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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1324000
審判番号 不服2016-1978  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-09 
確定日 2017-02-07 
事件の表示 特願2011-147017「部品実装機」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月24日出願公開、特開2013- 16570、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年7月1日の出願であって、平成27年4月10日付けで拒絶理由が通知され、同年6月18日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたが、同年11月13日付け(発送日:同年11月24日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成28年2月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、同年6月1日に上申書が提出され、その後、当審において同年9月15日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月1日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年11月1日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「基板を部品実装位置に搬入し位置決めし搬出する基板搬送装置と、
部品を供給する部品供給装置と、
前記部品供給装置から前記部品を採取して前記位置決めされた基板に装着する実装ヘッドおよび前記実装ヘッドを水平面内の直交2方向に駆動するヘッド駆動機構を有する部品移載装置と、
前記ヘッド駆動機構の平面座標系で表した所定の較正位置に配置されて、前記実装ヘッドが前記部品供給装置から前記基板上に移動する途中で採取されている部品を、光源で照明しながら撮像する部品カメラと、
前記実装ヘッドに取り付けられ前記ヘッド駆動機構に駆動されて前記水平面内を移動可能であり、位置決めされた基板に向かってレーザー光を照射するレーザー光照射部および前記基板で反射されたレーザー光を検出する反射光検出部を有して前記基板の高さを測定するレーザー高さセンサと、を備える部品実装機であって、
前記較正位置に位置決めされた前記レーザー高さセンサのレーザー光照射部と前記部品カメラの光入射部との間に配置され、前記レーザー光照射部から前記光入射部に向かって照射されたレーザー光を減衰しつつ透過する減光フィルタと、
前記レーザー高さセンサを前記較正位置に位置決めし、前記光源を消灯して、前記レーザー光照射部から前記光入射部に向かって前記レーザー光を照射し、前記減光フィルタを透過したレーザー光を前記部品カメラで撮像して、前記較正位置の位置制御の誤差を含んだレーザー光画像を得るレーザー光撮像手段と、
前記レーザー高さセンサが前記ヘッド駆動機構によって前記平面座標系の座標位置に移動されたときに前記レーザー光照射部から前記基板に向かって照射されるレーザー光の前記平面座標系での座標位置の補正値を、前記レーザー光画像上での前記レーザー光の位置に基づいて求める補正値取得手段と、
前記基板上の任意の座標位置で高さ測定を行う際に、前記ヘッド駆動機構により前記補正値を考慮して前記レーザー高さセンサを移動させる位置補正手段と、をさらに備え、
前記減光フィルタは、母板および押え板によって較正治具の中央に挟持されつつ前記部品カメラの上面に着脱可能にセットされ、前記光入射部の上方位置であって前記部品実装位置に位置決めされた前記基板の上面と同じ高さに水平姿勢で配置される部品実装機。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
平成27年6月18日の手続補正により補正された請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 :1、2
・引用文献:1?4
レーザ光を減光するNDフィルタをCCDカメラの前に配置する点は、周知技術である(例えば、引用文献3の段落【0025】、図2、及び、引用文献4の段落【0047】?【0048】、図7等参照。)。
そして、引用文献1に記載された発明において、引用文献2に記載された発明を採用する際に、上記周知技術に基いて、NDフィルタによりレーザ光を減光することは、当業者が適宜なし得たことである。
<引用文献等一覧>
1.特開2009-27015号公報
2.特開平11-237307号公報
3.特開2010-49766号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2003-162068号公報(周知技術を示す文献)

2 原査定の理由の判断
(1) 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1:特開2009-27015号公報(特に、段落【0015】?【0018】、【0024】、【0025】、【0029】、【0047】、【0063】、及び図1?図6を参照。)には、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、電子部品装着装置に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「基板Pを位置決め部5に搬入し位置決めし搬出する供給コンベア4及び排出コンベア6と、
電子部品を供給する部品供給ユニット3と、
部品供給ユニット3から電子部品を吸着し位置決めされた基板Pに装着する装着ヘッド13および装着ヘッド13をX方向に移動するX軸モータ12及びY方向に移動するY軸モータ9を有する部品装着部と、
部品認識カメラ20の観測光学軸とマーク形成体M2の中心軸は、X方向にほぼ同じ位置に配置され、実際の取り付け位置が予め計測及び校正され、既知のデータとしてCPU31内に記憶されており、装着ヘッド13が部品供給ユニット3から基板P上に移動する途中で吸着保持されている電子部品を、光源24aで照明しながら撮像する部品認識カメラ20と、
装着ヘッド13に取り付けられX方向に移動するX軸モータ12及びY方向に移動するY軸モータ9に駆動されて水平面内を移動可能であり、位置決めされた基板Pに向かってビーム状のレーザ光Iを照射し、基板からの散乱像Rを受光し、三角測量の原理から高さを計測する光学式基板高さ計測センサ21と、を備える電子部品装着装置1であって、
光学式基板高さ計測センサ21、基板認識カメラ19、及び校正用ブロック23を用いて、位置ズレ量(△x,△y)を認識し、
位置ズレ量(△x,△y)から、光学式基板高さ計測センサ21で、基板が実際に置かれている状態での正確な位置での高さ計測動作を可能とする、電子部品装着装置1。」

(2) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「基板P」は、本願発明の「基板」に相当する。
以下同様に、「位置決め部5」は、「部品実装位置」に、
「供給コンベア4及び排出コンベア6」は、「基板搬送装置」に、
「電子部品」は、「部品」に、
「部品供給ユニット3」は、「部品供給装置」に、
「吸着」は、「採取」に、
「装着ヘッド13」は、「実装ヘッド」に、
「装着ヘッド13をX方向に移動するX軸モータ12及びY方向に移動するY軸モータ9」は、「実装ヘッドを水平面内の直交2方向に駆動するヘッド駆動機構」に、
「部品装着部」は、「部品移載装置」に、
「光源24a」は、「光源」に、
「部品認識カメラ20」は、「部品カメラ」に、
「位置決めされた基板Pに向かってビーム状のレーザ光Iを照射し、基板からの散乱像Rを受光し、三角測量の原理から高さを計測する光学式基板高さ計測センサ21」は、「位置決めされた基板に向かってレーザー光を照射するレーザー光照射部および前記基板で反射されたレーザー光を検出する反射光検出部を有して前記基板の高さを測定するレーザー高さセンサ」に、
「電子部品装着装置1」は、「部品実装機」に、それぞれ相当する。

引用発明において、「部品認識カメラ20の観測光学軸とマーク形成体M2の中心軸は、X方向にほぼ同じ位置に配置され、実際の取り付け位置が予め計測及び校正され、既知のデータとしてCPU31内に記憶され」ていることは、本願発明において、部品カメラが「前記ヘッド駆動機構の平面座標系で表した所定の較正位置に配置されて」いることに相当する。

引用発明では、「位置ズレ量(△x,△y)から、光学式基板高さ計測センサ21で、基板が実際に置かれている状態での正確な位置での高さ計測動作を可能」としているから、
引用発明の「位置ズレ量(△x,△y)」は、本願発明の「レーザー高さセンサが前記ヘッド駆動機構によって前記平面座標系の座標位置に移動されたときに前記レーザー光照射部から前記基板に向かって照射されるレーザー光の前記平面座標系での座標位置の補正値」に相当するとともに、
引用発明は、本願発明の「前記基板上の任意の座標位置で高さ測定を行う際に、前記ヘッド駆動機構により前記補正値を考慮して前記レーザー高さセンサを移動させる位置補正手段」に相当する構成を備えている。

そして、引用発明は「位置ズレ量(△x,△y)を認識」しているから、引用発明は、本願発明の「補正値取得手段」に相当する構成を備えている。

以上のことから、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。
「基板を部品実装位置に搬入し位置決めし搬出する基板搬送装置と、
部品を供給する部品供給装置と、
前記部品供給装置から前記部品を採取して前記位置決めされた基板に装着する実装ヘッドおよび前記実装ヘッドを水平面内の直交2方向に駆動するヘッド駆動機構を有する部品移載装置と、
前記ヘッド駆動機構の平面座標系で表した所定の較正位置に配置されて、前記実装ヘッドが前記部品供給装置から前記基板上に移動する途中で採取されている部品を、光源で照明しながら撮像する部品カメラと、
前記実装ヘッドに取り付けられ前記ヘッド駆動機構に駆動されて前記水平面内を移動可能であり、位置決めされた基板に向かってレーザー光を照射するレーザー光照射部および前記基板で反射されたレーザー光を検出する反射光検出部を有して前記基板の高さを測定するレーザー高さセンサと、を備える部品実装機であって、
前記レーザー高さセンサが前記ヘッド駆動機構によって前記平面座標系の座標位置に移動されたときに前記レーザー光照射部から前記基板に向かって照射されるレーザー光の前記平面座標系での座標位置の補正値を求める補正値取得手段と、
前記基板上の任意の座標位置で高さ測定を行う際に、前記ヘッド駆動機構により前記補正値を考慮して前記レーザー高さセンサを移動させる位置補正手段と、をさらに備える部品実装機。

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点]
本願発明では、補正値取得手段は、補正値を「レーザー光画像上での前記レーザー光の位置に基づいて」求めており、そのために、「前記較正位置に位置決めされた前記レーザー高さセンサのレーザー光照射部と前記部品カメラの光入射部との間に配置され、前記レーザー光照射部から前記光入射部に向かって照射されたレーザー光を減衰しつつ透過する減光フィルタと、前記レーザー高さセンサを前記較正位置に位置決めし、前記光源を消灯して、前記レーザー光照射部から前記光入射部に向かって前記レーザー光を照射し、前記減光フィルタを透過したレーザー光を前記部品カメラで撮像して、前記較正位置の位置制御の誤差を含んだレーザー光画像を得るレーザー光撮像手段と」、「前記減光フィルタは、母板および押え板によって較正治具の中央に挟持されつつ前記部品カメラの上面に着脱可能にセットされ、前記光入射部の上方位置であって前記部品実装位置に位置決めされた前記基板の上面と同じ高さに水平姿勢で配置され」との構成を備えているのに対して、
引用発明では、補正値取得手段は、補正値を「光学式基板高さ計測センサ21、基板認識カメラ19、及び校正用ブロック23を用いて、位置ズレ量(△x,△y)を認識」することにより求めている点。

(3) 判断
上記相違点について検討する。
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2:特開平11-237307号公報(特に、段落【0009】?【0011】、並びに図5及び図6を参照。)には、レーザービーム射出光学ユニットから射出されるレーザービームのピント位置測定方法およびピント位置調整方法に関して、光検出センサとしてTVカメラ113を用いた画像処理によりレーザービームのビーム重心位置を算出し、ビーム中心位置が所定の位置になるように、レーザービームの照射位置を調整すること(以下「引用文献2記載の事項」という。)が記載されているが、減光フィルタについて記載も示唆もされていない。

原査定の拒絶の理由において、レーザ光を減光するNDフィルタをCCDカメラの前に配置することが周知技術であることの証拠として挙げられた引用文献3:特開2010-49766号公報(特に、段落【0025】及び図2を参照。)には、光ピックアップ用対物レンズの傾き測定方法及び装置に関して、レーザー光20CをビームスプリットするビームスプリッタBS3と低倍率光学系用CCDカメラCCD1との間に反射光を減光するNDフィルタND2(本願発明の「減光フィルタ」に相当。)を設け、同じくビームスプリッタBS3と光検出部10との間にNDフィルタND3(本願発明の「減光フィルタ」に相当。)を設けること(以下「引用文献3記載の事項」という。)が記載されているが、「減光フィルタは、母板および押え板によって較正治具の中央に挟持されつつ前記部品カメラの上面に着脱可能にセットされ、前記光入射部の上方位置であって前記部品実装位置に位置決めされた前記基板の上面と同じ高さに水平姿勢で配置される」ことを示唆するものではない。

同じく、原査定の拒絶の理由において、レーザ光を減光するNDフィルタをCCDカメラの前に配置することが周知技術であることの証拠として挙げられた引用文献4:特開2003-162068号公報(特に、段落【0047】?【0048】及び図7を参照。)には、レーザ描画方法とその装置に関して、載置テーブル15の基台15aにおける第1の校正用パターンCRの近傍には、z方向に垂設され、折れ曲り部74aが載置テーブル15の載置面と平行となるように第1の校正用パターンCRの上方位置の方に折れ曲がったフィルター支持部74が備えられ、この折れ曲り部74aには、レーザビームLBの光量を減光するためのNDフィルター75(本願発明の「減光フィルタ」に相当。)が備えられ、ビーム走査機構21からのレーザビームLBは、NDフィルター75と第1の校正用パターンCRとを介してCCDカメラ19に入射され、レーザビームLBの露光スポットを直接にCCDカメラ19に入力すると光量オーバーとなるので、CCDカメラ19上部に設けられたNDフィルター75により、適切な光量に減光すること(以下「引用文献4記載の事項」という。)が記載されているが、「減光フィルタは、母板および押え板によって較正治具の中央に挟持されつつ前記部品カメラの上面に着脱可能にセットされ、前記光入射部の上方位置であって前記部品実装位置に位置決めされた前記基板の上面と同じ高さに水平姿勢で配置される」ことを示唆するものではない。

以上のように、引用文献2記載の事項、並びに周知技術であるとする引用文献3記載の事項及び引用文献4記載の事項は、いずれも上記相違点に係る本願発明の構成の一部である「減光フィルタは、母板および押え板によって較正治具の中央に挟持されつつ前記部品カメラの上面に着脱可能にセットされ、前記光入射部の上方位置であって前記部品実装位置に位置決めされた前記基板の上面と同じ高さに水平姿勢で配置される」ことを示唆するものではないから、たとえ引用発明に引用文献2?4記載の事項を適用したとしても、上記相違点に係る本願発明の構成に至るものではない。

(4) 小括
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2?4記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

・請求項1について
減光フィルタの配置が明確でない。

2 当審拒絶理由の判断
平成28年11月1日の手続補正により、請求項2に記載された発明を特定するための事項を請求項1に追加するとともに、請求項2を削除した。
この補正により、請求項1に、「前記減光フィルタは、母板および押え板によって較正治具の中央に挟持されつつ前記部品カメラの上面に着脱可能にセットされ、前記光入射部の上方位置であって前記部品実装位置に位置決めされた前記基板の上面と同じ高さに水平姿勢で配置される」点が特定され、これにより減光フィルタの配置が明確となった。
よって、当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-23 
出願番号 特願2011-147017(P2011-147017)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
P 1 8・ 537- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 信小金井 匠中島 昭浩  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 小関 峰夫
中川 隆司
発明の名称 部品実装機  
代理人 山本 喜一  
代理人 木村 群司  
代理人 小林 脩  

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