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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01N
管理番号 1323403
審判番号 不服2015-14538  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-03 
確定日 2017-01-24 
事件の表示 特願2010-177747「低コヒーレンス干渉計を用いて組織を識別するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月 2日出願公開、特開2010-271330、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年1月26日(パリ条約による優先権主張 2003年1月24日 米国(US))を国際出願日とする出願である特願2006-503161号の一部を平成22年8月6日に新たな特許出願としたものであって、平成25年3月21日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月26日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年6月9日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月16日に意見書が提出されたが、平成27年3月30日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされた。
これに対して、同年8月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正書が提出され、当審において平成28年5月16日付けで拒絶の理由(以下、「当審最初拒絶理由」という。)が通知され、同年8月5日に意見書及び手続補正書が提出され、当審において同年8月23日付けで最後の拒絶の理由(以下、「当審最後拒絶理由」という。)が通知され、同年11月28日に意見書及び手続補正書が提出された。


第2 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は、平成28年11月28日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「 【請求項1】
組織の特性を識別するための装置であって、
前記組織の照射を行うように構成された照射源と、
前記照射を受けとるように、及び組織内部深く焦点を当てるためのレンズがファイバの先端に設けられたプローブによって得られた、前記照射に関連する軸方向走査一次元データを、スペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉法または光学周波数ドメイン反射法のうちの少なくとも1つに基づいて処理した信号の、分割されたそれぞれの窓における平均偏差又は標準偏差によって、前記組織の特性を識別するように適合した画像システムと、を含む、組織の特性を識別するための装置。」


第3 原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前(優先権主張日前)日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前(優先権主張日前)にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例A:国際公開第2002/083003号
引用例3:国際公開第2000/042906号
引用例2:特開2002-214127号公報
引用例B:特開2002-082045号公報
引用例C:特開2002-172117号公報
本願発明は、引用例Aに記載された発明、及び、引用例3、2、B、Cに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。


第4 当審最初拒絶理由の概要
1 本願発明は、その出願前(優先権主張日前)日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前(優先権主張日前)にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例1:特表2002-534199号公報
引用例2:特開2002-214127号公報
引用例3:国際公開第2000/042906号
本願発明は、引用例1に記載された発明、及び、引用例2?3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

2 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

請求項4には、「照射を用いて前記組織の軸方向走査を行わせる」と記載されているが、「軸方向走査」の「軸」が何の軸を意図しているのか不明であるし、「軸方向走査」が具体的に何をどのように走査することを意図しているのかも不明である。
よって、請求項4に係る発明は明確でない。


第5 当審最後拒絶理由の概要
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

1 請求項1には、「分割された窓における平均偏差又は標準偏差」との記載があるが、「分割された窓」とは、具体的に何をどのように分割した領域を意図しているのかが、発明の詳細な説明を参酌しても不明である。請求項4も同様である。
2 請求項1には、「分割された窓における平均偏差又は標準偏差」との記載があるが、ここでの「平均偏差」や「標準偏差」が、1つの窓内での各データ(各反射率データ)のバラツキを意図しているのか、複数の窓の相互データ間のバラツキを意図しているのか、それとも、1つの窓内の時間変化(OCTのリアルタイム測定によるもの)のバラツキを意図しているのか、発明の詳細な説明を参酌しても不明である。請求項4も同様である。
3 請求項2及び3も同様な記載不備を有している。
したがって、請求項1-4に係る発明は、明確でない。


第6 進歩性の判断
本願発明の進歩性の判断について、当審最初拒絶理由の引用例1が、本願発明に最も関連する先行技術文献であるため、まず当審最初拒絶理由の1(上記第4の1)について判断し、その後、原査定の理由について判断する。

1 当審最初拒絶理由の1について
(1) 引用例の記載事項、及び、引用例に記載された発明の認定
ア 引用例1の記載事項
引用例1には、次の事項が記載されている。なお、下線は参考のために当審が付した。
(ア) 「【請求項13】
組織切除機器と、干渉計機器と、マイクロプロセッサ及びエネルギ制御装置を備えている制御システムとを備え、前記制御システムが前記組織切除機器の動作を変更するように構成されている組織を切除するための組織切除システム。」

(イ) 「【0006】
発明の開示
例示の実施態様では、組織切除を制御するための方法は、光学的時間分域反射率測定データを使用して、正常組織と異常組織とを区別し、組織切除要素へのエネルギの供給を制御することによって異常組織の切除を制御する。制御システムは、干渉計機器(インターフェロメトリー機器)によって提供されるデータを使用して、組織切除機器に制御信号を提供し、異常組織が切除されながらも正常組織が未処置のままとなるように組織切除機器の作動を制御する。」

(ウ) 「【0012】
干渉計機器106は、典型的には、ビームスプリッタ112に結合されている光源110を含んでいる。1つの実施態様では、光源110は約100μWから約25mWの出力を有する低コヒーレンス(低干渉性)光源である。光源は変更することができるが、短い波長の方が優れた画像特性及び透過を可能とさせるので、長い波長の光を発する光源よりも約0.7?2.0μmの短い波長のコヒーレント光を発する光源の方がより望ましい。しかしながら、光源は、約0.3?5.0μmの間で光の波長を調整し、衝突することが期待される組織の画像解像度を最適化するように、変更され得る。例えば、アテローム斑を透過し、疾患動脈の外膜及び内部の中膜を映像化するのには、約1.3μmの波長の光が最適であることが分かった。基準用の第1の光ファイバ114は、近位端部116においてビームスプリッタ112に結合されており、鏡面のような反射体120が結合されている自由端部すなわち遠位端部118を有している。サンプリング用の第2の光ファイバ122は近位端部124においてビームスプリッタ112に結合されており、内部身体組織Tの近傍又はそれに隣接して配置するための遠位サンプリング端部126を有している。第1の光ファイバ114及び第2の光ファイバ122の相対的な長さを調整するために、第1の光ファイバ114は第1の圧電コイル128の周りに巻き付けられており、第2の光ファイバ122は第2の圧電コイル130の周りに巻き付けられている。光ファイバの相対的な長さを調整するための他の装置及び要素も当該技術分野において公知となっている。第2の光ファイバ122は、例えばカテーテルや内視鏡のような支持部材132の内腔を通って延びている。ビームスプリッタ112は検出要素134に結合されている出力を有しており、検出要素134には、例えば、光検出器、復調器及びアナログデジタイザ(不図示)が含まれている。検出要素134はマイクロプロセッサ102に結合されている出力を有している。マイクロプロセッサ102はデータの視覚的表示のためにコンピュータモニタのような出力表示装置136にさらに結合され得る。」

(エ) 「【0016】
図2は光学的コヒーレンス分域反射率測定法の原理の略図であり、制御システム100はこの原理に基づいている。使用において、例えば、支持部材132は、例えば身体通路又は外科切開部内に挿入することによって、第2の光ファイバの遠位端部126が身体内において視診される組織Tの近傍に配置されるように、身体の内部に配置される。第1の光ファイバ114は身体外部に配置されている。光ビームBを生成するために光源110にエネルギを与え、これがビームスプリッタ112へ伝送される。ビームスプリッタ112は、光源110からのビームBを基準ビームB1及びサンプリングビームB2に分割するように構成されている。ビームスプリッタ112は、基準ビームB1を第1の光ファイバ114に沿って反射体120へ向けて送り、第2のビームB2を第2の光ファイバ122に沿って組織Tへ向けて送る。ビームB1は反射体120によって反射されて第1の光ファイバ114に沿って戻り、ビームB2は組織Tによって反射されて第2の光ファイバ122に沿って戻る。
【0017】
ビームB1及びB2はビームスプリッタ112において再結合され、それぞれの経路長が互いと等しいときに互いと構成的に干渉する。干渉が起こる距離は光源のコヒーレンス関数によって決定され得る。典型的には、コヒーレント長は、約100μWから約25mWの出力を有する低コヒーレンス光源の場合、約15μmである。
【0018】
光ビームB2の光学経路長は、第2の光ファイバ122の長さに依存している。光ビームB1の光学経路長は第1の光ファイバ114の長さ及び組織において光が散乱(反射)される場所からの距離に依存しており、この距離は組織の群屈折率の差の変化に合わせて増減する。図1を再び参照すると、光ファイバ114及び122に沿った光学距離は、圧電コイル128及び130によって変更され得る。光学経路長を連続的に変更することによって、組織の深さを走査することができ、一連の特定の深さから散乱する光の強度を測定することができるようになる。例えば、ビームB1の光学経路長がビームB2の光学経路長よりも0.5mm長いとき、組織において0.5mmと光学的に等価な(群屈折率の変化に合わせて増減する)深さから散乱される光の強度が測定される。光学経路長は連続的に変えられ、距離に対する散乱強度の関数を作成するために、散乱される光の強度が測定される。したがって、干渉測定技術により非常に小さい距離及び厚さを正確に測定して、組織Tの高解像度画像が形成され、アブレーション装置140が安全に使用可能である又は進行させることができるかを決定するために、オンラインの高解像度情報を提供することができる。干渉測定技術及び干渉計機器に関するより詳細な事項は同時係属米国特許出願第09/060,487号(1998年4月15日出願)の明細書に説明されている。この米国特許出願は本譲受人に譲渡されており、その全体を本願と一体のものとして参照されている。代替実施態様では、制御システム100が、干渉計機器106に代えて、ラマン又はレイリー分光法、誘導蛍光、又は他の線形又は非線形技術のような反射された光を分析するための異なる技術を使用する機器に結合される。例えば、分光機器に結合されているとき、マイクロプロセッサ102は、スペクトルデータの分析を用いて異常組織と正常組織の間の境界を識別する。
【0019】
図3は、異常組織の光ビームB2に対する散乱作用を示しているグラフである。ここで、異常組織とは疾患動脈におけるプラーク(斑)302の領域である。グラフは、第2の光ファイバ122の遠位端部126からの距離の関数として、反射光の強度をデシベル単位で示している。このようなグラフでは、プラーク領域302は、距離の関数として反射光の強度の定常的に減衰が増加することによって、正常な健康動脈組織の領域304から識別可能となる。より詳細には、減衰の傾きを決定することによって、異常組織が以下でより詳細に説明されるように識別される。領域304に対して領域302に示されている定常的な減衰は、この場合にはプラークである異常組織の相対的に組織化されていない構造に帰することができ、こうした組織化されていない構造は、無作為な方向に光を散乱させる傾向があり、それにより第2の光ファイバ122を通して伝送され戻される反射した光の強度を減少させる。この場合には健康動脈壁である相対的に組織化されている正常組織の構造は、複屈折又は有方性パターンで光を散乱させ、相対的により多くの光を第2の光ファイバ122を通して反射して戻すようになる。
【0020】
マイクロプロセッサ102はエネルギ制御装置104に制御信号を供給する。より詳細には、制御アルゴリズムは、第2の光ファイバ122の遠位端部126からの距離の関数として反射光の強度の減衰率を検査することによって異常組織の存在を検出する。例えば、マイクロプロセッサ102は約10Hzで反射された光をサンプリングし、多数の点のスライド平均(sliding average)を生成させ、例えば一度に約8?30個の点の窓についての強度値を平均する。スライド平均は関数の変曲点を識別し、この変曲点はノイズとは反対の関数の傾きの真の変化又は実際の変化を示している。傾きの実際の変化は正常組織と異常組織との間の境界を識別させる。例えば、1300nmの波長で光を発する約100μWの光源を使用しているとき、正常組織は、約-75dB/mm以下の傾きを有している関数の領域によって識別される。約-75dB/mmから約-150dB/mmの範囲内の傾きを有している関数の領域は、脂肪又は脂質のプラークのような柔軟なプラークを示している。約-150dB/mmから約-200dB/mmの範囲内の傾きは石灰化したプラークを示すのに対して、約-200dB/mm以上の傾きは空気又は血液を示している。例えば、アルゴリズムは単なる適/不適(go/no-go)のアルゴリズムであり、該アルゴリズムにおいては、異なる傾きを有した複数の関数領域の間の変曲点を使用してエネルギ制御装置104に供給される制御信号の状態を決定し、組織切除装置140を使用可能又は使用不能にする。代替実施態様では、アルゴリズムは、より複雑なパターン認識又はノイズ分析を行うように構成することができ、これら複雑なパターン認識又はノイズ分析により正常組織と異常組織との間の境界を特徴付ける反射光の変化を識別する。
【0021】
例えば、図3は、1300nmの波長で光を発する約100μWの光源を使用したときの、動脈における距離の関数として反射光の強度を示している。第2の光ファイバ122の遠位端部126から約0.100mmから約0.200mmでは、関数の傾きは約-75dB/mm以下であり、領域304の正常な健康組織を示している。遠位端部126から約0.200mmで関数の傾きが変化しており、ここをマイクロプロセッサ102は正常組織(動脈壁)とこの場合にはプラークである異常組織との間の境界として識別する。遠位端部126から約0.200mmから約0.275mmまでの領域、すなわちプラーク領域302における関数の傾きは、約-100dB/mmである。この傾きは約-75dB/mmから約-150dB/mmまでの範囲内になり、これは脂肪又は脂質のプラークのような柔軟なプラークを示している。遠位端部126から約0.275mmで関数の傾きが再度変化しており、マイクロプロセッサ102は境界を認識する。この場合、遠位端部126から約0.275mmから0.350mmまでの関数の傾きは約-267dB/mmで、空気又は血液を示しており、マイクロプロセッサ102はプラークの端部と空気又は血液の間の境界を遠位端部126から0.275mmの位置で識別する。距離の関数としての反射された光の減衰の減少(すなわち、傾きの減少)は、示されていないが、プラークの端部と正常組織との間の境界を識別させる。」

(オ) 「【0024】
例示の実施態様では、制御システム100は、操作者からのさらなる入力を必要とすることなく組織切除の実時間制御を行う。代替実施態様では、制御システム100はステッピングモータ又は同種のものにさらに連結されており、ステッピングモータは組織切除要素140及びマイクロプロセッサ102に連結されている。ステッピングモータはマイクロプロセッサ102からの制御信号に応じて、組織切除要素140を前進又は後退させることで、組織切除要素140の使用可能化及び前進の両方が制御システム100によって自動的に制御されるようになっている。例えば、異常組織が検出され組織切除要素140が使用可能にされた後、組織切除要素140は、異常組織と正常組織との間の組織境界が検出されない限りは、前進させられる。組織切除要素140は、組織切除要素140の先に正常組織があることを示すそのような組織境界が識別されるまで、前進し続ける。そのような境界が識別されると、組織切除要素140が使用不能とされ後退され得るようになる。代替使用方法では、組織切除要素140の手動による操作者は組織の実時間映像化のための出力表示装置136上で疑似画像を見ることができ、操作者がそれに従って、エネルギ制御装置を手動で作動又は作動停止させることにより又は組織切除要素140を手動で前進又は後退させることにより応答するようになっている。第2の光ファイバ122は組織切除要素140と同時に並行して使用され得るので、システムは、組織切除要素140を前進させながら、連続的な高解像度の画像データを操作者に提供することができる。
【0025】
こうして、制御システムは低侵襲組織切除装置の自動又は手動制御のために高解像度画像データを提供する。代替実施態様では、高周波装置、マイクロ波装置、超音波装置、機械的切断又はアテローム切除(atherectomy)装置及びレーザカテーテルを含む当該技術分野で公知となっている様々な組織切除治療器具、装置及びプローブが制御システム100と共に使用される。さらに、案内システムが組織切除要素と同時に使用されることができ、組織切除要素が前進させられているときに、治療されている組織に関する連続的なオンライン情報を提供する。」

(カ) 図1には、以下の図面が記載されている。


(キ) 図3には、以下の図面が記載されている。当該図面及び上記(エ)の記載より、「グラフ」は、「一次元のデータ」であることが見て取れる。


イ 引用例1に記載された発明の認定
上記ア(ア)?(キ)を含む引用例1全体の記載を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「組織切除機器と、干渉計機器と、マイクロプロセッサ及びエネルギ制御装置を備えている制御システムとを備え、前記制御システムが前記組織切除機器の動作を変更するように構成されている組織を切除するための組織切除システムであって、
組織切除を制御するための方法は、光学的時間分域反射率測定データを使用して、正常組織と異常組織とを区別し、組織切除要素へのエネルギの供給を制御することによって異常組織の切除を制御するものであり、
干渉計機器106は、典型的には、ビームスプリッタ112に結合されている光源110を含んでおり、光源110は約100μWから約25mWの出力を有する低コヒーレンス(低干渉性)光源であり、
サンプリング用の第2の光ファイバ122は近位端部124においてビームスプリッタ112に結合されており、内部身体組織Tの近傍又はそれに隣接して配置するための遠位サンプリング端部126を有しており、
検出要素134はマイクロプロセッサ102に結合されている出力を有しており、マイクロプロセッサ102はデータの視覚的表示のためにコンピュータモニタのような出力表示装置136にさらに結合され得るものであり、
制御システム100は、光学的コヒーレンス分域反射率測定法の原理に基づいており、
マイクロプロセッサ102は、スペクトルデータの分析を用いて異常組織と正常組織の間の境界を識別し、
制御アルゴリズムは、第2の光ファイバ122の遠位端部126からの距離の関数として反射光の強度の減衰率を検査することによって異常組織の存在を検出するものであり、
グラフは、一次元のデータであり、第2の光ファイバ122の遠位端部126からの距離の関数として、反射光の強度をデシベル単位で示し、このようなグラフでは、プラーク領域302は、距離の関数として反射光の強度の定常的に減衰が増加することによって、正常な健康動脈組織の領域304から識別可能となり、より詳細には、減衰の傾きを決定することによって、異常組織が識別され、領域304に対して領域302に示されている定常的な減衰は、この場合にはプラークである異常組織の相対的に組織化されていない構造に帰することができ、こうした組織化されていない構造は、無作為な方向に光を散乱させる傾向があり、それにより第2の光ファイバ122を通して伝送され戻される反射した光の強度を減少させるものであり、
1300nmの波長で光を発する約100μWの光源を使用したとき、正常組織は、約-75dB/mm以下の傾きを有している関数の領域によって識別され、約-75dB/mmから約-150dB/mmの範囲内の傾きを有している関数の領域は、脂肪又は脂質のプラークのような柔軟なプラークを示しており、約-150dB/mmから約-200dB/mmの範囲内の傾きは石灰化したプラークを示し、約-200dB/mm以上の傾きは空気又は血液を示しており、
制御システムは低侵襲組織切除装置の自動又は手動制御のために高解像度画像データを提供する、
組織切除システム。」


ウ 引用例2の記載事項
引用例2には、次の事項が記載されている。
(ア) 「【課題を解決するための手段】発明の要旨
本発明の1つの目的は、高解像度画像を提供し、また、医療処置中に使用して、医療従事者が処置を観察するか、または処置中に処置プロセスの制御をアクティブに補助することを可能にする、内視鏡撮像システムを提供することである。光学撮像システムは、内視鏡ユニットと、光学コヒーレンス断層撮影(OCT)方法を利用して構造体の多次元走査を行う干渉計とを備えている。本発明はOCTを用いて、構造体の高解像度撮像を行う。OCTは、コヒーレンス長が短いかまたは周波数を調整可能な光源を用いて、干渉測定により構造体の光学特性を測定する。」(第2頁右欄第35行?第46行)

(イ) 「図7Bに示すように、内視鏡ユニット34の遠位端47はさらに、光学系54の構成要素を介してビームの方向付けを行い得る。同図では、例えば、スポットサイズw0および共焦パラメータbは特定の適用に対して最適化される。典型的には、共焦パラメータbは縦方向走査範囲にほぼ等しい。図9にさらに示すように、構成要素は、レンズ、マイクロレンズ、レンズ列、または光ビームの焦点パラメータを制御する傾斜インデックスレンズを含み得る。」(第7頁左欄第35行?第43行)

(ウ) 「図6の実施形態を再び参照すると、光学系54は、レンズ56と光ビーム方向器58とを含む。ビーム方向器58は、ビームの伝播が受ける乱流の影響を最小限にするように構成されたレンズ、プリズム、またはミラーを含み得る。この実施形態では、ビーム方向器58は、好ましくは、光放射を内視鏡ユニット34の軸に垂直な方向に向けるための、GRINレンズ56に接着したミラーまたはプリズムである。ハウジング42は、内視鏡ユニット34の壁に沿って形成された透明な窓60を含む。本実施形態では、光放射を透明な窓60を介して問題の構造体14に垂直方向に向けることにより、図7Cの走査が実現される。図6を参照して、本実施形態では、内視鏡ユニット34が内視鏡ユニット34の先端部に窓160を有する場合は、超音波構成要素61およびビーム方向器のプリズムまたはミラー要素を除去することによって、高解像度の撮像が可能である。本実施形態では、光学系は、レンズ156であるビーム方向器を含み、光ファイバ44が回転すると、図7Bの走査で示すように、光を円形光路で伝播する。これを実現し得る多くの方法のうちの1つとしては、光ファイバ44をレンズ156が配置される軸から僅かにずらして配置することがある。上で説明したように、図7Aで示されるθ、φで走査を行う方法には幾つかの方法がある。これには、光ビーム方向付けオプティック54(図6)中のレンズの像面にある小型微量並進器(miniature microtranslator)(図示せず)を用いて遠位ファイバチップを軸方向に変位すること、および光ビーム方向付けオプティックの折り畳みミラー(fold mirror)の機械もしくは電磁、あるいは圧電により変位させることが含まれる。」(第7頁右欄第44行?第8頁左欄第23行)

(エ) 「非長さ方向走査の実施形態
上記説明の大部分は長さ方向走査機構を通じて基準経路の長さを変更することを包含する方法を中心としてきたが、本発明の実施形態のうちいくつかは、特に図17および図18に示すように、長さ方向走査機構を用いない。図17の実施形態を参照して、発光源702は、調節可能な外部格子を有する半導体レーザ、調節可能な固相レーザ(例えばTiAlO3)、または色素レーザなどの、狭帯域周波数調節可能源である。光源702を広い周波数範囲にわたって素早く調節する際に、長さ方向走査機構を用いずに、問題とする構造体714に関する長さ方向の情報を決定することができる。源702によって発光される放射は、光結合器706に伝えられる。前述のように光結合器706は、測定アーム710を規定する光路(内視鏡ユニット734に結合された回転機構735を含む)に沿って、また参照アーム708を規定する光路(測定期間中静止している静止参照反射器712に結合された分散補償システム726を含む)に沿って、放射を導く。定常出力光源702は、例えば鋸歯状で広い周波数範囲にわたって素早く周波数調節されることにより、周波数チャープ(frequency chirp)を実現する。動作に際して測定経路710の長さは、典型的には基準経路708の長さよりもわずかに長い。必要に応じて、図2Bに示すように参照反射器は内視鏡734の端に位置されてもよい。その場合、光が源702から参照反射器712に届き検出器に716に戻るのにかかる時間の遅延は、源702からサンプル714そして検出器716までの遅延よりもわずかに小さい。すなわち、構造体714内からの単一の反射は、参照反射器712からの反射よりも後に到達する。検出器716において2つの光信号は干渉し、2つの電界の積(product)は、検出器716内で生成される問題とする1成分となる。リニア周波数チャープおよび2つの光学フィールド間の相対遅延のため、2つのフィールドの積は、参照反射器712に対する構造体714内の反射部位の相対距離に比例した一定のビート周波数をもたらす。Fmをピーク周波数偏差と定義し、Tを周波数チャープの周期と定義すれば、ビート周波数はおおよそ以下のように与えられる:
Fb?(Fm/T)*Δt?(Fm/T)*(2Δx/c)
上式において、Δtは2つの信号間の時間遅延差であり、Δxは実効光路長差であり、cは光速である。従ってビート周波数情報は、構造体714内の反射の光路名に関する情報を含んでいる。このビート周波数項の大きさはその特定の深度における反射部位の大きさ(magnitude)に比例する。RFスペクトル分析器700に結合された低ノイズトランスインピーダンスアンプ(TIA)719を用いてRFスペクトル分析を行い、問題とする周波数範囲にわたっての反射の大きさ(構造体714内の問題とする深度範囲に対応する)を決定する。図18に、上述の長さ方向走査機構を無くした本発明のさらに別の実施形態を示している。この実施形態において、源802は典型的には広スペクトル帯域源を有している。測定期間中に参照アーム808の経路長を調節する必要がやはり無くなり、静止参照反射器812によってこれに換えている。源802によって発光された放射は光結合器806に伝えられ、前述のように光結合器806は、測定アーム810を規定する光路(内視鏡ユニット834に結合された回転機構835を含む)に沿って、また参照アーム808を規定する光路(静止参照反射器812に結合された分散補償システム826を含む)に沿って、放射を導く。必要に応じて、図2Bに示すように参照反射器は内視鏡834の端に位置されてもよい。図示の実施形態において、検出された放射は、格子型分析器または高フィネスTempTemp調節可能ファブリ-ペローフィルタなどの、光学スペクトル分析器820にて分析される。光学スペクトル分析器820の出力は、コンピュータ化画像処理機822の入力信号となる。コンピュータ化画像処理機822は、各回転位置におけるスペクトルのフーリエ変換を行うことにより、問題とする構造体の像を得る。画像処理機822の出力は、ディスプレイ/記録装置838に与えられる。動作に際して、参照アーム808および測定アーム810を規定する光路からの反射された放射は、光結合器806において前述のように連結され、スペクトル分析器820に伝えられる。一実施形態において、参照アーム808経路長は、構造体814への問題とする経路長よりもわずかに小さい。説明のために、構造体814内から単一の反射が発するとする。測定アーム810経路の長さが、源802から構造体814そして光学スペクトル分析器820の入力へと戻る光路長であるとする。基準経路808の長さが、光源802から参照反射器812そして光学スペクトル分析器820の入力へと戻るものとする。光路長差は、測定アーム経路810および参照アーム経路808間の差である。構造体814内における反射の大きさおよびそれに関連する経路長差は、光スペクトルを調べることによって測定され得る。光学スペクトル分析器820において、所与の経路長差につき、源802に含まれる周波数にわたって建設的光干渉と破壊的光干渉とが存在する。この干渉の大きさは反射の大きさに依存する。反射がなければ干渉もない。反射が基準反射と同じだけ大きければ、特定の周波数において光スペクトルの完全な相殺が起こり得る。分散補償器826を用いて補償されるべき分散差がなければ、光学スペクトル分析器820で測定された光スペクトルは、強度対光源周波数を表す正弦波様干渉パターンを含むことになる。干渉パターンの大きさは、構造体の反射係数(この周波数は光路長差に比例する)に比例する。干渉パターン対光周波数の周期は、Δf?Δx/cによって与えられる。ここでΔxは光路長差である。構造体814内の異なる深度において多くの光反射(複数の異なるΔx)が存在するならば、多くの正弦波周波数成分が存在することになる。光学スペクトル分析器820で導かれたデータに対して画像処理器822においてフーリエ変換を行うことにより、構造体814の反射率曲線が得られる。」(第12頁右欄第22行?第13頁右欄第26行)

(オ) 図6には、以下の図面が記載されている。当該図面及び上記(ウ)の記載より、「GRINレンズ56が光ファイバ44の先端に設けられた内視鏡ユニット34」が見て取れる。


(カ) 図7には、以下の図面が記載されている。


(キ) 図17には、以下の図面が記載されている。


(ク) 図18には、以下の図面が記載されている。


エ 引用例3の記載事項
引用例3には、次の事項が記載されている。
(ア) 「There are a variety of OCT imaging systems which are included within the scope of the invention, including those which provide optical path length scanning, tunable optical source scanning, optical source scanning, optical spectrum analysis imaging, and optical phase delay-line scanning. 」(第4頁第1行?第4行)
(当審訳)
「本発明の範囲内に含まれるOCTイメージング・システムには、光路長走査、可変光源走査、光源走査、光スペクトル解析イメージング、及び光位相遅延ライン走査を提供する様々なものを含む。」

(イ) 「As defined herein, a “beam director“ 6 comprises optical element(s) provided at the distal end of the optical fiber 11 to deliver and to collect a single or nearly single transverse spatial mode optical beam 4. Any combination of focusing and beam directing elements 6 known in the art which have appropriate parameters of focal length and size may be used. The optical element(s) of the beam director 6 encompassed by the invention include, but are not limited to, a microprism, mirror (such as a fold mirror), lens, focusing element, and the like. In one embodiment of the invention, the optical fiber 11 includes an integrated lens at its tip and is in proximity to a right angle polished optically coated facet such that a focused optical beam 4 is emitted in a direction at an angle to the longitudinal axis of the fiber 11.」(第10頁第24行?第11頁第2行)
(当審訳)
「本明細書で定義する“ビーム・ディレクタ”6は、単一又はほぼ単一の横空間モードの光ビーム4を照射し、収集するための光ファイバ11の先端に設けられた光学素子(単数又は複数)を含む。焦点距離および大きさの適切なパラメータが、当技術分野で知られているフォーカス及びビーム方向付け要素6との任意の組合せを使用することができる。本発明に包含されるビーム・ディレクタ6の光学要素(複数可)は、それに限定されるものではなく、マイクロプリズム、ミラー(折り返しミラー)、レンズ、結像素子等を挙げることができる。本発明の一実施形態では、光ファイバ11の長手方向軸線に対して角度をなす方向に出射される集束光ビーム4の光ファイバ11の先端側には、一体化されたレンズを含み、光学的にコーティングされた面を研磨して直角に近接している。」

(ウ) 「FIGS. 2A-B show embodiments of the invention where beam director 6 is a ball lens.」(第11頁第4行?第5行)
(当審訳)
「図2A-Bは、ビーム・ディレクタ6がボールレンズである発明の実施形態を示す。」

(エ) 「The focal spot size and focal position of the beam 4 may be controlled by changing the size of the ball lens and its spacing from the end of the fiber 11. 」(第11頁第13行?第14行)
(当審訳)
「ビーム4の焦点スポット寸法及び焦点位置は、ボールレンズのサイズと、ファイバ11の端からの間隔を変えることによって制御することができる。」

(オ) 「FIG. 2C shows another embodiment of the invention in which a beam director 6C is a graded index lens 12 with a microprism 13 on the end which is connected to the optical fiber 11.」(第12頁第1行?第2行)
(当審訳)
「図2Cは、ビーム・ディレクタ 6Cが、光ファイバ11に接続され、端部にマイクロプリズム13を備えた屈折率分布型レンズ12である本発明の別の実施形態を示す。」

(カ) 「There are several different embodiments of OCT imaging engines including: (1) embodiments which use a low coherence light source and an interferometer in conjunction with methods which scan the group and phase delays of light in a reference arm or shift the frequency of light in a reference arm; (2) embodiments which use a low coherence source, an interferometer, and an optical spectrum analyzer to analyze the output spectrum of the interferometer; and (3) embodiments which use a narrow linewidth frequency tunable optical source and interferometer. In addition there are other systems which use non-interferometric methods to measure the echo time delay of backscattered or backreflected light. It is also understood that the application of the fiber optic needle probe is not limited to OCT imaging.」(第25頁第12行?第20行)
(当審訳)
「OCT画像化エンジンのいくつかの異なる実施形態は、(1)基準アームにおける光の位相遅延を走査または基準アームにおける光の周波数をシフト方法と組み合わせて低コヒーレンス光源および干渉計を使用する実施形態、(2)、干渉計の出力スペクトルを分析するために低コヒーレンス光源、干渉計、光スペクトルアナライザを用いる実施形態、(3)、狭い線幅の周波数可変光源および干渉計を使用する実施形態である。は、後方散乱され、後方反射した光の時間遅延を測定する非干渉方式を使用する他のシステムである。光ファイバニードルプローブの適用は、OCT画像化に限定されるものではないことを理解されたい。」

(キ) 図2A?図2Eには、以下の図面が記載されている。


(2) 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「制御システム」を備えた「組織切除システム」は、「異常組織」と「正常組織」を「識別」するものであり、具体的には、「正常組織」、「脂肪又は脂質のプラークのような柔軟なプラーク」、「石灰化したプラーク」、「空気又は血液」といった組織の特性を、「第2の光ファイバ122の遠位端部126からの距離の関数」としての「グラフ」の「傾き」で「識別」するものであるから、本願発明の「組織の特性を識別するための装置」に相当する。

イ 引用発明1の「光源110」からの光は、「内部身体組織Tの近傍又はそれに隣接して配置するための遠位サンプリング端部126」を介して「内部身体組織T」に照射されるものであるから、当該「光源110」は、本願発明の「組織の照射を行うように構成された照射源」に相当する。

ウ 引用発明1の「遠位端部126」を有する「第2の光ファイバ122」は、「低コヒーレンス(低干渉性)光源」からの光を「内部身体組織T」に照射し、且つ、「反射光」を測定するために使用されるものであるから、本願発明の「前記照射を受けとるように、及び組織内部深く焦点を当てるためのレンズがファイバの先端に設けられたプローブ」とは、「照射を受け取るように、ファイバが設けられたプローブ」という点で共通する。

エ 引用発明1の「第2の光ファイバ122の遠位端部126からの距離」として表される「組織」深さ方向は、本願発明の「軸方向」に相当する。
そして、引用発明1は、「低コヒーレンス(低干渉性)光源」からの光を「内部身体組織T」に照射し、「第2の光ファイバ122の遠位端部126からの距離の関数として反射光の強度の減衰率」を「一次元データ」である「グラフ」(上記(1)ア(キ)を参照)として表すよう測定を行うものであるから、引用発明の当該「グラフ」は、本願発明の「照射に関連する軸方向走査一次元データ」に相当する。

オ 引用発明1の「制御システム100」は、「マイクロプロセッサ102」の「制御アルゴリズム」により、「グラフ」の「傾き」を求め、この「傾き」に基づいて「正常組織」、「脂肪又は脂質のプラークのような柔軟なプラーク」、「石灰化したプラーク」、「空気又は血液」といった組織の特性を識別するものであって、さらに、「マイクロプロセッサ102はデータの視覚的表示のためにコンピュータモニタのような出力表示装置136」に結合され、「高解像度画像データを提供」するものである。
そして、光学測定手法について、引用発明1の「制御システム100」は、「光学的時間分域反射率測定データを使用」し、「光学的コヒーレンス分域反射率測定法の原理に基づいて」測定を行うものであるから、本願発明の「スペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉法または光学周波数ドメイン反射法のうちの少なくとも1つに基づいて」測定を行うことと、「低コヒーレンス干渉法に基づいて」測定を行う点で共通する。
そうすると、引用発明1の上記「制御システム100」と、本願発明の「前記照射に関連する軸方向走査一次元データを、スペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉法または光学周波数ドメイン反射法のうちの少なくとも1つに基づいて処理した信号の、分割されたそれぞれの窓における平均偏差又は標準偏差によって、前記組織の特性を識別するように適合した画像システム」とは、「照射に関連する軸方向走査一次元データを、低コヒーレンス干渉法に基づいて、前記組織の特性を識別するために処理するように適合した画像システム」という点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明1とは、
(一致点)
「組織の特性を識別するための装置であって、
前記組織の照射を行うように構成された照射源と、
前記照射を受け取るように、ファイバが設けられたプローブによって得られた、前記照射に関連する軸方向走査一次元データを、低コヒーレンス干渉法に基づいて、前記組織の特性を識別するために処理するように適合した画像システムと、を含む、組織の特性を識別するための装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
「プローブ」について、本願発明は、「組織内部深く焦点を当てるためのレンズがファイバの先端に設けられ」ているのに対して、引用発明1は、そのような構成を示していない点。

(相違点2)
「低コヒーレンス干渉法」について、本願発明は、「スペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉法または光学周波数ドメイン反射法のうちの少なくとも1つに基づいて」いるのに対して、引用発明1は、そのような構成を示していない点。

(相違点3)
「組織の特性を識別するように適合した画像システム」について、本願発明は、「処理した信号の、分割されたそれぞれの窓における平均偏差又は標準偏差」を用いるものであるのに対して、引用発明1は、そのような構成を示していない点。

(3) 判断
(相違点3)について
引用例2及び3には、低コヒーレンス干渉法に基づいて光ファイバプローブを用い組織の光学測定を行う際に、レンズをファイバの先端に設けることで組織に対する焦点の位置を最適化することや、広帯域光源を利用したスペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉法や、可変波長光源を利用した光学周波数ドメイン反射法は記載されているものの、測定により得られた「信号」について、「分割されたそれぞれの窓における平均偏差又は標準偏差」を求めることで組織の特性を識別することは記載されておらず、引用発明1において、引用例2?3に記載された技術を採用しても、上記(相違点3)に関する構成とはならない。
また、引用発明1において、当該(相違点3)に関する構成を採用することは、単なる設計的事項ともいえない。

(4) 小括
上記(1)?(3)のとおりであるから、本願発明は、その余の相違点について検討するまでもなく、当業者が引用発明1及び引用例2?3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
本願の請求項2?3に係る発明についても、本願発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に、当業者が引用発明1及び引用例2?3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願の請求項4に係る発明は、ソフトウェアプログラムを格納する「記憶媒体」として、本願発明の装置における測定手法を表現したものであって、本願の請求項4に係る発明と引用発明1と対比すると、両者の相違点は、上記(相違点1)?(相違点3)に上記「記憶媒体」としての相違点を加えたものであるから、本願発明の判断と同様に、当業者が引用発明1及び引用例2?3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、当審最初拒絶理由の1は解消した。

2 原査定の理由について
(1) 引用例の記載事項、及び、引用例に記載された発明の認定
ア 引用例Aの記載事項、及び、引用例Aに記載された発明の認定
引用例A(明細書第6頁第16行?第7頁第19行、Figure 2(a)及び2(b)を参照。)には、OCDR(光コヒーレンス・ドメイン・リフレクトメトリ)を用い、ニードル28が組織24を貫通する動きの軸方向に走査され、照射に関連する一次元データを処理して、組織特性を識別する装置、の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。

イ 引用例3及び2には、上記1(1)エ及びウの事項がそれぞれ記載されている。
また、引用例Bには「光計測システム」に関する事項が、引用例Cには「光断層画像診断情報出力装置」に関する事項が、それぞれ記載されている。

(2) 対比
本願発明と引用発明Aを対比すると、両者は、
(一致点)
「組織の特性を識別するための装置であって、
前記組織の照射を行うように構成された照射源と、
前記照射を受け取るように、ファイバが設けられたプローブによって得られた、前記照射に関連する一次元データを、前記組織の特性を識別するために処理するように適合した画像システムと、を含む、組織の特性を識別するための装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点A)
「プローブ」について、本願発明は、「組織内部深く焦点を当てるためのレンズがファイバの先端に設けられ」ているのに対して、引用発明Aは、そのような構成を示していない点。

(相違点B)
「一次元データ」を得ることについて、本願発明は、「スペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉法または光学周波数ドメイン反射法のうちの少なくとも1つに基づいて」、「軸方向走査」一次元データを取得するものであるのに対して、引用発明Aは、OCDR(光コヒーレンス・ドメイン・リフレクトメトリ)の光学系を用いて、ニードル28が軸方向に移動して測定を行うものであるものの、「スペクトラルドメイン低コヒーレンス干渉法または光学周波数ドメイン反射法のうちの少なくとも1つに基づいて」得られた「軸方向走査」一次元データを用いるものであるかどうか不明である点。

(相違点C)
「組織の特性を識別するように適合した画像システム」について、本願発明は、「処理した信号の、分割されたそれぞれの窓における平均偏差又は標準偏差」を用いるものであるのに対して、引用発明Aは、そのような構成を示していない点。

(3) 判断
(相違点C)について
上記(相違点C)は、上記1(2)の(相違点3)と同じであり、上記1(3)で説示したとおり、引用例3及び2には、当該(相違点C)に関する構成は記載されていないといえる。さらに、引用例B及びCにも、(相違点C)に関する構成は記載されていない。
したがって、引用発明Aにおいて、引用例3、2、B、Cに記載された技術を採用しても、上記(相違点C)に関する構成とはならない。
また、引用発明Aにおいて、当該(相違点C)に関する構成を採用することは、単なる設計的事項ともいえない。

(4) 小括
よって、本願発明は、その余の相違点について検討するまでもなく、当業者が引用発明A及び引用例3、2、B、Cに記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
本願の請求項2?3に係る発明についても、本願発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に、当業者が引用発明1及び引用例3、2、B、Cに記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願の請求項4に係る発明は、ソフトウェアプログラムを格納する「記憶媒体」として、本願発明の装置における測定手法を表現したものであって、本願の請求項4に係る発明と引用発明Aと対比すると、両者の相違点は、上記(相違点A)?(相違点C)に上記「記憶媒体」としての相違点を加えたものであるから、本願発明の判断と同様に、当業者が引用発明A及び引用例3、2、B、Cに記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由は解消した。


第7 明確性の判断
1 当審最初拒絶理由の2(上記第4の2)について
平成28年8月5日に提出された意見書において、「軸方向走査」について釈明がなされ、請求項4に係る発明は明確となった。
したがって、当審最初拒絶理由の2は解消した。

2 当審最後拒絶理由(上記第5)について
平成28年11月28日に提出された手続補正書によって、請求項1及び4において、「分割されたそれぞれの窓における平均偏差又は標準偏差」を得ることが特定された。また、同日に提出された意見書において、「分割されたそれぞれの窓」について釈明がなされた。
したがって、当審最後拒絶理由は解消した。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由、当審最初拒絶理由及び当審最後拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-06 
出願番号 特願2010-177747(P2010-177747)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01N)
P 1 8・ 121- WY (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西村 直史  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 田中 洋介
信田 昌男
発明の名称 低コヒーレンス干渉計を用いて組織を識別するためのシステムおよび方法  
代理人 正林 真之  

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