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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09J
管理番号 1323886
審判番号 不服2015-5286  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-19 
確定日 2017-01-11 
事件の表示 特願2012-543140「光学的に拡散性である接着剤及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月16日国際公開、WO2011/071689、平成25年 4月18日国内公表、特表2013-513013〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)11月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年(平成21年)12月8日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年7月22日付けで手続補正書が提出され、平成26年3月14日付けで拒絶理由が通知され、同年6月12日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月1日付けで拒絶理由が通知され、同年10月7日付けで意見書及び誤訳訂正書が提出され、同年11月20日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年3月19日付けで拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

2.本願発明
本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年10月7日付けの誤訳訂正書によって補正された特許請求の範囲の請求項3に記載された、次のとおりのものと認める。
「第1の基材と接触した光学的に拡散性である接着剤を含む物品であって、前記光学的に拡散性である接着剤が、
光学的に透明な接着剤マトリックスと、
前記光学的に透明な接着剤マトリックス内に分散された第1の粒子であって、前記第1の粒子が第1の有機ポリマーを含む、第1の粒子と、
光学的に透明な接着剤マトリックス内に分散された第2の粒子であって、前記第2の粒子が第2の有機ポリマーを含む、第2の粒子と、を含み、
前記第1の粒子と前記第2の粒子が、異なる平均粒子サイズを有し、並びに前記第1の粒子と前記第2の粒子が、前記光学的に透明な接着剤マトリックスよりも高い屈折率を有し、前記第1の有機ポリマー及び前記第2の有機ポリマーがポリメチルメタクリレートを含む、物品。」

3.原査定の理由の概要
本願発明(本願の請求項3に係る発明)に対する原査定の理由は、概ね次のとおりである。
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開平11-142618号公報
引用文献2:特開2005-263994号公報
(備考)
引用文献1記載の発明における光拡散粒子の材質として、引用文献2に記載されているようにPMMA粒子を採用し、本願発明を構成することは当業者が容易に想到し得たことであり、その効果についても予測を超えるものではない。

4.引用例
(1)引用例の記載事項
ア 引用例1(特開平11-142618号公報)
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平11-142618号公報(以下、「引用例1」という。)には、「光拡散シート」(発明の名称)について、次の事項が記載されている(原文にない下線は、当審が付与した。以下、同じ。)。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 粒子を樹脂中に分散させた粒子分散型の光拡散シートにおいて、粒径分布50%以下で平均粒径の異なる粒子が2種類以上組み合わせて用いられていることを特徴とする光拡散シート。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示素子の視野角特性の改善等に用いることができる光拡散シートに関するものである。」
(ウ)「【0006】粒子分散型の光拡散シートは、透明なマトリクス樹脂中に透明な光拡散粒子を充填し、マトリクスと粒子の間に屈折率差を生じさせることでマトリクスと粒子の界面で屈折現象を起こし、光を拡散するシートである。この光拡散シートの光拡散性は、バインダーと樹脂の屈折率差、及び光が透過する粒子数(粒子濃度、光拡散層の厚み)などによって決定される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記のような液晶表示素子の視野角特性を改善するための光拡散シートにおいては、樹脂中に分散させる粒子の粒径分布が狭いほど、シートを通して見る像の滲みが少なくなるので好ましい。しかしながら、このような粒径分布の狭い粒子を用いて作製された光拡散シートは、透過光が着色するという問題があった。すなわち、このような光拡散シートを用いると、無彩色表示ができなくなり、カラー表示を行おうとした場合、色純度が低下してしまうという問題を生じた。
【0008】本発明の目的は、透過光の着色を改善することがきる光拡散シートを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の光拡散シートは、粒子を樹脂中に分散させた粒子分散型の光拡散シートであり、粒径分布50%以下で平均粒径の異なる粒子が2種類以上組み合わせて用いられていることを特徴とする光拡散シートである。
【0010】本発明において、粒子を分散させる樹脂としては、透明性を有する樹脂が好ましく、例えば、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂などを用いることができる。」
(エ)「【0031】実施例2(混合系サンプルの作製)
上記参考例における光拡散性粘着シート(A)に用いた粒子と、光拡散性粘着シート(B)に用いた粒子とを混合して樹脂中に分散し、本発明に従う光拡散シートを作製した。具体的には、架橋ポリエチレン系の平均粒径1.1μm、粒径分布15.4%の粒子0.08gと、架橋ポリスチレン系の平均粒径6.1μm、粒径分布17.2%の粒子0.53gと、アクリル系粘着剤(固形分17重量%)100gと、トルエン34.85gをホモミキサーで混合し、固形分13重量%の樹脂溶液を得た。
【0032】離型処理が施されたPETフィルムの上にアプリケーターを用いて、上記の樹脂溶液を乾燥時の厚みが20μmになるように塗工し、100℃のギヤオーブンで2分間乾燥し、0.5mm厚のガラス板上にラミネーターで貼り合わせ、図2に示すような、ガラス板1の上に光拡散性粘着層5及び離型PETフィルム2が積層された混合系サンプルを得た。
【0033】離型PETフィルム2を剥ぎ取り、得られた混合系サンプルの分光透過率を測定した。測定結果を表3及び図6に示す。」
(オ)【図2】


イ 引用例2(特開2005-263994号公報)
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2005-263994号公報(以下、「引用例2」という。)には、「光拡散シート」(発明の名称)について、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、光拡散反射遮光性両面粘着テープに関し、より詳細には、液晶パネル、有機ELパネル、タッチパネル等の各種のフラットパネル型ディスプレイ装置を組み立てるに際して、各種のユニット部材を貼合接着させるのに用いる光拡散反射機能を有する遮光性両面粘着テープ及びそれを貼合装着させて表示輝度を向上させてディスプレイ性を改善させてなるバックライト又はフロントライト方式のフラットパネル型ディスプレイ装置に関する。」
(イ)「【0023】
このような光拡散、光反射機能を効果的に発揮させるために、本発明によって、光透過率が80%以上の透明粘着剤中に、この粘着剤の屈折率(n1)とは異なる屈折率(n2)の微細粒子を分散させて、JIS K7105に準拠させて得られるヘイズ(Hz、%)値が10以上で、60を超えない範囲にある粘着剤層を設けることによって、この粘着剤層7が、その下地面の光反射相5との組み合わせ構成下に効果的に発揮させる光拡散反射機能である。」
(ウ)「【0036】
そこで、このような粘着剤層(又は透明粘着剤層)として、本発明において、例えば、装着時のハンドリング性から転写性及び/又は本発明の目的である光遮光性、光隠蔽性を損ねさせない観点から耐ブリスター性に富む感圧接着性のアクリル系透明粘着剤を適宜好適に使用することができる。このような透明粘着剤として、例えば、既に本発明者が特願2003-188831として特許出願されている粘着剤であって、重量平均分子量(Mw)が100万以上で、Tgが0℃以下のアクリル系ポリマーの100重量部当たり、Tgが0?100℃で、軟化点が50?150℃である重合ロジンエステルの粘着付与樹脂の3?7重量部と、官能基のモル数比でアクリル系ポリマー官能基1%の添加でゲル分率が50%以上であるエポキシ系架橋剤の0.001?0.5重量部を含有する粘着剤を適宜好適に使用することができる。そこで、本発明において、この主粘着樹脂成分であるアクリル系ポリマーに係わって、その重量平均分子量が100万以下では、通常、低架橋度で高ゲル分率にはならない。また、その重量平均分子量が100万以上であっても高架橋度にしなければ高ゲル分率とならない系では、プラスチックフィルムのハガレや発泡を防止させ難い傾向にある。また、粘着付与樹脂に係わって、その添加量が、下限値の3重量部未満では、通常、プラスチックフィルムに対する密着性が発揮され難い。また、上限値の7重量部を超えると粘着剤層の光透過性の低下やヘイズが高めの粘着剤となる。更には、この粘着付与樹脂に係わって、Tgが0℃以下で、軟化点が50℃以下では加熱時に粘着剤層の凝集力を低下させて発泡の原因となる。また、Tgが100℃以上で、軟化点が150℃以上では、主粘着剤樹脂成分のアクリル系ポリマーとの相溶性が低下して、粘着剤表面にブリードし、特に加熱時にブリード層が関与してハガレ発生の要因となる。」
(エ)「【0044】
(合成例1:アクリル系耐ブリスター性透明粘着剤の調製)
窒素置換可能な4ツ口フラスコに、アクリル酸ブチルエステル97部、アクリル酸3部、酢酸エチル120部トルエン10部を入れ、窒素置換下で68℃まで加熱し、アゾビスイソブチロニトリル0.07部を投入し、重合を開始する。重合開始後2時間後にアゾビスイソブチロニトリル0.15部と酢酸エチル20部を10分で滴下投入し、更に重合開始後6時間30分で酢酸エチルを200部追加させて重合を終了させアクリル系ポリマー溶液を得た。GPC法にて重量平均分子量を測定したところ、110万であった。次いで、このアクリル系ポリマー溶液のアクリル系ポリマーの100部に対し、エステルガム10D(理化ファインテック製、Tg70℃、軟化点110℃の重合ロジンエステル)5部、アクリル系の耐ブリスター性透明粘着剤溶液(PSA1)を調製した。
【0045】
この粘着剤溶液(PSA1)にテトラッドC(三菱ガス化学製、エポキシ系硬化剤)を0.05部混合して、剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム製MRX38)の剥離処理面にドクターブレードで乾燥後の粘着剤層厚が20μmになるように塗工し、粘着剤樹脂面に剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム製MRF25)を貼合して室温で7日熟成した。この粘着樹脂層のゲル分率測定結果は75%、耐ブリスター試験結果は0.9、粘着力12(N/25mm)、全光線透過率は92.1%、ヘイズ(Hz)は0.5%、屈折率は1.47であった。」
(オ)「【0048】
(合成例4 光拡散反射粘着剤の調製)
この粘着剤溶液(PSA1)に綜研化学(株)製ケミスノーMX1000(メタクリル樹脂微粒子、屈折率1.50、平均粒径10)を15部、テトラッドC(三菱ガス化学製、エポキシ系硬化剤)を0.05部混合して、剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム製MRX38)の剥離処理面にドクターブレードで乾燥後の粘着剤層厚が20μmになるように塗工し、粘着剤樹脂面に剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム製MRF25)を貼合して室温で7日熟成した。この粘着樹脂層のゲル分率測定結果は70%、耐ブリスター試験結果は0.8、粘着力9(N/25mm)、全光線透過率は91.5%、ヘイズは50%、であった。」

(2)引用例に記載された事項
ア 引用例1に記載された発明(引用発明)
(a)上記(1)ア(ア)から、引用例1には、粒子を樹脂中に分散させた粒子分散型の光拡散シートにおいて、粒径分布50%以下で平均粒径の異なる粒子が2種類以上組み合わせて用いられている光拡散シートが記載されていることがわかる。
(b)上記(1)ア(ウ)から、「粒子を樹脂中に分散させた粒子分散型の光拡散シート」とは、「透明なマトリクス樹脂中に透明な光拡散粒子を充填し、マトリクスと粒子の間に屈折率差を生じさせることでマトリクスと粒子の界面で屈折現象を起こし、光を拡散するシート」であることがわかる。
(c)上記(1)ア(エ)から、「粒子を樹脂中に分散させた粒子分散型の光拡散シート」を具体化した「実施例2」は、「架橋ポリエチレン系の平均粒径1.1μm、粒径分布15.4%の粒子0.08gと、架橋ポリスチレン系の平均粒径6.1μm、粒径分布17.2%の粒子0.53gと、アクリル系粘着剤(固形分17重量%)100gと、トルエン34.85gをホモミキサーで混合し、固形分13重量%の樹脂溶液を得」て、「離型処理が施されたPETフィルムの上にアプリケーターを用いて、上記の樹脂溶液を乾燥時の厚みが20μmになるように塗工し、100℃のギヤオーブンで2分間乾燥し、0.5mm厚のガラス板上にラミネーターで貼り合わせ」て得られた、「ガラス板1の上に光拡散性粘着層5及び離型PETフィルム2が積層された混合系サンプル」から、「離型PETフィルム2を剥ぎ取」って「得られた」「混合系サンプル」であって、該「離型PETフィルム2を剥ぎ取」って「得られた」「ガラス板上に」「光拡散性粘着層5」を有する「混合系サンプル」は、上記(a)における「粒子を樹脂中に分散させた粒子分散型の光拡散シート」に相当する。
(d)上記(c)における「架橋ポリエチレン系の平均粒径1.1μm、粒径分布15.4%の粒子0.08g」及び「架橋ポリスチレン系の平均粒径6.1μm、粒径分布17.2%の粒子0.53」は上記(b)における「光拡散粒子」(または、単に、「粒子」とも表現される。)に相当する。
そして、上記(c)における「架橋ポリエチレン系の平均粒径1.1μm、粒径分布15.4%の粒子0.08gと、架橋ポリスチレン系の平均粒径6.1μm、粒径分布17.2%の粒子0.53gと、アクリル系粘着剤(固形分17重量%)100gと、トルエン34.85gをホモミキサーで混合し」て得られた「固形分13重量%の樹脂溶液」は、トルエンはアクリル系粘着剤に対しては溶剤として働き、「架橋ポリエチレン系」及び「架橋ポリスチレン系」の「粒子」は、常温ではトルエンに対しては不溶であることは技術常識であるから、該「固形分13重量%の樹脂溶液」は、「アクリル系粘着剤(固形分17重量%)」がトルエンで希釈されたものに、「架橋ポリエチレン系」及び「架橋ポリスチレン系」の「粒子」が分散されたものと解することができる。
また、該「固形分13重量%の樹脂溶液」は、「離型処理が施されたPETフィルムの上にアプリケーターを用いて、上記の樹脂溶液を乾燥時の厚みが20μmになるように塗工し、100℃のギヤオーブンで2分間乾燥」される、すなわち、「アクリル系粘着剤(固形分17重量%)」がトルエンで希釈されたものが、「100℃のギヤオーブンで2分間乾燥」されてトルエンが揮散することにより、「光拡散性粘着層5」が形成されるのであるから、該「アクリル系粘着剤(固形分17重量%)」は、上記(b)における「マトリクス樹脂」(または、単に、「マトリクス」とも表現される。)に相当する。

(e)したがって、引用例1には、
「透明なマトリクス樹脂中に透明な光拡散粒子を充填し、マトリクスと粒子の間に屈折率差を生じさせることでマトリクスと粒子の界面で屈折現象を起こす、光拡散粒子がマトリクス樹脂中に分散した粒子分散型の光拡散シートであって、
架橋ポリエチレン系の平均粒径1.1μm、粒径分布15.4%の粒子、及び、架橋ポリスチレン系の平均粒径6.1μm、粒径分布17.2%の粒子とからなる光拡散粒子と、アクリル系粘着剤からなる透明なマトリクス樹脂を含む光拡散性粘着層をガラス板1の上に有し、
該光拡散シートは、
架橋ポリエチレン系の平均粒径1.1μm、粒径分布15.4%の粒子0.08g、と、架橋ポリスチレン系の平均粒径6.1μm、粒径分布17.2%の粒子0.53gと、アクリル系粘着剤(固形分17重量%)100gと、トルエン34.85gとをホモミキサーで混合して、固形分13重量%の樹脂溶液を得て、離型処理が施されたPETフィルムの上にアプリケーターを用いて、該樹脂溶液を乾燥時の厚みが20μmになるように塗工し、100℃のギヤオーブンで2分間乾燥し(てトルエンを揮散させ)、0.5mm厚のガラス板上にラミネーターで貼り合わせて得られた、ガラス板1の上に光拡散性粘着層5及び離型PETフィルム2が積層されて作製された混合系サンプルから、離型PETフィルム2を剥ぎ取って得られた光拡散シート。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

イ 引用例2に記載された事項
(a)上記(1)イ(ア)より、引用例2には、光拡散反射機能を有する遮光性両面粘着テープが記載されていることがわかる。
(b)上記(1)イ(イ)より、該遮光性両面粘着テープの粘着剤層は、光透過率が80%以上の透明粘着剤中に、この粘着剤の屈折率(n1)とは異なる屈折率(n2)の微細粒子を分散させたものであることがわかる。
(c)上記(1)イ(ウ)より、該粘着剤層は、例えば、重量平均分子量(Mw)が100万以上で、Tgが0℃以下のアクリル系ポリマーの100重量部当たり、Tgが0?100℃で、軟化点が50?150℃である重合ロジンエステルの粘着付与樹脂の3?7重量部と、官能基のモル数比でアクリル系ポリマー官能基1%の添加でゲル分率が50%以上であるエポキシ系架橋剤の0.001?0.5重量部を含有する粘着剤であることがわかる。
(d)上記(1)イ(エ)の「次いで、このアクリル系ポリマー溶液のアクリル系ポリマーの100部に対し、エステルガム10D(理化ファインテック製、Tg70℃、軟化点110℃の重合ロジンエステル)5部、アクリル系の耐ブリスター性透明粘着剤溶液(PSA1)を調製した。」という記載からは、「エステルガム10D(理化ファインテック製、Tg70℃、軟化点110℃の重合ロジンエステル)5部」をどのように用いたのかは明確ではないものの、上記(c)から、「粘着剤層」は、「アクリル系ポリマー」と「重合ロジンエステル」と「エポキシ系架橋剤」とが含有されているものであるから、上記「次いで、このアクリル系ポリマー溶液のアクリル系ポリマーの100部に対し、エステルガム10D(理化ファインテック製、Tg70℃、軟化点110℃の重合ロジンエステル)5部、アクリル系の耐ブリスター性透明粘着剤溶液(PSA1)を調製した。」という記載は、「次いで、このアクリル系ポリマー溶液のアクリル系ポリマーの100部に対し、エステルガム10D(理化ファインテック製、Tg70℃、軟化点110℃の重合ロジンエステル)5部を加え、アクリル系の耐ブリスター性透明粘着剤溶液(PSA1)を調製した。」と解するべきである。
そうすると、上記(1)イ(エ)から、「窒素置換可能な4ツ口フラスコに、アクリル酸ブチルエステル97部、アクリル酸3部、酢酸エチル120部トルエン10部を入れ、窒素置換下で68℃まで加熱し、アゾビスイソブチロニトリル0.07部を投入し、重合を開始」し、「重合開始後2時間後にアゾビスイソブチロニトリル0.15部と酢酸エチル20部を10分で滴下投入し、更に重合開始後6時間30分で酢酸エチルを200部追加させて重合を終了させアクリル系ポリマー溶液を得」て、「次いで、このアクリル系ポリマー溶液のアクリル系ポリマーの100部に対し、エステルガム10D(理化ファインテック製、Tg70℃、軟化点110℃の重合ロジンエステル)5部」を加えて得られた「アクリル系の耐ブリスター性透明粘着剤溶液(PSA1)」に、「テトラッドC(三菱ガス化学製、エポキシ系硬化剤)を0.05部混合して」、「剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム製MRX38)の剥離処理面にドクターブレードで乾燥後の粘着剤層厚が20μmになるように塗工し、粘着剤樹脂面に剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム製MRF25)を貼合して室温で7日熟成」することで得られたものが「遮光性両面粘着テープ」であり、これの「粘着剤樹脂」の屈折率は、上記(1)イ(エ)の【0045】の同様に作製された粘着樹脂層について「屈折率は1.47であった。」という記載から、1.47であることがわかる。
(e)上記(1)イ(オ)の「光拡散反射粘着剤」は、上記(d)からみて、「アクリル系の耐ブリスター性透明粘着剤溶液(PSA1)」に、「テトラッドC(三菱ガス化学製、エポキシ系硬化剤)を0.05部混合して」得られた屈折率1.47の「粘着剤樹脂」に、屈折率1.50の「メタクリル樹脂微粒子」が分散したものと解することができる。
(f)「メタクリル樹脂微粒子」は透明であることは明らかであるから(必要であれば、上記(1)イ(エ)の「合成例4」に用いられた「メタクリル樹脂微粒子」の具体例である「綜研化学(株)製ケミスノーMX1000」について記載された、特開2006-343425号公報の【0019】の「透明微粒子として、不融性アクリル系重合微粒子(商品名:ケミスノーMX-1000、綜研化学社製)・・・を用意し」という記載を参照。)、上記(a)?(e)から、引用例2には、アクリル系の耐ブリスター性透明粘着剤溶液(PSA1)に、テトラッドC(三菱ガス化学製、エポキシ系硬化剤)を0.05部混合して得られた屈折率1.47の、光透過率が80%以上の粘着剤樹脂に、屈折率1.50の透明なメタクリル樹脂微粒子を分散させた「遮光性両面粘着テープの光拡散反射機能を有する粘着剤層」が開示されていると認められる。

5.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(a)引用発明の「ガラス板1」、「光拡散性粘着層」、「アクリル系粘着剤からなる透明なマトリクス樹脂」及び「光拡散シート」は、本願発明の「基材」、「光学的に拡散性である接着剤」、「光学的に透明な接着剤マトリックス」及び「物品」にそれぞれ相当する。
(b)引用発明の「アクリル系粘着剤からなる透明なマトリクス樹脂を含む光拡散性粘着層」を「ガラス板1の上に有」する構成は、「第1の基材と接触した光学的に拡散性である接着剤を含む」構成に相当する。
(c)引用発明の「架橋ポリエチレン系の平均粒径1.1μm、粒径分布15.4%の粒子」及び「架橋ポリスチレン系の平均粒径6.1μm、粒径分布17.2%の粒子」は、「アクリル系粘着剤からなる透明なマトリクス樹脂」に分散したものであり、本願発明の「光学的に透明な接着剤マトリックス内に分散された第1の粒子」及び「光学的に透明な接着剤マトリックス内に分散された第2の粒子」にそれぞれ相当し、引用発明の「架橋ポリエチレン系」と、本願発明の「有機ポリマー」とは、「有機ポリマー」である点で共通する。
また、「架橋ポリエチレン系の平均粒径1.1μm、粒径分布15.4%の粒子」と「架橋ポリスチレン系の平均粒径6.1μm、粒径分布17.2%の粒子」の粒径は異なることから、それぞれの粒径は、本願発明「前記第1の粒子と前記第2の粒子が、異なる平均粒子サイズを有」する構成に相当する。

(d)そうすると、本願発明と引用発明とは、
「第1の基材と接触した光学的に拡散性である接着剤を含む物品であって、前記光学的に拡散性である接着剤が、
光学的に透明な接着剤マトリックスと、
前記光学的に透明な接着剤マトリックス内に分散された第1の粒子であって、前記第1の粒子が第1の有機ポリマーを含む、第1の粒子と、
光学的に透明な接着剤マトリックス内に分散された第2の粒子であって、前記第2の粒子が第2の有機ポリマーを含む、第2の粒子と、を含み、
前記第1の粒子と前記第2の粒子が、異なる平均粒子サイズを有する物品。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
本願発明の「第1の粒子」及び「第2の粒子」は、「光学的に透明な接着剤マトリックスよりも高い屈折率を有」し、「ポリメチルメタクリレートを含む」のに対し、引用発明の「架橋ポリエチレン系の平均粒径1.1μm、粒径分布15.4%の粒子」及び「架橋ポリスチレン系の平均粒径6.1μm、粒径分布17.2%の粒子」は、「架橋ポリエチレン系」及び「架橋ポリスチレン系」であって、その屈折率は、「アクリル系粘着剤からなる透明なマトリクス樹脂」の屈折率とは異なっているといえる(材が異なることから、屈折率も異なるといえる)ものの、それらの大小関係は不明である点。

(2)判断
相違点について検討する。
上記4.(2)イ(f)で述べたように、引用例2には、「アクリル系の耐ブリスター性透明粘着剤溶液(PSA1)に、テトラッドC(三菱ガス化学製、エポキシ系硬化剤)を0.05部混合して得られた屈折率1.47の、光透過率が80%以上の粘着剤樹脂に、屈折率1.50のメタクリル樹脂微粒子を分散させた遮光性両面粘着テープの光拡散反射機能を有する粘着剤層」が開示されている。
ここで、「アクリル系の耐ブリスター性透明粘着剤溶液(PSA1)に、テトラッドC(三菱ガス化学製、エポキシ系硬化剤)を0.05部混合して得られた屈折率1.47の、光透過率が80%以上の粘着剤樹脂」は、引用発明における「アクリル系粘着剤からなる透明なマトリクス樹脂」に当たることから、引用例2には、アクリル系粘着剤からなる透明なマトリクス樹脂に、マトリクス樹脂よりも屈折率の大きい透明なメタクリル樹脂微粒子を分散させて、光学的に拡散性のある粘着層を形成することが開示されているということができる。
そして、上記4.(1)ア(ア)及び(ウ)の「粒子分散型の光拡散シートは、透明なマトリクス樹脂中に透明な光拡散粒子を充填し、マトリクスと粒子の間に屈折率差を生じさせることでマトリクスと粒子の界面で屈折現象を起こし、光を拡散するシートである。この光拡散シートの光拡散性は、バインダーと樹脂の屈折率差、及び光が透過する粒子数(粒子濃度、光拡散層の厚み)などによって決定される。」という引用例1の記載からみて、引用発明において、光拡散粒子の材質は、架橋ポリエチレン系及び架橋ポリスチレン系に限定されるものではなく、マトリクス樹脂とは屈折率の異なるものであって、マトリクス樹脂中に分散する透明な粒子であればよいことが理解できる。
そうすると、引用発明の「架橋ポリエチレン系の平均粒径1.1μm、粒径分布15.4%の粒子」及び「架橋ポリスチレン系の平均粒径6.1μm、粒径分布17.2%の粒子」の材質として、引用例2の記載に基づき、異なる平均粒子サイズを有する2種類の「架橋ポリエチレン系」及び「架橋ポリスチレン系」に替えて、「アクリル系粘着剤からなる透明なマトリクス樹脂」の屈折率よりも大きい、異なる平均粒子サイズを有する2種類の「メタクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)」を採用することは、当業者であれば容易に想起し得ることである。
したがって、上記相違点に係る構成を備えることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の奏する効果は、引用発明及び引用例2に記載された事項から当業者が容易に予測し得るものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-08 
結審通知日 2016-08-09 
審決日 2016-08-30 
出願番号 特願2012-543140(P2012-543140)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 磯貝 香苗  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 日比野 隆治
川端 修
発明の名称 光学的に拡散性である接着剤及びその製造方法  
代理人 池田 成人  
代理人 清水 義憲  
代理人 池田 正人  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 城戸 博兒  

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