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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1323839
審判番号 不服2016-3716  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-10 
確定日 2017-01-31 
事件の表示 特願2013-500285「診断システム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月22日国際公開、WO2011/113114、平成25年 6月13日国内公表、特表2013-521953、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年3月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年3月19日、オーストラリア(AU))を国際出願日とする出願であって,平成27年2月12日付けで期間を指定して拒絶理由が通知され,請求人からは何らの応答もなく、同年11月4日付けで拒絶査定がなされ,平成28年3月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願発明は、平成28年3月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
手で持てるように構成され、支持部材を備える複合診断システムであって、該支持部材は、
膜穿通要素と、
ユーザーの身体に前記膜穿通要素を適用することによって出る体液を採取するように前記支持部材の外部に配置されている体液採取地点と、
前記支持部材内に設けられた開口部に配置された検査器材と、
前記支持部材内に配置され、前記検査器材と共に使用される生理学的に許容可能な溶液を収容するように構成されている内槽と、
溶液送出アクチュエーターであって、使用時に該溶液送出アクチュエーターの作動により前記生理学的に許容可能な溶液を前記内槽から放出させ、前記体液が前記検査器材に接触した後に前記生理学的に許容可能な溶液を前記検査器材に接触させる溶液送出アクチュエーターと、
を有し、前記体液採取地点には、使用時に前記体液を受けるようにされ、前記体液を前記検査器材に接触させる毛管が設けられている、複合診断システム。
【請求項2】
前記溶液送出アクチュエーターは手動式である、請求項1に記載の複合診断システム。
【請求項3】
前記複合診断システムは、変位、圧力差または毛管力によって制御された量の前記溶液を放出する、請求項1または2に記載の複合診断システム。
【請求項4】
前記膜穿通要素は、ランセット先端を有するランセットを備え、前記ランセットはランセット先端が前記複合診断システム内に収まる静止位置と、前記ランセット先端が前記複合診断システムから延出する作動位置との間で移動可能である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合診断システム。
【請求項5】
前記内槽は、生理学的に許容可能な溶液を収容した小袋を備えている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合診断システム。
【請求項6】
前記複合診断システムを診断機器と相互接続できるようにした相互接続要素を更に備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合診断システム。」(以下「請求項1」?「請求項6」を、それぞれ、「補正発明1」?「補正発明6」という。)

第3 刊行物の記載事項(下線は当審で付与した。)
ア 原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-68383号公報(以下、「刊行物1」という。)に記載された事項及び刊行物1に記載された発明について
(ア)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、体液移送具及び体液移送具を用いた体液検査システムに関する。」

(イ)
「【実施例2】
【0027】
更に本発明の他の実施例を図4を参照して詳細に説明する。
図4で示す実施例では、一つの支持体22に含浸部材01と希釈液貯留部21を併設した構成を示す。希釈液貯留部21は、薄いビニール袋に生理食塩水などを充填した構成であって、外部より鋭利な針、刃物によって穿刺されると破れるようになっている。
希釈液貯留部21を構成するビニール袋は、鋭利な突起物が衝突した場合破れるものであればよく、アルミパウチなど、希釈液の品質を一定に保つような素材であっても良い。
図4では、図1で示した把持部がないが、支持体22が図1よりも比較的大きいため、把持可能であり、必要により付加すればよい。
図5は、実際、ロータタイプの血液検査ユニット上に本実施例を据え置いた状態を説明する為の図である。
より少量の血液を使う場合、これを希釈して、利用するが、その希釈液貯留部21を支持体22上併設した状態で、皮膚を穿刺した部位であって、血液が滲出した部位に含浸部材01部分を置いて、血液を含浸させた後、図5で示すようにロータROに当該含浸具をセットする。その際、希釈液貯留部21も併せて希釈液収容部23に圧入収容される。
圧入時、希釈液収容部の底面から突出した穿刺具24が、希釈液貯留部21を穿刺して破り、内部の希釈液を希釈液貯留部21の外部へ流出させる構成を有する。
この様な構成により、希釈液の取り扱いを簡易にできると共に、希釈液の保管を容易にし、希釈液貯留部21から希釈液を放出する際の作業を楽にすることができる。」

(ウ)
「【実施例4】
【0031】
図7(a)は、穿刺部を具えた回転型血液検査ユニットの断面図であり、図7(b)は、その斜視図である。
71は、ロータ本体であり、PP、ポリアクリル材等よりなり、全体的に透光性を有する部材で形成されている。
72は、蓋部であり、PET、ポリアクリル、PP等よりなり接着剤、両面テープなどでロータ本体71と接合されている。
73は、接続開放面であり、指先を含浸部材74に接触させるための部分である。
74は、含浸部材であり、不織布、スポンジなど上述した多孔質材で形成されている。75は、穿刺手段であり、針状、刃状で形成され、上下に摺動可能な構成を有している。
穿刺手段の周辺は、図6で示す構成を具備し、外部の駆動手段の上下駆動と連通して、穿刺手段を上下に摺動させる構成を有している。
76は、流路であり、含浸部材74に含浸されていた血液がロータ本体71の回転により流れ出し、外方向に移動した血液を血球分離部77へ、移動させるための通路である。
77は、血球分離部であり、分離された血球を円周方向に収容する収容部771が形成され、分離後の血球が、再び血清部773戻らないように連続突起772が形成されている。
78は、分配流路であり、複数の試薬反応槽を連結するためのものである。
79は、定量流路であり、当該流路の長さ、口径により、試薬反応槽80へ供給する試
薬量が決定する。
【0032】
80は、試薬反応槽であり、内部に凍結乾燥された試薬が収容されている。試薬は、異なる成分によって、発色する。
81及び82は、導光路であり、外部からの測定光が通過する為に透光性を有する部材によって形成されている。ロータ本体、ロータ蓋部全体が透明な場合、透光性を有する場合は、不要な場合もある。
83は、軸部であり、外部駆動部との接続部分を形成する。
84は、軸受け凹部であり、計測蔵置側の構成であって、軸部83が挿入されると、内挿入面で、係止状態が形成される様な構成を有する。
85は、収容ケースであり、ロータ70を収容し、中央部に摺動開閉式のシャッター86を有する。シャッター86が開くと、ロータの接続開放面73が表れ、含浸部材74が表出する。シャッター86は、弾力性部材などによって、常時閉じた状態とし、要時、シャッター86を開いて固定し、採血後閉じるような器具が別途設けられることで、含浸部材を不用意にさわらないようにするためには好ましい構成となる。
ロータ本体71上に設けられた試薬反応槽の円周に相当する1部には、外部との光学的連結を行うための孔部87、88が形成されている。」

(エ)
「【0033】
本実施例の動作を以下に説明する。
予め、血液検査装置上にロータ70を収容した収容ケース85を載せる、その時点で、穿刺手段75は、装置側の駆動手段の駆動力が伝達されるような状態が形成されている。
収容ケース85のシャッター86は、開いており、その部分には、含浸部材74が見えてる状態で、停止している。
図7(b)で示すように指YHを含浸部材74上に載せる。装置側の駆動部が、駆動し、穿刺手段75を上方に押し上げる。これらの状態は、図6で示す動作説明と同様である。
血液が十分に含浸部材74に含浸された後、指先を離し、シャッター86を閉める。
シャッター86の開閉動作は、収容ケースが駆動する時点で、自動的に閉まる場合もある。
尚、皮膚損傷部から表出した血液が十分含浸したかどうか不明となる場合があるが、その場合、十分な血液が含浸したか、その重量、含有面積等を測定して電気的に判断しても良い。
その後、ロータ70を回転させ、含浸部材74中の血液を円周方向へ押しだし、流路76を介して移動させ、血球分離部77で、血清を分離抽出し、分配流路78を介して、個々の試薬反応槽に接続した定量流路79に充填する。
充填後、より回転数を大きくして、定量流路内の血清を試薬反応槽80へ、押し出す形で、流入させる。流入した血清と、試薬が反応して。発色した状態で、収容ケースの孔87を介して外部よりレーザ光を透過し(HH)、測色を行い、成分濃度を得る。
ロータ70の動作は、一例であり、様々な構成が例示される。
この様な血液分析ユニットと穿刺手段の組み合わせにより、採血の担当がいなくても、簡単に血液分析が行えるようになる。」

(オ)上記(ア)?(エ)の記載事項を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「穿刺部を具えた回転型血液検査ユニットであって、
(a)含浸部材74、
(b)指先を含浸部材74に接触させるための部分である接続開放面73、
(c)指を含浸部材74上に載せると、装置側の駆動部が、駆動し、上下に摺動可能な構成を有している穿刺手段75
(d)含浸部材74に含浸されていた血液がロータ本体71の回転により流れ出し、外方向に移動した血液を血球分離部77へ、移動させるための通路である流路76、
(e)複数の試薬反応槽を連結するための分配流路78、
(f)当該流路の長さ、口径により、試薬反応槽80へ供給する試薬量が決定する定量流路79、
(g)内部に凍結乾燥された試薬が収容されている試薬反応槽80、
を備えた穿刺部を具えた回転型血液検査ユニット。」(以下,「引用発明1」という。)

第4 対比
補正発明1と引用発明1とを対比すると、両者は次の一致点で一致し、各相違点で相違する。

<一致点>
「支持部材を備える複合診断システムであって、該支持部材は、
膜穿通要素と、
ユーザーの身体に前記膜穿通要素を適用することによって出る体液を採取するように前記支持部材の外部に配置されている体液採取地点と、
前記支持部材内に設けられた開口部に配置された検査器材と、
を有する、複合診断システム。」

<相違点1>
支持部材について、
補正発明1では「手で持てるように構成され」ているのに対して、
引用発明1では「手で持てるように構成され」ているか不明である点。

<相違点2>
補正発明1では「支持部材内に配置され、前記検査器材と共に使用される生理学的に許容可能な溶液を収容するように構成されている内槽と、
溶液送出アクチュエーターであって、使用時に該溶液送出アクチュエーターの作動により前記生理学的に許容可能な溶液を前記内槽から放出させ、前記体液が前記検査器材に接触した後に前記生理学的に許容可能な溶液を前記検査器材に接触させる溶液送出アクチュエーター」を備えているのに対して、
引用発明1ではそのような構成を備えていない点。

<相違点3>
体液採取地点について、
補正発明1では「 使用時に前記体液を受けるようにされ、前記体液を前記検査器材に接触させる毛管が設けられている」のに対して、
引用発明1では「含浸部材74」が設けられている点。

第5 判断
上記各相違点について検討する。
ア 相違点2について
相違点2について検討するに、原査定の拒絶の理由において引用された特開2009-542304号公報(刊行物2)には「統合型採血及び試験器具及びその使用方法」が記載され図5には「試薬移動手段(80)」の記載はあるが支持部材内に配置された内槽についての記載はなく、体液が検査器材に接触した後に生理学的に許容可能な溶液を前記検査器材に接触させる溶液送出アクチュエーターについての記載もない。
同じく、原査定の拒絶の理由において引用された特表2007-527537号公報(刊行物3)には図5に「装置の第1の部分は装置の第2の部分の中に挿入され、それにより、装置の第2の部分内の処理溶液室を覆う隔壁を貫通し、毛細管チャネル内の流体状試料および処理溶液室内の処理溶液を混ぜ合わせ分注ノズルを通して分注させることを示す図」が記載はあるが支持部材の記載もないし、体液が検査器材に接触した後に生理学的に許容可能な溶液を前記検査器材に接触させる溶液送出アクチュエーターについての記載もない。

そうすると、いずれにも「支持部材内に配置され、前記検査器材と共に使用される生理学的に許容可能な溶液を収容するように構成されている内槽と、
溶液送出アクチュエーターであって、使用時に該溶液送出アクチュエーターの作動により前記生理学的に許容可能な溶液を前記内槽から放出させ、前記体液が前記検査器材に接触した後に前記生理学的に許容可能な溶液を前記検査器材に接触させる溶液送出アクチュエーター」は記載されていないし、示唆もされていない。
また、このような構成が周知であるともいえない。
してみると、引用発明1において、「支持部材内に配置され、前記検査器材と共に使用される生理学的に許容可能な溶液を収容するように構成されている内槽と、
溶液送出アクチュエーターであって、使用時に該溶液送出アクチュエーターの作動により前記生理学的に許容可能な溶液を前記内槽から放出させ、前記体液が前記検査器材に接触した後に前記生理学的に許容可能な溶液を前記検査器材に接触させる溶液送出アクチュエーター」を備えることが容易に想到し得るものということはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、相違点1、3を検討するまでもなく、補正発明1は、当業者が引用発明1、刊行物2、3記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、補正発明2-6は、補正発明1をさらに限定したものであるので、補正発明1と同様に、当業者が引用発明1、刊行物2、3記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-17 
出願番号 特願2013-500285(P2013-500285)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
P 1 8・ 561- WY (A61B)
P 1 8・ 113- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 野田 洋平田邉 英治  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
信田 昌男
発明の名称 診断システム  
代理人 松井 孝夫  
代理人 岡部 讓  
代理人 高橋 誠一郎  
代理人 内田 浩輔  
代理人 越智 隆夫  

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