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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06K
管理番号 1323238
審判番号 不服2014-9436  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-21 
確定日 2016-12-16 
事件の表示 特願2011-507504「短距離無線システムにおける使用者への触感効果提供」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月 5日国際公開、WO2009/134545、平成23年 9月15日国内公表、特表2011-525267〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成2009年3月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年4月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年4月17日付けの拒絶理由通知に応答して、平成25年7月24日付けで意見書、手続補正書が提出され、平成25年8月20日付けの拒絶理由通知に応答して平成25年12月6日付けで意見書、手続補正書が提出されたが、平成26年1月17日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、平成26年5月21日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、当審から平成27年5月29日付けで拒絶理由が通知され、平成27年9月2日付けで意見書、手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願請求項1に係る発明は、平成27年9月2日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「【請求項1】
無線相互作用システム内で動作可能な使用者機器であって:
ホスト機器と無線で通信するように構成されたトランシーバであって、前記トランシーバと前記ホスト機器が互いにあらかじめ決められた範囲内に配置された時に前記ホスト機器と通信するように構成された前記トランシーバと;
前記使用者機器とホスト機器との間の複数の特定の相互作用事象を検出し、そして各々の特定の相互作用事象が起こった時に複数の触感効果の中から前記各々の特定の相互作用事象に対して異なる触感効果を選択するように構成されたプロセッサと;
プロセッサが前記各々の特定相互作用事象が発生したと判定した際に、使用者に前記プロセッサにより選択された触感効果を与えるように構成された触感アクチュエータとを含み、
前記複数の特定の相互作用事象が、前記使用者と前記ホスト機器が互いに前記範囲内に入ったこと、前記使用者と前記ホスト機器との無線接続の確立、前記使用者と前記ホスト機器との無線接続の喪失、そして金銭取引の開始および完了を含むことを特徴とする、前記使用者機器。」

3.引用例
1)引用例1
これに対して、当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成18年8月31日に頒布された「特開2006-229349号公報」(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の実施の形態に係る携帯端末機器としての携帯電話機1と通行制御装置としての自動改札機2の構成例を示すブロック図である。また、上記携帯電話機1と上記自動改札機2とは、通行制御システムとしての自動改札システムを構成している。
【0010】
まず、上記携帯電話機1の構成について説明する。
上記携帯電話機1は、図1に示すように、電子装置としてのICカード(ICチップ)Cが装着される構成となっている。なお、例えば、上記携帯電話機1は、第3世代とよばれる3GPP(Third Generation Partnership Project)で標準化された規格に準じた携帯電話機であり、この場合、当該携帯電話機に装着されるICカードCは、UIM(User Identity Module)カードあるいはUSIM(Universal Subscriber Identity Module)と呼ばれるICカードである。
【0011】
上記携帯電話機1は、図1に示すように、制御部11、操作部12、通信部13、音声部14、電源部15、表示部16、振動部17、およびICカードソケット18などを有している。
上記制御部11は、携帯電話機1全体の制御を司るものである。上記制御部11は、CPU、内部メモリ、各種のインターフェースなどを有している。上記制御部11には、制御プログラムが記憶されている不揮発性メモリとしてのROM、作業用のデータを記憶する揮発性メモリとしてのRAM、及びキーボードなど操作部12が接続されている。上記制御部11は、例えば、PLL(Phase Locked Loop)回路、データストリーム経路切換え、DMA(Direct Memory Access)コントローラ、割り込みコントローラ、タイマ、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、秘匿、HDLC(High-level Data Link Control procedure)フレーミング、USBディバイスコントローラなどの機能を有している。
【0012】
また、上記制御部11には、機能設定フラグ11aおよび振動パターンテーブル11bなどが設けられている。上記機能設定フラグ11aは、後述する改札処理時の振動機能を有効とするか無効とするかを示す情報がセットされる。また、上記振動パターンテーブル11bは、後述する改札処理時の振動機能により携帯電話機1本体を振動させる場合の振動パターンを特定するためのテーブルである。ここでは、上記振動パターンテーブル11bには、例えば、後述するようなICカードCの処理状況に応じた振動パターンが予め記憶されているものとするが、上記振動パターンテーブル11bに記憶する振動パターンは、利用者が設定できるようにしても良い。
【0013】
上記通信部13には、携帯電話用のアンテナが接続され、上記携帯電話用のアンテナを介して通話データやデータ通信用の電波の送受信を行う。上記音声部14は、アナログフロントエンド部及びオーディオ部を有し、音声の入出力を行うものである。上記音声部1
4には、スピーカ、レシーバ、マイクなどが接続されている。例えば、上記音声部14は、スピーカから着信音を出力することにより着信音の出力機能を有している。また、上記音声部14は、受話部としてのレシーバから音声を出力し、送話部としてのマイクから音声を入力したりする機能を有している。
【0014】
上記電源部15は、バッテリーなどにより構成され、当該携帯電話機1内の各部に電源を供給するようになっている。また、上記電源部15は、上記ICカードソケット18を介してICカードCに電源を供給する機能も有している。上記表示部16は、液晶表示装置などにより構成される表示部への表示制御を行うものである。
【0015】
上記振動部17は、当該携帯電話機1全体を振動させる振動機構により構成される。上記振動部17は、上記制御部11による振動機能の設定に基づいて、当該携帯電話機1を振動させるようになっている。上記振動部17による振動は、上記制御部11による設定に基づいて機能するようになっている。例えば、上記振動部17は、特定のイベント(たとえば、電話やメールの着信など)が発生した際に、上記制御部11により予め設定されている各イベントに応じた振動パターンにて当該携帯電話機1を振動させるようになっている。」
(2)「【0024】
図3は、上記ICカードCと上記携帯電話機1本体の制御部(アプリケーション)との関係を概念的に示す図である。
上記携帯電話機1では、電源がオンの状態において上記制御部11により携帯電話機1としての種々のアプリケーションプログラムを実行している。これに対して、上記ICカードCは、上記自動改札機2のリーダライタ21からの信号に応じて動作する。これらのような、上記ICカードCによる処理と上記制御部11による処理とは、携帯電話機1内において独立して実行されるようになっている。
【0025】
従って、ICカードCの状態やICカードによる処理状況などは、当該ICカードCから上記制御部11へ通知する必要がある。このため、上記制御部11では、アプリケーションの実行中、ICカードCからの割り込み信号を受信するようになっている。これにより、上記制御部11では、随時、ICカードCのステータスの変化(処理状況の変化)をICカードからの割り込み信号により認識することができるようになっている。
【0026】
次に、携帯電話機1における振動設定について説明する。
図4は、上記ICカードCによる改札処理時における上記携帯電話機1の振動設定を行うための設定画面の例を示す図である。
上記携帯電話機1では、上記操作部12への利用者の操作によって上記表示部16に、図4に示すような改札処理時の振動機能の設定画面を表示する。図4に示す設定画面の例では、利用者が改札処理時の振動機能のオンオフを設定できるようになっている。
【0027】
たとえば、上記ICカードCによる改札処理の状況に応じた当該携帯電話機1の振動を禁止したい場合、利用者は、図4に示すような設定画面において「OFF」を選択する。すると、上記制御部11は、上記機能設定フラグ11aを無効として改札処理時の振動機能をオフに設定する。この場合、携帯電話機1内のICカードCと自動改札機とが通信を行っても、当該携帯電話機1は、振動しないように制御される。
また、上記ICカードCによる改札処理の状況に応じて当該携帯電話機1を振動させるようにしたい場合、利用者は、図4に示すような設定画面において「ON」を選択する。すると、上記制御部11は、上記機能設定フラグ11aを有効として改札処理時の振動機能をオンに設定する。この場合、携帯電話機1内のICカードCと自動改札機とが通信を行って改札処理を行うと、当該携帯電話機1は、その処理状況に応じて上記振動パターンテーブル11bに基づく所定の振動パターンで振動するように制御される。
【0028】
次に、上記ICカードCによる上記自動改札機2での改札処理(入出場処理)について説明する。
図5は、上記ICカードCによる上記自動改札機2での改札処理を説明するためのフローチャートである。
上記自動改札機2では、人物が接近してくると、上記無線通信ユニット21によりICカードCに対して応答を要求する応答要求を送信する。これに対して、上記ICカードCが装着されている携帯電話機1の所持者は、上記自動改札機2を通過する際に、当該自動改札機2の所定の位置(無線通信ユニット21の通信圏内)に当該携帯電話機1を翳す。これにより、当該携帯電話機1内の上記アンテナ19は、上記無線通信ユニット21の通信圏内に入る。
【0029】
携帯電話機1内の上記アンテナ19が上記無線通信ユニット21の通信圏内に入ると、上記携帯電話機1内のICカードCは、上記アンテナ19及び無線通信部35により上記自動改札機2からの応答要求を受信する。上記自動改札機2からの応答要求を受信すると、上記ICカードCの制御素子30は、当該ICカードCを起動させる(ステップS11)。これにより、上記自動改札機2と上記ICカードCとは、無線通信が可能な状態となり、改札処理を開始する。
上記自動改札機2との無線通信(改札処理)が開始されると、上記ICカードCの制御素子30は、上記自動改札機2との通信が開始された旨(自動改札機からのアクセスがあった旨)の割り込み信号を当該携帯電話機1本体の制御部11へ供給する(ステップS12)。
【0030】
上記自動改札機2との通信が開始された旨の割り込み信号を受信すると(ステップS21)、当該携帯電話機1本体の制御部11は、上記機能設定フラグ11aにより改札処理時の振動機能がオン(有効)となっているか否かを判断する(ステップS22)。この判断により改札処理時の振動機能がオンとなっていると判断した場合(ステップS22、YES)、上記制御部11は、上記振動パターンテーブル11bに基づく通信開始時の振動パターンで当該携帯電話機1本体を振動させる(ステップS23)。
【0031】
ここでは、上記振動パターンテーブル11bには、通信開始時の振動パターンとして第1の振動パターンが設定されているものとする。この場合、上記制御部11は、上記振動パターンテーブル11bによりICカードCと自動改札機2との通信開始時の振動パターンが第1の振動パターンであると判断し、上記振動部17により当該携帯電話機1本体を第1の振動パターンにて振動させる(ステップS23)。
【0032】
一方、上記制御部11に通信開始を示す割り込み信号を供給したICカードCでは、上記自動改札機2との無線通信を行って改札処理を行う(ステップS13)。
この改札処理では、上述したように、ICカードCが自動改札機2からのデータ送信要求に対して乗車券情報などの利用者情報を自動改札機2へ送信する。上記ICカードCからの利用者情報を受信した自動改札機2では、ICカードCから受信した利用者情報と所定の判定条件とに基づいて通行の可否を判定する通行判定を行う。
【0033】
この通行判定により当該利用者の通行を許可すると判定した場合、上記自動改札機2は、通行を許可する旨の通知と書き込みデータ(例えば、利用駅や利用時刻等を示す利用履歴情報)とを当該ICカードCへ送信するとともに、図示しないドア等を開放して当該利用者の通行を許可する制御を行う。
また、上記通行判定により当該利用者の通行を不可とすると判定した場合、上記自動改札機2は、通行不可である旨の通知と書き込みデータとを当該ICカードCへ送信するとともに、図示しないドア等を閉鎖して当該利用者の通行を不許可とする制御を行う。
【0034】
上記自動改札機2から判定結果と書き込みデータとを受信した上記ICカードCの制御素子30は、上記自動改札機2から受信した書き込みデータを不揮発性メモリ33に書き込むことにより当該改札処理を終了する。
【0035】
さらに、上記自動改札機2からの判定結果を受けて当該改札処理を終了する場合、上記ICカードCの制御素子30は、当該携帯電話機1本体の制御部11へ自動改札機2との改札処理が完了した旨の割り込み信号を供給する(ステップS15) 。
【0036】
上記ICカードCから改札処理が完了した旨の割り込み信号を受信すると(ステップS24)、当該携帯電話機1本体の制御部11は、上記機能設定フラグ11aにより改札処理時の振動機能がオン(有効)となっているか否かを判断する(ステップS25)。この判断により改札処理時の振動機能がオンとなっていると判断した場合(ステップS25、YES)、上記制御部11は、上記振動パターンテーブル11bに基づく改札処理終了時の振動パターンで当該携帯電話機1本体を振動させる(ステップS26)。
【0037】
ここでは、上記振動パターンテーブル11bには、改札処理終了時の振動パターンとして上記第1の振動パターンとは異なる第2の振動パターンが設定されているものとする。この場合、上記制御部11は、上記振動パターンテーブル11bにより改札処理終了時の振動パターンが第2の振動パターンであると判断し、上記振動部17により当該携帯電話機1本体を第2の振動パターンにて振動させる(ステップS26)。
【0038】
なお、上述した動作例では、自動改札機からの通行判定結果を受けたのに基づいて所定の振動パターンで携帯端末機器を振動させるようにしたが、自動改札機からの通行判定の結果に応じて、振動パターンを変化させるようにしても良い。たとえば、通行判定の結果が通行許可である場合と、通行判定の結果が不許可である場合とで、異なる振動パターンで振動させるようにしても良い。
【0039】
これは、上記振動パターンテーブル11bに通行許可の場合の振動パターンと通行不許可の場合の振動パターンとを設定しておき、上記ステップS15で上記ICカードCが通行判定の結果を示す割り込み信号を制御部11に供給することにより実現可能である。つまり、上記振動パターンテーブル11bに通行許可の場合の振動パターンと通行不許可の場合の振動パターンとを設定しておくことにより、上記制御部11は、ICカードCから通行判定の結果を受けて、通行判定の結果に応じた振動パターンで携帯端末機器1本体を振動させることが可能となる。
【0040】
上記のように、本実施の形態では、自動改札機での改札処理が可能なICチップを具備する携帯電話機を自動改札機の所定の通信圏内に翳すと、携帯電話機は、自動改札機と携帯電話機内のICチップとの通信状況や処理状況に応じて携帯電話機の機体を震動させるようにしたものである。
これにより、携帯電話機内に装着されているICチップと自動改札機との通信状況や改札処理の状況を利用者に感覚的、かつ、確実に通知することができる。この結果として、自動改札機での処理未了率を低減させることが可能となる。」
(3)「【0043】
さらには、本実施の形態は、電子マネー機能を有する携帯電話機などの携帯端末機器と、店舗などに設置された取引端末装置とによる電子商取引システムに適用できる。この種の電子商取引システムでは、取引端末装置が利用者が提示した携帯端末機器から読取った電子マネーとしての情報(たとえば、金額情報、利用実績に応じたポイント情報など)によって商取引を行う。従って、携帯端末機器と取引端末装置との通信状況や処理状況などに応じて携帯端末機器本体を振動させることにより、携帯端末機器と取引端末装置との通信状況や処理状況などを利用者に感覚的、かつ、確実に通知することができる。」(下線は、当審による。)

これらの記載事項によると、引用例1には、
「携帯電話機1と自動改札機2とは、自動改札システムを構成し、
携帯電話機1は、ICカード(ICチップ)Cが装着され、
制御部11、操作部12、通信部13、音声部14、電源部15、表示部16、振動部17、およびICカードソケット18などを有し、
制御部11には、振動パターンテーブル11bなどが設けられ、
振動パターンテーブル11bには、ICカードCの処理状況に応じた振動パターンが予め記憶され、
振動部17は、当該携帯電話機1全体を振動させる振動機構により構成され、振動部17は、制御部11による振動機能の設定に基づいて、当該携帯電話機1を振動させ、
ICカードCが装着されている携帯電話機1の所持者は、上記自動改札機2を通過する際に、当該自動改札機2の所定の位置(無線通信ユニット21の通信圏内)に当該携帯電話機1を翳すと、自動改札機2との無線通信(改札処理)が開始され、制御部11は、振動パターンテーブル11bに基づく通信開始時の振動パターンで当該携帯電話機1本体を第1の振動パターンにて振動させ、
自動改札機2との改札処理が完了すると、制御部11は、上記振動パターンテーブル11bに基づく改札処理終了時の振動パターンで当該携帯電話機1本体を第2の振動パターンにて振動させ、
さらに、取引端末装置が、利用者が提示した携帯端末機器から読取った電子マネーとしての情報によって商取引を行うことに適用でき、携帯端末機器と取引端末装置との通信状況や処理状況などに応じて携帯端末機器本体を振動させることにより、携帯端末機器と取引端末装置との通信状況や処理状況などを利用者に感覚的、かつ、確実に通知する携帯端末機器」
の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。

2)引用例2
当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成13年9月28日に頒布された「特開2001-266194号公報」(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0037】改札を通過しようとする利用客は、図7に示すように、非接触式ICカード30を手に持った状態で自動改札機の本体1に向かって歩いていく。
【0038】本体1からは距離測定用の信号が所定の時間間隔で逐次に送信されており(ポーリング)、それが非接触式ICカード30で受信される。この受信時、感知エリアに入った旨を表わす返信信号が非接触式ICカード30から送信される。この返信後は、感知エリアから外れた場合を除いて、隣の自動改札機からのポーリングに対して非接触式ICカード30が応答することはない。
【0039】本体1では、非接触式ICカード30からの返信信号が受信され、その受信タイミングと距離測定用の信号の送信タイミングとの間の時間経過に応じて本体1と非接触式ICカード30との距離が検出される(ステップ101)。この検出は、一旦交信を始めた非接触式ICカード30が感知エリアから出ない限り、継続される。
【0040】検出された距離がL3以内のとき、バイブレーションパターンCを指定するためのデータが本体1から非接触式ICカード30に向け送信される。非接触式ICカード30では、受信データに基づき、可変バイブレータ39がバイブレーションパターンCで振動する。利用客は、バイブレーションパターンCの振動を非接触式ICカード30から直に感じ、自身が本体1の近くにいることを認識する。」
(2)「【0047】なお、上記実施形態では、5種類のパターンの振動を発生するようにしたが、パターン数に限定はなく、本体1が設置されている環境や案内情報の種類などに応じて適宜に設定可能である。距離測定のためのデータ送受信を専用の測定ユニット20で行うようにしたが、無線カードかざし部5に設けられている無線送受信アンテナ53および無線リーダ/ライタ52において行うようにしてもよい。距離の測定方法としては、データ送受信による測定に限らず、たとえば音波を利用した測定を行ってもよい。」(下線は、当審による。)
以上のことから、引用例2には、「非接触式ICカード30と自動改札機の本体1との距離を検出し、検出された距離が所定の距離である場合、非接触式ICカード30の利用客に対してバイブレーションパターンで認識させること。」
が記載されている。(以下、「引用例2の記載事項」という。)

3)引用例3
当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成17年10月13日に頒布された「特開2005-284744号公報」(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0013】
そして、自動改札処理が正常終了せずに携帯電話機が自動改札機との通信範囲外になった場合、携帯電話機のマナーモードで使用されるバイブレータ8を作動させてユーザに通知する。」(以下、「引用例3の記載事項」という。)

4.対比
(1)引用例1発明の「携帯電話機1と自動改札機2とは、自動改札システムを構成し、」で、自動改札システムは、無線相互作用システムであり、携帯電話機1は、自動改札システムで動作する使用者機器であるから、本願発明の「無線相互作用システム内で動作可能な使用者機器であって:」に相当する。
(2)引用例1発明の「携帯電話機1は、ICカード(ICチップ)Cが装着され」で、「ICカードCが装着されている携帯電話機1の所持者は、上記自動改札機2を通過する際に、当該自動改札機2の所定の位置(無線通信ユニット21の通信圏内)に当該携帯電話機1を翳すと、自動改札機2との無線通信(改札処理)が開始され」ることから、引用例1の「ICカードC」は、本願発明の「トランシーバ」に相当し、引用例1の「自動改札機2」は、本願発明の「ホスト機器」に相当する。また、引用例1発明の「ICカードCが装着されている携帯電話機1の所持者は、上記自動改札機2を通過する際に、当該自動改札機2の所定の位置(無線通信ユニット21の通信圏内)に当該携帯電話機1を翳すと、自動改札機2との無線通信(改札処理)が開始され」は、本願発明の「前記トランシーバと前記ホスト機器が互いにあらかじめ決められた範囲内に配置された時に前記ホスト機器と通信するように構成された前記トランシーバ」に相当する。
(3)引用例1発明の「自動改札機2との無線通信(改札処理)が開始され、制御部11は、振動パターンテーブル11bに基づく通信開始時の振動パターンで当該携帯電話機1本体を第1の振動パターンにて振動させ、
自動改札機2との改札処理が完了すると、制御部11は、上記振動パターンテーブル11bに基づく改札処理終了時の振動パターンで当該携帯電話機1本体を第2の振動パターンにて振動させ」で、「制御部11」は、振動を制御していることから、本願発明の「プロセッサ」に相当し、「改札処理の開始」「改札処理の終了」は、携帯電話機1と自動改札機2との相互作用事象を表していて、それぞれの振動パターンを振動パターンテーブル11から選択しているから、本願発明の「前記使用者機器とホスト機器との間の複数の特定の相互作用事象を検出し、そして各々の特定の相互作用事象が起こった時に複数の触感効果の中から前記各々の特定の相互作用事象に対して異なる触感効果を選択するように構成されたプロセッサ」と同等の機能を有している。
(4)引用例1発明の「振動部17は、当該携帯電話機1全体を振動させる振動機構により構成され、振動部17は、制御部11による振動機能の設定に基づいて、当該携帯電話機1を振動させ」は、携帯電話機内に装着されているICチップと自動改札機との通信状況や改札処理の状況を利用者に感覚的、かつ、確実に通知するためのものであるから、本願発明の「プロセッサが前記各々の特定相互作用事象が発生したと判定した際に、使用者に前記プロセッサにより選択された触感効果を与えるように構成された触感アクチュエータ」に相当する。
(5)引用例1発明の第1の振動パターンは、「通信開始時」を表すものであるから、「前記複数の特定の相互作用事象が、前記使用者と前記ホスト機器との無線接続の確立、」「を含む」といえる。
引用例1発明の「取引端末装置が利用者が提示した携帯端末機器から読取った電子マネーとしての情報によって商取引を行うことに適用でき、携帯端末機器と取引端末装置との通信状況や処理状況などに応じて携帯端末機器本体を振動させることにより、携帯端末機器と取引端末装置との通信状況や処理状況などを利用者に感覚的、かつ、確実に通知する携帯端末機器携帯端末機器」で、処理状況として電子マネーの取引に関することは明らかであるから、本願発明の「前記複数の特定の相互作用事象が、金銭取引」「を含む」ものといえる。
してみると、両発明の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「無線相互作用システム内で動作可能な使用者機器であって:
ホスト機器と無線で通信するように構成されたトランシーバであって、前記トランシーバと前記ホスト機器が互いにあらかじめ決められた範囲内に配置された時に前記ホスト機器と通信するように構成された前記トランシーバと;
前記使用者機器とホスト機器との間の複数の特定の相互作用事象を検出し、そして各々の特定の相互作用事象が起こった時に複数の触感効果の中から前記各々の特定の相互作用事象に対して異なる触感効果を選択するように構成されたプロセッサと;
プロセッサが前記各々の特定相互作用事象が発生したと判定した際に、使用者に前記プロセッサにより選択された触感効果を与えるように構成された触感アクチュエータとを含み、
前記複数の特定の相互作用事象が、前記使用者と前記ホスト機器との無線接続の確立、そして金銭取引を含む、前記使用者機器。」

[相違点]
(1)本願発明の使用者機器は、触感効果をあたえる特定の相互作用事象として、「使用者とホスト機器が互いに範囲内に入ったこと」を含んでいるのに対して、引用例1発明の携帯電話機1は、振動パターンとして、このような状況を知らせる機能を有していない点。
(2)本願発明の使用者機器は、触感効果をあたえる特定の相互作用事象として、「使用者とホスト機器との無線接続の喪失」を含んでいるのに対して、引用例1発明の携帯電話機1は、振動パターンとして、このような状況を知らせる機能を有していない点。
(3)本願発明の使用者機器は、触感効果をあたえる特定の相互作用事象として、「金銭取引の開始および完了」を含んでいるのに対して、引用例1発明では、携帯端末機器と取引端末装置との通信状況や処理状況などを利用者に感覚的、かつ、確実に通知すると記載されているものの、通信状況、処理状況に関しては明記されていない点。

5. 当審の判断
相違点について
(1)引用例2の記載事項には、実質的に、使用者機器が、触感効果をあたえる特定の相互作用事象として、「使用者とホスト機器が互いに範囲内に入ったこと」が記載されており、引用例1発明において、どの様な状況にどの様な振動パターを発生するかは任意であるから、引用例1発明に引用例2の記載事項を適用し、相違点(1)の構成とすることは、当業者が容易になしえることである。また、引用例2の記載事項を引用例1発明に適用した場合、振動パターンを異なるものとすることは、識別という観点からみれば、技術的に困難なこととはいえない。
(2)本願発明における「使用者と前記ホスト機器との無線接続の喪失」は、一般的に、一度確立された通信が失われることであり、明細書段落番号0026には、「切断」と「喪失」とが記載されていて、「切断」は、システムが切断を行うことと認められ、「喪失」は、システム的には接続が確立されたものの、処理が終了する前に通信の範囲外になって接続がなくなった状態を表しているものと認められる。
引用例3の記載事項には、処理が正常に終了をする前に、通信の範囲外になったことをバイブレーションで知らせることが記載されており、引用例1発明において、どの様な状況にどの様な振動パターを発生するかは任意であるから、引用例1発明に引用例3の記載事項を適用し、相違点(3)の構成とすることは、当業者が容易になしえることである。また、引用例2の記載事項を引用例1発明に適用した場合、振動パターンを異なるものとすることは、識別という観点からみれば、技術的に困難なこととはいえない。
(3)引用例1発明の自動改札システムでは、処理の開始と終了を振動パターンで認識させることが記載されており、この記載事項を、携帯端末機器と取引端末装置との通信状況や処理状況について適用し、処理の開始と終了を振動パターンで認識させる、すなわち、複数の特定の相互作用事象が、金銭取引の開始および完了を含むものとすることは、当業者が容易になしえることである

以上のとおりであるから、相違点にかかる発明の構成は、引用例1発明、引用例2、3の記載事項から当業者が容易に想到することができたものである。
そして本願発明の効果も引用例1発明、引用例2、3の記載事項から当業者が推測できる範囲のものである。

6.むすび
したがって、本願発明は引用例1発明、引用例2、3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-02 
結審通知日 2015-10-06 
審決日 2015-10-19 
出願番号 特願2011-507504(P2011-507504)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村田 充裕  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 小田 浩
石川 正二
発明の名称 短距離無線システムにおける使用者への触感効果提供  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

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