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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1323324
審判番号 不服2015-21033  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-27 
確定日 2017-01-05 
事件の表示 特願2010-289204号「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月19日出願公開、特開2012-135404号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年12月27日の出願であって、平成26年6月23日付け及び同年6月30日付けで手続補正がなされ、同年9月17日付け拒絶理由通知に対して、同年11月20日付けで手続補正がなされ、平成27年5月26日付け拒絶理由通知に対して、同年7月31日付けで手続補正がなされたところ、同年8月25日付けで補正却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月27日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成27年7月31日付け手続補正は、既に補正却下の決定がなされている。そして、本件補正は、明細書及び特許請求の範囲を補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前に

(平成26年11月20日付け手続補正)
「【請求項1】
A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を複数備え、
B 前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組み合わせに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
C 表示結果が導出される前に、入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
D 遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段と、
E 前記表示結果を導出する制御を行う導出制御手段と、
F 前記複数の可変表示部を通る予め定められた複数の組み合わせラインのうち特定の組み合わせライン上に導出された識別情報の組み合わせに応じて入賞が発生したか否かを判定する入賞判定手段と、
G 前記事前決定手段による有利度を設定する有利度設定手段と、
H 前記事前決定手段が用いるデータであって、第1モードデータと第2モードデータと、を含むモードデータを設定するモードデータ設定手段と、
I 前記第1モードデータを初期化して初期値を設定する第1モードデータ初期化手段と、
を備え、
J 前記入賞は、
前記複数の組み合わせラインのうち特定の組み合わせラインに特定の識別情報の組み合わせが導出されることで発生する第1の入賞と、
前記複数の組み合わせラインのうち前記特定の組み合わせライン以外のいずれかの組み合わせラインに前記特定の識別情報の組み合わせが導出され、かつ前記複数の組み合わせラインのうち前記特定の組み合わせラインに前記特定の識別情報の組み合わせとは異なる所定の識別情報の組み合わせが導出されることで発生する第2の入賞と、
を含み、
K 前記モードデータ設定手段は、前記複数の組み合わせラインのいずれかに前記特定の識別情報の組み合わせが導出された場合に、前記特定の組み合わせラインに導出された識別情報の組み合わせに応じて前記第1モードデータの設定を行い、
L 前記第1モードデータは、前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合でも初期化されることがないデータであり、
M 前記第2モードデータは、前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に初期化されて初期値が設定されるデータであり、
N 前記第1モードデータは、前記第2モードデータとして初期値が設定されている場合に前記第2モードデータが示す状態を細分化するデータであり、
O 前記第1モードデータ初期化手段は、前記第2モードデータとして前記初期値以外の値が設定される場合に前記第1モードデータを初期化し、
P 前記事前決定手段は、
前記第2モードデータが前記初期値の場合には、前記第1モードデータを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定し、
前記第2モードデータが前記初期値以外の場合には、該第2モードデータを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定する
ことを特徴とするスロットマシン。」

とあったものを、

(本件補正である平成27年11月27日付け手続補正)
「【請求項1】
A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を複数備え、
B 前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組み合わせに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
C 表示結果が導出される前に、遊技状態の移行を伴う特別入賞を含む入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
D 前記特別入賞の発生を許容する旨が決定され、該決定により許容された特別入賞を発生させることができなかったときに、当該決定を次ゲーム以降に持ち越す持越手段と、
E 遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段と、
F 前記表示結果を導出する制御を行う導出制御手段と、
G 前記複数の可変表示部を通る予め定められた複数の組み合わせラインのうち特定の組み合わせライン上に導出された識別情報の組み合わせに応じて入賞が発生したか否かを判定する入賞判定手段と、
H 前記事前決定手段による有利度を設定する有利度設定手段と、
I 前記事前決定手段が用いるデータであって、第1モードデータと第2モードデータと、を含むモードデータを設定するモードデータ設定手段と、
J 前記第1モードデータを初期化して初期値を設定する第1モードデータ初期化手段と、
K 前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に前記持越手段により持ち越されている特別入賞の発生を許容する旨の決定を初期化する決定初期化手段と、
を備え、
L 前記入賞は、
前記複数の組み合わせラインのうち特定の組み合わせラインに特定の識別情報の組み合わせが導出されることで発生する第1の入賞と、
前記複数の組み合わせラインのうち前記特定の組み合わせライン以外のいずれかの組み合わせラインに前記特定の識別情報の組み合わせが導出され、かつ前記複数の組み合わせラインのうち前記特定の組み合わせラインに前記特定の識別情報の組み合わせとは異なる所定の識別情報の組み合わせが導出されることで発生する第2の入賞と、
を含み、
M 前記モードデータ設定手段は、前記複数の組み合わせラインのいずれかに前記特定の識別情報の組み合わせが導出された場合に、前記特定の組み合わせラインに導出された識別情報の組み合わせに応じて前記第1モードデータの設定を行い、
N 前記第1モードデータは、前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合でも初期化されることがないデータであり、
O 前記第2モードデータは、前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に初期化されて初期値が設定されるとともに、前記持越手段により特別入賞の発生を許容する旨の決定が持ち越されている場合に前記初期値以外の値が設定されるデータであり、
P 前記第1モードデータは、前記第2モードデータとして初期値が設定されている場合に複数の値のうちのいずれかの値が選択的に設定されるデータであり、
Q 前記第1モードデータ初期化手段は、前記第2モードデータとして前記初期値以外の値が設定される場合に前記第1モードデータを初期化し、
R 前記事前決定手段は、
前記第2モードデータが前記初期値の場合には、前記第1モードデータを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定し、
前記第2モードデータが前記初期値以外の場合には、該第2モードデータを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定する
ことを特徴とするスロットマシン。」

と補正することを含むものである(下線部は補正箇所を示す。記号A?Rは、分説するため当審で付した。)。

2 補正の適否
(1)補正事項
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、以下の補正事項を含むものである。

(a)補正事項1
補正前の「表示結果が導出される前に、入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段」を、「表示結果が導出される前に、遊技状態の移行を伴う特別入賞を含む入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段」とする補正。

(b)補正事項2
「持越手段」に関し、「前記特別入賞の発生を許容する旨が決定され、該決定により許容された特別入賞を発生させることができなかったときに、当該決定を次ゲーム以降に持ち越す持越手段と、」との記載と、「前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に前記持越手段により持ち越されている特別入賞の発生を許容する旨の決定を初期化する決定初期化手段と、」との記載を追加するとともに、
補正前に「前記第2モードデータは、前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に初期化されて初期値が設定されるデータであり」とあったものを、「前記第2モードデータは、前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に初期化されて初期値が設定されるとともに、前記持越手段により特別入賞の発生を許容する旨の決定が持ち越されている場合に前記初期値以外の値が設定されるデータであり」とする補正。

(c)補正事項3
補正前の「前記第2モードデータが示す状態を細分化するデータ」を、「複数の値のうちのいずれかの値が選択的に設定されるデータ」とする補正。

(2)補正の目的
補正事項1は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「表示結果が導出される前に、入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段」を、より下位概念に限定するものである。
補正事項2は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記第2モードデータは、前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に初期化されて初期値が設定されるデータであり」を、より下位概念に限定するとともに、下位概念に限定する記載中の「持越手段」について、「前記特別入賞の発生を許容する旨が決定され、該決定により許容された特別入賞を発生させることができなかったときに、当該決定を次ゲーム以降に持ち越す持越手段と、」、「前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に前記持越手段により持ち越されている特別入賞の発生を許容する旨の決定を初期化する決定初期化手段と、」と、さらに説明を付加するものである。
補正事項3は、平成27年5月26日付け拒絶理由通知において意味内容が不明であると指摘された記載を補正することにより、請求項1の記載を明りょうにするものである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」(補正事項1及び2)及び同項第4号に規定する「明りょうでない記載の釈明」(補正事項3)を目的とする補正に該当する。
さらに、本件補正は新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。

(1)引用文献及びその記載事項
(1-1)引用文献1
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-275393号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(1-ア)
「【0008】
手段1.予め定められた移行条件が成立した場合に、遊技状態を通常遊技状態とは遊技媒体の獲得期待値が異なる他の遊技状態(RT1ゲーム、RT2ゲーム)へ移行させる状態移行手段(主制御装置131のステップS1601?ステップS1607)と、
遊技媒体の獲得期待値に対応した設定値を複数段階備え、それら設定値の中から一の設定値を決定する設定値決定手段(主制御装置131のステップS511)と、
当該設定値決定手段により決定される設定値を変更すべく操作される設定値変更手段(設定キー、設定キー挿入孔124、リセットスイッチ123、スタートレバー71、主制御装置131のステップS402、ステップS501?ステップS508)と、
遊技状態が前記他の遊技状態である旨の遊技状態情報(RT1フラグ、RT2フラグ、残RTカウンタ155の値)、及び前記設定値変更手段により変更された設定値変更情報(設定値格納エリア156aに記憶される値)等の遊技に関する各種情報を一時記憶する一時記憶手段(RAM153)と
を備えた遊技機において、
前記設定値変更手段により設定値変更が開始される場合に、前記一時記憶手段に記憶された情報を消去する情報消去手段(主制御装置131のステップS404における一部RAMクリア処理)を備え、
さらに、前記一時記憶手段には前記情報消去手段により情報が消去されない保護記憶手段(保護エリア159)を設けるとともに、当該保護記憶手段に前記遊技状態情報を記憶させたことを特徴とする遊技機。
・・・・・
【0026】
手段8.手段1乃至手段7のいずれかにおいて、複数の絵柄を可変表示する絵柄表示装置(リールユニット41)と、前記絵柄の可変表示を開始させるべく操作される始動操作手段(スタートレバー71)と、当該始動操作手段の操作に基づいて抽選処理を実行する抽選手段(主制御装置131の抽選処理)と、前記絵柄の可変表示を停止させるべく操作される停止操作手段(ストップスイッチ72?74)とを備え、
前記始動操作手段の操作に基づいて前記絵柄の可変表示を開始し、前記停止操作手段の操作に基づいて前記絵柄の可変表示を停止させ、
前記抽選処理の抽選結果が所定役当選であって前記絵柄の可変表示領域における予め定められた有効位置(有効ライン)に所定絵柄が停止した場合、遊技者に特典を付与することを特徴とする遊技機。
・・・・・
【0032】
手段10.手段8又は手段9において、前記絵柄表示装置を、周方向に周回するとともに当該周方向に前記絵柄が複数種付された複数の周回体(リール42L,42M,42R)とするとともに、前記停止操作手段を前記各周回体の周回を個別に停止させるよう複数設け、
さらに、前記各周回体について各絵柄のうち一部の絵柄を視認可能とする表示窓(表示窓31L,31M,31R)を設けたことを特徴とする遊技機。」

(1-イ)
「【0034】
以下、遊技機の一種である回胴式遊技機、具体的にはスロットマシンに適用した場合の一実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1はスロットマシン10の正面図、図2はスロットマシン10の前面扉12を閉じた状態の斜視図、図3はスロットマシン10の前面扉12を開いた状態の斜視図、図4は前面扉12の背面図、図5は筐体11の正面図である。」

(1-ウ)
「【0046】
各リール42L,42M,42Rに付された図柄のうち、表示窓31L,31M,31Rを介して全体を視認可能な図柄数は、主として表示窓31L,31M,31Rの上下方向の長さによって決定される所定数に限られている。本実施形態では各リール3個ずつとされている。このため、各リール42L,42M,42Rがすべて停止している状態では、3×3=9個の図柄が遊技者に視認可能な状態となる。
・・・・・
【0050】
遊技パネル30には、各表示窓31L,31M,31Rを結ぶようにして、横方向へ平行に3本、斜め方向へたすき掛けに2本、計5本の組合せラインが付されている。勿論、最大組合せライン数を6以上としてもよく、5未満としてもよく、所定条件に応じて最大組合せライン数を変更するようにしてもよい。これら各組合せラインに対応して、表示窓31L,31M,31R群の正面から見て左側には有効ライン表示部32,33,34が設けられている。第1有効ライン表示部32は組合せラインのうち中央の横ライン(中ライン)が有効化された場合に点灯等によって表示報知される。第2有効ライン表示部33は組合せラインのうち上下の横ライン(上ライン及び下ライン)が有効化された場合に点灯等によって表示報知される。第3有効ライン表示部34は組合せラインのうち一対の斜めライン(右下がりライン及び右上がりライン)が有効化された場合に点灯等によって表示報知される。そして、有効化された組合せライン、すなわち有効ライン上に図柄が所定の組合せで停止した場合に入賞となり、予め定められたメダル数の払出処理や、特別遊技状態たるBBゲームやRTゲームへの移行処理などが実行される。」

(1-エ)
「【0054】
遊技状態が移行する状態移行入賞としてBB入賞がある。有効ライン上に左から「7」図柄、「7」図柄、「7」図柄と並んで停止した場合、BB入賞として遊技状態が特別遊技状態たるBBゲームに移行する。但し、「7」図柄が有効ライン上に左・中・右と並んで停止したとしても、メダル払出は行われない。すなわち、「7」図柄の組合せが有効ライン上に成立した際には、BBゲームに移行するのみである。」

(1-オ)
「【0106】
図14は電源投入後に実行される主制御装置131でのメイン処理を示すフローチャートである。メイン処理は、停電からの復旧や電源スイッチ122のオン操作によって電源が投入された際に実行される。
・・・・・
【0116】
メイン処理の説明に戻り、ステップS406にて当選確率設定処理を行った後には、ステップS407にて遊技に関わる主要な制御を行う通常処理を実行する。
・・・・・
【0121】
次に、遊技に関わる主要な制御を行う通常処理について図16のフローチャートに基づき説明する。ここで、本実施の形態では、遊技状態として通常遊技状態と、RTゲームとが少なくとも設定されている。RTゲームとは、再遊技役の当選確率が通常遊技状態とは異なるように設定されたゲームである。また、RTゲームには、再遊技の当選確率が異なるRT1ゲームとRT2ゲームとがある。以下の説明では、先ず通常遊技状態について説明し、その後、RTゲームについて説明する。
【0122】
通常処理のステップS601では、メダルがベットされているか否かを判定する。メダルがベットされているときには、続いてステップS602にてスタートレバー71が操作されたか否かを判定する。ステップS601,ステップS602が共にYESの場合には、ステップS603の抽選処理、ステップS604のリール制御処理、ステップS605のメダル払出処理、ステップS606のボーナスゲーム処理、ステップS607のRTゲーム処理を順に実行し、ステップS601に戻る。一方、ステップS601にてメダルがベットされていない、またはステップS602にてスタートレバー71が操作されていない場合には、ステップS601に戻る。」

(1-カ)
「【0123】
次に、ステップS603の抽選処理について、図17のフローチャートに基づき説明する。
【0124】
ステップS701では、抽選テーブル選択処理を実行する。抽選テーブル選択処理では、ステップS801にてRAM153のRT1フラグ格納エリア156bにRT1フラグがセットされているか否かを判定し、さらにステップS802にてRAM153のRT2フラグ格納エリア156cにRT2フラグがセットされているか否かを判定する。これらRT1フラグ及びRT2フラグは、後述するように遊技状態がそれぞれ対応するRTゲームに移行する際にセットされる。したがって、通常遊技状態では、ステップS801及びステップS802にて否定判定をし、ステップS803にて通常テーブルを選択した後に本処理を終了する。
・・・・・
【0128】
その後、ステップS704ではインデックス値IVと対応する役の当否判定を行う。役の当否判定では判定値DVが65535を超えたか否かを判定し、65535を超えた場合には、ステップS705にてそのときのインデックス値IVと対応する役の当選フラグをセットする。ちなみに、当選フラグが小役当選フラグ又は再遊技当選フラグである場合、これら当選フラグは、該当選フラグがセットされたゲームの終了時にクリアされる。一方、当選フラグがBB当選フラグである場合、BB当選フラグはBB図柄の組合せが有効ライン上に成立したことを条件の1つとしてクリアされる。すなわち、BB当選フラグは、複数回のゲームにわたって有効とされる場合がある。なお、BB当選フラグを持ち越した次ゲーム以降における役の当否判定では、小役又は再遊技の当否判定は行うが、BBに関する当否判定は行わない。」

(1-キ)
「【0160】
リール制御処理の説明に戻り、ステップS1010にて全てのリールが停止していた場合には、ステップS1012に進み、払出判定処理を行って本処理を終了する。払出判定処理とは、入賞図柄の組合せが有効ライン上に並んでいることを条件の1つとしてメダルの払出枚数を設定する処理である。
【0161】
払出判定処理では、図25のフローチャートに示すように、先ずステップS1301において、各リール42L,42M,42Rの下ライン上に停止した停止図柄の図柄番号から所定有効ライン上の図柄の組合せを導出する。続くステップS1302では、導出した図柄の組合せが再遊技入賞又は小役入賞成立となる図柄の組合せと一致するか否かを判定する。再遊技入賞又は小役入賞が成立している場合にはステップS1303に進み、入賞成立役が抽選処理にてセットされた当選フラグと一致しているか否かを判定する。入賞成立役と当選フラグが一致していない場合には、ステップS1304にてスロットマシン10をエラー状態とすると共にエラーの発生を報知する異常発生時処理を行う。その後、ステップS1305では、リセットスイッチ123が操作されたか否かを判定し、リセットスイッチ123が操作されるまで待機する。リセットスイッチ123が操作された場合には、エラー状態から復帰してそれ以降の処理を開始すべくステップS1306に進む。」

(1-ク)
「【0168】
次に、ステップS606のボーナスゲーム処理について、図27のフローチャートに基づき説明する。
・・・・・
【0171】
このボーナス図柄判定処理では、先ずステップS1502にてBB当選フラグがセットされているか否かを判定し、セットされていないときにはそのまま本処理を終了する。BB当選フラグがセットされているときにはステップS1503に進み、今回有効ライン上にBB図柄の組合せが停止したか否かを判定し、BB図柄の組合せが停止していないときにはそのまま本処理を終了する。一方、今回有効ライン上にBB図柄の組合せが停止したときには、ステップS1504においてBB開始処理を行う。BB開始処理では、BB当選フラグをクリアすると共にBB設定フラグをセットしてボーナスゲームの1種であるBBゲームとする。また、BBゲーム中に払出可能な残りのメダル数をカウントするための残獲得数カウンタに400をセットすると共に、残獲得枚数表示部36に400を表示させる処理を行う。ちなみに、現在の遊技状態がボーナスゲームか否かの判定は、BB設定フラグのセット有無により判定している。続くステップS1505ではRB開始処理を行い、その後本処理を終了する。RB開始処理では、成立可能なJAC入賞回数をカウントするための残JAC入賞カウンタに8をセットすると共に、JACゲームの残りゲーム数をカウントするための残JACゲームカウンタに12をセットする。」

(1-ケ)
「【0174】
次に、ステップS607のRTゲーム処理について、図28のフローチャートに基づき説明する。
・・・・・
【0177】
ステップS1602にてBB当選フラグがセットされていない場合には、ステップS1603にてRAM153のBB終了フラグ格納エリアにBB終了フラグがセットされてい
るか否かを判定する。また、ステップS1604ではベル役入賞が成立したか否かを判定する。その結果、BB終了フラグがセットされているか、又はベル役入賞が成立している場合には、ステップS1605にてRT1ゲーム開始処理を実行する。つまり、BBゲームの終了後、又は通常遊技状態においてベル役入賞が成立することにより、遊技状態が通常遊技状態からRT1ゲームに移行する。RT1ゲーム開始処理では、RAM153のRT1フラグ格納エリア156bにRT1フラグをセットし、さらにRAM153の残RTカウンタ155に50をセットする。また、RT1ゲーム開始コマンドをセットする。RT1ゲーム開始コマンドは表示制御装置111に対して送信されるコマンドであり、表示制御装置111は当該コマンドを受信することにより、RT1報知演出を開始させるべく補助表示部15の表示制御を開始する。当該RT1報知演出はRT1ゲームが終了されるまで継続される。なお、BB終了フラグがセットされている場合には、当該RT1ゲーム開始処理にてBB終了フラグをクリアする。
・・・・・
【0179】
一方、BB終了フラグがセットされておらず、さらにベル役入賞が成立していない場合には、ステップS1606にて再遊技入賞が成立したか否かを判定する。再遊技入賞が成立していない場合には、そのまま本処理を終了する。再遊技入賞が成立している場合には、ステップS1607にてRT2ゲーム開始処理を実行する。つまり、通常遊技状態において再遊技入賞が成立することにより、遊技状態が通常遊技状態からRT2ゲームに移行する。RT2ゲーム開始処理では、RAM153のRT2フラグ格納エリア156cにRT2フラグをセットし、さらにRAM153の残RTカウンタ155に300をセットする。また、RT2ゲーム開始コマンドをセットする。RT2ゲーム開始コマンドは表示制御装置111に対して送信されるコマンドであり、表示制御装置111は、当該コマンドを受信することにより、RT2報知演出を開始させるべく補助表示部15の表示制御を開始する。当該RT2報知演出はRT2ゲームが終了されるまで継続される。RT2ゲーム開始処理を実行した後はステップS1608にてフラグクリア処理を実行し本処理を終了する。
・・・・・
【0181】
RT1ゲームに移行した場合には、抽選テーブル選択処理(図18参照)のステップS801にて肯定判定をし、ステップS804にてRT1テーブルを選択する。つまり、抽選処理(図17参照)ではRT1テーブルに基づいて役の抽選を行う。
・・・・・
【0183】
RT2ゲームに移行した場合には、抽選テーブル選択処理(図18参照)のステップS802にて肯定判定をし、ステップS805にてRT2テーブルを選択する。つまり、抽選処理(図17参照)ではRT2テーブルに基づいて役の抽選を行う。
・・・・・
【0186】
RTゲーム解除処理では、先ずステップS1609にてRAM153のBB当選フラグ格納エリアにBB当選フラグがセットされているか否か、又はRAM153のBB設定フラグ格納エリアにBB設定フラグがセットされているか否かを判定する。それらのいずれかのフラグがセットされている場合には、ステップS1610にてRTゲーム終了処理を実行した後にステップS1608に進む。RTゲーム終了処理では、RT1ゲームの場合にはRT1フラグをクリアするとともに残RTカウンタ155を0にクリアし、RT2ゲームの場合にはRT2フラグをクリアするとともに残RTカウンタ155を0にクリアする。つまり、RTゲーム中にBB役に当選した場合であって、その当選ゲームでBB入賞が成立しなかった場合には遊技状態が通常遊技状態に復帰する。また、RTゲーム中にBB役に当選した場合であって、その当選ゲームでBB入賞が成立した場合には遊技状態がBBゲームに移行する。但し、BBゲーム終了後には上述したとおり遊技状態がRT1ゲームに移行する。」

(1-コ)
「【0196】
なお、上述した各実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
・・・・・
【0204】
(7)設定値変更(一部RAMクリア処理)に際してRTゲームだけでなくBBゲームに関する情報もクリアされないようにしてもよい。すなわち、RAM153の保護エリア159にBB当選フラグ格納エリア、BB設定フラグ格納エリアなどを設ける構成とする。」

(1-サ)
上記(1-ア)の段落【0026】には、「複数の絵柄を可変表示する絵柄表示装置(リールユニット41)」と記載され、同段落【0032】には、「手段8又は手段9において、前記絵柄表示装置を、周方向に周回するとともに当該周方向に前記絵柄が複数種付された複数の周回体(リール42L,42M,42R)とするとともに・・・」と記載されている。
そうすると、引用文献1には、「複数の絵柄を可変表示する、周方向に前記絵柄が複数種付された複数の周回体(リール42L,42M,42R)」が記載されていると認められる。

(1-シ)
上記(1-ア)の段落【0026】には、「前記始動操作手段の操作に基づいて前記絵柄の可変表示を開始し、前記停止操作手段の操作に基づいて前記絵柄の可変表示を停止させ、前記抽選処理の抽選結果が所定役当選であって前記絵柄の可変表示領域における予め定められた有効位置(有効ライン)に所定絵柄が停止した場合、遊技者に特典を付与することを特徴とする遊技機。」と記載されている。
また、上記(1-ウ)の段落【0050】には、「有効ライン上に図柄が所定の組合せで停止した場合に入賞となり、予め定められたメダル数の払出処理や、特別遊技状態たるBBゲームやRTゲームへの移行処理などが実行される。」と記載されている。
そして、「前記絵柄の可変表示領域における予め定められた有効位置(有効ライン)に所定絵柄が停止した場合」と、「有効ライン上に図柄が所定の組合せで停止した場合」とが同じことを意味していることは明らかである。
さらに、上記(1-イ)の段落【0034】には、「以下、遊技機の一種である回胴式遊技機、具体的にはスロットマシンに適用した場合の一実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。」と記載されている。
そうすると、引用文献1には、「前記絵柄の可変表示を開始し、前記絵柄の可変表示を停止させ、有効ライン上に図柄が所定の組合せで停止した場合に入賞となるスロットマシン」が記載されていると認められる。

(1-ス)
上記(1-ア)の段落【0026】には、「当該始動操作手段の操作に基づいて抽選処理を実行する抽選手段(主制御装置131の抽選処理)」と記載されている。
また、上記(1-エ)の段落【0054】には、「遊技状態が移行する状態移行入賞としてBB入賞がある。有効ライン上に左から『7』図柄、『7』図柄、『7』図柄と並んで停止した場合、BB入賞として遊技状態が特別遊技状態たるBBゲームに移行する。」と記載されている。
そして、上記(1-カ)の段落【0123】には、「次に、ステップS603の抽選処理について、図17のフローチャートに基づき説明する。」と記載され、当該「抽選処理」について説明する同段落【0128】には、「その後、ステップS704ではインデックス値IVと対応する役の当否判定を行う。」と記載されている。
さらに、上記(1-オ)の段落【0122】には、「ステップS603の抽選処理、ステップS604のリール制御処理・・・を順に実行し」と記載され、リール制御処理の前に抽選処理を実行することが記載されている。
そうすると、引用文献1には、「前記主制御手段131は、遊技状態が移行する状態移行入賞としてBB入賞があり、リール制御処理の前に役の当否判定を行う抽選処理を実行する抽選手段を備える」ことが記載されていると認められる。

(1-セ)
上記(1-カ)の段落【0123】には、「次に、ステップS603の抽選処理について、図17のフローチャートに基づき説明する。」と記載され、当該「抽選処理」について説明する同段落【0128】には、「一方、当選フラグがBB当選フラグである場合、BB当選フラグはBB図柄の組合せが有効ライン上に成立したことを条件の1つとしてクリアされる。すなわち、BB当選フラグは、複数回のゲームにわたって有効とされる場合がある。なお、BB当選フラグを持ち越した次ゲーム以降における役の当否判定では、小役又は再遊技の当否判定は行うが、BBに関する当否判定は行わない。」と記載されている。
そして、「抽選処理」は「主制御装置131」により実行されるものであるから(段落【0106】、【0116】、【0122】を参照。)、引用文献1には、「前記主制御装置131は、当選フラグがBB当選フラグである場合、BB当選フラグをBB図柄の組合せが有効ライン上に成立するまで、複数回のゲームにわたって有効とすることにより、BB当選フラグを次ゲーム以降に持ち越す」ことが記載されていると認められる。

(1-ソ)
上記(1-キ)の段落【0160】には、「リール制御処理の説明に戻り、・・・」と記載され、当該「リール制御処理」について説明する同段落【0161】には、「先ずステップS1301において、各リール42L,42M,42Rの下ライン上に停止した停止図柄の図柄番号から所定有効ライン上の図柄の組合せを導出する。」と記載されている。
そして、「リール制御処理」は「主制御装置131」により実行されるものであるから(段落【0106】、【0116】、【0122】を参照。)、引用文献1には、「前記主制御手段131は、所定有効ライン上の図柄の組合せを導出するリール制御処理を実行する」ことが記載されていると認められる。

(1-タ)
上記(1-ウ)の段落【0046】には、「各リール42L,42M,42Rに付された図柄のうち、表示窓31L,31M,31Rを介して全体を視認可能な図柄数は、主として表示窓31L,31M,31Rの上下方向の長さによって決定される所定数に限られている。」と記載され、同段落【0050】には、「遊技パネル30には、各表示窓31L,31M,31Rを結ぶようにして、横方向へ平行に3本、斜め方向へたすき掛けに2本、計5本の組合せラインが付されている。」、「そして、有効化された組合せライン、すなわち有効ライン上に図柄が所定の組合せで停止した場合に入賞となり、予め定められたメダル数の払出処理や、特別遊技状態たるBBゲームやRTゲームへの移行処理などが実行される。」と記載されている。
また、上記(1-キ)の段落【0160】には、「リール制御処理の説明に戻り、・・・」と記載され、当該「リール制御処理」について説明する同段落【0161】には、「続くステップS1302では、導出した図柄の組合せが再遊技入賞又は小役入賞成立となる図柄の組合せと一致するか否かを判定する。」と記載されている。
ここで、「導出した図柄の組合せが再遊技入賞又は小役入賞成立となる図柄の組合せと一致するか否かを判定する」ことは、「入賞となるか否かを判定する」ことであることは明らかである。
そして、「リール制御処理」は「主制御装置131」により実行されるものであるから(段落【0106】、【0116】、【0122】を参照。)、引用文献1には、「前記主制御装置131は、各リール42L,42M,42Rに付された図柄を視認可能な各表示窓31L,31M,31Rを結ぶようにして計5本の組合せラインが付されており、有効化された組合せライン上に図柄が所定の組合せで停止して入賞となるか否かを判定する」ことが記載されていると認められる。

(1-チ)
上記(1-ケ)の段落【0174】には、「次に、ステップS607のRTゲーム処理について、図28のフローチャートに基づき説明する。」と記載され、当該「RTゲーム処理」について説明する同段落【0177】には、「RT1ゲーム開始処理では、RAM153のRT1フラグ格納エリア156bにRT1フラグをセットし、さらにRAM153の残RTカウンタ155に50をセットする。」と記載され、同段落【0179】には、「RT2ゲーム開始処理では、RAM153のRT2フラグ格納エリア156cにRT2フラグをセットし、さらにRAM153の残RTカウンタ155に300をセットする。」と記載されている。
また、上記(1-カ)の段落【0123】には、「次に、ステップS603の抽選処理について、図17のフローチャートに基づき説明する。」と記載され、当該「抽選処理」について説明する同段落【0128】には、「役の当否判定では判定値DVが65535を超えたか否かを判定し、65535を超えた場合には、ステップS705にてそのときのインデックス値IVと対応する役の当選フラグをセットする。」、「一方、当選フラグがBB当選フラグである場合、BB当選フラグはBB図柄の組合せが有効ライン上に成立したことを条件の1つとしてクリアされる。」と記載されている。
そして、上記(1-ク)の段落【0168】には、「次に、ステップS606のボーナスゲーム処理について、図27のフローチャートに基づき説明する。」と記載され、当該「ボーナスゲーム処理」について説明する同段落【0171】には、「BB開始処理では、BB当選フラグをクリアすると共にBB設定フラグをセットしてボーナスゲームの1種であるBBゲームとする。」と記載されている。
「RTゲーム処理」、「抽選処理」及び「ボーナスゲーム処理」は、いずれも「主制御装置131」により実行されるものであるから(段落【0106】、【0116】、【0122】を参照。)、引用文献1には、「前記主制御装置131は、RT1フラグをセットし、RT2フラグをセットし、BB当選フラグをセットし、BB設定フラグをセットしてBBゲームとする」ことが記載されていると認められる。

(1-ツ)
上記(1-ケ)の段落【0174】には、「次に、ステップS607のRTゲーム処理について、図28のフローチャートに基づき説明する。」と記載され、当該「RTゲーム処理」について説明する同段落【0186】には、「RTゲーム終了処理では、RT1ゲームの場合にはRT1フラグをクリアするとともに残RTカウンタ155を0にクリアし、RT2ゲームの場合にはRT2フラグをクリアするとともに残RTカウンタ155を0にクリアする。」と記載されている。
そして、「RTゲーム処理」は「主制御装置131」により実行されるものであるから(段落【0106】、【0116】、【0122】を参照。)、引用文献1には、「前記主制御装置131は、RT1フラグをクリアし、RT2フラグをクリアするRTゲーム終了処理を行う」ことが記載されていると認められる。

(1-テ)
上記(1-ア)の段落【0008】には、「遊技状態が前記他の遊技状態である旨の遊技状態情報(RT1フラグ、RT2フラグ、残RTカウンタ155の値)、及び前記設定値変更手段により変更された設定値変更情報(設定値格納エリア156aに記憶される値)等の遊技に関する各種情報を一時記憶する一時記憶手段(RAM153)とを備えた遊技機において、前記設定値変更手段により設定値変更が開始される場合に、前記一時記憶手段に記憶された情報を消去する情報消去手段(主制御装置131のステップS404における一部RAMクリア処理)を備え、さらに、前記一時記憶手段には前記情報消去手段により情報が消去されない保護記憶手段(保護エリア159)を設けるとともに、当該保護記憶手段に前記遊技状態情報を記憶させた」と記載されている。
そうすると、引用文献1には、「前記設定値変更手段により設定値変更が開始される場合に、一時記憶手段に記憶された情報を消去する情報消去手段を備え、前記一時記憶手段には前記情報消去手段により情報が消去されない保護記憶手段を設けるとともに、RT1フラグ、RT2フラグは当該保護記憶手段に記憶されるものである」ことが記載されていると認められる。

(1-ト)
上記(1-ケ)の段落【0186】には、「RTゲーム解除処理では、先ずステップS1609にてRAM153のBB当選フラグ格納エリアにBB当選フラグがセットされているか否か、又はRAM153のBB設定フラグ格納エリアにBB設定フラグがセットされているか否かを判定する。それらのいずれかのフラグがセットされている場合には、ステップS1610にてRTゲーム終了処理を実行した後にステップS1608に進む。RTゲーム終了処理では、RT1ゲームの場合にはRT1フラグをクリアするとともに残RTカウンタ155を0にクリアし、RT2ゲームの場合にはRT2フラグをクリアするとともに残RTカウンタ155を0にクリアする。」と記載されている。
また、上記(1-ツ)で検討したとおり、RT1フラグをクリアし、RT2フラグをクリアするのは、主制御手段131である。
そうすると、引用文献1には、「前記主制御手段131は、BB当選フラグがセットされているか否か、又はBB設定フラグがセットされているか否かを判定し、それらのいずれかのフラグがセットされている場合には、RT1ゲームの場合にはRT1フラグをクリアし、RT2ゲームの場合にはRT2フラグをクリアする」ことが記載されていると認められる。

(1-ナ)
上記(1-カ)の段落【0123】には、「次に、ステップS603の抽選処理について、図17のフローチャートに基づき説明する。」と記載され、当該「抽選処理」について説明する同段落【0124】には、「ステップS701では、抽選テーブル選択処理を実行する。抽選テーブル選択処理では、ステップS801にてRAM153のRT1フラグ格納エリア156bにRT1フラグがセットされているか否かを判定し、さらにステップS802にてRAM153のRT2フラグ格納エリア156cにRT2フラグがセットされているか否かを判定する。」と記載されている。
そして、上記(1-ケ)の段落【0181】には、「RT1ゲームに移行した場合には、抽選テーブル選択処理(図18参照)のステップS801にて肯定判定をし、ステップS804にてRT1テーブルを選択する。つまり、抽選処理(図17参照)ではRT1テーブルに基づいて役の抽選を行う。」と記載され、同段落【0183】には、「RT2ゲームに移行した場合には、抽選テーブル選択処理(図18参照)のステップS802にて肯定判定をし、ステップS805にてRT2テーブルを選択する。つまり、抽選処理(図17参照)ではRT2テーブルに基づいて役の抽選を行う。」と記載されている。
また、上記(1-ス)で検討したとおり、抽選処理は抽選手段により実行されるものである。
そうすると、引用文献1には、「前記抽選手段は、抽選テーブル選択処理では、RT1フラグがセットされているか否かを判定し、さらにRT2フラグがセットされているか否かを判定し、RT1ゲームに移行した場合には、抽選処理ではRT1テーブルに基づいて役の抽選を行い、RT2ゲームに移行した場合には、抽選処理ではRT2テーブルに基づいて役の抽選を行う」ことが記載されていると認められる。

上記(1-ア)?(1-コ)の記載事項及び(1-サ)?(1-ナ)の認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(記号a?rは、本願補正発明の記号A?Rに対応させて付した。ただし、引用発明には本願補正発明の記号K?Mに対応する構成がないため、記号k?mは使用していない。)。

「a 複数の絵柄を可変表示する、周方向に前記絵柄が複数種付された複数の周回体(リール42L,42M,42R)と、(1-サ)
主制御装置131を備え、
b 前記絵柄の可変表示を開始し、前記絵柄の可変表示を停止させ、有効ライン上に図柄が所定の組合せで停止した場合に入賞となるスロットマシンにおいて、(1-シ)
c 前記主制御手段131は、遊技状態が移行する状態移行入賞としてBB入賞があり、リール制御処理の前に役の当否判定を行う抽選処理を実行する抽選手段を備え、(1-ス)
d 前記主制御手段131は、当選フラグがBB当選フラグである場合、BB当選フラグをBB図柄の組合せが有効ライン上に成立するまで、複数回のゲームにわたって有効とすることにより、BB当選フラグを次ゲーム以降に持ち越し、(1-セ)
e 前記絵柄の可変表示を停止させるべく操作される停止操作手段を備え、(【0026】)
f 前記主制御手段131は、所定有効ライン上の図柄の組合せを導出するリール制御処理を実行し、(1-ソ)
g 前記主制御手段131は、各リール42L,42M,42Rに付された図柄を視認可能な各表示窓31L,31M,31Rを結ぶようにして計5本の組合せラインが付されており、有効化された組合せライン上に図柄が所定の組合せで停止して入賞となるか否かを判定し、(1-タ)
h 遊技媒体の獲得期待値に対応した設定値を複数段階備え、それら設定値の中から一の設定値を決定する設定値決定手段、及び、当該設定値決定手段により決定される設定値を変更すべく操作される設定値変更手段を備え、(【0008】)
i 前記主制御手段131は、RT1フラグをセットし、RT2フラグをセットし、BB当選フラグをセットし、BB設定フラグをセットしてBBゲームとし、(1-チ)
j 前記主制御手段131は、RT1フラグをクリアし、RT2フラグをクリアするRTゲーム終了処理を行い、(1-ツ)
n 前記設定値変更手段により設定値変更が開始される場合に、一時記憶手段に記憶された情報を消去する情報消去手段を備え、前記一時記憶手段には前記情報消去手段により情報が消去されない保護記憶手段を設けるとともに、RT1フラグ、RT2フラグは当該保護記憶手段に記憶されるものであり、(1-テ)
o BB当選フラグはBB図柄の組合せが有効ライン上に成立したことを条件の1つとしてクリアされるものであり、(【0128】)
p 遊技状態として通常遊技状態と、RTゲームとが少なくとも設定されており、RTゲームには、RT1ゲームとRT2ゲームとがあり、RT1フラグ及びRT2フラグは、遊技状態がそれぞれ対応するRTゲームに移行する際にセットされるものであり、(【0121】、【0124】)
q 前記主制御手段131は、BB当選フラグがセットされているか否か、又はBB設定フラグがセットされているか否かを判定し、それらのいずれかのフラグがセットされている場合には、RT1ゲームの場合にはRT1フラグをクリアし、RT2ゲームの場合にはRT2フラグをクリアし、(1-ト)
r 前記抽選手段は、抽選テーブル選択処理では、RT1フラグがセットされているか否かを判定し、さらにRT2フラグがセットされているか否かを判定し、RT1ゲームに移行した場合には、抽選処理ではRT1テーブルに基づいて役の抽選を行い、RT2ゲームに移行した場合には、抽選処理ではRT2テーブルに基づいて役の抽選を行う(1-ナ)
スロットマシン。(【0034】)」

(1-2)引用文献2
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-341073号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(2-ア)
「【0045】
(第1の実施の形態)
図1に示される如く、パチスロ機300は、本体302と、本体302の正面に設けられた開閉カバーとしての操作兼装飾部303とを備えて構成されている。」

(2-イ)
「【0058】
図2(A)に示されるように、表示窓314に停止した3個のリール350A、350B、350Cの上行(図2(A)の(1)線を参照)と下行(図2(A)の(2)線を参照)に沿って停止した図柄の位置、並びに2本の対角線(図2(A)の(3)線と図2(A)の(4)線を参照)に停止した図柄の位置が入賞ライン(有効ライン)として採用されるようになっている。
【0059】
また、図2(B)に示されるように、横並びの中央の行(図2(B)の(5)線を参照)に停止した図柄の位置が、非入賞ライン(非有効ライン)として採用されるようになっている。」

(2-ウ)
「【0173】
第2の実施の形態では、図2(A)に示す入賞ラインに入賞することが可能な役の種類として、以下の表15に示される如く、同一図柄列が揃う大役や小役とは別に、特別役として、「再遊技+特典」(以下、「第1の特別役」という)と、「小役(特典)」(以下、「第2の特別役」という)とを設定している。
【0174】
第1の特別役の特典は、前記所定回数のRTの付与であり、第2の特別役の特典の意味は、非入賞ラインに揃う図柄が入賞ラインに揃った場合よりも多い払い出し枚数が付与されている点である。」

(2-エ)
「【0177】
前記第1の特別役(「ベル・リプレイ・ベル」)は、図2(A)に示す右下がりの入賞ライン(3)にのみ揃うように設定されており、第1の特別役に内部当選しても、その他の入賞ラインに揃いそうな停止操作があっても、滑り制御によって蹴飛ばしが実行される。
【0178】
また、この第1の特別役が入賞ライン(3)に揃うときは、非入賞ラインに「リプレイ・リプレイ・リプレイ」という同一の図柄が揃うように、リールテープの図柄配列を設定している(表16及び表18参照)。このとき、非入賞ラインはあくまでも非入賞ラインではあるが、入賞ライン(3)に第1の特別役が同時に揃うことで、非入賞ラインに揃った擬似的な役(ここでは、再遊技)に加えて更にRTという特典が付与されるようになっている。即ち、非入賞ラインに疑似的な役(ここでは、再遊技)が揃うのと同時に入賞ラインに再遊技、小役、大役等、あるいはその他の特典が権利として付与される他の図柄配列の特別役が揃うように構成されている。」

(2-オ)
「【0209】
以上説明したように第2の実施の形態では、非入賞ラインを特別役(第1の特別役及び第2の特別役)の入賞の目安(シンボル)として適用することで、異なる種類によって構成される特別図柄の入賞をわかり易くすることができる。また、この特別役に関連付けた図柄(同一図柄)を非入賞ラインに揃えることで、特別役による受ける利益の種類を把握することができ、かつ単純に非入賞ラインに揃った図柄の本来の利益よりも大きい利益を得ることができるため、変化に富み、趣向性の高い遊技仕様とすることができる。」

(2-カ)
入賞ラインに入賞することが可能な役の種類を示す段落【0176】の【表15】には、役種が「再遊技」で、左、中、右がそれぞれ「リプレイ」で、権利行使内容が「リプレイAtype」であるものが記載されている。

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(対比にあたっては、本願補正発明の構成A?J、N?Rと引用発明の構成a?j、n?rについて、それぞれ(a)?(j)、(n)?(r)の見出しを付けて行った。なお、本願補正発明の構成K?Mについては、引用発明に対応する構成がないため、構成別の対比を行わずに相違点とした。)。

(a)引用発明の「複数の絵柄」は、「周回体」の「周方向に」「複数種付された」ものであるから、本願補正発明の「各々が識別可能な複数種類の識別情報」に相当する。
また、引用発明の「可変表示」、「周回体(リール42L,42M,42R)」は、それぞれ本願補正発明の「変動表示」、「可変表示部」に相当する。
そうすると、引用発明の「複数の絵柄を可変表示する、周方向に前記絵柄が複数種付された複数の周回体(リール42L,42M,42R)」「を備え」ることは、
本願補正発明の「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を複数備え」ることに相当する。

(b)引用発明において、「前記絵柄」は「周回体(リール42L,42M,42R)」に付されるものであるから(引用発明の構成aを参照。)、引用発明の「前記絵柄の可変表示」は、本願補正発明の「前記可変表示部」の「変動表示」に相当する。
そして、引用発明は、絵柄が停止すると、所定有効ライン上の図柄の組合せ(表示結果)が導出されるものであるから(引用発明の構成fを参照。)、引用発明の「前記絵柄の可変表示を停止させ」ることは、本願補正発明の「前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出」することに相当する。
また、引用発明の「有効ライン上に図柄が所定の組合せで停止した場合に入賞となる」ことは、入賞が図柄の組合せに応じて発生することは技術常識であるから、本願補正発明の「複数の可変表示部の表示結果の組み合わせに応じて入賞が発生可能」であることに相当する。
そうすると、引用発明の「前記絵柄の可変表示を開始し、前記絵柄の可変表示を停止させ、有効ライン上に図柄が所定の組合せで停止した場合に入賞となるスロットマシン」は、
本願補正発明の「前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組み合わせに応じて入賞が発生可能なスロットマシン」に相当する。

(c)引用発明の「抽選処理」は、「リール制御処理の前に」実行されるものであるから、表示結果が導出される前に実行されることは、明らかである。
また、引用発明の「BB入賞」は、「遊技状態が移行する状態移行入賞」であるから、本願補正発明の「遊技状態の移行を伴う特別入賞」に相当する。
そして、引用発明において、「役の当否判定を行う抽選処理を実行する」ことは、役に対応する「入賞について発生を許容するか否かを決定する」ことであるのは明らかである。
そうすると、引用発明の「遊技状態が移行する状態移行入賞としてBB入賞があり、リール制御処理の前に役の当否判定を行う抽選処理を実行する抽選手段」は、
本願補正発明の「表示結果が導出される前に、遊技状態の移行を伴う特別入賞を含む入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段」に相当する。

(d)引用発明の「当選フラグがBB当選フラグである」ことは、本願補正発明の「前記特別入賞の発生を許容する」ことに相当する。
そして、引用発明の「BB当選フラグはBB図柄の組合せが有効ライン上に成立したことを条件の1つとしてクリアされ、すなわち、BB当選フラグは、複数回のゲームにわたって有効とされる場合があり、BB当選フラグを次ゲーム以降に持ち越す」ことは、BB図柄の組合せが有効ライン上に成立しない場合は、BB当選フラグはクリアされずに複数回のゲームにわたって有効とされ、BB当選フラグを次ゲーム以降に持ち越すことといえるから、本願補正発明の「該決定により許容された特別入賞を発生させることができなかったときに、当該決定を次ゲーム以降に持ち越す」ことに相当する。
そうすると、引用発明の「当選フラグがBB当選フラグである場合、BB当選フラグはBB図柄の組合せが有効ライン上に成立したことを条件の1つとしてクリアされ、すなわち、BB当選フラグは、複数回のゲームにわたって有効とされる場合があり、BB当選フラグを次ゲーム以降に持ち越」す「主制御装置131」は、
本願補正発明の「前記特別入賞の発生を許容する旨が決定され、該決定により許容された特別入賞を発生させることができなかったときに、当該決定を次ゲーム以降に持ち越す持越手段」の機能を有するものである。

(e)引用発明は、絵柄が停止すると、所定有効ライン上の図柄の組合せ(表示結果)が導出されるものであるから(引用発明の構成fを参照。)、引用発明の「前記絵柄の可変表示を停止させるべく操作される停止操作手段」は、本願補正発明の「遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段」に相当する。

(f)引用発明の「所定有効ライン上の図柄の組合せ」は、本願補正発明の「前記表示結果」に相当するから、引用発明の「所定有効ライン上の図柄の組合せを導出するリール制御処理を実行」する「主制御装置131」は、本願補正発明の「前記表示結果を導出する制御を行う導出制御手段」の機能を有するものである。

(g)引用発明の「各リール42L,42M,42Rに付された図柄を視認可能な各表示窓31L,31M,31Rを結ぶようにして」付された「計5本の組合せライン」は、本願補正発明の「前記複数の可変表示部を通る予め定められた複数の組み合わせライン」に相当し、引用発明の「図柄」は、本願補正発明の「識別情報」に相当する。
そうすると、引用発明の「各リール42L,42M,42Rに付された図柄を視認可能な各表示窓31L,31M,31Rを結ぶようにして計5本の組合せラインが付されており、有効化された組合せライン上に図柄が所定の組合せで停止して入賞となるか否かを判定」する「主制御装置131」と、
本願補正発明の「前記複数の可変表示部を通る予め定められた複数の組み合わせラインのうち特定の組み合わせライン上に導出された識別情報の組み合わせに応じて入賞が発生したか否かを判定する入賞判定手段」とは、
「前記複数の可変表示部を通る予め定められた複数の組み合わせライン上に導出された識別情報の組み合わせに応じて入賞が発生したか否かを判定する手段」である点で共通する。

(h)引用発明の「遊技媒体の獲得期待値に対応した設定値」は、本願補正発明の「前記事前決定手段による有利度」に相当するから、引用発明の「遊技媒体の獲得期待値に対応した設定値を複数段階備え、それら設定値の中から一の設定値を決定する設定値決定手段、及び、当該設定値決定手段により決定される設定値を変更すべく操作される設定値変更手段」は、本願補正発明の「前記事前決定手段による有利度を設定する有利度設定手段」に相当する。

(i)本願補正発明において「第1モードデータ」(RTフラグ)は、RTの種類を特定可能なものであるところ(本願明細書の段落【0656】を参照。)、引用発明の「RT1フラグ」及び「RT2フラグ」は、それぞれRTの種類(RT1ゲーム、RT2ゲーム)に対応するものであるから(引用発明の構成pを参照。)、本願補正発明の「第1モードデータ」に相当するものであり、RTの種類に応じて抽選処理において役の抽選に用いるテーブルが変わるから(引用発明の構成rを参照。)、「前記事前決定手段が用いるデータ」ということができる。
また、本願補正発明において「第2モードデータ」(遊技状態フラグ)は、遊技状態を特定可能なものであるところ(本願明細書の段落【0656】を参照。)、引用発明の「BB当選フラグ」は、BB当選の持越状態の際に持ち越されてセットされているものであり(引用発明の構成dを参照。)、「BB設定フラグ」は、BBゲームの状態とする際にセットされるものであるから、「モードデータ」ということができ、本願補正発明の「第2モードデータ」に相当する。
そうすると、引用発明の「RT1フラグをセットし、RT2フラグをセットし、BB当選フラグをセットし、BB設定フラグをセットしてBBゲームと」する「主制御装置131」と、
本願補正発明の「前記事前決定手段が用いるデータであって、第1モードデータと第2モードデータと、を含むモードデータを設定するモードデータ設定手段」とは、
「第1モードデータは前記事前決定手段が用いるデータであり、前記第1モードデータと第2モードデータと、を含むモードデータを設定するモードデータ設定手段」である点で共通する。

(j)「フラグをクリア」することが、フラグの表すデータを初期化して初期値を設定することであることは技術常識であるから、引用発明の「RT1フラグをクリアし、RT2フラグをクリアするRTゲーム終了処理を行」う「主制御装置131」は、本願補正発明の「前記第1モードデータを初期化して初期値を設定する第1モードデータ初期化手段」の機能を有するものである。

(n)引用発明の「前記設定値変更手段により設定値変更が開始される場合」は、本願補正発明の「前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合」に相当する。
また、引用発明は、「一時記憶手段に記憶された情報を消去する情報消去手段を備え、前記一時記憶手段には前記情報消去手段により情報が消去されない保護記憶手段を設ける」ものであるから、当該保護記憶手段に記憶された情報(データ)は、消去されないものである。
したがって、上記(i)を踏まえると、引用発明の「前記設定値変更手段により設定値変更が開始される場合に、一時記憶手段に記憶された情報を消去する情報消去手段を備え、前記一時記憶手段には前記情報消去手段により情報が消去されない保護記憶手段を設けるとともに、当該保護記憶手段に記憶されるものであ」る「RT1フラグ、RT2フラグ」は、
本願補正発明の「前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合でも初期化されることがないデータであ」る「前記第1モードデータ」に相当する。

(o)引用発明において、「BB当選フラグ」は「BB図柄の組合せが有効ライン上に成立したことを条件の1つとしてクリアされるもの」であるから、BB図柄の組合せが有効ライン上に成立しない場合は、クリアされずに初期値以外の値が設定されるものということができる。
そして、上記(i)で述べたとおり、引用発明の「BB当選フラグ」は、本願補正発明の「第2モードデータ」に相当する構成を構成するものである。
したがって、上記(d)を踏まえると、引用発明の「BB図柄の組合せが有効ライン上に成立したことを条件の1つとしてクリアされるものであ」る「BB当選フラグ」と、
本願補正発明の「前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に初期化されて初期値が設定されるとともに、前記持越手段により特別入賞の発生を許容する旨の決定が持ち越されている場合に前記初期値以外の値が設定されるデータであ」る「前記第2モードデータ」とは、
「前記持越手段により特別入賞の発生を許容する旨の決定が持ち越されている場合に前記初期値以外の値が設定されるデータであ」る「前記第2モードデータ」である点で共通する。

(p)引用発明は、「遊技状態として通常遊技状態と、RTゲームとが少なくとも設定されており、RTゲームには、RT1ゲームとRT2ゲームとがあり、RT1フラグ及びRT2フラグは、遊技状態がそれぞれ対応するRTゲームに移行する際にセットされ」るものであるから、通常遊技状態の場合にはRT1フラグ、RT2フラグともセットされず、RT1ゲームの場合にはRT1フラグのみがセットされ、RT2ゲームの場合にはRT2フラグのみがセットされるものということができる。
また、引用発明において、BBゲームは通常遊技状態からだけでなく、RT1ゲームやRT2ゲームからも移行するものであるから(引用発明の構成qを参照。)、BB当選フラグ及びBB設定フラグがともに設定されていない(初期値が設定されている)場合には、通常遊技状態、RT1ゲーム又はRT2ゲームのいずれかが設定されることは、明らかである。
したがって、上記(i)を踏まえると、引用発明の「遊技状態として通常遊技状態と、RTゲームとが少なくとも設定されており、RTゲームには、RT1ゲームとRT2ゲームとがあり、遊技状態がそれぞれ対応するRTゲームに移行する際にセットされるものであ」る「RT1フラグ及びRT2フラグ」は、
本願補正発明の「前記第2モードデータとして初期値が設定されている場合に複数の値のうちのいずれかの値が選択的に設定されるデータであ」る「前記第1モードデータ」に相当する。

(q)引用発明の「BB当選フラグがセットされているか否か、又はBB設定フラグがセットされているか否かを判定し、それらのいずれかのフラグがセットされている場合」は、本願補正発明の「前記第2モードデータとして前記初期値以外の値が設定される場合」に相当する。
また、引用発明において、RT1ゲームの場合には、RT2フラグはセットされておらず、RT2ゲームの場合には、RT1フラグはセットされていないから(上記(p)を参照。)、引用発明の「RT1ゲームの場合にはRT1フラグをクリアし、RT2ゲームの場合にはRT2フラグをクリア」することは、本願補正発明の「前記第1モードデータを初期化」することに相当する。
そうすると、引用発明の「前記主制御手段131は、BB当選フラグがセットされているか否か、又はBB設定フラグがセットされているか否かを判定し、それらのいずれかのフラグがセットされている場合には、RT1ゲームの場合にはRT1フラグをクリアし、RT2ゲームの場合にはRT2フラグをクリア」することは、
本願補正発明の「前記第1モードデータ初期化手段は、前記第2モードデータとして前記初期値以外の値が設定される場合に前記第1モードデータを初期化」することに相当する。

(r)引用発明は、「抽選テーブル選択処理では、RT1フラグがセットされているか否かを判定し、さらにRT2フラグがセットされているか否かを判定」するものであるから、「RT1ゲームに移行した場合」、「RT2ゲームに移行した場合」の判定が、RT1フラグがセットされているか否か、RT2フラグがセットされているか否かの判定によりなされることは、明らかである。
また、引用発明は、BB当選フラグ又はBB設定フラグがセットされている場合には、RT1フラグ、RT2フラグがクリアされるものであるから(引用発明の構成qを参照。)、RT1フラグ、RT2フラグがセットされているのは、BB当選フラグ及びBB設定フラグがセットされていない、すなわち初期値の場合ということができる。
さらに、上記(c)で述べたとおり、引用発明の「抽選手段」は、本願補正発明の「事前決定手段」に相当するものである。
そうすると、引用発明の「前記抽選手段は、抽選テーブル選択処理では、RT1フラグがセットされているか否かを判定し、さらにRT2フラグがセットされているか否かを判定し、RT1ゲームに移行した場合には、抽選処理ではRT1テーブルに基づいて役の抽選を行い、RT2ゲームに移行した場合には、抽選処理ではRT2テーブルに基づいて役の抽選を行う」ことと、
本願補正発明の「前記事前決定手段は、前記第2モードデータが前記初期値の場合には、前記第1モードデータを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定し、前記第2モードデータが前記初期値以外の場合には、該第2モードデータを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定する」こととは、
「前記事前決定手段は、前記第2モードデータが前記初期値の場合には、前記第1モードデータを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定する」点で共通する。

上記(a)?(j)、(n)?(r)の検討により、本願補正発明と引用発明とは、

(一致点)
「A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を複数備え、
B 前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組み合わせに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
C 表示結果が導出される前に、遊技状態の移行を伴う特別入賞を含む入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
D 前記特別入賞の発生を許容する旨が決定され、該決定により許容された特別入賞を発生させることができなかったときに、当該決定を次ゲーム以降に持ち越す持越手段と、
E 遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段と、
F 前記表示結果を導出する制御を行う導出制御手段と、
G’前記複数の可変表示部を通る予め定められた複数の組み合わせライン上に導出された識別情報の組み合わせに応じて入賞が発生したか否かを判定する手段と、
H 前記事前決定手段による有利度を設定する有利度設定手段と、
I’第1モードデータは前記事前決定手段が用いるデータであり、前記第1モードデータと第2モードデータと、を含むモードデータを設定するモードデータ設定手段と、
J 前記第1モードデータを初期化して初期値を設定する第1モードデータ初期化手段と、 を備え、
N 前記第1モードデータは、前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合でも初期化されることがないデータであり、
O’前記第2モードデータは、前記持越手段により特別入賞の発生を許容する旨の決定が持ち越されている場合に前記初期値以外の値が設定されるデータであり、
P 前記第1モードデータは、前記第2モードデータとして初期値が設定されている場合に複数の値のうちのいずれかの値が選択的に設定されるデータであり、
Q 前記第1モードデータ初期化手段は、前記第2モードデータとして前記初期値以外の値が設定される場合に前記第1モードデータを初期化し、
R’前記事前決定手段は、
前記第2モードデータが前記初期値の場合には、前記第1モードデータを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定する
スロットマシン。」

である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
本願補正発明では、識別情報の組み合わせに応じて入賞が発生したか否かが判定される組み合わせラインが、「前記複数の可変表示部を通る予め定められた複数の組み合わせラインのうち特定の組み合わせライン」であり、
「前記入賞」は、「前記複数の組み合わせラインのうち特定の組み合わせラインに特定の識別情報の組み合わせが導出されることで発生する第1の入賞」と、「前記複数の組み合わせラインのうち前記特定の組み合わせライン以外のいずれかの組み合わせラインに前記特定の識別情報の組み合わせが導出され、かつ前記複数の組み合わせラインのうち前記特定の組み合わせラインに前記特定の識別情報の組み合わせとは異なる所定の識別情報の組み合わせが導出されることで発生する第2の入賞」と、を含み、
「前記モードデータ設定手段」は、「前記複数の組み合わせラインのいずれかに前記特定の識別情報の組み合わせが導出された場合に、前記特定の組み合わせラインに導出された識別情報の組み合わせに応じて前記第1モードデータの設定を行う」のに対して、
引用発明では、「前記複数の組み合わせラインのうち特定の組み合わせライン」を有するか否か明らかでなく、上記「特定の組み合わせライン」に関する構成を備えない点。(構成G’、L、Mに関連)

(相違点2)
本願補正発明では、第2モードデータが「前記事前決定手段が用いるデータ」であり、事前決定手段が「前記第2モードデータが前記初期値以外の場合には、該第2モードデータを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定する」ものであるのに対して、引用発明では、そのような特定がなされていない点。(構成I’、R’に関連)

(相違点3)
本願補正発明が、「前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に前記持越手段により持ち越されている特別入賞の発生を許容する旨の決定を初期化する決定初期化手段」を有し、第2モードデータが「前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に初期化されて初期値が設定される」ものであるのに対して、引用発明がそのような構成を有するか否か明らかでない点。(構成K、O’に関連)

(3)判断
まず相違点1について検討する。
上記(2-ア)?(2-オ)の記載事項によれば、引用文献2には、表示窓314に停止した3個のリール350A、350B、350Cの上行と下行に沿って停止した図柄の位置、並びに2本の対角線に停止した図柄の位置が入賞ラインとして採用され、横並びの中央の行に停止した図柄の位置が、非入賞ラインとして採用され、第1の特別役(「ベル・リプレイ・ベル」)は、右下がりの入賞ライン(3)にのみ揃うように設定されており、この第1の特別役が入賞ライン(3)に揃うときは、非入賞ラインに「リプレイ・リプレイ・リプレイ」という同一の図柄が揃うように、リールテープの図柄配列を設定しており、入賞ライン(3)に第1の特別役が同時に揃うことで、非入賞ラインに揃った擬似的な役に加えて更に所定回数のRTという特典が付与されるようになっているパチスロ機300が記載されており、このような構成により、特別役に関連付けた図柄を非入賞ラインに揃えることで、特別役による受ける利益の種類を把握することができ、かつ単純に非入賞ラインに揃った図柄の本来の利益よりも大きい利益を得ることができるため、変化に富み、趣向性の高い遊技仕様とすることができることが記載されている。
また、上記(2-カ)の記載事項によれば、引用文献2には、入賞ラインに入賞することが可能な役種である「再遊技」として、左、中、右がそれぞれ「リプレイ」図柄となるものがあることが開示されているから、引用文献2には、右下がりの入賞ライン(3)に左、中、右にそれぞれ「リプレイ」図柄が揃って、「再遊技」役に入賞することがあることが示されているといえる。
ここで、引用文献2の「入賞ライン」と「非入賞ライン」を合わせたものが、本願補正発明の「前記複数の可変表示部を通る予め定められた複数の組み合わせライン」に相当し、引用文献2の「入賞ライン」が、本願補正発明の「特定の組み合わせライン」に相当する。
そして、引用文献2の「リプレイ・リプレイ・リプレイ」、「ベル・リプレイ・ベル」は、それぞれ本願補正発明の「特定の識別情報の組み合わせ」、「前記特定の識別情報の組み合わせとは異なる所定の識別情報の組み合わせ」に相当するから、引用文献2の「『再遊技』役」、「第1の特別役」は、それぞれ本願補正発明の「第1の入賞」、「第2の入賞」に相当する。
また、引用文献2の「所定回数のRT」という特典は、通常の遊技状態からRTの遊技状態へと遊技状態を変更させるものであるといえる。
そうすると、引用文献2には、
「複数の可変表示部を通る予め定められた複数の組み合わせラインのうち特定の組み合わせライン上に導出された識別情報の組み合わせに応じて入賞が発生したか否かを判定し、
前記入賞は、
前記複数の組み合わせラインのうち特定の組み合わせラインに特定の識別情報の組み合わせが導出されることで発生する第1の入賞と、
前記複数の組み合わせラインのうち前記特定の組み合わせライン以外のいずれかの組み合わせラインに前記特定の識別情報の組み合わせが導出され、かつ前記複数の組み合わせラインのうち前記特定の組み合わせラインに前記特定の識別情報の組み合わせとは異なる所定の識別情報の組み合わせが導出されることで発生する第2の入賞と、
を含み、
前記複数の組み合わせラインのいずれかに前記特定の識別情報の組み合わせが導出された場合に、前記特定の組み合わせラインに導出された識別情報の組み合わせに応じて通常の遊技状態からRTの遊技状態へと遊技状態を変更させるパチスロ機。」
に関する技術的事項が記載されているといえる。
そうすると、引用発明と引用文献2に記載されたものとは、スロットマシンという同一の技術分野に属すものであり、この技術分野において、変化に富み、趣向性の高い遊技仕様とすることは一般的な課題であるから、引用発明に対して引用文献2に記載された上記の技術的事項を適用するとともに、通常の遊技状態からRTの遊技状態へと遊技状態を変更させる場合に、モードデータ設定手段により第1モードデータ(RT1フラグ及びRT2フラグ)の設定を行うようにして、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

次に相違点2について検討する。
スロットマシンの技術分野において、BB(ビッグボーナス)役に当選しBB入賞する前の状態(いわゆる「内部中」の状態)やBBゲーム中に、それぞれ通常遊技状態とは異なる抽選確率が設定されたテーブルを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定することは、例えば特開2010-213835号公報(通常遊技用の当選判定テーブルの他に、持越し可フラグ保有時の通常遊技用の当選判定テーブルやBB用の当選判定テーブルを設けた点。段落【0031】を参照。)や特開2008-12337号公報(BB内部中、BBゲーム中は、それぞれ通常ゲーム中とは異なる賞抽選テーブルTBL12、賞抽選テーブルTBL15を選択する点。段落【0088】、【0090】を参照。)等にも記載されているように、本願出願前に周知の技術である。
そして、引用発明もスロットマシンの技術分野に属すものであり、内部中の状態で改めてBB当選させる必要はないこと、及び、BBゲーム中には遊技者に有利な状態とする必要があることは、この技術分野における技術常識であるから、引用発明において、上記の周知技術に基づいて、内部中の状態やBBゲーム中、すなわち、第2モードデータ(BB当選フラグ及びBB設定フラグ)が初期値以外の場合に、事前決定手段(抽選手段)が第2モードデータに基づいて、通常遊技状態とは異なる抽選確率が設定されたテーブルを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定するようにして、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

続いて相違点3について検討する。
上記(1-コ)の記載事項によれば、引用文献1の段落【0196】には、「なお、上述した各実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。」と記載され、各実施の形態の変形例の一つとして、同段落【0204】には、「(7)設定値変更(一部RAMクリア処理)に際してRTゲームだけでなくBBゲームに関する情報もクリアされないようにしてもよい。すなわち、RAM153の保護エリア159にBB当選フラグ格納エリア、BB設定フラグ格納エリアなどを設ける構成とする。」と記載されている。
そうすると、引用文献1に記載された各実施の形態は、設定値変更に際して、BBゲームに関する情報であるBB当選フラグ及びBB設定フラグをクリアする構成を前提に記載されたものということができる。
そして、引用文献1の「設定値変更に際して」、「BB当選フラグ及びBB設定フラグ」、「クリア」することは、それぞれ本願補正発明の「前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合」、「第2モードデータ」、「初期化されて初期値が設定される」ことに相当するから、引用文献1には、第2モードデータが有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に初期化されて初期値が設定されるものであることが、開示されているに等しいといえる。
また、上記3(2)(d)での検討によれば、引用発明の「BB当選フラグ」のオン、オフは、「前記持越手段により持ち越されている特別入賞の発生を許容する旨の決定」があるか否かを表すものといえるから、引用文献1には、「前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に前記持越手段により持ち越されている特別入賞の発生を許容する旨の決定を初期化する決定初期化手段」についても、開示されているに等しいということができる。
したがって、相違点3に係る本願補正発明の構成は、引用文献1に開示されているに等しい事項であり、相違点3は、実質的には相違点とはいえないものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年11月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、「第2[理由]1 補正の内容」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用文献及びその記載事項
(1)引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-148609号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(3-ア)
「【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のスロットマシンは、
遊技用価値(メダル、クレジット)を用いて1ゲームに対して所定数の賭数(3)を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、各々が識別可能な複数種類の図柄を変動表示可能な可変表示装置(リール2L、2C、2R)に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシン(1)であって、
前記可変表示装置に表示結果が導出される前に、遊技者にとって有利な特別遊技状態への移行を伴う複数種類の特別表示結果(BB、RB)及び該特別表示結果とは異なる優先表示結果(再遊技役、小役)を含む複数種類の入賞表示結果の導出を許容するか否かを決定する事前決定手段(内部抽選)と、
前記図柄の変動表示を停止させるために遊技者に操作される停止操作手段(ストップスイッチ8L、8C、8R)と、
前記事前決定手段により前記特別表示結果の導出を許容する旨が決定され、該特別表示結果が導出されなかったときに、当該特別表示結果の導出を許容する旨の決定(特別役の当選フラグ)を次ゲーム以降に持ち越す持越手段と、
前記事前決定手段の決定結果と前記停止操作手段の操作手順(左、中、右リールの停止操作手順)とに応じて前記可変表示装置に表示結果を導出させる導出制御手段(リール制御)と、
複数ゲームに亘り前記特別表示結果の導出を許容する旨が決定されている可能性を示唆する連続演出を実行する連続演出実行手段と、
前記特別遊技状態が終了した後、前記事前決定手段により前記特別表示結果の導出を許容する旨が決定されずに第1の付与条件が成立(500ゲーム消化)した場合に、遊技者にとって有利な第1の価値(天井(1)に到達した後に当選したBBはSBB)を付与する第1の価値付与手段(サブCPU91a)と、
前記特別遊技状態が終了した後、前記事前決定手段により前記特別表示結果の導出を許容する旨が決定されずに前記第1の付与条件とは異なる第2の付与条件が成立(RT(2)に移行してから999ゲーム消化)した場合に、遊技者にとって有利な第2の価値(RT(0)に移行、移行後のRT(0)においてリプレイ(2)の入賞条件となる操作手順を報知)を付与する第2の価値付与手段と、
を備え、
・・・・・
ことを特徴としている。
・・・・・
【0016】
本発明の請求項8に記載のスロットマシンは、請求項1?7のいずれかに記載のスロットマシンであって、
前記第1の価値付与手段または前記第2の価値付与手段のうち少なくとも一方は、前記特別遊技状態が終了した後、所定の計数条件が成立してから前記事前決定手段により前記特別表示結果の導出を許容する旨が決定されずに予め定められたゲーム数が経過した場合に、前記第1の価値または前記第2の価値を付与し、
所定の設定操作手段の操作(設定キースイッチ37のみがONの状態での電源投入)に基づいて、複数種類の設定値(設定1?6)のうちからいずれかの設定値を選択することで遊技者に対する有利度を設定する有利度設定手段と、
前記所定の計数条件が成立(RT(2)に移行)してから消化したゲーム数(999G)を計数するゲーム数計数手段と、
を備え、
前記スロットマシンは、前記特別遊技状態が終了した後、前記事前決定手段により前記特別表示結果の導出を許容する旨が決定されずに前記予め定められたゲーム数が経過する前に前記有利度設定手段により新たに設定値が設定された場合に、該新たな設定値が設定される前に前記ゲーム数計数手段が計数したゲーム数(RT残りゲーム数)を維持する、
ことを特徴としている。
この特徴によれば、特別遊技状態が終了してから、特別表示結果の導出を許容する旨が決定されずに予め定められたゲーム数が経過する前において新たに設定値が設定された場合に、新たに設定値が設定される前と同様のゲーム数が維持されるので、設定値を変更することでそれまでのゲーム数が無駄になることを防止できる。
尚、前記設定値とは、遊技者に対する有利度を定めた値であり、例えば前記事前決定手段により表示結果の導出を許容する旨が決定される確率を定めた値であってもよいし、あるいは遊技者にとって有利な表示結果を導出させるための停止操作条件を報知する確率を定めた値等であってもよい。」

(3-イ)
「【0020】
本実施例のスロットマシン1の筐体1aの内部には、図2に示すように、外周に複数種の図柄が配列されたリール2L、2C、2R(以下、左リール、中リール、右リール)が水平方向に並設されており、図1に示すように、これらリール2L、2C、2Rに配列された図柄のうち連続する3つの図柄が前面扉1bに設けられた透視窓3から見えるように配置されている。」

(3-ウ)
「【0038】
入賞ラインとは、各リール2L、2C、2Rの透視窓3に表示された図柄の組み合わせが入賞図柄の組み合わせであるかを判定するために設定されるラインである。本実施例では、図1に示すように、各リール2L、2C、2Rの中段に並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインL1、リール2Lの上段、リール2Cの中段、リール2Rの下段、すなわち右下がりに並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインL2、リール2Lの上段、リール2Cの中段、リール2Rの上段、すなわち下向きの山型に並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインL3、リール2Lの下段、リール2Cの中段、リール2Rの上段、すなわち右上がりに並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインL4、リール2Lの下段、リール2Cの中段、リール2Rの下段、すなわち上向きの山型に並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインL4の5種類が入賞ラインとして定められている。
【0039】
ゲームが開始可能な状態でスタートスイッチ7を操作すると、各リール2L、2C、2Rが回転し、各リール2L、2C、2Rの図柄が連続的に変動する。この状態でいずれかのストップスイッチ8L、8C、8Rを操作すると、対応するリール2L、2C、2Rの回転が停止し、透視窓3に表示結果が導出表示される。
【0040】
そして全てのリール2L、2C、2Rが停止されることで1ゲームが終了し、有効化されたいずれかの入賞ラインL1?L5上に予め定められた図柄の組み合わせ(以下、役とも呼ぶ)が各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生し、その入賞に応じて定められた枚数のメダルが遊技者に対して付与され、クレジットに加算される。・・・また、有効化されたいずれかの入賞ラインL1?L5上に、遊技状態の移行を伴う図柄の組み合わせが各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した場合には図柄の組み合わせに応じた遊技状態に移行するようになっている。」

(3-エ)
「【0058】
次に、メイン制御部41のRAM41cの初期化について説明する。メイン制御部41のRAM41cの格納領域は、重要ワーク、一般ワーク、特別ワーク、設定値ワーク、RTワーク、停止相ワーク、非保存ワーク、未使用領域、スタック領域に区分されている。
【0059】
重要ワークは、各種表示器やLEDの表示用データ、I/Oポート41dの入出力データ、遊技時間の計時カウンタ等、BB終了時に初期化すると不都合があるデータが格納されるワークである。一般ワークは、内部当選フラグ、停止制御テーブル、停止図柄、メダルの払出枚数、BB中のメダル払出総数等、BB終了時に初期化可能なデータが格納されるワークである。特別ワークは、演出制御基板90へコマンドを送信するためのデータ、各種ソフトウェア乱数等、設定開始前にのみ初期化されるデータが格納されるワークである。設定値ワークは、内部抽選処理で抽選を行う際に用いる設定値が格納されるワークであり、設定開始前(設定変更モードへの移行前)の初期化において0が格納された後、1に補正され、設定終了時(設定変更モードへの終了時)に新たに設定された設定値が格納されることとなる。RTワークは、現在の遊技状態がRT(1)?(3)のいずれかである場合にその旨を示すRTフラグ、RT残りゲーム数が格納されるワークである。停止相ワークは、リールモータ32L、32C、32Rの停止相を示すデータが格納されるワークであり、リールモータ32L、32C、32Rが停止状態となった際にその停止相を示すデータが格納されることとなる。非保存ワークは、各種スイッチ類の状態を保持するワークであり、起動時にRAM41cのデータが破壊されているか否かに関わらず必ず値が設定されることとなる。未使用領域は、RAM41cの格納領域のうち使用していない領域であり、後述する複数の初期化条件のいずれか1つでも成立すれば初期化されることとなる。スタック領域は、メインCPU41aのレジスタから退避したデータが格納される領域であり、このうちの未使用スタック領域は、未使用領域と同様に、後述する複数の初期化条件のいずれか1つでも成立すれば初期化されることとなるが、使用中スタック領域は、プログラムの続行のため、初期化されることはない。
・・・・・
【0061】
初期化0は、RAM異常エラー発生時に行う初期化であり、初期化0では、RAM41cの格納領域のうち、使用中スタック領域を除く全ての領域(未使用領域及び未使用スタック領域を含む)が初期化される。初期化1は、起動時において設定キースイッチ37、リセット/設定スイッチ38の双方がONの状態であり、設定変更モードへ移行する場合において、その前に行う初期化であり、初期化1では、RAM41cの格納領域のうち、使用中スタック領域及びRTワークを除く全ての領域(未使用領域及び未使用スタック領域を含む)が初期化される。初期化2は、起動時において設定キースイッチ37のみがONの状態であり、設定変更モードへ移行する場合において、その前に行う初期化であり、初期化2では、RAM41cの格納領域のうち、使用中スタック領域、RTワーク及び停止相ワークを除く全ての領域(未使用領域及び未使用スタック領域を含む)が初期化される。初期化3は、BB終了時に行う初期化であり、初期化3では、RAM41cの格納領域のうち、一般ワーク、未使用領域及び未使用スタック領域が初期化される。初期化4は、起動時において設定キースイッチ37、リセット/設定スイッチ38の双方がOFFの状態であり、かつRAM41cのデータが破壊されていない場合において行う初期化であり、初期化4では、非保存ワーク、未使用領域及び未使用スタック領域が初期化される。初期化5は、1ゲーム終了時に行う初期化であり、初期化5では、RAM41cの格納領域のうち、未使用領域及び未使用スタック領域が初期化される。」

(3-オ)
「【0064】
本実施例では、メインCPU41aが演出制御基板90に対して、BETコマンド、内部当選コマンド、リール回転開始コマンド、リール停止コマンド、入賞判定コマンド、払出開始コマンド、払出終了コマンド、遊技状態コマンド、待機コマンド、打止コマンド、エラーコマンド、初期化コマンド、設定終了コマンド、電源投入コマンド、操作検出コマンド、ドアコマンドを含む複数種類のコマンドを送信する。
・・・・・
【0069】
入賞判定コマンドは、入賞の有無、並びに入賞の種類、入賞時のメダルの払出枚数を特定可能なコマンドであり、全リールが停止して入賞判定が行われた後に送信される。
・・・・・
【0071】
遊技状態コマンドは、次ゲームの遊技状態(RT(0)?(3)のいずれかであるか、BB中であるか、RB中であるか等)及びRTの残りゲーム数、現在設定されている設定値を特定可能なコマンドであり、後述する設定終了コマンドの送信後及びゲームの終了時に送信される。」

(3-カ)
「【0096】
本実施例のスロットマシン1は、前述のように遊技状態に応じて設定可能な賭数の規定数が定められており、遊技状態に応じて定められた規定数の賭数が設定されたことを条件にゲームを開始させることが可能となる。本実施例では、後に説明するが、遊技状態として、レギュラーボーナス(以下ではRBと称す)、RT(0)(リプレイタイム(0)或いは初期遊技状態)、RT(1)(リプレイタイム(1))、RT(2)(リプレイタイム(2))、RT(3)(リプレイタイム(3))があるが、どの遊技状態においても賭数の規定数として3が定められている。このため、遊技状態がRBであるか、RT(0)?(3)のいずれであるか、に関わらず、賭数として3が設定されるとゲームを開始させることが可能となる。尚、本実施例では、遊技状態に応じた規定数の賭数が設定された時点で、全ての入賞ラインL1?L5が有効化されるようになっており、遊技状態に関わらず、賭数として3が設定された時点で全ての入賞ラインL1?L5が有効化されることとなる。」

(3-キ)
「【0103】
RBは、RB以外の遊技状態において入賞ラインのいずれかに「網7-網7-網7」の組み合わせが揃ったときに入賞となり、遊技状態がRBに移行する。RBは、小役、特にベルとチェリーの当選確率が高まることによって他の遊技状態よりも遊技者にとって有利となる遊技状態であり、RBが開始した後、12ゲームを消化したとき、または4ゲーム入賞(役の種類は、いずれでも可)したとき、のいずれか早いほうで終了する。
・・・・・
【0105】
BB(1)(2)が入賞すると、遊技状態がBBに移行するとともに同時にRBに移行し、RBが終了した際に、BBが終了していなければ、再度RBに移行し、BBが終了するまで繰り返しRBに制御される。すなわちBB中は、常にRBに制御されることとなる。そして、BBは、当該BB中において遊技者に払い出したメダルの総数が360枚を超えたときに終了する。BBの終了時には、RBの終了条件が成立しているか否かに関わらずRBも終了する。
・・・・・
【0107】
本実施例では、図6及び図7に示すように、遊技状態が、RT(0)?(2)であるか、RT(3)であるか、RBであるか、によって内部抽選の対象となる役及び役の組み合わせが異なる。」

(3-ク)
「【0144】
本実施例では、図10に示すように、BB中またはRB中を除いてRT(0)?(3)のいずれかに制御される。
【0145】
RT(0)は、RT(1)において移行役(1)?(3)のいずれかが成立し、RT(1)が終了したとき、または後述するようにRT(2)において特別役に当選せずに規定ゲーム数を消化して該RT(2)が終了したときに移行し、RT(0)に移行してからのゲーム数に関わらず、いずれかの特別役が当選するか、リプレイ(2)が入賞するまで継続し、いずれかの特別役が当選してRT(3)に移行するか、リプレイ(2)が入賞してRT(2)に移行することで終了する。RT(0)に移行した際には、RTワークのRTフラグとしてRT(0)を示す[00]が格納される。詳しくは、移行役(1)?(3)が成立したゲームが終了したタイミング、すなわち移行役(1)?(3)はメダルの払出を伴わないため、全てのリールが停止したタイミングで、RTフラグを[01][02]からRT(0)を示す[00]に更新し、RT(0)に移行させる。
・・・・・
【0147】
RT(1)は、BBまたはRBの終了後に移行し、RT(1)に移行してからのゲーム数に関わらず、いずれかの特別役が当選するか、移行役(1)?(3)のいずれかが成立するまで継続し、いずれかの特別役が当選してRT(3)に移行するか、移行役(1)?(3)のいずれかが成立してRT(0)に移行することで終了する。RT(1)に移行した際には、RTワークのRTフラグとしてRT(1)を示す[01]が格納される。詳しくは、BB、RBの最終ゲームが終了したタイミング、すなわちRBがメダルの払出を伴わずに終了した場合(本実施例では、BBは必ず小役の入賞で終了するため、メダルの払出を伴わずに終了することはない)には、全てのリールが停止したタイミングで、BB、RBがメダルの払出を伴って終了した場合には、メダルの払出が完了したタイミングで、RTフラグを[00]からRT(1)を示す[01]に更新し、RT(1)に移行させる。また、RT(1)におけるリプレイ(1)の当選確率は低確率(約1/7.3)であり、1ゲームあたりのメダルの払出率が1未満となり、リプレイGR(1)(2)は抽選の対象とならない。
【0148】
RT(2)は、RT(0)においてリプレイ(2)が入賞したときに移行し、規定ゲーム数(本実施例では999G)消化してRT(0)に移行するか、特別役が当選してRT(3)に移行することで終了する。RT(2)に移行した際には、RTワークのRTフラグとしてRT(2)を示す[02]が格納される。詳しくは、図12に示すように、リプレイ(2)が入賞したゲームが終了したタイミングで、RTフラグを[00]からRT(2)を示す[02]に更新し、RT(2)に移行してから消化したゲーム数を計数するRT残
・・・・・
【0151】
RT(3)は、RT(0)?(2)のいずれにおいても特別役が当選したときに移行し、RT(3)に移行してからのゲーム数に関わらず、当選した特別役が入賞するまで継続し、当選した特別役が入賞してBBまたはRBに移行することで終了する。RT(3)に移行した際には、RTワークのRTフラグとしてRT(3)を示す[03]が格納される。
・・・・・
【0153】
そして、BB、RBが入賞してRT(3)が終了する場合には、BB、RBが入賞したゲームが終了したタイミング、すなわちBB、RB入賞はメダルの払出を伴わないので、全てのリールが停止したタイミングで、RTフラグを[03]から[00]に更新し、RT(3)を終了させる。尚、BB、RB入賞した場合には、次のゲームから遊技状態はRBに制御されることになるが、RTフラグは[00]が格納される。また、後述するようにRT(3)において設定値が変更されると、特別役の当選フラグが消去されるものの、RT(3)は維持されるが、この場合には、その後、BB、RBが当選した場合であれば、これら当選したBB、RBが入賞した際にRT(3)が終了するようになっており、BB、RBが入賞したゲームが終了したタイミング、すなわちBB(1)(2)入賞またはRB入賞はメダルの払出を伴わないので、全てのリールが停止したタイミングで、RTフラグを[03]から[00]に更新し、RT(3)を終了させる。また、RT(3)におけるリプレイ(1)の当選確率は高確率(約1/5)であり、1ゲームあたりのメダルの払払出率が1未満となり、リプレイGR(1)(2)は抽選の対象とならない。」

(3-ケ)
「【0226】
本実施例では、前述したように設定変更時にRAM41cの初期化を行う際に、現在の遊技状態がRT(0)?(3)のいずれかである場合にその旨を示すRTフラグが格納されるRTワークが初期化されないようになっており、RT(0)?(3)中において設定変更がなされた場合でも、設定変更後もRTフラグが維持され、設定変更後は、内部抽選が変更後の設定値に基づいて行われるものの設定変更前に制御されていたRT(0)?(3)に継続して制御するようになっている。また、RT(2)は規定ゲーム数の消化で終了するが、RT(2)の消化ゲーム数を計数するためのRT残りゲーム数も、設定変更時に初期化されることのないRTワークに格納されているため、RT(2)中において設定変更がなされた場合には、RT(2)が維持されるだけでなく、設定変更前の消化ゲーム数についても維持され、設定変更後は、変更前の消化ゲーム数から計数が再開されるようになっている。」

(3-コ)
上記(3-ア)の段落【0009】には、「・・・該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシン(1)・・・」と記載されている。
また、上記(3-ウ)の段落【0039】には、「ゲームが開始可能な状態でスタートスイッチ7を操作すると、各リール2L、2C、2Rが回転し、各リール2L、2C、2Rの図柄が連続的に変動する。この状態でいずれかのストップスイッチ8L、8C、8Rを操作すると、対応するリール2L、2C、2Rの回転が停止し、透視窓3に表示結果が導出表示される。」と記載され、同段落【0040】には、「そして全てのリール2L、2C、2Rが停止されることで1ゲームが終了し、有効化されたいずれかの入賞ラインL1?L5上に予め定められた図柄の組み合わせ(以下、役とも呼ぶ)が各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生し」と記載されている。
そうすると、引用文献3には、「各リール2L、2C、2Rの図柄が連続的に変動し、リール2L、2C、2Rの回転が停止し、表示結果が導出表示され、該可変表示装置に導出された表示結果としての図柄の組み合わせに応じて入賞が発生可能とされたスロットマシン(1)」が記載されていると認められる。

(3-サ)
上記(3-ウ)の段落【0038】には、「本実施例では、図1に示すように、各リール2L、2C、2Rの中段に並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインL1、リール2Lの上段、リール2Cの中段、リール2Rの下段、すなわち右下がりに並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインL2、リール2Lの上段、リール2Cの中段、リール2Rの上段、すなわち下向きの山型に並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインL3、リール2Lの下段、リール2Cの中段、リール2Rの上段、すなわち右上がりに並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインL4、リール2Lの下段、リール2Cの中段、リール2Rの下段、すなわち上向きの山型に並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインL4の5種類が入賞ラインとして定められている。」と記載されているから、引用文献1には、「各リール2L、2C、2Rの図柄に跨って設定された入賞ラインL1?L5」が記載されているといえる。
また、同段落【0040】には、「そして全てのリール2L、2C、2Rが停止されることで1ゲームが終了し、有効化されたいずれかの入賞ラインL1?L5上に予め定められた図柄の組み合わせ(以下、役とも呼ぶ)が各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生し」と記載されている。
そして、上記(3-オ)の段落【0064】には、「本実施例では、メインCPU41aが演出制御基板90に対して、・・・入賞判定コマンド・・・を含む複数種類のコマンドを送信する。」と記載され、同段落【0069】には、「入賞判定コマンドは、・・・入賞判定が行われた後に送信される。」と記載されているから、「メインCPU41a」が「入賞判定」をする手段としての機能を有しているのは明らかである。
そうすると、引用文献1には、「各リール2L、2C、2Rの図柄に跨って設定された、有効化されたいずれかの入賞ラインL1?L5上に予め定められた図柄の組み合わせが各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生したことを判定するメインCPU41aの手段」が記載されていると認められる。

(3-シ)
上記(3-ク)の段落【0145】には、「RT(0)に移行した際には、RTワークのRTフラグとしてRT(0)を示す[00]が格納される。」と記載され、同段落【0147】には、「RT(1)に移行した際には、RTワークのRTフラグとしてRT(1)を示す[01]が格納される。」と記載され、同段落【0148】には、「RT(2)に移行した際には、RTワークのRTフラグとしてRT(2)を示す[02]が格納される。」と記載され、同段落【0151】には、「RT(3)に移行した際には、RTワークのRTフラグとしてRT(3)を示す[03]が格納される。」と記載されている。
また、上記(3-キ)の段落【0103】には、「RBは、RB以外の遊技状態において入賞ラインのいずれかに『網7-網7-網7』の組み合わせが揃ったときに入賞となり、遊技状態がRBに移行する。」と記載され、同段落【0105】には、「BB(1)(2)が入賞すると、遊技状態がBBに移行するとともに同時にRBに移行し、RBが終了した際に、BBが終了していなければ、再度RBに移行し、BBが終了するまで繰り返しRBに制御される。」と記載されている。
そして、上記(3-オ)の段落【0064】には、「本実施例では、メインCPU41aが演出制御基板90に対して、・・・遊技状態コマンド・・・を含む複数種類のコマンドを送信する。」と記載され、同段落【0071】には、「遊技状態コマンドは、次ゲームの遊技状態(RT(0)?(3)のいずれかであるか、BB中であるか、RB中であるか等)・・・を特定可能なコマンドであり」と記載されているから、「メインCPU41a」がRTフラグとして数値を格納し、遊技状態をBB、RBに移行させる手段としての機能を有しているのは明らかである。
そうすると、引用文献3には、「RTフラグとしてRT(0)?(3)のいずれかを示す数値を格納し、遊技状態をRBに移行させ、遊技状態をBBに移行させるとともに同時にRBに移行させるメインCPU41aの手段」が記載されていると認められる。

(3-ス)
上記(3-ク)の段落【0153】には、「そして、BB、RBが入賞してRT(3)が終了する場合には、BB、RBが入賞したゲームが終了したタイミング、すなわちBB、RB入賞はメダルの払出を伴わないので、全てのリールが停止したタイミングで、RTフラグを[03]から[00]に更新し、RT(3)を終了させる。」と記載されている。
そして、上記(3-シ)で説明したとおり、「メインCPU41a」がRTフラグとして数値を格納する手段としての機能を有しているのは明らかである。
そうすると、引用文献3には、「RTフラグを[00]に更新するメインCPU41aの手段」が記載されていると認められる。

上記(3-ア)?(3-ケ)の記載事項及び(3-コ)?(3-ス)の認定事項を総合すると、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる(記号a?pは、本願発明の記号A?Pに対応させて付した。ただし、引用発明3には本願発明の記号J、K、Mに対応する構成がないため、記号j、k、mは使用していない。)。

「a 各々が識別可能な複数種類の図柄を変動表示可能な可変表示装置(リール2L、2C、2R)を備え、(【0009】)
b 各リール2L、2C、2Rの図柄が連続的に変動し、リール2L、2C、2Rの回転が停止し、表示結果が導出表示され、該可変表示装置に導出された表示結果としての図柄の組み合わせに応じて入賞が発生可能とされたスロットマシン(1)であって、(3-コ)
c 表示結果が導出される前に、複数種類の入賞表示結果の導出を許容するか否かを決定する事前決定手段と、(【0009】)
d 前記図柄の変動表示を停止させるために遊技者に操作される停止操作手段と、(【0009】)
e 前記可変表示装置に表示結果を導出させる導出制御手段と、(【0009】)
f 各リール2L、2C、2Rの図柄に跨って設定された、有効化されたいずれかの入賞ラインL1?L5上に予め定められた図柄の組み合わせが各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生したことを判定するメインCPU41aの手段と、(3-サ)
g 前記事前決定手段により表示結果の導出を許容する旨が決定される確率を定めた値である複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を選択することで遊技者に対する有利度を設定する有利度設定手段と、(【0016】)
h RTフラグとしてRT(0)?(3)のいずれかを示す数値を格納し、遊技状態をRBに移行させ、遊技状態をBBに移行させるとともに同時にRBに移行させるメインCPU41aの手段と、(3-シ)
i RTフラグを[00]に更新するメインCPU41aの手段と、(3-ス)
を備え、
l 設定変更時にRAM41cの初期化を行う際に、RTフラグが格納されるRTワークが初期化されないようになっており、(【0226】)
n BB中またはRB中を除いてRT(0)?(3)のいずれかに制御され、(【0144】)
o BB、RB入賞した場合には、RTフラグは[00]が格納され、(【0153】)
p 遊技状態が、RT(0)?(2)であるか、RT(3)であるか、RBであるか、によって内部抽選の対象となる役及び役の組み合わせが異なる(【0107】)
スロットマシン。(【0009】)」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2の記載事項については、「第2[理由]3(1)(1-2)引用文献2」に記載したとおりである。

3 対比
本願発明と引用発明3とを対比する(対比にあたっては、本願発明の構成A?I、L、N?Pと引用発明3の構成a?i、l、n?pについて、それぞれ(a)?(i)、(l)、(n)?(p)の見出しを付けて行った。なお、本願発明の構成J、K、Mについては、引用発明3に対応する構成がないため、構成別の対比を行わずに相違点とした。)。

(a)引用発明3の「図柄」は、本願発明の「識別情報」に相当する。
また、上記(3-イ)には、「リール2L、2C、2R(以下、左リール、中リール、右リール)」と記載され、「リール2L、2C、2R」が、「左リール、中リール、右リール」の3つのリールを表すことが示されている。
そうすると、引用発明3の「各々が識別可能な複数種類の図柄を変動表示可能な可変表示装置(リール2L、2C、2R)を備え」ることは、本願発明の「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を複数備え」ることに相当する。

(b)引用発明3において、「リール2L、2C、2R」と「可変表示装置」とは同じことを意味しており(引用発明3の構成aを参照。)、これは、本願発明の「前記可変表示部」に相当するものである。
そうすると、引用発明3の「各リール2L、2C、2Rの図柄が連続的に変動し、リール2L、2C、2Rの回転が停止し、表示結果が導出表示され、該可変表示装置に導出された表示結果としての図柄の組み合わせに応じて入賞が発生可能とされたスロットマシン(1)」は、
本願発明の「前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組み合わせに応じて入賞が発生可能なスロットマシン」に相当する。

(c)入賞表示結果が導出されると入賞が発生することは明らかであるから、引用発明3の「表示結果が導出される前に、複数種類の入賞表示結果の導出を許容するか否かを決定する事前決定手段」は、
本願発明の「表示結果が導出される前に、入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段」に相当する。

(d)引用発明3において、図柄の変動表示が停止されると表示結果が導出されるから(引用発明3の構成bを参照。)、引用発明3の「前記図柄の変動表示を停止させるために遊技者に操作される停止操作手段」は、
本願発明の「遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段」に相当する。

(e)引用発明3の「前記可変表示装置に表示結果を導出させる導出制御手段」は、本願発明の「前記表示結果を導出する制御を行う導出制御手段」に相当する。

(f)引用発明3の「各リール2L、2C、2Rの図柄に跨って設定された、有効化されたいずれかの入賞ラインL1?L5上」は、本願発明の「前記複数の可変表示部を通る予め定められた複数の組み合わせライン上」に相当する。
また、引用発明3の「各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した」「図柄の組み合わせ」は、本願発明の「導出された識別情報の組み合わせ」に相当する。
そうすると、引用発明3の「各リール2L、2C、2Rの図柄に跨って設定された、有効化されたいずれかの入賞ラインL1?L5上に予め定められた図柄の組み合わせが各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生したことを判定するメインCPU41aの手段」と、
本願発明の「前記複数の可変表示部を通る予め定められた複数の組み合わせラインのうち特定の組み合わせライン上に導出された識別情報の組み合わせに応じて入賞が発生したか否かを判定する入賞判定手段」とは、
「前記複数の可変表示部を通る予め定められた複数の組み合わせライン上に導出された識別情報の組み合わせに応じて入賞が発生したか否かを判定する入賞判定手段」である点で共通する。

(g)引用発明3の「前記事前決定手段により表示結果の導出を許容する旨が決定される確率を定めた値である複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を選択することで」設定される「遊技者に対する有利度」は、本願発明の「前記事前決定手段による有利度」に相当する。
そうすると、引用発明3の「前記事前決定手段により表示結果の導出を許容する旨が決定される確率を定めた値である複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を選択することで遊技者に対する有利度を設定する有利度設定手段」は、
本願発明の「前記事前決定手段による有利度を設定する有利度設定手段」に相当する。

(h)引用発明3の「RTフラグ」は、「遊技状態であるRT(0)?(3)のいずれかを示す数値を格納」するものであるから、「モードデータ」ということができ、本願発明の「第1モードデータ」に相当する。
また、引用文献3の段落【0071】には、メインCPU41aが演出制御基板に対して送信する遊技状態コマンドについて、「遊技状態コマンドは、次ゲームの遊技状態(RT(0)?(3)のいずれかであるか、BB中であるか、RB中であるか等)・・・を特定可能なコマンドであり・・・」と記載されているから、BB中、RB中にもRT(0)?(3)の場合のRTフラグと同様に、「BB中、RB中を示すデータ」が設定されていることは、明らかである。
そして、引用発明3は、「遊技状態をRBに移行させ、遊技状態をBBに移行させるとともに同時にRBに移行させる」ものであるから、「BB中、RB中を示すデータ」を設定するものということができ、この「BB中、RB中を示すデータ」は、本願発明の「第2モードデータ」に相当する。
さらに、引用文献3の段落【0009】には、「事前決定手段(内部抽選)」と記載されており、内部抽選は事前決定手段により実行されるものといえるし、引用発明3は、遊技状態によって内部抽選の対象となる役及び役の組み合わせが異なるものであり(引用発明3の構成pを参照。)、遊技状態の判断のためにRTフラグ及び「BB中、RB中を示すデータ」が用いられることは明らかである。
そうすると、引用発明3の「RTフラグとしてRT(0)?(3)のいずれかを示す数値を格納し、遊技状態をRBに移行させ、遊技状態をBBに移行させるとともに同時にRBに移行させるメインCPU41aの手段」は、
本願発明の「前記事前決定手段が用いるデータであって、第1モードデータと第2モードデータと、を含むモードデータを設定するモードデータ設定手段」に相当する。

(i)引用発明3において、RTフラグ[00]に対応するRT(0)は初期遊技状態であるから(引用文献3の段落【0096】を参照。)、[00]は「初期値」であるということができる。
そうすると、引用発明3の「RTフラグを[00]に更新するメインCPU41aの手段」は、
本願発明の「前記第1モードデータを初期化して初期値を設定する第1モードデータ初期化手段」に相当する。

(l)上記(g)を踏まえると、引用発明3の「設定変更時にRAM41cの初期化を行う際」は、本願発明の「前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合」に相当する。
そうすると、引用発明3の「設定変更時にRAM41cの初期化を行う際に、RTフラグが格納されるRTワークが初期化されないようになって」いることは、
本願発明の「前記第1モードデータは、前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合でも初期化されることがないデータであ」ることに相当する。

(n)引用発明3において、BB中又はRB中でない場合に、「BB中、RB中を示すデータ」に初期値が設定されるのは、当然のことである。
また、RTフラグは、RT(0)?(3)のいずれかを示す数値を格納するものであるから(引用発明3の構成hを参照。)、BB中又はRB中でない状態を細分化するデータであるといえる。
そうすると、引用発明3の「BB中またはRB中を除いてRT(0)?(3)のいずれかに制御され」ることは、
本願発明の「前記第1モードデータは、前記第2モードデータとして初期値が設定されている場合に前記第2モードデータが示す状態を細分化するデータであ」ることに相当する。

(o)引用発明3において、「BB、RB入賞した場合」に、「BB中、RB中を示すデータ」に初期値以外の値が設定されることは、明らかである。
したがって、上記(i)を踏まえると、引用発明3の「BB、RB入賞した場合には、RTフラグは[00]が格納され」ることは、
本願発明の「前記第1モードデータ初期化手段は、前記第2モードデータとして前記初期値以外の値が設定される場合に前記第1モードデータを初期化」することに相当する。

(p)引用発明3は、「遊技状態が、RT(0)?(2)であるか、RT(3)であるか、RBであるか、によって内部抽選の対象となる役及び役の組み合わせが異なる」ものであり、また、BB中またはRB中を除いてRT(0)?(3)のいずれかに制御されるものであるから(引用発明3の構成nを参照。)、「BB中、RB中を示すデータ」が初期値の場合には、RT(0)?(2)であるかRT(3)であるかにより(RTフラグにより判断することは明らかである。)、内部抽選の対象となる役及び役の組み合わせを決定し、「BB中、RB中を示すデータ」が初期値以外の場合には、「BB中、RB中を示すデータ」を用いて遊技状態がRBであることを判断して、内部抽選の対象となる役及び役の組み合わせを決定するものであるといえる。
また、引用文献3の段落【0009】には、「事前決定手段(内部抽選)」と記載されており、内部抽選は事前決定手段により実行されるものといえるから、引用発明3の「内部抽選」は、本願発明の「前記事前決定手段は、」「入賞の発生を許容するか否かを決定する」ことに相当する。
そうすると、引用発明3の「遊技状態が、RT(0)?(2)であるか、RT(3)であるか、RBであるか、によって内部抽選の対象となる役及び役の組み合わせが異なる」ことは、
本願発明の「前記事前決定手段は、前記第2モードデータが前記初期値の場合には、前記第1モードデータを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定し、前記第2モードデータが前記初期値以外の場合には、該第2モードデータを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定する」ことに相当する。

上記(a)?(i)、(l)、(n)?(p)の検討により、本願発明と引用発明3とは、

(一致点)
「A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を複数備え、
B 前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組み合わせに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
C 表示結果が導出される前に、入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
D 遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段と、
E 前記表示結果を導出する制御を行う導出制御手段と、
F’前記複数の可変表示部を通る予め定められた複数の組み合わせライン上に導出された識別情報の組み合わせに応じて入賞が発生したか否かを判定する入賞判定手段と、
G 前記事前決定手段による有利度を設定する有利度設定手段と、
H 前記事前決定手段が用いるデータであって、第1モードデータと第2モードデータと、を含むモードデータを設定するモードデータ設定手段と、
I 前記第1モードデータを初期化して初期値を設定する第1モードデータ初期化手段と、
を備え、
L 前記第1モードデータは、前記有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合でも初期化されることがないデータであり、
N 前記第1モードデータは、前記第2モードデータとして初期値が設定されている場合に前記第2モードデータが示す状態を細分化するデータであり、
O 前記第1モードデータ初期化手段は、前記第2モードデータとして前記初期値以外の値が設定される場合に前記第1モードデータを初期化し、
P 前記事前決定手段は、
前記第2モードデータが前記初期値の場合には、前記第1モードデータを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定し、
前記第2モードデータが前記初期値以外の場合には、該第2モードデータを用いて入賞の発生を許容するか否かを決定する
スロットマシン。」

である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
本願発明では、識別情報の組み合わせに応じて入賞が発生したか否かが判定される組み合わせラインが、「前記複数の可変表示部を通る予め定められた複数の組み合わせラインのうち特定の組み合わせライン」であり、
「前記入賞」は、「前記複数の組み合わせラインのうち特定の組み合わせラインに特定の識別情報の組み合わせが導出されることで発生する第1の入賞」と、「前記複数の組み合わせラインのうち前記特定の組み合わせライン以外のいずれかの組み合わせラインに前記特定の識別情報の組み合わせが導出され、かつ前記複数の組み合わせラインのうち前記特定の組み合わせラインに前記特定の識別情報の組み合わせとは異なる所定の識別情報の組み合わせが導出されることで発生する第2の入賞」と、を含み、
「前記モードデータ設定手段」は、「前記複数の組み合わせラインのいずれかに前記特定の識別情報の組み合わせが導出された場合に、前記特定の組み合わせラインに導出された識別情報の組み合わせに応じて前記第1モードデータの設定を行う」のに対して、
引用発明3では、「前記複数の組み合わせラインのうち特定の組み合わせライン」を有するか否か明らかでなく、上記「特定の組み合わせライン」に関する構成を備えない点。(構成F’、J、Kに関連)

(相違点2)
本願発明では、第2モードデータが有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に初期化されて初期値が設定されるデータであるのに対して、引用発明3では、そのような構成であるのか否か明らかでない点。(構成Mに関連)

4 判断
まず相違点1について検討する。
「第2[理由]3(3)判断」において、本願補正発明と引用発明との相違点1について検討したとおり、引用文献2には、
「複数の可変表示部を通る予め定められた複数の組み合わせラインのうち特定の組み合わせライン上に導出された識別情報の組み合わせに応じて入賞が発生したか否かを判定し、
前記入賞は、
前記複数の組み合わせラインのうち特定の組み合わせラインに特定の識別情報の組み合わせが導出されることで発生する第1の入賞と、
前記複数の組み合わせラインのうち前記特定の組み合わせライン以外のいずれかの組み合わせラインに前記特定の識別情報の組み合わせが導出され、かつ前記複数の組み合わせラインのうち前記特定の組み合わせラインに前記特定の識別情報の組み合わせとは異なる所定の識別情報の組み合わせが導出されることで発生する第2の入賞と、
を含み、
前記複数の組み合わせラインのいずれかに前記特定の識別情報の組み合わせが導出された場合に、前記特定の組み合わせラインに導出された識別情報の組み合わせに応じて通常の遊技状態からRTの遊技状態へと遊技状態を変更させるパチスロ機。」
に関する技術的事項が記載されているといえる。
そして、引用発明3と引用文献2に記載されたものとは、スロットマシンという同一の技術分野に属すものであり、この技術分野において、変化に富み、趣向性の高い遊技仕様とすることは一般的な課題であるから、引用発明3に対して引用文献2に記載された上記の技術的事項を適用するとともに、通常の遊技状態からRTの遊技状態へと遊技状態を変更させる場合に、モードデータ設定手段により第1モードデータ(RTフラグ)の設定を行うようにして、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

次に相違点2について検討する。
上記(3-エ)の記載事項によれば、引用文献3の段落【0059】には、「RTワークは、現在の遊技状態がRT(1)?(3)のいずれかである場合にその旨を示すRTフラグ、RT残りゲーム数が格納されるワークである。」、「停止相ワークは、リールモータ32L、32C、32Rの停止相を示すデータが格納されるワークであり、リールモータ32L、32C、32Rが停止状態となった際にその停止相を示すデータが格納されることとなる。」、「スタック領域は、メインCPU41aのレジスタから退避したデータが格納される領域であり」と記載されおり、これらの記載によれば、引用発明3の第2モードデータ(BB中、RB中を示すデータ)が、「RTワーク」、「停止相ワーク」、「使用中スタック領域」のいずれに格納されるデータでもないことは明らかである。
そうすると、引用発明3において、第2モードデータは、メインCPU41aにより設定されるものであるから(引用発明3の構成hを参照。)、メイン制御部41のRAM41cの格納領域のうち、使用中スタック領域、RTワーク及び停止相ワークを除く領域に格納されるものであると解するのが相当である。
また、上記(3-エ)の記載事項によれば、引用文献3の段落【0061】には、「初期化2は、起動時において設定キースイッチ37のみがONの状態であり、設定変更モードへ移行する場合において、その前に行う初期化であり、初期化2では、RAM41cの格納領域のうち、使用中スタック領域、RTワーク及び停止相ワークを除く全ての領域(未使用領域及び未使用スタック領域を含む)が初期化される。」と記載されているから、引用文献3には、設定変更モードへ移行する場合、すなわち、有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に、メイン制御部41のRAM41cの格納領域のうち、使用中スタック領域、RTワーク及び停止相ワークを除く全ての領域が初期化されることが記載されているといえる。
したがって、引用文献3には、第2モードデータが有利度設定手段により有利度が新たに設定される場合に初期化されて初期値が設定されるデータであることが開示されているといえるから、相違点2は実質的には相違点とはいえないものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明3及び引用文献2に記載された技術的事項から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明3及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-04 
結審通知日 2016-11-08 
審決日 2016-11-21 
出願番号 特願2010-289204(P2010-289204)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 海佐藤 史彬  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 瀬津 太朗
小島 寛史
発明の名称 スロットマシン  
代理人 溝渕 良一  
代理人 石川 好文  
代理人 重信 和男  
代理人 堅田 多恵子  

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