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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60B
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 B60B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B60B
管理番号 1323853
審判番号 不服2015-21438  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-03 
確定日 2017-01-30 
事件の表示 特願2012- 12341号「車輪踏面の形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月25日出願公開、特開2012-206708号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年1月24日(優先権主張 平成23年3月15日)の出願であって、平成27年2月26日付けで拒絶の理由が通知され、平成27年4月2日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年9月28日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年12月3日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、平成28年2月18日付けで前置報告書が作成され、その後、当審において同年9月6日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年10月18日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の特許を受けようとする発明は、平成28年10月18日付けでなされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「車輪のフランジの車輪幅方向反対側の端部に位置する鉄道車両の曲線通過時にレールと接触する車輪踏面部分に車輪研磨装置により微小凹凸を形成し、車両が分岐や曲線を通過する際に前記車輪のフランジの車輪幅方向反対側の端部の微小凹凸に内軌側のレールが当接することにより内軌側の横圧が小さくなるので外軌側の横圧と脱線係数が下がり、外軌側の乗り上がり脱線をし難くすることを特徴とする車輪踏面の形成方法。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
[理由1]本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
[理由2]本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物等
引用文献1: 特開2001-030897号公報
引用文献2: 特開2001-180487号公報

[理由1、2について]
引用文献1には、車輪WHのフランジの車輪幅方向反対側に位置し鉄道車両の曲線通過時にレールと接触する車輪WHの踏面TRDに車輪加工装置により微小な凹凸を形成し、走行安定性を変えずに曲線通過性能の向上を図る技術が記載されていると認められる(特に、【0013】ないし【0016】、【0023】及び第1図ないし第5図参照)。そして、引用文献1の上記車輪加工装置は、上記踏面TRDに表面粗さを与えると共に切削屑が生じることを考慮すると(特に、【0023】、【0029】)、転写によるとあるものの研磨装置として機能していると解するのが相当であり、ないしそのように車輪踏面を形成することは、当業者にとって容易になし得ることである。

[理由2について]
引用文献2には、車輪の踏面を車両の研磨装置により、粗く切削する点が記載されており(特に、【0058】ないし【0060】及び第1図参照)、該踏面に微小な凹凸が形成されるものと認められるから、引用文献1に記載された発明と、引用文献2に記載された発明を組み合わせることは、当業者が容易に想到し得ることである。

2 原査定の理由の判断
(1) 刊行物等の記載事項
ア 引用文献1には、次の記載がある(下線は当審で付与。以下同様。)。
(1a) 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄道車両の車輪に適度な表面粗さを与えるための鉄道車両の車輪加工装置および車輪加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄道車両が長時間走行を行うと、レールとの接触によって車輪の踏面に塑性変形や摩耗が生じて次第にその表面粗さが低下し、極端な場合には踏面がいわゆる鏡面化に至ってしまうことがある。このような表面粗さの低下あるいは鏡面化は、車輪とレールとの間の摩擦抵抗(以下、粘着力と称す)の低下を招き、特に降雨や降雪時、あるいは早朝など、レールと車輪との間に水が介在する際に、車輪の空転・滑走を発生させる可能性が高くなる。そして車輪の空転が多発すると、鉄道車両の時刻通りの運行が難しくなり、車輪の滑走が発生すると、車輪踏面にタイヤフラット(摩耗きず)が生じ、走行時に大きな打音が生じて沿線騒音となるばかりか、乗り心地が低下したり、軌道や輪軸、あるいは電動機が損傷しやすくなるなどの問題が生じる。
【0003】そのため、こうした課題を解決するためには、車輪の踏面に適度な表面粗さを与え、車輪とレールとの間に粘着力を確保させる必要がある。従来、タイヤフラット(摩耗きず)修正や踏面形状復元のための対策、すなわち(1)停止車両の車輪にバイト等を当てて踏面を切削する技術、(2)車両から車輪を取り外して踏面を切削する技術、といったものが粘着力確保に対しても有効な手段として知られている。さらに、粘着力向上のための手段としては、(3)車両に搭載された研磨材からなる修正子(あるいは清掃子)によって走行中に車輪の踏面を研磨する技術、といったものもよく知られている。」

(1b) 「【0014】車輪加工レール2は、走行レール1の設けられた第1の軌道(例えば、本線と車庫との間の出庫線の軌道)から軌道中心をずらした第2の軌道上で、走行レール1に平行して、鉄道車両の車輪の周長以上の長さLで設けられている。さらにトラックゲージを走行レール1と同一値とされ、走行レール1を走行する鉄道車両がこのレール2上も走行できるように構成されている。また、車輪加工レール2は、一般炭素鋼もしくは特殊鋼から、図2に示すその縦断面形状を走行レールとほぼ同形状に形成され、車輪WHを支える頂部の支持面4には、微細な複数の凹凸からなる第1の粗面5が設けられている。この第1の粗面5を含む頂部付近は、超硬度と耐摩耗性とが得られるように焼き入れが充分に施されており、車輪加工レール2上を転がりながら移動する車輪WHの踏面TRDに第1の粗面5の凹凸が転写されることで、踏面TRDに表面粗さを与えるようになっている。
【0015】また、第1の粗面5は、図3に示す車輪WHの踏面TRD(=幅Ht)のうち車輪WHの幅方向に限定された所定の幅H1からなる領域だけに表面粗さを与えるように、図2の支持面4全体の幅Hwに比べて狭い幅H2に形成されている。なお、踏面TRDにおける第2の粗面RFの幅H1は、カーブ走行時に鉄道車両の車輪WHが必要な滑りを生じるようにその値が求められている。さらに、第1の粗面5は、図1のレール2の長さL全体に亘って形成されており、これによりレール2上を転がる車輪WHの踏面TRDの全周に亘って図3の第2の粗面RFが形成されるようになっている。
【0016】図4は、この第2の粗面RFの一部を拡大した様子を示す一例である。この例では、車輪の回転方向R、すなわち車輪の周方向Rに長い略楕円からなる多数の凸部RH1とその周囲の凹部RH2とからなる凹凸が形成されている。図2に示す車輪加工レール2の第1の粗面5は、車輪の第2の粗面にこうした周方向に延びる凹凸を形成するように、その凹凸の形状が定められている。」

(1c) 「【0023】図5の出庫線RA2に戻った走行車両は、引込線RA3から本線へ進む。この走行車両は、車輪の踏面に表面粗さが与えられているので、高速でしかもレールと車輪との間に水が介在する状態で走行する際にも、粘着力が十分に確保され、車輪の空転・滑走の発生する可能性が極めて低い。しかもこのとき、車輪の踏面には図4に示すように、長径方向を矢印R方向(周方向)に向けて凹凸が形成されていて、レール・車輪間に介在する水の流れに対して抵抗が小さく、水の膜厚が薄くなるため、粘着力を容易に確保することができる。また、図3に示すように、踏面TRDのうち限定された所定幅H1にのみ表面粗さが与えられているので、曲線軌道を走行する際にも、レールに対する車輪の踏面の傾きによって表面粗さが与えられた領域とレールとの接触面積が小さくなり、曲線軌道を走行するのに必要な車輪の滑りが発生し、曲線軌道上を円滑に走行することができる。

【0028】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば以下の効果を得ることができる。請求項1に係る鉄道車両の車輪加工装置は、車輪の踏面に表面粗さを与える第2の軌道上の車輪加工部と、第2の軌道へ進路を切り換える進路転換器とを備えているので、例えば降雨や降雪時、あるいは早朝などのレールと車輪との間に水が介在しやすい際には、鉄道車両の進路を第1の軌道から第2の軌道に切り換えて車輪の踏面に表面粗さを与えることで、走行車両の車輪とレールとの間に必要な粘着力を生じさせ、車輪の空転・滑走の発生を抑制することができる。また晴天時など、高速走行でも粘着力が比較的低下しにくい際には、第2の軌道へは進路を切り換えずに鉄道車両をそのまま第1の軌道で走行させることで、車輪踏面が必要以上に消耗するのを避けることができる。したがって、車輪とレールとの間に必要な粘着力を走行時の環境の変化に対応して容易に確保することができる。さらにこの装置は、第1の軌道とは軌道中心の異なる第2の軌道上に設けられているので、第1の軌道を用いた鉄道車両の運行に大きな支障を与えることなく補修・保全作業を行うことが可能である。
【0029】請求項2に係る鉄道車両の車輪加工装置では、車輪加工部の粗面が転写されることで車輪の踏面に表面粗さを与えるので、鉄道車両を例えば低速で走行させながら短時間で踏面に表面粗さを容易に与えることができる。また、転写によって表面粗さを与えるので、切削屑があまり生じず、車輪の消耗が少ない。」

(1d) 引用文献1の図2、図3、図4には、それぞれ以下の図が示されている。



イ 引用文献2には、次の記載がある。
(2a) 「【0058】なお、上記の各実施の形態における車輪の踏面清掃装置は、踏面に付着した錆、ゴミ等を除去するものであるが、各実施の形態における研磨子4,6,4a,6aをこれらより研磨特性のが粗いもの、言い代えれば、車輪の踏面表面を切削可能な研磨特性を備えたものと交換することにより、車輪の踏面を切削し、当該車輪の摩擦抵抗を調整することができる。
【0059】即ち、車両の走行中にブレーキ動作を繰り返して行うと、車輪の踏面が徐々に削られて滑らかなツルツルとした面となり、その結果、車輪の踏面と軌道表面との間の摩擦抵抗が減少し、ブレーキが良好に効かなくなり、制動距離が長くなってしまう場合がある。
【0060】そこで、研磨子4,6又は4a,6aに代えてこれらより更に研磨面が、例えば、硬くて粗い切削用の研磨子を取り付け、車両の走行中にこの研磨子の研磨面を車輪の踏面に押付けると、踏面が研磨特性に応じて切削され、踏面の表面が粗くなるから軌道との間の摩擦抵抗が変化する。」

3 引用文献に記載された発明
(1) 引用文献1には、
ア 鉄道車両の車輪に適度な表面粗さを与えるための鉄道車両の車輪加工方法(摘示(1a)【0001】)に関し、

(ア) 車輪加工レール2の支持面4に、微細な複数の凹凸からなる第1の粗面5が設けられていること(摘示(1b)【0014】)、
(イ) 車輪加工レール2上を転がりながら移動する車輪WHの踏面TRDに第1の粗面5の凹凸が転写されることで、踏面TRDに表面粗さを与えること(摘示(1b)【0014】)、
(ウ) 第1の粗面5は、車輪WHの踏面TRDのうち、所定の幅H1からなる領域だけに表面粗さを与えるものであること(摘示(1b)【0015】)、
(エ) 車輪の周方向Rに長い略楕円からなる多数の凸部RH1とその周囲の凹部RH2とからなる凹凸が形成されること(摘示(1b)【0016】)、

(ア) 所定幅H1にのみ表面粗さが与えられているので、曲線軌道を走行する際に、レールに対する車輪の踏面の傾きによって表面粗さが与えられた領域とレールとの接触面積が小さくなり、曲線軌道を走行するのに必要な車輪の滑りが発生すること(摘示(1c)【0023】)、
(イ) 車輪の踏面に表面粗さを与えることで、走行車両の車輪とレールとの間に必要な粘着力を生じさせ、車輪の空転・滑走の発生を抑制すること(摘示(1c)【0028】)、
が記載されており、また、

(ア) 技術常識より、摘示(1d)の図3において、車輪WHの左側の膨出する部分はフランジであることを鑑みれば、摘示(1d)の図3より、上記「イ(ウ)」の所定の幅H1は、車輪WHのフランジに隣接する部分といえること、
(イ) 上記「イ(エ)」の多数の凸部RH1とその周囲の凹部RH2とからなる「凹凸」は、「微細な複数の凹凸」(上記「イ(ア)」)が「転写」(上記「イ(イ)」)されたものであるから、「微細な」ものであること、
が明らかである。

(2) これらのことから、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「車輪WHの踏面TRDのうち、フランジに隣接する所定の幅H1からなる領域に、車輪加工レール2の支持面4の第1の粗面5の凹凸を転写することで、車輪WHの周方向Rに多数の凸部RH1とその周囲の凹部RH2とからなる微細な凹凸が形成され、
曲線軌道を走行する際に、表面粗さが与えられた領域とレールとの接触面積が小さくなり、曲線軌道を走行するのに必要な車輪WHの滑りが発生する、
鉄道車両の車輪WHに適度な表面粗さを与えるための車輪加工方法。」

4 対比・判断
(1) 本願発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「車輪WH」は本願発明の「車輪」に相当し、以下同様に、「踏面TRD」は「車輪踏面」に、「フランジ」は「フランジ」に、「多数の凸部RH1とその周囲の凹部RH2とからなる微細な凹凸」は「微小凹凸」に、「曲線軌道」は「曲線」に相当する。
イ 引用発明1の「車輪加工レール2」は、車輪WHの踏面TRDに微細な凹凸を形成するものであるから、本願発明の「車輪研磨装置」とは、「車輪加工装置」である限度で一致する。
ウ 引用発明1の「車輪WHの踏面TRDのうち、フランジに隣接する所定の幅H1からなる領域」は、「曲線軌道を走行する際に、表面粗さが与えられた領域とレールとの接触面積が小さくな」るものであって、その一部は「曲線軌道を走行する際」にも接触するといえるから、本願発明の「鉄道車両の曲線通過時にレールと接触する車輪踏面部分」に相当する。
エ 引用発明1の「車輪加工方法」は「車輪踏面の形成方法」に相当する。

(2) 以上のことから、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「鉄道車両の曲線通過時にレールと接触する車輪踏面部分に車輪加工装置により微小凹凸を形成する、車輪踏面の形成方法。」

[相違点1]
本願発明においては、微小凹凸を形成する位置は、「車輪のフランジの車輪幅方向反対側の端部」であるのに対し、引用発明1では「フランジに隣接する所定の幅H1からなる領域」である点。

[相違点2]
本願発明においては、微小凹凸を形成する車輪加工装置は、「車輪研磨装置」であるのに対し、引用発明1では「車輪加工レール2」である点。

[相違点3]
本願発明においては、「車両が分岐や曲線を通過する際に前記車輪のフランジの車輪幅方向反対側の端部の微小凹凸に内軌側のレールが当接することにより内軌側の横圧が小さくなるので外軌側の横圧と脱線係数が下がり、外軌側の乗り上がり脱線をし難くする」のに対し、引用発明1では「曲線軌道を走行する際に、表面粗さが与えられた領域とレールとの接触面積が小さくなり、曲線軌道を走行するのに必要な車輪の滑りが発生する」点。

(3) 判断
ア 理由1について
上記「(2)」のとおり、本願発明と引用発明1との間には、相違点が存在するから、本願発明は、引用文献1に記載された発明(引用発明1)ではない。

イ 理由2について
(ア) 事案に鑑み、相違点3について検討する。
a まず、本願発明の「車両が分岐や曲線を通過する際に…微小凹凸に内軌側のレールが当接することにより内軌側の横圧が小さくなる」との事項について、「微小凹凸」が当接することにより「横圧が小さくなるので外軌側の横圧と脱線係数が下が」ることの理由は、本願明細書の【0003】、【0007】、【0009】等の記載、及び、技術常識を参酌すれば、「微小凹凸」によって摩擦係数が低減することに起因するものであることと理解できる。
b これに対し、引用発明1の「微細な凹凸」は、引用文献1の「走行車両の車輪とレールとの間に必要な粘着力を生じさせ、車輪の空転・滑走の発生を抑制する」(上記「(1)ウ(イ)」、摘示(1c)【0028】)との記載によれば、本願発明とは逆に、摩擦係数を増加させる作用を奏するものであって、曲線軌道走行時には、これとレールとの接触面積を減らすことにより、「車輪の滑りが発生する」ものである。
c よって、本願発明と逆の、摩擦係数を増加させる作用を奏するためのものである引用発明1の「微細な凹凸」から、本願発明の相違点3に係る「微小凹凸に内軌側のレールが当接することにより内軌側の横圧が小さくなるので外軌側の横圧と脱線係数が下がり、外軌側の乗り上がり脱線をし難くする」という事項に想到することは当業者が容易になし得るものとはいえない。
d 引用文献2に記載されるものも、摘示(2a)の【0059】の「車輪の踏面と軌道表面との間の摩擦抵抗が減少し、ブレーキが良好に効かなくなり、制動距離が長くなってしまう場合がある」との記載から明らかなように、車輪の踏面表面を切削することは、摩擦係数を増加させる作用を奏するためのものであるから、上記「c」で検討したのと同様の理由により、引用発明1及び引用文献2の記載事項に基いて、本願発明の相違点3に係る事項に想到することは当業者が容易になし得るものとはいえない。
(イ) したがって、相違点1及び2について判断するまでもなく、本願発明は、当業者が引用発明1及び引用文献2の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4) 小括
本願の請求項2に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであり、請求項3に係る発明は、本願発明において「車輪研磨装置により微小凹凸を形成」することに代えて「車輪削正時に凸部を付けて削正」したものに相当し、請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に、引用文献1に記載された発明(引用発明1)ではないし、また、当業者が引用発明1及び引用文献2の記載事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
平成27年12月3日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



請求項4の「反フランジ側の端面から前記凸部の中心部との距離が28mmであり」との記載に関し、「反フランジ側の端面から前記凸部の中心部との距離」の具体的な値は、願書に最初に添付した明細書の【0021】に「例えば、14mmである」と記載される以外には何ら記載されていないから(なお、請求人は補正の根拠を示していない)、当該請求項4に係る補正は願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

2 当審拒絶理由の判断
平成28年10月18日付け手続補正書において、本願の請求項4は、「反フランジ側の端面から前記凸部の中心部との距離が14mmであり」と補正され、当該請求項4に係る補正は願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。

よって当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-13 
出願番号 特願2012-12341(P2012-12341)
審決分類 P 1 8・ 55- WY (B60B)
P 1 8・ 121- WY (B60B)
P 1 8・ 113- WY (B60B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柳楽 隆昌  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 小原 一郎
氏原 康宏
発明の名称 車輪踏面の形成方法  
代理人 清水 守  

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