し、ノジュール又はパーティクル発生を効果的に防止又は抑制することが可能となる」という効果を奏するものである。
したがって、相違点4について検討するまでもなく、本願発明2は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、同様の理由で、本願発明2の発明特定事項を全て含む請求項4及び5に係る発明についても、引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
なお、前置報告において審査官が新たに引用した上記各文献に記載されている技術事項を勘案しても、本願発明2並びに請求項4及び5に係る発明は、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-3)まとめ
上記(2-1)及び(2-2)で述べたとおりであるから、当審拒絶理由[A]は解消した。

(3)理由[B]について
平成28年11月2日付け手続補正によって、補正前の請求項5の「さらに冷間圧延を1回以上含む総圧下率1.0?10%で熱間圧延と冷間圧延(二次圧延)を行って」という記載は、補正後の請求項3の「さらに総圧下率1.0?10%となるよう冷間圧延(二次圧延)を行って」という記載に補正され、その結果、補正後の請求項3並びに請求項3を引用する請求項4及び5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとなった。
よって、当審拒絶理由[B]は解消した。

第3 原査定の理由について
原査定の理由は、平成27年4月2日付け手続補正による補正後の請求項1及び2に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、当該請求項1及び2に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
これに対して、その後の平成28年1月7日付けの手続補正及び同年11月2日付けの手続補正によって、請求項1には、上記(2-1)の相違点1に係る「スパッタリングターゲットの最大透磁率(μmax)が50以下である」という発明特定事項と、相違点2に係る「Bリッチ相の割れが2500個以下/mm^(2)である」という発明特定事項が加えられ、その結果、補正後の請求項1に係る発明、すなわち、本願発明1は引用文献1に記載された発明であるとはいえないものとなった。
そして、上記(2-1)で検討したとおり、少なくとも相違点2に係る発明特定事項については、引用文献2ないし4に記載された技術事項を勘案しても、当業者が容易になし得たものであるということはできない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1ないし5に係る発明は、引用文献1に記載された発明ではなく、また、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-19 
出願番号 特願2014-503813(P2014-503813)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G11B)
P 1 8・ 121- WY (G11B)
P 1 8・ 537- WY (G11B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中野 和彦川中 龍太▲吉▼澤 雅博柴垣 俊男  
特許庁審判長 森川 幸俊
特許庁審判官 國分 直樹
酒井 朋広
発明の名称 磁気記録媒体用スパッタリングターゲット及びその製造方法  
代理人 小越 勇  
代理人 小越 一輝  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ