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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05K
審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
管理番号 1323493
異議申立番号 異議2015-700035  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-09-29 
確定日 2016-11-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5692419号発明「多層配線基板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5692419号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された明細書及び特許請求の範囲のとおり、請求項1ないし13について訂正することを認める。 特許第5692419号の請求項1ないし11及び13に係る特許を取り消す。 特許第5692419号の請求項12に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5692419号(以下、「本件特許」という。)に係る特許出願は、2013年1月23日(優先権主張2012年1月27日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成27年2月13日に設定登録がされ、同年4月1日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、同年9月29日に特許異議申立人黒澤篤により特許異議の申立てがされ、同年12月15日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年2月12日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年5月6日に特許異議申立人黒澤篤から意見書の提出がされ、同年6月2日付けで取消理由(決定の予告)が通知されたが、特許権者から何らの応答もなされなかったものである。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
(1)特許権者は、特許請求の範囲の請求項1を以下の事項により特定されるとおりの請求項1として訂正することを請求する(訂正事項1)。
「【請求項1】
第1及び第2の主面を有する基板本体と、前記基板本体内において、前記第1の主面から前記第2の主面側に向かって設けられている複数の配線とを備える多層配線基板であって、
前記基板本体は、積層された複数の絶縁体層を有し、
前記配線が、少なくとも1つの絶縁体層を貫通している複数のビア導体と、前記絶縁体層間に設けられており、前記ビア導体同士を接続している配線導体とを有し、少なくとも1つの配線が、非直線状の形状を有する配線導体を有し、
前記複数の絶縁体層の内、一方面が前記第1の主面を構成している絶縁体層において、複数の第1の主面側外周ビア導体と、第1の主面側外周ビア導体で構成される外周に囲まれた領域内に配置されている複数の第1の主面側内周ビア導体とが設けられており、
前記複数の第1の主面側外周ビア導体を有する複数の配線における前記第2の主面側端部に位置している複数の第2の主面側外周ビア導体で囲まれた領域が、第2の主面に垂直な方向から基板本体を透視した際に、前記第1の主面側外周ビア導体で囲まれた領域よりも大きな面積を有し、
前記第1の主面側内周ビア導体を有する複数の配線の前記第2の主面側端部に位置している複数の第2の主面側内周ビア導体が、前記第2の主面側外周ビア導体で囲まれた領域よりも内側に位置しており、
前記少なくとも1つの配線の平面形状が、複数の直線部分を有し、隣り合う直線部分が、平面視において最も遠い関係にあるビア導体同士を結ぶ仮想直線に対して、交互に逆方向に傾斜して連なっている形状、または、平面視において最も遠い関係にある前記ビア導体同士を結ぶ仮想直線に対して、途中のビア導体が交互に前記仮想直線の一方側及び他方側に位置している形状である、多層配線基板。」(下線部は、請求人が付したとおりである。以下、同様。)

(2)同じく、特許請求の範囲の請求項5を以下の事項により特定されるとおりの請求項5として訂正することを請求する(訂正事項2)。
「【請求項5】
前記基板本体を前記第1の主面と垂直な方向から透視した場合に、1つの前記配線を構成している複数の前記ビア導体(ビア導体が2個のものを除く)の中心が同一直線上に位置していない、請求項1?4のいずれか1項に記載の多層配線基板。」

(3)同じく、特許請求の範囲の請求項12を以下の事項により特定されるとおりの請求項12として訂正することを請求する(訂正事項3)。
「【請求項12】
前記空隙は、前記絶縁体層の積層方向における前記配線の延びる方向に沿う仮想線の折れ曲がっている点に位置する前記ビア導体に関して設けられる、請求項10または11に記載の多層配線基板。」

(4)同じく、明細書の段落【0045】の「平面形状がジクザク状」とあるのを 「平面形状がジグザグ状」と訂正することを請求する(訂正事項4)。

2 訂正の適否について
(1)訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、一群の請求項ごとに請求された訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合する。

(2)訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、一群の請求項ごとに請求された訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合する。

(3)訂正事項3は、誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、一群の請求項ごとに請求された訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合する。

(4)訂正事項4は、誤記の訂正を目的とし、新規事項の追加に該当せず、一群の請求項ごとに請求された訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合する。

(5)むすび
以上のとおりであるから、訂正事項1ないし4に係る訂正を認める。

第3 取消理由についての判断
1 第36条第6項第2号について
(1)上記訂正請求により訂正された請求項5に係る発明(以下、「本件特許発明5」という。)は、上記「第2」の「1」の「(2)」において示したとおりのものである。
上記訂正請求により訂正された請求項5(以下、「訂正請求項5」という。)は、上記訂正請求により訂正された請求項1(以下、「訂正請求項1」という。)を引用しているところ、訂正請求項5には、「1つの前記配線を構成している複数の前記ビア導体(ビア導体が2個のものを除く)の中心が同一直線上に位置していない」との記載があるが、当該「直線」と訂正請求項1の「平面視において最も遠い関係にある前記ビア導体同士を結ぶ仮想直線」との関係が明らかでない。
よって、本件特許は、訂正請求項5の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)上記訂正請求により訂正された請求項12に係る発明(以下、「本件特許発明12」という。)は、上記「第2」の「1」の「(3)」において示したとおりのものである。
本件特許発明12について、訂正前の「配線導体」の誤記は、「配線」と訂正された。また、明細書の段落【0078】の「仮想線Pで示すように、配線5aが折れ曲がっている。この折れ曲がっている部分に相当する、すなわち配線の積層方向における変曲点に位置しているビア導体10aにおいて、ビア導体10aの周囲に空隙51が設けられている。このように、積層方向に延びる配線の変曲点及び変曲点近傍に位置しているビア導体において、ビア導体と絶縁体層との間に空隙51を設けることが望ましい。外部からの応力は特にこの変曲点及び変曲点近傍にかかりやすいため、上記構成を備えることにより、一部のビア導体の周囲に空隙を設けた構造において、より効果的に外部からの応力を緩和することができる。」との記載及び【図13】の図示内容に照らせば、空隙が絶縁体層の積層方向における配線の延びる方向に沿う仮想線Pの折れ曲がっている点に位置するビア導体に関して設けられることが理解できるから、訂正前の「配線導体の変曲点」の意味が明確となるように訂正された。
そうすると、本件特許発明12は、明確であるから、取消理由によっては、上記訂正請求により訂正された請求項12(以下、「訂正請求項12」という。)に係る特許を取り消すことはできない。

2 第29条第2項について
訂正請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明1」という。)は、上記「第2」の「1」の「(1)」において示したとおりのものである。

(1) 刊行物に記載された事項
ア 平成28年6月2日付けの取消理由(決定の予告)に引用した刊行物1(特開2007-173862号公報)には、「中継基板、半導体素子付き中継基板、中継基板付き基板、半導体素子と中継基板と基板とからなる構造体」に関して、図面(特に【図4】、【図5】及び【図6】参照)とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は合議体が付した(以下、同様)。

(ア)「【請求項7】
請求項1乃至5の何れかの中継基板および面接続端子を有する半導体素子を備え、かつ、
前記中継基板は、前記半導体素子が実装される側の第1面、および第2面を有し、絶縁材料からなる略板形状の中継基板本体と、
前記第1面側に配置された複数の第1面側端子と、前記第2面側に配置された複数の第2面側端子と、前記中継基板本体に設けられ、前記第1面側端子及び前記第2面側端子を互いに導通させる導通構造と、を備え・・・半導体素子付き中継基板。」

(イ)「【0072】
図4,図5等に示されるように、インターポーザ21は、上面22(第1面)及び下面23(第2面)を有する矩形平板形状のインターポーザ本体38(中継基板本体)を有している。インターポーザ本体38は、多層構造を有するアルミナ基板からなる。より詳細にいうと、本実施形態のインターポーザ本体38は、第1アルミナ絶縁層24と第2アルミナ絶縁層25とを積層した2層構造を有する厚さ0.3mmのアルミナ基板からなる。かかるアルミナ基板の熱膨張係数は約7.6ppm/℃、ヤング率は約280GPa、曲げ弾性率は約350MPaである。従って、インターポーザ本体38の熱膨張係数は、配線基板41の熱膨張係数よりも小さく、かつ、ICチップ15の熱膨張係数よりも大きな値となっている。即ち、本実施形態のインターポーザ21は、配線基板41よりも低い熱膨張性を備えていると言える。また、アルミナ基板のヤング率は、ICチップ15よりも高い(即ち190GPa以上である)ことから、本実施形態のインターポーザ21は高い剛性を備えている。なお、インターポーザ本体38を低温焼成セラミック基板としてもよい。
【0073】
インターポーザ本体38を構成する第1アルミナ絶縁層24には、インターポーザ21の厚さ方向に延びる複数のビア(貫通孔)が格子状に形成されていて、それらビア内にはタングステン(W)からなる導体柱30が設けられている。インターポーザ本体38を構成する第2アルミナ絶縁層25にも、インターポーザ21の厚さ方向に延びる複数のビア(貫通孔)が形成されていて、それらビア内にはタングステンからなる導体柱31が設けられている。本実施形態の場合、導体柱30,31の直径はともに約80μmに設定されている。
【0074】
上面22において各々の導体柱30の上端面がある位置には、第1面側端子である上面側パッド28が配置されている。上面側パッド28は円形状かつ直径120μmであって、隣接する上面側パッド28,28間の中心間距離36(図6参照)は約200μmに設定されている。一方、下面23において各々の導体柱31の下端面がある位置には、第2面側端子である下面側パッド29が配置されている。下面側パッド29は円形状かつ直径120μmであって、隣接する下面側パッド29,29間の中心間距離37(図6参照)は約300μmに設定されている。即ち、本実施形態では、隣接する下面側パッド29,29間の中心間距離37が、隣接する上面側パッド28,28間の中心間距離36よりも100μm程度大きくなるように設定されている。
【0075】
(省略)
【0076】
図4,図5,図6等に示されるように、インターポーザ本体38の内層、より詳細にいうと第1アルミナ絶縁層24と第2アルミナ絶縁層25との界面には、所定パターン状に形成された複数の配線32からなる配線群が配置されている。これらの配線32はタングステン(W)からなり、インターポーザ21の面方向に延びている。かかる配線群は、隣接する配線32同士の間隔が広くなるファンアウト部33を複数箇所に有している(図6参照)。
【0077】
図4,図5,図7に示されるように、前記配線群は、インターポーザ本体38の中央部から外周部に向かう複数の配線32によって構成されている。配線32の一端は第1アルミナ絶縁層24に属する導体柱30の内端に接続され、配線32の他端は第2アルミナ絶縁層25に属する導体柱31の内端に接続されている。その結果、上面側パッド28?導体柱30?配線32?導体柱31?下面側パッド29という経路(またはこれと逆の経路)を経て電流が流れるようになっている。従って、このような構造の半導体パッケージ構造体11では、インターポーザ21の導体柱30,31及び配線32を介して、配線基板41側とICチップ15側とが電気的に接続される。ゆえに、インターポーザ21を介して、配線基板41-ICチップ15間で信号の入出力が行われるとともに、ICチップ15をMPUとして動作させるための電源が供給されるようになっている。なお、インターポーザ本体38を低温焼成セラミック基板とした場合には、導体柱30,31及び配線32は、導電性の高い銀(Ag)や銅(Cu)を用いて形成されることがよい。かかる導体柱30,31や配線32を有するインターポーザ21は、高速化に適したものとなる。」

(ウ)上記記載事項(イ)の「インターポーザ21は、上面22(第1面)及び下面23(第2面)を有する矩形平板形状のインターポーザ本体38(中継基板本体)を有している。・・・インターポーザ本体38は、第1アルミナ絶縁層24と第2アルミナ絶縁層25とを積層した2層構造を有する」(段落【0072】)との記載、同じく「第1アルミナ絶縁層24と第2アルミナ絶縁層25との界面には、所定パターン状に形成された複数の配線32からなる配線群が配置されている」(段落【0076】)との記載並びに【図4】、【図5】及び【図6】から、上面22(第1面)及び下面23(第2面)を有するインターポーザ本体38(中継基板本体)と、インターポーザ本体38(中継基板本体)において、上面22(第1面)から下面23(第2面)側に向かって設けられている複数の配線32とを備えるインターポーザ本体38(中継基板本体)であって、インターポーザ本体38(中継基板本体)は、積層された第1アルミナ絶縁層24と第2アルミナ絶縁層25を有していることが理解できる。

(エ)上記記載事項(ア)の「導通構造」との記載、上記記載事項(イ)の「インターポーザ本体38を構成する第1アルミナ絶縁層24には、インターポーザ21の厚さ方向に延びる複数のビア(貫通孔)が格子状に形成されていて、それらビア内にはタングステン(W)からなる導体柱30が設けられている。インターポーザ本体38を構成する第2アルミナ絶縁層25にも、インターポーザ21の厚さ方向に延びる複数のビア(貫通孔)が形成されていて、それらビア内にはタングステンからなる導体柱31が設けられている。」(段落【0073】)との記載並びに【図4】、【図5】、【図6】及び【図7】から、導通構造が、第1アルミナ絶縁層24と第2アルミナ絶縁層25を貫通している複数の導体柱30、31と、第1アルミナ絶縁層24と第2アルミナ絶縁層25との間に設けられており、導体柱30、31同士を接続している配線32とを有し、少なくとも1つの導通構造が、非直線状の形状を有する配線32を有していることが理解できる。

(オ)【図4】、【図5】及び【図6】から、第1アルミナ絶縁層24と第2アルミナ絶縁層25の内、一方面が上面22(第1面)を構成している第1アルミナ絶縁層24において、複数の上面22(第1面)側外周導体柱30と、上面22(第1面)側外周導体柱30で構成される外周に囲まれた領域内に配置されている複数の上面22(第1面)側内周導体柱30とが設けられていること及び複数の上面22(第1面)側外周導体柱30を有する複数の導通構造における下面23(第2面)側端部に位置している複数の下面23(第2面)側外周導体柱31で囲まれた領域が、下面23(第2面)に垂直な方向からインターポーザ本体38(中継基板本体)を透視した際に、上面22(第1面)側外周導体柱30で囲まれた領域よりも大きな面積を有していることが看て取れる。

(カ)【図5】及び【図6】から、少なくとも1つの導通構造の平面形状が、複数の直線部分を有し、隣り合う直線部分が、平面視において最も遠い関係にある導体柱30、31同士を結ぶ仮想直線に対して、交互に逆方向に傾斜して連なっている形状が看て取れる。(特許異議申立人の平成28年5月6日付け意見書第4頁参照。)

これらの記載事項、認定事項び図面の図示内容を総合し、本件特許発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「上面22(第1面)及び下面23(第2面)を有するインターポーザ本体38(中継基板本体)と、インターポーザ本体38(中継基板本体)において、上面22(第1面)から下面23(第2面)側に向かって設けられている複数の配線32とを備えるインターポーザ本体38(中継基板本体)であって、
インターポーザ本体38(中継基板本体)は、積層された第1アルミナ絶縁層24と第2アルミナ絶縁層25を有し、
導通構造が、第1アルミナ絶縁層24と第2アルミナ絶縁層25を貫通している複数の導体柱30、31と、第1アルミナ絶縁層24と第2アルミナ絶縁層25との間に設けられており、導体柱30、31同士を接続している配線32とを有し、少なくとも1つの導通構造が、非直線状の形状を有する配線32を有し、
第1アルミナ絶縁層24と第2アルミナ絶縁層25の内、一方面が上面22(第1面)を構成している第1アルミナ絶縁層24において、複数の上面22(第1面)側外周導体柱30と、上面22(第1面)側外周導体柱30で構成される外周に囲まれた領域内に配置されている複数の上面22(第1面)側内周導体柱30とが設けられており、
複数の上面22(第1面)側外周導体柱30を有する複数の導通構造における下面23(第2面)側端部に位置している複数の下面23(第2面)側外周導体柱31で囲まれた領域が、下面23(第2面)に垂直な方向からインターポーザ本体38(中継基板本体)を透視した際に、上面22(第1面)側外周導体柱30で囲まれた領域よりも大きな面積を有しており、
前記少なくとも1つの導通構造の平面形状が、複数の直線部分を有し、隣り合う直線部分が、平面視において最も遠い関係にある導体柱30、31同士を結ぶ仮想直線に対して、交互に逆方向に傾斜して連なっている形状である、インターポーザ21。」

イ 取消理由(決定の予告)に引用した刊行物2(特許第4429760号公報)には、「多層配線基板」に関して、図面(特に【図4】参照)とともに、次の事項が記載されている。

(キ)「【0002】
最近の半導体装置では、ロジックデバイスの高機能化及び高密度化が進み、入出力数が増大している。このため、半導体素子(チップ)の電極形成面に多数の電極を配置することによって、入出力数の増大による電極形成スペースの不足を補う製品が提供されるようになってきている。例えば、フリップチップ接続により半導体チップを配線基板に搭載するタイプの製品では、半導体チップの電極形成面の周縁部分にのみ電極が配列されている場合には、配線基板に配線パターンを1層設けるだけで全ての電極を当該配線パターンに接続することができる。つまり、配線基板上でチップの各電極に対応する位置に形成された各パッドからそれぞれ配線パターンを引き出すことができる。しかしながら、半導体チップの電極形成面に格子状もしくはエリアアレイ状に多数の電極が配列されている場合には、配線基板上に形成されるパッドの数やパッドの配置間隔にも依るが、一つの配線層内で全てのパッドから配線パターンを引き出すことができなくなるといった不都合が起こり得る。
【0003】
このような不都合を解消するための手法として、半導体チップを搭載する配線基板を多層に形成し、積層する各配線層で配線パターンを適宜配置することによって半導体チップの全ての電極を各配線パターンに接続する方法がある。その一例を図4に示す。図4に示す構成例では、配線層が4層に積層された多層配線基板1に、搭載面側に格子状に多数の電極6が配列された半導体チップ5が搭載されている。・・・」

(ク)「【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る多層配線基板の構成を模式的に示したものであり、その一部分の断面構造を示している。・・・第1層目の配線層12(パッドP)と第2層目の配線層12(パッドP)は、層間絶縁層13に形成されたビアホールVH(に充填された導体)を介して電気的に接続されており・・・」

(ケ)上記記載事項(キ)の「半導体チップを搭載する配線基板を多層に形成し、積層する各配線層で配線パターンを適宜配置することによって半導体チップの全ての電極を各配線パターンに接続する方法がある」との記載、上記記載事項(ク)の「第1層目の配線層12(パッドP)と第2層目の配線層12(パッドP)は、層間絶縁層13に形成されたビアホールVH(に充填された導体)を介して電気的に接続されており」との記載及び【図4】から、1つの配線層において最上層の配線層の上面に平行な方向において隣り合う一方のビアホールVHに充填された導体と他方のビアホールVHに充填された導体とが、異なる配線層に設けられた配線に接続されていること及び1つの配線層の一方面が多層配線基板の最上面を構成していること(以下、「刊行物2の記載事項」という。)が理解できる。

ウ 取消理由(決定の予告)に引用した刊行物3(特開2002-176236号公報)の段落【0079】及び【図2】には、セラミック基板に設けられたビアホール導体には空孔が形成されていること(以下、「刊行物3の記載事項」という。)が記載されている。

エ 取消理由(決定の予告)に引用した刊行物4(特開平11-176870号公報)の段落【0010】及び【図2】には、全導体パターン16の各水平部26が曲線状の形状を有することが、同じく刊行物5(特開平9-293723号公報)の段落【0024】及び【図6】には、アルミ配線3において曲面37Aのみを形成して丸め部37とすること(以下、「刊行物4、5の記載事項」という。)が記載されている。

(2) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明とを対比すると、その機能、構造からみて、後者の「上面22(第1面)及び下面23(第2面)」は前者の「第1及び第2の主面」に相当し、以下同様に、「インターポーザ本体38(中継基板本体)」は「基板本体」に、「導通構造」は「配線」に、「第1アルミナ絶縁層24と第2アルミナ絶縁層25」は「複数の絶縁体層」に、「導体柱30、31」は「ビア導体」に、「配線32」は「配線導体」に、「インターポーザ21」は「多層配線基板」に、それぞれ相当する。

以上の点からみて、本件特許発明1と引用発明とは、

[一致点]
「第1及び第2の主面を有する基板本体と、前記基板本体内において、前記第1の主面から前記第2の主面側に向かって設けられている複数の配線とを備える多層配線基板であって、
前記基板本体は、積層された複数の絶縁体層を有し、
前記配線が、少なくとも1つの絶縁体層を貫通している複数のビア導体と、前記絶縁体層間に設けられており、前記ビア導体同士を接続している配線導体とを有し、少なくとも1つの配線が、非直線状の形状を有する配線導体を有し、
前記複数の絶縁体層の内、一方面が前記第1の主面を構成している絶縁体層において、複数の第1の主面側外周ビア導体と、第1の主面側外周ビア導体で構成される外周に囲まれた領域内に配置されている複数の第1の主面側内周ビア導体とが設けられており、
前記複数の第1の主面側外周ビア導体を有する複数の配線における前記第2の主面側端部に位置している複数の第2の主面側外周ビア導体で囲まれた領域が、第2の主面に垂直な方向から基板本体を透視した際に、前記第1の主面側外周ビア導体で囲まれた領域よりも大きな面積を有しており、前記少なくとも1つの配線の平面形状が、複数の直線部分を有し、隣り合う直線部分が、平面視において最も遠い関係にあるビア導体同士を結ぶ仮想直線に対して、交互に逆方向に傾斜して連なっている形状である、多層配線基板。」
である点で一致し、

次の点で相違する。

[相違点]

本件特許発明1では、第1の主面側内周ビア導体を有する複数の配線の第2の主面側端部に位置している複数の第2の主面側内周ビア導体が、第2の主面側外周ビア導体で囲まれた領域よりも内側に位置しているのに対して、引用発明では、上面22(第1面)側内周導体柱30を有する複数の導通構造の下面23(第2面)側端部に位置している複数の下面23(第2面)側内周導体柱31が、必ずしも下面23(第2面)側外周導体柱31で囲まれた領域よりも内側に位置しているといえない点。

イ 判断
相違点について
具体的な配線レイアウトは、当業者が適宜決定し得るものに止まるから、引用発明において、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得た設計変更に過ぎない。

また、本件特許発明1による効果も、引用発明から当業者が予測し得たものである。

ウ まとめ
よって、本件特許発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(3) 本件特許発明2について
引用発明において、全ての導通構造が、非直線状の形状を有する配線を有するものとすることは、当業者が適宜なし得た設計変更に過ぎない。
よって、本件特許発明2は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(4) 本件特許発明3について
引用発明の導通構造は、上面22(第1面)から下面23(第2面)にまで到達するように設けられている。
よって、本件特許発明3は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(5) 本件特許発明4について
引用発明は、隣接する配線32同士の間隔が広くなるファンアウト部33を複数箇所に有している(上記記載事項(イ)の「隣接する下面側パッド29,29間の中心間距離37が、隣接する上面側パッド28,28間の中心間距離36よりも100μm程度大きくなるように設定されている。」(段落【0074】)との記載、同じく「第1アルミナ絶縁層24と第2アルミナ絶縁層25との界面には、所定パターン状に形成された複数の配線32からなる配線群が配置されている。これらの配線32はタングステン(W)からなり、インターポーザ21の面方向に延びている。かかる配線群は、隣接する配線32同士の間隔が広くなるファンアウト部33を複数箇所に有している(図6参照)。」(段落【0076】)との記載及び【図6】参照)から、隣り合う導通構造間の距離が、上面22(第1面)から下面23(第2面)に向かうにつれて長くなっていると解される。
よって、本件特許発明4は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(6) 本件特許発明6、7について
刊行物2の記載事項は、本件特許発明6及び7の「1つの絶縁体層において第1の主面に平行な方向において隣り合う一方のビア導体と他方のビア導体とが、異なる絶縁体層に設けられた配線導体に接続されている」こと及び「1つの絶縁体層の一方面が基板本体の第1の主面を構成している」ことに相当するところ、引用発明に刊行物2の記載事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本件特許発明6、7は、引用発明及び刊行物2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(7) 本件特許発明8について
引用発明の配線32は、1つの直線部分と、当該直線部分の一端に連ねられており、当該直線部分と交差する方向に延びる他の直線部分とを有するものである(【図6】参照)。
よって、本件特許発明8は、引用発明及び刊行物2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(8) 本件特許発明9について
刊行物4、5の記載事項は、本件特許発明9の「配線導体が、曲線状の形状を有する」ことに相当するところ、引用発明に刊行物4、5の記載事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本件特許発明9は、引用発明及び刊行物2、4、5の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(9) 本件特許発明10、11について
刊行物3の記載事項は、本件特許発明10及び11の「ビア導体と絶縁体層との間に空隙が形成されている」こと及び「1つのビア導体内に空隙が形成されている」ことに相当するところ、引用発明に刊行物3の記載事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本件特許発明10、11は、引用発明及び刊行物2ないし5の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(10) 本件特許発明12について
ア 対比
本件特許発明12と引用発明とは、「第3」の「2」の「(2)」の「ア」で認定した[一致点]で一致し、[相違点]で相違する上に、次の点でさらに相違する。

[相違点2]

本件特許発明12では、空隙は、絶縁体層の積層方向における配線の延びる方向に沿う仮想線の折れ曲がっている点に位置するビア導体に関して設けられるのに対して、引用発明では、かかる特定事項がない点。

イ 判断
刊行物2ないし5には、上記特定事項について記載も示唆もなく、上記特定事項は周知の技術事項でもないから、本件特許発明12は、引用発明、刊行物2ないし5の記載事項及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
そして、本件特許発明12は、上記特定事項によって、より効果的に外部からの応力を緩和することができる(段落【0078】)という格別顕著な効果を奏するものである。

(11) 本件特許発明13について
特開2002-76193号公報の【図1】(a)、特開平6-244552号公報の【図1】、特開平6-69652号公報の【図17】及び特開2003-318322号公報の【図1】には、本件特許発明13の「第2の主面側に位置している少なくとも1つの絶縁体層の面積に比べ、該少なくとも1つの絶縁体層よりも第1の主面側に位置している少なくとも1つの絶縁体層の面積が小さくされている」ことに相当する構成(以下、「周知の技術事項」という。)が記載されている。
引用発明に周知の技術事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本件特許発明13は、引用発明、刊行物2ないし5の記載事項及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(12)したがって、本件特許発明1ないし4、6ないし11及び13は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許の請求項1ないし4、6ないし11、13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

第4 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項5に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものであり、本件特許の請求項1ないし4、6ないし11、13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項12に係る特許は、取消理由によっては、特許を取り消すことができない。
さらに、他に本件特許の請求項12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定をする。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
多層配線基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビア導体及び配線導体を有する複数の配線が基板本体内に形成されている多層配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICなどの半導体素子を実装する基板として、多層配線基板が用いられている。半導体素子の外部端子は、高集積化に伴って高密度に配置されている。そこで、下記の特許文献1や特許文献2には、半導体素子などが搭載される上面に高密度に複数の電極が形成されている多層配線基板が開示されている。これらの多層配線基板では、下面に、より広いピッチで配置された複数の外部電極が形成されている。この複数の外部電極と、上面側の複数の電極とが、多層配線基板内に設けられている複数の配線により電気的に接続されている。各配線は、多層配線基板の絶縁体層を貫通するように設けられた複数のビア導体と、異なる絶縁体層に設けられたビア導体同士を絶縁体層間の界面で電気的に接続している配線導体とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-300482号公報
【特許文献2】特開2008-164577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2に記載の多層配線基板では、例えば特許文献1の図5に示されているように、1つの配線を構成している複数のビア導体及び複数の配線導体がある断面に現れている。すなわち、多層配線基板を平面視した場合、1つの配線を構成している複数のビア導体及び複数の配線導体が直線上に配置されている。このような多層配線基板では、多層配線基板の反りが生じ易かった。また、上面及び下面の平坦性が劣化しやすいという問題があった。さらに、多層配線基板に外部から衝撃が加わった場合、ビア導体や配線導体に衝撃が伝わりやすかった。そのため、多層配線基板にクラックが生じやすいという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、反りの発生や表面の平坦性の劣化が生じ難く、かつクラックの発生を効果的に抑制し得る多層配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1及び第2の主面を有する基板本体と、前記基板本体内において、前記第1の主面から前記第2の主面側に向かって設けられている複数の配線とを備える多層配線基板である。本発明では、基板本体は、積層された複数の絶縁体層を有する。そして、前記配線が、少なくとも1つの絶縁体層を貫通している複数のビア導体と、前記絶縁体層間に設けられており、ビア導体同士を接続している配線導体とを有する。本発明では、少なくとも1つの配線が、非直線状の形状を有する配線導体を有する。
【0007】
本発明に係る多層配線基板のある特定の局面では、全ての配線において前記配線導体が非直線状の形状を有する。この場合には、多層配線基板の反りや表面の表面平坦性の劣化をより効果的に抑制することができる。
【0008】
本発明に係る多層配線基板の他の特定の局面では、前記配線が、前記第1の主面から前記第2の主面にまで到達するように設けられている。この場合には、第2の主面側において、外部と容易に電気的に接続することができる。
【0009】
本発明に係る多層配線基板のさらに特定の局面では、隣り合う前記配線間の距離が、前記第1の主面側から前記第2の主面側に向かうにつれて長くなっている。この場合には、第1の主面に搭載される電子部品の外部との接続を、第2の主面側においてより一層容易に行うことができる。
【0010】
本発明に係る多層配線基板のさらに他の特定の局面では、前記基板本体を前記第1の主面と垂直な方向から透視した場合に、前記配線内の複数の前記ビア導体が同一直線上に位置していない。この場合には、外部から加わった衝撃による影響をより効果的に緩和することができる。従って、多層配線基板のクラックの発生をより効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明に係る多層配線基板のさらに別の特定の局面では、1つの前記絶縁体層において前記第1の主面と平行な方向において隣り合う一方の前記ビア導体と他方のビア導体とが、異なる絶縁体層に設けられた前記配線導体に接続されている。この場合には、多層配線基板内で複数の配線をより高密度に構成することができる。
【0012】
特に、前記1つの前記絶縁体層の一方面が前記基板本体の第1の主面を構成している場合には、第1の主面側におけるビア導体の配置密度が高い場合であっても、複数の配線を多層配線基板内に容易に構成することができる。
【0013】
本発明に係る多層配線基板の別の特定の局面では、前記複数の絶縁体層の内、一方面が前記第1の主面を構成している絶縁体層において、複数の第1の主面側外周ビア導体と、第1の主面側外周ビア導体で構成される外周に囲まれた領域内に配置されている複数の第1の主面側内周ビア導体とが設けられている。そして、前記複数の第1の主面側外周ビア導体を有する複数の配線における前記第2の主面側端部に位置している複数の第2の主面側外周ビア導体で囲まれた領域を、第2の主面に垂直な方向から基板本体を透視した際に、前記第1の主面側外周ビア導体で構成される前記外周で囲まれた領域よりも大きな面積を有する。また、前記第1の主面側内周ビア導体を有する複数の配線の前記第2の主面側端部に位置している複数の第2の主面側内周ビア導体が、第2の主面側外周ビア導体で囲まれた領域よりも内側に位置している。この場合には、第1の主面に搭載される電子部品の外部端子の高密度化に対してより一層容易に対応することができる。
【0014】
本発明に係る多層配線基板のさらに別の特定の局面では、前記配線導体が、第1の直線部分と、第1の直線部分の一端に連ねられており、第1の直線部分と交差する方向に延びる第2の直線部分とを有する。この場合には、外部から加わった衝撃を配線導体において効果的に緩和することができる。
【0015】
本発明に係る多層配線基板のさらに他の特定の局面では、前記配線導体が、曲線状の形状を有する。この場合には、配線に加わった衝撃をより一層効果的に緩和することができる。
【0016】
本発明に係る多層配線基板のさらに別の特定の局面では、少なくとも1つのビア導体において、該ビア導体と絶縁体層との間に空隙が形成されている。この場合には、多層配線基板に加わった衝撃を空隙により緩和することができる。従って、多層配線基板のクラックを抑制することができる。また、多層配線基板の反りや平面の平坦性の劣化をより効果的に抑制することができる。
【0017】
本発明に係る多層配線基板のさらに別の特定の局面では、少なくとも1つのビア導体内に空隙が形成されている。この場合には、多層配線基板に加わった衝撃をビア導体内部に設けられている空隙により緩和することができる。
【0018】
本発明に係る多層配線基板のさらに別の特定の局面では、前記空隙は、前記絶縁体層の積層方向における前記配線導体の変曲点に位置する前記ビア導体に関して設けられる。
【0019】
本発明に係る多層配線基板のさらに別の特定の局面では、第2の主面側に位置している少なくとも1つの絶縁体層の面積に比べ、該少なくとも1つの絶縁体層よりも第1の主面側に位置している少なくとも1つの絶縁体層の面積が小さくされている。この場合には、第1の主面側と第2の主面側との間の配線密度差による多層配線基板の反りや表面の平坦性の劣化をより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る多層配線基板は、基板本体に構成されている配線において、非直線状の形状を有する配線導体を有する。従って、多層配線基板の反りや表面の平坦性の劣化を効果的に抑制することができる。また、外部から加わった衝撃を緩和することができ、多層配線基板におけるクラックの発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る多層配線基板の略図的正面断面図であり、図1(b)は、第1の実施形態における多層配線基板内に構成されている複数の配線を略図的に示す模式的平面図である。
【図2】図2(a)は、第1の実施形態において、多層配線基板内に構成されている配線の要部を拡大して示す斜視図であり、図2(b)及び図2(c)は、配線導体の変形例を示す各平面図である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は、第1の実施形態の多層配線基板における配線の構成を説明するための各模式的平面図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、第1の実施形態の多層配線基板における配線の構成を説明するための各模式的平面図である。
【図5】図5は、第1の実施形態の変形例に係る多層配線基板の複数の配線を略図的に示す基板本体の模式的平面図である。
【図6】図6(a)及び図6(b)は、本発明の第1の実施形態に係る多層配線基板のさらに他の変形例を示す各略図的正面断面図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施形態に係る多層配線基板における複数の配線の配置構造を説明するための模式的平面図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は、第2の実施形態の多層配線基板の複数の配線の構成を説明するための各模式的平面図である。
【図9】図9(a)及び図9(b)は、第2の実施形態の多層配線基板の複数の配線の構成を説明するための各模式的平面図である。
【図10】図10(a)?図10(c)は、本発明の第3の実施形態に係る多層配線基板における複数の配線の配置を説明するための各模式的平面図である。
【図11】図11は、本発明の第4の実施形態に係る多層配線基板を説明するための略図的正面断面図である。
【図12】図12は、本発明の第4の実施形態に係る多層配線基板上に電子部品素子が搭載されている状態を示す略図的正面断面図である。
【図13】図13は、本発明の第5の実施形態に係る多層配線基板を示す模式的正面断面図である。
【図14】図14は、本発明の第4の実施形態の変形例に係る多層配線基板の略図的正面断面図である。
【図15】図15は、第5の実施形態の変形例に係る多層配線基板の変形例を示す略図的正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより本発明を明らかにする。
【0023】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る多層配線基板の略図的正面断面図であり、(b)は、該多層配線基板内に構成されている複数の配線を略図的に示す模式的平面図である。
【0024】
図1(a)に示すように、多層配線基板1は、基板本体2を有する。基板本体2は、第1の主面2aと、第1の主面2aと反対側の面である第2の主面2bとを有する。第1の主面2aは、ICチップなどの電子部品や測定用プローブカードなどが搭載される実装面である。従って、第1の主面2a上には、複数の電極3a?3cが形成されている。
【0025】
第2の主面2b上には、複数の端子電極4a?4cが形成されている。複数の電極3a?3cの配置密度に比べ、複数の端子電極4a?4cの配置密度が低くなっている。複数の電極3a?3cが高密度に配置されているため、例えばICチップなどの高密度に配置されている複数の端子を、複数の電極3a?3cに接合することができる。他方、第2の主面2b側においては、複数の端子電極4a?4c間のピッチが大きいため、外部と容易に電気的接続を行うことができる。
【0026】
複数の電極3a?3cは、後述する複数の配線により、それぞれ、端子電極4a?4cに電気的に接続されている。
【0027】
上記基板本体2は、第1?第5の絶縁体層2c?2gを有する。すなわち、基板本体2の第1の主面2a側から順に、第1?第5の絶縁体層2c?2gが積層されている。第1?第5の絶縁体層2c?2gは、適宜の絶縁性材料からなる。このような材料としては、絶縁性セラミックスまたは合成樹脂などを用いることができる。
【0028】
本実施形態では、第1?第5の絶縁体層2c?2gは、セラミックスからなり、一体焼成されている。すなわち、複数のセラミックグリーンシートを積層し、一体焼成することにより基板本体2が構成されている。
【0029】
本実施形態では、基板本体2は、低温焼結セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramic)からなる。LTCCは、1050℃以下の温度で焼結可能である。また、比抵抗が小さいAu、AgまたはCuなどと同時焼成可能である。従って、比較的低温での焼成で、導電性に優れた配線を内部に構成することができる。上記LTCCとしては、例えば、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、フォルステライトなどのセラミック粉末などにホウケイ酸ガラスを混合してなるガラス複合系LTCC材料、ZnO-MgO-Al_(2)O_(3)-SiO_(3)系の結晶化ガラスを用いた結晶化ガラス系LTCC材料などを用いることができる。さらに、BaO-Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系セラミック粉末などを用いた非ガラス系LTCC材料を用いてもよい。
【0030】
なお、本実施形態では、基板本体2は、LTCCからなるが、1050℃より高い温度で焼結されるアルミナ、窒化アルミニウムなどの他のセラミックス材料により構成されていてもよい。
【0031】
本実施形態では、説明を容易とするために、第1?第5の絶縁体層2c?2gが積層されているが、基板本体2における複数の絶縁体層の層数は特に限定されるものではない。また、第1?第5の絶縁体層2c?2gの各厚みについても特に限定されるものではない。
【0032】
また、前述した複数の電極3a?3c及び複数の端子電極4a?4cは、適宜の金属などの導電性材料からなる。
【0033】
基板本体2内には、複数の電極3a?3cを複数の端子電極4a?4cにそれぞれ電気的に接続するために、複数の配線5a?5cが形成されている。
【0034】
複数の配線5a?5cの内、配線5aを代表して配線5a?5cの構造を説明する。配線5aの上端が、電極3aに電気的に接続されており、下端が端子電極4aに電気的に接続されている。配線5aは、第1の主面2a側から第2の主面2bに至るように構成されている。より詳細には、配線5aは、第1の主面2a側から、ビア導体6a、配線導体7a、ビア導体8a、配線導体9a、ビア導体10a、配線導体11a、ビア導体12a、配線導体13a、ビア導体14aを有する。ビア導体6a、ビア導体8a、ビア導体10a、ビア導体12a、ビア導体14aは、それぞれ、第1?第5の絶縁体層2c?2gを貫通するように設けられている。このようなビア導体6a,8a,10a,12a,14aは、第1?第5の絶縁体層2c?2gを形成するための各セラミックグリーンシートに貫通孔を形成し、該貫通孔に導電ペーストを充填することなどにより形成することができる。
【0035】
ビア導体6a,8a,10a,12a,14aは円柱状の形状を有するが、円筒状であってもよく、角柱状などの他の適宜の形状を有していてもよい。
【0036】
配線導体7a,9a,11a,13aは、それぞれ、基板本体2における上記積層方向において隣り合うビア導体を電気的に接続している。例えば、配線導体7aを例にとると、配線導体7aは、第1の絶縁体層2cに設けられたビア導体6aと、第2の絶縁体層2dに設けられたビア導体8aとを電気的に接続している。配線導体7aは、第1の絶縁体層2cと第2の絶縁体層2dとの界面に形成されている。製造に際しては、第2の絶縁体層2dを形成するためのセラミックグリーンシート上に導電ペーストをスクリーン印刷等により形成することにより、配線導体7aを形成することができる。
【0037】
なお、図1(a)において基板本体2の中央部に配置される配線5bは基板本体2の主面に垂直な方向に直線状に配置されているが、これに限定されるものではなく、配線5bを形成する各ビア導体が非直線状の形状を有する配線導体を介して接続されていてもよい。
【0038】
図1(b)は、本実施形態の多層配線基板1内における複数の配線5a?5iの平面形状を模式的に示す基板本体2の透視図である。なお、図1(a)は、図1(b)のA-A線に沿う部分に相当する端面を示す。すなわち、図1(a)では、配線5a?5cが設けられている断面のみが示されている。従って、第1の絶縁体層2cを貫通しているビア導体として、前述したビア導体6aと、ビア導体6b,6cが図示されている。
【0039】
これに対して、実際には、図1(b)に示すように、基板本体2の第1の主面2aにおいて、ビア導体6a?6c以外に、ビア導体6d?6iも露出している。すなわち、基板本体2内には、複数の配線5a?5iが構成されている。複数の配線5a?5iは第1の主面2aから第2の主面2b側に向かって放射状に拡がっている。言い換えれば、隣り合う配線間のピッチは、第1の主面2a側から第2の主面2b側にいくにつれて大きくなっている。なお、図1(b)においては、基板本体2の異なる高さ位置にあるビア導体及び配線導体を区別するために、図示のようにハッチングを異ならせている。言い換えれば、同じハッチングで示すビア導体及び配線導体は同じ高さ位置に設けられている。また、図1(b)では、各ビア導体及び配線導体の形成されている絶縁体層及び絶縁体層間の界面の位置を明確にするために、略図的に第1?第5の絶縁体層2c?2gの外形を異ならせて図示してある。
【0040】
配線5aを例にとると、ビア導体6aが第1の絶縁体層2c上に露出しており、配線導体7aが第1の絶縁体層2cと第2の絶縁体層2dとの界面に位置している。そして、ビア導体8aが、第2の絶縁体層2dを貫通するように設けられている。
【0041】
このように、本実施形態では、多数の配線5a?5iの全てが基板本体2の断面の同一端面には現れておらず、基板本体2を平面視した場合、マトリックス状に配置されているビア導体6a?6iの内中心に位置するビア導体6bに対して放射状に分散されている。よって、配線5a?5iと基板本体2との焼成に際しての収縮挙動の差による基板の反りや基板本体2の平坦性の劣化が生じ難くされている。
【0042】
加えて、本実施形態の他の特徴は、配線導体7a,9a,11a,13aが非直線状の平面形状を有することにある。図1(b)の配線導体7a,9aが設けられている部分を図2に拡大して示す。図2に示すように、配線導体7aは、基板本体2における積層方向において隣り合うビア導体6aとビア導体8aとを電気的に接続している。配線導体7aが、ビア導体6aとビア導体8aとを直線的には接続してはいない。すなわち、配線導体7aは、非直線状の形状を有する。より具体的には、本実施形態では図2に略図的に示す直線部分X1と直線部分X2とが角度θをなすように連なっている形状を有する。この角度θは、180°未満の角度とされている。配線導体9aについても同様である。
【0043】
また、図1(b)から明らかなように、複数の配線5a?5iのいずれにおいても、配線導体は配線導体7aと同様に非直線状の形状とされている。
【0044】
従って、例えば第1の主面2a上に接合されもしくは当接される外部機器の端子による応力がビア導体6aに加わったとてしも、該応力が非直線状の配線導体7a,9a,11a,13aにより緩和される。仮に、各配線導体が直線状の形状であるとした場合には、第1の主面側においてビア導体に加わった応力が、第2の主面側に直線的に伝わる。
【0045】
これに対して、本実施形態では、配線導体7a,9a,11a,13aが非直線状の形状とされているため、このような応力の伝達を効果的に抑制することができる。それによって、実使用時や温度変化が加わった際の応力による反りを抑制することができる。また、表面の平坦性の劣化も効果的に抑制することができ、さらにクラックの発生も効果的に抑制することができる。特に、本実施形態では、配線5aを例にとると、ビア導体6aからビア導体14aに至る配線5aにおいて、平面形状がジグザグ状の形状とされているため、上記応力をより効果的に緩和することができる。他の配線5b?5iにおいても同様である。
【0046】
よって、本実施形態では、複数の配線5a?5iが、1)第1の主面2aから第2の主面2b側に向かって互いに遠ざかるように配置されているため、並びに上記のように配線導体が非直線状の形状とされていることによって、基板本体2の反りや表面の平坦性の劣化を効果的に抑制でき、実使用時のクラックの発生を効果的に抑制することができる。
【0047】
なお、図2では、直線部分X1と直線部分X2とが角度θをなすように連ねられていたが、非直線状の形状である限り、配線導体7aは、図2(b)に示すように、曲線状の形状等や、図2(c)に示すように、蛇行形状等適宜の形状とすることができる。
【0048】
上記基板本体2の製造に際しては、第1?第5の絶縁体層2c?2gを順に積層し、一体焼成すればよい。一例を図3(a),(b)及び図4(a),(b)を参照して説明する。すなわち、図3(a)に示すビア導体6a?6iが形成されている第1のセラミックグリーンシートを用意する。なお、図3(a)においても、理解を容易とするために、第1の絶縁体層2cの外形を実際よりも小さく描いているが、実際には、第2?第5の絶縁体層と同じ外形寸法を有する。
【0049】
なお、以下においては、配線5aを構成する部分のみを代表して説明することとする。
【0050】
次に、図3(b)に示すように、第1の絶縁体層2cの下面に配線導体7a及びビア導体8aを有する第2の絶縁体層2dを構成するためのセラミックグリーンシートを積層する。さらに、図4(a)に示すように、配線導体9a及びビア導体10aを有する第3の絶縁体層2eを積層する。さらに、図4(b)に示すように、第4の絶縁体層2fを積層し、最後に第5の絶縁体層2gを積層し、一体焼成すればよい。
【0051】
なお、図3(a),(b)及び図4(a),(b)では、第1の絶縁体層2cから第5の絶縁体層2gをこの順序で積層する工程を示したが、実際の製造に際しては、逆に、下方の第5の絶縁体層2g上に、第4の絶縁体層2f、第3の絶縁体層2e、第2の絶縁体層2d及び第1の絶縁体層2cを構成する各セラミックグリーンシートを積層し、一体焼成してもよい。
【0052】
図5は、第1の実施形態の変形例に係る多層配線基板における複数の配線を略図的に示す基板本体の模式的平面図である。本変形例では、第1の主面側のビア導体6aの中心と、第2の主面側のビア導体14aの中心とを結ぶ直線Z1上に、中間に位置しているビア導体8a,10a,12aの中心が位置していない。より具体的には、直線Z1の両側にビア導体8a,10a,12aが分散されている。特に、ビア導体8a,10a,12aが直線Z1内の一方側及び他方側に交互に配置されている。それによって、配線の平面形状におけるジグザグ形状の程度が第1の実施形態の場合と比べて大きくされている。従って、ビア導体6aに加わった応力をより一層効果的に緩和することが可能とされている。このように、1つの配線を構成する複数のビア導体は同一直線上に配置されている必要はなく、非直線状に配置されていることがより一層望ましい。
【0053】
なお、他の配線5b?5iにおいても、同様に、第1の主面2a側に位置しているビア導体6b?6iと、第2の主面2b側に位置しているビア導体とを結ぶ直線の両側に交互に中間のビア導体が分散配置されている。もちろん、全ての配線5a?5iにおいて、第1の主面2a側に位置しているビア導体6a?6iと、第2の主面2b側に位置しているビア導体とを結ぶ直線の両側に交互に中間のビア導体を分散配置する必要も必ずしもない。
【0054】
第1の実施形態では、各配線5a?5iにおいて、全ての配線導体が非直線状の形状とされていたが、1つの配線において、全ての配線導体が非直線状の形状を有している必要は必ずしもない。すなわち、1または2以上の配線導体が直線状の形状を有していてもよい。
【0055】
また、全ての配線5a?5iが、非直線状の配線導体を有する必要も必ずしもない。すなわち、少なくとも1つの配線において、上記非直線状の形状の配線導体を有するように構成されていればよい。
【0056】
図6(a)及び(b)は、第1の実施形態の多層配線基板のさらに他の変形例を示す各略図的正面断面図である。図6(a)に示す多層配線基板21では、第4及び第5の絶縁体層2f,2gに比べ、第1?第3の絶縁体層2c?2eの面積が小さくされている。より具体的には、第3の絶縁体層2eの面積が第4の絶縁体層2fよりも面積が小さくされており、第2の絶縁体層2d及び第1の絶縁体層2cの面積が、それぞれより一層小さくされている。すなわち、図1(b)に示したように、本実施形態では、複数の配線5a?5i間の間隔が、第1の主面2aから第2の主面2b側に向かうにつれて拡がっている。そのため、第1の実施形態では、第1の主面2a側において、ビア導体が高密度に存在している部分と、ビア導体が存在していない部分とが生じる。従って、この密度差に起因して基板本体にうねりが生じるおそれがある。
【0057】
これに対して、図6(a)に示した変形例では、ビア導体の配置密度が高くなる程、絶縁体層の面積が小さくされている。そのため、各絶縁体層におけるビア導体の配置密度差を小さくすることができる。よって、基板本体2を得るための焼成工程における基板の反りをより効果的に抑制することができる。
【0058】
図6(a)では、第3の絶縁体層2eから第1の絶縁体層2cに向かって順に面積を小さくしたが、図6(b)に示すように、第1?第3の絶縁体層2c?2eを同じ面積とし、かつ第4,第5の絶縁体層2f,2gより小さくしてもよい。
【0059】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る多層配線基板における複数の配線の配置構造を示す模式的平面図である。図8(a),(b)は、第2の実施形態における各絶縁体層に設けられているビア導体及び配線導体の位置関係を説明するための各模式的平面図である。
【0060】
本実施形態では、図8(a)において、模式的に示す第1?第4の絶縁体層32c?32fが積層されている。図8(a)?図9(b)においても、前述した図3(a)?図4(b)と同様に、複数の絶縁体層32c?32fの外形を各絶縁体層位置に設けられるビア導体及び配線導体を明確にするために異ならせて図示している。実際には、絶縁体層32c?32fは同じ面積である。
【0061】
第1の絶縁体層32cには、複数のビア導体36a,36b,36cなどがマトリックス状に設けられている。代表例として、マトリックス状に配置された複数のビア導体の内、外周に位置する外周ビア導体36a,36bと、内周ビア導体で囲まれた領域内に配置された内周ビア導体36cを説明することとする。
【0062】
図8(b)に示すように、第2の絶縁体層32dには、ビア導体38a及び配線導体37aが設けられている。配線導体37aは、ビア導体36aの下端に接続されている。すなわち、図8(a)のビア導体36aの下端は、第2の絶縁体層32d上に設けられている配線導体37aに電気的に接続されている。本実施形態においても、配線導体37aは、非直線状の形状を有している。
【0063】
他方、図9(a)に示すように、第3の絶縁体層32eには、ビア導体40a及び配線導体39aが設けられている。配線導体39aは、ビア導体40aに接続されるように、第3の絶縁体層32e上に設けられている。配線導体39aの他端側は、前述したビア導体38aの下端に電気的に接続されている。
【0064】
他方、第3の絶縁体層32eには、ビア導体40bが設けられており、第3の絶縁体層32e上には、配線導体39bが設けられている。ビア導体40bは、第3の絶縁体層32eを貫くように設けられており、第3の絶縁体層32e上に設けられた配線導体39bに接続されている。なお、図8(a)に示したビア導体36bは、第1の絶縁体層32cだけでなく、第2の絶縁体層32dをも貫通しており、配線導体39bに接続されている。
【0065】
図8(a)に示したビア導体36cは、第1の絶縁体層32cから第3の絶縁体層32eまでを貫通するように設けられている。
【0066】
他方、図9(b)に示すように、第4の絶縁体層32fには、ビア導体42aが設けられている。ビア導体42aは、第4の絶縁体層32fを貫通しており、第2の主面側に至っている。このビア導体42aに電気的に接続されるように、第4の絶縁体層32f上に配線導体41aが設けられている。配線導体41aは、前述した図9(a)のビア導体40aの下端に電気的に接続されている。このようにして、図7に示す配線35aが構成されている。
【0067】
他方、図8(a)においてビア導体36aと隣り合っているビア導体36bは、前述したように、第2の絶縁体層32dをも貫き、第3の絶縁体層32e上に設けられた配線導体39bに接続されている。そして、ビア導体40bは、図9(b)に示す配線導体41bに接続されている。配線導体41bは、第4の絶縁体層32f上に形成されている。第4の絶縁体層32fを貫通するようにビア導体42bが設けられている。ビア導体42bは、第4の絶縁体層32fの下面すなわち第2の主面に至っている。このようにして、図7に示す配線35bは、ビア導体36b、配線導体39b、ビア導体40b、配線導体41b及びビア導体42bを付与するように構成されている。
【0068】
図7に示すように、外周ビア導体であるビア導体36a及びビア導体36bは隣り合っており、ビア導体36a,36b間の距離が非常に短い。そのため、本実施形態では、ビア導体36aを含む配線35aでは、ビア導体36aは第2の絶縁体層32d上に設けられている配線導体37aに接続されている。隣のビア導体36bは、第3の絶縁体層32e上に設けられている配線導体39bに電気的に接続されている。すなわち、隣り合うビア導体36a,36bが異なる高さ位置に設けられている配線導体に電気的に接続されている。
【0069】
図7に示すように、本実施形態では、第1の絶縁体層32cに設けられている複数のビア導体が多数であるため、外周ビア導体において、隣り合うビア導体が異なる高さ位置に設けられた配線導体に電気的に接続されている。それによって、複数の配線を構成することが容易とされている。本実施形態においても、各配線35a,35bにおいては、配線導体、例えば配線導体37a,39a,41a,39b,41bが非直線状の形状を有している。よって、第1の実施形態と同様に、外部からの応力を効果的に緩和し、クラックの発生を抑制することが可能とされている。
【0070】
また、第1の主面側に露出している複数のビア導体の内、上記外周ビア導体に囲まれている内周ビア導体36cは、第1の絶縁体層32cだけでなく、第2及び第3の絶縁体層32d,32eをも貫通し、第4の絶縁体層32fの上面に至っている。そして、内周ビア導体36cは第4の絶縁体層32fの上面に設けられた配線導体41cに電気的に接続されている。配線導体41cは、第4の絶縁体層32fを貫通しているビア導体42cに接続されている。このようにして、配線35cが構成されている。
【0071】
また、本実施形態では、第1の主面側外周ビア導体36a,36bが接続されている第2の主面側外周ビア導体42a,42bに比べ、内周ビア導体36cが電気的に接続されている第2の主面側の内周ビア導体42cは内側に位置している。すなわち、ビア導体42cは、第2の主面側内周ビア導体とされている。他の内周ビア導体も同様に引き出されている。よって、第2の主面側において多数のビア導体が十分な間隔をもって配置されていることになる。従って、多数のビア導体を外部と容易に電気的に接続することができる。
【0072】
このように、本発明においては、第1の主面側の複数のビア導体を、異なる高さ位置に設けられた配線導体に電気的に接続していてもよい。それによって、多数のビア導体を無理なく主面側に引き出すように配線を構成することができる。
【0073】
図10(a)?(c)は、本発明の第3の実施形態に係る多層配線基板における複数の配線の配置を説明するための各模式的平面図である。本実施形態においても、図10(a)に示すように、第1の主面45a上において、マトリックス状に複数のビア導体が露出している。すなわち、図10(a)は、第1の絶縁体層45cの平面図であり、複数の第1の主面側外周ビア導体46a,46bと、外周ビア導体で囲まれた矩形枠状の領域内に配置された複数の第1の主面側内周ビア導体46cが設けられている。図10(b)は、第2の絶縁体層45d上に設けられている配線導体と、第2の絶縁体層45dを貫通しているビア導体を、上記第1の絶縁体層45cを貫通しているビア導体と共に示す図である。外周ビア導体46a,46bが、第2の絶縁体層45d上に設けられた配線導体47a,47bに接続されている。配線導体47a,47bは、第1の実施形態と同様に、非直線状の形状を有している。また、配線導体47a,47bは、ビア導体48a,48bに電気的に接続されている。ビア導体48a,48bは、第2の絶縁体層45dを貫通しており、さらに図10(c)に示すように、第3の絶縁体層45eをも貫通し、下面に至るように形成されている。本実施形態では、第3の絶縁体層45eの下面が第2の主面を構成している。
【0074】
他方、内周ビア導体46cを例にとると、内周ビア導体46cは、第1の絶縁体層45cだけでなく、第2の絶縁体層45dをも貫通している。そして、第3の絶縁体層45e上に設けられた配線導体49cに電気的に接続されている。配線導体49cは、第3の絶縁体層45eを貫通しているビア導体50cに電気的に接続されている。ビア導体50cは、第3の絶縁体層45eの下面すなわち第2の主面に至っている。このように、外周側に位置している外周ビア導体46a,46bは、絶縁体層45eの下面に至っている第2の主面側外周ビア導体48a,48bに接続されている。他方、内周ビア導体46cは、第2の主面側外周ビア導体であるビア導体48a,48bよりも第2の主面において内側に位置している第2の主面側内周ビア導体であるビア導体50cに接続されている。従って、本実施形態においても、多数の第1の主面側のビア導体を、第2の主面側において十分な間隔を隔てるようにして引き出すことが可能とされている。
【0075】
図11は、本発明の第4の実施形態に係る多層配線基板を説明するための略図的正面断面図である。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、一部のビア導体において、ビア導体と絶縁体層との間に空隙が形成されていること、及び第6の絶縁体層2hがさらに積層されていることにある。すなわち、第2の絶縁体層2dにおけるビア導体8aを例にとると、ビア導体8aの周囲に空隙51が形成されている。この空隙51は、ビア導体8aと第2の絶縁体層2dとの間に位置している。平面視した場合、ビア導体8aを囲む枠状の空隙51が形成されている。第2の絶縁体層2d及び第3の絶縁体層2eに位置している他のビア導体においても同様に空隙51が形成されている。このような空隙が設けられていると、たとえビア導体8aに応力が加わった場合、該応力が空隙が設けられていることにより緩和される。すなわち、配線5aにおいて、応力が空隙51の存在により効果的に吸収されることとなる。
【0076】
本実施形態の多層配線基板は、上記空隙51が設けられていることを除いては第1の実施形態とほぼ同様である。そのため、第1の実施形態と同様に、基板の反りを抑制し、基板表面の平坦性を改善することができるだけでなく、空隙51の存在により、クラックの発生をより効果的に抑制することができる。なお、空隙51は、全てのビア導体の周囲に設けられていてもよいが、好ましくは、本実施形態のように、第1の絶縁体層2cや第2の主面側の第6の絶縁体層2hに位置しているビア導体の周囲には設けないことが望ましい。それによって、耐湿性の劣化を抑制することができる。
【0077】
図12は、本発明の第4の実施形態の変形例に係る多層配線基板の要部を示す略図的正面断面図である。本実施形態では、図12においても第2の絶縁体層2dに設けられているビア導体8aと第2の絶縁体層2dとの間に空隙51が設けられている。ビア導体8aは、断面略台形の形状とされている。このように、ビア導体の断面形状についても特に限定されるものではない。
【0078】
図13は、本発明の第5の実施形態に係る多層配線基板を説明するための模式的正面断面図である。本実施形態では、図12に示した実施形態の変形例に相当する。ここでは、配線5aにおいて、ビア導体6a,8a,10a,12a,14a,16aが図示のように配置されている。言い換えれば、仮想線Pで示すように、配線5aが折れ曲がっている。この折れ曲がっている部分に相当する、すなわち配線の積層方向における変曲点に位置しているビア導体10aにおいて、ビア導体10aの周囲に空隙51が設けられている。このように、積層方向に延びる配線の変曲点及び変曲点近傍に位置しているビア導体において、ビア導体と絶縁体層との間に空隙51を設けることが望ましい。外部からの応力は特にこの変曲点及び変曲点近傍にかかりやすいため、上記構成を備えることにより、一部のビア導体の周囲に空隙を設けた構造において、より効果的に外部からの応力を緩和することができる。
【0079】
図14は、図12に示した実施形態の変形例に係る多層配線基板の略図的正面断面図である。図11では、ビア導体8a,10aの周囲に空隙51が設けられていたが、図14に示すように、ビア導体8a,10aの中心を貫くように筒状の空隙51Aを設けてもよい。同様に、図15は、図13に示した実施形態の変形例に係る多層配線基板の略図的正面断面図である。ここでも、配線5Aの変曲点に位置するビア導体10aの内部に空隙51Aが設けられている。このように、応力を吸収するための空隙はビア導体の外周と絶縁体層との間に設けてもよく、あるいはビア導体内部に設けてもよい。また、変曲点に位置するビア導体に関連して空隙が設けられる態様としても、ビア導体の外周と絶縁体層との間やビア導体内部など任意である。
【0080】
なお、図11?図14に示した実施形態及び変形例においても、第1の実施形態と同様に、複数の配線導体の内少なくとも1つの配線導体が非直線状の形状を有するため、第1の実施形態と同様に、基板の反りを抑制し、基板表面の平坦性を改善することができるとともに、クラックの発生を効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0081】
1…多層配線基板
2…基板本体
2a…第1の主面
2b…第2の主面
2c…第1の絶縁体層
2d…第2の絶縁体層
2e…第3の絶縁体層
2f…第4の絶縁体層
2g…第5の絶縁体層
2h…第6の絶縁体層
3a?3c…電極
4a?4c…端子電極
5A…配線
5a?5i…配線
6a,8a,10a,12a,14a,16a…ビア導体
6b?6i…ビア導体
7a,9a,11a,13a…配線導体
21…多層配線基板
32c…第1の絶縁体層
32d…第2の絶縁体層
32e…第3の絶縁体層
32f…第4の絶縁体層
35a,35b,35c…配線
36a,36b,36c…ビア導体
37a,39a,39b,41a,41b…配線導体
37c…配線導体
38a…ビア導体
39c…配線導体
40a…ビア導体
40b…ビア導体
41a…配線導体
41b…配線導体
41c…配線導体
42a,42b,42c…ビア導体
45a…第1の主面
45c…第1の絶縁体層
45d…第2の絶縁体層
45e…第3の絶縁体層
46a,46b,46c…ビア導体
47a,47b…配線導体
48a,48b…ビア導体
49c…配線導体
50c…ビア導体
51…空隙
51A…空隙
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の主面を有する基板本体と、前記基板本体内において、前記第1の主面から前記第2の主面側に向かって設けられている複数の配線とを備える多層配線基板であって、
前記基板本体は、積層された複数の絶縁体層を有し、
前記配線が、少なくとも1つの絶縁体層を貫通している複数のビア導体と、前記絶縁体層間に設けられており、前記ビア導体同士を接続している配線導体とを有し、少なくとも1つの配線が、非直線状の形状を有する配線導体を有し、
前記複数の絶縁体層の内、一方面が前記第1の主面を構成している絶縁体層において、複数の第1の主面側外周ビア導体と、第1の主面側外周ビア導体で構成される外周に囲まれた領域内に配置されている複数の第1の主面側内周ビア導体とが設けられており、
前記複数の第1の主面側外周ビア導体を有する複数の配線における前記第2の主面側端部に位置している複数の第2の主面側外周ビア導体で囲まれた領域が、第2の主面に垂直な方向から基板本体を透視した際に、前記第1の主面側外周ビア導体で囲まれた領域よりも大きな面積を有し、
前記第1の主面側内周ビア導体を有する複数の配線の前記第2の主面側端部に位置している複数の第2の主面側内周ビア導体が、前記第2の主面側外周ビア導体で囲まれた領域よりも内側に位置しており、
前記少なくとも1つの配線の平面形状が、複数の直線部分を有し、隣り合う直線部分が、平面視において最も遠い関係にあるビア導体同士を結ぶ仮想直線に対して、交互に逆方向に傾斜して連なっている形状、または、平面視において最も遠い関係にある前記ビア導体同士を結ぶ仮想直線に対して、途中のビア導体が交互に前記仮想直線の一方側及び他方側に位置している形状である、多層配線基板。
【請求項2】
全ての前記配線が、非直線状の形状を有する前記配線導体を有する、請求項1に記載の多層配線基板。
【請求項3】
前記配線が、前記第1の主面から前記第2の主面にまで到達するように設けられている、請求項1に記載の多層配線基板。
【請求項4】
隣り合う前記配線間の距離が、前記第1の主面側から前記第2の主面側に向かうにつれて長くなっている、請求項1?3のいずれか1項に記載の多層配線基板。
【請求項5】
前記基板本体を前記第1の主面と垂直な方向から透視した場合に、1つの前記配線を構成している複数の前記ビア導体(ビア導体が2個のものを除く)の中心が同一直線上に位置していない、請求項1?4のいずれか1項に記載の多層配線基板。
【請求項6】
1つの前記絶縁体層において前記第1の主面に平行な方向において隣り合う一方の前記ビア導体と他方のビア導体とが、異なる絶縁体層に設けられた前記配線導体に接続されている、請求項1?5のいずれか一項に記載の多層配線基板。
【請求項7】
前記1つの前記絶縁体層の一方面が前記基板本体の第1の主面を構成している、請求項6に記載の多層配線基板。
【請求項8】
前記配線導体が、第1の直線部分と、第1の直線部分の一端に連ねられており、第1の直線部分と交差する方向に延びる第2の直線部分とを有する、請求項1?7のいずれか1項に記載の多層配線基板。
【請求項9】
前記配線導体が、曲線状の形状を有する、請求項1?7のいずれか1項に記載の多層配線基板。
【請求項10】
少なくとも1つのビア導体において、該ビア導体と絶縁体層との間に空隙が形成されている、請求項1?9のいずれか1項に記載の多層配線基板。
【請求項11】
少なくとも1つのビア導体内に空隙が形成されている、請求項1?9のいずれか1項に記載の多層配線基板。
【請求項12】
前記空隙は、前記絶縁体層の積層方向における前記配線の延びる方向に沿う仮想線の折れ曲がっている点に位置する前記ビア導体に関して設けられる、請求項10または11に記載の多層配線基板。
【請求項13】
第2の主面側に位置している少なくとも1つの絶縁体層の面積に比べ、該少なくとも1つの絶縁体層よりも第1の主面側に位置している少なくとも1つの絶縁体層の面積が小さくされている、請求項4に記載の多層配線基板。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-09-15 
出願番号 特願2013-555279(P2013-555279)
審決分類 P 1 651・ 121- ZDA (H05K)
P 1 651・ 537- ZDA (H05K)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 小川 悟史  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 冨岡 和人
小柳 健悟
登録日 2015-02-13 
登録番号 特許第5692419号(P5692419)
権利者 株式会社村田製作所
発明の名称 多層配線基板  
代理人 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所  
代理人 特許業務法人宮▲崎▼・目次特許事務所  
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