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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1323959
審判番号 不服2016-5151  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-07 
確定日 2017-02-07 
事件の表示 特願2014-559810「通信装置及び通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 6日国際公開,WO2013/129750,平成27年 3月23日国内公表,特表2015-508976,請求項の数(12)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2012年10月22日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2012年3月2日 米国)を国際出願日とする特許出願であって,平成27年7月10日付けで拒絶理由(以下,「原審拒絶理由」という。)が通知され,これに対し,同年9月29日に手続補正がなされ,同年12月4日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされ,これに対し,平成28年4月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正の適否
1.補正の内容
本件補正は,次の補正事項からなる。

(1)補正事項1
特許請求の範囲の請求項1を,
「 第1通信装置が第2通信装置にデータを送信する通信方法であって,
前記第1通信装置が,データ及び仮想シーケンス番号を利用してデータの誤りを検出するためのデータ誤り検出符号を計算するステップと,
前記第1通信装置が,ヘッダデータ及び前記仮想シーケンス番号を利用して前記ヘッダデータの誤りを検出するためのヘッダ誤り検出符号を計算するステップと,
前記第1通信装置が,前記データ及び前記データ誤り検出符号,前記ヘッダデータ及び前記ヘッダ誤り検出符号を含むパケットを生成するステップと,
前記第1通信装置が,前記パケットを前記第2通信装置に送信するステップと,を有し,
前記ヘッダ誤り検出符号を計算するステップは,前記第1通信装置と前記第2通信装置との間の接続関係を示す固有識別子を更に利用して計算され,
前記ヘッダ誤り検出符号は,前記固有識別子と前記仮想シーケンス番号及び前記ヘッダデータに基づいてハッシュ関数によって生成される,通信方法。」
とする補正。

(2)補正事項2
特許請求の範囲の請求項6を,
「 第1通信装置が第2通信装置からデータを受信する通信方法であって,
前記第1通信装置が,パケットを前記第2通信装置から受信するステップと,
前記第1通信装置が,前記パケットからデータ,受信データ誤り検出符号及び受信ヘッダ誤り検出符号を取得するステップと,
前記第1通信装置が,仮想シーケンス番号及び前記データを利用して比較データ誤り検出符号を計算するステップと,
前記第1通信装置が,ヘッダデータ及び前記仮想シーケンス番号を利用して前記ヘッダデータの誤り検出のための比較ヘッダ誤り検出符号を計算するステップと,
前記第1通信装置が,前記受信データ誤り検出符号,前記比較データ誤り検出符号,前記受信ヘッダ誤り検出符号と前記比較ヘッダ誤り検出符号に基づいて前記パケットに誤りがあるか否かを判断するステップと,を有し,
前記比較ヘッダ誤り検出符号を計算するステップは,前記第1通信装置と前記第2通信装置との間の接続関係を示す固有識別子を更に利用して計算され,
前記ヘッダ誤り検出符号は,前記固有識別子と前記仮想シーケンス番号及び前記ヘッダデータに基づいてハッシュ関数によって生成される,通信方法。」
とする補正。

2.補正の適否
(1)補正事項1について
本件補正の補正事項1は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ヘッダ誤り検出符号」について,「前記ヘッダ誤り検出符号は,前記固有識別子と前記仮想シーケンス番号及び前記ヘッダデータに基づいてハッシュ関数によって生成される」との限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。
また,特許法第17条の2第3項,第4項に違反するところはない。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「補正発明1」という。本件補正後の請求項2ないし12に記載された発明についても同様に「補正発明2」などという。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。
ただし,原審拒絶理由及び原査定において,引用された刊行物のうち,特開2010-011296号公報と,米国特許出願公開第2008/0195912号明細書とは,同等に扱われていることから,前者を主たる引用例とした場合について判断することとし,後者を主たる引用例とした場合についての判断は省略する。

ア 引用発明及び周知事項
(ア)引用発明
原査定で引用された特開2010-011296号公報(以下,「引用例」という。)には,「送受信回路,送信回路及び送受信方法」(発明の名称)に関して,図面とともに次の事項が記載されている。

a.「【0001】
本発明は,データとヘッダ情報を有するパケットを送信する送信回路と,パケットを受信する受信回路とを有する送受信回路に関する。」(第3ページ)

b.「【0006】
本発明の課題は,パケットに冗長な情報を付加することなく,送受信を行うことのできる送受信回路を提供することである。」(第3ページ)

c.「【0010】
(実施例1)
図1に本実施形態におけるネットワークシステム0の構成図を表す。ネットワーク30と各ノード10の送受信装置20を介して,ノード間でデータを送受信する。本実施形態におけるネットワークシステム0は,パケット順序保障がある。また,本実施形態におけるネットワーク30は,データリンク層レベルで送信確認と,再送制御を行うネットワークである。
【0011】
送受信装置20は,パケット送信回路200,ネットワークインタフェース回路400及びパケット受信回路300を有する。パケット送信回路200は,パケットをネットワーク30を介して,別のノード10の送受信装置20に送信する。パケット受信回路300は,別のノード10の送受信装置20からネットワーク30を介してパケットを受信する。ネットワークインタフェース回路400はノード10との間でパケットの送受信を行う。」(第4ページ)

d.「【0014】
図3は,本実施形態において送受信するパケット500のパケットフォーマットを表す。パケット通信方式では,まず送受信するデータをパケットと呼ぶ小さなデータに分割する。次にパケットを送信元のノードから送信先のノードに転送する。
【0015】
パケット500は,ヘッダ誤り検出符号502,ヘッダ504,データ506及びパケット誤り検出符号508を有する。ヘッダ誤り検出符号502は,本実施形態の手法で生成するシーケンス番号を畳み込んだ誤り検出符号である。ヘッダ誤り検出符号502はヘッダの誤りを検出するために用いられる。ヘッダ504は,パケットの送信元アドレス,パケットの送信先アドレス,パケットタイプ及びパケット長等の情報を有している。データ506には,任意の情報が含まれる。パケット誤り検出符号508は,データ506の誤りを検出するために用いられる。パケット500の各フィールド長は,例えば次の通りである。ヘッダ誤り検出符号502が2Byte,ヘッダ504が5Byte,データ506が8Byte単位の可変長及びパケット誤り検出符号508が4Byteである。
【0016】
また,本実施形態におけるパケット500の先頭8Byteには,パケットの先頭であることを表すSTPコードが,パケットの末尾8Byteには,パケットの末尾であることを表すENDコードが付加されている。ENDコードには,正常なパケットであることを表すEND,または,エラーを含んだパケットであることを表すEDBのいずれかの情報が書き込まれている。受信回路302は,ENDコードを参照することで,パケットの末尾を検出し,さらにパケットが正常なパケットであるか否かを判定することができる。」(第4-5ページ)

e.「【0017】
図4は,本実施形態におけるパケット送信回路200の構成を表す。パケット送信回路200は,送信回路202,ヘッダ誤り検出符号生成回路204,パケット誤り検出符号生成回路203及び送信シーケンス番号制御回路207を有する。
【0018】
パケット送信回路200には,図1において説明したネットワークインタフェース回路400を経由し,ヘッダとデータが入力する。送信シーケンス番号制御回路207は,次に送信するパケットのシーケンス番号を管理する第一送信カウンタ205と受信側で正常受信できたパケットのシーケンス番号を管理する第二送信カウンタ206を有しており,送信するパケットのシーケンス番号を管理している。第一送信カウンタ205は,パケット送信回路200がパケットを送信するとインクリメントされる。第二送信カウンタ206はパケット受信回路300が正常に受信できたパケットのシーケンス番号にインクリメントされる。
【0019】
ヘッダ誤り検出符号生成回路204は,ネットワークインタフェース回路400からパケット送信回路200に入力するヘッダと,第一送信カウンタ205が示しているシーケンス番号とからヘッダ誤り検出符号を生成する。パケット誤り検出符号生成回路203は,ネットワークインタフェース回路400からパケット送信回路200に入力するデータからパケット誤り検出符号を生成する。なお,ヘッダ誤り検出符号生成回路204及びパケット誤り検出符号生成回路203は,誤り検出符号の生成アルゴリズムとして,例えばCRC(Cyclic Redundancy Check)アルゴリズム等の任意のアルゴリズムを使用すれば良い。送信回路202は,パケットフォーマットに従って,ヘッダ誤り検出符号生成回路204が生成したヘッダ誤り検出符号,ヘッダ,データ及びパケット誤り検出符号生成回路203が生成したパケット誤り検出符号をネットワーク30を経由して宛先のノードに送信する。」(第5ページ)

f.「【0020】
以下,図5を用いてパケット送信の処理について説明する。ステップS101において,送信回路202は,ヘッダとデータを受信する。処理はステップS102へ移行する。
【0021】
ステップS102において,ヘッダ誤り検出符号生成回路204は,第一送信カウンタ205が示すシーケンス番号と,送信回路202が受信したヘッダとからヘッダ誤り検出符号を生成する。処理はステップS103へ移行する。
【0022】
ステップS103において,パケット誤り検出符号生成回路203は,送信回路202が受信したデータからパケット誤り検出符号を生成する。処理はステップS104へ移行する。
【0023】
ステップS104において,送信回路202は,パケットフォーマットに従い,ヘッダ誤り検出符号,ヘッダ,データ及びパケット誤り検出符号をネットワーク30に送信する。処理は終了する。」(第5-6ページ)

g.「【0024】
図6は,本実施形態におけるヘッダ誤り検出符号の生成方法を表した概念図である。図6に表すように本実施形態におけるヘッダ誤り検出符号は,シーケンス番号とパケットヘッダ情報を用いて演算することによって生成される。」(第6ページ)

前記a.ないしg.を総合すると,引用例には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「 ノードが別のノードにデータを送信する方法であって,
前記ノードが,データの誤りを検出するパケット誤り検出符号を生成するステップと,
前記ノードが,送信元アドレスと送信先アドレスを含むパケットヘッダ情報及びシーケンス番号を用いた演算によりヘッダ誤り検出符号を生成するステップと,
前記ノードが,前記データ及び前記パケット誤り検出符号,前記パケットヘッダ情報及び前記ヘッダ誤り検出符号を含むパケットを生成するステップと,
前記ノードが,前記パケットを前記別のノードに送信するステップと,を有し,
前記ヘッダ誤り検出符号は,CRC生成アルゴリズムによって生成される,通信方法。」

(イ)周知事項
原査定で引用された国際公開第2012/009691号(以下,「周知例1」という。)には,「METHOD AND APPARATUS FOR SAVING POWER BY USING SIGNAL FIELD OF PREAMBLE」([当審仮訳]プリアンブルの信号フィールドを用いることによる省電力のための方法および装置;発明の名称)に関して,図面(特に,FIG.4及びFIG.5)とともに次の事項が記載されている。

h.「[0063] In order to reduce the likelihood of a CRC passing at an unintended destination, the position of where at least one of the source or destination identifier bits are inserted within the SIG field bits before computing the CRC sum may vary. An example of this procedure that may be performed at the transmitter node is illustrated in FIG. 5.
[0064] As illustrated in FIG. 5, a parameter K [0065] At a receiver STA, the STA may repeat the aforementioned procedure of inserting at least one of STA ID bits or source ID bits by applying the function used at the transmitter and the STA's own ID. If a computed CRC sum does not pass (i.e., if it is not equal to the CRC sum 510), then the STA may stop decoding the received packet.
[0066] The above procedure of inserting at least one of the destination ID or source ID bits may be also performed for other partitions of the SIG field bits. For example, the SIG field bits may be split into three or four parts of varying sizes. Similarly, the destination and/or source ID bits may be also split up into several parts and then inserted in between the partitions of the SIG field before computing the CRC sum.
[0067] It should be noted that the proposed scheme may preserve the order of the SIG field bits. In one aspect of the present disclosure, one of the bits of the SIG field may be used to indicate if the CRC sum was computed using only the SIG field bits or using the proposed augmentation method.
[0068] FIG. 6 illustrates example operations 600 that may be performed at a transmitter side (e.g., an access point) of a wireless communications system in accordance with certain aspects of the present disclosure. At 602, the transmitter may define a first signal field by altering a second signal field, wherein the alteration may be based on at least one identifier. At 604, a checksum may be generated for the first signal field. At 606, the transmitter may transmit a packet comprising the second signal field with the checksum generated for the first signal field therein.
[0069] Locations of bits of the second signal field modified during the alteration may be determined based on the at least one identifier. In one aspect of the present disclosure, the alteration may comprise inserting the at least one identifier into the second signal field to define the first signal field. In another aspect, the alteration may comprise performing XOR operation between at least one bit of the second signal field and at least one bit of the at least one identifier.
[0070] In yet another aspect, the alteration may comprise dividing the second signal field into a plurality of sub-fields, and altering bits in one or more of the sub-fields. The plurality of sub-fields may comprise a first non-altered sub-field and a second non- altered sub-field, and at least one of a size of the first non-altered sub-field or a size of the second non-altered sub-field may be based on the at least one identifier. The at least one of the size of first non-altered sub-field or the size of second non-altered sub-field may be provided to an apparatus associated with the at least one identifier.
[0071] In one aspect of the present disclosure, the at least one identifier may comprise at least one of a source ID or a destination ID. The transmitter node may provide information related to the alteration to an apparatus associated with the destination ID. Further, the transmitter node may indicate, to an apparatus associated with the destination ID, a procedure used for the alteration.
[0072] In another aspect, the at least one identifier may comprise a group ID. The transmitter node may indicate, to an apparatus associated with the group ID, a procedure used for the alteration.
[0073] In one aspect of the present disclosure, the checksum may be placed in a header of the packet being transmitted in accordance with IEEE 802.11 family of wireless communications standards. The header may represent a service field of the packet.
[0074] For certain aspects of the present disclosure, the second signal field may comprise at least one of a VHT-SIGA field or a VHT-SIGB field of the packet, wherein the packet may be transmitted in accordance with IEEE 802.11 family of wireless communications standards.
[0075] For certain aspects of the present disclosure, the at least one identifier may comprise at least one of: an association identification (AID) of a source apparatus transmitting the packet, an AID of a destination apparatus, or a Basic Service Set Identification (BSSID) of an access point serving at least one of the source apparatus or the destination apparatus.
[0076] FIG. 7 illustrates example operations 700 that may be performed at a receiver side of a wireless communications system (i.e., at a user STA or an access terminal) in accordance with certain aspects of the present disclosure. At 702, the STA may receive a packet comprising a first signal field with a checksum therein. At 704, the STA may define a second signal field by altering the first signal field, wherein the alteration may be based on at least one identifier. At 706, another checksum may be generated for the second signal field. At 708, the generated checksum may be compared with the received checksum. At 710, the STA may determine that the packet is associated with the at least one identifier if the generated checksum matches the received checksum. In an aspect, further processing of the packet by the STA may be disabled, if the generated checksum does not match the received checksum.
[0077] In one aspect, the at least one identifier may comprise at least one of a source ID or a destination ID. In another aspect, the at least one identifier may comprise a group ID associated with one or more STAs.
[0078] In an aspect, the second signal field may be created from the first signal field when another checksum generated for the first signal field does not match the received checksum. In an aspect, the STA may receive signaling information related to the alteration, and the second signal field may be defined at the STA based on the signaling information.
[0079] In summary, the present disclosure proposes a method of indicating to a destination STA through a preamble CRC that the destination STA may be the intended destination of a transmission packet. The present disclosure also proposes a method of indicating to a destination STA through a preamble CRC that the destination STA may not be the intended destination of a transmission packet.
[0080] In an aspect, a SIG field of a preamble within a packet intended for a destination STA may be generated by scrambling bits of the SIG field using a scrambling function that utilizes the destination and/or source identifiers. In another aspect, the SIG field bits of preamble may be augmented with at least one of source or destination identifier bits. Then, a CRC sum may be computed for the augmented bits, and the computed CRC sum may be inserted in the transmitted SIG field.
[0081] In one aspect of the present disclosure, the augmentation of the SIG field bits with at least one of destination or source identifier bits may be achieved by pre-fixing or post-fixing at least one of the destination or source identifier bits to the SIG field bits.」(第16-19ページ)
([当審仮訳]
[0063]
意図されない宛先においてCRCが合格する可能性を低減するために,ソース識別子ビットまたは宛先識別子ビットのうちの少なくとも1つが,CRCサムを計算する前に,SIGフィールド・ビット内に挿入される位置は変動しうる。送信機ノードにおいて実行されうるこの手順の例が,図5に例示されている。
[0064]
図5に例示されているように,(例えば,ある関数を用いて)宛先IDまたはソースIDのうちの少なくとも1つに基づいて,パラメータK<Nが選択されうる。ここで,プリアンブルのSIGフィールド・ビット502は,合計Nビットを備えうる。SIGフィールド502のこれらNビットは,Kビットと,N-Kビットとからなる2つのグループ(すなわち,図5に例示されるようなグループ504とグループ506)へ分割されうる。宛先識別子ビットおよび/またはソース識別子ビット508は,その後,最初のK個のビット504の後に挿入されうる。そして,N-K個の残りのビット506が,CRCサム510を計算する前に,このビット・シーケンスへ追加されうる。
[0065]
受信機STAでは,このSTAは,送信機とSTA自身のIDにおいて使用される関数を適用することによって,STA IDビットまたはソースIDビットのうちの少なくとも1つを挿入する,前述した手順を反復しうる。計算されたCRCサムが合格しない場合(すなわち,CRCサム510に等しくない場合),STAは,受信されたパケットを復号することを停止しうる。
[0066]
宛先IDビットまたはソースIDビットのうちの少なくとも1つを挿入する前述した手順はまた,SIGフィールド・ビットのその他の分割のために実行されうる。例えば,SIGフィールド・ビットは,可変サイズの3または4の部分に分割されうる。同様に,宛先IDビットおよび/またはソースIDビットもまた,いくつかの部分に分割され,その後,CRCサムを計算する前に,SIGフィールドの分割間に挿入されうる。
[0067]
提案されたスキームは,SIGフィールド・ビットの順序を維持しうることが注目されるべきである。本開示の1つの態様では,SIGフィールドのビットのうちの1つは,CRCサムが,SIGフィールド・ビットのみを用いて計算されているか,または,提案された追加方法を用いて計算されているかを示すために使用されうる。
[0068]
図6は,本開示のある態様にしたがって,無線通信システムの送信機側(例えば,アクセス・ポイント)において実行されうる動作600の例を例示する。602では,送信機は,第2の信号フィールドを変更することによって,第1の信号フィールドを定義しうる。この変更は,少なくとも1つの識別子に基づきうる。604では,第1の信号フィールドのためのチェックサムが生成されうる。606では,送信機は,第1の信号フィールドのために生成されたチェックサムを備えた第2の信号フィールドを備えるパケットを送信しうる。
[0069]
変更中に修正された第2の信号フィールドのビットの位置は,少なくとも1つの識別子に基づいて判定されうる。本開示の1つの態様では,この変更は,第2の信号フィールドに,少なくとも1つの識別子を挿入し,第1の信号フィールドを定義することを備えうる。別の態様では,この変更は,第2の信号フィールドの少なくとも1つのビットと,少なくとも1つの識別子の少なくとも1つのビットとの間で,XOR演算を実行することを備えうる。
[0070]
また別の態様では,この変更は,第2の信号フィールドを複数のサブ・フィールドに分割することと,これらサブ・フィールドのうちの1または複数におけるビットを変更することと,を備えうる。複数のサブ・フィールドは,第1の変更されていないサブ・フィールドと,第2の変更されていないサブ・フィールドとを備え,第1の変更されていないサブ・フィールドのサイズ,または,第2の変更されていないサブ・フィールドのサイズのうちの少なくとも1つは,少なくとも1つの識別子に基づきうる。第1の変更されていないサブ・フィールドのサイズ,または,第2の変更されていないサブ・フィールドのサイズのうちの少なくとも1つは,少なくとも1つの識別子に関連付けられた装置に提供されうる。
[0071]
本開示の1つの態様では,少なくとも1つの識別子は,ソースIDまたは宛先IDのうちの少なくとも1つを備えうる。送信機ノードは,この変更に関連する情報を,宛先IDに関連付けられた装置に提供しうる。さらに,送信機ノードは,この変更のために使用された手順を,宛先IDに関連付けられた装置へ示しうる。
[0072]
別の態様では,少なくとも1つの識別子は,グループIDを備えうる。送信機ノードは,この変更のために使用された手順を,グループIDに関連付けられた装置へ示しうる。
[0073]
本開示の1つの態様では,無線通信規格のIEEE 802.11体系にしたがって送信されたパケットのヘッダに,チェックサムが配置されうる。このヘッダは,パケットのサービス・フィールドを示しうる。
[0074]
本開示のある態様の場合,第2の信号フィールドは,パケットのVHT-SIGAフィールドまたはVHT-SIGBフィールドのうちの少なくとも1つを備えうる。このパケットは,無線通信規格のIEEE 802.11体系にしたがって送信されうる。
[0075]
本開示のある態様の場合,少なくとも1つの識別子は,パケットを送信しているソース装置の関連付け識別子(AID),宛先装置のAID,または,ソース装置または宛先装置のうちの少なくとも1つにサービス提供するアクセス・ポイントの基本サービス・セット識別情報(BSSID),のうちの少なくとも1つを備えうる。
[0076]
図7は,本開示のある態様にしたがって,無線通信システムの受信機側(すなわち,ユーザSTAまたはアクセス端末)で実行されうる動作700の例を図示する。702では,STAが,チェックサムを備えた第1の信号フィールドを備えるパケットを受信しうる。704では,STAが,第1の信号フィールドを変更することにより第2の信号フィールドを定義しうる。この変更は,少なくとも1つの識別子に基づく。706では,第2の信号フィールドのために,別のチェックサムが生成されうる。708では,生成されたチェックサムが,受信されたチェックサムと比較されうる。710では,生成されたチェックサムが,受信されたチェックサムと一致する場合,STAは,パケットが,少なくとも1つの識別子に関連付けられていると判定しうる。態様では,生成されたチェックサムが,受信されたチェックサムと一致しない場合,STAによるパケットのさらなる処理がディセーブルされうる。
[0077]
1つの態様では,少なくとも1つの識別子は,ソースIDまたは宛先IDのうちの少なくとも1つを備えうる。別の態様では,少なくとも1つの識別子は,1または複数のSTAに関連付けられたグループIDを備えうる。
[0078]
態様では,第1の信号フィールドのために生成された別のチェックサムが,受信されたチェックサムに一致しない場合,第1の信号フィールドから第2の信号フィールドが生成されうる。態様では,STAは,この変更に関連するシグナリング情報を受信しうる。そして,このシグナリング情報に基づいて,STAにおいて,第2の信号フィールドが定義されうる。
[0079]
要約すると,本開示は,宛先STAが送信パケットの意図された宛先でありうることを,プリアンブルCRCによって,宛先STAへ示す方法を提案する。本開示はさらに,宛先STAが送信パケットの意図された宛先ではないことがありうることを,プリアンブルCRCによって,宛先STAへ示す方法を提案する。
[0080]
態様では,宛先識別子および/またはソース識別子を利用するスクランブリング関数を用いてSIGフィールドのビットをスクランブルすることによって,宛先STAへ向けられたパケット内のプリアンブルのSIGフィールドが生成されうる。別の態様では,プリアンブルのSIGフィールド・ビットに,ソース識別子ビットまたは宛先識別子ビットのうちの少なくとも1つが加えられうる。その後,加えられたビットについてCRCサムが計算され,計算されたCRCサムが,送信されるSIGフィールドに挿入されうる。
[0081]
本開示の1つの態様では,SIGフィールド・ビットに,宛先識別子ビットまたはソース識別子ビットのうちの少なくとも1つを加えることは,宛先識別子ビットまたはソース識別子ビットのうちの少なくとも1つをSIGフィールド・ビットの前に加えること,または後に加えることによって達成されうる。)

前記h.より,周知例1には,次の事項が記載されていると認める。(以下,これを「周知事項1」という。)

「 送信機が,ソース装置の識別子,宛先装置の識別子及び信号フィールドを用いてCRCを計算し,ソース装置の識別子及び宛先装置の識別子を含まず,信号フィールド,CRC及びデータを含むパケットを生成し,受信機に送信すること。」

また,原査定で引用された米国特許出願公開第2002/0067758号明細書(以下,「周知例2」という。)には,「Data terminal and coding method for increased packet reliability in a frequency hopping system」([当審仮訳]周波数ホッピングシステムにおける増大するパケット信頼性のためのデータ端末及びコーディング方法;発明の名称)に関して,図面とともに次の事項が記載されている。

i.「[0015] Referring to FIGS. 2 and 3 a flow chart of a technique used for communicating a data packet in a frequency hopping system is shown, in accordance with the preferred embodiment of the present invention. FIG. 2 shows steps relevant to encoding and transmitting a data packet transmitted in one frequency hop performed in the first data terminal 110 by the processor 122 under control of the program instruction segments in program memory 124. The data packet is part of a data message. At step 205, an identifier of a link is determined during a setup of the link between the first terminal 110 and the second terminal 160. The identifier is preferably an identity of the first terminal 110, but, alternatively can be an identity of the second terminal 160, and alternatively can be an identity of the link between the first terminal 110 and the second terminal 160 that is independent of the identity of the first terminal 110 and second terminal 160, and alternatively can be a combination of any two or all three of three aforementioned identities. Depending on which identity is used as the identifier, the identifier is either transmitted by the first data terminal 110 to the second data terminal 160, or vice versa, during the setup. The identifier is preferably unique within the universe of any terminals or links that could cause interference with the second terminal 160. A random number from a large enough range of numbers can be sufficiently reliable for the purpose of the link identity. At step 210, in accordance with the preferred embodiment of the present invention, the first terminal 110 transmits the identifier for reception by the second terminal 160. At step 215, a loop is setup in which data packets of the messages or calls are encoded and transmitted. The remaining steps in FIG. 2 are the steps to encode and transmit one data packet.
[0016] At step 220, an information portion of the data message that is small enough to be included in one data packet is determined. The information portion is preferably a next unsent portion of the message or call, having N or fewer characters or digital words, wherein N is the number of characters or digital words that are transmitted in each packet. At step 225, a transmit redundancy check code is generated over the information portion determined at step 220 and the identifier of the link being used to communicate the present data packet. "Generating over" means that a binary logic function (a redundancy check code generator) that generates the redundancy check code is used to transform a combination of the information portion and the identifier of the link, the combination being one wherein the bits of the information portion and the identifier of the link are merged into one binary value. The transmit redundancy check code is generated using a predetermined redundancy check code generator that is preferably a conventional redundancy check code generator that generates a redundancy check code such as the cyclic redundancy check code known as CRC-16 to those of ordinary skill in the art. This is defined by the generator polynomial: g(x)=1+x^(2)+x^(15)+x^(16). Other redundancy check codes can be used equally well.
[0017] At step 230, the data packet is generated, comprising the information portion and the redundancy check code, without the identifier. Preferably, the information portion is transmitted first and the transmit redundancy check character is transmitted second, but the opposite order or interlacing can be used equally well. At step 235, the data packet is transmitted. (第2ページ)
([当審仮訳]
[0015] 図2及び3を参照すると,呼の発明の好ましい実施形態に従って,周波数ホッピングシステムにおけるデータパケットを通信するための技術のフローチャートが示されている。図2は,第1のデータ端末110においてプロセッサ122によってプログラムメモリ124のプログラム命令部分の制御下で実行される,1つの周波数ホップにおいて伝送されるデータパケットを符号化し伝送することに関連するステップを示す。データパケットは,データメッセージの一部である。ステップ205において,第1の端末110と第2の端末160との間のリンクのセットアップの間に,リンク識別子が決定される。リンク識別子は,好ましくは,第1の端末110の識別子であるが,第2の端末160の識別子であってもよく,第1の端末110及び第2の端末160の識別子とは独立した,第1の端末110と第2の端末160の間のリンクの識別子であってもよく,または,これらのうちのいずれか2つの識別子の組み合わせ又はこれら3つのすべての識別子の組み合わせであってもよい。リンク識別子としてどの識別子が用いられるかに応じて,リンク識別子は,第1の端末110から第2の端末160へ伝送されるか,その逆方向の伝送が,セットアップの間になされる。リンク識別子は,好ましくは,第2の端末160との間で干渉を引き起こし得るあらゆる端末又はリンクの間でユニークなものである。数字の十分な広い範囲からの乱数は,リンクを識別する目的上,十分に信頼できるものとなり得る。ステップ210において,この発明の好ましい実施形態に従って,第1の端末110は第2の端末160により受信されるリンク識別子を伝送する。ステップ215において,メッセージ又は呼のデータパケットが符号化され伝送されることが繰り返される。図2の残りのステップは,1つのデータパケットを符号化し伝送するステップである。
[0016] ステップ220において,1つのデータパケットに含めることができる程度に小さい,データメッセージの情報部分が,決定される。情報部分は,好ましくは,まだ送られていない次のメッセージ又は呼の部分であり,N又はこれ以下の文字又はディジタル語からなり,ここで,Nは,各パケットにおいて伝送される文字又はディジタル語の数である。ステップ225において,ステップ220において決定された情報部分と,現在のデータパケットを通信するために使用されるリンクのリンク識別子に対して伝送冗長チェックコードが生成される。「…に対して…生成される」とは,冗長チェックコードを生成する二値論理関数(冗長チェックコード生成関数)が,情報部分とリンク識別子の組み合わせを変換するために使用されることを意味する。この組み合わせは,情報部分とリンク識別子のビットが1つの二値の値に合成することである。この伝送冗長チェックコードとしては,好ましくは,CRC-16のような,当業者によく知られた従前の冗長チェックコード生成関数であって,事前に決定されたものが使用される。これは,生成多項式g(x)=1+x^(2)+x^(15)+x^(16)として定義される。他の冗長チェックコードも,同様に使用され得る。
[0017] ステップ230において,情報部分及び冗長チェックコードを含むが,リンク識別子を含まないデータパケットが生成される。好ましくは,最初に情報部分が伝送され,次に冗長チェックコードが伝送されるが,逆の順序又はインターレース方式も同様に使用され得る。ステップ235において,データパケットが伝送される。)

前記i.より,周知例2には,次の事項が記載されていると認める。(以下、これを「周知事項2」という。)

「 第1の端末が,第1の端末と第2の端末との間のリンク識別子を決定し,情報部分とリンク識別子との組み合わせを,冗長チェックコード生成関数により冗長チェックコードに変換し,情報部分と冗長チェックコードを含むが,リンク識別子を含まないデータパケットを生成し,第2の端末に送信すること。」

イ 対比
補正発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「ノード」と「別のノード」はそれぞれ,補正発明1の「第1通信装置」と「第2通信装置」に相当する。
引用発明において,「パケット誤り検出符号」が,「データの誤りを検出する」ことを目的としている以上,「データ」を用いて(利用して)生成されることは自明である。また,引用発明において,「符号」を「生成」することは,「符号」を「計算」することに等しいことは自明である。
そうすると,引用発明と補正発明1とは,「第1通信装置」が,「少なくともデータを利用してデータの誤りを検出するための符号を計算するステップ」を有する点において共通する。

引用発明の「パケットヘッダ情報」と,補正発明1の「ヘッダデータ」とは,「所定のデータ」である点において共通する。同様に,引用発明の「シーケンス番号」と補正発明1の「仮想シーケンス番号」とは,「所定の番号」である点において共通する。
また,引用発明の「ヘッダ誤り検出符号」と補正発明1の「ヘッダ誤り検出符号」とは,前記「所定のデータ」の誤りを検出するための符号である点において共通する。なお,引用発明において,「演算」により「符号」を「生成」することは,「符号」を「計算」することに等しい。
そうすると,引用発明と補正発明1とは,「第1通信装置」が,「所定のデータ及び所定の番号を利用して前記所定のデータの誤りを検出するための符号を計算するステップ」を有する点において共通する。

そして,引用発明と補正発明とは,「第1通信装置」が,「前記データ及び前記データの誤りを検出するための符号,前記所定のデータ及び前記所定のデータの誤りを検出するための符号を含むパケットを生成するステップ」及び「前記パケットを前記第2通信装置に送信するステップ」とを有する点において共通する。

ウ 一致点・相違点
以上を参酌すれば,補正発明1と引用発明とは,以下の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「 第1通信装置が第2通信装置にデータを送信する通信方法であって,
少なくともデータを利用してデータの誤りを検出するための符号を計算するステップと,
前記第1通信装置が,所定のデータ及び所定の番号を利用して前記所定のデータの誤りを検出するための符号を計算するステップと,
前記第1通信装置が,前記データ及び前記データの誤りを検出するための符号,前記所定のデータ及び前記所定のデータの誤りを検出するための符号を含むパケットを生成するステップと,
前記第1通信装置が,前記パケットを前記第2通信装置に送信するステップと,を有する,
通信方法。」

[相違点1]
「データの誤りを検出するための符号を計算するステップ」において,補正発明1は,「データ」及び「仮想シーケンス番号」を利用するのに対し,引用発明は,「データ」のみを利用する点。

[相違点2]
「所定のデータ」の誤りを検出するための符号を計算するステップ」において,補正発明1は,「ヘッダデータ」と「仮想シーケンス番号」を利用し,さらに,「前記第1通信装置と前記第2通信装置との接続関係を示す固有識別子」を利用するのに対し,引用発明は,「送信元アドレスと送信先アドレスを含むパケットヘッダ情報」及び「シーケンス番号」を利用する点。

[相違点3]
前記[相違点2]に関連し,生成される「パケット」に含まれる「所定のデータ」が,補正発明1は,「ヘッダデータ」であるのに対し,引用発明は,「パケットヘッダ情報」である点。

[相違点4]
前記[相違点2]に加え,補正発明1は,「ヘッダ誤り検出符号」を「ハッシュ関数」により生成するのに対し,引用発明は,「ヘッダ誤り検出符号」を「CRCアルゴリズム」により生成する点。

エ 判断
事案に鑑みて,まず[相違点2]について検討する。

補正発明1においては,「ヘッダ誤り検出符号」を生成するために,「ヘッダデータ」と「仮想シーケンス番号」のみならず,さらに,「前記第1通信装置と前記第2通信装置との接続関係を示す固有識別子」を利用していることから,補正発明1における「ヘッダデータ」には,「前記第1通信装置と前記第2通信装置との接続関係を示す固有識別子」又はこれに関連する情報が含まれていないと解するのが合理的である。実際,本願明細書において,「ヘッダ誤り検出符号」が生成される対象となる「ヘッダデータ」は,明細書の段落【0040】及び【0048】並びに図3に記載されているように,「命令フィールド」及び「予約フィールド」からなる「(安全)ヘッダフィールド」であり,「あて先アドレスフィールド」,「送信先アドレスフィールド」等を含む「パケットヘッダ」(明細書の段落【0057】,図4参照。)とは異なり,「前記第1通信装置と前記第2通信装置との接続関係を示す固有識別子」を含まないものである。一方,引用発明1の「パケットヘッダ情報」は,「前記第1通信装置と前記第2通信装置との接続関係を示す固有識別子」に相当する「送信元アドレスと送信先アドレス」を含むものである。
したがって,引用発明1の「パケットヘッダ情報」と,補正発明1の「ヘッダデータ」とは,本質的に異なるものであるから,前記「パケットヘッダ情報」から生成される引用発明1の「ヘッダ誤り検出符号」は,前記「ヘッダデータ」から生成される補正発明1の「ヘッダ誤り検出符号」とは,技術的に異なるものである。
また,周知事項1は,「信号フィールド」の誤り訂正に関するものであり,周知事項2は,「情報部分」の誤り訂正に関するものであり,いずれも「ヘッダ」の誤り訂正に関するものではないから,引用発明の「パケットヘッダ情報」の誤り訂正に,周知事項1又は周知事項2を適用する動機付けも存在しない。
したがって,引用発明に周知事項1又は周知事項2を適用することにより,[相違点2]に係る補正発明1に係る構成を当業者が容易に想到し得たということはできない。

オ 小括
よって,他の相違点について検討するまでもなく,補正発明1は,当業者が引用発明に基づいて周知事項を参酌することにより容易に発明することができたとはいえない。
また,他に補正発明1を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,本件補正の補正事項1は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(2)補正事項2について
補正発明6は,補正発明1を受信側の装置が行う方法として記載したものであり,実質的に,補正発明の特別な技術的特徴をすべて包含するものである。
よって,補正事項2についても,補正事項1と同様に,特許法第17条の第3項ないし第6項に違反するところはない。

3.むすび
本件補正は,特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり,特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適当するから,本願の請求項1ないし12に係る発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものである。(以下,本願の請求項1ないし12に係る発明を,「本願発明1」などという。)
そして,本願発明1及び本願発明6は,上記第2の2.のとおり,当業者が引用発明に基づいて周知事項を参酌することにより容易に発明することができたものではない。
また,本願発明1又は本願発明6を直接又は間接的に引用する本願発明2ないし5並びに本願発明7ないし12は,本願発明1又は本願発明6に係る発明をさらに限定した発明であるから,当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,本願については,原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-24 
出願番号 特願2014-559810(P2014-559810)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 谷岡 佳彦  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 山中 実
林 毅
発明の名称 通信装置及び通信方法  
代理人 鶴田 準一  
代理人 青木 篤  
代理人 中村 健一  
代理人 河合 章  
代理人 南山 知広  

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