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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1323225
審判番号 不服2014-25658  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-16 
確定日 2016-12-28 
事件の表示 特願2010-142058「非等長コンタクトを用いた電気的にプログラム可能なヒューズ及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月13日出願公開,特開2011- 9745〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成22年6月22日(パリ条約による優先権主張2009年6月29日,アメリカ合衆国)の出願であって,平成26年2月6日付けで拒絶理由が通知され,同年4月25日に意見書と手続補正書が提出され,同年8月11日付けで拒絶査定がされ,同年12月16日に前記拒絶査定に対する不服審判が請求され,平成28年2月4日付けで当審から拒絶理由を通知し,同年5月6日に意見書と手続補正書が提出されたものである。

2 当審拒絶理由通知の概要
平成28年2月4日付けで当審から通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由通知」という。)の概要は,次のとおりである。

「1 本件出願は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第4項第1号,第6項第1号,第2号に規定する要件を満たしていない。

<途中省略>

(3)<サポート要件について>
請求項1-3に記載された発明は,いずれも「前記アノード及びカソード・コンタクト領域の幅が,前記電気的にプログラム可能なヒューズの電流の流れ方向における各々の非等長コンタクトの長さより短く」,「Wf<Wc<3Wf」,「2<Lc/Wc<10」ことを発明特定事項とする発明であるといえる。

一方,発明の詳細な説明の記載から,本願発明が解決しようとする課題は,「プログラミング電流を流したときに生じるコンタクトの温度の上昇」,「大型の対称コンタクトを用いることにより生じる,系の熱容量(thermal mass)の増大」,及び,「大きなコンタクト端子領域による熱容量の増大」であり,これらの課題を解決することにより,「高いプログラミング電流が必要とされず,コンタクトの劣化のリスクが抑制される」という効果を得ようとするものであると理解できる。

しかしながら,「プログラミング電流を流したときに生じるコンタクトの温度の上昇」,「コンタクトを用いることにより生じる,系の熱容量(thermal mass)」,及び,「コンタクト端子領域による熱容量」は,「前記アノード及びカソード・コンタクト領域の幅が,前記電気的にプログラム可能なヒューズの電流の流れ方向における各々の非等長コンタクトの長さより短く」,「Wf<Wc<3Wf」,「2<Lc/Wc<10」という条件だけでは一義的には定まらず,前記条件の他に,コンタクトを構成する材料の種類,電流密度,コンタクトとシリサイドとの界面の接触抵抗,シリサイドの種類,コンタクトの面積の大きさの絶対値,コンタクト端子領域の面積,コンタクトの位置(ヒューズリンクの端部からコンタクトまでの距離,横並びで配列されるコンタクトの相互の距離)等の種々の条件が影響することは明らかといえる。

そうすると,出願時の技術常識に照らしても,請求項に係る発明の範囲まで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできないから,請求項1-3に記載された特許を受けようとする発明は,発明の詳細な説明に記載されたものであるとは認めることはできない。

<以下,省略> 」

3 当審の判断
(1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である(知財高判平成17年11月11日(平成17年(行ケ)10042号)「偏光フィルムの製造法」大合議判決を参照。) 。
以下,上記の観点に立って,本件のサポート要件について検討する。

(2)本願の特許請求の範囲の記載について
本願の請求項1ないし3に係る発明は,平成28年5月6日に提出された手続補正書により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されている事項により特定されるとおりのものであって,そのうちの請求項1に記載された発明(以下「本願発明1」という。)は,以下のとおりのものである。

「【請求項1】
上にシリサイド層を有するポリシリコン層から形成された,アノード・コンタクト領域及びカソード・コンタクト領域と,
前記カソード・コンタクト領域と前記アノード・コンタクト領域とを導電的に接続するヒューズリンクであって,プログラミング電流を印加することによってプログラム可能なヒューズリンクと,
前記カソード・コンタクト領域及び前記アノード・コンタクト領域の前記シリサイド層上にそれぞれ所定の構成で形成された複数の非等長コンタクトと,
を含む,電気的にプログラム可能なヒューズであり,
前記非等長コンタクトは,前記カソード・コンタクト領域および前記アノード・コンタクト領域に対して直交し,電流の流れ方向に対して横並びの配列で形成され,
前記アノード及びカソード・コンタクト領域の幅が,前記電気的にプログラム可能なヒューズの電流の流れ方向における各々の非等長コンタクトの長さより短く,
前記ヒューズリンクの幅をWf,前記非等長コンタクトの幅及び長さをそれぞれWc及びLcとすると,Wf<Wc<3Wf,かつ2<Lc/Wc<10である,
電気的にプログラム可能なヒューズ。」

(3)本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明について
ア 本願明細書の発明の詳細な説明には,以下の事項が記載されている。(なお,下線は,当審において付与したものである。)
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は,電気的にプログラム可能なヒューズに関し,特に非等長(anisometric)コンタクトを含む電気的にプログラム可能なヒューズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的にプログラム可能なヒューズは,半導体産業における多くの先進技術に使用されてきた。これらのヒューズは,アレイの冗長性の実装,フィールド・プログラマブル・アレイ及びイン・チップIDのような種々の集積回路用途,並びにアナログ・トリミング回路のために利用されている。これらのヒューズは,例えば,データを集積回路上に格納すること,回路上のコンポーネントを調整すること,又は回路上の論理をプログラムすることのためにプログラムすることができる。典型的な電気的にプログラム可能なヒューズにおいて,コンタクトは,印刷及びコンタクト処理の最適化をより容易にするために対称的に位置決めされる。対称的という用語は,コンタクトの数,及び主として正方形(すなわち,対称)のコンタクトの形状のことを指す。従来のヒューズはさらに,典型的には,コンタクトのための実際のヒューズリンク幅の数倍もの大きな端子領域(landing region)を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のヒューズにおけるコンタクトに付随する幾つかの問題がある。例えば,プログラミング電流を流したときのエレクトロマイグレーションの間に,発熱がヒューズリンクの中央部に限定されずにその代わりコンタクトの温度が上昇することによって,コンタクトの劣化が引き起こされる可能性があり,そのことにより,ヒューズがプログラムされた状態を維持できないことがある。大型の対称コンタクトを用いると,コンタクトの劣化の問題は解決されるが,系の熱容量(thermal mass)が増大することにより,非常に大きなプログラミング電流が必要とされる。従来のヒューズの大きなコンタクト端子領域も熱容量に寄与するので,高いプログラミング電流を必要とし,コンタクトの劣化のリスクを増大させる。」

(イ)「【0012】
ここで,より詳細に図面を参照すると,図1及び図2は,それぞれ,従来の電気的にプログラム可能なヒューズ20及び30を示していることがわかる。図1において,従来の電気的にプログラム可能なヒューズ20は,3×3配列で位置決めされた対称コンタクト25のアレイを含み,図2において,従来の電気的にプログラム可能なヒューズ30は,2×1配列で位置決めされた対称コンタクト35のアレイを含む。図1及び図2でわかるように,コンタクト25及び35がそれぞれ形成されるコンタクト領域は,コンタクトの加工のために大きな面積を有する。従来の電気的にプログラム可能なヒューズに付随する1つの問題は,プログラミング電流がヒューズに印加され,熱がコンタクトに加えられたときの,エレクトロマイグレーションの間のコンタクトの劣化の可能性である。」

(ウ)「【0014】
図4に,本発明の好ましい実施形態による電気的にプログラム可能なヒューズ100が示される。電気的にプログラム可能なヒューズ100は,アノード・コンタクト領域110と,カソード・コンタクト領域118と,カソード・コンタクト領域118とアノード・コンタクト領域110とを導電的に接続するヒューズリンク116とを含む。ヒューズリンク116は,プログラミング電流を印加することによってプログラム可能である。電気的にプログラム可能なヒューズ100は,アノード及びカソード・コンタクト領域110及び118上にそれぞれ位置決めされた複数の非等長コンタクト120を含む。本発明の好ましい実施形態によれば,「非等長」とは,一方向におけるコンタクトの寸法が他の方向におけるコンタクト120の寸法に等しくないことをいう(例えば,コンタクト120の幅は,コンタクト120の長さに等しくない)。金属層125は,アノード及びカソード・コンタクト領域110及び118に接触する。図4にさらに示されるように,Wfは,ヒューズリンク116の幅を表し,Lcは,各コンタクト120の長い方の寸法を表し,Wcは,各コンタクト120の短い方の寸法を表す。本発明の好ましい実施形態によれば,Wf<Wc<3Wf,かつ2<Lc/Wc<10である。コンタクト長Lcは,コンタクト幅Wcより大きい。コンタクト120間の距離は,コンタクト幅Wcより大きい。本発明の好ましい実施形態によれば,Wfは,所与の技術における公称ゲート長に等しく,およそ22nmからおよそ350nmまでの範囲にわたることができる。例えば,所与の技術ノードについて,Wf=45nmとすると,Wcは,およそ60nmから135nmまでの範囲にわたり,Lcは,およそ120nmから300nmまでの範囲にわたる。図4に示されるように,本発明の好ましい実施形態によれば,非等長コンタクト120は,アノード及びカソード・コンタクト領域110及び118上にそれぞれ1×2配列のような横並びの配列で位置合わせされた,一対の非等長コンタクトを含む。本発明の実施形態によれば,アノード及びカソード・コンタクト領域110及び118の幅は,電気的にプログラム可能なヒューズ100の電流の流れ方向における各々の非等長コンタクト120の長さより短い。別の実施形態によれば,コンタクト120は,アノード及びカソード・コンタクト領域110及び118に対して直交するように位置合わせされてもよい(例えば,図7に示されるように)。本発明は,いかなる特定の配列及びコンタクトの数にも限定されず,適宜,変えることができる。非等長コンタクトの配列の代替的な実施形態は,図6及び図7を参照して後述する。ヒューズ100は非等長コンタクト120を含むので,プログラミング電流をヒューズに印加したときに,非等長コンタクト120は,匹敵する大きさの対称コンタクトほどには加熱されない。対称コンタクトの場合とは対照的に,非等長コンタクトは,熱容量の大部分をヒューズリンク116から遠い方に配置するので,その結果,コンタクト界面における温度がより低くなり,そのことによってコンタクト120におけるライナ材料の破壊並びにコンタクト領域110及び118の劣化が防止される。こうした劣化は,典型的にはヒューズリンク116内への銅の拡散をもたらし,ヒューズ100の故障を引き起こす。」

(エ)「【0016】
上述のように,本発明は図4及び図5に示される構成に限定されるものではなく,ここで図6,図7及び図8を参照して,その構成の代替的な実施形態を説明する。図6に示されるように,電気的にプログラム可能なヒューズ300は,アノード・コンタクト領域305と,カソード・コンタクト領域310と,複数の非等長コンタクト315と,ヒューズリンク320とを含む。この実施形態において示されるように,コンタクト315は,互いに隣接して2×1配列で位置決めされ,アノード及びカソード・コンタクト領域305及び310は,図4に示されているものと比べて幅広になっている。このように,本発明の1つの実施形態によれば,コンタクト315は,n×1配列とすることができ,ここで,nは1より大きい。図7は,本発明のさらに別の実施形態による電気的にプログラム可能なヒューズ350を示す。図7に示されるように,電気的にプログラム可能なヒューズ350は,アノード・コンタクト領域355と,カソード・コンタクト領域360と,複数の非等長コンタクト365と,ヒューズリンク370とを含む。この実施形態において,コンタクト365は,縦方向に(すなわち,アノード及びカソード・コンタクト領域355及び360と直交して)位置決めされる。アノード及びカソード・コンタクト領域355及び360は,図4に示されているものと同じ多い大きさである。図8は,本発明のさらに別の実施形態による電気的にプログラム可能なヒューズ400を示す。図8に示されるように,電気的にプログラム可能なヒューズ400は,アノード・コンタクト領域455と,カソード・コンタクト領域460と,カソード・コンタクト領域460上のみに複数の非等長コンタクト465と,アノード・コンタクト領域455上に対称コンタクト456と,ヒューズリンク470とを含む。カソード・コンタクト領域460上のみに非等長コンタクト465を形成する目的は,エレクトロマイグレーションの間のコンタクトの劣化が,典型的にはヒューズのカソードにおいて発生することにある。本発明の1つの実施形態によれば,非等長コンタクト465は,カソード・コンタクト領域460と直交して形成される。本発明は,非等長コンタクトのいかなる特定の数にも限定されず,適宜,変えることができる。」

(オ)「【0017】
図9は,従来の電気的にプログラム可能なヒューズ(参照数字60によって示される)に対して,幅の狭いコンタクト領域を有する電気的にプログラム可能なヒューズ(参照数字65によって示される)及び本発明の実施形態による電気的にプログラム可能なヒューズ(参照数字70によって示される)のプログラムされた抵抗の分布を示す,つり鐘型曲線である。図9に示されるように,本発明の電気的にプログラム可能なヒューズの分布は,より高い抵抗中央値及びより急峻な分布を生じさせ,より優れた検知性能を可能にする。典型的には,対称コンタクトを有する従来の電気的にプログラム可能なヒューズは,プログラムされた抵抗の中央値が1×10^(4)オームとなり(参照数字60によって示される),分布のテール部のヒューズは1×10^(3)オームという低さになる。幅の狭いコンタクト領域を有する電気的にプログラム可能なヒューズは,1×10^(5)オームを超える僅かに高い抵抗中央値を有し(参照数字65によって示される),分布のテール部のヒューズは1×10^(4)オームを下回るところまで達する。他方,本発明の実施形態による非等長コンタクトを有する電気的にプログラム可能なヒューズは,およそ1×10^(6)オームを超える,より高い抵抗中央値を有し(参照番号70によって示される),テール部のヒューズが1×10^(4)オームを下回る抵抗となることはめったになく,そのことにより,検知回路が広い動作限界で作動することが可能になる。」

イ 本願の明細書の発明の詳細な説明に記載された事項について
(ア)上記(3)アより,本願の明細書の発明の詳細な説明には,本願発明は,電気的にプログラム可能なヒューズに関し,特に非等長(anisometric)コンタクトを含む電気的にプログラム可能なヒューズに関するもので(【0001】),典型的な電気的にプログラム可能なヒューズにおいて,コンタクトは,印刷及びコンタクト処理の最適化をより容易にするために,正方形(すなわち,対称)のコンタクトの形状を有し,さらに,コンタクトのための実際のヒューズリンク幅の数倍もの大きな端子領域(landing region)を有しており(【0002】),このため,従来のヒューズは,コンタクトに付随する幾つかの問題を有しており,例えば,プログラミング電流を流したときのエレクトロマイグレーションの間に,発熱がヒューズリンクの中央部に限定されずにその代わりコンタクトの温度が上昇することによって,コンタクトの劣化が引き起こされて,ヒューズがプログラムされた状態を維持できないことがあること,しかも,当該コンタクトの劣化の問題を解決するために,大型の対称コンタクトを用いると,系の熱容量(thermal mass)が増大することにより,非常に大きなプログラミング電流が必要とされ,さらに,従来のヒューズの大きなコンタクト端子領域も熱容量に寄与するので,高いプログラミング電流を必要とし,コンタクトの劣化のリスクが増大すること(【0003】)が,背景技術,及び,発明が解決しようとする課題として記載されていると認められる。

(イ)上記(3)アより,本願の明細書の発明の詳細な説明には,非等長コンタクトを含むヒューズにおいて,プログラミング電流をヒューズに印加したときに,対称コンタクトの場合とは対照的に,非等長コンタクトは,熱容量の大部分をヒューズリンク116から遠い方に配置するので,非等長コンタクト120は,匹敵する大きさの対称コンタクトほどには加熱されず,その結果,コンタクト界面における温度がより低くなり,そのことによって,典型的にはヒューズリンク116内への銅の拡散をもたらしヒューズ100の故障を引き起こす原因となる,コンタクト120におけるライナ材料の破壊並びにコンタクト領域110及び118の劣化が防止されること(【0014】)が記載されていると認められる。

(ウ)上記(3)アより,本願の明細書の発明の詳細な説明には,図9に示されるように,対称コンタクトを有する従来の電気的にプログラム可能なヒューズは,プログラムされた抵抗の中央値が1×10^(4)オームとなり(参照数字60によって示される),分布のテール部のヒューズは1×10^(3)オームという低さになるのに対して,本発明の実施形態による非等長コンタクトを有する電気的にプログラム可能なヒューズは,およそ1×10^(6)オームを超える,より高い抵抗中央値を有し(参照番号70によって示される),テール部のヒューズが1×10^(4)オームを下回る抵抗となることはめったになく,そのことにより,検知回路が広い動作限界で作動することが可能になること(【0017】)が記載されていると認められる。

(4)サポート要件についての検討
ア 上記(2)によれば,本願発明1では,アノード及びカソード・コンタクト領域の幅,非等長コンタクトの幅(Wc),非等長コンタクトの長さ(Lc),及び,ヒューズリンクの幅(Wf)の長さの相互の関係について,「前記アノード及びカソード・コンタクト領域の幅が,前記電気的にプログラム可能なヒューズの電流の流れ方向における各々の非等長コンタクトの長さより短く」,及び,「Wf<Wc<3Wf,かつ2<Lc/Wc<10である」と特定されているだけであるから,これらの条件を満たす範囲内において,本願発明1は,非等長コンタクトの面積,並びに,アノード及びカソード・コンタクト領域の面積として,様々な面積のものが含まれ得ると解される。
また,本願発明1では,非等長コンタクトが配置される位置について,「前記非等長コンタクトは,前記カソード・コンタクト領域および前記アノード・コンタクト領域に対して直交し,電流の流れ方向に対して横並びの配列で形成され」と特定されるだけであるから,本願発明1は,非等長コンタクトとヒューズリンクとの間隔として,様々な大きさのものが含まれ得ると解される。

イ すなわち,例えば,本願の図面の図1に示された,3×3配列で位置決めされた対称コンタクトのアレイを含む「従来のヒューズ20」の,ヒューズリンクの幅がWf,個々の対称コンタクトの幅(Wc)及び長さ(Lc)が,Lc=Wc=Wf,アノード及びカソード・コンタクト領域の幅が,Wfの6倍であるとした場合に,当該「従来のヒューズ20」の3×3配列で位置決めされた対称コンタクトのアレイに替えて,コンタクトの幅(Wc)が,Wfの1.5倍であり,コンタクトの長さ(Lc)が,Wfの7倍である非等長コンタクトを,Wfの6倍である幅を有する前記カソード・コンタクト領域およびアノード・コンタクト領域に対して直交し,電流の流れ方向に対して横並びの配列で3列形成する「1×3配列ヒューズ」は,「前記アノード及びカソード・コンタクト領域の幅6Wfが,前記電気的にプログラム可能なヒューズの電流の流れ方向における各々の非等長コンタクトの長さLc=7Wfより短く」,及び,「Wf<Wc=1.5Wf<3Wf,かつ2<Lc/Wc=(7Wf)/(1.5Wf)<10である」という条件を満たすことから,本願発明1に含まれ得ると解される。

ウ 同様に,本願の図面の図2に示された,2×1配列で位置決めされた対称コンタクトのアレイを含む「従来のヒューズ30」の,ヒューズリンクの幅がWf,個々の対称コンタクトの幅(Wc)及び長さ(Lc)が,Lc=Wc=Wf,アノード及びカソード・コンタクト領域の幅が,Wfの2.8倍であるとした場合に,当該「従来のヒューズ30」の2×1配列で位置決めされた対称コンタクトのアレイに替えて,コンタクトの幅(Wc)が,Wfの2.9倍であり,コンタクトの長さ(Lc)が,Wfの28倍である非等長コンタクトを,Wfの2.8倍である幅を有する前記カソード・コンタクト領域およびアノード・コンタクト領域に対して直交し,電流の流れ方向に対して横並びの配列で2列形成する「1×2配列ヒューズ」は,「前記アノード及びカソード・コンタクト領域の幅2.8Wfが,前記電気的にプログラム可能なヒューズの電流の流れ方向における各々の非等長コンタクトの長さLc=28Wfより短く」,及び,「Wf<Wc=2.9Wf<3Wf,かつ2<Lc/Wc=(28Wf)/(2.9Wf)=<10である」という条件を満たすことから,本願発明1に含まれ得ると解される。

エ 他方,上記(3)イ(イ)のとおり,本願明細書の発明の詳細な説明には,本願発明1における,「対称コンタクトの場合とは対照的に,非等長コンタクトは,熱容量の大部分をヒューズリンク116から遠い方に配置するので,非等長コンタクト120は,匹敵する大きさの対称コンタクトほどには加熱されず,その結果,コンタクト界面における温度がより低くなり,そのことによって,典型的にはヒューズリンク116内への銅の拡散をもたらしヒューズ100の故障を引き起こす原因となる,コンタクト120におけるライナ材料の破壊並びにコンタクト領域110及び118の劣化が防止される」ことについての説明が記載されており,当該記載から,ヒューズリンク内への銅の拡散をもたらしヒューズの故障を引き起こす原因となるコンタクトにおけるライナ材料の破壊並びにコンタクト領域の劣化の防止という効果は,非等長コンタクトにおいて,熱容量の大部分をヒューズリンクから遠い方に配置することで,非等長コンタクトが,匹敵する大きさの対称コンタクトほどには加熱されず,その結果,コンタクト界面における温度がより低くなることによって奏されるものと理解される。
そうすると,対称コンタクトから,「匹敵する大きさの」非等長コンタクトへと,コンタクトの形状を変更した際に生じる,コンタクトの延長部を,前記説明における設定とは逆方向である,ヒューズリンクに近い方に配置した場合には,当該延長部とヒューズリンクとの距離が近いことから,非等長コンタクトは,変更前の対称コンタクトよりも加熱され,その結果,コンタクト界面における当該延長部の温度がより高くなり,そのことによって,コンタクトにおけるライナ材料の破壊並びにコンタクト領域の劣化が生じ,しかも,当該延長部とヒューズリンクの距離が近いことから,ヒューズリンク内への銅の拡散がより進むものと認められる。

オ さらに,本願明細書の発明の詳細な説明には,上記(3)イ(ア)のとおり,「大型の対称コンタクトを用いると,系の熱容量(thermal mass)が増大することにより,非常に大きなプログラミング電流が必要とされ,さらに,従来のヒューズの大きなコンタクト端子領域も熱容量に寄与するので,高いプログラミング電流を必要とし,コンタクトの劣化のリスクが増大すること」が記載されているから,対称コンタクトを,「前記アノード及びカソード・コンタクト領域の幅が,前記電気的にプログラム可能なヒューズの電流の流れ方向における各々の非等長コンタクトの長さより短く」,及び,「Wf<Wc<3Wf,かつ2<Lc/Wc<10である」という条件を満たす非等長コンタクトに変更するに際して,変更後の非等長コンタクトのWc×Lcによって特定される面積が,変更前の対称コンタクトの面積よりも増大する場合には,変更後の非等長コンタクトの系の熱容量(thermal mass)は増大して,非常に大きなプログラミング電流が必要となり,コンタクトの劣化のリスクが増大することとなることは明らかといえる。

カ そうすると,特許請求の範囲の請求項1の記載から,本願発明1に含まれ得ると解される前記「1×3配列ヒューズ」は,1.5Wfの幅と,7Wfの長さを有する非等長コンタクトが,6Wfの幅を有するカソード・コンタクト領域およびアノード・コンタクト領域に対して直交し,電流の流れ方向に対して横並びの配列で3列形成配置されたヒューズであるところ,仮に,各列のコンタクトの中心位置が,3×3配列で位置決めされた対称コンタクトのアレイを含む「従来のヒューズ20」の前記アレイの各列の中心位置と変わらなかった場合には,コンタクトの幅が,「従来のヒューズ20」のWfから,「1×3配列ヒューズ」の1.5Wfへと拡がったことによって,当該カソード・コンタクト領域およびアノード・コンタクト領域に配置された各3列の非等長コンタクトのうち,最もヒューズリンクに近接した非等長コンタクトのヒューズリンク側の辺と,前記ヒューズリンクとの距離は,小さくなり,これによって,ヒューズリンクからの熱の影響を受けやすくなる。
したがって,「1×3配列ヒューズ」の非等長コンタクトは,「従来のヒューズ20」の対称コンタクトよりも加熱され,その結果,コンタクト界面における温度がより高くなり,コンタクトにおけるライナ材料の破壊並びにコンタクト領域の劣化が生じ易くなり,ヒューズリンク内への銅の拡散をもたらしヒューズの故障が引き起こし易くなるものと認められる。
同様に,特許請求の範囲の請求項1の記載から,本願発明1に含まれ得ると解される「1×2配列ヒューズ」は,2.9Wfの幅と,28Wfの長さを有する非等長コンタクトが,2.8Wfの幅を有するカソード・コンタクト領域およびアノード・コンタクト領域に対して直交し,電流の流れ方向に対して横並びの配列で2列形成配置されたヒューズであるところ,仮に,1×2配列の中心位置が,2×1配列の中心位置と変わらなかった場合には,「従来のヒューズ30」の1列のコンタクトの配列から,「1×2配列ヒューズ」の2列のコンタクトに変更されたことによって,当該カソード・コンタクト領域およびアノード・コンタクト領域に配置された各2列の非等長コンタクトのうち,最もヒューズリンクに近接した非等長コンタクトのヒューズリンク側の辺と,前記ヒューズリンクとの距離は,小さくなり,これによって,ヒューズリンクからの熱の影響を受けやすくなる。
したがって,「1×2配列ヒューズ」の非等長コンタクトは,「従来のヒューズ30」の対称コンタクトよりも加熱され,その結果,コンタクト界面における温度がより高くなり,コンタクトにおけるライナ材料の破壊並びにコンタクト領域の劣化が生じ易くなり,ヒューズリンク内への銅の拡散をもたらしヒューズの故障が引き起こし易くなるものと認められる。
しかも,「1×3配列ヒューズ」及び「1×2配列ヒューズ」の非等長コンタクトの面積は,「従来のヒューズ20」及び「従来のヒューズ30」の対称コンタクトの面積よりも大きいことから,系の熱容量(thermal mass)が増大して,非常に大きなプログラミング電流が必要とされ,コンタクトの劣化のリスクが増大することとなるものとも認められる。

キ さらに,本願発明1に含まれ得ると解される上記イで検討した「1×3配列ヒューズ」及び上記ウで検討した「1×2配列ヒューズ」のカソード・コンタクト領域およびアノード・コンタクト領域の幅は,「従来のヒューズ20」及び「従来のヒューズ30」のカソード・コンタクト領域およびアノード・コンタクト領域の幅と等しいことから,前記「1×3配列ヒューズ」及び前記「1×2配列ヒューズ」には,本願明細書の【0012】において示されている,「図1及び図2でわかるように,コンタクト25及び35がそれぞれ形成されるコンタクト領域は,コンタクトの加工のために大きな面積を有する・・・コンタクトの劣化の可能性である。」という「従来のヒューズ20」及び「従来のヒューズ30」における課題が,解決されることなく残っているものと認められる。

ク そうすると,発明の詳細な説明における,「プログラミング電流をヒューズに印加したときに,対称コンタクトの場合とは対照的に,非等長コンタクトは,熱容量の大部分をヒューズリンク116から遠い方に配置するので,非等長コンタクト120は,匹敵する大きさの対称コンタクトほどには加熱されず,その結果,コンタクト界面における温度がより低くなり,そのことによって,典型的にはヒューズリンク116内への銅の拡散をもたらし,ヒューズ100の故障を引き起こす原因となる,コンタクト120におけるライナ材料の破壊並びにコンタクト領域110及び118の劣化が防止される」との説明をもって,上記「1×3配列ヒューズ」及び「1×2配列ヒューズ」で例示されるような,コンタクトの面積の大きさの絶対値,コンタクトの位置(ヒューズリンクの端部からコンタクトまでの距離)等の種々の条件が含まれ得る本願発明1のヒューズにまで,従来技術における課題が解決され,所期の効果が得られるものとして,拡張ないし一般化することは,当該技術分野における技術常識を参酌しても可能であるとは認められない。

ケ すなわち,本願明細書の発明の詳細な説明の記載からは,非等長コンタクトが,対称コンタクトに匹敵する大きさを有する場合であって,かつ,前記対称コンタクトから,非等長コンタクトへと形状を変更した時に生じる,コンタクトの延長部を,ヒューズリンクから遠い方に配置することで,本願発明1における課題の解決と目的の達成とが可能であることを認識できるにとどまるから,当該技術分野における技術常識に照らしても,本願明細書の発明の詳細な説明の記載から,「前記アノード及びカソード・コンタクト領域の幅が,前記電気的にプログラム可能なヒューズの電流の流れ方向における各々の非等長コンタクトの長さより短く」,及び,「Wf<Wc<3Wf,かつ2<Lc/Wc<10である」の組み合わせの範囲の全てにまで,本願発明1における課題の解決と目的の達成とが可能であることを認識できるとは認められない。

コ 以上から,「前記アノード及びカソード・コンタクト領域の幅が,前記電気的にプログラム可能なヒューズの電流の流れ方向における各々の非等長コンタクトの長さより短く」,及び,「Wf<Wc<3Wf,かつ2<Lc/Wc<10である」との構成を特定するだけで,コンタクトの面積の大きさの絶対値,コンタクトの位置(ヒューズリンクの端部からコンタクトまでの距離)等の条件が特定されていない本願発明1は,本願明細書の発明の詳細な説明により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。

サ したがって,本願発明1は,本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものとは認められないから,本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)に適合するとはいえない。

(5)請求人の主張について
請求人は,平成28年5月6日に提出した意見書において,「しかしながら,上記(4)-2で説明した通り,本願発明は,コンタクトを構成する材料の種類,電流密度,コンタクトとシリサイドとの界面の接触抵抗,シリサイドの種類,コンタクトの面積の大きさの絶対値,コンタクト端子領域の面積,コンタクトの位置等の種々の条件が同じであれば,本願請求項に記載のパラメータを採用することによって,高いプログラミング電流を必要とせず,コンタクトの劣化のリスクが抑制されるという,作用効果が得られるものであります。したがって,本願に記載のパラメータは,本願の構成を特徴付けるパラメータであると言うことができるのであって,同一のパラメータが有意義に規定できる場合には,該パラメータ以外の条件がどのようなものであっても適用できるものであり,請求項1-3の構成は,発明の詳細な説明に記載されたものであると認められるべきものであります。」と主張する。
しかしながら,請求人の上記の主張は採用することができない。その理由は以下のとおりである。
本願の請求項1には,「コンタクトを構成する材料の種類,電流密度,コンタクトとシリサイドとの界面の接触抵抗,シリサイドの種類,コンタクトの面積の大きさの絶対値,コンタクト端子領域の面積,コンタクトの位置等の種々の条件が同じであ」ることは特定されていない。したがって,請求人の「コンタクトを構成する材料の種類,電流密度,コンタクトとシリサイドとの界面の接触抵抗,シリサイドの種類,コンタクトの面積の大きさの絶対値,コンタクト端子領域の面積,コンタクトの位置等の種々の条件が同じであれば,本願請求項に記載のパラメータを採用することによって,高いプログラミング電流を必要とせず,コンタクトの劣化のリスクが抑制されるという,作用効果が得られるものであります。」との主張は,請求項の記載に基づかない主張であって採用することはできない。
しかも,例えば,本願の図2に記載されるような,コンタクトが2×1配列で配列されたヒューズを,本願請求項に記載のパラメータを採用することによって,1×2配列に変更する場合に,コンタクトの位置の条件を同じとすることは,本質的に不可能であるから,この点においても請求人の主張は採用することができない。

(6)まとめ
以上検討したとおり,本願の特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

4 むすび
以上のとおりであるから,本願は,他の拒絶理由について検討するまでもなく,拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-07-29 
結審通知日 2016-08-02 
審決日 2016-08-15 
出願番号 特願2010-142058(P2010-142058)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須原 宏光  
特許庁審判長 河口 雅英
特許庁審判官 鈴木 匡明
加藤 浩一
発明の名称 非等長コンタクトを用いた電気的にプログラム可能なヒューズ及びその製造方法  
復代理人 間山 進也  
代理人 太佐 種一  
代理人 上野 剛史  
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