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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01S
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G01S
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01S
管理番号 1323824
審判番号 不服2016-4906  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-04 
確定日 2017-02-03 
事件の表示 特願2011-207411「情報表示装置、レーダ装置、ソナー装置、及び情報表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月18日出願公開、特開2013- 68522、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年9月22日の出願であって、平成27年5月19日付けの拒絶理由の通知に対し同年7月13日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月28日付けで拒絶査定(平成28年1月5日謄本送達)(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して、平成28年4月4日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出された。
その後、当審において平成28年10月19日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、同年12月12日付けで意見書及び手続補正書(同手続補正書でした補正を、以下、「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明(以下、それぞれを「本願発明1」等という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定された、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
センサの検出内容を示す信号であるセンサ信号を取得するセンサ信号取得部と、
前記センサ信号取得部が取得したセンサ信号を入力とし第1信号処理を行う第1信号処理部、及び、前記第1信号処理部の入力と同じ前記センサ信号を入力とし前記第1信号処理と同種の信号処理であり、当該信号処理に用いるパラメータが前記第1信号処理とは異なる信号処理である第2信号処理を行う第2信号処理部を有する信号処理部と、
前記第2信号処理を行った第2情報を、前記第1信号処理を行った第1情報と異なる表示形態で、当該第1情報と同時に表示画面に表示する表示部と、
を備え、
前記第1信号処理と前記第2信号処理のうち一方では、ユーザの設定値に基づいてパラメータを調整することを特徴とする情報表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報表示装置であって、
前記センサ信号に前記第1信号処理を行うことで得られる信号レベルと、当該センサ信号に前記第2信号処理を行うことで得られる信号レベルと、が異なることを特徴とする情報表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報表示装置であって、
前記表示部は、
階調の変化を有する前記第1情報と、階調の変化のない前記第2情報と、を表示することを特徴とする情報表示装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
前記表示部は、前記第1情報と前記第2情報とで表示色を異ならせることを特徴とする情報表示装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
前記同種の信号処理は、ゲイン調整処理であることを特徴とする情報表示装置。
【請求項6】
請求項1から4までの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
前記同種の信号処理は、スキャン相関処理であることを特徴とする情報表示装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
前記第1信号処理と前記第2信号処理のうち一方では、ユーザの設定値に基づいてパラメータを調整し、他方では、パラメータを自動的に調整することを特徴とする情報表示装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の情報表示装置と、
前記センサとしてのレーダアンテナと、
を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項9】
請求項1から7までの何れか一項に記載の情報表示装置と、
前記センサとしての音波送受信装置と、
を備えることを特徴とするソナー装置。
【請求項10】
センサの検出内容を示す信号であるセンサ信号を取得するセンサ信号取得工程と、
前記センサ信号取得工程で取得したセンサ信号を入力として第1信号処理を行うとともに、前記第1信号処理の入力と同じ前記センサ信号を入力とし前記第1信号処理と同種の信号処理であり、当該信号処理に用いるパラメータが前記第1信号処理とは異なる信号処理である第2信号処理を行う信号処理工程と、
前記第2信号処理を行った第2情報を、前記第1信号処理を行った第1情報と異なる表示形態で、当該第1情報と同時に表示画面に表示する表示工程と、
を含み、
前記第1信号処理と前記第2信号処理のうち一方では、ユーザの設定値に基づいてパラメータを調整することを特徴とする情報表示方法。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、(1)この出願の請求項1?5、10、12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である特開2001-272456号公報(以下、「引用例1」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、(2)この出願の請求項1?12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用例1に記載された発明、及び特開平10-123231号公報(以下、「引用例2」という。)、特開2009-58433号公報(以下、「引用例3」という。)に記載されているような周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

2 原査定の理由についての判断
(1)引用例1
ア 記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審で付与した。以下同じ。)。
「【0016】図1は本発明の実施形態に於ける捜索レーダの要部の構成を示すブロック図である。
【0017】図中、10はレーダアンテナ、20はレーダエコーを生成し出力する信号処理部、30は信号処理部20より出力されたレーダエコーの画像展開処理を行う表示処理部、40は表示処理部で処理された画像データを貯える画像メモリ、50は画像メモリ40に貯えられたレーダエコーの画像データに従うレーダビデオ画像(図2、図4?図6参照)を表示するカラーモニタである。
【0018】31乃至34はそれぞれ上記表示処理部30の構成要素をなすもので、31は信号処理部20より出力されたレーダエコーから例えば航空機、船舶等の移動体を対象に目標探知を行う目標探知処理部であり、32は目標探知処理部31で探知した目標の追尾処理を行う追尾処理部である。
【0019】33は追尾処理部32の追尾対象にある目標のエコーに対して予め定め設定された色指定情報に従い色情報を付加する色情報付加処理部である。
【0020】34は上記色情報付加処理部33で色情報が付加された目標のエコーを上記信号処理部20より出力されたその他のエコーに合成し、色情報が付加された目標のエコーを含むレーダエコーの画像データを画像メモリ40上に展開処理する画像展開処理部である。
【0021】図2は上記カラーモニタ50に表示される本発明の第1実施形態によるレーダビデオ画像の表示例を示す図であり、ここでは特定の目標aのエコーが他のエコーと異なる色彩で表示される例を示している。
【0022】ここで上記図1および図2を参照して本発明の第1実施形態に於ける動作を説明する。
【0023】信号処理部20はレーダアンテナ10のビームスキャンによりレーダエコーを取得し、当該レーダエコーを表示処理部30に送出する。ここまでの処理は既存の捜索レーダに於ける処理と同様である。
【0024】表示処理部30に於いて、目標探知処理部31は信号処理部20より出力されたレーダエコーから特定の目標として、例えば航空機、船舶等の移動目標を探知し、その目標のエコーを追尾処理部32に送出する。追尾処理部32は目標探知処理部31で探知した目標の追尾処理を行い、当該目標のエコーを色情報付加処理部33に送出する。
【0025】色情報付加処理部33は追尾処理部32より受けた目標のエコーに対して輝度情報に加え予め定め設定された色指定情報に従い色情報を付加して画像展開処理部34に送出する。
【0026】画像展開処理部34は上記色情報付加処理部33で色情報が付加された目標のエコーを上記信号処理部20より出力されたその他のエコーに合成し、色情報が付加された目標のエコーを含むレーダエコーの画像データを画像メモリ40上に展開処理する。
【0027】この画像メモリ40上に展開されたレーダエコーの画像データは所定の表示走査タイミングで順次読み出されカラーモニタ50にレーダビデオ画像として表示される。この際のカラーモニタ50に表示されるレーダビデオ画像の表示例を図2に示している。ここでは目標探知処理部31で探知され、追尾処理部32で追尾された特定の目標aのエコーが他のエコーと異なる色彩(例えば赤色)で表示出力される。」

・上記記載(段落【0016】)より、
(ア)「捜索レーダ」との技術的事項が読み取れる。

・上記記載(段落【0018】)より、
(イ)「31乃至34はそれぞれ表示処理部30の構成要素をなす」との技術的事項が読み取れる。

・上記記載(段落【0023】)より、
(ウ)「レーダアンテナ10のビームスキャンによりレーダエコーを取得し、当該レーダエコーを表示処理部30に送出する信号処理部20」との技術的事項が読み取れる。

・上記記載(段落【0024】)より、
(エ)「信号処理部20より出力されたレーダエコーから特定の目標として、例えば航空機、船舶等の移動目標を探知し、その目標のエコーを追尾処理部32に送出する目標探知処理部31」、
(オ)「目標探知処理部31で探知した目標の追尾処理を行い、当該目標のエコーを色情報付加処理部33に送出する追尾処理部32」
との技術的事項が読み取れる。

・上記記載(段落【0025】)より、
(カ)「追尾処理部32より受けた目標のエコーに対して輝度情報に加え予め定め設定された色指定情報に従い色情報を付加して画像展開処理部34に送出する色情報付加処理部33」との技術的事項が読み取れる。

・上記記載(段落【0026】)より、
(キ)「上記色情報付加処理部33で色情報が付加された目標のエコーを上記信号処理部20より出力されたその他のエコーに合成し、色情報が付加された目標のエコーを含むレーダエコーの画像データを画像メモリ40上に展開処理する画像展開処理部34」との技術的事項が読み取れる。

・上記記載(段落【0027】)より、
(ク)「所定の表示走査タイミングで順次読み出される画像メモリ40上に展開されたレーダエコーの画像データをレーダビデオ画像として表示するカラーモニタ50」との技術的事項が読み取れる。

イ 引用発明
以上の技術的事項(ア)ないし(ク)を総合勘案すると、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。

「レーダアンテナ10のビームスキャンによりレーダエコーを取得し、当該レーダエコーを表示処理部30に送出する信号処理部20と、
信号処理部20より出力されたレーダエコーから特定の目標として、例えば航空機、船舶等の移動目標を探知し、その目標のエコーを追尾処理部32に送出する目標探知処理部31、目標探知処理部31で探知した目標の追尾処理を行い、当該目標のエコーを色情報付加処理部33に送出する追尾処理部32、追尾処理部32より受けた目標のエコーに対して輝度情報に加え予め定め設定された色指定情報に従い色情報を付加して画像展開処理部34に送出する色情報付加処理部33、及び上記色情報付加処理部33で色情報が付加された目標のエコーを上記信号処理部20より出力されたその他のエコーに合成し、色情報が付加された目標のエコーを含むレーダエコーの画像データを画像メモリ40上に展開処理する画像展開処理部34が構成要素である表示処理部30と、
所定の表示走査タイミングで順次読み出される画像メモリ40上に展開されたレーダエコーの画像データをレーダビデオ画像として表示するカラーモニタ50と、
を備える捜索レーダ」(以下、「引用発明」という。)

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された引用例2には、図面とともに、次の記載がある。
「【0009】例えば、距離の変化に対してはSTCと呼ばれる時間と共にレーダ受信機のゲインを変化させる処理が施される。STCでは、自船近くの信号に対してレーダ受信機のゲインを絞り、時間と共に受信機のゲインを大きくすることによって、自船近くのシークラッタ信号と目標信号がちょうど表示のダイナミックレンジの中に入るように調整し識別可能となるようにするものである。図6の1)はレーダ受信機から出力されるレーダ受信信号を表しており、表示のダイナミックレンジで観測すると領域Aに位置する信号はすべて飽和信号となりその中に存在する目標信号を識別して表示することができない。これに対して、図6の2)はSTCゲイン特性を表しており、1)に示したレーダ受信信号に作用させて、自船近傍の反射信号レベルを抑えた信号に変換すると、図6の3)に示したように、表示のダイナミックレンジ内にクラッタ信号と目標信号とが強度差のある信号として含まれるため、ある程度の目標映像を識別して表示することが可能となる。」

(3)引用例3
原査定の拒絶の理由に引用された引用例3には、図面とともに、次の記載がある。
「【0003】
このようなレーダ装置では、海面反射中の物標の探知や、検出頻度の低い物標の検知を容易にするために各種処理が実行される。
例えば、特許文献1では、アンテナからの距離や不要波強度を基準にして、当該距離内の範囲と当該距離外の範囲とで、異なる仕様のスキャン相関処理を選択する。ここで、スキャン相関処理とは、概略的に、現在データと、該現在データと同じ位置の過去データとの相関度に基づいて、今回の表示データを決定する処理である。」

(4)引用例4
原査定の備考欄の付記で引用された特開昭55-51322号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(a)
「第1図は全体の回路構成を示すブロック図で、1は被計量物2の荷重に応じてアナログな電圧信号を出力するロードセル、3はこのロードセル1出力をパルスにディジタル変換し、そのパルス数をカウントするアナログ・ディジタル変換器、4は単価を設定するためのテンキー、5はキログラム単価表示器6、ポンド単価表示器7、キログラム重量表示器8、ポンド重量表示器9、価格表示器10を備えた表示装置、11は上記テンキー4によって設定された単価データをキログラム及びポンドに分けてそれぞれ上記キログラム単価表示器6、ポンド単価表示器7に表示させるとともに、上記アナログ・ディジタル変換器3でカウントされたパルス数をもとに重量をキログラム及びポンドで演算処理し、得られるキログラム値を上記キログラム重量表示器8で表示させ、かつポンド値を上記ポンド重量表示器9で表示させ、さらに単価データと重量データとから価格データを演算処理して上記価格表示器10に表示させるマイクロコンピュータである。前記マイクロコンピュータ11には上述した演算処理を行なわせる処理プログラム等が格納されたリード・オンリ・メモリ(ROM)及び処理データを格納するランダム・アクセス・メモリ(RAM)が設けられている。前記マイクロコンピュータ11に設けられているRAMには第2図に示すように4桁のキログラム単価メモリ12、ポンド単価メモリ13、5桁のキログラム重量メモリ14、ポンド重量メモリ15、6桁の価格メモリ16、1桁のポンド重量小数点位置指定メモリ17、キログラム重量小数点位置指定メモリ21、5桁の入力レジスタ18、6桁の変換定数レジスタ19及び11桁の変換計算用レジスタ20等がそれぞれ形成されている。
(略)
この状態で計量操作が開始されるとマイクロコンピュ-タ11はアナログ・ディジタル変換器3からカウント数を読込み入力レジスタ18へ格納する。続いて入力レジスタ18のカウントデータをもとにポンド処理を行ない、そのポンドデータをポンド重量メモリ15に格納する。このポンド処理は30ポンド=30,000パルスとしてその比例関係から容易に行なえる。そしてポンド重量メモリ15のポンドデータをポンド重量表示器9で表示させる。
(略)
こうして入力レジスタ18に格納されたカウントデータをもとにキログラム処理を行ない、そのキログラムデータをキログラム重量メモリ14に格納する。このキログラム処理は15キログラム=30,000パルスとしてその比例関係から容易に行なえる。そしてキログラム重量メモリ14のキログラムデータをキログラム重量表示器8で表示させる。」(第2頁左上欄第15行?第3頁左上欄第19行)

(b)
「このようにポンド計量するものにおいてポンド計量表示と同時にキログラム計量表示も行なえ、ポンド計量からキログラム計量に移行するところでは実用性を向上することができる。」(第3頁左下欄第2?5行)

(5)対比・判断
ア 本願発明1について
(ア)本願発明1と引用発明とを対比する。
a レーダアンテナは目標物体を検出するものであるから、センサであるといえる。また、レーダエコーは目標物体を示す信号であるから、センサであるレーダアンテナの検出内容を示す信号であるといえる。そうすると、引用発明における「レーダアンテナ10のビームスキャンによりレーダエコーを取得し、当該レーダエコーを表示処理部30に送出する信号処理部20」は、本願発明1における「センサの検出内容を示す信号であるセンサ信号を取得するセンサ信号取得部」に相当する。

b 引用発明においては、信号処理部20より出力されたレーダエコーに対して、「目標探知処理部31」、「追尾処理部32」、及び「色情報付加処理部33」で信号処理を行うから、引用発明における「信号処理部20より出力されたレーダエコーから特定の目標として、例えば航空機、船舶等の移動目標を探知し、その目標のエコーを追尾処理部32に送出する目標探知処理部31、目標探知処理部31で探知した目標の追尾処理を行い、当該目標のエコーを色情報付加処理部33に送出する追尾処理部32、追尾処理部32より受けた目標のエコーに対して輝度情報に加え予め定め設定された色指定情報に従い色情報を付加して画像展開処理部34に送出する色情報付加処理部33」は、本願発明1における「前記センサ信号取得部が取得したセンサ信号を入力とし第1信号処理を行う第1信号処理部」に相当する。
そうすると、引用発明における「信号処理部20より出力されたレーダエコーから特定の目標として、例えば航空機、船舶等の移動目標を探知し、その目標のエコーを追尾処理部32に送出する目標探知処理部31、目標探知処理部31で探知した目標の追尾処理を行い、当該目標のエコーを色情報付加処理部33に送出する追尾処理部32、追尾処理部32より受けた目標のエコーに対して輝度情報に加え予め定め設定された色指定情報に従い色情報を付加して画像展開処理部34に送出する色情報付加処理部33、及び上記色情報付加処理部33で色情報が付加された目標のエコーを上記信号処理部20より出力されたその他のエコーに合成し、色情報が付加された目標のエコーを含むレーダエコーの画像データを画像メモリ40上に展開処理する画像展開処理部34が構成要素である表示処理部30」と、本願発明1における「前記センサ信号取得部が取得したセンサ信号を入力とし第1信号処理を行う第1信号処理部、及び、前記第1信号処理部の入力と同じ前記センサ信号を入力とし前記第1信号処理と同種の信号処理であり、当該信号処理に用いるパラメータが前記第1信号処理とは異なる信号処理である第2信号処理を行う第2信号処理部を有する信号処理部」とは、共に、「前記センサ信号取得部が取得したセンサ信号を入力とし第1信号処理を行う第1信号処理部を有する信号処理部」である点で共通する。

c 引用発明において、「カラーモニタ50」は「所定の表示走査タイミングで順次読み出される画像メモリ40上に展開されたレーダエコーの画像データをレーダビデオ画像として表示」し、「画像メモリ40上に」は「色情報が付加された目標のエコーを含むレーダエコーの画像データ」が展開処理されるから、「カラーモニタ50」は、レーダエコーの情報と、「目標探知処理部31」、「追尾処理部32」、及び「色情報付加処理部33」で信号処理した色情報が付加された目標のエコーの情報とを、異なる形態で同時に表示するといえる。そうすると、引用発明における「所定の表示走査タイミングで順次読み出される画像メモリ40上に展開されたレーダエコーの画像データをレーダビデオ画像として表示するカラーモニタ50」と、本願発明1における「前記第2信号処理を行った第2情報を、前記第1信号処理を行った第1情報と異なる表示形態で、当該第1情報と同時に表示画面に表示する表示部」とは、共に、「第2情報を、前記第1信号処理を行った第1情報と異なる表示形態で、当該第1情報と同時に表示画面に表示する表示部」である点で共通する。

d 引用発明における「捜索レーダ」は、「目標のエコー」という情報を表示するから、下記相違点1ないし3を除いて、本願発明1における「情報表示装置」に相当する。

(イ)以上の関係を整理すると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「センサの検出内容を示す信号であるセンサ信号を取得するセンサ信号取得部と、
前記センサ信号取得部が取得したセンサ信号を入力とし第1信号処理を行う第1信号処理部を有する信号処理部と、
第2情報を、前記第1信号処理を行った第1情報と異なる表示形態で、当該第1情報と同時に表示画面に表示する表示部と、
を備える情報表示装置。」

(相違点1)
本願発明1においては、「信号処理部」が「前記第1信号処理部の入力と同じ前記センサ信号を入力とし前記第1信号処理と同種の信号処理であり、当該信号処理に用いるパラメータが前記第1信号処理とは異なる信号処理である第2信号処理を行う第2信号処理部を有する」のに対し、引用発明においては、「表示処理部30」が「目標探知処理部31」、「追尾処理部32」、及び「色情報付加処理部33」での信号処理と同種の信号処理を行う信号処理部を有していない点。

(相違点2)
本願発明1においては、「表示部」が「前記第2信号処理を行った第2情報を」「表示する」のに対し、引用発明においては、「カラーモニタ50」が「レーダエコー」の情報を表示する点。

(相違点3)
本願発明1においては、「前記第1信号処理と前記第2信号処理のうち一方では、ユーザの設定値に基づいてパラメータを調整する」のに対し、引用発明においては、信号処理のパラメータの調整について特定されていない点。


(ウ)相違点の判断
事案に鑑み、まず相違点3について判断する。
本願発明1は相違点3に係る構成を有することにより、「レーダ映像を参照するユーザは、レーダ映像上に何も表示されていない場合、信号処理によって船舶を示すエコーが抑圧されているのか、船舶自体がそこに存在しないのか、が分からなくなることがある。この場合、ユーザは、上記のゲイン調整処理の設定を再び行って、船舶の存在の有無を確認する必要がある」(本願明細書段落【0010】)という課題を解決することができると認められるから、上記相違点3は実質的な相違点である。
そして、引用発明において、信号処理のパラメータをユーザの設定値に基づいて調整する動機付けは見出せないし、また、引用例2、3のいずれにも、第1信号処理と第2信号処理のうち一方で、ユーザの設定値に基づいてパラメータを調整することは記載されていないから、引用発明に引用例2、3に記載されているような周知技術を適用し、本願発明1の上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、相違点1及び2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明ではなく、また、本願発明1は、引用発明、及び引用例2、3に記載されているような周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、引用例4に記載された発明を考慮したとしても、本願発明1は当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本願発明2ないし9について
請求項2ないし9は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本願発明2ないし9は、上記ア(ウ)で本願発明1について述べたのと同様の理由により、引用発明ではなく、また、引用発明、及び引用例2、3に記載されているような周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本願発明10について
本願発明10は、情報表示装置という物の発明である本願発明1を情報表示方法という方法の発明として特定したものであるから、上記ア(ウ)で本願発明1について述べたのと同様の理由により、引用発明ではなく、また、引用発明、及び引用例2、3に記載されているような周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)小括
以上のとおりであるから、原査定の理由によって本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は、概略、以下のとおりである。

「本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



請求項1?7、9?12には、2つの信号処理のうちの一方において、「ユーザの設定値に基づいてパラメータを調整すること」が記載されていないため、「レーダ映像を参照するユーザは、レーダ映像上に何も表示されていない場合、信号処理によって船舶を示すエコーが抑圧されているのか、船舶自体がそこに存在しないのか、が分からなくなることがある。この場合、ユーザは、上記のゲイン調整処理の設定を再び行って、船舶の存在の有無を確認する必要がある」(段落【0010】)という課題を解決するための手段が反映されているとはいえず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになっている。
よって、請求項1?7、9?12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。」

2 当審拒絶理由についての判断
本件補正により、請求項1及び請求項10(本件補正前の請求項12)に「前記第1信号処理と前記第2信号処理のうち一方では、ユーザの設定値に基づいてパラメータを調整する」という記載が追加されたことにより、本件補正後の請求項1及び請求項10に上記課題を解決するための手段が反映されたため、請求項1、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし9、及び請求項10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。
したがって、当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由及び当審拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-24 
出願番号 特願2011-207411(P2011-207411)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01S)
P 1 8・ 121- WY (G01S)
P 1 8・ 113- WY (G01S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三田村 陽平  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 中塚 直樹
関根 洋之
発明の名称 情報表示装置、レーダ装置、ソナー装置、及び情報表示方法  
代理人 桂川 直己  

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