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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1323890
審判番号 不服2015-19354  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-28 
確定日 2017-01-11 
事件の表示 特願2012-554440号「統合人工装具」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月10日国際公開、WO2011/138646、平成25年6月6日国内公表、特表2013-520268号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)2月25日(パリ条約による優先権主張 2010年2月26日 (IT)イタリア共和国)を国際出願日とする特許出願であって、平成26年11月21日付けで拒絶の理由が通知され、平成27年2月27日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年3月2日付けで手続補足書が提出されたが、同年6月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。



第2 平成27年10月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年10月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容の概要
本件補正は、平成27年2月27日付けで補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含んでいる。なお、下線部は補正箇所を示す。

(1)補正前
「大腿骨、肩若しくは膝の人工装具、又は骨の充填剤若しくは置換、インサート、又はシェル、骨インプラントオペレーションのために利用でき得る統合人工装具であって、
少なくとも、金属サポートとプラスチック材料からなるインサートとを含んでおり、該プラスチック材料は摩擦表面、つまりインサートを規定するように少なくとも金属サポートの第1の表面に接続されており、調節可能な厚さを有しており、装具の可動部に向かって開いており、
前記金属サポート(30)は、前記第1の表面の反対側に、前記人工装具又は骨置換が設置される骨の部分に接続されることを意図した第2の表面を含んでおり、
前記第1の表面は、実質的に均一な態様で分散されて、且つ、前記インサート(13)を形成する前記プラスチック材料の固定及び固化に適し、且つ、前記第1の表面を内部に延伸するキャビティ又はホール(12)を有する固化層(11)を含み、一方で、前記第2の表面は、前記骨の固定を最適化するのに適したポーラス層(16)を含んでおり、そこでは、前記第1の表面と前記第2の表面とは、前記プラスチックインサート(13)を形成する工程における液体又は半液体の前記プラスチック材料を留める緻密層(14)によって分離されており、さらに、前記第1の表面の前記キャビティ又はホール(12)は、前記第2の表面の孔よりも大きな形状及びサイズを有し、
前記固化層(11)と一緒に、前記金属サポート(30)、前記緻密層(14)及び前記ポーラス層(16)は全て、EBM(Electoron Beam Melting)技術又は高出力レーザー光線を用いた技術を用いて、純チタニウム、その合金、コバルト合金、タンタル合金又はその他の適切な生分解性合金に基づいた粉末物質から得られ、
前記キャビティ又はホール(12)は、前記固化層(11)の内部に向かって延伸していると共に少なくともアンダーカットを生成するか、又は、交互に連結して且つ互いに結合された一連の開口キャビティを有している、
ことを特徴とする統合人工装具。」

(2)補正後
「大腿骨、肩若しくは膝の人工装具、又は骨の充填剤若しくは置換、インサート、又はシェル、骨インプラントオペレーションのために利用でき得る統合人工装具であって、
少なくとも、金属サポートとプラスチック材料からなるインサートとを含んでおり、該プラスチック材料は摩擦表面、つまりインサートを規定するように少なくとも金属サポートの第1の表面に接続されており、調節可能な厚さを有しており、装具の可動部に向かって開いており、
前記金属サポート(30)は、前記第1の表面の反対側に、前記人工装具又は骨置換が設置される骨の部分に接続されることを意図した第2の表面を含んでおり、
前記第1の表面は、実質的に均一な態様で分散されて、且つ、前記インサート(13)を形成する前記プラスチック材料の固定及び固化に適し、且つ、前記第1の表面を内部に延伸するキャビティ又はホール(12)を有する固化層(11)を含み、一方で、前記第2の表面は、前記骨の固定を最適化するのに適したポーラス層(16)を含んでおり、そこでは、前記第1の表面と前記第2の表面とは、前記プラスチックインサート(13)を形成する工程における液体又は半液体の前記プラスチック材料を留める緻密層(14)によって分離されており、さらに、前記第1の表面の前記キャビティ又はホール(12)は、前記第2の表面の孔よりも大きな形状及びサイズを有し、
前記固化層(11)、前記金属サポート(30)、前記緻密層(14)及び前記ポーラス層(16)は全て、純チタニウム、その合金、コバルト合金、タンタル合金又はその他の適切な生分解性合金に基づいた粉末物質を材料とし、
前記キャビティ又はホール(12)は、前記固化層(11)の内部に向かって延伸していると共に少なくともアンダーカットを生成する、ことを特徴とする統合人工装具。」


2.補正の目的及び新規事項の追加の有無
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、以下の補正事項1及び補正事項2からなるものである。

(1)補正事項1
補正事項1は、補正前の請求項1に記載された「前記固化層(11)と一緒に、前記金属サポート(30)、前記緻密層(14)及び前記ポーラス層(16)は全て、EBM(Electoron Beam Melting)技術又は高出力レーザー光線を用いた技術を用いて、純チタニウム、その合金、コバルト合金、タンタル合金又はその他の適切な生分解性合金に基づいた粉末物質から得られ」という事項について、「前記固化層(11)、前記金属サポート(30)、前記緻密層(14)及び前記ポーラス層(16)は全て、純チタニウム、その合金、コバルト合金、タンタル合金又はその他の適切な生分解性合金に基づいた粉末物質を材料とし」と補正するものである。
ここで、補正前の請求項1に係る発明は、「統合人工装具」という物の発明であるところ、補正前の請求項1に記載された「前記固化層(11)と一緒に、前記金属サポート(30)、前記緻密層(14)及び前記ポーラス層(16)は全て、EBM(Electoron Beam Melting)技術又は高出力レーザー光線を用いた技術を用いて、純チタニウム、その合金、コバルト合金、タンタル合金又はその他の適切な生分解性合金に基づいた粉末物質から得られ」という事項は、その物の製造方法に係る記載と認められる。
そして、物の発明に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当であることを踏まえ、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(2)補正事項2
補正事項2は、「キャビティ又はホール(12)」に係る発明特定事項について、補正前の請求項1に選択肢として記載された「前記固化層(11)の内部に向かって延伸していると共に少なくともアンダーカットを生成するか、又は、交互に連結して且つ互いに結合された一連の開口キャビティを有している」という事項のうち、「交互に連結して且つ互いに結合された一連の開口キャビティを有している」という一方の選択肢を削除して、「前記固化層(11)の内部に向かって延伸していると共に少なくともアンダーカットを生成する」と補正するものである。
そうすると、補正事項2は、発明特定事項の一方の選択肢を削除することにより、発明特定事項を更に限定して補正するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、その産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、補正事項2は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

以上から、本件補正は、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであり、また、本件補正は、同法同条第3項及び第4項の規定に違反するものではない。


3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。


3-1.補正発明
補正発明は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記「1.」の「(2)補正後」に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。


3-2.引用文献の記載事項及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2007-262568号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付与したものであり、「・・・」は記載の省略を示す。)

(1-ア)
「【請求項1】
多孔性の組織内殖構造および軸受支持構造を有するインプラントを形成する方法であって、
基板上へ金属粉末の第一層を溶着させる工程と、
所定の位置で前記金属粉末を焼結させるように前記粉末上にレーザービームを走査させる工程と、
前記第一の層上に前記金属粉末の少なくとも1つの層を溶着させる工程と、
第一の表面および第二の表面を有する所定の構造が構築されるまで、各々の連続する層に対して前記レーザー走査工程を反復する工程と、
流動性ポリマーを前記所定の構造の前記第二の表面と接触して配置する工程と、
前記流動性ポリマーが前記構造の前記第二の表面に接着するように前記流動性ポリマーを冷却する工程と、
を含む、方法。」(請求項1)

(1-イ)
「【請求項22】
骨内殖構造、中間構造、および軸受支持構造を有する金属挿入物であって、前記骨内殖構造が骨内殖を促進するのに十分な空隙率を有する金属挿入物と、
ポリマー物質から形成される軸受面であって、前記軸受面は、前記軸受支持構造に装着されている軸受面とを備え、
前記中間構造は、前記ポリマー物質が前記軸受支持構造を通って前記骨内殖構造へ移動することを阻止するのに十分な空隙率を有している、医療用インプラント。
・・・
【請求項27】
前記金属挿入物は寛骨臼カップの形状である、請求項22に記載の医療用インプラント
・・・
【請求項30】
前記軸受支持構造は、少なくとも1つの格子を備えている、請求項22に記載の医療用インプラント。
・・・
【請求項36】
前記骨内殖構造は80μm?800μmの範囲の細孔サイズ分布を有し、前記軸受支持構造は800μmより高い細孔サイズ分布を有している、請求項22に記載の医療用インプラント。」(請求項22?36)

(1-ウ)
「【0001】
本発明は、軸受面に対して直接または間接的に結合された多孔性面を有するデバイス、およびこれを形成するための方法に関する。
【0002】
詳細には、本発明は、多層方式で多孔性層を構築するために複数の粉末層を連続的に再溶融する、コンピューター支援レーザー装置または他の適切な高エネルギービームに関する。
【0003】
本発明はまた、直接的にまたは間接的にポリマーから好ましくは形成された軸受面を、連続的に構築された多孔性部分に結合または接続する方法を包含する。
【0004】
本出願は詳細には、軸受面を有する多孔性および部分的に多孔性の金属構造を形成する方法に関する。」(0001?0004段落)

(1-エ)
「【0008】
さらに、多くの構造が、特に医療分野においては、各々がそれら自体の目的に適した2つの異なる表面を必要としている。この方向に沿って、ある構造では、組織内殖のために多孔性であることが必要な第一の表面と、軸受面であるように適合されなければならない第二の表面とを有していてもよい。・・・」(0008段落)

(1-オ)
「【0018】
・・・多孔性構造を有するインプラントを軸受面に隣接して相互接続するかまたは有することによって、整形外科用インプラントは、骨および軟部組織連結構造を、このインプラントがさらなる軸受面に対して回転、連接または旋回することを可能にする軸受面と組み合わせさせるための構造を提供している。
【0019】
図1Aおよび図1Bに示されるように、身体への移植のためのデバイスは、寛骨臼カップ10の形態であってもよい。この寛骨臼カップ10は好ましくは、軸受支持構造12と、骨内殖構造14と、中間構造16から構成される金属挿入物11を備えている。この寛骨臼カップ10は、人工股関節全置換術において用いられている。」(0018?0019段落)

(1-カ)
「【0021】
骨内殖構造14、並びに軸受支持構造12および寛骨臼カップ10の中間構造16は、例えば、その開示が参照によって本明細書に援用される、「Laser-Produced Porous Surface」と題された2003年11月7日出願の米国特許出願第10/704,270号、および「Laser-Produced Porous Structure」と題された2004年12月30日出願の米国特許出願第11/027,421号に記載されるように、直接レーザー再溶融プロセスを用いて構築されてもよい。
【0022】
図1Aに示されるように、本発明の1つの好ましい実施形態では、骨内殖構造14は、約1.1mmの厚みであって、ほぼ70%?80%の範囲の空隙率を有している。中間構造16は、ほぼ0.1mmの厚みであって、実質的に完全に高密度である。軸受支持構造12はほぼ0.8mmの厚みであって、以下に記載されるとおり、軸受面8を形成するためにポリマー層内で固定されるのに適している。・・・
【0023】
骨内殖構造14は、適当なソフトウェアを用いて単一の単位反復格子で当該構造の容積を占めることによって調製されてもよい。単一の単位セル110および対応する多孔性層は、図1Cおよび図1Dに示されている。用いられる単一格子110は、各々の隅に垂直な柱で800μmの長さを有する単位セル八面体構造である。互いにぴったり合う場合、これらの格子は、完全に内部連絡された多孔性および平均細孔サイズ100μm?400μmである、約80%の空隙率を有する多孔性構造を生じることになる。」(0021?0023段落)

(1-キ)
「【0025】
軸受支持構造12は、図1Eおよび図1Fに示されるように、単一の反復単位セル112で当該構造の容積を占めることによって設計されてもよい。これによって、1.25mm?2mmの直径の細孔サイズを有する完全に内部連絡された多孔性を有する90%?95%の空隙率である構造が得られる。当然ながら、この単位セル112の寸法は変更されてもよく、さらに種々の単位セルが使用されてもよく、これにより、この構造の空隙率(多孔性)は、所望に応じて特注されることになる。
【0026】
各々の構造の空隙率(多孔性)は変更されてもよいが、好ましい実施形態では、各々の構造の空隙率(多孔性)はその構造の機能に依存している。従って、骨内殖構造14で得られる空隙率(多孔性)は、骨内殖を促進する範囲内でなければならない。軸受支持構造12の空隙率(多孔性)は、以下に記載されるとおり、ポリマー物質または他の物質がこの構造に結合することを容易に行える範囲でなければならない。そして中間層の空隙率(多孔性)は、以下に記載されるとおり、ポリマー物質が軸受支持構造12から骨内殖構造14に浸食する能力を阻止するかまたは少なくとも減じる範囲でなければならない。」(0025?0026段落)

(1-ク)
「【0029】
レーザー溶融による多孔性三次元構造形成の1方法によれば、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、コバルト・クロム合金、タンタルまたはニオブの粉末をある基板上に溶着している。・・・」(0029段落)

(1-ケ)
「【0056】
・・・このような単位セルデザインは、四面体60(図9A)、十二面体62(図9B)、八面体64(図9C)、ダイアモンド、および多くの他の種々の形状であってもよい。さらに、種々の支柱を単位セルから取り除いて、図9Dに示される支柱のようなさらなる構造を作成してもよい。上記で考察された規則的な幾何形状に加えて、本発明の単位セルは、種々の側面および寸法が不規則な形状を有するように構成され、この種々の側面および寸法は、反復配列があっても小さい。単位セルは、例えば、骨梁の支柱を厳密に模倣する構築物を構築するように構成されてもよい。単位セルは、空間充填であってもよく、三次元物体内の全ての空間は、セルで充填されるかまたは内部連絡され、ここでセル間にはある程度の空間が存在してもよいが、セルはそれらの末端で一緒に接続されている。この単位セルはまた、格子の形態で構築されてもよい。さらに、隣接する格子は、お互いから単離されてもよく、または単に部分的に付着されてもよい。」(0056段落)

(1-コ)
「【0076】
軸受面8を作成するために用いられる物質に依存して、ポリマー物質は、圧縮成形、射出成形または熱成形によって、軸受支持構造12と統合されている。・・・」(0076段落)

(1-サ)
「【0079】
別の実施形態では、軸受面8を軸受支持構造12に融合するために、射出成形処理を行ってもよい。・・・圧縮成形プロセスと同様に、射出成形プロセスでは、金属挿入物11を射出成形機械の空洞に固定して型枠を閉じる。前の実施形態と同様に、骨内殖構造14は、用いられるポリウレタンまたはさらなるポリマーから離される。選択された物質、例えば、ポリウレタンまたはCFRPEEKは、射出成形機械のバレル(barrel)中で加熱される。一旦、選択された物質が射出成形型のバレル中で加熱されれば、このバレルから型枠の空洞および軸受支持構造12の表面上に加熱された選択された物質を押し付けるためには、選択された物質に圧力が加えられてもよい。冷却の際に、軸受面8を形成するために選択された物質が軸受支持構造12に融合され、この軸受面8の上で寛骨臼カップ10がさらなる構成要素、すなわち、大腿骨ステムFSに対して動かされる。冷却の際、完成した部分は、射出成形型から取り出されて、必要であれば加工されてもよい。この型の空洞は、軸受面8の特定の特徴、デザインおよび輪郭が形成され得るように構成されている。」(0079段落)


(2)引用発明
記載事項1-エに背景技術として「特に医療分野においては、各々がそれら自体の目的に適した2つの異なる表面を必要としている。・・・組織内殖のために多孔性であることが必要な第一の表面と、軸受面であるように適合されなければならない第二の表面とを有していてもよい。」とあるところ、記載事項1-アの「第一の表面および第二の表面を有する所定の構造」及び「流動性ポリマーを前記所定の構造の前記第二の表面と接触して配置する」との記載、記載事項1-イの「骨内殖構造、・・・および軸受支持構造を有する金属挿入物」、「前記骨内殖構造が骨内殖を促進するのに十分な空隙率を有する」及び「ポリマー物質から形成される軸受面であって、前記軸受面は、前記軸受支持構造に装着されている軸受面」との記載を併せ考えると、
(1-シ)金属挿入物の骨内殖構造の表面は「第一の表面」に対応し、金属挿入物の軸受支持構造の表面は「第二の表面」に対応すること、
が理解できる。

記載事項1-カに「軸受支持構造12は・・・軸受面8を形成するためにポリマー層内で固定されるのに適している」とあるところ、技術常識を参酌すると、「ポリマー層」とは、ポリマー物質の層であることは明らかであるから、
(1-ス)ポリマー層はポリマー物質からなる、
ということができる。

「ポリマー物質から形成される軸受面であって、前記軸受面は、前記軸受支持構造に装着されている軸受面」(記載事項1-イ)との記載によれば、軸受支持構造に装着されている軸受面は、ポリマー物質から形成されるのであるから、ポリマー物質は、軸受面を規定するように軸受支持構造に装着されている、ということができる。また、「軸受支持構造12は・・・軸受面8を形成するためにポリマー層内で固定されるのに適している」(記載事項1-カ)との記載によれば、軸受支持構造がポリマー層内で固定されて、軸受面が形成されるのであるから、軸受面を規定することは、ポリマー層を規定することによるものと理解できる。そうすると、
(1-セ1)ポリマー物質は、軸受面、つまりポリマー層を規定するように軸受支持構造に装着されている、
ということができる。
また、「・・・整形外科用インプラントは、骨および軟部組織連結構造を、このインプラントがさらなる軸受面に対して回転、連接または旋回することを可能にする軸受面と組み合わせさせるための構造を提供している。」(記載事項1-オ)との記載によれば、軸受面は、医療用インプラントがさらなる軸受面に対して回転又は旋回することを可能にするものであることが理解できる。ここで、軸受面、ないしは、さらなる軸受面は、医療用インプラントが回転又は旋回する部分であるから、「医療用インプラントの可動部」と表現することができる。さらに、図1A-1B及び図2の図示内容を併せ考えると、ポリマー物質から形成される軸受面が、そのような可動部に向かって開いていることは明らかであるから、
(1-セ2)ポリマー物質は、医療用インプラントの可動部に向かって開いている、
ということができる。
また、「軸受面8を作成するために用いられる物質に依存して、ポリマー物質は、圧縮成形、射出成形または熱成形によって、軸受支持構造12と統合されている。」(記載事項1-コ)、「圧縮成形プロセスと同様に、射出成形プロセスでは、金属挿入物11を射出成形機械の空洞に固定して型枠を閉じる。・・・選択された物質、・・・は、射出成形機械のバレル(barrel)中で加熱される。・・・冷却の際に、軸受面8を形成するために選択された物質が軸受支持構造12に融合され、・・・この型の空洞は、軸受面8の特定の特徴、デザインおよび輪郭が形成され得るように構成されている。」(記載事項1-サ)との記載によれば、ポリマー物質を軸受支持構造に統合する際の型の空洞は、軸受面の特定の特徴、デザインおよび輪郭が形成され得るように構成されていることが理解できる。ここで、技術常識を参酌すれば、「軸受面の特定の特徴、デザインおよび輪郭」には、ポリマー層の厚さも含まれるものと認められ、ポリマー物質の厚さは、型の空洞に応じて調節されるのであるから、
(1-セ3)ポリマー物質は調節可能な厚さを有している、
と認められる。
認定事項1-セ1?1-セ3を総合し、金属挿入物の軸受支持構造の表面が「第二の表面」に対応すること(認定事項1-シ)を踏まえて整理すると、
(1-セ)ポリマー物質は軸受面、つまりポリマー層を規定するように金属挿入物の第二の表面に装着されており、調節可能な厚さを有しており、医療用インプラントの可動部に向かって開いている、
と認められる。

図1A-1Bの図示内容によれば、金属挿入物の軸受支持構造の表面は、骨内殖構造の表面の反対側にあることが看取できる。また、骨内殖構造の表面が、医療用インプラントが設置される骨の部分に接続されることを意図していることは明らかである。
ここで、骨内殖構造の表面は「第一の表面」に対応し、軸受支持構造の表面は「第二の表面」に対応するから(認定事項1-シ)、
(1-ソ)金属挿入物は、第二の表面の反対側に、医療用インプラントが設置される骨の部分に接続されることを意図した第一の表面を含んでいる、
と認められる。

「軸受支持構造12は、図1Eおよび図1Fに示されるように、単一の反復単位セル112で当該構造の容積を占めることによって設計されてもよい。これによって、1.25mm?2mmの直径の細孔サイズを有する完全に内部連絡された多孔性を有する90%?95%の空隙率である構造が得られる。」(記載事項1-キ)との記載によれば、軸受支持構造の多孔性を有する構造は、1.25mm?2mmの直径の細孔によってもたらされていることは明らかであるから、軸受支持構造は、細孔を有しているということができる。
また、図1A-1B、図1E-1Fの図示内容や、「軸受支持構造12の空隙率(多孔性)は、・・・ポリマー物質または他の物質がこの構造に結合することを容易に行える範囲でなければならない。」(記載事項1-キ)との記載によれば、軸受支持構造の細孔は、軸受支持構造の表面を内部に延伸しており、これによって、ポリマー層を形成するポリマー物質の固定及び固化に適したものとなっていることは明らかである。
さらに、軸受支持構造の細孔が、「単一の反復単位セル112」(記載事項1-キ)によって得られることや、図1A-1B、図1E-1Fの図示内容を併せ考えると、軸受支持構造の細孔は、実質的に均一な態様で分散されているものと認められる。
そうすると、金属挿入物の軸受支持構造の表面が「第二の表面」に対応すること(認定事項1-シ)を踏まえて整理すると、
(1-タ)第二の表面は、実質的に均一な態様で分散されて、且つ、ポリマー層を形成するポリマー物質の固定及び固化に適し、且つ、前記軸受支持構造の表面を内部に延伸する細孔を有する軸受支持構造を含む、
と認められる。

「流動性ポリマーを前記所定の構造の前記第二の表面と接触して配置する工程」(記載事項1-ア)、及び「ポリマー物質は、圧縮成形、射出成形または熱成形によって、軸受支持構造12と統合されている。」(記載事項1-コ)との記載を併せ考えると、ポリマー層を形成する工程において、ポリマー物質が流動性であることは明らかである。
そして、図1A-1Bの図示内容、及び「前記中間構造は、前記ポリマー物質が前記軸受支持構造を通って前記骨内殖構造へ移動することを阻止するのに十分な空隙率を有している」(記載事項1-イ)との記載を併せ考えると、軸受支持構造の表面と骨内殖構造の表面とは、中間構造によって分離されており、中間構造は、ポリマー層を形成する工程における流動性のポリマーを留めるものであることが理解できる。
ここで、金属挿入物の骨内殖構造の表面は「第一の表面」に対応し、金属挿入物の軸受支持構造の表面は「第二の表面」に対応すること(認定事項1-シ)を踏まえて整理すると、
(1-チ)第二の表面と第一の表面とは、ポリマー層を形成する工程における流動性のポリマー物質を留める中間構造によって分離されている、
ということができる。

「前記骨内殖構造は80μm?800μmの範囲の細孔サイズ分布を有し、前記軸受支持構造は800μmより高い細孔サイズ分布を有している」(記載事項1-イ)との記載、骨内殖構造についての「平均細孔サイズ100μm?400μmである、・・・多孔性構造」(記載事項1-カ)との記載、軸受支持構造についての「1.25mm?2mmの直径の細孔サイズを有する完全に内部連絡された多孔性を有する・・・構造」(記載事項1-キ)との記載によれば、軸受支持構造の細孔は、骨内殖構造の細孔よりも大きな形状及びサイズを有するものと認められる。そして、これらの細孔が、それぞれ軸受支持構造及び骨内殖構造の表面にもあることは明らかである。ここで、骨内殖構造の表面は「第一の表面」に対応し、軸受支持構造の表面は「第二の表面」に対応するから(認定事項1-シ)、
(1-ツ)第二の表面の細孔は、第一の表面の細孔よりも大きな形状及びサイズを有する、
ということができる。

図1A-1B及び図1E-1Fの図示内容によれば、軸受支持構造の細孔は、軸受支持構造の内部に向かって延伸していることが看取できる。さらに、「軸受支持構造12は、図1Eおよび図1Fに示されるように、単一の反復単位セル112で当該構造の容積を占めることによって設計されてもよい。これによって、1.25mm?2mmの直径の細孔サイズを有する完全に内部連絡された多孔性を有する90%?95%の空隙率である構造が得られる。」(記載事項1-キ)との記載と併せ考えると、軸受支持構造における完全に内部連絡された多孔性を有する構造は、完全に内部連絡された細孔によってもたらされていると理解できるから、
(1-テ)軸受支持構造の細孔は、前記軸受支持構造の内部に向かって延伸していると共に完全に内部連絡される、
と認められる。


上記記載事項1-ア?1-サ、及び上記認定事項1-シ?1-テを技術常識を踏まえつつ補正発明に照らして整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「人工股関節全置換術において用いられている寛骨臼カップの形態であってもよい医療用インプラントであって、
金属挿入物とポリマー物質からなるポリマー層とを含んでおり、
該ポリマー物質は軸受面、つまりポリマー層を規定するように金属挿入物の第二の表面に装着されており、調節可能な厚さを有しており、医療用インプラントの可動部に向かって開いており、
前記金属挿入物は、前記第二の表面の反対側に、前記医療用インプラントが設置される骨の部分に接続されることを意図した第一の表面を含んでおり、
前記第二の表面は、実質的に均一な態様で分散されて、且つ、前記ポリマー層を形成する前記ポリマー物質の固定及び固化に適し、且つ、前記第二の表面を内部に延伸する細孔を有する軸受支持構造を含み、一方で、前記第一の表面は、骨内殖を促進するのに十分な空隙率を有する骨内殖構造を含んでおり、そこでは、前記第二の表面と前記第一の表面とは、前記ポリマー層を形成する工程における流動性の前記ポリマー材料を留める中間構造によって分離されており、さらに、前記第二の表面の前記細孔は、前記第一の表面の細孔よりも大きな形状及びサイズを有し、
前記軸受支持構造、前記金属挿入物、前記中間構造及び前記骨内殖構造は全て、チタン、チタン合金又はコバルト・クロム合金の粉末を材料とし、
前記軸受支持構造の前記細孔は、前記軸受支持構造の内部に向かって延伸していると共に完全に内部連絡される、
医療用インプラント。」



3-3.対比
補正発明と引用発明1とを対比する。

(ア)補正発明における「統合人工装具」は、「大腿骨、肩若しくは膝の人工装具、又は骨の充填剤若しくは置換、インサート、又はシェル、骨インプラントオペレーションのために利用でき得る」ことを発明特定事項の選択肢とするものであるところ、引用発明1における「人工股関節全置換術において用いられている寛骨臼カップの形態であってもよい」ことは、当該選択肢のうち、「大腿骨」「の人工装具」、「骨の」「置換」、「インサート」、「シェル」ないしは「骨インプラントオペレーション」「のために利用でき得る」ことに相当する。また、引用発明における「医療用インプラント」は、その機能及び構成からみて、補正発明における「統合人工装具」に相当する。

(イ)引用発明1における「金属挿入物」は、その機能及び構成からみて、補正発明における「金属サポート」に相当し、以下同様に、「ポリマー物質」は「プラスチック材料」に、「軸受面」は「摩擦表面」に、「ポリマー層」は「インサート」に、「第二の表面」は「第1の表面」に、「医療用インプラントの可動部」は「装具の可動部」に、それぞれ相当する。また、引用発明1における「装着され」ることは、その文言の意味するところからみて、補正発明における「接続され」ることに相当する。

(ウ)引用発明1の「医療用インプラントが設置される骨の部分に接続されることを意図した第一の表面」における「医療用インプラント」は、「人工装具」ないしは「骨置換」のためのものということができる。そうすると、引用発明1における「医療用インプラントが設置される骨の部分に接続されることを意図した第一の表面」は、補正発明における「人工装具又は骨置換が設置される骨の部分に接続されることを意図した第2の表面」に相当する。

(エ)引用発明1における「軸受支持構造」の「細孔」は、その機能及び構成からみて、補正発明における「キャビティ又はホール」に相当する。また、引用発明1における、「軸受支持構造」は、その機能及び構成からみて、補正発明における「固化層」に相当する。

(オ)引用発明1における「骨内殖を促進するのに十分な空隙率を有する骨内殖構造」は、骨の固定を最適化するのに適したものと認められるから、補正発明における「骨の固定を最適化するのに適したポーラス層」に相当する。

(カ)引用発明1における「流動性の前記ポリマー材料」は、その文言の意味するところからみて、補正発明における「液体又は半液体の前記プラスチック材料」に相当する。また、引用発明1における「中間構造」は、「中間構造16は、ほぼ0.1mmの厚みであって、実質的に完全に高密度である。」(記載事項1-カ)との記載によれば、緻密な層であることは明らかであるから、補正発明における「緻密層」に相当する。

(キ)引用発明1における「第一の表面の細孔」は、その機能及び構成からみて、補正発明における「第2の表面の孔」に相当する。

(ク)補正発明は、固化層等の「材料」に係る発明特定事項として、「純チタニウム、その合金、コバルト合金、タンタル合金又はその他の適切な生分解性合金に基づいた粉末物質」を選択肢としているところ、引用発明における「チタン、チタン合金又はコバルト・クロム合金の粉末」は、当該選択肢における「純チタニウム、その合金」又は「コバルト合金」「に基づいた粉末物質」に相当する。

してみると、補正発明と引用発明1とは、次の点で一致している。

(一致点)
「大腿骨の人工装具、又は骨の置換、インサート、又はシェル、骨インプラントオペレーションのために利用でき得る統合人工装具であって、
少なくとも、金属サポートとプラスチック材料からなるインサートとを含んでおり、該プラスチック材料は摩擦表面、つまりインサートを規定するように少なくとも金属サポートの第1の表面に接続されており、調節可能な厚さを有しており、装具の可動部に向かって開いており、
前記金属サポートは、前記第1の表面の反対側に、前記人工装具又は骨置換が設置される骨の部分に接続されることを意図した第2の表面を含んでおり、
前記第1の表面は、実質的に均一な態様で分散されて、且つ、前記インサートを形成する前記プラスチック材料の固定及び固化に適し、且つ、前記第1の表面を内部に延伸するキャビティ又はホールを有する固化層を含み、一方で、前記第2の表面は、前記骨の固定を最適化するのに適したポーラス層を含んでおり、そこでは、前記第1の表面と前記第2の表面とは、前記プラスチックインサートを形成する工程における液体又は半液体の前記プラスチック材料を留める緻密層によって分離されており、さらに、前記第1の表面の前記キャビティ又はホールは、前記第2の表面の孔よりも大きな形状及びサイズを有し、
前記固化層、前記金属サポート、前記緻密層及び前記ポーラス層は全て、純チタニウム、その合金又はコバルト合金に基づいた粉末物質を材料とし、
前記キャビティ又はホールは、前記固化層の内部に向かって延伸している、
統合人工装具。」

そして、両者は次の点で相違している。

(相違点)
キャビティ又はホールについて、補正発明は、「固化層の内部に向かって延伸していると共に少なくともアンダーカットを生成する」のに対し、引用発明は、固化層の内部に向かって延伸していると共に完全に内部連絡されるものであって、「少なくともアンダーカットを生成する」ものでない点。


3-4.判断
上記相違点について検討する。
金属材料の表面に対して液体又は半液体のプラスチック材料を供給することで金属材料の表面にプラスチック材料を接続するにあたり、金属材料の表面に設けられたキャビティ又はホールを、内部に向かって延伸していると共にアンダーカットを生成する構成とすることは、本願優先日前に周知の技術である(例えば、米国特許第6087553号明細書のFIG.3B、米国特許出願公開第2009/0017242号明細書のFIG.2B、FIG.3B等を参照)。
そして、引用文献1の「軸受支持構造12は、・・・単一の反復単位セル112で当該構造の容積を占めることによって設計されてもよい。・・・さらに種々の単位セルが使用されてもよく、これにより、この構造の空隙率(多孔性)は、所望に応じて特注されることになる。」(記載事項1-キ)、
「・・・このような単位セルデザインは、四面体60(図9A)、十二面体62(図9B)、八面体64(図9C)、ダイアモンド、および多くの他の種々の形状であってもよい。さらに、種々の支柱を単位セルから取り除いて、図9Dに示される支柱のようなさらなる構造を作成してもよい。上記で考察された規則的な幾何形状に加えて、本発明の単位セルは、種々の側面および寸法が不規則な形状を有するように構成され、この種々の側面および寸法は、反復配列があっても小さい。」(記載事項1-ケ)との記載によれば、軸受支持構造の細孔について、種々の形状を採用し得ることが示唆されているといえる。
そして、当該示唆に接した当業者であれば、引用発明1における軸受支持構造の細孔について、上記周知技術を採用することに、格別困難性はない。
そうすると、引用発明1における軸受支持構造の細孔(キャビティ又はホール)について、上記周知技術を採用して、相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

したがって、補正発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


3-5.まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。



第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1?8に係る発明は、平成27年2月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記「第2」「1.」の「(1)補正前」に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。



第4 引用文献の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1について、上記「第2」「3-2.」の記載事項1-ア?1-サ、及び認定事項1-シ?1-テに加えて、
「骨内殖構造14、並びに軸受支持構造12および寛骨臼カップ10の中間構造16は、・・・直接レーザー再溶融プロセスを用いて構築されてもよい。」(記載事項1-カ)、「レーザー溶融による多孔性三次元構造形成の1方法によれば、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、コバルト・クロム合金、タンタルまたはニオブの粉末をある基板上に溶着している。」(記載事項1-ク)との記載を併せ考えると、
(1-ト)軸受支持構造と一緒に、金属挿入物、中間構造及び骨内殖構造は全て、直接レーザー再溶融プロセスを用いて、チタン、チタン合金又はコバルト・クロム合金の粉末から得られる、
と認められる。


上記記載事項1-ア?1-サ、及び上記認定事項1-シ?1-トを技術常識を踏まえつつ本願発明に照らして整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1’」という。)が記載されている。

「人工股関節全置換術において用いられている寛骨臼カップの形態であってもよい医療用インプラントであって、
金属挿入物とポリマー物質からなるポリマー層とを含んでおり、
該ポリマー物質は軸受面、つまりポリマー層を規定するように金属挿入物の第二の表面に接続されており、調節可能な厚さを有しており、医療用インプラントの可動部に向かって開いており、
前記金属挿入物は、前記第二の表面の反対側に、前記医療用インプラントが設置される骨の部分に接続されることを意図した第一の表面を含んでおり、
前記第二の表面は、実質的に均一な態様で分散されて、且つ、前記ポリマー層を形成する前記ポリマー物質の固定及び固化に適し、且つ、前記第二の表面を内部に延伸する細孔を有する軸受支持構造を含み、一方で、前記第一の表面は、骨内殖を促進するのに十分な空隙率を有する骨内殖構造を含んでおり、そこでは、前記第二の表面と前記第一の表面とは、前記ポリマー層を形成する工程における流動性の前記ポリマー材料を留める中間構造によって分離されており、さらに、前記第二の表面の前記細孔は、前記第一の表面の細孔よりも大きな形状及びサイズを有し、
前記軸受支持構造と一緒に、前記金属挿入物、前記中間構造及び前記骨内殖構造は全て、直接レーザー再溶融プロセスを用いて、チタン、チタン合金又はコバルト・クロム合金の粉末から得られ、
前記軸受支持構造の前記細孔は、前記軸受支持構造の内部に向かって延伸していると共に完全に内部連絡される、
医療用インプラント。」



第5 対比・判断
本願発明と引用発明1’とを対比する。
上記「第2」「3-3.」の(ア)?(キ)に加えて、
(ケ)本願発明は、固化層等を得るのに用いる技術に係る発明特定事項として、「EBM(Electoron Beam Melting)技術又は高出力レーザー光線を用いた技術」を選択肢として選択的に特定しているところ、引用発明1’における「直接レーザー再溶融プロセス」は、技術常識を参酌すると、高出力のレーザー光線を用いた技術ということができるから、当該選択肢のうち「高出力レーザー光線を用いた技術」に相当する。

(コ)本願発明は、「粉末物質」に係る発明特定事項として、「純チタニウム、その合金、コバルト合金、タンタル合金又はその他の適切な生分解性合金に基づいた粉末物質」を選択肢として選択的に特定しているところ、引用発明1’における「チタン、チタン合金又はコバルト・クロム合金の粉末」は、当該選択肢における「純チタニウム、その合金」又は「コバルト合金」「に基づいた粉末物質」に相当する。

(サ)本願発明は、「キャビティ又はホール(12)」に係る発明特定事項として、「前記固化層(11)の内部に向かって延伸していると共に少なくともアンダーカットを生成するか、又は、交互に連結して且つ互いに結合された一連の開口キャビティを有している」ことを選択肢とするものである。
ここで、引用発明1’における「軸受支持構造」の「細孔」は、開口を有するキャビティ状の構造と認められるから、「開口キャビティ」といえるものである。さらに、技術常識を踏まえつつ引用文献1の図1A-1B及び図1E-1Fの図示内容を参酌すれば、細孔が「完全に内部連絡される」構成は、一連の細孔、すなわち、一連の開口キャビティが、交互に連結して且つ互いに結合されることによりもたらされるものであることが理解できる。
そうすると、引用発明1’における細孔(キャビティ又はホール)が「完全に内部連絡される」ことは、本願発明における上記発明特定事項の選択肢のうち「交互に連結して且つ互いに結合された一連の開口キャビティを有している」ことに相当する。

してみると、本願発明と引用発明1’とは、以下の点で一致している。

「大腿骨の人工装具、又は骨の置換、インサート、又はシェル、骨インプラントオペレーションのために利用でき得る統合人工装具であって、
少なくとも、金属サポートとプラスチック材料からなるインサートとを含んでおり、該プラスチック材料は摩擦表面、つまりインサートを規定するように少なくとも金属サポートの第1の表面に接続されており、調節可能な厚さを有しており、装具の可動部に向かって開いており、
前記金属サポートは、前記第1の表面の反対側に、前記人工装具又は骨置換が設置される骨の部分に接続されることを意図した第2の表面を含んでおり、
前記第1の表面は、実質的に均一な態様で分散されて、且つ、前記インサートを形成する前記プラスチック材料の固定及び固化に適し、且つ、前記第1の表面を内部に延伸するキャビティ又はホールを有する固化層を含み、一方で、前記第2の表面は、前記骨の固定を最適化するのに適したポーラス層を含んでおり、そこでは、前記第1の表面と前記第2の表面とは、前記プラスチックインサートを形成する工程における液体又は半液体の前記プラスチック材料を留める緻密層によって分離されており、さらに、前記第1の表面の前記キャビティ又はホールは、前記第2の表面の孔よりも大きな形状及びサイズを有し、
前記固化層と一緒に、前記金属サポート、前記緻密層及び前記ポーラス層は全て、高出力レーザー光線を用いた技術を用いて、純チタニウム、その合金又はコバルト合金に基づいた粉末物質から得られ、
前記キャビティ又はホールは、前記固化層の内部に向かって延伸していると共に交互に連結して且つ互いに結合された一連の開口キャビティを有している、
統合人工装具。」

そして、両者に相違するところはない。

よって、本願発明は、引用発明1’と同一である。



第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-16 
結審通知日 2016-08-17 
審決日 2016-08-30 
出願番号 特願2012-554440(P2012-554440)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
P 1 8・ 575- Z (A61F)
P 1 8・ 113- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 寺澤 忠司  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 関谷 一夫
土田 嘉一
発明の名称 統合人工装具  
代理人 井関 勝守  
代理人 金子 修平  
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