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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06T
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06T
管理番号 1323965
審判番号 不服2016-1062  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-25 
確定日 2017-02-07 
事件の表示 特願2013-533419「描画装置、描画方法及び描画プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月21日国際公開、WO2013/038548、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
1.手続
本願は、2011年(平成23年)9月15日を国際出願日とする特許出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成27年 5月26日(起案日)
手続補正 :平成27年 7月27日
拒絶査定 :平成27年10月22日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成28年 1月25日
手続補正 :平成28年 1月25日
前置審査報告 :平成28年 2月19日
拒絶理由(当審) :平成28年 9月29日(起案日)
手続補正 :平成28年12月 5日

2.査定
原審での査定の理由は、概略、以下のとおりである。

本願の各請求項に係る発明(平成27年7月27日付け手続補正書による)は、下記刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1:特開2000-242631号公報
刊行物2:特開2000-197769号公報
刊行物3:特開2007-226572号公報
刊行物4:国際公開第99/60526号
刊行物5:原田隆宏,外3名,“粒子ベースシミュレーションの並列化”,情報処理学会論文誌,社団法人情報処理学会,2007年11月15日,第48巻,第11号,p.3557-3567

3.当審における拒絶の理由(平成28年9月29日付け)は、概略、以下のとおりである。

この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


(A)請求項1の記載について
請求項1の「互いに隣り合う第1の節点と第2の節点とを結ぶ線分の勾配が予め定められた閾値より大きい場合、前記第1の節点と前記第2の節点の間に有る第3の節点と前記第1の節点とを結ぶ第1の辺と、前記第3の節点と前記第2の節点とを結ぶ第2の辺とを含むように生成された多角形面が含まれる複数の多角形面の各々を、1枚ずつ前記流線方向に連結した帯状面」とある記載は不明確である。
例えば、
(a)「互いに隣り合う第1の節点と第2の節点とを結ぶ線分の勾配」とは、単に第1の節点と第2の節点との間を結ぶ線分の勾配である。その値について、閾値との大小関係の比較を行っているが、そもそも、その勾配を求める基準が明らかでない。また、その勾配が予め定められた閾値より大きい場合に多角形面を生成する技術的意義も明らかでない(勾配が閾値よりも大きいことを条件に多角形面の数を増やしたからといって、なぜ帯状面を滑らかにすることができるのか。)
(b)「前記第1の節点と前記第2の節点の間に有る第3の節点と前記第1の節点とを結ぶ第1の辺と、前記第3の節点と前記第2の節点とを結ぶ第2の辺とを含むように生成された多角形面」の「第1の辺」と「第2の辺」は、本願の図4Cに示されるような、各流線において生成した新たな節点を結ぶ新たな辺H401aと隣接する既存の辺H401、H402等とは異なるものであり、請求項1に記載の「第1の辺」と「第2の辺」とを含むように生成された多角形面が、どのようなものか明らかでない。

上記(a),(b)に関し、本願明細書の
「辺の追加は、例えば以下のように行えばよい。
(1)各流線において隣り合う2つの節点を結ぶ線分の勾配(勾配ベクトル)を求める。
(2)2つの節点を結ぶ線分勾配の差が、予め定められた閾値thより大きい場合、例えば、その2つの節点の中間点に新たな節点を生成する。
(3)各流線において生成した新たな節点を結ぶ新たな辺を生成する。
(4)新たな辺と、隣接する既存の辺とで構成される四辺形を生成する。」(段落【0023】)の記載が正しく表現されれば、明確になると考える。

請求項1を引用する請求項2?5、及び、請求項1と同等の記載がある請求項6,7についても同様の不備が存在する。

(B)請求項2の記載について
請求項2の「前記三次元空間の所定位置に配置された光源への法線を表す法線情報を用いることにより、前記三次元空間の所定位置に配置された光源に対する前記帯状面の反射光を表すテクスチャを、前記複数の多角形面の各々にマッピングする」とある記載は不明確である。
例えば、「光源への法線を表す法線情報」とは、何か明らかでなく、その法線情報を用いることにより、どのようにして光源に対する帯状面の反射光を表すテクスチャを、多角形面にマッピングすることができるのか明らかでない。

この点に関し、本願明細書の「四辺形の各領域c1乃至c4に、それぞれ法線ベクトルu1乃至u4をマッピングする。この法線ベクトルu1乃至u4は、チューブ形状の法線をシミュレートするよう設定される。」(段落【0029】,図5)、「上述の法線マップを適用して光源650からの光の反射を考慮し、視点Iから視線ベクトルV方向に見た四辺形600をレンダリングした結果が示されている。」(段落【0032】,図6)の記載が正しく表現されれば、明確になると考える。

よって、請求項1-7に係る発明は明確でない。

第2 本願発明
本願の各請求項(請求項1ないし請求項7)に係る発明(以下、各請求項の項番を用いて「本願発明1」、「本願発明2」等と呼び、これらの総称を「本願発明」という。)は、平成28年12月5日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
三次元空間における流体の流れを表す流線を、任意の視点位置から見た二次元画像として描画する描画装置において、
所定の開始位置から流線を生成する流線生成部と、
前記視点位置を前記三次元空間内に設定するビュー設定部と、
前記流線生成部が生成した着目対象の流線と、前記着目対象の流線と平行な流線とを含む各流線において、前記着目対象の流線の互いに隣り合う第1の節点と第2の節点とを結ぶ線分における前記第1の節点の位置の勾配と前記第2の節点の位置の勾配との差が予め定められた閾値より大きい場合、前記第1の節点と前記第2の節点の間の前記着目対象の流線に第3の節点を生成することで、前記着目対象の流線の前記第1の節点と、該第1の節点に対応する前記平行な流線の頂点とを結ぶ第1の辺と、前記着目対象の流線の前記第3の節点と、該第3の節点に対応する前記平行な流線の頂点とを結ぶ第2の辺とを含むように生成された多角形面が含まれる複数の多角形面の各々を、1枚ずつ前記流線の方向に連結した帯状面を、前記設定された視点位置に基づき、前記流線に沿うように形成する帯状面形成部と、
前記三次元空間の所定位置に配置された光源に対する前記帯状面の反射光を表す色のテクスチャを、前記複数の多角形面の各々に対応する前記流線の位置における前記流体の物理値に基づいて、前記複数の多角形面の各々にマッピングするテクスチャマッピング部とを有することを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記物理値は前記流体の流れを表す形状の法線をシミュレートする法線ベクトルであって、
前記テクスチャマッピング部は、
前記法線ベクトルを用いることにより、前記三次元空間の所定位置に配置された光源に対する前記帯状面の反射光を表すテクスチャを導出することで、前記反射光を表すテクスチャを前記複数の多角形面の各々にマッピングすることを特徴とする請求項1記載の描画装置。
【請求項3】
前記帯状面形成部は、
前記設定された視点位置から見た前記複数の多角形面の各々の面積が最大となるよう、又は、前記複数の多角形面の各々の上に存在する特定の点から延ばした法線に対して、前記設定された視点位置から下ろした垂線の長さが最小となるよう、又は、前記複数の多角形面の各々の各頂点と前記設定された視点位置間の距離の総和が最小となるように、前記複数の多角形面の各々の傾きを決定することを特徴とする請求項1記載の描画装置。
【請求項4】
前記帯状面形成部は、
前記複数の多角形面において互いに隣接する第1の多角形面と第2の多角形面とが共有する辺が、前記流線と交叉するように前記帯状面を形成することを特徴とする請求項1記載の描画装置。
【請求項5】
前記帯状面形成部は、
前記複数の多角形面の各々に対応する前記流線の位置における前記流体の物理値に基づいて、前記複数の多角形面の各々の形状を決定することを特徴とする請求項1記載の描画装置。
【請求項6】
三次元空間における流体の流れを表す流線を、任意の視点位置から見た二次元画像として描画する描画方法において、
コンピュータが、
所定の開始位置から流線を生成し、
前記視点位置を前記三次元空間内に設定し、
生成された着目対象の流線と、前記着目対象の流線と平行な流線とを含む各流線において、前記着目対象の流線の互いに隣り合う第1の節点と第2の節点とを結ぶ線分における前記第1の節点の位置の勾配と前記第2の節点の位置の勾配との差が予め定められた閾値より大きい場合、前記第1の節点と前記第2の節点の間の前記着目対象の流線に第3の節点を生成することで、前記着目対象の流線の前記第1の節点と、該第1の節点に対応する前記平行な流線の頂点とを結ぶ第1の辺と、前記着目対象の流線の前記第3の節点と、該第3の節点に対応する前記平行な流線の頂点とを結ぶ第2の辺とを含むように生成された多角形面が含まれる複数の多角形面の各々を、1枚ずつ前記流線の方向に連結した帯状面を、前記設定された視点位置に基づき、前記流線に沿うように形成し、
前記三次元空間の所定位置に配置された光源に対する前記帯状面の反射光を表す色のテクスチャを、前記複数の多角形面の各々に対応する前記流線の位置における前記流体の物理値に基づいて、前記複数の多角形面の各々にマッピングすることを特徴とする描画方法。
【請求項7】
三次元空間における流体の流れを表す流線を、任意の視点位置から見た二次元画像として描画する描画プログラムにおいて、
コンピュータに、
所定の開始位置から流線を生成させ、
前記視点位置を前記三次元空間内に設定させ、
生成された着目対象の流線と、前記着目対象の流線と平行な流線とを含む各流線において、前記着目対象の流線の互いに隣り合う第1の節点と第2の節点とを結ぶ線分における前記第1の節点の位置の勾配と前記第2の節点の位置の勾配との差が予め定められた閾値より大きい場合、前記第1の節点と前記第2の節点の間の前記着目対象の流線に第3の節点を生成することで、前記着目対象の流線の前記第1の節点と、該第1の節点に対応する前記平行な流線の頂点とを結ぶ第1の辺と、前記着目対象の流線の前記第3の節点と、該第3の節点に対応する前記平行な流線の頂点とを結ぶ第2の辺とを含むように生成された多角形面が含まれる複数の多角形面の各々を、1枚ずつ前記流線の方向に連結した帯状面を、前記設定された視点位置に基づき、前記流線に沿うように形成させ、
前記三次元空間の所定位置に配置された光源に対する前記帯状面の反射光を表す色のテクスチャを、前記複数の多角形面の各々に対応する前記流線の位置における前記流体の物理値に基づいて、前記複数の多角形面の各々にマッピングさせることを特徴とする描画プログラム。

第3 当審が通知した拒絶の理由についての検討
当審が上記第1 3.の拒絶の理由を通知したところ、平成28年12月5日の手続補正により、本願発明1、本願発明2、本願発明6、本願発明7は以下のとおりの記載となった。

本願発明1
【請求項1】
三次元空間における流体の流れを表す流線を、任意の視点位置から見た二次元画像として描画する描画装置において、
所定の開始位置から流線を生成する流線生成部と、
前記視点位置を前記三次元空間内に設定するビュー設定部と、
前記流線生成部が生成した着目対象の流線と、前記着目対象の流線と平行な流線とを含む各流線において、前記着目対象の流線の互いに隣り合う第1の節点と第2の節点とを結ぶ線分における前記第1の節点の位置の勾配と前記第2の節点の位置の勾配との差が予め定められた閾値より大きい場合、前記第1の節点と前記第2の節点の間の前記着目対象の流線に第3の節点を生成することで、前記着目対象の流線の前記第1の節点と、該第1の節点に対応する前記平行な流線の頂点とを結ぶ第1の辺と、前記着目対象の流線の前記第3の節点と、該第3の節点に対応する前記平行な流線の頂点とを結ぶ第2の辺とを含むように生成された多角形面が含まれる複数の多角形面の各々を、1枚ずつ前記流線の方向に連結した帯状面を、前記設定された視点位置に基づき、前記流線に沿うように形成する帯状面形成部と、
前記三次元空間の所定位置に配置された光源に対する前記帯状面の反射光を表す色のテクスチャを、前記複数の多角形面の各々に対応する前記流線の位置における前記流体の物理値に基づいて、前記複数の多角形面の各々にマッピングするテクスチャマッピング部とを有することを特徴とする描画装置。

本願発明2
【請求項2】
前記物理値は前記流体の流れを表す形状の法線をシミュレートする法線ベクトルであって、
前記テクスチャマッピング部は、
前記法線ベクトルを用いることにより、前記三次元空間の所定位置に配置された光源に対する前記帯状面の反射光を表すテクスチャを導出することで、前記反射光を表すテクスチャを前記複数の多角形面の各々にマッピングすることを特徴とする請求項1記載の描画装置。

本願発明6
【請求項6】
三次元空間における流体の流れを表す流線を、任意の視点位置から見た二次元画像として描画する描画方法において、
コンピュータが、
所定の開始位置から流線を生成し、
前記視点位置を前記三次元空間内に設定し、
生成された着目対象の流線と、前記着目対象の流線と平行な流線とを含む各流線において、前記着目対象の流線の互いに隣り合う第1の節点と第2の節点とを結ぶ線分における前記第1の節点の位置の勾配と前記第2の節点の位置の勾配との差が予め定められた閾値より大きい場合、前記第1の節点と前記第2の節点の間の前記着目対象の流線に第3の節点を生成することで、前記着目対象の流線の前記第1の節点と、該第1の節点に対応する前記平行な流線の頂点とを結ぶ第1の辺と、前記着目対象の流線の前記第3の節点と、該第3の節点に対応する前記平行な流線の頂点とを結ぶ第2の辺とを含むように生成された多角形面が含まれる複数の多角形面の各々を、1枚ずつ前記流線の方向に連結した帯状面を、前記設定された視点位置に基づき、前記流線に沿うように形成し、
前記三次元空間の所定位置に配置された光源に対する前記帯状面の反射光を表す色のテクスチャを、前記複数の多角形面の各々に対応する前記流線の位置における前記流体の物理値に基づいて、前記複数の多角形面の各々にマッピングすることを特徴とする描画方法。

本願発明7
【請求項7】
三次元空間における流体の流れを表す流線を、任意の視点位置から見た二次元画像として描画する描画プログラムにおいて、
コンピュータに、
所定の開始位置から流線を生成させ、
前記視点位置を前記三次元空間内に設定させ、
生成された着目対象の流線と、前記着目対象の流線と平行な流線とを含む各流線において、前記着目対象の流線の互いに隣り合う第1の節点と第2の節点とを結ぶ線分における前記第1の節点の位置の勾配と前記第2の節点の位置の勾配との差が予め定められた閾値より大きい場合、前記第1の節点と前記第2の節点の間の前記着目対象の流線に第3の節点を生成することで、前記着目対象の流線の前記第1の節点と、該第1の節点に対応する前記平行な流線の頂点とを結ぶ第1の辺と、前記着目対象の流線の前記第3の節点と、該第3の節点に対応する前記平行な流線の頂点とを結ぶ第2の辺とを含むように生成された多角形面が含まれる複数の多角形面の各々を、1枚ずつ前記流線の方向に連結した帯状面を、前記設定された視点位置に基づき、前記流線に沿うように形成させ、
前記三次元空間の所定位置に配置された光源に対する前記帯状面の反射光を表す色のテクスチャを、前記複数の多角形面の各々に対応する前記流線の位置における前記流体の物理値に基づいて、前記複数の多角形面の各々にマッピングさせることを特徴とする描画プログラム。

(下線は、補正により補正された構成である。)

1.本願発明1、本願発明6、本願発明7の補正についての検討
上記補正は、帯状面の形成に関し、補正前の「互いに隣り合う第1の節点と第2の節点とを結ぶ線分の勾配が予め定められた閾値より大きい場合、前記第1の節点と前記第2の節点の間に有る第3の節点と前記第1の節点とを結ぶ第1の辺と、前記第3の節点と前記第2の節点とを結ぶ第2の辺とを含むように生成された多角形面が含まれる複数の多角形面の各々を」の記載では、本願明細書(発明の詳細な説明)の
「辺の追加は、例えば以下のように行えばよい。
(1)各流線において隣り合う2つの節点を結ぶ線分の勾配(勾配ベクトル)を求める。
(2)2つの節点を結ぶ線分勾配の差が、予め定められた閾値thより大きい場合、例えば、その2つの節点の中間点に新たな節点を生成する。
(3)各流線において生成した新たな節点を結ぶ新たな辺を生成する。
(4)新たな辺と、隣接する既存の辺とで構成される四辺形を生成する。」(段落【0023】)
の記載とは異なる構成であったのに対し、各請求項の記載が、補正後の記載となることで、上記本願明細書の記載と対応するようになり、各請求項に係る発明は明確となった。

2.本願発明2の補正についての検討
上記補正は、テクスチャマッピング部のマッピングする構成に関して、補正前の「前記三次元空間の所定位置に配置された光源への法線を表す法線情報を用いることにより、前記三次元空間の所定位置に配置された光源に対する前記帯状面の反射光を表すテクスチャを、前記複数の多角形面の各々にマッピングする」の記載では、本願明細書(発明の詳細な説明)の
「四辺形の各領域c1乃至c4に、それぞれ法線ベクトルu1乃至u4をマッピングする。この法線ベクトルu1乃至u4は、チューブ形状の法線をシミュレートするよう設定される。」(段落【0029】,図5)、
「上述の法線マップを適用して光源650からの光の反射を考慮し、視点Iから視線ベクトルV方向に見た四辺形600をレンダリングした結果が示されている。」(段落【0032】,図6)の記載とは異なる構成であったのに対し、請求項2の記載が、補正後の記載となることで、上記本願明細書の記載と対応するようになり、請求項2に係る発明は明確となった。

3.まとめ
以上のとおり、上記手続補正により、本願各請求項に係る発明は明確となったから、当審が通知した拒絶の理由は解消した。

第4 原審での査定の理由についての検討
(ア)本願発明1
本願発明1について、査定の理由をまず検討する。
本願発明1は、平成28年12月5日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
((A)ないし(F)は当審において付与した。以下「構成要件(A)」等として引用する。)

【請求項1】
(A)三次元空間における流体の流れを表す流線を、任意の視点位置から見た二次元画像として描画する描画装置において、
(B)所定の開始位置から流線を生成する流線生成部と、
(C)前記視点位置を前記三次元空間内に設定するビュー設定部と、
(D)前記流線生成部が生成した着目対象の流線と、前記着目対象の流線と平行な流線とを含む各流線において、前記着目対象の流線の互いに隣り合う第1の節点と第2の節点とを結ぶ線分における前記第1の節点の位置の勾配と前記第2の節点の位置の勾配との差が予め定められた閾値より大きい場合、前記第1の節点と前記第2の節点の間の前記着目対象の流線に第3の節点を生成することで、前記着目対象の流線の前記第1の節点と、該第1の節点に対応する前記平行な流線の頂点とを結ぶ第1の辺と、前記着目対象の流線の前記第3の節点と、該第3の節点に対応する前記平行な流線の頂点とを結ぶ第2の辺とを含むように生成された多角形面が含まれる複数の多角形面の各々を、1枚ずつ前記流線の方向に連結した帯状面を、前記設定された視点位置に基づき、前記流線に沿うように形成する帯状面形成部と、
(E)前記三次元空間の所定位置に配置された光源に対する前記帯状面の反射光を表す色のテクスチャを、前記複数の多角形面の各々に対応する前記流線の位置における前記流体の物理値に基づいて、前記複数の多角形面の各々にマッピングするテクスチャマッピング部とを有することを特徴とする
(F)描画装置。

(イ)刊行物の記載事項
(イ-1)査定の理由において引用された刊行物である特開2000-242631号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。(下線は、当審が付与した。)

【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、3次元ベクトルのデータのモデル表現を行うときに用いられるデータ変換方式に関する。
【0002】
【従来の技術】流体のシミュレーションなどの3次元空間における流れの可視化技術においては、第1に、ヘッジホッグと呼ばれる矢印で流れの状態を示す手法がある。これは、例えば、複数の観測点における風向風速の測定結果より、風の流れの状態を模擬し、図8(a)に示すように、その結果をコンピュータの画面に矢印で示す技術である。また、第2に、空洞実験の結果など、ビルや車の周りの空気の流れを流線で表現する手法もある。これは、空気の流れのベクトル分布そのものを表示するというよりも、図8(b)に示すように、その流れている空気によって流される微粒子(煙)の軌跡を表示させるものである。
【0003】また、第3に、3次元における風などの流れのベクトルを、そのなかよりある領域だけ取出し、その部分の微細分布を縞模様のテクスチャーとしてコンピュータの画面上に表示するテクスチャスプラットという手法もある。一方、第4に、それらベクトル情報を、転送して転送先でそれを可視化表示する場合、ベクトル情報を前述したヘッジホッグや円錐などの形状に置き換え、これら図形の情報として転送することで、より高速に転送表示する技術がある。この場合、転送をより早くするためには、図形の情報を圧縮して転送するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、まず、第1の手法では、より詳細な結果を得ようとして観測点(標本点)の数を多くすると、表示画面の解像度を超えるような多くのヘッジホッグを表示させることになる。この状態では、表示させようとする線が重なり、表示上でつぶれてしまい、個々のヘッジホッグを識別することができなくなる。このため、代表的な標本点のみを表示に用いるようにすることで、表示するヘッジホッグの数を減らすようにしているが、これでは、元になるベクトルデータの情報を大きく損失してしまう場合がある。
【0005】また、第2の手法では、表示のための微粒子の軌跡(流線)をどこからどこまで発生させるかの選択に任意性が大きく、それらの決定に試行錯誤が必要となる。例えば、実際の状態を精度良く反映させるための特徴線の選択や、どこまで開始点を増やすと表示しきれなくなるかなどのことは、試行錯誤で決定することになる。加えて、流れの速度ベクトルを接線ベクトルとして流線を計算する積分計算が必要となるため、汎用的な計算アルゴリズムを用いることが難しい。
【0006】また、第3の手法では、最終的に表示に用いられるデータは、3次元空間中の断面ポリゴン上のみのベクトル情報であり、体積的に広がりを持つベクトル分布の情報は破棄されてしまう。したがって、異なる場所にあるコンピュータに転送して表示する場合、表示しているコンピュータにおいては、元の3次元空間におけるベクトル情報を得ることができないという問題がある。一方、第4の手法では、転送先で表示されるものは単純化された幾何学図形であり、やはり、元の3次元空間におけるベクトルの存在していた「領域」を再現することができない。
【0007】この発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、3次元空間におけるベクトル情報を、そのベクトルの存在領域などの情報を劣化させることなく、より高速に転送先に転送して可視化表示できるようにすることを目的とする。

【0010】
【発明の実施の形態】以下この発明の実施の形態を図を参照して説明する。図1は、この発明の実施の形態で用いられるデータ変換装置の構成を示し、基本的な構成として、ベクトル体積符号化装置100と、ベクトル体積復号化装置120とから構成されている。そのベクトル体積符号化装置100は、まず、対象とするベクトルデータのベクトルを量子化するベクトル量子化手段101と、まとめられるベクトルの組を抽出する抽出手段102とを備えている。また、抽出したベクトルの組が存在している領域の体積を計算する体積情報算出手段103と、抽出したベクトルの組の領域における代表ベクトルを決定する代表決定手段104とを備え、それらによって得られたベクトル体積領域のデータをベクトル体積復号化装置120に送信する送信手段105を備えている。
【0011】また、ベクトル体積復号化装置120は、まず、送信されてきたベクトル体積領域のデータを受信する受信手段121と、解像度などの表示のためのパラメータを取り出すパラメータ読み込み手段122とを備えている。また、矢印や円錐などの形状データを備え、それらより実際に表示するときに用いる表示モデルを選択する表示モデル選択手段123と、その選択されたモデルを用いて受信したベクトル体積領域内での表示モデルを生成する表示モデル生成手段124と、生成された表示モデルを表示する表示手段125とを備えている。なお、図示していないが、キーボードなどのデータ入力手段を備え、そのデータ入力手段からの入力指示により、上述の形状データや表示モデルが選択される。
【0012】以下、ベクトル体積符号化装置100の動作に関して説明する。まず、ベクトル量子化手段101において、以下に示すようにして対象とする3次元ベクトルデータを量子化する。なお、図2に示すように、標本点上での3次元ベクトル集合{A,B,C,A’,B’,C’,A”,B”,C”}が入力の元ベクトルデータとして与えられたとする。まず、各ベクトル成分を、所定の量子化サイズで量子化する。例えば、図2(a)に示す3次元ベクトル集合の中で、ベクトルA,B,Cを例にとると、それぞれの座標XA(10,5,5),XB(15,5,5),XC(20,5,5)での各ベクトル成分が、VA=(12,5,24),VB=(13,4,24),VC=(14,3,25)である場合、量子化サイズ10で量子化すると、量子化ベクトル成分はA=(10,0,20),B=(10,0,20),C=(10,0,20)となる。
【0013】次に、抽出手段102が、以下に示すようにして、まとめられるベクトルの組を抽出する。まず、上述の場合、3本の同じ量子化ベクトルが連続領域XA,XB,XC点に分布することになる。したがって、ベクトルA,B,Cを一組のベクトルデータとして取り出すことができる。すなわち、抽出手段102は、ある量子化値で量子化したときに、連続領域に存在し、かつ同一の方向角と同一の絶対値を持つベクトルを、1つのベクトルの組として抽出する。またここでは、同様にすることで、ベクトルB’C’が1つの組としてまとめられ、ベクトルA”,B”が1つの組としてまとめられる。
【0014】次に、体積情報算出手段103で、以下に示すようにして1つの組としてまとめたベクトル群の領域(分布領域)の体積情報を算出する。この体積情報としては、分布領域を例えば柱状のものとし、その柱の高Hさと底面積Sとで表す。なお、柱状に限らず、分布領域を楕円体ととらえ、その断面積Sと長手方向の長さHとで体積情報としても良い。まず、得られたベクトルの組の存在している領域の体積を求める。ここでは、得られたベクトルの組のベクトルそれぞれの標本体積を合計することで、それらベクトル領域の占める体積とする。例えば、与えられたベクトル分布の標本体積として、格子点間隔が5の等間隔とすると、1つのベクトルの標本体積は5×5×5=75となり、分布領域の体積は75×3=375となる。
【0015】そして、その分布領域の高Hさは、ここでは、分布領域内の標本体積間距離の最大値を用いる。この場合、座標XA(10,5,5)とXC(20,5,5)の広がりで、H=(20+5)-(10-5)=20となる。またこのとき、その底面の面積法線ベクトルSは、極座標を用いて(Sθ,Sφ,S)=(90,0,19)となる。ところで、流れなどを示すベクトルデータには、一般に、流れの渦度に対応して捩れも存在している。したがって、ω=rotVによって流れの渦度に相当する回転ベクトルωを定義し、入力元のベクトルデータそれぞれよりωA,ωB,ωCを求め、それらの平均値をとって分布領域内の平均回転ベクトルωも、体積情報として用いる。
【0016】そして、代表決定手段104により、例えば、ベクトル量子化手段101によって量子化された結果共通となったベクトルV=(10,0,20)を代表ベクトルとし、また、座標XA,XB,XCの重心(x,y,z)=(XA+XB+XC)/3=(15,5,5)を、代表ベクトルの位置座標(開始点の座標)とする。以上の結果、ベクトル体積符号化装置100では、図3に示すように、体積情報と代表ベクトルとからなる転送データを生成する。なお、図3では、得られたベクトルの組の存在している領域を円柱で近似した場合を示している。すなわち、図2に示した入力された複数のベクトルが、図4に示すように、体積情報401,402,403,404,405と代表ベクトル411,412,413,414,415とに変換される。
【0017】ここで、上述した平均回転ベクトルを仮にω=(0,0,30)とすると、図3に示すような成分を持つベクトル形式の体積情報は、図5(a)に示すような固定長データ形式として、図5(b)に示すように構成し、その値の例として[15,5,5,90/6,0,19,20][10,0,20,0,0,30,0]のようにバイナリー表現することができ、[0000001111 0000000101 0000000101 01111 000000 000000000010011 10100][0000001010 0000000000 0000010100 00000 000000 000000000011110 00000]と64ビット表現にできる。なお、図5(b)において、ρは色やテクスチャなどの他の属性を示すデータである。
【0018】ところで、上述した体積情報の中の体積に関しては、近似した円柱の底面積データと高さデータとにして転送してもよい。次に、それら抽出した領域の体積を、体積情報算出手段103により以下に示すようにして計算する。ところで、前述したように、量子化した結果、多くのベクトルデータが同一の量子化ベクトルを持つ連続領域に存在する場合、それらベクトルデータ群の領域である分布領域は複雑な形状となる。このような場合、まず、バウンディング・ボックス法により、分布領域の形状における座標の最大最小値から、それらを囲う直方体の包含領域を設定する。そして、その包含領域の最長軸を高さ成分,その方向を上面の法線とする円柱近似を行うようにすればよい。そしてこの円柱近似により、転送ベクトルデータの必要成分を決定すればよい。なお、目的に応じて分布領域を再分割し、再分割して得られたそれぞれの分布領域を、それぞれ均一な円柱分布として変換しても良い。
【0019】そして、以上のようにして得られた転送データは、送信手段105によりベクトル体積復号化装置120に転送される。このとき、図5に示したように構成した転送データは、1つの分布領域ごとに独立しているため、このデータ単位のままで、代表ベクトルなど、そこに符号化されている成分に着目した分類および並び替えが可能である。これらのことにより、優先キー付き送信や逐次送信を適宜選択して転送することが可能となる。このように、分類や並び替えを行うことにより、転送するベクトル絶対値の大小,分布領域の大きさなど、目的に応じて優先順位を変えた送信ができる。
【0020】次に、ベクトル復号化装置120における受信したデータの変換に関して説明する。ベクトル復号化装置120では、まず、送信されてきたデータを受信手段121で受信し、このデータを元に、表示モデル生成手段124で画像を生成し、これを表示手段125で表示する。このとき、表示モデル生成手段124では、表示選択手段123により選択されている表示モデルを用いて画像を生成する。また、パラメータ読み込み手段122で読み込まれている設定解像度で表示を行う。
【0021】その、表示モデルとしては、図6(a)に示すように、転送されてきた体積情報より、その情報そのものである体積を持つ円柱あるいは楕円体を表示要素として用い、その表示要素に代表ベクトルも加えて表示するようにしても良い。ここで、図6では、ある物体601の周囲の風の流れを示すものである。また、図6(b)に示すように、代表ベクトルの向きと長さおよび平均回転ベクトルの成分による捻りのピッチ角を持ったリボン表示を行うようにしても良い。
【0022】以上のように、この実施の形態のベクトル復号化装置120によれば、転送されてきた体積情報と代表ベクトルのデータにより3次元形状を表示する要素を生成するだけで表示を行うようにしたので、良く用いられている3次元画像を表示する装置の描画機能を利用するだけで転送されてきたデータを再現(復号)することができる。これらは、例えば、流体速度、渦度、電磁場の表現にも適用可能であり、それら個々の応用問題ごとに使われている、流線,渦糸,磁力管などといったベクトル分布の種々の表現手法の代替方式としても共通に利用できる。

(イ-2)査定の理由において引用された刊行物である特開2000-197769号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。(下線は、当審が付与した。)

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゲーム装置及び情報記憶媒体に関する。
【0002】
【背景技術及び発明が解決しようとする課題】従来より、仮想的な3次元空間であるオブジェクト空間内に複数のオブジェクトを配置し、オブジェクト空間内の所与の視点から見える画像を生成するゲーム装置が知られており、いわゆる仮想現実を体験できるものとして人気が高い。戦闘機の操縦を楽しむゲーム装置を例にとれば、プレーヤは自身が操作する戦闘機をオブジェクト空間内で飛行させ、他のプレーヤやコンピュータが操作戦闘機と対戦してゲームを楽しむ。
【0003】さてこのようなゲーム装置では、プレーヤの仮想現実感の向上のため、少ない演算負荷でよりリアルな画像を生成することが重要な技術的課題になっている。従って例えば図1の表示画像に示すように、ミサイル等の移動に付属してできる飛行機雲についても、少ない演算負荷でよりリアルな飛行機雲の画像を生成することが望まれる。
【0004】かかる飛行機雲の画像を生成する手法としては、ある一定間隔で2Dの小さいスプライトをおいていくというものがある。しかし飛行機雲を表現するためには大量のスプライトが必要となり処理量の増大を招くという問題点があった。
【0005】また1本の筒状のポリゴンオブジェクトを用いて飛行機雲を表現することも考えられるが、見る方向によっては、筒の底面しかみえず、直線的な筒しかあつかえない問題点があった。
【0006】またさらに短い筒状のポリゴンオブジェクトを複数連続して配置して曲線的な飛行機雲を表現することも考えられる。しかし筒状のオブジェクトだと中心が白くて外側にいくほど薄くなるという雲や煙等の芯を表現することはできないため、いま一つリアリティにかけるという問題点があった。
【0007】本発明は、以上のような従来のゲーム装置の持つ課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、飛行機雲等の移動体に付属して或いは追従して発生する霧状のオブジェクトを少ない演算負荷でリアルに表現することのできるゲーム装置及び情報記憶媒体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、表示部に表示する画像を生成するゲーム装置であって、オブジェクト空間内に、一辺を中心線として共有し中心線の周りに放射状に開いて配置されたプリミティブ面からなるサブオブジェクトを、中心線が連続するように少なくとも一つ以上配置するための処理を行う配置処理手段と、前記サブオブジェクトが配置されたオブジェクト空間内の所与の視点から見える画像を生成する画像生成手段とを含むことを特徴とする。
【0009】また本発明に係る情報記憶媒体は前記手段を実現するための情報を含むことを特徴とする。
【0010】なお、前記サブオブジェクトを複数配置する際には、前記プリミティブ面の中心線の対辺も連続して帯状になるように中心線上以外の頂点位置を決定することが望ましい。
【0011】本発明によれば前記サブオブジェクトを複数連続して配置することにより、帯状のオブジェクトを形成することができる。かかる帯状オブジェクトを用いると、少ないプリミティブ面で飛行機雲や煙の帯等の画像を生成することができる。また筒状の閉じたオブジェクトを用いる場合と異なり、視点位置や視線方向が変わっても画像に不具合を生じず、リアリティに富んだ画像を生成することができる。

【0058】図4(A)(B)は本実施の形態で飛行機雲を生成するために用いるサブオブジェクトについて説明するための図である。
【0059】本実施の形態の特徴は、図4(A)に示すようなサブオブジェクトを連続して複数配置することにより、移動体が移動に伴い出力する長い霧状のオブジェクトである飛行機雲等を生成する点にある。
【0060】図4(A)のサブオブジェクトは、一辺a1a2を中心線として共有し中心線a1a2の周りに放射状に開いて配置された3枚の四角形のポリゴン面P1、P2、P3からなる。
【0061】かかるサブオブジェクト400を連続して配置することにより飛行機雲のオブジェクトを生成している。なお、連続してオブジェクトを生成する場合には、図4(B)に示すようサブオブジェクト400-1とサブオブジェクト400-2を中心線a1a2a3が連続するように配置する。そして、各ポリゴン面(P1とP4、P2とP5、P3とP6)が帯状に接続されるように、前記ポリゴン面の頂点位置をリアルタイムに生成するよう構成されている。
【0062】例えば図4(B)においてサブオブジェクト400-2を配置する際に頂点a2b2c2d2を前記サブオブジェクト400-1の頂点a2b2c2d2の頂点と共有するように頂点情報を生成する。このようにすることにより、図5に示すように中心線の周りに帯状にポリゴン面がつながっている飛行雲のオブジェクトを生成することができる。
【0063】図6(A)(B)はミサイル等の移動体オブジェクトの移動に伴い前記サブオブジェクトを配置する一例を説明するための図である。あるフレームにおいて、図6(A)に示すようにミサイルの位置がK1で、このとき2つのサブオブジェクトSOB1とSOB2が同図のように配置されていたとする。
【0064】次のフレームで図6(B)のようにミサイルの位置がK2まで進んだ場合には、SOB1とSOB2は前フレームと同じ配置で、新たにSOB3とSOB4を図4(B)で説明したようにしてSOB2に連続して配置する。なお、このときSOB4の頂点位置はSOB3との共通頂点a3b3c3d3とミサイルK2の位置によって決まる頂点a4b4c4d4となる。
【0065】また本実施の形態では、前記ポリゴン面の中心線に近いほど前記サブオブジェクトを用いて生成するオブジェクトの特徴色が濃く見えるために必要なレンダリング処理を行っている。

【0102】例えば上記実施の形態では、連続して配置したサブオブジェクトによって、飛行機雲の画像を生成する場合を例にとり説明したがこれに限られない。例えば移動体が噴射した煙や炎の帯でもよい。また、砂漠や埃の多い道を走行する移動体のあとに追従してできる砂煙やスキーヤーの移動軌跡にできるシュプールや水上スキーの走行した後にできる水しぶきの帯等でもよい。
【0103】また、本発明は移動体に追従する長いオブジェクトを生成する場合に非常に有効であるが、短いオブジェクトでもよい。また短いオブジェクトを生成する場合には、1つのサブオブジェクトのみでオブジェクトを構成してもよい。
【0104】また移動体に追従しないオブジェクトを表現する場合に用いてもよい。例えば移動体に追従しない虹や煙突の煙のようなものでも、視点位置の変化に対応した表現を少ない演算負荷でリアルに行うことができるので有効である。
【0105】またサブオブジェクトの形状も図4(A)で説明した形状に限られない。一辺を中心線として共有し中心線の周りに放射状に開いて配置されたプリミティブ面からなるのもならなんでもよく、たとえば図15(A)で示すような2枚の面を十字に組み合わせた形状のものでもよい。また4枚以上のプリミティブ面を中心線の周りに放射状に配置したものでもよい。
【0106】また、プリミティブ面の形状は四角形にかぎられない。例えば図15(B)に示すように三角形のプリミティブ面を、中心線の周りに配置したものでもよい。特に1つサブオブジェクトで炎のオブジェクトを生成する場合等に有効である。
【0107】また本上記実施の形態ではα加算処理を行うことによって、ポリゴン面にグラディエーションをかける場合を例にとり説明したがこれに限られない。例えばグーロシェーディング処理により実現する場合でもよいし、テクスチャマッピング処理により実現する場合でもよい。

(イ-3)査定の理由において引用された刊行物である特開2007-226572号公報(以下「刊行物3」という。)は、補正前の請求項2に対して引用された刊行物であり、
「反射マップテクスチャの反射情報と照明モデルと光線情報とに基づいて、液体の光沢を表すためのライティング処理を行うこと」(要約等)が開示されている。

(イ-4)査定の理由において引用された刊行物である国際公開第99/60526号(以下「刊行物4」という。)は、補正前の請求項3に対して引用された刊行物であり、「幹を表現する表示要素Tの周囲に葉の束を表現する表示要素Pがバラバラに配置された樹木オブジェクトの描画を行った場合、複数の表示要素Pにおける法線の各々が視点の方向を向くように各表示要素Pを方向制御すること」(24頁1行-25頁3行等)が開示されている。

(イ-5)査定の理由において引用された刊行物である「原田隆宏,外3名,“粒子ベースシミュレーションの並列化”」は、補正前の請求項5に対して引用された刊行物であり、「粒子ベースシミュレーションに関し、流体シミュレーションで各粒子が持つ物理量は座標と速度と密度であるため、それぞれテクスチャを用意すること」(要約等)が開示されている。

(ウ)刊行物1に記載された発明
上記(イ)(イ-1)の刊行物1の記載によれば、刊行物1には、以下の発明(以下、刊行物1発明という。)が開示されている。((a)ないし(c)は当審において付与し、以下「構成要件(a)」等として引用する。)

(a)3次元空間における流れを可視化し表示する表示手段において、
(b)流体によってよって流される微粒子の軌跡を流線を用いて表示させる、
(c)表示手段。

(エ)対比
刊行物1発明と、本願発明1とを対比する。
(エ-1)本願発明1の構成要件(A)、(F)と刊行物1発明の構成要件(a)、(c)とを対比する。
刊行物1発明では、「3次元空間における流れを可視化し」ているから、三次元空間における流体の流れを画像として描画しているといえ、当該描画手段を有しているといえる。
刊行物1発明の表示において、構成要件(b)も参酌すると流線を用いているから、刊行物1発明も、三次元空間における流体の流れを表す流線を、描画するものである。
もっとも、描画される流体の流れを表す流線の画像が、刊行物1発明では、流線の画像であるのに対し、本願発明1では、構成要件(D)を有することにより、帯状面を形成し二次元画像とし表示している点で相違しており、また、刊行物1発明では、任意の視点位置から見た描画を行っていることについて特定されていない。
以上のことから、刊行物1発明は、「三次元空間における流体の流れを表す流線を、画像として描画する描画装置」である点で、本願発明1と相違がない。
もっとも、描画される流体の流れを表す流線の画像が、刊行物1発明では、流線の画像であるのに対し、本願発明1では、(帯状面を形成することにより得られた)二次元画像である点、および、本願発明1は「任意の視点位置から見た二次元画像として描画する」のに対し、刊行物1発明は、当該特定事項を有さない点で相違する。

(エ-2)本願発明1の構成要件(B)と刊行物1発明の構成要件(b)とを対比する。
刊行物1発明では、「流体によってよって流される微粒子の軌跡を流線を用いて表示させ」ているから、「流線を生成する流線生成部」を有していることは明らかである。
そして、刊行物1の【0005】の記載をみると、「表示のための微粒子の軌跡(流線)をどこからどこまで発生させるか」を決定することが必要であることが理解できるから、刊行物1発明では、「所定の開始位置から流線を生成する」ことも行われていることが理解できる。
以上のことからみて、刊行物1発明は、本願発明1の構成要件(B)を有しているといえる。

(エ-3)本願発明1の構成要件(C)と刊行物1発明の構成要件(c)とを対比する。
刊行物1発明では、「任意の視点位置から見た描画を行っていることについて特定されていない」ことは、上記(エ-1)のとおりであるから、刊行物1発明は、構成要件(C)を有していない。

(エ-4)本願発明1の構成要件(D)と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明では、流線を描画するのみであるから、帯状面を形成しておらず、構成要件(D)を有していない。

(エ-5)本願発明1の構成要件(E)と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明では、流線を表示する構成を有するのみであるから、構成要件(E)を有していない。

(エ-6)まとめ(一致点・相違点)
以上まとめると、本願発明1と刊行物1発明とは以下の一致点で一致し相違点で相違する。

(一致点)
三次元空間における流体の流れを表す流線を、画像として描画する描画装置において、
所定の開始位置から流線を生成する流線生成部、
を有することを特徴とする描画装置。

(相違点)
相違点1
描画される流体の流れを表す流線の画像が、刊行物1発明では、流線の画像であるのに対し、本願発明1では、(帯状面を形成することにより得られた)二次元画像である点

相違点2
本願発明1は「任意の視点位置から見た二次元画像として描画する」のに対し、刊行物1発明は、当該特定事項を有さない点

相違点3
本願発明1は、「前記視点位置を前記三次元空間内に設定するビュー設定部」を有しているのに対し、刊行物1発明は、当該構成を有していない点

相違点4
本願発明1は、「前記流線生成部が生成した着目対象の流線と、前記着目対象の流線と平行な流線とを含む各流線において、前記着目対象の流線の互いに隣り合う第1の節点と第2の節点とを結ぶ線分における前記第1の節点の位置の勾配と前記第2の節点の位置の勾配との差が予め定められた閾値より大きい場合、前記第1の節点と前記第2の節点の間の前記着目対象の流線に第3の節点を生成することで、前記着目対象の流線の前記第1の節点と、該第1の節点に対応する前記平行な流線の頂点とを結ぶ第1の辺と、前記着目対象の流線の前記第3の節点と、該第3の節点に対応する前記平行な流線の頂点とを結ぶ第2の辺とを含むように生成された多角形面が含まれる複数の多角形面の各々を、1枚ずつ前記流線の方向に連結した帯状面を、前記設定された視点位置に基づき、前記流線に沿うように形成する帯状面形成部」を有しているのに対し、刊行物1発明は、当該構成を有していない点

相違点5
本願発明1は、「前記三次元空間の所定位置に配置された光源に対する前記帯状面の反射光を表す色のテクスチャを、前記複数の多角形面の各々に対応する前記流線の位置における前記流体の物理値に基づいて、前記複数の多角形面の各々にマッピングするテクスチャマッピング部」を有しているのに対し、刊行物1発明は、当該構成を有していない点

(オ)判断
上記相違点について検討する。
上記相違点1ないし5が当業者に容易想到であるとする根拠として、審査官が提示した刊行物2には、概略以下の事項が開示されている。
「移動体の軌跡として表示される画像について、
オブジェクト空間内の所与の視点から見える画像を生成するものであって、
上記軌跡の画像を、サブオブジェクトを連続して複数配置することにより表現するものであり、
サブオブジェクトは、一辺a1a2を中心線として共有し中心線a1a2の周りに放射状に開いて配置された3枚の四角形のポリゴン面P1、P2、P3からなり、
連続して複数サブオブジェクトを配置する際には、各サブオブジェクト(サブオブジェクト400-1とサブオブジェクト400-2)を中心線a1a2a3が連続するように配置し、各ポリゴン面(P1とP4、P2とP5、P3とP6)が帯状に接続されるように、前記ポリゴン面の頂点位置をリアルタイムに生成する描画装置」
以上の、刊行物2の記載を検討すると、相違点4に係る構成(本願発明1の構成要件(D))についての開示がないことは明白であり、刊行物1発明に、刊行物2に記載された事項を適用したとしても、上記相違点4に係る構成を容易に発明をすることができたものであるといえないことは明白である。
また、他の刊行物(刊行物3ないし刊行物5)の記載をみても、上記相違点4に係る構成について、開示あるいは示唆されていないから、相違点4について、刊行物1ないし刊行物5に記載の事項から当業者が容易に想到しえたことであるとはいえない。

以上のとおり、本願発明1は、刊行物1ないし刊行物5の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるということはできない。

(カ)他の請求項について
本願発明2-5は、本願発明1の記載を引用し、さらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が刊行物1ないし刊行物5の記載に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明6は、装置の発明である本願発明1のカテゴリを方法のカテゴリとした発明であって、本願発明1で検討した相違点4に相当する構成を含むものであり、本願発明7は、装置の発明である本願発明1のカテゴリを(描画)プログラムのカテゴリとした発明であって、本願発明1で検討した相違点4に相当する構成を含むものであるから、本願発明1で検討したのと同様に、当業者が刊行物1ないし刊行物5の記載に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

したがって、原査定の拒絶の理由によっても、本願を拒絶することはできない。

第4 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-23 
出願番号 特願2013-533419(P2013-533419)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06T)
P 1 8・ 121- WY (G06T)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村松 貴士  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 渡邊 聡
小池 正彦
発明の名称 描画装置、描画方法及び描画プログラム  
代理人 加藤 隆夫  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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