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審決分類 |
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 E05F 審判 一部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 E05F 審判 一部申し立て 2項進歩性 E05F 審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 E05F 審判 一部申し立て 判示事項別分類コード:857 E05F |
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管理番号 | 1323452 |
異議申立番号 | 異議2016-700137 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-02-18 |
確定日 | 2016-10-24 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5764375号発明「可動体の可動装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5764375号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3-5〕について」訂正することを認める。 特許第5764375号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件特許異議申立の経緯は、以下のとおりである。 平成28年 2月18日 本件特許異議申立 平成28年 4月28日 取消理由通知書 平成28年 7月 7日 訂正請求書、意見書 なお、平成28年7月7日付けの訂正請求に対し、同年7月20日付けで訂正請求があった旨を通知したが、特許異議申立人は意見書を提出しなかった。 2 訂正の適否についての判断 (1)訂正請求の内容 特許権者による平成28年7月7日付けの訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲について、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲(以下「訂正特許請求の範囲」という。)のとおり、訂正後の請求項1ないし5について訂正することを求めるものであって、次の事項をその訂正内容とするものである(下線は訂正箇所を示す。)。 なお、以下、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面を「本件特許明細書」という。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「複数の係合部を有する当受体」とあるのを、「第1係合部および第2係合部を有する当受体」と訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「付勢機構と、を備える」とあるのを、「付勢機構と、を備え、前記第2係合部は、前記可動体の移動方向において前記第1係合部よりも戸尻側に離間して面状に突出し、前記第1係合部と対向する側の一方の主面が、前記当接体と当接し係合する係合面を形成し、第1の動作の際にその他方の主面が前記当接体に突出形成された被押圧部を押圧し前記当接体を前記第1係合部に係合させる」と訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2に「前記当接体と係合する第1係合部」及び「前記当接体と係合する第2係合部」とあるのを、「前記当接体と係合する前記第1係合部」及び「前記当接体と係合する前記第2係合部」と訂正する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3に、 「前記取付部材、前記第1係合部、前記第2係合部及び前記連結部は、一体に成形され、 前記取付部材は、前記支持体又は前記可動体に固定される一対のベースを有し、 前記第1係合部及び前記第2係合部は板状に形成されるとともに、前記ベースにそれぞれ連結され、 前記連結部は、前記第1係合部及び前記第2係合部の突出する先端を連結するとともに、その一部が前記当接体を挿通可能に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の可動体の可動装置。」とあるのを、 「支持体及び前記支持体に相対的に移動する可動体の一方に固定され、前記支持体及び前記可動体の一方から互いに離間して突出する複数の係合部を有する当受体と、 前記支持体及び前記可動体の他方に設けられた基体と、 前記基体に前記可動体の移動方向に沿って移動可能に設けられ、前記可動体がその移動 終了位置に移動する場合に前記複数の係合部のいずれかと係合する当接体と、 前記基体及び前記当接体間に付勢可能に形成されるとともに、前記付勢による前記基体又は前記当接体の移動を規制し、前記当接体が前記複数の係合部のいずれかと係合することで、前記基体又は前記当接体の移動の規制を解除可能な付勢機構と、を備え、 前記当受体は、 前記支持体又は前記可動体に固定される取付部材と、 前記取付部材から突出し、前記当接体と係合する第1係合部と、 前記取付部材から前記第1係合部と前記可動体の移動方向に離間して突出し、前記当接体と係合する第2係合部と、 前記第1係合部と前記第2係合部とを連続する連結部と、を備え、 前記取付部材、前記第1係合部、前記第2係合部及び前記連結部は、一体に成形され、 前記取付部材は、前記支持体又は前記可動体に固定される一対のベースを有し、 前記第1係合部及び前記第2係合部は板状に形成されるとともに、前記ベースにそれぞれ連結され、 前記連結部は、前記第1係合部及び前記第2係合部の突出する先端を連結するとともに、その一部が前記当接体を挿通可能に形成されていることを特徴とする可動体の可動装置。」と訂正する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項4に、 「前記取付部材、前記第1係合部、前記第2係合部及び前記連結部は、一体に成形され、 前記取付部材は、前記支持体又は前記可動体に固定される一対のベースを有し、 前記第1係合部及び前記第2係合部は前記ベースにそれぞれ突出するとともに、その中途部で折り返され、その一部が前記当接体と係合可能に形成され、 前記連結部は、前記第1係合部及び前記第2係合部を前記第1係合部及び前記第2係合部の先端よりも前記ベース側で連結することを特徴とする請求項2に記載の可動体の可動装置。」とあるのを、 「支持体及び前記支持体に相対的に移動する可動体の一方に固定され、前記支持体及び前記可動体の一方から互いに離間して突出する複数の係合部を有する当受体と、 前記支持体及び前記可動体の他方に設けられた基体と、 前記基体に前記可動体の移動方向に沿って移動可能に設けられ、前記可動体がその移動 終了位置に移動する場合に前記複数の係合部のいずれかと係合する当接体と、 前記基体及び前記当接体間に付勢可能に形成されるとともに、前記付勢による前記基体又は前記当接体の移動を規制し、前記当接体が前記複数の係合部のいずれかと係合することで、前記基体又は前記当接体の移動の規制を解除可能な付勢機構と、を備え、 前記当受体は、 前記支持体又は前記可動体に固定される取付部材と、 前記取付部材から突出し、前記当接体と係合する第1係合部と、 前記取付部材から前記第1係合部と前記可動体の移動方向に離間して突出し、前記当接体と係合する第2係合部と、 前記第1係合部と前記第2係合部とを連続する連結部と、を備え、 前記取付部材、前記第1係合部、前記第2係合部及び前記連結部は、一体に成形され、 前記取付部材は、前記支持体又は前記可動体に固定される一対のベースを有し、 前記第1係合部及び前記第2係合部は前記ベースにそれぞれ突出するとともに、その中途部で折り返され、その一部が前記当接体と係合可能に形成され、 前記連結部は、前記第1係合部及び前記第2係合部を前記第1係合部及び前記第2係合部の先端よりも前記ベース側で連結することを特徴とする可動体の可動装置。」と訂正する。 (2)訂正の適否 ア 訂正事項1及び2について (ア)訂正事項1は、「当受体」が有する「複数の係合部」について、「第1係合部および第2係合部」であることを特定したものであり、訂正事項2は、当該第1係合部、第2係合部の構成及び当接体との係合態様を特定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 (イ)そして、本件特許明細書には、「引き戸110の上端部には、スライド方向に沿ってアシストユニット20を収める溝111が形成されている。なお、ここでは一枚の引き戸110に着目し、左側が戸先側、右側が戸尻側とし、引き戸110が左枠102と当接する位置を、引き戸110の移動終了位置とする。」(段落【0024】)、「ストライカ10は、当受体である。」(段落【0026】)、「ストライカ10は、上枠101に取り付けられる板状の取付部材11と、取付部材11からY方向及びZ方向に沿って設けられ、X方向に離間する2つの異なる面状をなし、上枠101から下方に突出する係合突起部12と、を備えている。ストライカ10は、取付部材11及び係合突起部12が、一枚の板状の金属板を板金加工等により曲折して成形される。」(段落【0027】)、「係合突起部12は、一方のベース11aと連続する板状(面状)の第1係合部13と、他方のベース11aと連続する板状(面状)の第2係合部14と、第1係合部13及び第2係合部14を連続させる連結部15と、を備えている。」(段落【0030】)、「第2係合部14は、一方の主面である第1係合部13と対向する側の主面が、後述するラッチ22のフック部32fと当接し係合する係合面を形成し、その他方の主面が後述する被押圧部32cを押圧する押圧面を形成する。第2係合部14は、第1係合部13よりも、スライド方向であって、引き戸110の移動終了位置(左枠102)から離間して配置される。」(段落【0033】)と記載されており、図6、図7の記載からも第1の動作の際に第2係合部の他方の主面が当接体に突出形成された被押圧部を押圧し当接体を第1係合部に係合させることがみてとれるから、訂正事項1及び2は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものと認められる。 (ウ)さらに、訂正事項1及び2は、発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項1及び2により訂正された請求項1の記載に請求項2の記載を整合させるためのものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。 そして、訂正事項3は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもないことは明らかである。 ウ 訂正事項4及び5について 訂正事項4及び5は、請求項2の従属項であった請求項3及び4を独立項に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものと認められる。 そして、訂正事項4及び5は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもないことは明らかである。 エ 一群の請求項について 本件訂正は、訂正後の請求項1及び2、請求項3ないし5が請求の対象とされており、一群の請求項毎に請求がされているものであるから、本件訂正は特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 (3)本件訂正についてのむすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第120条の5第4項及び同条第9項の規定によって準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、本件訂正を認める。 3 特許異議の申立てについて (1)本件訂正発明 上記2のとおり、本件訂正を認めるので、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件訂正発明1及び2」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 支持体及び前記支持体に相対的に移動する可動体の一方に固定され、前記支持体及び前記可動体の一方から互いに離間して突出する第1係合部および第2係合部を有する当受体と、 前記支持体及び前記可動体の他方に設けられた基体と、 前記基体に前記可動体の移動方向に沿って移動可能に設けられ、前記可動体がその移動終了位置に移動する場合に前記複数の係合部のいずれかと係合する当接体と、 前記基体及び前記当接体間に付勢可能に形成されるとともに、前記付勢による前記基体又は前記当接体の移動を規制し、前記当接体が前記複数の係合部のいずれかと係合することで、前記基体又は前記当接体の移動の規制を解除可能な付勢機構と、を備え、前記第2係合部は、前記可動体の移動方向において前記第1係合部よりも戸尻側に離間して面状に突出し、前記第1係合部と対向する側の一方の主面が、前記当接体と当接し係合する係合面を形成し、第1の動作の際にその他方の主面が前記当接体に突出形成された被押圧部を押圧し前記当接体を前記第1係合部に係合させることを特徴とする可動体の可動装置。 【請求項2】 前記当受体は、 前記支持体又は前記可動体に固定される取付部材と、 前記取付部材から突出し、前記当接体と係合する前記第1係合部と、 前記取付部材から前記第1係合部と前記可動体の移動方向に離間して突出し、前記当接体と係合する前記第2係合部と、 前記第1係合部と前記第2係合部とを連続する連結部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の可動体の可動装置。」 (2)特許異議申立の理由及び取消理由の概要 本件特許異議申立の理由及び平成28年4月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、特開2008-285935号公報(甲第1号証。以下「刊行物」という。)に記載された発明であるか又は刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、その特許は特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)刊行物の記載 刊行物には、次の記載がある(下線は異議決定にて付した。)。 ア 「【請求項1】 引戸の一方向へのスライド動作の際にアシスト力を蓄積し他方向へのスライド動作の際にアシスト力を発揮する駆動機構がケーシングに支持されて引戸の走行部材の走行を案内するレールの内部に設置され、駆動機構はレールに固定された受部材に係止してケーシングに沿って移動するスライダが連結され、スライダはケーシングに設けられた係止溝に係止されて変位し受部材への係止が解除される可動係止部が設けられ、スライダの可動係止部は受部材に係止されて原位置からケーシングの係止溝へ移動する際に駆動機構にアシスト力を蓄積させ受部材に係止されてケーシングの係止溝から原位置へ移動する際に駆動機構にアシスト力を発揮させ受部材への係止が解除されたケーシングの係止溝への係止状態で駆動機構に蓄積されたアシスト力を保持するものである引戸のスライドアシスト装置において、ケーシングの係止溝はスライダの可動係止部が移動する際に当接するケーシングのスライド用面から連続してケーシングの内部へ傾斜するテーパ案内部が設けられていることを特徴とする引戸のスライドアシスト装置。」 イ 「【0001】 本発明は、引戸を開閉する操作を補助するための引戸のスライドアシスト装置に係る技術分野に属する。」 ウ 「【0022】 第1例は、図1,図2に示すように、細長筒形のケーシング1の一方の端部に引戸Dに連結される車輪構造の走行部材2が取付けられ他方の端部に引戸Dに連結されない簡略化された車輪構造の走行ガイド部材3が取付けられ、鴨居,戸枠,天井面等に取付けられた箱形のレールRの内部にそのまま挿入して設置される完成製品化されたものからなる。」 エ 「【0032】 ケーシング1には、アシスト力の蓄積,発揮の切換部材となるスライダ5が支持されている。 【0033】 スライダ5は、図4,図6?図11に示すように、ケーシング1に対して摩擦の少ない滑り性の良好な合成樹脂材からなるもので、ブロック体のスライダ本体51にカム体の可動係止部52が支軸53で回転可能に支持されている。……可動係止部52は、下半部の幅がスライダ本体51の収容空間部512の幅と一致されて下半部がスライダ本体51とともにケーシング1の内部の上枠部材11のスライド用溝114が配設された長さをスライド可能とされたもので、上半部のほぼ中央に後述の受部材6が係止する係止部521が設けられ、上半部の係止部521を介したケーシング1の他方の端部材14側に下半部の幅と同一の幅bの傾斜面の第1の傾斜部522が設けられ、上半部の係止部521を介したケーシング1の一方の端部材13側に下半部の幅(ケーシング1の上枠部材11のスライド用溝114の幅)よりも大きくケーシング1の上枠部材11の係止溝115の幅とほぼ一致した幅cの傾斜面の第2の傾斜部523が設けられている。……」 オ 「【0035】 受部材6は、図1,図6?図11に示すように、レールRの天井内壁に当接され中央部がネジ止めで固定された基片61と、基片61の一方の端部が長さ方向でコ字形に屈曲されてスライダ5の可動係止部52の係止部521に係止する係止片62と、基片61の一方の端部が幅方向で両側からL字形に相対して屈曲された1対のリカバリ片63とからなる。……」 カ 「【0039】 引戸Dについて開放の操作をすると、図6(B)に示すように、受部材6の係止片62にスライダ5の可動係止部52の係止部521が係止されているため、引戸Bのスライド動作にしたがいスライダ5がケーシング1の上枠部材11の係止溝115方向へ移動することになる。即ち、駆動機構4のスプリング41が伸張して流体圧ダンパ43のロッド432がシリンダ431から進出し、駆動機構4にアシスト力が蓄積されていくことになる。 【0040】 スライダ5がケーシング1の上枠部材11の係止溝115に至ると、図7(A)に示すように、スライダ5の可動係止部52の第2の傾斜部523の下面が当接していたケーシング1の上枠部材11のスライド用面116が消失するため、駆動機構4のスプリング41の引張力によってスライダ5の可動係止部52が支軸53を中心として回動を開始する。 【0041】 スライダ5の可動係止部52の回動は、図7(B)に示すように、ケーシング1の上枠部材11の係止溝115のテーパ案内部115bによって案内される。即ち、スライダ5の可動係止部52は、第2の傾斜部523の下面がケーシング1の上枠部材11の係止溝115のテーパ案内部115bの上を滑るように斜め下方へ移動する。従って、スライダ5の可動係止部52は、ケーシング1の上枠部材11の係止溝115に引掛かったりすることなく円滑,確実に回動される。 【0042】 そして、図7(C)に示すように、スライダ5の可動係止部52の回動が進行すると、受部材6の係止片62からスライダ5の可動係止部52の係止部521が離脱する。このとき、スライダ5の可動係止部52の第2の傾斜部523の下面がケーシング1の上枠部材11の係止溝115の係止部115cに当接している。即ち、スライダ5の可動係止部52は、駆動機構4のスプリング41の引張力によって、ケーシング1の上枠部材11の係止溝115の係止部115cに係止されていることになる。」 キ 「【0045】 引戸Dについて閉鎖の操作をすると、基本的に前述の開放の操作に伴う各部の動作の逆の動作が奏されることになる。特に、スライダ5の可動係止部52の逆方向への回動は、ケーシング1の上枠部材11の係止溝115のテーパ案内部115bによって案内され、第2の傾斜部523の下面がケーシング1の上枠部材11の係止溝115のテーパ案内部115bの上を滑るように斜め上方へ移動する。このため、スライダ5の可動係止部52は、ケーシング1の上枠部材11の係止溝115に引掛かったりすることなく円滑,確実に逆方向へ回動される。 【0046】 そして、受部材6の係止片62にスライダ5の可動係止部52の係止部521が係止されると、駆動機構4に蓄積されたアシスト力が、流体圧ダンパ43によって抑制されたスプリング41の引張力として、引戸Dの急速なスライド動作を抑制するとともに引戸Gが完全に開放状態,閉鎖状態になるまでスライド動作を維持するように適正な補助力として発揮される。このとき、スライダ5の可動係止部52は、起立して原位置に向けて移動することになる。」 ク 「【0047】 図6(A)に示されるセット状態を構成するための現場工事では、図9(A)に示すように、スライダ5,受部材6への無用の応力が掛かるのを防止するためと戸枠とのおさまり等との関係から、引戸Dを取付ける前にスライダ5,受部材6を離した状態でレールRへ挿入する。そして、レールRを配設固定した後、引戸Dを取付けて引戸Dを閉鎖方向へ移動させる。この移動に伴って、図10に示すように、前述の幅bからスライダ5の可動係止部52の第2の傾斜部523が受部材6のリカバリ片63に当接する。このとき、ケーシング1の長さ方向のほぼ中央に位置(原位置)しているスライダ5が受部材6のリカバリ片63に押されるため、細長筒形でわずかに弾性を有しているケーシング1が下方へ湾曲するように弾性変形する。この結果、スライダ5の可動係止部52の第2の傾斜部523が受部材6のリカバリ片63の下を通過することができる(図9(B)参照)。 【0048】 この通過の後、引戸Dを開放方向へ移動させると、図11に示すように、受部材6のリカバリ片63が前述の係止片62のアシスト力を蓄積する場合と同様に機能して、スライダ5をケーシング1の上枠部材11の係止溝115で回動させることになる。従って、この後に引戸Dを閉鎖方向へ移動させると、受部材6の係止片62とスライダ5の可動係止部52の係止部521とが係止された状態となる。 【0049】 なお、引戸Dの開放状態において、スライダ5の可動係止部52がケーシング1の上枠部材11の係止溝115での係止状態から振動等で逆方向へ不測に回動して原位置に戻ってしまっている場合には、前述の図9?図11に示される動作によって、受部材6の係止片62とスライダ5の可動係止部52の係止部521とが係止された状態が復元される。」 ケ 上記アないしクによると、刊行物には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる。 「引戸の一方向へのスライド動作の際にアシスト力を蓄積し他方向へのスライド動作の際にアシスト力を発揮する駆動機構が、一方の端部に引戸に連結される車輪構造の走行部材が取付けられたケーシングに支持されて、引戸の走行部材の走行を案内する、鴨居,戸枠,天井面等に取付けられたレールの内部に設置され、 駆動機構はレールに固定された受部材に係止してケーシングに沿って移動するスライダが連結され、 スライダはケーシングに設けられた係止溝に係止されて変位し受部材への係止が解除される可動係止部が設けられ、 スライダの可動係止部は受部材に係止されて原位置からケーシングの係止溝へ移動する際に駆動機構にアシスト力を蓄積させ、受部材に係止されてケーシングの係止溝から原位置へ移動する際に駆動機構にアシスト力を発揮させ、受部材への係止が解除されたケーシングの係止溝への係止状態で駆動機構に蓄積されたアシスト力を保持するものである引戸のスライドアシスト装置であって、 可動係止部は、上半部のほぼ中央に受部材が係止する係止部が設けられ、 受部材は、中央部がネジ止めで固定される基片と、基片の一方の端部が長さ方向でコ字形に屈曲されてスライダの可動係止部の係止部に係止する係止片と、基片の一方の端部が幅方向で両側からL字形に相対して屈曲された1対のリカバリ片とからなり、 引戸について開放の操作をすると、受部材の係止片にスライダの可動係止部の係止部が係止されているため、引戸のスライド動作にしたがいスライダがケーシングの上枠部材の係止溝方向へ移動し、駆動機構にアシスト力が蓄積され、 引戸について閉鎖の操作をし、受部材の係止片にスライダの可動係止部の係止部が係止されると、駆動機構に蓄積されたアシスト力が発揮され、 引戸の開放状態において、スライダの可動係止部がケーシングの係止溝での係止状態から原位置に戻ってしまっている場合には、受部材のリカバリ片が係止片のアシスト力を蓄積する場合と同様に機能する、引戸のスライドアシスト装置。」 (4)判断 ア 本件訂正発明1について 本件訂正発明1と刊行物発明とを対比すると、刊行物発明の「可動係止部」、「受部材」、「係止片」及び「リカバリ片」は、本件訂正発明1の「当接体」、「当受体」、「第1係合部」及び「第2係合部」にそれぞれ相当し、両者は次の点で相違する。 <相違点1> 本件訂正発明1では、第2係合部は、面状に突出し、一方の主面が当接体と当接し係合する係合面を形成するのに対し、刊行物発明では、リカバリ片は、基片の端部が幅方向で両側からL字形に相対して屈曲されてなるものであって、スライダの可動係止部の係止部と当接し係合する主面を有していない点。 <相違点2> 本件訂正発明1では、第2係合部は、第1の動作の際にその他方の主面が当接体に突出形成された被押圧部を押圧し当接体を第1係合部に係合させるのに対し、刊行物発明では、リカバリ片は、そのような構成を有していない点。 そして、本件訂正発明1は、上記相違点1及び2に係る構成により、刊行物発明に比して第2係合部周りの構造を著しくコンパクトに実現できるという、平成28年7月7日付け意見書に記載の顕著な効果を奏するものであるから、本件訂正発明1は、刊行物に記載された発明であるとも、刊行物発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 イ 本件訂正発明2について 本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用し、さらに構成を限定したものであるから、本件訂正発明1と同様の理由により、刊行物に記載された発明であるとも、刊行物発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)むすび 以上のとおりであって、特許異議申立の理由及び取消理由によっては、本件訂正発明1及び2の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正発明1及び2の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 支持体及び前記支持体に相対的に移動する可動体の一方に固定され、前記支持体及び前記可動体の一方から互いに離間して突出する第1係合部および第2係合部を有する当受体と、 前記支持体及び前記可動体の他方に設けられた基体と、 前記基体に前記可動体の移動方向に沿って移動可能に設けられ、前記可動体がその移動終了位置に移動する場合に前記第1係合部および前記第2係合部のいずれかと係合する当接体と、 前記基体及び前記当接体間に付勢可能に形成されるとともに、前記付勢による前記基体又は前記当接体の移動を規制し、前記当接体が前記複数の係合部のいずれかと係合することで、前記基体又は前記当接体の移動の規制を解除可能な付勢機構と、 を備え、 前記第2係合部は、前記可動体の移動方向において前記第1係合部よりも戸尻側に離間して面状に突出し、前記第1係合部と対向する側の一方の主面が、前記当接体と当接し係合する係合面を形成し、第1の動作の際にその他方の主面が前記当接体に突出形成された被押圧部を押圧し前記当接体を前記第1係合部に係合させることを特徴とする可動体の可動装置。 【請求項2】 前記当受体は、 前記支持体又は前記可動体に固定される取付部材と、 前記取付部材から突出し、前記当接体と係合する前記第1係合部と、 前記取付部材から前記第1係合部と前記可動体の移動方向に離間して突出し、前記当接体と係合する前記第2係合部と、 前記第1係合部と前記第2係合部とを連続する連結部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の可動体の可動装置。 【請求項3】 支持体及び前記支持体に相対的に移動する可動体の一方に固定され、前記支持体及び前記可動体の一方から互いに離間して突出する複数の係合部を有する当受体と、 前記支持体及び前記可動体の他方に設けられた基体と、 前記基体に前記可動体の移動方向に沿って移動可能に設けられ、前記可動体がその移動終了位置に移動する場合に前記複数の係合部のいずれかと係合する当接体と、 前記基体及び前記当接体間に付勢可能に形成されるとともに、前記付勢による前記基体又は前記当接体の移動を規制し、前記当接体が前記複数の係合部のいずれかと係合することで、前記基体又は前記当接体の移動の規制を解除可能な付勢機構と、を備え、 前記当受体は、 前記支持体又は前記可動体に固定される取付部材と、 前記取付部材から突出し、前記当接体と係合する第1係合部と、 前記取付部材から前記第1係合部と前記可動体の移動方向に離間して突出し、前記当接体と係合する第2係合部と、 前記第1係合部と前記第2係合部とを連続する連結部と、を備え、 前記取付部材、前記第1係合部、前記第2係合部及び前記連結部は、一体に成形され、 前記取付部材は、前記支持体又は前記可動体に固定される一対のベースを有し、 前記第1係合部及び前記第2係合部は板状に形成されるとともに、前記ベースにそれぞれ連結され、 前記連結部は、前記第1係合部及び前記第2係合部の突出する先端を連結するとともに、その一部が前記当接体を挿通可能に形成されていることを特徴とする可動体の可動装置。 【請求項4】 支持体及び前記支持体に相対的に移動する可動体の一方に固定され、前記支持体及び前記可動体の一方から互いに離間して突出する複数の係合部を有する当受体と、 前記支持体及び前記可動体の他方に設けられた基体と、 前記基体に前記可動体の移動方向に沿って移動可能に設けられ、前記可動体がその移動終了位置に移動する場合に前記複数の係合部のいずれかと係合する当接体と、 前記基体及び前記当接体間に付勢可能に形成されるとともに、前記付勢による前記基体又は前記当接体の移動を規制し、前記当接体が前記複数の係合部のいずれかと係合することで、前記基体又は前記当接体の移動の規制を解除可能な付勢機構と、を備え、 前記当受体は、 前記支持体又は前記可動体に固定される取付部材と、 前記取付部材から突出し、前記当接体と係合する第1係合部と、 前記取付部材から前記第1係合部と前記可動体の移動方向に離間して突出し、前記当接体と係合する第2係合部と、 前記第1係合部と前記第2係合部とを連続する連結部と、を備え、 前記取付部材、前記第1係合部、前記第2係合部及び前記連結部は、一体に成形され、 前記取付部材は、前記支持体又は前記可動体に固定される一対のベースを有し、 前記第1係合部及び前記第2係合部は前記ベースにそれぞれ突出するとともに、その中途部で折り返され、その一部が前記当接体と係合可能に形成され、 前記連結部は、前記第1係合部及び前記第2係合部を前記第1係合部及び前記第2係合部の先端よりも前記ベース側で連結することを特徴とする可動体の可動装置。 【請求項5】 前記取付部材、前記第1係合部、前記第2係合部及び前記連結部は、一枚の金属材料を曲折することで形成されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の可動体の可動装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2016-10-12 |
出願番号 | 特願2011-93253(P2011-93253) |
審決分類 |
P
1
652・
851-
YAA
(E05F)
P 1 652・ 857- YAA (E05F) P 1 652・ 853- YAA (E05F) P 1 652・ 121- YAA (E05F) P 1 652・ 113- YAA (E05F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 川島 陵司 |
特許庁審判長 |
赤木 啓二 |
特許庁審判官 |
前川 慎喜 中田 誠 |
登録日 | 2015-06-19 |
登録番号 | 特許第5764375号(P5764375) |
権利者 | 株式会社ニフコ |
発明の名称 | 可動体の可動装置 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 飯野 茂 |
復代理人 | 角田 さやか |
代理人 | 永島 建治 |
代理人 | 砂川 克 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 石川 真一 |
代理人 | 砂川 克 |
復代理人 | 石川 真一 |
代理人 | 永島 建治 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 飯野 茂 |
代理人 | 角田 さやか |