• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1323927
審判番号 不服2016-7911  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-31 
確定日 2017-01-12 
事件の表示 特願2014-159777「コンテンツ配信装置、コンテンツ配信方法、コンテンツ配信プログラム及び端末用プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月15日出願公開、特開2015- 7988〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成21年12月15日を出願日とする特願2009-283908号の一部を、平成25年7月18日に新たな特許出願として出願した特願2013-149626号の一部を、平成26年6月11日に新たな特許出願として出願した特願2014-120846号の一部を、平成26年8月5日に新たな特許出願として出願したものであって、平成27年6月26日付けで拒絶理由が通知され、平成27年9月4日付けで手続補正がなされ、平成28年2月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成28年5月31日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成28年5月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項5を、
〈補正前の請求項5〉
「コンピュータで実現されユーザ端末に第1コンテンツを配信するコンテンツ配信装置から配信される端末用プログラムであって、前記ユーザ端末に、
第2コンテンツ上の所定の基準位置が可視領域内に位置しているかを判断する判断ステップと、
前記判断ステップによる判断の結果に基づいて、前記第2コンテンツにおける前記所定の基準位置を含む又はその付近の所定の表示領域に表示される第1コンテンツの再生を制御する制御ステップと、
を実行させることを特徴とする端末用プログラム。」
から、
〈補正後の請求項5〉
「コンピュータで実現されユーザ端末に第1コンテンツを配信するコンテンツ配信装置から配信される端末用プログラムであって、前記ユーザ端末に、
第2コンテンツ上の所定の基準位置が可視領域内に位置しているかを判断する判断ステップと、
前記判断ステップによる判断の結果に基づいて、前記第2コンテンツにおける前記所定の基準位置を含む又はその付近の所定の表示領域に表示される第1コンテンツに対して開始命令または開始信号を送信することで前記第1コンテンツの再生を制御する制御ステップと、
を実行させることを特徴とする端末用プログラム。」
とする補正事項を含むものである。下線は、補正箇所を示す。

上記補正事項は、補正前の請求項5に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1コンテンツの再生を制御する」点について、「第1コンテンツに対して開始命令または開始信号を送信することで」と限定するものであって、補正前の請求項5に記載された発明と補正後の請求項5に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項5に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

2.先願及び先願発明

(1)先願
原査定の拒絶理由において、特許法第29条の2の他の出願に該当するとして挙げられたPCT/KR2009/004661(以下、「先願」という。)は、2009年(平成21年)8月21日に国際出願され、2010年(平成22年)11月4日に国際公開第2010/126205号として国際公開されたものであり、指定国として日本国を含み、特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文が提出されたものである。

(2)先願発明
先願である国際特許出願の国際出願日における明細書、請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、図面とともに、次のア?エの記載がある。なお、記載は、先願明細書等の日本語翻訳文である特表2012-525624号公報(以下、「公表公報」という。)を参照して、翻訳文で示した。下線は、注目箇所に当審で付与した。


「[17]本発明の好ましい一実施形態によれば、クライアント、ウェブサーバおよび広告サーバを含むオンライン広告提供システムにおいて、前記広告サーバによって遂行されるオンライン広告提供方法であって、予め設定された広告提供条件情報を提供し、前記広告提供条件情報に相応する広告提供要請情報を受信するステップ(a)-前記広告提供条件情報は前記オンライン広告が提供される複数のウェブサイト情報を含む-;前記広告提供条件情報および前記広告提供要請情報を利用して前記複数のウェブサイトに対する広告提供率を計算するステップ(b);および前記クライアントから広告データ転送要請が受信される場合、前記広告提供率に応じて前記クライアントに広告データを転送するステップ(c)を含み、前記クライアントから受信される広告データ転送要請は、前記クライアントが、前記ウェブサーバから受信したウェブ文書に含まれた広告露出位置情報を抽出し、前記抽出された広告露出位置情報と前記ウェブ文書が表示されるウェブブラウザのスクロール・バー位置情報を利用して、前記スクロール・バー位置情報が前記広告露出位置情報に相応する場合に前記広告サーバから受信することを特徴とするオンライン広告提供方法が提供される。」(段落[17]、公表公報の段落【0014】)


「[75]図1は、本発明の好ましい一実施形態によるスクロール・バーの位置情報を利用した複数のオンライン広告提供方法が適用されるシステムを構成する要素を概念的に示す図である。
[76]図1に示すように、本発明の好ましい一実施形態によるオンライン広告の提供方法が適用されるシステムは、ユーザ100、ウェブサイト(web site)110、広告サーバ120および広告主130を含むことができる。
[77]図1においては、概念的にユーザ100として示したが、ユーザ100、ウェブサイト110および広告主130は、クライアント(client)、サーバ(server)のような装置を示し得るということは明らかである。
[78]例えば、ユーザ100は受信したウェブ文書と広告データを閲覧する者であり、且つ、ユーザパーソナルコンピューター(PC)と携帯電話、個人携帯端末(PDA:Personal Digital Assistant)などの無線端末などのような装置を示すことができる。
[79]以下では、説明の便宜のため、ユーザ100とそのユーザが用いる装置を区分せず、ユーザ100と命名することにする。
[80]一方、ユーザ100は、通信網140を通じてウェブサイト110と広告サーバ120に連結され、ウェブサイト110から提供されるウェブページのようなウェブ文書、および広告サーバ120から提供される広告データを受信することができる。
[81]ユーザ100、より好ましくはユーザ100の装置には、ウェブサイト110に接続できるようにするウェブブラウザ(web browser)(図示せず)と広告データを再生できるアプリケーション(application)(図示せず)とが含まれることができ、このようなウェブブラウザとアプリケーションは、ユーザ100の装置にプログラムの形態で設置されることができる。
[82]このようなユーザ100の装置は、通信機能を備えてウェブサイト110と広告サーバ120に接続されることができ、受信した広告データを再生できるプログラムの設置が可能であり、再生される広告データが出力されるディスプレイ画面を含む装置であれば、特に制限されない。
[83]一方、本発明における広告データは、テキスト(text)、イメージ(image)および動画の形態で提供される広告だけでなく、音声の形態で提供される広告、そしてこのようなテキスト、イメージおよび動画と各々または共に音声が提供される形態など、あらゆる形態と種類の広告データを含むことができるということは明らかである。」(段落[75]?[83]、公表公報の段落【0055】?【0063】)


「[150]一方、広告露出位置情報の抽出およびスクロール・バー位置情報との比較をクライアント100において行われる場合、クライアント100には、このような機能を遂行するための広告モジュール(図示せず)が設置されることができ、このような広告モジュールは、ウェブサーバ116が提供するウェブページからオブジェクトタグ(Object Tag)を通じて自動でクライアント100にダウンロードされるものであって、ActiveXコントロール(ActiveX Control)形態で設置されることができる。
[151]また、広告モジュール(図示せず)は、ウェブブラウザで動作できるスクリプト(script)の形態でクライアントに提供することも可能であり、このような広告モジュールの提供方法や形態は、特に制限されない。」(段落[150]?[151]、公表公報の段落【0126】?【0127】)


「[156]図6は、前述した本発明の実施形態中、クライアント100において、広告露出位置情報およびウェブブラウザのスクロール・バー位置情報を抽出し、広告サーバへは広告データだけを要請する場合を仮定したものである。
[157]図6に示すように、先ず、ウェブサイト110を通じて提供されるウェブ文書がクライアント100に受信される(S600)。
[158]受信したウェブページの一部または全部が、クライアント100に設置されたウェブブラウザの画面を通じて提供される。
[159]このように受信したウェブページ内で広告が露出されるようにする位置情報を抽出する(S602)。
[160]一方、ユーザは、ウェブブラウザから提供されるユーザインターフェースにおいて、スクロール・バーを利用してウェブページを上下または左右に移動しながら、ウェブページ内の内容を確認するようになれば、スクロール・バーの位置情報が、好ましくは、本発明によるクライアント100に設置される広告モジュールに入力される(S604)。
[161]一方、広告モジュールはスクリプトの形態で提供されるか、別途のプログラムとしてActiveXコントロール(ActiveX Control)形態で設置されることができるということは前述した通りである。
[162]また、入力されるスクロール・バーの位置情報が予め設定された位置、すなわち、タグが存在するウェブページ内の位置にスクロール・バーが位置するか否かを判断し(S606)、タグが存在するウェブページ内の位置にスクロール・バーが位置する場合、ウェブページに含まれたタグによって、広告サーバ120に広告データを要請する(S608)。
[163]一方、タグによって、広告サーバ120に広告データを要請することは、タグが存在するウェブページ内の位置にスクロール・バーが位置する場合だけでなく、ウェブページ内でタグが存在する部分がウェブブラウザの画面に露出される場合にも行われることができる。
[164]例えば、ウェブページ内でタグが存在する部分、すなわち、広告露出位置を含むウェブページの一部がスクロール・バーの移動によって露出される場合に広告が提供されるようにするか、スクロール・バーの位置が正確に広告露出位置と一致する場合にだけ広告が提供されるようにすることが可能である。
[165]このような広告露出位置情報は、タグが挿入されたウェブページ内の位置情報として、ウェブページ内のタグが挿入された座標の情報であるか、またはウェブページ内のタグが挿入されたイメージやテキストのピクセルの位置情報(横ピクセルまたは/そして縦ピクセル)、より好ましくは、ピクセルの座標値情報を含む情報であってもよい。
[166]一方、広告サーバ120は、予め設定された広告データを転送することによって、広告データがクライアント100のディスプレイ画面に表示されて再生されるようにする。
[167]また、スクロール・バーの位置が、タグが存在するウェブページ内の位置から脱した場合、広告サーバ120における広告データの転送を中断するか、広告データの再生を中断することができる。
[168]例えば、ユーザがウェブページをスクロール(scroll)する間に、広告が提供される部分がウェブブラウザの画面から脱した場合、広告がこれ以上ユーザに提供されないようにする。
[169]このような広告データの転送および再生の中断は、クライアント100の要請による広告サーバ120における広告データ転送の中断や、広告サーバ120における広告データ転送の中断有無に関係なくクライアント100における広告データ再生の中断など、多様な方法で実施可能であることは明らかである。
[170]一方、ウェブページ内の広告は、広告が動画の形態で提供される場合、動画の停止画面またはイメージで提供され、スクロール・バーの位置に応じて動画が再生されるようにすることができる。
[171]また、ウェブページ内のテキスト形態で提供され、スクロール・バーの位置に応じてイメージや動画が再生されるようにすることもでき、ウェブページ内に何の表示も提供しないが、スクロール・バーの位置に応じてテキストやイメージまたは動画が表示または再生されるように構成することも可能であるということは明らかである。
[172]また、このような広告の再生は、ウェブページ内の一定領域における再生や、ウェブページの他にポップアップ(pop-up)ウィンドウのような別途のウィンドウを通じて提供するなどの多様な形態で実施可能である。
[173]また、広告の再生は、前述したように、イメージやテキストの表示または動画や音声の再生などを全て含むことができるということは前述した通りである。
[174]また、このようなイメージやテキストがウェブページに含まれて提供される場合、該当イメージやテキストの広告データの再生がなされるようにするピクセルの位置情報が広告露出位置情報に含まれることができるということは前述した通りである。
[175]
[176] このような本発明の好ましい一実施形態による複数のオンライン広告提供を可能にするスクロール・バーの位置情報を利用したオンライン広告提供方法が実現される順序を図7の例示を通じて詳細に説明する。
[177]図7は、本発明の好ましい一実施形態による複数のオンライン広告提供を可能にするスクロール・バーの位置情報を利用したオンライン広告提供方法が実現される順序を例示によって示す例示図である。
[178]図7に例示したように、ステップ700において、ウェブブラウザの画面を通じてユーザが最初に接する画面はウェブサーバを通じて受信したウェブページであり、図7に例示したように、広告露出位置710は全体ウェブページ700内に含まれ、予め設定されている。
[179]ステップ702のように、ユーザが、ウェブページ700を、スクロール・バーを利用して上下または左右に移動しながら、該当ウェブページ700を見る。
[180]ステップ704において、ユーザが見るウェブページ、すなわち、ユーザに露出されるウェブページ内に広告が露出される位置710、すなわち、タグが挿入された部分がウェブブラウザの画面でユーザに露出される場合に、広告がユーザに露出されるようになる。
[181]このような広告がユーザに表示されることは、図7では該当広告が大きく表示されるものとして例示したが、広告が提供される方法に特に制限はない。
[182]一方、タグが挿入された部分、すなわち、広告露出位置がウェブブラウザの画面でユーザに露出されることは、スクロール・バーが、タグが挿入された部分に位置する場合だけでなく、前述したように、組み込みオブジェクトのタグが挿入された部分がウェブブラウザの画面でユーザに露出される場合も可能であることは前述した通りである。
[183]ステップ706でユーザが見るウェブページにおいて、広告露出位置がユーザに表示されるウェブページから無くなると、広告露出が中断される。
[184]勿論、ステップ706のような、ユーザが見るウェブページから広告露出位置が無くなると広告露出が中断されることは、広告が含まれる部分がウェブページ内の最端部に位置するか、ウェブページ内における広告露出方法などの設定によって含まれないこともあり得るということは明らかである。
[185]図7に例示したように、本発明によるスクロール・バーの位置情報を利用した広告提供方法によれば、ユーザがウェブページを見ている間、ユーザに該当ウェブページ部分が露出されるか、スクロール・バーが位置する場合にのみ広告が提供されるので、ユーザの広告に対する興味を高めることができる。
[186]それのみならず、ユーザがウェブページを見ている場合にのみ広告が露出されるので、広告効果の測定も容易に行うことができる。」(段落[156]?[186]、公表公報の段落【0131】?【0160】)

a
上記イの段落[75]、[76]、[79]、[80]の記載によれば、ユーザ100(クライアント)は、ウェブサイトと広告サーバとに通信網を通じて連結され、ウェブサイトからウェブページを受信し、広告サーバから広告データを受信するものであり、また、上記ウによれば、クライアント100には、広告露出位置情報の抽出およびスクロール・バー位置情報との比較を行うための広告モジュールが設置され、当該広告モジュールは、ウェブサーバが提供するウェブページからオブジェクトタグを通じて自動でダウンロードされ、ActiveXコントロールやウェブブラウザで動作できるスクリプトであるから、先願明細書等には、
「クライアントは、ウェブサイトと広告サーバとに通信網を通じて連結され、ウェブサイトからウェブページを受信し、広告サーバから広告データを受信するものであり、
クライアントで動作し、ウェブササイトが提供するウェブページを通じて自動でダウンロードされるActiveXコントロールやウェブブラウザで動作できるスクリプトからなる広告モジュールであって、
広告露出位置情報の抽出およびスクロール・バー位置情報との比較を行う、
広告モジュール。」が記載されている。

b
上記エの段落[156]?[162]、[179]の記載によれば、上記aの「広告モジュール」は、「クライアントにおいて、ウェブサイトからウェブページを受信し、ユーザがスクロール・バーを利用してウェブページを上下、左右に移動すると、スクロール・バーの位置情報が入力され、入力されたスクロール・バーの位置情報が予め設定されたタグが存在するウェブページ内の位置にスクロール・バーが位置するか否かを判断し、タグが存在するウェブページ内の位置にスクロール・バーが位置する場合、ウェブページに含まれたタグによって、広告サーバに広告データを要請する」ものである。
また、上記エの段落[163]、[182]の記載によれば、上記の「スクロール・バーが位置するか否かの判断」は、スクロール・バーの位置ではなく、ウェブページ内でタグが存在する部分がウェブブラウザの画面に露出される場合でもよいから、上記aの「広告モジュール」は、「クライアントにおいて、ウェブサイトからウェブページを受信し、ユーザがスクロール・バーを利用してウェブページを上下、左右に移動すると、ウェブページ内でタグが存在する部分が、ウェブブラウザの画面に露出されるか否かを判断し、ウェブページ内でタグが存在する部分がウェブブラウザの画面に露出される場合、ウェブページに含まれたタグによって、広告サーバに広告データを要請する」ものである。
また、上記エの段落[164]、[165]、[174]の記載によれば、上記のウェブページのタグが存在する部分は、広告露出位置のことであり、広告露出位置情報は、ウェブページ内のタグが挿入されたイメージやテキストのピクセルの座標値情報を含むから、上記の「広告モジュール」は、「クライアントにおいて、ウェブサイトからウェブページを受信し、ユーザがスクロール・バーを利用してウェブページを上下、左右に移動すると、ウェブページ内でタグが存在するイメージやテキストのピクセルの座標値情報を含む広告露出位置情報が、ウェブブラウザの画面に露出されるか否かを判断し、広告露出位置情報がウェブブラウザの画面に露出される場合、ウェブページに含まれたタグによって、広告サーバに広告データを要請する」ものである

c
上記エの段落[166]の記載によれば、上記aの「広告モジュール」は、ウェブページに含まれたタグによって、広告サーバに広告データを要請し、上記aの「広告サーバ」は、広告データを転送することによって、広告データがクライアントのディスプレイ画面に表示されて再生されるようにするものである。
また、上記エの段落[180]の記載によれば、タグが挿入された部分は、ユーザに露出されるウェブページ内の広告が露出される位置である。
したがって、上記aの「広告モジュール」は、「ウェブページに含まれたタグによって、広告サーバに広告データを要請し、広告サーバからの広告データの転送を受け、広告データがクライアントのウェブページ内のタグが挿入された部分に露出されるよう表示再生する」ものである。

d
上記エの段落[170]の記載によれば、ウェブページ内の広告は、動画の停止画面で提供され、スクロール・バーの位置に応じて動画が再生されるようにしてもよいものである。

e
以上a?dによれば、先願明細書等には、
「クライアントは、ウェブサイトと広告サーバとに通信網を通じて連結され、ウェブサイトからウェブページを受信し、広告サーバから広告データを受信するものであり、
クライアントで動作し、ウェブササイトが提供するウェブページを通じて自動でダウンロードされるActiveXコントロールやウェブブラウザで動作できるスクリプトからなる広告モジュールであって、
クライアントにおいて、ウェブサイトからウェブページを受信し、ユーザがスクロール・バーを利用してウェブページを上下、左右に移動すると、
前記広告モジュールは、スクロール・バーの移動により、ウェブページ内でタグが存在するイメージやテキストのピクセルの座標値情報を含む広告露出位置情報が、ウェブブラウザの画面に露出されるか否かを判断し、広告露出位置情報がウェブブラウザの画面に露出される場合、ウェブページに含まれたタグによって、広告サーバに広告データを要請し、
広告サーバからの広告データの転送を受け、広告データがクライアントのウェブページ内のタグが挿入された部分に露出されるよう表示再生し、
ウェブページ内の広告は、動画の停止画面で提供され、スクロール・バーの位置に応じて動画が再生されるようにしてもよい、
広告モジュール。」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。

3. 対比・判断

本願発明と先願発明とを対比する。
(1)先願発明の「クライアント」は、本願補正発明の「ユーザ端末」に相当する。
(2)先願発明の「ウェブページ」、「広告データ」は、それぞれ、本願補正発明の「第2コンテンツ」、「第1コンテンツ」に相当する。
(3)先願発明の「ウェブサイト」と「広告サーバ」とが協働したものが、本願補正発明の「コンテンツ配信装置」に相当する。
(4)先願発明の「クライアントで動作し、ウェブサイトが提供するウェブページを通じて自動でダウンロードされるActiveXコントロールやウェブブラウザで動作できるスクリプトからなる広告モジュール」は、本願補正発明の「コンピュータで実現されユーザ端末に第1コンテンツを配信するコンテンツ配信装置から配信される端末用プログラム」に相当する。
(5)先願発明の「ウェブページ内でタグが存在するイメージやテキストのピクセルの座標値情報を含む広告露出位置情報」は、本願補正発明の「第2コンテンツ上の所定の基準位置」に相当し、先願発明の「前記広告モジュールは、スクロール・バーの移動により、ウェブページ内でタグが存在するイメージやテキストのピクセルの座標値情報を含む広告露出位置情報が、ウェブブラウザの画面に露出されるか否かを判断」することは、本願補正発明の「第2コンテンツ上の所定の基準位置が可視領域内に位置しているかを判断するステップ」に相当するといえる。
(6)先願発明の「広告露出位置情報がウェブブラウザの画面に露出される場合」、「広告データがクライアントのウェブページ内のタグが挿入された部分に露出されるよう表示再生」することは、本願補正発明の「前記判断ステップによる判断の結果に基づいて、前記第2コンテンツにおける前記所定の基準位置を含む又はその付近の所定の表示領域に表示される」「第1コンテンツの再生を制御する制御ステップ」に相当するといえる。
また、先願発明の「ウェブページ内の広告は、動画の停止画面で提供され、スクロール・バーの位置に応じて動画が再生されるようにしてもよい」ことは、広告データに対して「開始命令または開始信号の送信することで第1コンテンツの再生を制御する」ともいい得るものである。
したがって、先願発明の「広告露出位置情報がウェブブラウザの画面に露出される場合、ウェブページに含まれたタグによって、広告サーバに広告データを要請し、広告サーバからの広告データの転送を受け、広告データがクライアントのウェブページ内のタグが挿入された部分に露出されるよう表示再生し、ウェブページ内の広告は、動画の停止画面で提供され、スクロール・バーの位置に応じて動画が再生されるようにしてもよい」ことは、本願補正発明の「前記判断ステップによる判断の結果に基づいて、前記第2コンテンツにおける前記所定の基準位置を含む又はその付近の所定の表示領域に表示される第1コンテンツに対して開始命令または開始信号を送信することで前記第1コンテンツの再生を制御する制御ステップ」に相当するといえる。
(7)上記(1)?(6)によれば、本願発明と先願発明との間に相違はなく、本願補正発明は先願発明と同一である。

4.むすび

以上のとおり、本願補正発明は、本願出願日(2009年(平成21年)12月15日)より前を出願日2009年(平成21年)8月21日とする外国語でされた国際特許出願(PCT/KR2009/004661)であって、本願出願日後の2010年(平成22年)11月4日に国際公開(国際公開第2010/126205号)され、その後、特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文が提出された国際特許出願の国際出願日における明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が上記国際特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記国際特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第184条の13で読み替えて適用する特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項の規定により準用する特許法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について

1.本願発明

平成28年5月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年9月4日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「コンピュータで実現されユーザ端末に第1コンテンツを配信するコンテンツ配信装置から配信される端末用プログラムであって、前記ユーザ端末に、
第2コンテンツ上の所定の基準位置が可視領域内に位置しているかを判断する判断ステップと、
前記判断ステップによる判断の結果に基づいて、前記第2コンテンツにおける前記所定の基準位置を含む又はその付近の所定の表示領域に表示される第1コンテンツの再生を制御する制御ステップと、
を実行させることを特徴とする端末用プログラム。」

2.先願発明

先願発明は、上記「第2.」の「2.(2)先願発明」の欄に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から「第1コンテンツの再生を制御する」点について、「第1コンテンツに対して開始命令または開始信号を送信することで」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」の「3.」ないし「4.」に記載したとおり、先願発明と同一であるから、本願発明も、同様の理由により、先願発明と同一である。

4.むすび

本願発明は、本願出願日(2009年(平成21年)12月15日)より前を出願日2009年(平成21年)8月21日とする外国語でされた国際特許出願(PCT/KR2009/004661)であって、本願出願日後の2010年(平成22年)11月4日に国際公開(国際公開第2010/126205号)され、その後、特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文が提出された国際特許出願の国際出願日における明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が上記国際特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記国際特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第184条の13で読み替えて適用する特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-09 
結審通知日 2016-11-15 
審決日 2016-11-28 
出願番号 特願2014-159777(P2014-159777)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 16- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古河 雅輝  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 千葉 輝久
高瀬 勤
発明の名称 コンテンツ配信装置、コンテンツ配信方法、コンテンツ配信プログラム及び端末用プログラム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ