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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C11D 審判 全部申し立て 2項進歩性 C11D |
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管理番号 | 1323449 |
異議申立番号 | 異議2016-700224 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-03-16 |
確定日 | 2016-10-21 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5779392号発明「液体洗浄剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5779392号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。 特許第5779392号の請求項1、2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5779392号の請求項1、2に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成23年4月28日に特許出願されたものであって、平成27年7月17日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成28年3月16日に、特許異議申立人番場大円により特許異議の申立てがなされ、同年6月16日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年8月18日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)があったものである。 第2 訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の「xとyは、x+y=8である。」と記載されているのを「xとyは、xとyの一方が3で、他方が5である。」に、「p+qは1?10である。」と記載されているのを「p+qは3?4である。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正されることとなる。) (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び、一群の請求項について 訂正事項1は、「xとyは、x+y=8である。」と記載されているのを「xとyは、xとyの一方が3で、他方が5である。」に、「p+qは1?10である。」と記載されているのを「p+qは3?4である。」のように特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、明細書の段落【0019】の「そのなかでも、C_(x)H_(2x+1)、C_(y)H_(2y+1)は、プロピル基とペンチル基との組合せ(xとyの一方が3で、他方が5であること)が特に好ましい。」との記載、及び、同段落【0020】の「p+qは1?10であり、好ましくは1?5であり、特に、好ましくは3?4である。」との記載を根拠とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 さらに、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものに該当しないので、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 そして、訂正事項1に係る請求項1、2は、当該訂正事項1を含む請求項1の記載を、請求項2が引用しているものであるから、これらに対応する訂正後の請求項1、2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。 第3 本件特許について 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1、2に係る発明(以下、項番に従い、「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、それぞれ、下記の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 下記一般式(a1)で表される化合物(a)と、 下記一般式(b1)で表される化合物(b)と、 トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、置換もしくは非置換ナフタレンスルホン酸、又はこれらの芳香族スルホン酸塩、安息香酸又はこの塩、及び炭素数2?4のアルコールからなる群より選択される少なくとも一種のハイドロトロープ剤(c)と を含有し、 (a)成分/(b)成分で表される質量比が6以下であることを特徴とする液体洗浄剤。 【化1】 [式(a1)中、R^(1)は炭素数8?24の直鎖状のアルキル基、又は炭素数8?24の直鎖状のアルケニル基である。EOはオキシエチレン基を表す。nはEOの平均繰返し数を表し、1?5の数である。M_(1)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。式(b1)中、xとyは、xとyの一方が3で、他方が5である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数を表し、p+qは3?4である。M_(2)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。] 【請求項2】 両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤(d)をさらに含有することを特徴とする、請求項1記載の液体洗浄剤。」 第4 取消理由の概要 当審において、請求項1、2に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1) 本件特許の特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明に記載されたものでなく、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである(申立理由4の一部に相当。以下、「取消理由1」という。)。 (2) 本件発明1、2は、いずれも甲第1号証に記載された発明、又は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(申立て理由2、3に相当。以下、「取消理由2」という。)。 第5 判断 ア. 取消理由通知に記載した取消理由について 1. 取消理由2(特許法第29条第2項の規定について) (1) 刊行物 1.特開昭51-109002号公報(甲第1号証。以下、「刊行物1」という。) 2.特開2010-13579号公報(甲第2号証。以下、「刊行物2」という。) (2) 刊行物に記載の事項 1.刊行物1に記載の事項 (1a) 「2.特許請求の範囲 一般式(I) 〔式中、R_(1)は炭素数が6ないし15でありかつ平均炭素数が8ないし13である炭素数分布を有する直鎖アルキル基であり、nは混合物の平均値として0.5ないし1.5である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムあるいはアルカノールアミンのいずれかである。〕 で表わされる直鎖アルキルエーテルサルフエートの70重量%以下と、一般式(II) 〔式中、R_(2)は炭素数が1ないし12の、R_(3)は炭素数が1ないし4の直鎖アルキル基であり、かつ は平均炭素数が8ないし13であるような炭素数分布を有する。n及びMは式(I)の記号と同一の意味を表わす。〕 で表わされる分岐鎖アルキルエーテルサルフエートの30重量%以上との混合物を洗浄活性成分の全部または一部として含むことを特徴とする洗浄剤組成物。」 (1b)3頁右上欄12行?左下欄2行 「本発明の洗浄剤において、上記一般式(I)及び(II)で表わされるエーテルサルフエートの含有量は0.5?60重量%である。さらに具体的には従来使用されているアニオン性の粉末洗剤においてそのトリポリリン酸ソーダの含有量を減少させる目的でアニオン活性剤の一部を上記一般式(I)及び(II)のエーテルサルフエートに代替する場合には0.5?15重量%、トリポリリン酸ソーダを全く含まない無リン洗剤の場合には2.5?25重量%、衣料用液体重質洗剤の場合には2.5?60重量%である。」 (1c)3頁右下欄11?14行 「また液体洗浄剤の場合にはエタノール、メタノール、尿素、パラトルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩等の可溶化剤を添加してもよい。」 (1d)5頁左下欄16行?6頁右上欄14行 「実施例2 下記の配合組成の衣料用粉末洗剤を用いて、そのうちのアルキルエーテルサルフエートのみをいろいろと種類を変えて洗濯後のすゝぎ性を調べた。すゝぎ性の試験方法は実施例1と同じである。 洗剤配合組成 以上のすゝぎ性試験の結果を表-2に示す。 注):○*印の洗剤番号のものが本発明の洗剤である。 ○洗剤1は前記配合組成にてエーテルサルフエートの代りに全部ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダとしたものである。 この結果から明らかなように、本発明の洗剤は1回目のすゝぎでほゞ泡が消え、2回目のすゝぎでは全く泡が消失してしまい、優れたすゝぎ性を有するが、アルキル基の分枝鎖率の小さいもの、平均炭素数の大きいもの、エチレンオキサイドの付加モル数の大きいもの等の従来のエーテルサルフエートを配合した洗剤は2回すゝぎ後でもかなりの泡立ちがありすゝぎ性が極めて悪い。」 2.刊行物2に記載の事項 (2a) 「【請求項1】 (a)炭素数10?16のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩〔以下、(a)成分という〕、(b)下記一般式(1)で示されるアミンオキシド型界面活性剤〔以下、(b)成分という〕、水並びに、(c)ハイドロトロープ剤〔以下、(c)成分という〕及び(d)有機溶剤〔以下、(d)成分という〕から選ばれる1種以上の成分、を含有する液体洗浄剤組成物であって、(a)成分中の分岐鎖アルキル基を持つ化合物の割合が10?50質量%であり、(b)/(a)のモル比が0.3?1.2であり、20℃の粘度が250mPa・s以下である液体洗浄剤組成物。 【化1】 〔式中、R^(10)は炭素数10?18の炭化水素基、R^(11)及びR^(12)はそれぞれ炭素数1?3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。〕」 (2b) 「【0011】 <(a)成分> 本発明の(a)成分は、炭素数10?16のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩であって(a)成分中の分岐鎖アルキル基を有する化合物の割合が10?50質量%である。 【0012】 (a)成分のより好ましいアルキル基の炭素数は、炭素数10?14である。オキシアルキレン基は炭素数2又は3のオキシアルキレン基が好ましく、より好ましくはオキシエチレン基である。炭素数2又は3のオキシアルキレン基の平均付加モル数は、1.0?4.0が好ましく、オキシアルキレン基が全てオキシエチレン基のときは、好ましくは1.0?3.0モル、より好ましくは1.5?3.0である。またオキシプロピレン基を含む場合も、更にオキシエチレン基を含むことが好ましく、この場合は、オキシプロピレン基は好ましくは平均2.0モル以下であり、且つオキシエチレン基は好ましくは平均1.0?3.0である。また塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アルカノールアミン塩が挙げられ、特に粘度の点からナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましい。 【0013】 本発明では(a)成分中に、分岐鎖アルキル基を有する化合物を含有することが非常に重要である。すなわち、本発明では(a)成分中の分岐鎖アルキル基を有する化合物の割合(以下、分岐率という場合がある)が重要である。本発明において、分岐率は10?50質量%であり、更に好ましくは10?40質量%であり、より好ましくは10?30質量%である。洗浄力の点から、上限値以下の分岐率が好ましく、貯蔵安定性の観点から下限値以上の分岐率が好ましい。 【0014】 (a)成分は、炭素数10?16のアルキル基を有し炭素数2又は3のオキシアルキレン基が平均1.0?4.0モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩であって、(a)成分中の分岐鎖アルキル基を有する化合物の割合が、10?50質量%のものを挙げることができる。 【0015】 (a)成分は、直鎖1-アルケンをヒドロホルミル化して得られたアルコールを原料にして製造された分岐鎖1級アルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を含むことが好適である。ここで、ヒドロホルミル化とは鉄、コバルトあるいはニッケル等のカルボニル錯体を触媒として用い直鎖1-アルケンに一酸化炭素を付加させてアルコールを得る方法であり、直鎖アルキル基とメチル分岐アルキル基を含有するアルコールが得られる。 【0016】 ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩は、このようなアルコールにさらにアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシド(以下、POという。)又はエチレンオキシド(以下、EOと表記する)、より好ましくはEOを付加させ、さらに三酸化イオウ又はクロルスルホン酸でスルホン化し、アルカリ剤で中和して得ることができる。中和に用いるアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウムが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムがより好ましい。このようにして得られたポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩は、分岐鎖アルキル基を含むものである。 【0017】 ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩自体は、他の界面活性剤よりもぬるつき感の少ない性質を示すが、アミンオキシド型界面活性剤との併用によるぬるつき感の上昇とともに、高濃度化による増粘やゲル化によって被洗浄表面に残留しやすくなることに起因するぬるつき感が懸念される。しかし、この問題は、前記分岐鎖率の範囲内とすることで低減される。」 (2c) 「【0023】 <(c)成分> (c)成分のハイドロトロープ剤としては、最大炭素数が3以下のアルキル基を1?3個有するアルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、具体的にはトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、及びクメンスルホン酸、並びにこれらのナトリウム、カリウムあるいはマグネシウム塩が良好であり、特にp-トルエンスルホン酸が良好である。」 (3) 刊行物に記載された発明 1.刊行物1に記載された発明 (ア) 上記摘示事項(1a)、(1b)によれば、刊行物1には、「一般式(I) 〔式中、R_(1)は炭素数が6ないし15でありかつ平均炭素数が8ないし13である炭素数分布を有する直鎖アルキル基であり、nは混合物の平均値として0.5ないし1.5である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムあるいはアルカノールアミンのいずれかである。〕 で表わされる直鎖アルキルエーテルサルフェートの70重量%以下と、一般式(II) 〔式中、R_(2)は炭素数が1ないし12の、R_(3)は炭素数が1ないし4の直鎖アルキル基であり、かつ は平均炭素数が8ないし13であるような炭素数分布を有する。n及びMは式(I)の記号と同一の意味を表わす。〕 で表わされる分岐鎖アルキルエーテルサルフェートの30重量%以上との混合物を洗浄活性成分の全部または一部として2.5?60重量%含む衣料用液体重質洗剤」が記載されていると認められる。 (イ) 上記摘示事項(1c)によれば、刊行物1記載の液体洗(浄)剤には、エタノール、パラトルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩等の可溶化剤が添加される場合があることが分かる。 上記(ア)、(イ)の検討事項より、刊行物1には、 「一般式(I) 〔式中、R_(1)は炭素数が6ないし15でありかつ平均炭素数が8ないし13である炭素数分布を有する直鎖アルキル基であり、nは混合物の平均値として0.5ないし1.5である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムあるいはアルカノールアミンのいずれかである。〕 で表わされる直鎖アルキルエーテルサルフェートの70重量%以下と、一般式(II) 〔式中、R_(2)は炭素数が1ないし12の、R_(3)は炭素数が1ないし4の直鎖アルキル基であり、かつ は平均炭素数が8ないし13であるような炭素数分布を有する。n及びMは式(I)の記号と同一の意味を表わす。〕 で表わされる分岐鎖アルキルエーテルサルフェートの30重量%以上との混合物を洗浄活性成分の全部または一部として2.5?60重量%含み、さらに、エタノール、パラトルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩等の可溶化剤が添加された衣料用液体重質洗剤。」(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 2.刊行物2に記載の発明 (ウ) 上記摘示事項(2a)の「(a)成分中の分岐鎖アルキル基を持つ化合物の割合が10?50質量%であ」るとは、(a)成分中に、分岐鎖アルキル基を持つ化合物の割合が10?50質量%、分岐鎖アルキル基でない、すなわち、直鎖アルキル基を持つ化合物の割合が90?50質量%であることを意味するから、直鎖アルキル基を持つ化合物/分岐鎖アルキル基を持つ化合物の質量比が1?9であることを特定することと同義である。 とするならば、刊行物2には、「(a)炭素数10?16のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩〔以下、(a)成分という〕、(b)下記一般式(1)で示されるアミンオキシド型界面活性剤〔以下、(b)成分という〕、水並びに、(c)ハイドロトロープ剤〔以下、(c)成分という〕及び(d)有機溶剤〔以下、(d)成分という〕から選ばれる1種以上の成分、を含有する液体洗浄剤組成物であって、(a)成分中の直鎖アルキル基を持つ化合物/分岐鎖アルキル基を持つ化合物の質量比が1?9であり、(b)/(a)のモル比が0.3?1.2であり、20℃の粘度が250mPa・s以下である液体洗浄剤組成物。 【化1】 〔式中、R^(10)は炭素数10?18の炭化水素基、R^(11)及びR^(12)はそれぞれ炭素数1?3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。〕」 が記載されていると認められる。 (エ) 上記摘示事項(2b)の段落【0012】によれば、「(a)成分のより好ましいアルキル基の炭素数は、炭素数10?14である。オキシアルキレン基は炭素数2又は3のオキシアルキレン基が好ましく、より好ましくはオキシエチレン基である。炭素数2又は3のオキシアルキレン基の平均付加モル数は、1.0?4.0が好ましく、オキシアルキレン基が全てオキシエチレン基のときは、好ましくは1.0?3.0モル、より好ましくは1.5?3.0である。またオキシプロピレン基を含む場合も、更にオキシエチレン基を含むことが好ましく、この場合は、オキシプロピレン基は好ましくは平均2.0モル以下であり、且つオキシエチレン基は好ましくは平均1.0?3.0である。」(注:下線は、当審が付した。)であるから、刊行物2に記載の液体洗浄剤組成物において、(a)成分の「ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩」は、「アルキル」の炭素数が10?14のアルキル基であり、「ポリオキシアルキレン」が平均付加モル数が1.0?4.0の炭素数2又は3のオキシアルキレン基であることが理解される。 (オ) 上記摘示事項(2c)によれば、刊行物2に記載の液体洗浄剤組成物において、(c)ハイドロトロープ剤は、『「トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、及びクメンスルホン酸、並びにこれらの」「塩」』であることが理解される。 上記(ウ)ないし(オ)の検討事項より、刊行物2には、 「(a)炭素数10?14のアルキル基と平均付加モル数が1.0?4.0の炭素数2又は3のオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩〔以下、(a)成分という〕、(b)下記一般式(1)で示されるアミンオキシド型界面活性剤〔以下、(b)成分という〕、水並びに、(c)トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、及びクメンスルホン酸、並びにこれらの塩であるハイドロトロープ剤〔以下、(c)成分という〕及び(d)有機溶剤〔以下、(d)成分という〕から選ばれる1種以上の成分、を含有する液体洗浄剤組成物であって、(a)成分中の直鎖アルキル基を持つ化合物/分岐鎖アルキル基を持つ化合物の質量比が1?9であり、(b)/(a)のモル比が0.3?1.2であり、20℃の粘度が250mPa・s以下である液体洗浄剤組成物。 【化1】 〔式中、R^(10)は炭素数10?18の炭化水素基、R^(11)及びR^(12)はそれぞれ炭素数1?3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。〕」(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 (4) 対比・検討 (4-1)引用発明1を主発明とした場合 (4-1-1)本件発明1について 本件発明1と引用発明1とを比較する。 ○引用発明1の「衣料用液体重質洗剤」は、本件発明1の「液体洗浄剤」に相当する。 ○引用発明1の「一般式(I) 〔式中、R_(1)は炭素数が6ないし15でありかつ平均炭素数が8ないし13である炭素数分布を有する直鎖アルキル基であり、nは混合物の平均値として0.5ないし1.5である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムあるいはアルカノールアミンのいずれかである。〕 で表わされる直鎖アルキルエーテルサルフェート」と本件発明1の「一般式(a1)で表される化合物(a) [式(a1)中、R^(1)は炭素数8?24の直鎖状のアルキル基、又は炭素数8?24の直鎖状のアルケニル基である。EOはオキシエチレン基を表す。nはEOの平均繰返し数を表し、1?5の数である。M_(1)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。]」とは、「直鎖アルキルエーテルサルフェート」である点で一致する。 ○引用発明1の「一般式(II) 〔式中、R_(2)は炭素数が1ないし12の、R_(3)は炭素数が1ないし4の直鎖アルキル基であり、かつ は平均炭素数が8ないし13であるような炭素数分布を有する。n及びMは式(I)の記号と同一の意味を表わす。〕 で表わされる分岐鎖アルキルエーテルサルフェート」と本件発明1の「一般式(b1)で表される化合物(b) [式(b1)中、xとyは、xとyの一方が3で、他方が5である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数を表し、p+qは3?4である。M_(2)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。]」とは、「分岐鎖アルキルエーテルサルフェート」である点で一致する。 ○引用発明1では、『「直鎖アルキルエーテルサルフェートの70重量%以下と、」「分岐鎖アルキルエーテルサルフェートの30重量%以上」』であることを特定されているところ、これは、「直鎖アルキルエーテルサルフェート」/「分岐鎖アルキルエーテルサルフェート」が重量比で7/3(=約2.33)以下であることを特定していることを意味するから、引用発明1の『「直鎖アルキルエーテルサルフェートの70重量%以下と、」「分岐鎖アルキルエーテルサルフェートの30重量%以上」』との特定と本件発明1の「(a)成分/(b)成分で表される質量比が6以下」との特定は、「直鎖アルキルエーテルサルフェート/分岐鎖アルキルエーテルサルフェートで表される質量比が約2.33以下」である点で重複する。 ○引用発明1の「エタノール、パラトルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩等の可溶化剤」は、本件発明1の「トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、置換もしくは非置換ナフタレンスルホン酸、又はこれらの芳香族スルホン酸塩、安息香酸又はこの塩、及び炭素数2?4のアルコールからなる群より選択される少なくとも一種のハイドロトロープ剤」とは、「トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸の芳香族スルホン酸塩及び炭素数2のアルコールからなる群より選択される少なくとも一種のハイドロトロープ剤」である点で一致する。 上記より、本件発明1と引用発明1とは、 「直鎖アルキルエーテルサルフェートと、 分岐鎖アルキルエーテルサルフェートと、 トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸の芳香族スルホン酸塩及び炭素数2のアルコールからなる群より選択される少なくとも一種のハイドロトロープ剤と を含有し、 直鎖アルキルエーテルサルフェート/分岐鎖アルキルエーテルサルフェートで表される質量比が約2.33以下である液体洗浄剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 直鎖アルキルエーテルサルフェートが、本件発明1では、「一般式(a1) [式(a1)中、R^(1)は炭素数8?24の直鎖状のアルキル基、又は炭素数8?24の直鎖状のアルケニル基である。EOはオキシエチレン基を表す。nはEOの平均繰返し数を表し、1?5の数である。M_(1)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。]」で表されるのに対し、引用発明1では、「一般式(I) 〔式中、R_(1)は炭素数が6ないし15でありかつ平均炭素数が8ないし13である炭素数分布を有する直鎖アルキル基であり、nは混合物の平均値として0.5ないし1.5である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムあるいはアルカノールアミンのいずれかである。〕 」で表される点。 <相違点2> 分岐鎖アルキルエーテルサルフェートが、本件発明1では、「一般式(b1) [式(b1)中、xとyは、xとyの一方が3で、他方が5である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数を表し、p+qは3?4である。M_(2)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。]」で表されるのに対し、引用発明1では、「一般式(II) 〔式中、R_(2)は炭素数が1ないし12の、R_(3)は炭素数が1ないし4の直鎖アルキル基であり、かつ は平均炭素数が8ないし13であるような炭素数分布を有する。n及びMは式(I)の記号と同一の意味を表わす。〕」で表される点。 <相違点1>について 引用発明1の一般式(I)において、R_(1)が炭素数8ないし15の直鎖アルキル基であり、nが1.0?1.5であるとき、当該一般式(I)で表される直鎖アルキルエーテルサルフェートは、本件発明1の一般式(a1)で表される化合物(a)と重複するから、相違点1に係る構成で、引用発明1と本件発明1とは実質的に相違しない。 <相違点2>について 引用発明1の一般式(II)において、R_(2)とR_(3)の炭素数の合計は6?11であるから、それを満たす範囲内で、それぞれの炭素数は1以上の任意の整数が一応許容されているから、R_(2)又はR_(3)の一方が炭素数3で、他方が炭素数5のアルキル基である場合があり得るが、その場合であっても、nは平均値として0.5ないし1.5であり、3?4でないので、引用発明1の一般式(II)で表される分岐鎖アルキルエーテルサルフェートは、本件発明1の一般式(b1)で表される化合物(b)と相違する。そして、上記摘示事項(1d)の表-2において、洗剤番号4は、EO平均付加モル数(すなわちn)が3.0であり、これは比較例であることからして、引用発明1の一般式(II)で表される分岐鎖アルキルエーテルサルフェートにおいて、nを1.5を超えて3?4とすることは、刊行物1の記載全体を参酌しても、当業者にとって容易になし得ることでない。 また、上記洗剤番号4に着目すると、この態様で用いられている分岐鎖アルキルエーテルサルフェートは、本件発明1の一般式(b1)の表記を用いれば、x+yが8、p+qが3である場合に相当するといえるが、x、yがそれぞれどの数値であるのか不明であり、本件発明1の一般式(b1)で表される化合物(b)と同一とはいえず、また、比較例である洗剤番号4に着目し、その分岐鎖アルキルエーテルサルフェート中の分岐鎖アルキル基の好適な炭素数を検討し、x=3、y=5を選択する動機は見当たらない。 <効果>について 本件特許明細書の実施例を参照すると、一般式(b1)で表される化合物(b)の具体例として、実施例では、x=3、y=5、p+q=3の化合物(b-1)、x=3、y=5、p+q=4の化合物(b-2)、x=3、y=5、p+q=4の化合物(b-3)が用いられる一方、比較例では、x=4、y=6、p+q=2の化合物(b’-1)、x=3、y=5、p+q=0の化合物(b’-2)、炭素数13の分岐アルコールのエチレンオキシド平均3モル付加品の硫酸化物(b’-3)、炭素数12?13の合成アルコールのエチレンオキシド平均3モル付加品の硫酸化物(b’-4)、が用いられている。そして、化合物(b-1)?(b-3)が用いられた実施例1?9等では、「低温安定性」、「泡立ちの速さ」、「すすぎ性」、「泡の持続力」の全ての評価項目で良好な結果が得られているのに対し、化合物(b’-1)?(b’-4)が用いられた比較例1?4では、何らかの評価項目で良好な結果が得られていない。 したがって、アルキルエーテル部分が特定の炭素数のアルキル基であって、エチレンオキシド繰り返し単位が特定の数である本件発明1のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を用いることによって、他のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩に比して、上記の全ての評価項目で同時に良好な結果を示す点で、優れた作用効果を奏していると認められる。 したがって、本件発明1は、当業者といえども、引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものでない。 (4-1-2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2も本件発明1と同様の理由により、引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものでない。 (4-2)引用発明2を主発明とした場合 (4-2-1)本件発明1について 本件発明1と引用発明2とを比較する。 ○引用発明2の「液体洗浄剤組成物」は、本件発明1の「液体洗浄剤」に相当する。 ○引用発明2の『「炭素数10?14のアルキル基と平均付加モル数が1.0?4.0の炭素数2又は3のオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩」「中の直鎖アルキル基を持つ化合物」』と、本件発明1の「一般式(a1)で表される化合物(a) [式(a1)中、R^(1)は炭素数8?24の直鎖状のアルキル基、又は炭素数8?24の直鎖状のアルケニル基である。EOはオキシエチレン基を表す。nはEOの平均繰返し数を表し、1?5の数である。M_(1)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。]」とは、「直鎖ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩」である点で一致する。 ○引用発明2の『「炭素数10?14のアルキル基と平均付加モル数が1.0?4.0の炭素数2又は3のオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩」中の「分岐鎖アルキル基を持つ化合物」』と本件発明1の「一般式(b1)で表される化合物(b) [式(b1)中、xとyは、xとyの一方が3で、他方が5である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数を表し、p+qは3?4である。M_(2)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。]」とは、「分岐鎖ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩」である点で一致する。 ○引用発明2の「(a)成分中の直鎖アルキル基を持つ化合物/分岐鎖アルキル基を持つ化合物の質量比が1?9」と本件発明1の「(a)成分/(b)成分で表される質量比が6以下」は、「直鎖アルキルエーテルサルフェート/分岐鎖アルキルエーテルサルフェートで表される質量比が1?6」である点で重複する。 ○引用発明2の「(c)トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、及びクメンスルホン酸、並びにこれらの塩であるハイドロトロープ剤」と本件発明1の「トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、置換もしくは非置換ナフタレンスルホン酸、又はこれらの芳香族スルホン酸塩、安息香酸又はこの塩、及び炭素数2?4のアルコールからなる群より選択される少なくとも一種のハイドロトロープ剤」とは、「トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、又はこれらの芳香族スルホン酸塩からなる群より選択される少なくとも一種のハイドロトロープ剤」である点で一致する。 上記より、本件発明1と引用発明2とは、 「直鎖ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩と、 分岐鎖ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩と、 トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、又はこれらの芳香族スルホン酸塩からなる群より選択される少なくとも一種のハイドロトロープ剤と を含有し、 直鎖アルキルエーテルサルフェート/分岐鎖アルキルエーテルサルフェートで表される質量比が1?6である液体洗浄剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3> 直鎖ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が、本件発明1では、「一般式(a1)で表される化合物(a) [式(a1)中、R^(1)は炭素数8?24の直鎖状のアルキル基、又は炭素数8?24の直鎖状のアルケニル基である。EOはオキシエチレン基を表す。nはEOの平均繰返し数を表し、1?5の数である。M_(1)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。]」で表されるのに対し、引用発明2では、「炭素数10?14のアルキル基と平均付加モル数が1.0?4.0の炭素数2又は3のオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩中の直鎖アルキル基を持つ化合物」である点。 <相違点4> 分岐鎖ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が、本件発明1では、「一般式(b1)で表される化合物(b) [式(b1)中、xとyは、xとyの一方が3で、他方が5である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数を表し、p+qは3?4である。M_(2)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。]」であるのに対し、引用発明2では、「炭素数10?14のアルキル基と平均付加モル数が1.0?4.0の炭素数2又は3のオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩中の分岐鎖アルキル基を持つ化合物」である点。 <相違点3>及び<相違点4>について 引用発明2のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩において、アルキル基が炭素数10であり、炭素数2又は3のオキシアルキレン基の平均付加モル数が3.0?4.0であるとき、当該ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の直鎖アルキル基を持つ化合物は、本件発明1の一般式(a1)で表される化合物(a)と重複し、また、当該ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の分岐鎖アルキル基を持つ化合物も、本件発明1の一般式(b1)で表される化合物(b)と同一である場合を包含する。 しかしながら、刊行物2の記載全体を参酌しても、炭素数10の分鎖状アルキル基として、炭素数8の直鎖状アルキル基の5位にエチル基が置換したものを選択する具体的な動機が見当たらないので、引用発明2において、本件発明1における一般式(b1)で表される化合物(b)である特定の分岐鎖アルキル基を持つ化合物を選択することが当業者によって容易ということはできない。 <効果>について 上記(4-1-1)の「<効果>について」でも検討したとおり、本件特許明細書の実施例では、本件発明1における一般式(b1)で表される化合物(b)を用いた場合に、刊行物2からは想到し得ない有利な効果を奏することが開示されているといえる。 したがって、本件発明1は、当業者といえども、引用発明2に基いて容易に発明をすることができたものでない (4-2-2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2も本件発明1と同様の理由により、引用発明2に基いて容易に発明をすることができたものでない。 (5) 結論 よって、本件発明1、2は、引用発明1、2のいずれに基いても容易に発明をすることができたものでない。 2. 取消理由1(特許法第36条第6項第1号に規定について) 本件特許明細書の段落【0004】を踏まえると、本件発明が解決しようとする技術課題は、「低温安定性が良好であると共に、泡立ちが速い液体洗浄剤」を提供することにあるといえる。 そして、そのような液体洗浄剤について、同段落【0005】には、「本発明者らは鋭意検討した結果、一般に会合状態を形成しにくく、低起泡性組成物用として好適な成分とされる分岐鎖状の化合物の中から特定の構造を有する陰イオン界面活性剤を選択し、当該陰イオン界面活性剤と、直鎖状アルコールエトキシサルフェートと、特定のハイドロトロープ剤とを組み合わせて用いることにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った」と記載がされており、本件発明は、「分岐鎖状の化合物の中から特定の構造を有する陰イオン界面活性剤」を選択したこと等により、上記技術課題の解決を図るものであるといえる。 そして、実際に実施例で用いられ、効果の確認がされている分鎖状の化合物(b)は、段落【0059】?【0061】に記載の「b-1:ポリオキシエチレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル硫酸エステルNa、上記式(b1)におけるC_(x)H_(2x+1)=プロピル基,C_(y)H_(2y+1)=ペンチル基、x+y=8、p=0、q=3、M_(2)=ナトリウムに相当」、「b-2:ポリオキシエチレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル硫酸エステルNa、上記式(b1)におけるC_(x)H_(2x+1)=プロピル基,C_(y)H_(2y+1)=ペンチル基、x+y=8、p=0、q=4、M_(2)=ナトリウムに相当」、「b-3:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル硫酸エステルNa、上記一般式(b1)におけるC_(x)H_(2x+1)=プロピル基,C_(y)H_(2y+1)=ペンチル基、x+y=8、p=1、q=3、M_(2)=ナトリウムに相当」の3種であり、いずれも、x=3、y=5、p+q=3?4(p=0?1、q=3?4)である化合物(b)であるから、これらを用いた場合に上記技術課題を解決できることが確認されているといえる。 そして、本願発明1、2は、いずれも、x=3、y=5、p+q=3?4である化合物(b)を用いることを発明特定事項の一つとするものであるから、本件発明1、2は、上記技術課題を解決し得るものとして、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明である。 イ. 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1. 申立理由1(特許法第29条第1甲第3号の規定について) 上記ア.の1.の(4-1-1)で、本件発明1と引用発明1との一致点・相違点を検討したとおり、これらの発明の間には実質的な相違点が存在するから、本件発明1及びその下位概念である本件発明2は、刊行物1に記載された発明ではない。 2. 申立理由4の一部(特許法第36条第4項第1号の規定について) 上記ア.の2.で検討したとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載と本件特許明細書の発明の詳細な説明、特に実施例で開示されている内容とは、対応が取れたものとなっているから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「発明の解決課題やその解決手段その他のその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」が明確かつ十分に、記載されていると認められる。 第6 まとめ 上記「第5」で検討したとおり、上記取消理由1、2、及び、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 下記一般式(a1)で表される化合物(a)と、 下記一般式(b1)で表される化合物(b)と、 トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、置換もしくは非置換ナフタレンスルホン酸、又はこれらの芳香族スルホン酸塩、安息香酸又はこの塩、及び炭素数2?4のアルコールからなる群より選択される少なくとも一種のハイドロトロープ剤(c)と を含有し、 (a)成分/(b)成分で表される質量比が6以下であることを特徴とする液体洗浄剤。 【化1】 [式(a1)中、R^(1)は炭素数8?24の直鎖状のアルキル基、又は炭素数8?24の直鎖状のアルケニル基である。EOはオキシエチレン基を表す。nはEOの平均繰返し数を表し、1?5の数である。M_(1)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。式(b1)中、xとyは、xとyの一方が3で、他方が5である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数を表し、p+qは3?4である。M_(2)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。] 【請求項2】 両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤(d)をさらに含有することを特徴とする、請求項1記載の液体洗浄剤。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2016-10-11 |
出願番号 | 特願2011-102350(P2011-102350) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(C11D)
P 1 651・ 121- YAA (C11D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 柴田 啓二、磯貝 香苗、松元 麻紀子 |
特許庁審判長 |
冨士 良宏 |
特許庁審判官 |
日比野 隆治 岩田 行剛 |
登録日 | 2015-07-17 |
登録番号 | 特許第5779392号(P5779392) |
権利者 | ライオン株式会社 |
発明の名称 | 液体洗浄剤 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 川越 雄一郎 |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 川越 雄一郎 |
代理人 | 鈴木 三義 |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 加藤 広之 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 鈴木 三義 |
代理人 | 加藤 広之 |