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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65H 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65H |
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管理番号 | 1323923 |
審判番号 | 不服2016-3121 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-03-01 |
確定日 | 2017-01-12 |
事件の表示 | 特願2011-216226「シート搬送装置及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月25日出願公開、特開2013- 75740〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件出願は、平成23年9月30日付けの特許出願であって、平成27年9月9日付けで手続補正がなされ、同年11月30日付けで拒絶の査定がなされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年12月22日)、これに対し、平成28年3月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、さらに、当審において、同年9月12日付けで拒絶理由を通知したところ、同年10月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2.本願の発明 本願の請求項1に係る発明は、上記の平成28年10月6日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下「本願発明」という。)。 「【請求項1】 シートを搬送するシート搬送装置であって、 シートの搬送経路に設けられ、搬送されてきたシートの搬送方向を転向させる案内部であって、全ての曲率中心が当該案内部に対して同一側に位置する緩和曲線状に湾曲した案内部 を備え、 前記緩和曲線は、搬送されるシートの加速度変化がほぼ一定となるようなクロソイド曲線であることを特徴とするシート搬送装置。」 3.当審で指摘した拒絶理由の概要 当審において平成28年9月12日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)の理由2の概要は次のとおりである。 「2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1、4、6、7 ・引用文献等 1 ・備考 上記理由1参照。 ・請求項 2、3 ・引用文献等 1?4 ・備考 搬送装置の案内部の形状にクロソイド曲線を用いることは、例えば、引用文献2(第2ページ左下欄第15行?際3ページ右下欄第14行及び第1?2図参照)、引用文献3(段落【0016】及び図1参照)、引用文献4(段落【0033】、【0051】及び図7、9参照)に示されるように、本願の出願前に周知の技術であって、クロソイド曲線は曲率が徐々に変化する緩和曲線のひとつとして知られているところ、引用文献1に記載された発明において「曲面ガイド部55」の形状に当該周知技術を採用することに困難性はない。 また、請求項3に記載された数式(【数2】)は、クロソイド曲線を表す数式として一般的なものである。 (中略) 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2008-201555号公報 2.特開平4-38263号公報 3.特開2006-224884号公報 4.特表2010-501299号公報 5.特開2004-347927号公報」 4.引用例 当審拒絶理由に引用文献1として引用された本願の出願日前に頒布された特開2008-201555号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。 ア.「【0018】 このプリンタ筐体20の内部に、図示しないプリンタ機構部が内蔵されている。プリンタ機構部は、例えば、印画紙を所定の経路に沿って搬送する印画紙搬送機構と、搬送されてきた印画紙に対して印画作業を実行する印画ヘッドと、この印画ヘッドと隣接するように設置されていて印画ヘッドの働きにより含有するカラーインクを印画紙に転写させるインクリボンと、印画ヘッドや印画紙搬送機構その他の機構、装置を駆動制御する制御装置等によって構成されている。」 イ.「【0038】 曲面ガイド部55は、印刷時、プリンタ筐体20の背面側に飛び出してくる印画紙30の先端部をガイドして上方にスムース且つ滑らかに導くもので、そのような機能を発揮できる形状であれば各種の形状を適用することができる。この曲面ガイド部55の曲面形状としては、例えば、上面を凹とした二次曲線、放物線、三次曲線、一次曲線等を挙げることができる。」 上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「印画紙を所定の経路に沿って搬送する印画紙搬送機構であって、 印刷時、プリンタ筐体20の背面側に飛び出してくる印画紙30の先端部をガイドして上方にスムース且つ滑らかに導くもので、そのような機能を発揮できる形状であれば各種の形状を適用することができる曲面ガイド部55で、上面を凹とした二次曲線、放物線、三次曲線、一次曲線等の曲面形状の曲面ガイド部55を備える 印画紙搬送機構。」 5.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「印画紙30」及び「印画紙搬送機構」は、それぞれ本願発明の「シート」及び「シート搬送装置」に相当し、引用発明の「印画紙を所定の経路に沿って搬送する印画紙搬送機構」は、本願発明の「シートを搬送するシート搬送装置」に相当する。 引用発明の「曲面ガイド部55」は本願発明の「案内部」に相当する。また、「放物線、三次曲線」は曲率が徐々に変化する曲線であるので「緩和曲線」であるといえ、この曲線が「上面を凹とした」形状とされた「曲面ガイド部55」においては全ての曲率中心が「曲面ガイド部55」に対して同一側に位置することは明らかである。 そうすると、引用発明の「印刷時、プリンタ筐体20の背面側に飛び出してくる印画紙30の先端部をガイドして上方にスムース且つ滑らかに導く曲面ガイド部55で、上面を凹とした二次曲線、放物線、三次曲線、一次曲線等の曲面形状の曲面ガイド部55」は、本願発明の「シートの搬送経路に設けられ、搬送されてきたシートの搬送方向を転向させる案内部であって、全ての曲率中心が当該案内部に対して同一側に位置する緩和曲線状に湾曲した案内部」に相当する。 したがって、両者は、 「シートを搬送するシート搬送装置であって、 シートの搬送経路に設けられ、搬送されてきたシートの搬送方向を転向させる案内部であって、全ての曲率中心が当該案内部に対して同一側に位置する緩和曲線状に湾曲した案内部 を備えるシート搬送装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 前者の「緩和曲線状に湾曲した案内部」の「緩和曲線」が「搬送されるシートの加速度変化がほぼ一定となるようなクロソイド曲線である」のに対して、後者の「案内部」の「緩和曲線」は「クロソイド曲線」であるとは特定されていない点。 6.判断 上記相違点について検討する。 当審拒絶理由において引用文献2として引用した特開平4-38263号公報(以下、「引用例2」という。第2ページ右下欄第4?19行に、搬送装置のレールの「垂直R部1b,1dの形状としてクロソイド曲線が採用されている」こと、同右上欄第13?17行に「その目的とする処は、レールの曲線部分における走行台車の振動を小さく抑えて走行台車の滑らかな走行を実現することができる搬送装置を提供することにある。」こと、第3ページ左下欄第11?15行に「本実施例では垂直R部1bにおいて走行台車2に作用する加速度aが従来のように急激に変化するのではなく、徐々に増減する」ことが記載されている。)、引用文献3として引用した特開2006-224884号公報(以下、「引用例3」という。段落【0016】に、索道の支索シュー13の区間A、Cを緩和曲線により構成し、「この緩和曲線には、曲率が曲線長に比例するクロソイド曲線や、弦長に比例するレムニスケート曲線、三次元放物線等を適用することができ」ること、及び、「ここを通過する搬器6に作用する求心加速度や、水平方向の速度変化が急激に引き起こされ」ないことが記載されている。)、引用文献4として引用した特表2010-501299号公報(以下、「引用例4」という。段落【0033】に、搬送手段のガイド表面が「定曲率で変化する傾斜または勾配をそれぞれが有する好ましくはクロソイドである2つのセグメント」を含むことが記載されている。)に示されるように、搬送装置において案内部の形状にクロソイド曲線を採用することにより、加速度変化がほぼ一定となり、被搬送物を滑らかに案内ができることは、本願の出願前に周知の技術である。 上記の通り、搬送装置の案内部の形状にクロソイド曲線を採用することにより、加速度変化がほぼ一定となり、被搬送物を滑らかに案内ができることは本出願前に周知であって、引用発明の案内部はスムース且つ滑らかに導くことができる各種の形状を適用できるものであるから、引用発明において、案内部の形状にクロソイド曲線を採用して、上記相違点に係る本願発明の構成にすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。 7.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-11-01 |
結審通知日 | 2016-11-08 |
審決日 | 2016-11-28 |
出願番号 | 特願2011-216226(P2011-216226) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(B65H)
P 1 8・ 121- WZ (B65H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 冨江 耕太郎 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
植田 高盛 森次 顕 |
発明の名称 | シート搬送装置及び画像形成装置 |