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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02P 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02P |
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管理番号 | 1323437 |
審判番号 | 不服2015-15661 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-08-24 |
確定日 | 2017-01-10 |
事件の表示 | 特願2011- 83920「レーザ着火装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月12日出願公開、特開2012-219661〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成23年4月5日の出願であって、平成26年12月2日付けで拒絶理由が通知されたのに対し、平成27年2月9日に意見書が提出されたが、平成27年5月20日付けで拒絶査定がされ、平成27年8月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成27年12月8日及び平成28年2月2日に上申書が提出されたものである。 第2.平成27年8月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成27年8月24日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 (1)本件補正の内容 平成27年8月24日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関しては、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(すなわち、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1)の下記(ア)の記載を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の下記(イ)の記載へと補正するものである。 (ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「 【請求項1】 燃焼室内の混合気に着火するためのレーザ着火装置であって、 前記燃焼室内に配置されたターゲット部と、 前記燃焼室外に配置され、前記ターゲット部に照射するためのレーザ光を出射するレーザ光源と、 を備え、 前記レーザ光源はマイクロチップレーザであることを特徴とするレーザ着火装置。」 (イ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「 【請求項1】 燃焼室内の混合気に着火するためのレーザ着火装置であって、 前記燃焼室内に配置されたターゲット部と、 前記燃焼室外に配置され、前記ターゲット部に照射するためのレーザ光を出射するレーザ光源と、 を備え、 前記レーザ光源は、半導体レーザである励起光源、レーザ共振器及びパルス化手段を備えているマイクロチップレーザであることを特徴とするレーザ着火装置。」(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。) (2)本件補正の目的 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「マイクロチップレーザ」が、「半導体レーザである励起光源、レーザ共振器及びパルス化手段を備えている」旨を限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 したがって、本件補正は、特許請求の範囲に関しては、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2.独立特許要件についての判断 本件補正における特許請求の範囲に関する補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 2.-1 引用文献 (1)引用文献の記載 本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2010-101266号公報(以下、「引用文献」という。)には、「レーザ点火プラグ、レーザ着火装置、及びエンジン」に関し、図面とともに、例えば、次のような記載がある。 (ア)「【0001】 本発明は、レーザ点火プラグ、レーザ着火装置と、及び、それを用いたエンジンに関する。 …(後略)…」(段落【0001】) (イ)「【0006】 本発明の課題は、低消費電力で安定した着火性能を発揮するレーザ点火プラグ、及びレーザ着火装置、及びエンジンを提供することである。 …(後略)…」(段落【0006】) (ウ)「【0012】 さらに、本発明に係るエンジンは、レーザ着火装置と、シリンダヘッドとを含む。前記レーザ着火装置は、上述したレーザ着火装置であり、前記レンズ装置は、前記シリンダヘッドに設けられ、前記ターゲットは、前記シリンダヘッドの燃焼室に配置されている。前記レーザ装置は、エンジンの回転に同期して前記レーザ光を出力する。 …(中略)… 【0015】 図1に、本発明に係るレーザ点火プラグ及びレーザ着火装置を示す。レーザ着火装置は、レーザ装置1と、伝送路である光ファイバ2と、レーザ点火プラグGとを含み、このレーザ点火プラグGは、レンズ装置3と、ターゲットTとを含む。 【0016】 レーザ装置1は、パルス信号によって駆動される一般的な半導体レーザ装置であって、レーザ光を出力して光ファイバ2に入射させる。レーザ光としては、着火を容易にするために、例えば熱エネルギが大きい赤外線(IR)レーザを採用することができる。また、本実施形態の伝送路としては光ファイバを挙げているが、低損失でレーザ光を伝送できるものであれば、ミラーやプリズムなどの他の光学部品を用いて伝送路を構成することも可能である。 【0017】 レンズ装置3は、光ファイバ2に接続され、入射したレーザ光をターゲットTに集光させる。このレンズ装置3は、対物レンズ31と、セルフォックレンズ32と、先端カバー33と、胴体カバー34と、ストッパ35と、後端カバー36とを含む。」(段落【0012】ないし【0017】) (エ)「【0030】 次に、本発明に係るレーザ着火装置の他の実施形態とともに、これを適用したエンジンについて説明する。図2は、本発明に係るレーザ着火装置を適用したエンジンを示す。 【0031】 エンジンは、上述したレーザ着火装置と、燃料噴射制御部10と、シリンダCとを含んでおり、このシリンダCは、シリンダヘッド5と、ピストン71と、ピストンロッド72と、吸気バルブ61と、排気バルブ62とを含む。 【0032】 公知のように、エンジンの動作は、吸気バルブ61により混合気が燃焼室Rへと導かれ、混合気に着火して得た爆発力によりピストン71、及びピストンロッド72を駆動し、残った排気ガスを排気バルブ62により排出するというものである。ここで、符号D1?D3は、それぞれ、吸気バルブ61、排気バルブ62、ピストン71の駆動方向を示している。 【0033】 本発明に係るレーザ点火プラグ及びレーザ着火装置は、このようなエンジンにおいて、従来の点火プラグを代替するものとして適用される。」(段落【0030】ないし【0033】) (2)引用文献記載の事項 上記(1)(ア)ないし(ウ)並びに図1及び2の記載から、引用文献には、次の事項が記載されていることが分かる。 (カ)上記(1)(ア)ないし(ウ)並びに図1及び2の記載から、引用文献には、燃焼室Rへと導かれた混合気に着火するレーザ着火装置が記載されていることが分かる。 (キ)上記(1)(ウ)及び図2の記載によれば、ターゲットTは燃焼室R内に配置されていることから、このことを上記(1)(ウ)及び(エ)並びに図1及び図2の記載とをあわせると、引用文献に記載されたレーザ着火装置は、燃焼室R内に配置されたターゲットTを備えることが分かる。 (ク)図2において、レーザ装置1が燃焼室R外に位置していることが看取できるから、このことを上記(1)(ウ)及び(エ)並びに図1及び図2の記載とをあわせると、引用文献に記載されたレーザ着火装置は、燃焼室R外に位置し、ターゲットTに照射するためのレーザ光を出力するレーザ装置1を備えることが分かる。 (ケ)上記(1)(ウ)の記載から、引用文献に記載されたレーザ着火装置は、パルス信号によって駆動される一般的な半導体レーザ装置であることが分かる。 (3)引用発明 上記(1)及び(2)並びに図1及び2の記載から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「 燃焼室Rへと導かれた混合気に着火するレーザ着火装置であって、 燃焼室R内に配置されたターゲットTと、 燃焼室R外に位置し、ターゲットTに照射するためのレーザ光を出力するレーザ装置1と、 を備え、 前記レーザ装置1は、パルス信号によって駆動される一般的な半導体レーザ装置であるレーザ着火装置。」 2.-2 対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における 「燃焼室R」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願補正発明における「燃焼室」に相当し、以下同様に、「混合気」は「混合気」に、「レーザ着火装置」は「レーザ着火装置」に、「ターゲットT」は「ターゲット部」に、「レーザ光」は「レーザ光」に、「出力する」は「出射する」に、「レーザ装置1」は「レーザ光源」に、それぞれ相当する。 そして、引用発明における「燃焼室Rへと導かれた混合気に着火するレーザ着火装置」は、その技術的意義からみて、「燃焼室内の混合気に着火するためのレーザ着火装置」に相当する。 以上から、本願補正発明と引用発明は、 「 燃焼室内の混合気に着火するためのレーザ着火装置であって、 前記燃焼室内に配置されたターゲット部と、 前記燃焼室外に配置され、前記ターゲット部に照射するためのレーザ光を出射するレーザ光源と、 を備えるレーザ着火装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 〈相違点〉 本願補正発明においては、レーザ光源が「半導体レーザである励起光源、レーザ共振器及びパルス化手段を備えているマイクロチップレーザである」のに対し、引用発明においては、レーザ装置1が「パルス信号によって駆動される一般的な半導体レーザ装置である」点(以下、「相違点」という。)。 2.-3 判断 上記相違点について検討する。 「半導体レーザである励起光源、レーザ共振器及びパルス化手段を備えたマイクロチップレーザ」は、本願出願前に周知の技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開2006-73962号公報の段落【0007】、【0020】及び【0021】のほか、平等拓範著,「高輝度マイクロチップレーザーとエンジン点火」,レーザー研究,日本,社団法人レーザー学会,2010年8月発行,第38巻第8号,576ないし584ページの特に「2.2 受動Qスイッチ型マイクロチップレーザー」等参照。)である。 また、「マイクロチップレーザは、小型化が可能で、エネルギー効率が高い」ことも、本願出願前に周知の事項(以下、「周知事項1」という。例えば、上記特開2006-73962号公報の段落【0017】のほか、本越伸二著,「マイクロチップ固体レーザーの開発研究」,LASER CROSS,日本,財団法人レーザー技術総合研究所,2001年7月発行,No.160第1及び2ページ等参照。)である。 そして、低消費電力で安定した着火性能を発揮するレーザ着火装置を提供する(上記2.-1(1)(イ)参照)という課題を有する引用発明において、「パルス信号によって駆動される一般的な半導体レーザ装置」に代えて、上記周知事項1を斟酌しつつ、上記周知技術の「半導体レーザである励起光源、レーザ共振器及びパルス化手段を備えたマイクロチップレーザ」を用いることによって、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。 また、一般的に、機械装置において装置の小型化や効率化といった課題は、普遍的かつ継続的な技術課題であるといえるところ、引用発明において、装置の小型化及び効率化のために、「パルス信号によって駆動される一般的な半導体レーザ装置」に代えて、上記周知技術を採用することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないということもできる。 さらに、自動車用エンジンやコジェネレーションシステムに用いられるガスエンジンのレーザ着火装置にマイクロチップレーザを用いることは、例えば、本願の明細書に先行技術文献として挙げられた特開2006-329186号公報の段落【0007】及び【0037】のほか、上記平等拓範著,「高輝度マイクロチップレーザーとエンジン点火」の特に「4.まとめ」の項等参照。)に示唆された本願出願前に周知の事項(以下、「周知事項2」という。)であり、引用発明において、該周知事項2を斟酌することで、「パルス信号によって駆動される一般的な半導体レーザ装置」に代えて、上記周知技術を採用する動機付けがあったということもできる。 そして、本願補正発明は、全体として検討しても、引用発明、周知技術、周知事項1及び2から予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできず、本願補正発明は、引用発明、周知技術、周知事項1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 上記のとおり、平成27年8月24日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1ないし3に係る発明は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.の[理由]1.(1)(ア)【請求項1】のとおりのものである。 2.引用発明 本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開2010-101266号公報)記載の発明(引用発明)は、前記第2.の[理由]2.-1の(3)に記載したとおりである。 3.対比・判断 前記第2.の[理由]1.(2)で検討したとおり、本件補正は、該補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明、すなわち本願発明の発明特定事項をさらに限定するものであるから、本願発明は、実質的に本願補正発明における発明特定事項の一部を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2.の[理由]2.-2及び2.-3に記載したとおり、引用発明、周知技術、周知事項1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、周知技術、周知事項1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術、周知事項1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第4.むすび 上記第3.のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-03-10 |
結審通知日 | 2016-03-15 |
審決日 | 2016-03-28 |
出願番号 | 特願2011-83920(P2011-83920) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F02P)
P 1 8・ 575- Z (F02P) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 赤間 充 |
特許庁審判長 |
伊藤 元人 |
特許庁審判官 |
中村 達之 梶本 直樹 |
発明の名称 | レーザ着火装置 |
代理人 | 池田 正人 |
代理人 | 黒木 義樹 |
代理人 | 柴山 健一 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 柴山 健一 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 黒木 義樹 |
代理人 | 池田 正人 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |