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審決分類 審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B24B
審判 一部申し立て 2項進歩性  B24B
管理番号 1323532
異議申立番号 異議2016-700282  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-07 
確定日 2017-01-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第5789634号発明「ワークピースを研磨するための研磨パッド並びに化学機械研磨装置、および該化学機械研磨装置を用いてワークピースを研磨する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5789634号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5789634号の特許についての出願は、平成25年4月23日に特許出願され、平成27年8月7日にその特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1に係る特許について、特許異議申立人 山田宏基により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年5月30日付けで取消理由を通知し、平成28年7月25日付けで意見書が提出され、当審において平成28年9月27日付けで取消理由を通知し、平成28年11月24日付けで意見書が提出されたものである。


2.本件発明
「【請求項1】
ワークピースの曲面を研磨するための研磨パッドであって、
研磨面を有する弾性パッドと、
前記弾性パッドを支持する変形自在なベース層と、
前記弾性パッドと前記ベース層とを接合する粘着層とを備え、
前記粘着層は、前記弾性パッドよりも高い伸縮性を有することを特徴とする研磨パッド。」(以下「本件発明」という。)


3.取消理由の概要
当審において、本件発明に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)本件特許明細書における発明の詳細な説明の記載は、どのような粘着剤により「弾性パッドよりも高い伸縮性を有する」のか、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、請求項1に係る特許は特許法36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2)本件発明は、刊行物1(甲第1号証:特開2007-210236号公報)及び刊行物2(乙第4号証:特開平7-39561号公報)に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。


4.刊行物の記載
(1)刊行物1(段落0001、0013、0019、0025、0047、0053?0055、0058)には、レンズ、ミラー等の光学材料を研磨するための積層研磨パッドであって、研磨表面を有する弾性特性を有する研磨層と、前記研磨層を支持する支持層と、前記研磨層と前記支持層とを貼り合わせる、アクリル系接着剤からなる接着層とを備える積層研磨パッドの発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

(2)刊行物2(段落0011)には、伸縮性のある接着テープにアクリル系粘着剤が使用されるという技術的事項が記載されている。


5.判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア.特許法第36条第4項第1号について
当審において、本件発明に対して通知した取消理由の要旨は、本件特許明細書における発明の詳細な説明には、粘着剤に関して「アクリル系の粘着材」(段落【0029】)が示されるのみで、具体的にどのようなアクリル系の粘着剤により「弾性パッドよりも高い伸縮性を有する」のか、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、請求項1に係る特許は特許法36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである、というものである。
しかしながら、アクリル系粘着剤は本来の性質として高い伸縮性を有し、アクリル系粘着剤を用いると相当伸縮性が高い性質を呈することは、当業者に広く知られている事項と認められる。
例えば、刊行物2には、伸縮性のある接着テープにアクリル系粘着剤が使用されること、及び、そのような接着テープの具体的な商品名が記載されており、絆創膏に代表される医療用テープの粘着層にも、身体の動きに追従できるように伸縮性を有するアクリル系の粘着剤が使用されている。
さらに、市場で入手可能なアクリル系の粘着剤の例として、スリーエムジャパン株式会社から販売されている「スプレーのり55」が挙げられる。
してみると、アクリル系粘着剤の使用を示すことにより当業者が実施可能であるとすることは、理由があるものといえる。

また、弾性パッドの伸縮性と粘着層の伸縮性の関係は、粘着層に使用される粘着剤自体の粘性と、粘着層の厚みと、弾性パッドの厚みと、弾性パッドの材料自体の弾性などの要素に依存する。
したがって、当業者であれば、これらの要素を調整しつつアルカリ系粘着剤を使用することで、弾性パッドよりも高い伸縮性を有する粘着層を備えた研磨パッドを製作することが可能である。

以上の理由により、発明の詳細な説明の記載は、どのような粘着剤により「弾性パッドよりも高い伸縮性を有する」のか、当業者が、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、本件特許出願は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たすものである。

イ.特許法第29条第2項について
本件発明と引用発明とを対比すると、両者は次の点で相違する。
[相違点]本件発明の研磨パッドは、「ワークピースの曲面を研磨するための」ものとされ、更に「前記接着層は、前記研磨層よりも高い伸縮性を有する」のに対し、引用発明では、曲面を有する被研磨材を研磨するものの、研磨する面の形状および接着層の伸縮性について直接の特定がない点、

そこで、上記[相違点]について、以下、検討すると、
曲面を研磨する研磨パッドの接着部材が研磨層よりも高い伸縮性を有することは、刊行物1または刊行物2のいずれにも記載されていない。また、刊行物2のみをもって、一般に、曲面に対応して、積層材の接着部材を他の層より高い伸縮性とすることが、周知または慣用技術であるともいえない。

したがって、刊行物1及び刊行物2の記載からは、上記相違点にかかる構成が当業者にとって容易になし得たことであるということはできない。
よって、本件発明は、当業者が刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて容易になし得た発明であるということはできない。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア.特許法第29条第1項及び第2項について
特許異議申立人 山田宏基は、特許異議申立書において、本件発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載されているに等しい発明であり、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るもの、または、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであると主張している。
しかしながら、甲第1?3号証のいずれの証拠にも、研磨パッドが「ワークピースの曲面を研磨するための」ものであって、「前記接着層は、前記研磨層よりも高い伸縮性を有する」ことは、記載されていない。
したがって、かかる主張は理由がない。

6.むすび
以上のことから、請求項1に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-01-05 
出願番号 特願2013-90774(P2013-90774)
審決分類 P 1 652・ 536- Y (B24B)
P 1 652・ 121- Y (B24B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 亀田 貴志  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 刈間 宏信
渡邊 真
登録日 2015-08-07 
登録番号 特許第5789634号(P5789634)
権利者 株式会社荏原製作所
発明の名称 ワークピースを研磨するための研磨パッド並びに化学機械研磨装置、および該化学機械研磨装置を用いてワークピースを研磨する方法  
代理人 渡邉 勇  
代理人 廣澤 哲也  

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