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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1323208
審判番号 不服2015-21042  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-27 
確定日 2017-01-17 
事件の表示 特願2011-166382「撮像素子およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 7日出願公開、特開2013- 30652、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成23年7月29日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年 7月23日 審査請求・手続補正
平成27年 1月20日 拒絶理由通知
平成27年 3月13日 意見書・手続補正
平成27年 8月28日 拒絶査定(以下,「原査定」という)
平成27年11月27日 審判請求・手続補正
平成28年 9月28日 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という)
平成28年11月21日 意見書・手続補正

2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は,平成28年11月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものと認められる。
そして,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「光を受光するフォトダイオード部と,
前記フォトダイオード部の少なくとも一部と対向する第1のカラーフィルタと,前記第1のカラーフィルタと対向する前記第1のカラーフィルタと同色の第2のカラーフィルタと
を含む第1の単位画素と,
光を受光する前記フォトダイオード部と異なる他のフォトダイオード部と,
前記他のフォトダイオード部の少なくとも一部と対向する前記第1および第2のカラーフィルタと異色の第3のカラーフィルタと
を含む前記第1の単位画素に隣接する第2の単位画素とを備え,
前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタとは離間しており,かつ,それぞれ異なる分光透過率特性を有しており,
前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタがそれぞれ有する分光透過率特性の波形が近似する程度を示す類似度は,前記第1のカラーフィルタと前記第2の単位画素に含まれる前記第3のカラーフィルタがそれぞれ有する分光透過率特性の類似度よりも高く,前記第2のカラーフィルタと前記第2の単位画素に含まれる前記第3のカラーフィルタがそれぞれ有する分光透過率特性の類似度よりも高く,
前記第1の単位画素は,前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタを含むN枚のカラーフィルタを有し,
前記第2の単位画素は,前記第3のカラーフィルタを含むM枚のカラーフィルタを有し,
前記Nは2以上の整数値であり,前記Mは前記Nとは異なる1以上の整数値であり,かつ,前記Nは,前記Mより大きく,
前記第1の単位画素は,複数の色の単位画素からなる画素ユニットのうち最も数の多い色の単位画素であり,前記第2の単位画素は,前記第1の単位画素以外の色の単位画素である
撮像素子。」

3 原査定の理由の概要
引用文献1(特開2007-294552号公報)には,単位画素が第1のカラーフィルタの1枚のカラーフィルタを有する場合と,単位画素が第1のカラーフィルタと第2のカラーフィルタの2枚のカラーフィルタを有する場合が記載されている(段落[0025],[0083],[図4],[図16]等の記載を参照のこと。)。そして,引用文献1に記載されたものを組み合わせて,第1の単位画素に第1のカラーフィルタと第2のカラーフィルタからなる2枚のカラーフィルタを有し,第2の単位画素に第3のカラーフィルタからなる1枚のカラーフィルタを有する構成とすることは,当業者が適宜なし得たことである。
よって,本願発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,依然として,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 原査定の理由の判断
(1)引用文献1の記載及び引用発明1
ア 引用文献1には,図面と共に以下の記載がある。
(ア)「【0020】
[第1の実施の形態]
【0021】
図1は,本発明の第1の実施の形態による固体撮像装置1を示す概略構成図である。本実施の形態による固体撮像装置1は,CMOS型固体撮像装置として構成されている。もっとも,本発明はCCD型などの他の固体撮像装置にも適用可能である。
【0022】
図1に示すように,本実施の形態による固体撮像装置1は,一般的なCMOS型固体撮像装置と同様に,垂直走査回路2と,水平走査回路3と,2次元状に配置された複数の単位画素4と,読み出し回路5と,出力アンプ6とを有している。各画素4のフォトダイオード15(図1では図示せず。図2参照)が出力する電気信号が垂直走査回路2によって読み出し回路5に行単位で取り出され,水平走査回路3によって列単位で出力アンプ6を介して出力端子7に画像信号として出力されるようになっている。各画素4は,青色光を撮像するB画素,緑色光を撮像するG画素,赤色光を撮像するR画素としてそれぞれ割り当てられている。これらの配列としては,ベイヤー配列が採用されている。もっとも,これに限定されるものではなく,例えば,ストライプ配列等を採用してもよい。なお,各画素4を色毎に区別する場合には,B画素に符号4B,G画素に符号4G,R画素に符号4Rをそれぞれ付すものとする。なお,ここでは,RGB系の画素としたが,それに限られるものではなく,補色系の画素としてもよい。
【0023】
図2は,図1中の単位画素4を示す回路図である。各画素4は,図2に示すように,選択トランジスタ11と,ソースフォロアの増幅トランジスタ12と,リセットトランジスタ13と,転送トランジスタ14と,光電変換を行う受光部としてのフォトダイオード15とから構成されている。図2において,Vccは電源である。
・・・・
【0025】
図3は,本実施の形態による固体撮像装置1のB画素4B,G画素4G及びR画素4Rを示す概略断面図である。図3に示すように,B画素4B,G画素4G及びR画素4Rは,基本的に同一の構造を有しているが,後述する第1のカラーフィルタ47(47B,47G,47R)の波長選択特性は対応する色に合わせて異なっている。
・・・・
【0029】
本実施の形態では,層間絶縁膜39?42には,フォトダイオード15に対応する箇所において孔46が形成されている。各画素4B,4G,4Rにおいて,孔46の底部に第1のカラーフィルタ47B,47G,47Rがそれぞれ形成されている。これにより,第1のカラーフィルタ47B,47G,47Rが,各フォトダイオード15に対応するように基板31上にオンチップで形成されている。本実施の形態では,第1のカラーフィルタ47B,47G,47Rは,その上面が最下の配線層43の上面よりも低い位置に位置するように,形成されている。これにより,第1のカラーフィルタ47B,47G,47Rとフォトダイオード15との間の間隔は,大幅に狭くなっている。もっとも,本発明では,第1のカラーフィルタ47B,47G,47Rは,その上面が最上の配線層45の上面よりも低い位置に位置するように,形成すればよく,例えば,第1のカラーフィルタ47B,47G,47Rの上面が,配線層43の上面と配線層44の上面との間の高さ位置,あるいは,配線層44の上面と配線層45の上面との間の高さ位置に位置するように,形成してもよい。ただし,第1のカラーフィルタ47B,47G,47Rは,混色をより低減するためには,低い位置に配置するほど好ましい。
【0030】
カラーフィルタ47Bは,青色光を選択的に透過させる波長選択特性を有している。同様に,カラーフィルタ47G,47Rは,緑色光及び赤色光をそれぞれ選択的に透過させる波長選択特性を有している。
【0031】
本実施の形態では,第1のカラーフィルタ47B,47G,47Rは,有機系材料で単層膜として構成されており,例えば,顔料を含むフォトレジストで構成されている。
【0032】
図3に示すように,各画素4B,4G,4Rにおいて,カラーフィルタ47B,47G,47Rの上方には,シリコン酸化膜等からなる平坦化膜48を介してマイクロレンズ49が形成されている。孔46には,平坦化膜48が充填されている。
・・・・
【0034】
図4は,本実施の形態による固体撮像装置1の入射光の様子を示す概略断面図である。図4は,隣り合うG画素4G及びR画素4Rを示しており,図3に対応している。ただし,図4では,孔46の図示は省略している。ここでは,隣り合うG画素4G及びR画素4Rの例を挙げて入射光の様子を説明するが,いずれの画素についても同様である。」
(イ)「【0044】
[第2の実施の形態]
【0045】
図6は,本発明の第2の実施の形態による固体撮像装置のB画素4B,G画素4G及びR画素4Rを示す概略断面図である。図6において,図3中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し,その重複する説明は省略する。
【0046】
本実施の形態による固体撮像装置が第1の実施の形態による固体撮像装置1と異なる所は,各画素4B,4G,4Rにおいて,第1のカラーフィルタ47B,47G,47Bが,干渉効果による波長選択特性を持つように複数層からなる積層膜で構成されている点と,孔46は形成されずにその孔46に対応する箇所にも層間絶縁膜39?42が存在している点のみである。
【0047】
本実施の形態では,B画素4Bのカラーフィルタ47Bは,フォトダイオード15に対応するように厚さ50nmの熱酸化によるシリコン酸化膜37上に順次積層された,厚さ210nmのシリコン酸化膜51,厚さ90nmの酸化チタン膜52,厚さ90nmのシリコン酸化膜53,厚さ40nmの酸化チタン膜54,厚さ80nmのシリコン酸化膜55,及び,厚さ120nmの酸化チタン膜56を,有している。カラーフィルタ47Bは,これらの膜51?56と,厚さ50nmのシリコン酸化膜37とから構成されている。厚さ50nmのシリコン酸化膜37及び厚さ210nmのシリコン酸化膜51は,全体として,カラーフィルタ47Bの厚さ260nmの1層目のシリコン酸化膜を構成している。
【0048】
また,本実施の形態では,G画素4Gのカラーフィルタ47Gは,フォトダイオード15に対応するように厚さ50nmの熱酸化によるシリコン酸化膜37上に順次積層された,厚さ150nmのシリコン酸化膜61,厚さ40nmの酸化チタン膜62,厚さ90nmのシリコン酸化膜63,厚さ40nmの酸化チタン膜64,厚さ80nmのシリコン酸化膜65,及び,厚さ120nmの酸化チタン膜66を,有している。カラーフィルタ47Gは,これらの膜61?66と,厚さ50nmのシリコン酸化膜37とから構成されている。厚さ50nmのシリコン酸化膜37及び厚さ150nmのシリコン酸化膜61は,全体として,カラーフィルタ47Gの厚さ200nmの1層目のシリコン酸化膜を構成している。
【0049】
さらに,本実施の形態では,R画素4Rのカラーフィルタ47Rは,フォトダイオード15に対応するように厚さ50nmの熱酸化によるシリコン酸化膜37上に順次積層された,厚さ190nmのシリコン酸化膜71,厚さ40nmの酸化チタン膜72,厚さ90nmのシリコン酸化膜73,厚さ40nmの酸化チタン膜74,厚さ80nmのシリコン酸化膜75,及び,厚さ120nmの酸化チタン膜76を,有している。カラーフィルタ47Rは,これらの膜71?76と,厚さ50nmのシリコン酸化膜37とから構成されている。厚さ50nmのシリコン酸化膜37及び厚さ190nmのシリコン酸化膜71は,全体として,カラーフィルタ47Rの厚さ240nmの1層目のシリコン酸化膜を構成している。
【0050】
シリコン酸化膜の屈折率は約1.46であり,酸化チタン膜の屈折率は約2.30である。本実施の形態では,カラーフィルタ47B,47G,47Rは,高屈折率層すなわち酸化チタン膜を3層有して構成されている。このように低屈折率層と高屈折率層を積層すると光の干渉効果によってある波長域では透過率を高くすることができ,これにより波長選択が可能となる。さらに,その膜厚をそれぞれの色の画素4B,4G,4R毎に前述したように変えることによって,透過波長域を最適化している。前述した構成の各画素4B,4G,4Rのカラーフィルタ47B,47G,47Rの,シミュレーションにより得た波長選択特性を,図7に示す。各画素4B,4G,4Rのカラーフィルタ47B,47G,47Rは,R,G,Bそれぞれの波長領域で透過率が高くなり,必要な波長選択特性が実現されることがわかる。」
(ウ)「【0071】
[第3の実施の形態]
【0072】
図14は,本発明の第3の実施の形態による固体撮像装置のB画素4B,G画素4G及びR画素4Rを示す概略断面図である。図13において,図3中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し,その重複する説明は省略する。
【0073】
本実施の形態による固体撮像装置が第1の実施の形態による固体撮像装置1と異なる所は,各画素4B,4G,4Rにおいて,第1のカラーフィルタ47B,47G,47Bが,干渉効果による波長選択特性を持つように複数層からなる積層膜で構成されている点と,孔46は形成されずにその孔46に対応する箇所にも層間絶縁膜39?42が存在している点のみである。
【0074】
本実施の形態では,B画素4Bのカラーフィルタ47Bは,フォトダイオード15に対応するようにシリコン酸化膜からなる厚さ50nmの層間絶縁膜37上に順次積層された,厚さ50nmのシリコン酸化膜81,厚さ20nmの窒化シリコン膜82,厚さ20nmのシリコン酸化膜83,及び,厚さ60nmの窒化シリコン膜84を,有している。カラーフィルタ47Bは,これらの膜81?84と,厚さ50nmのシリコン酸化膜37とから構成されている。厚さ50nmのシリコン酸化膜37及び厚さ50nmのシリコン酸化膜51は,全体として,カラーフィルタ47Bの厚さ100nmの1層目のシリコン酸化膜を構成している。
【0075】
また,本実施の形態では,G画素4Gのカラーフィルタ47Gは,フォトダイオード15に対応するようにシリコン酸化膜からなる厚さ50nmの層間絶縁膜37上に順次積層された,厚さ140nmのシリコン酸化膜91,厚さ60nmの窒化シリコン膜92,厚さ50nmのシリコン酸化膜93,及び,厚さ60nmの窒化シリコン膜94を,有している。カラーフィルタ47Gは,これらの膜91?94と,厚さ50nmのシリコン酸化膜37とから構成されている。厚さ50nmのシリコン酸化膜37及び厚さ140nmのシリコン酸化膜91は,全体として,カラーフィルタ47Gの厚さ190nmの1層目のシリコン酸化膜を構成している。
【0076】
さらに,本実施の形態では,R画素4Rのカラーフィルタ47Rは,フォトダイオード15に対応するようにシリコン酸化膜からなる厚さ50nmの層間絶縁膜37上に順次積層された,厚さ170nmのシリコン酸化膜101,厚さ70nmの窒化シリコン膜102,厚さ80nmのシリコン酸化膜103,及び,厚さ40nmの窒化シリコン膜104を,有している。カラーフィルタ47Rは,これらの膜101?104と,厚さ50nmのシリコン酸化膜37とから構成されている。厚さ50nmのシリコン酸化膜37及び厚さ170nmのシリコン酸化膜101は,全体として,カラーフィルタ47Rの厚さ220nmの1層目のシリコン酸化膜を構成している。
【0077】
シリコン酸化膜の屈折率は約1.46であり,窒化シリコン膜の屈折率は約2.0である。本実施の形態では,カラーフィルタ47B,47G,47Rは,高屈折率層すなわち窒化シリコン膜を2層有して構成されている。前述した構成の各画素4B,4G,4Rのカラーフィルタ47B,47G,47Rの,シミュレーションにより得た波長選択特性を,図15に示す。各画素4B,4G,4Rのカラーフィルタ47B,47G,47Rは,R,G,Bそれぞれの波長領域で透過率が高くなり,必要な波長選択特性が実現されることがわかる。」
(エ)「【0080】
[第4の実施の形態]
【0081】
図16は,本発明の第4の実施の形態による固体撮像装置の入射光の様子を示す概略断面図であり,図4に対応している。図16において,図4中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し,その重複する説明は省略する。
【0082】
本実施の形態による固体撮像装置が前記第1の実施の形態による固体撮像装置1と異なる所は,以下に説明する点である。
【0083】
本実施の形態では,図16に示すように,各画素4G,4Rにおいて,第1のカラーフィルタ47G,47Rの上方において平坦化膜48上に,第2のカラーフィルタ247G,247Rがそれぞれ形成されている。カラーフィルタ247Gは緑色光を選択的に透過させる波長選択特性を有し,カラーフィルタ247Rは赤色光を選択的に透過させる波長選択特性を有している。マイクロレンズ49は,カラーフィルタ247G,247R上に,平坦化膜248を介して形成されている。なお,図面には示していないが,本実施の形態では,B画素4Bも,G画素4G及びR画素4Rと同様に構成されている。B画素4Bでは,第1のカラーフィルタ47Bの上方において平坦化膜48上に,青色光を選択的に透過させる波長選択特性を有するカラーフィルタ247B(図示せず)が形成されている。
【0084】
本実施の形態では,第2のカラーフィルタ247G,247R,247Bは,第1のカラーフィルタ47G,47R,47Bと同様に,有機系材料で単層膜として構成されている。もっとも,第2のカラーフィルタ247G,247R,247Bは,例えば,前記第2の実施の形態や前記第3の実施の形態における第1のカラーフィルタ47G,47R,47Bと同様に,干渉効果による波長選択特性を持つように複数層からなる積層膜で構成してもよい。
【0085】
本実施の形態では,前記第1の実施の形態と同じく第1のカラーフィルタ47G,47R,47Bを有しているので,基本的に前記第1の実施の形態と同様に,混色を低減することができる。
【0086】
そして,本実施の形態では,第2のカラーフィルタ247G,247R,247Bが追加されているので,前記第1の実施の形態に比べて空間解像度を高めることができるという利点も得られる。
【0087】
すなわち,本実施の形態では,図16に示すように,G画素4Gのマイクロレンズ49の端部付近に入射した光線Dについては,第2のカラーフィルタ247Gを透過してG光成分のみになって,配線層43,44で順次反射された後,R画素4Rの第1のカラーフィルタ47Rに入射する。したがって,第1のカラーフィルタ47RはR光を選択的に透過させG光成分を透過させないので,G光成分のみとなって第2のカラーフィルタ247Gに入射した光線Dは,第2のカラーフィルタ247を透過せずに,R画素4Rのフォトダイオード15へ入射しない。よって,本実施の形態では,G画素4Gに対する入射光線である光線Dは,いかなる成分もR画素4Rのフォトダイオードへ入射しない。このため,本実施の形態によれば,光線DのR光成分がR画素4Rのフォトダイオード15へ入射する前記第1の実施の形態に比べて,空間解像度を高めることができるのである。
【0088】
前記第1の実施の形態に対して第2のカラーフィルタ247G,247R,247Bを追加して本実施の形態を得たのと同様に,前記第2及び第3の実施の形態に対して第2のカラーフィルタ247G,247R,247Bを追加してもよい。」
(当審注.【0084】の「実施の形態では,第2のカラーフィルタ247G,247R,247Bは,第1のカラーフィルタ47G,247R,247Bと同様に,有機系材料で単層膜として構成されている。」は,「実施の形態では,第2のカラーフィルタ247G,247R,247Bは,第1のカラーフィルタ47G,47R,47Bと同様に,有機系材料で単層膜として構成されている。」の誤記と認める。
また,【0084】の「第2のカラーフィルタ247G,247R,247Bは,例えば,前記第2の実施の形態や前記第3の実施の形態における第1のカラーフィルタ47G,247R,247Bと同様に,干渉効果による波長選択特性を持つように複数層からなる積層膜で構成してもよい。」は,「第2のカラーフィルタ247G,247R,247Bは,例えば,前記第2の実施の形態や前記第3の実施の形態における第1のカラーフィルタ47G,47R,47Bと同様に,干渉効果による波長選択特性を持つように複数層からなる積層膜で構成してもよい。」の誤記と認める。)
(オ)上記(ア)の【0021】乃至【0023】並びに図1,2より,複数のフォトダイオード15を有する固体撮像装置が記載されており,固体撮像装置に形成されるフォトダイオード15は光を受光することは自明である。
(カ)図16には,G画素4Gにおいて,第1のカラーフィルタ47Gがフォトダイオード15と対向し,第2のカラーフィルタ247Gが第1のカラーフィルタ47Gと対向していることが記載され,R画素4Rにおいて,第1のカラーフィルタ47Rがフォトダイオード15と対向し,第2のカラーフィルタ247Rが第1のカラーフィルタ47Rと対向していることが記載されている。
(キ)図16には,G画素4Gにおいて,第1のカラーフィルタ47Gと第2のカラーフィルタ247Gが離間し,R画素4Rにおいて,第1のカラーフィルタ47Rと第2のカラーフィルタ247Rが離間していることが記載されている。
(ク)上記(ア)の【0034】及び図16には,G画素4GとR画素4Rが隣接していることが記載されている。
(ケ)上記(ア)の【0030】及び上記(エ)の【0083】より,G画素4Gにおいて,第1のカラーフィルタ47G及び第2のカラーフィルタ247Gは緑色光を選択的に透過させる波長選択特性を有し,R画素4Rにおいて,第1のカラーフィルタ47R及び第2のカラーフィルタ247Rは赤色光を選択的に透過させる波長選択特性を有することが記載されている。
そうすると,「G画素4Gに含まれる第1のカラーフィルタ47Gと第2のカラーフィルタ247Gがそれぞれ有する分光透過率特性の波形が近似する程度を示す類似度は,G画素4Gに含まれる第1のカラーフィルタ47GとR画素4Rに含まれる第1のカラーフィルタ47Rがそれぞれ有する分光透過率特性の類似度よりも高く,G画素4Gに含まれる第2のカラーフィルタ247GとR画素4Rに含まれる第1のカラーフィルタ47Rがそれぞれ有する分光透過率特性の類似度よりも高い」ことは自明である。
(コ) 上記(カ)より,G画素4Gは,第1のカラーフィルタ47Gと第2のカラーフィルタ247Gを有し,R画素4Rは,第1のカラーフィルタ47Rと第2のカラーフィルタ247Rを有することは明らかである。
イ 引用発明1
引用文献1には以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「光を受光するフォトダイオード15と,フォトダイオード15と対向する緑色光を選択的に透過させる波長選択特性を有している第1のカラーフィルタ47Gと,第1のカラーフィルタ47Gと対向する緑色光を選択的に透過させる波長選択特性を有する第2のカラーフィルタ247Gを含むG画素4Gと,
光を受光するフォトダイオード15と,フォトダイオード15と対向する赤色光を選択的に透過させる波長選択特性を有している第1のカラーフィルタ47Rと,第1のカラーフィルタ47Rと対向する赤色光を選択的に透過させる波長選択特性を有する第2のカラーフィルタ247Rを含む,G画素4Gに隣接しているR画素4Rとを備え,
第1のカラーフィルタ47Gと第2のカラーフィルタ247Gは離間し,
第1のカラーフィルタ47Rと第2のカラーフィルタ247Rは離間し,
G画素4Gに含まれる第1のカラーフィルタ47Gと第2のカラーフィルタ247Gがそれぞれ有する分光透過率特性の波形が近似する程度を示す類似度は,G画素4Gに含まれる第1のカラーフィルタ47GとR画素4Rに含まれる第1のカラーフィルタ47Rがそれぞれ有する分光透過率特性の類似度よりも高く,G画素4Gに含まれる第2のカラーフィルタ247GとR画素4Rに含まれる第1のカラーフィルタ47Rがそれぞれ有する分光透過率特性の類似度よりも高く,
G画素4Gは,第1のカラーフィルタ47Gと第2のカラーフィルタ247Gを有し,
R画素4Rは,第1のカラーフィルタ47Rと第2のカラーフィルタ247Rを有する
固体撮像装置。」
(2)本願発明と引用発明1との対比
ア 引用発明1の「G画素4G」,「第1のカラーフィルタ47G」,「第2のカラーフィルタ247G」及び「『G画素4G』の『フォトダイオード15』」は,それぞれ,本願発明の「第1の単位画素」,「第1のカラーフィルタ」,「第2のカラーフィルタ」,「『第1の単位画素』の『フォトダイオード部』」に相当する。
イ 引用発明1の「R画素4R」,「第1のカラーフィルタ47R」及び「『R画素4R』の『フォトダイオード15』」は,それぞれ,本願発明の「第2の単位画素」,「第3のカラーフィルタ」,「『第2の単位画素』の『他のフォトダイオード部』」に相当する。
ウ 以上より,本願発明と引用発明1とは下記エの点で一致し,下記オの点で相違すると認められる。
エ 一致点
「光を受光するフォトダイオード部と,
前記フォトダイオード部の少なくとも一部と対向する第1のカラーフィルタと,前記第1のカラーフィルタと対向する前記第1のカラーフィルタと同色の第2のカラーフィルタと
を含む第1の単位画素と,
光を受光する前記フォトダイオード部と異なる他のフォトダイオード部と,
前記他のフォトダイオード部の少なくとも一部と対向する前記第1および第2のカラーフィルタと異色の第3のカラーフィルタと
を含む前記第1の単位画素に隣接する第2の単位画素とを備え,
前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタとは離間しており,
前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタがそれぞれ有する分光透過率特性の波形が近似する程度を示す類似度は,前記第1のカラーフィルタと前記第2の単位画素に含まれる前記第3のカラーフィルタがそれぞれ有する分光透過率特性の類似度よりも高く,前記第2のカラーフィルタと前記第2の単位画素に含まれる前記第3のカラーフィルタがそれぞれ有する分光透過率特性の類似度よりも高い,
撮像素子。」
オ 相違点
(ア)相違点1
本願発明は,「前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタ」とは,「それぞれ異なる分光透過率特性を有して」いることが特定しているのに対し,引用発明1は,「第1のカラーフィルタ47G」(本願発明の「第1のカラーフィルタ」に相当)及び「第2のカラーフィルタ247G」(本願発明の「第2のカラーフィルタ」に相当)がそれぞれ異なる分光透過率特性を有していることについて特定していない点。
(イ)相違点2
本願発明は,「前記第1の単位画素は,前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタを含むN枚のカラーフィルタを有し,前記第2の単位画素は,前記第3のカラーフィルタを含むM枚のカラーフィルタを有し,前記Nは2以上の整数値であり,前記Mは前記Nとは異なる1以上の整数値であり,かつ,前記Nは,前記Mより大きく,前記第1の単位画素は,複数の色の単位画素からなる画素ユニットのうち最も数の多い色の単位画素であり,前記第2の単位画素は,前記第1の単位画素以外の色の単位画素である」と特定しているのに対し,引用発明1は,「G画素4Gは,第1のカラーフィルタ47Gと第2のカラーフィルタ247Gを有し,R画素4Rは,第1のカラーフィルタ47Rと第2のカラーフィルタ247Rを有する」ことが特定されており,「G画素4G」と「R画素4R」のカラーフィルタが共に2枚であることを特定している点。
(3)相違点の検討
ア 相違点1について
前記(1)ア(ア)及び同(エ)より,引用文献1には,G画素4Gの第1のカラーフィルタ47Gは有機系材料で単層膜として構成され,G画素4Gの第2カラーフィルタ247Gは,干渉効果による波長選択特性を持つように複数層からなる積層膜で構成されていることが記載されていると認められる。
ところで,有機系材料の単層膜から構成されるカラーフィルタと,干渉効果を利用した積層膜から構成されるカラーフィルタとでは,同色であっても分光透過率特性を完全に一致させることはできないことは,本願出願日前の技術常識である。
そうすると,引用発明1において,G画素4Gの第1のカラーフィルタ47Gと第2カラーフィルタ247Gは異なる分光透過率特性を有していると認められる。
したがって,相違点1に係る構成は,引用発明1も備えているから,相違点1は実質的な相違点ではない。
イ 相違点2について
引用発明1では,「G画素4G」と「R画素4R」のカラーフィルタが共に2枚であることを特定しており,前記(1)ア(ア)より,引用文献1(特に【0025】及び図4参照)には,「G画素4G」と「R画素4R」のカラーフィルタが共に1枚であることが記載されていると認められる。
しかし,両者を組み合わせることは引用文献1には記載も示唆もされていないし,さらに,両者を組み合わせるにあたり,ベイヤー配列を前提とした(前記(1)ア(ア)【0022】)上で,G画素のカラーフィルタの方を2枚にして「前記第1の単位画素は,複数の色の単位画素からなる画素ユニットのうち最も数の多い色の単位画素であり,前記第2の単位画素は,前記第1の単位画素以外の色の単位画素である」ようにすることは,引用文献1には,記載も示唆もされていない。
そして,本願発明は相違点2に係る構成を有することにより,コストを抑制しつつ,混色の量とコストの関係とのバランスが得られる(本願明細書段落【0106】)という有利な効果を奏するものとなる。
(4)小括
したがって,本願発明は,引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(5)請求項2ないし8について
本願の請求項2ないし8に係る発明は,本願発明の発明特定事項をすべて含みさらに別の発明特定事項を付加したものに相当するから,本願発明が前記(4)のとおり,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上,請求項2ないし8に係る発明も同様の理由で,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(6)まとめ
よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

5 当審拒絶理由について
(1)当審拒絶理由の概要
本願発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
引 用 文 献 等 一 覧
引用文献1 特開2007-294552号公報
引用文献2 特開2010-258104号公報
引用文献3 米国特許出願公開第2008/0090323号明細書
引用発明1には,「G画素4G」と「R画素4R」のカラーフィルタが共に2枚であることを特定しており,引用文献1(特に【0025】及び図4参照)には,「G画素4G」と「R画素4R」のカラーフィルタが共に1枚であることが記載されていると認められる。また,引用文献2及び3より「ある画素のカラーフィルタと他の画素のカラーフィルタが異なる枚数である撮像素子」が周知技術であることを考慮すると,G画素4Gのカラーフィルタの枚数とR画素4Rのカラーフィルタの枚数を異ならせることは当業者が適宜なし得たことである。
以上のとおりであるから,本願発明は,引用文献1に記載の発明並びに引用文献2及び3にみられる周知技術より,当業者が容易に成し得ることである。
(2)引用発明1
前記4(1)のとおり,引用文献1には引用発明1が記載されていると認められる。
(3)周知技術
ア 引用文献2
引用文献2には,図面とともに以下の記載がある。
(ア)「【0063】
(実施の形態2)
図6は,本実施の形態に係る固体撮像素子200の構造を示す断面図である。
【0064】
この固体撮像素子200は,色フィルタが透明材料202を含むという点で実施の形態1の固体撮像素子100と異なる。固体撮像素子200は,p型Si基板101,複数の受光部102,層間絶縁膜103,配線層104,複数の色フィルタ,平坦化膜106,及び集光素子107より構成されている。
【0065】
色フィルタは,複数の受光部102のそれぞれの上に配置されている。複数の色フィルタは,第1の色フィルタ108,第2の色フィルタ109,第3の色フィルタ112,及び透明材料202とを含む。第3の色フィルタ112は,色フィルタ111及び110から構成される。
【0066】
透明材料202は第1の色フィルタ108,第2の色フィルタ109及び色フィルタ111上に形成され,透明材料202上に色フィルタ110が形成されている。透明材料202は例えばSiO_(2),SiN及びTiO_(2)等から構成される。
【0067】
図7A?図7Eは,本実施の形態に係る固体撮像素子200の色フィルタの製造方法を説明するための断面図である。
【0068】
まず,通常の半導体プロセスを用いて,p型Si基板101に,受光部102,層間絶縁膜103及び配線層104を形成する。
【0069】
次に,図7Aに示すように,スピンオン法151でマゼンダ色素を含むネガ型の顔料が分散された溶液152が層間絶縁膜103表面に塗布され,リソグラフィー153により溶液152の所望の領域のみが硬化される。その後,溶液152に対してTMAH溶液等でウェットエッチングが行われ,色フィルタ111が形成される。
【0070】
次に,図7Bに示すように,スピンオン法151で緑色素を含むネガ型の顔料が分散された溶液155が層間絶縁膜103表面に塗布され,リソグラフィー153により溶液155の所望の領域のみが硬化される。その後,溶液155に対してTMAH溶液等でウェットエッチングが行われ,第2の色フィルタ109が形成される。ここで,図7Aの工程で形成されている色フィルタ111は既に硬化しているため,ウェットエッチングの影響を受けない。
【0071】
次に,図7Cに示すように,スピンオン法151で青色素を含むネガ型の顔料が分散された溶液156が層間絶縁膜103表面に塗布され,リソグラフィー153により溶液156の所望の領域のみが硬化される。その後,溶液156に対してTMAH溶液等でウェットエッチングが行われ,第1の色フィルタ108が形成される。ここで,図7Bの工程で形成されている第2の色フィルタ109は既に硬化しているため,ウェットエッチングの影響を受けない。
【0072】
次に,図7Dに示すように,例えばSiO_(2)から構成される透明材料202がCVD法で第1の色フィルタ108,第2の色フィルタ109及び色フィルタ111上に成膜され,CMPにより平坦化される。
【0073】
最後に,図7Eに示すように,スピンオン法151で赤色素を含むネガ型の顔料が分散された溶液157がp型Si基板101表面に塗布され,リソグラフィー153により溶液157の所望の領域のみが硬化される。その後,溶液157に対してTMAH溶液等でウェットエッチング154が行われ,色フィルタ110が形成される。
【0074】
なお,本実施の形態に係る固体撮像素子200の製造工程では,色フィルタを構成する材料としてネガ型の顔料カラーレジストを仮定しているが,ポジ型の顔料カラーレジストでも構わない。また,第1の色フィルタ108,第2の色フィルタ109及び第3の色フィルタ112の形成工程の順番を変更しても問題ない。
【0075】
以上のように本実施の形態に係る固体撮像素子200によれば,第3の色フィルタ112を構成する色フィルタ110と色フィルタ111との間に透明材料202が設けられる
。従って,色フィルタ110と色フィルタ111との界面で生じうる光学的な干渉又は物理的な干渉を抑制することができ,第3の色フィルタ112において所望の分光特性をより忠実に再現することが可能となる。また,色フィルタ110が形成される際に,透明材料202により下地が平坦化されているため,色フィルタ110の形成プロセスが容易となる。」
(イ)図6には,第1の色フィルタ108と受光部102が対向し,色フィルタ111及び110と受光部102が対向することが記載されている。
イ 引用文献3
引用文献3には,図面とともに以下の記載がある。
(ア)「[0039] The color filter of the image sensor of the present invention is disposed in the dielectric layer below the passivation layer. Compared with the color filter being disposed above the passivation layer in the conventional art, the color filter of the image sensor of the present invention is near the photodiode doped regions, thus having a high optical performance and alleviating the cross-talk phenomenon. Several embodiments are described below to illustrate the implementation configuration of the present invention in detail. In the following embodiments, the color filter can be color filters of the same color or color filters of different colors.
[0040]Referring to FIG. 1 , an image sensor 10 of an embodiment of the present invention is, for example, a CMOS image sensor or a contact image sensor, but is not limited to this. The image sensor 10 includes photodiode doped regions 104 , a dielectric layer 106 , color filters 108 and a passivation layer 110 ....」
(訳:【0039】本発明のイメージセンサのカラーフィルタは,保護層の下の誘電体層の中に配置される。従来技術の保護膜の上に配置されるカラーフィルタと比較して,本発明のイメージセンサのカラーフィルタはフォトダイオードのドープされた領域に近く,よって,光学的に高効率で,混色現象を軽減する。本発明の実装上の構成を詳述するために,以下,いくつかの実施例が記述される。下記の実施例では,カラーフィルタは同色又は異色のカラーフィルタであり得る。
【0040】図1を参照して,本発明の実施例のイメージセンサ10は,例えば,CMOSイメージセンサ又は,接触型イメージセンサであるが,これに限られない。イメージセンサ10はフォトダイオードのドープされた領域104,誘電体層106,カラーフィルタ108及び保護層110を含む。・・・)
(イ)「[0045] Referring to FIG. 5 , generally speaking, the thickness of the color filters can be up to 1-2 #m, and the thickness of the first dielectric layer 106 a in the dielectric layer 106 is less than 1 #m. During the process, after the color filters and the first dielectric layer 106 a are formed, the color filters 108 b rise above the surface of the first dielectric layer 106 a, such that the subsequently formed second dielectric layer 106 b obviously has a rough surface. Referring to FIG. 6 , according to the practical requirements, the color filters 108 b of FIG. 6 can be divided into two parts 108 ba, and 108 bb as shown in FIG. 6 , or can be divided into more parts, so as to achieve the same filtering effect.」
(訳:【0045】図5を参照して,一般的に,カラーフィルタの厚さは1?2μmまでであり得て,誘電体層106中の第1の誘電体層106aの厚さは1μmより小さい。製造工程において,カラーフィルターと第2の誘電体層106aが形成された後,カラーフィルタ108bは第1の誘電体層106bの上に盛り上がり,よって,次に形成される第2の誘電体層106bは明らかに段差のある表面を持つことになる。図6を参照して,実装上の要求により,図6のカラーフィルタ108bは,同一のフィルタ特性を得るように,図6に示されるように2つの部分108baと108bbに分割され,又はより多くの部分に分割され得る。)
(ウ)「[0051] In the above-mentioned fabricating method of FIG. 8 , if the thickness of color filters 708 a, and 708 b (indicated by dashed line) is larger than the thickness of dielectric layers 706 a, and 706 b, the subsequently formed dielectric layers 706 b, and 706 c obviously have a rough surface. If the roughness causes problems in lithography, according to the practical requirements, the color filters 708 a and 708 b of FIG. 8 are respectively divided into two parts 708 aa, 708 ab and 708 ba, 708 bb, as shown in FIG. 9 , or are respectively divided into more parts, so as to achieve the same filtering effect.」
(訳:【0051】図8の上述の製造方法において,カラーフィルタ708a及び708bの厚さ(破線で示される。)が,誘電体層706a及び706bの厚さより大きく,結果として形成される誘電体層706bと706cが明らかに段差のある表面を有する。この段差がリソグラフィにおいて問題を起こすのならば,実装上の要求により,同一のフィルター特性を得るために,図8のカラーフィルタ708a及び708bは,それぞれ,図9に示されるような2つの部分708aa,708ab及び708ba,708bbに分割され,又は,それぞれそれ以上の部分に分割される。)
(エ)図6には,カラーフィルタ108aにフォトダイオード104が対向し,カラーフィルタ108ba及び108bbがフォトダイオード104に対向すること,が記載されている。
(オ)図9には,カラーフィルタ708aa及び708abにフォトダイオード104が対向し,カラーフィルタ708cにフォトダイオード104が対向することが記載されている。
ウ 周知技術
前記ア及びイから,以下の事項は周知技術と認められる。
「ある画素のカラーフィルタと他の画素のカラーフィルタが異なる枚数である撮像素子。」
(4)本願発明と引用発明1との対比
前記4(2)のとおり,本願発明と引用発明1とは下記ア及びイの点で相違するが,その余の点で一致すると認められる。
ア 相違点1
本願発明は,「前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタ」とは,「それぞれ異なる分光透過率特性を有して」いることが特定しているのに対し,引用発明1は,「第1のカラーフィルタ47G」(本願発明の「第1のカラーフィルタ」に相当)及び「第2のカラーフィルタ247G」(本願発明の「第2のカラーフィルタ」に相当)がそれぞれ異なる分光透過率特性を有していることについて特定していない点。
イ 相違点2
本願発明は,「前記第1の単位画素は,前記第1のカラーフィルタと前記第2のカラーフィルタを含むN枚のカラーフィルタを有し,前記第2の単位画素は,前記第3のカラーフィルタを含むM枚のカラーフィルタを有し,前記Nは2以上の整数値であり,前記Mは前記Nとは異なる1以上の整数値であり,かつ,前記Nは,前記Mより大きく,前記第1の単位画素は,複数の色の単位画素からなる画素ユニットのうち最も数の多い色の単位画素であり,前記第2の単位画素は,前記第1の単位画素以外の色の単位画素である」と特定しているのに対し,引用発明1は,「G画素4Gは,第1のカラーフィルタ47Gと第2のカラーフィルタ247Gを有し,R画素4Rは,第1のカラーフィルタ47Rと第2のカラーフィルタ247Rを有する」ことが特定されており,「G画素4G」と「R画素4R」のカラーフィルタが共に2枚であることを特定している点。
(5)相違点の検討
ア 相違点1について
前記4(1)ア(ア)及び同(エ)より,引用文献1には,G画素4Gの第1のカラーフィルタ47Gは有機系材料で単層膜として構成され,G画素4Gの第2カラーフィルタ247Gは,干渉効果による波長選択特性を持つように複数層からなる積層膜で構成されていることが記載されていると認められる。
ところで,有機系材料の単層膜から構成されるカラーフィルタと,干渉効果を利用した積層膜から構成されるカラーフィルタとでは,同色であっても分光透過率特性を完全に一致させることはできないことは,本願出願日前の技術常識である。
そうすると,引用発明1において,G画素4Gの第1のカラーフィルタ47Gと第2カラーフィルタ247Gは異なる分光透過率特性を有していると認められる。
したがって,相違点1に係る構成は,引用発明1も備えているから,相違点1は実質的な相違点ではない。
イ 相違点2について
引用発明1には,「G画素4G」と「R画素4R」のカラーフィルタが共に2枚であることを特定しており,前記4(1)ア(ア)より,引用文献1(特に【0025】及び図4参照)には,「G画素4G」と「R画素4R」のカラーフィルタが共に1枚であることが記載されていると認められる。
しかし,両者を組み合わせるにあたり,ベイヤー配列を前提とした(前記(1)ア(ア)【0022】)上で,G画素のカラーフィルタの方を2枚にして「前記第1の単位画素は,複数の色の単位画素からなる画素ユニットのうち最も数の多い色の単位画素であり,前記第2の単位画素は,前記第1の単位画素以外の色の単位画素である」ようにすることは,引用文献1及び周知技術には,記載も示唆もされていない。
そして,本願発明は相違点2に係る構成を有することにより,コストを抑制しつつ,混色の量とコストの関係とのバランスが得られる(本願明細書段落【0106】)という有利な効果を奏するものとなる。
(6)小括
したがって,本願発明は,引用発明1及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(7)請求項2ないし8について
本願の請求項2ないし8に係る発明は,本願発明の発明特定事項をすべて含みさらに別の発明特定事項を付加したものに相当するから,本願発明が前記(6)のとおり,引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上,請求項2ないし8に係る発明も同様の理由で,引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(8)まとめ
したがって,当審拒絶理由は解消した。

7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-04 
出願番号 特願2011-166382(P2011-166382)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田邊 顕人小山 満今井 聖和  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 小田 浩
飯田 清司
発明の名称 撮像素子およびその製造方法  
代理人 西川 孝  
代理人 稲本 義雄  

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