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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G01R
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01R
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1324036
審判番号 不服2015-16587  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-09 
確定日 2017-02-07 
事件の表示 特願2011- 75305「電池電圧検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月25日出願公開、特開2012-208068、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月30日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年11月 7日付け:拒絶理由の通知
平成27年 1月 7日 :意見書、手続補正書の提出
平成27年 6月30日付け:拒絶査定
平成27年 9月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成28年 6月21日付け:当審拒絶理由の通知
平成28年 7月29日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年 9月 5日付け:当審拒絶理由の通知
平成28年10月26日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1および2に係る発明は、平成28年10月26日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1および2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「 【請求項1】
直列接続された複数の電池セルの各々に対して個別に設けられており、前記電池セルによって充電されるコンデンサと、前記電池セルの両端子に接続された一対の入力端子と、充電期間中にオンとなって前記コンデンサを前記一対の入力端子間に接続し、充電後にオフとなって前記コンデンサを前記一対の入力端子から絶縁する入力スイッチと、一対の出力端子と、充電期間中にオフとなって前記コンデンサを前記一対の出力端子から絶縁し、充電後にオンとなって前記コンデンサを前記一対の出力端子間に接続する出力スイッチとを有する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路の各々に設けられた前記一対の出力端子の内、高電位側の出力端子と電源ラインとに接続された複数のプルアップ抵抗と、
前記電圧検出回路の各々に接続され、前記プルアップ抵抗が前記コンデンサに接続される前記出力スイッチのオン期間中に前記コンデンサが前記プルアップ抵抗を介して再充電され、ドリフト誤差による電圧低下分がキャンセルされたときの前記電圧検出回路の出力端子間電圧を前記電池セルのセル電圧として取り込む電圧処理部と
を備えることを特徴とする電池電圧検出装置。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:特開2010-256335号公報
刊行物2:特開2001-244813号公報
刊行物3:特開2000-183739号公報
刊行物4:国際公開第2009/019825号
刊行物5:特開2008-82731号公報
刊行物6:特開2002-350472号公報

刊行物1の主に図1,図2を参照のこと。
プルアップ抵抗を介して電源ラインに接続する構成(例えば刊行物2の図2,図4、刊行物3の図13など)は周知であり、当該構成をとることに格別の困難性はない。
また、電池セルの各々に対応して電圧検出回路を設けることは設計的事項である。

出願人は、意見書において、例示した刊行物のプルアップ抵抗は、本願発明のプルアップ抵抗とは異なる旨の主張をしているが、刊行物1や本願明細書でも開示されるような回路構成(【0023】のA/D変換回路等を参照)において、一般的なプルアップ抵抗を用いることに格別の困難性はない。
また、スイッチと連動して機能する点も主張しているが、この種のスイッチの動作(コンデンサへの充電中はオンにし、充電後はオフにする)は、例えば刊行物4の[0039]、図1,図2,図6、刊行物5の【0014】-【0015】,図1等、刊行物6の【0008】-【0009】等,図1,図3にも開示されるように、一般的であるから、プルアップ抵抗を備えたものであっても、当該スイッチ動作を行う構成とすることは、当業者ならば容易になし得たものである。

2 原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項
ア 刊行物1(特開2010-256335号公報)の記載事項
刊行物1には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(a)「【0037】
図1に、第1実施形態に係る電圧検出装置1の内部ブロック図を示す。図1には、電圧検出装置1に接続される他の要素も示されている。電圧検出装置1は、符号11?15によって参照される各部位を備える。図1において、符号2は、電圧の測定対象としての電圧源を表す。本実施形態及び後述の各実施形態においては、特に述べない限り、測定対象は充電可能なリチウムイオン二次電池(以下、LIBと表記する)であるとする。」

(c)「【0039】
電圧源2と負荷3及び充電回路4とを接続する環状の主電力線20から、電圧源2の正出力端子に接続された電圧検出線21が引き出されている。電圧源2の負出力端子は基準電位点6に接続されている。符号11?15によって参照される各部位は、基準電位点7における電位を基準にして動作する。
【0040】
電圧検出装置1は、電圧検出線21上のアナログ電圧信号から、電圧源2の正出力端子及び負出力端子間の電圧(即ち、電圧源2の出力電圧Vo)を検出する。電圧検出線21は分岐点22にて2つに分岐しており、一方はAD前段部11に接続され且つ他方は電圧レベル判定部13に接続される。分岐点22からAD前段部11に向かう電圧検出線を符号23によって参照し、分岐点22から電圧レベル判定部13に向かう電圧検出線を符号24によって参照する。従って、電圧源2の出力電圧Voを表すアナログ電圧信号は、電圧検出線21を伝播した後、分岐点22にて分岐し、更に電圧検出線23及び24上を伝播する。
【0041】
AD前段部11は、自身の入力端子11_(IN)に加わったアナログ電圧をAD変換器12の入力端子12_(IN)に伝達するためのバッファ回路であり、例えば、差動アンプや、図2に示すような回路構成を有するフライングキャパシタから構成される。AD前段部11から伝達されて入力端子12_(IN)に加わる電圧は基準電位点7の電位を基準とする電圧である一方、入力端子11_(IN)に加わるアナログ電圧は基準電位点6の電位を基準とする電圧である。基準電位点6及び7の電位は一致していても不一致であっても良いが、今、説明の簡単化のため、両者の電位が同じである場合を考える。この場合、入力端子11_(IN)に加わるアナログ電圧とは、基準電位点6及び7の電位を基準とする、電圧検出線23上の電圧である。AD前段部11に差動アンプやフライングキャパシタを用いれば、両者の電位の一致性は要求されない。
【0042】
AD変換器12は、基準電圧発生部15より発生される基準電圧Vref_(AD)を基準にしつつ、周期的に入力端子12_(IN)におけるアナログ電圧信号をデジタル電圧信号に変換し、得られたデジタル電圧信号をデジタル回路部14に出力する。電圧検出装置1は、基準電圧Vref_(AD)の電圧値を予め認識している。電圧レベル判定部13は、電圧検出線24におけるアナログ電圧信号に基づいて電圧源2の出力電圧Voの電圧レベルを判定する。即ち、電圧源2の出力電圧Voの電圧値が、互いに異なる複数の電圧範囲の何れに属するかを判定する(図4参照)。更に換言すれば、電圧源2の出力電圧Voを、AD変換器12の電圧検出分解能よりも粗い分解能にて検出する。電圧レベル判定部13の判定結果を表すデジタル信号はデジタル回路部14に出力される。尚、電圧レベル判定部13によって判定された電圧源2の出力電圧値を、判定電圧値とも言う。」

(d)「【0073】
電圧検出装置101内の各部位は、基準電位点7の電位を基準として動作する。符号2[1]?2[8]の夫々は、電圧の測定対象としての電圧源を表し、今、各電圧源2[1]?2[8]が電圧源2と同様の特性を有するLIBである場合を考える。電圧源2[1]?2[8]は、高電圧側から、電圧源2[1]、2[2]、2[3]、2[4]、2[5]、2[6]、2[7]及び2[8]の順番で直列接続されており、電圧源2[8]の負出力端子は基準電位点6に接続されている。」

(e)図2より、「フライングキャパシタと、フライングキャパシタの一方の端子と入力端子11_(IN)とを接続する第1のスイッチと、フライングキャパシタの他方の端子と基準電位点6とを接続する第2のスイッチと、フライングキャパシタの一方の端子と入力端子12_(IN)とを接続する第3のスイッチと、フライングキャパシタの他方の端子と基準電位点7とを接続する第4のスイッチとを備えるAD前段部11」が見てとれる。

(ア)刊行物1の「電圧検出装置1は、・・・(略)・・・電圧源2の正出力端子及び負出力端子間の電圧(即ち、電圧源2の出力電圧Vo)を検出する」(【0040】)との記載について、「電圧検出装置1は、符号11?15によって参照される各部位を備える。図1において、符号2は、電圧の測定対象としての電圧源を表す。本実施形態及び後述の各実施形態においては、特に述べない限り、測定対象は充電可能なリチウムイオン二次電池(以下、LIBと表記する)であるとする」(【0037】)との記載を踏まえれば、測定対象としての電圧源2とはリチウムイオン二次電池であり、刊行物1には、「リチウムイオン二次電池である電圧源2の正出力端子及び負出力端子間の電圧を検出する電圧検出装置1」が記載されているといえる。

(イ)刊行物1の「各電圧源2[1]?2[8]が電圧源2と同様の特性を有するLIBである場合を考える。電圧源2[1]?2[8]は、・・・(略)・・・直列接続されており」(【0073】)との記載について、「リチウムイオン二次電池(以下、LIBと表記する)」(【0037】)との記載を踏まえれば、刊行物1には、「リチウムイオン二次電池である電圧源2が複数直列接続される」ことが記載されているといえる。

(ウ)
a 刊行物1の「AD前段部11は、自身の入力端子11_(IN)に加わったアナログ電圧をAD変換器12の入力端子12_(IN)に伝達するためのバッファ回路であり」(【0041】)との記載より、刊行物1には、「自身の入力端子11_(IN)に加わったアナログ電圧をAD変換器12の入力端子12_(IN)に伝達するためのバッファ回路であるAD前段部11」が記載されているといえる。

b 刊行物1の「電圧源2の正出力端子に接続された電圧検出線21」(【0039】)、「分岐点22からAD前段部11に向かう電圧検出線を符号23によって参照し、・・・(略)・・・電圧源2の出力電圧Voを表すアナログ電圧信号は、電圧検出線21を伝播した後、分岐点22にて分岐し、更に電圧検出線23及び24上を伝播する」(【0040】)、「AD前段部11は、自身の入力端子11_(IN)に加わったアナログ電圧を・・・(略)・・・伝達する」(【0041】)との記載を踏まえれば、入力端子11_(IN)に加わるアナログ電圧とは、電圧源の出力電圧を表すアナログ電圧信号に対応するものであって、入力端子11_(IN)は、電圧検出線23を介して電圧源2の正出力端子に接続されるといえ、刊行物1には、「電圧源2の正出力端子に接続される入力端子11_(IN)」が記載されているといえる。

c 刊行物1には、「AD変換器12の入力端子12_(IN)」(【0041】)が記載されている。

d 刊行物1の「電圧源2の負出力端子は基準電位点6に接続されている」(【0039】)との記載より、刊行物1には、「電圧源2の負出力端子に接続される基準電位点6」が記載されているといえる。

e 刊行物1の「符号11?15によって参照される各部位は、基準電位点7における電位を基準にして動作する」(【0039】)、「AD変換器12」(【0041】)との記載より、刊行物1には、「AD変換器12の基準の電位となる基準電位点7」が記載されているといえる。

f 上記aないしeと上記(e)を総合すれば、刊行物1には、「フライングキャパシタと、フライングキャパシタの一方の端子と電圧源2の正出力端子に接続される入力端子11_(IN)とを接続する第1のスイッチと、フライングキャパシタの他方の端子と電圧源2の負出力端子に接続される基準電位点6とを接続する第2のスイッチと、フライングキャパシタの一方の端子とAD変換器12の入力端子12_(IN)とを接続する第3のスイッチと、フライングキャパシタの他方の端子とAD変換器12の基準の電位となる基準電位点7とを接続する第4のスイッチとを備えるAD前段部11であって、自身の入力端子11_(IN)に加わったアナログ電圧をAD変換器12の入力端子12_(IN)に伝達するためのバッファ回路であるAD前段部11」が記載されているといえる。

(エ)刊行物1の「AD変換器12は、・・・(略)・・・周期的に入力端子12_(IN)におけるアナログ電圧信号をデジタル電圧信号に変換し、・・・(略)・・・デジタル回路部14に出力する」(【0042】)、「符号11?15によって参照される各部位は、基準電位点7における電位を基準にして動作する」(【0039】)との記載より、刊行物1には、「基準電位点7における電位を基準にして動作し、周期的に入力端子12_(IN)におけるアナログ電圧信号をデジタル電圧信号に変換し、デジタル回路部14に出力するAD変換器12」が記載されているといえる。

したがって、上記(ア)ないし(エ)を総合すると、刊行物1には以下の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。

「リチウムイオン二次電池である電圧源2の正出力端子及び負出力端子間の電圧を検出する電圧検出装置1であって、
リチウムイオン二次電池である電圧源2が複数直列接続され、
フライングキャパシタと、フライングキャパシタの一方の端子と電圧源2の正出力端子に接続される入力端子11_(IN)とを接続する第1のスイッチと、フライングキャパシタの他方の端子と電圧源2の負出力端子に接続される基準電位点6とを接続する第2のスイッチと、フライングキャパシタの一方の端子とAD変換器12の入力端子12_(IN)とを接続する第3のスイッチと、フライングキャパシタの他方の端子とAD変換器12の基準の電位となる基準電位点7とを接続する第4のスイッチとを備えるAD前段部11であって、自身の入力端子11_(IN)に加わったアナログ電圧をAD変換器12の入力端子12_(IN)に伝達するためのバッファ回路であるAD前段部11と、
基準電位点7における電位を基準にして動作し、周期的に入力端子12_(IN)におけるアナログ電圧信号をデジタル電圧信号に変換し、デジタル回路部14に出力するAD変換器12と、
を有する、
電圧検出装置1。」

イ 刊行物2(特開2001-244813号公報)の記載事項
刊行物2には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(a)「【0016】図1において、A/D変換入力回路は、アナログ信号(A)100、アナログ信号(B)101、アナログ信号(C)102とを入力し、チャンネル切替え信号125に従っていずれか一つのアナログ信号を選択するマルチプレクサ120(選択手段)と、サンプル・ホールド・スイッチ131及びホールドコンデンサ132から構成され、マルチプレクサ120により選択されたアナログ信号を一定時間保持するサンプル・ホールド回路130(サンプル・ホールド手段)と、サンプル・ホールド回路130によりサンプル・ホールドされたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器140(A/D変換手段)と、A/D変換器140を内蔵するマイクロコンピュータ等からなりA/D変換器140によりA/D変換した値に基づいて、マルチプレクサ120を含む電子制御ユニット全体を制御するCPU150(制御手段,検出手段)とを備えて構成される。」

(b)「【0034】図2は、第2の実施形態のA/D変換入力回路の構成を示す図である。本実施形態の説明にあたり、図1と同一構成部分には同一符号を付して重複部分の説明を省略する。図2において、200は、サンプル・ホールド回路130のコンデンサ132に蓄積された電荷を充電する充電回路(充電手段)であり、充電回路200は、サンプル・ホールド回路130の出力側とCPU150との間に設置されている。
【0035】充電回路200は、外部電圧300(高電位電源)に接続された充電抵抗201(負荷)と、充電抵抗201とマルチプレクサ120の出力信号線110との接続を開閉する充電スイッチ202(第1のスイッチ手段)とから構成される。また、CPU150は、マルチプレクサ120に接続される入力信号線に対応する0又は1のデータを保持するレジスタ141を備えており、レジスタ141から読み出した0又は1の値により充電スイッチ202の操作を制御する。このレジスタ141には、A/D変換結果が格納される。」

(c)「【0039】以上詳細に説明したように、第2の実施形態によれば、サンプル・ホールド回路130のコンデンサを一定電圧に充電する充電回路200を付加し、充電回路200が充電スイッチ202と直列抵抗201の組み合せにより入力信号線と外部電圧300と接続するので、充電回路200の充電スイッチ202をONとしている間、サンプル・ホールド回路130のコンデンサ132は外部電圧300により充電され、充電回路200の充電スイッチ202がOFFとなった後は、コンデンサ132に蓄積された電荷により断線された信号線のA/D変換値は(外部電圧+誤差)を示すことになり、信号線が断線した場合、充電回路200により、そのアナログ信号線のA/D変換値は、誤差の範囲内で一定値となり、この値が、正常時のアナログ信号値の有効範囲外であれば、アナログ信号線の断線を検出することができる。次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。」

(ア)刊行物2には、「アナログ信号(A)100、アナログ信号(B)101、アナログ信号(C)102とを入力し、チャンネル切替え信号125に従っていずれか一つのアナログ信号を選択するマルチプレクサ120・・・(略)・・・と、サンプル・ホールド・スイッチ131及びホールドコンデンサ132から構成され、マルチプレクサ120により選択されたアナログ信号を一定時間保持するサンプル・ホールド回路130・・・(略)・・・と、サンプル・ホールド回路130によりサンプル・ホールドされたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器140・・・(略)・・・と、A/D変換器140を内蔵するマイクロコンピュータ等からなりA/D変換器140によりA/D変換した値に基づいて、マルチプレクサ120を含む電子制御ユニット全体を制御するCPU150・・・(略)・・・とを備えて構成される」(【0016】)、「A/D変換入力回路」(【0016】)が記載されている。

(イ)刊行物2の「200は、サンプル・ホールド回路130のコンデンサ132に蓄積された電荷を充電する充電回路・・・(略)・・・であり、充電回路200は、サンプル・ホールド回路130の出力側とCPU150との間に設置されている」(【0034】)、「充電回路200は、外部電圧300・・・(略)・・・に接続された充電抵抗201・・・(略)・・・と、充電抵抗201とマルチプレクサ120の出力信号線110との接続を開閉する充電スイッチ202・・・(略)・・・とから構成される」(【0035】)との記載より、刊行物2には、「外部電圧300に接続された充電抵抗201と、充電抵抗201とマルチプレクサ120の出力信号線110との接続を開閉する充電スイッチ202とから構成される充電回路200であって、サンプル・ホールド回路130の出力側とCPU150との間に設置され、サンプル・ホールド回路130のコンデンサ132に蓄積された電荷を充電する充電回路200」が記載されているといえる。

(ウ)刊行物2には、「充電回路200の充電スイッチ202をONとしている間、サンプル・ホールド回路130のコンデンサ132は外部電圧300により充電され、充電回路200の充電スイッチ202がOFFとなった後は、コンデンサ132に蓄積された電荷により断線された信号線のA/D変換値は(外部電圧+誤差)を示すことになり、信号線が断線した場合、充電回路200により、そのアナログ信号線のA/D変換値は、誤差の範囲内で一定値となり、この値が、正常時のアナログ信号値の有効範囲外であれば、アナログ信号線の断線を検出することができる」(【0039】)ことが記載されている。

したがって、上記(ア)ないし(ウ)を総合すると、刊行物2には以下の技術が記載されている(以下、「刊行物2に記載の技術」という。)。

「アナログ信号(A)100、アナログ信号(B)101、アナログ信号(C)102とを入力し、チャンネル切替え信号125に従っていずれか一つのアナログ信号を選択するマルチプレクサ120と、
サンプル・ホールド・スイッチ131及びホールドコンデンサ132から構成され、マルチプレクサ120により選択されたアナログ信号を一定時間保持するサンプル・ホールド回路130と、
サンプル・ホールド回路130によりサンプル・ホールドされたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器140と、
A/D変換器140を内蔵するマイクロコンピュータ等からなりA/D変換器140によりA/D変換した値に基づいて、マルチプレクサ120を含む電子制御ユニット全体を制御するCPU150と
を備えて構成されるA/D変換入力回路であって、
外部電圧300に接続された充電抵抗201と、充電抵抗201とマルチプレクサ120の出力信号線110との接続を開閉する充電スイッチ202とから構成される充電回路200であって、サンプル・ホールド回路130の出力側とCPU150との間に設置され、サンプル・ホールド回路130のコンデンサ132に蓄積された電荷を充電する充電回路200を備え、
充電回路200の充電スイッチ202をONとしている間、サンプル・ホールド回路130のコンデンサ132は外部電圧300により充電され、充電回路200の充電スイッチ202がOFFとなった後は、コンデンサ132に蓄積された電荷により断線された信号線のA/D変換値は(外部電圧+誤差)を示すことになり、信号線が断線した場合、充電回路200により、そのアナログ信号線のA/D変換値は、誤差の範囲内で一定値となり、この値が、正常時のアナログ信号値の有効範囲外であれば、アナログ信号線の断線を検出することができる、
A/D変換入力回路。」

ウ 刊行物3(特開2000-183739号公報)の記載事項
刊行物3には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(a)「【0003】このような従来のASIC内蔵マイコン9では、入出力端子部はユーザロジックによる構成部であるため、前記入出力端子部の端子はユーザにより任意にプルアップまたはプルダウンされる構成となる。このようなことから、AD変換器10に信号を入力する端子にプルアップ抵抗2とプルアップ電源4によるプルアップ構成が適用された場合、AD変換特性は図14に示すようにプルアップなしのAD変換特性にプルアップ電位上昇分のオフセットが付加される特性となる。」

上記(a)より、刊行物3には以下の技術が記載されている(以下、「刊行物3に記載の技術」という。)。

「AD変換器10に信号を入力する端子にプルアップ抵抗2とプルアップ電源4によるプルアップ構成が適用された場合、AD変換特性は図14に示すようにプルアップなしのAD変換特性にプルアップ電位上昇分のオフセットが付加される技術。」

エ 刊行物4(国際公開第2009/019825号)の記載事項
刊行物4には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。「キャパシタ23」との記載は「キャパシタ24」の誤記と認める。)。

(a)「[0001] 本発明は、互いに直列接続された複数個の電池モジュールの電圧検出装置、及びこれを用いた電源システムに関する。」

(b)「[0039] スイッチ6はマイクロコンピュータ16により選択的にON、OFFされるスイッチであり、キャパシタ24に二次電池21の電圧を選択的にコピーするスイッチである。スイッチ23は、キャパシタ24を差動増幅回路25に接続し、マイクロコンピュータ16によりスイッチ6で選択された二次電池21の電池電圧を検出するためのスイッチで、スイッチ6とスイッチ23のON,OFFにより二次電池21と差動増幅回路25が直接接続されないように構成されている。」

(ア)刊行物4には、「互いに直列接続された複数個の電池モジュールの電圧検出装置」([0001])が記載されている。

(イ)刊行物4の「スイッチ6は・・・(略)・・・キャパシタ24に二次電池21の電圧を選択的にコピーするスイッチである。スイッチ23は、キャパシタ24を差動増幅回路25に接続し、・・・(略)・・・スイッチ6で選択された二次電池21の電池電圧を検出するためのスイッチで、スイッチ6とスイッチ23のON,OFFにより二次電池21と差動増幅回路25が直接接続されないように構成されている」([0039])との記載より、刊行物4には、「キャパシタ24に二次電池21の電圧を選択的にコピーするスイッチ6と、キャパシタ24を差動増幅回路25に接続し、スイッチ6で選択された二次電池21の電池電圧を検出するスイッチ23とを備え、スイッチ6とスイッチ23のON,OFFにより二次電池21と差動増幅回路25が直接接続されないように構成される」ことが記載されているといえる。

したがって、上記(ア)および(イ)を総合すると、刊行物4には以下の技術が記載されている(以下、「刊行物4に記載の技術」という。)。

「キャパシタ24に二次電池21の電圧を選択的にコピーするスイッチ6と、
キャパシタ24を差動増幅回路25に接続し、スイッチ6で選択された二次電池21の電池電圧を検出するスイッチ23と
を備え、
スイッチ6とスイッチ23のON,OFFにより二次電池21と差動増幅回路25が直接接続されないように構成される、
互いに直列接続された複数個の電池モジュールの電圧検出装置。」

オ 刊行物5(特開2008-82731号公報)の記載事項
刊行物5には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(a)「【0001】
この発明は、積層電圧検出装置に係り、特に互いに直列接続された複数の電圧源の電圧をそれぞれ検出する装置に関する。」

(b)「【0014】
次に、この実施の形態1の動作について説明する。まず、制御部2のCPU3からローレベルの読み出し制御信号REが出力されて5つの読み出し用アナログスイッチT1?T5がそれぞれ遮断状態とされる。この状態で、CPU3からハイレベルの充電制御信号CHが出力され、5つの充電用アナログスイッチS1?S5がそれぞれ接続状態となる。これにより、直列コンデンサ回路1の4つのコンデンサC1?C4がそれぞれ対応する単位電池E1?E4に接続されて充電される。
【0015】
コンデンサC1?C4が十分に充電されると、CPU3から出力されていたハイレベルの充電制御信号CHがローレベルとされ、5つの充電用アナログスイッチS1?S5がそれぞれ遮断状態となってコンデンサC1?C4にそれぞれ対応する単位電池E1?E4の電圧が保持される。この状態で、CPU3から出力されていたローレベルの読み出し制御信号REがハイレベルとされ、5つの読み出し用アナログスイッチT1?T5がそれぞれ接続状態となる。これにより、直列コンデンサ回路1の特定の端子A2?A5がそれぞれ読み出し用アナログスイッチT2?T5を介して制御部2内のA/D変換器A/D1?A/D4に接続され、これらの端子A2?A5の電位がA/D変換器A/D1?A/D4で計測される。」

(ア)刊行物5には、「互いに直列接続された複数の電圧源の電圧をそれぞれ検出する装置」(【0001】)が記載されている。

(イ)刊行物5の「5つの読み出し用アナログスイッチT1?T5がそれぞれ遮断状態とされる。この状態で、・・・(略)・・・5つの充電用アナログスイッチS1?S5がそれぞれ接続状態となる。これにより、直列コンデンサ回路1の4つのコンデンサC1?C4がそれぞれ対応する単位電池E1?E4に接続されて充電される」(【0014】)との記載より、刊行物5には、「5つの読み出し用アナログスイッチT1?T5がそれぞれ遮断状態とされ、5つの充電用アナログスイッチS1?S5がそれぞれ接続状態となり、直列コンデンサ回路1の4つのコンデンサC1?C4がそれぞれ対応する単位電池E1?E4に接続されて充電される」ことが記載されているといえる。

(ウ)刊行物5の「コンデンサC1?C4が十分に充電されると、・・・(略)・・・5つの充電用アナログスイッチS1?S5がそれぞれ遮断状態となってコンデンサC1?C4にそれぞれ対応する単位電池E1?E4の電圧が保持される。この状態で、・・・(略)・・・5つの読み出し用アナログスイッチT1?T5がそれぞれ接続状態となる。これにより、直列コンデンサ回路1の特定の端子A2?A5がそれぞれ読み出し用アナログスイッチT2?T5を介して制御部2内のA/D変換器A/D1?A/D4に接続され、これらの端子A2?A5の電位がA/D変換器A/D1?A/D4で計測される」(【0015】)との記載より、刊行物5には、「コンデンサC1?C4が十分に充電されると、5つの充電用アナログスイッチS1?S5がそれぞれ遮断状態となってコンデンサC1?C4にそれぞれ対応する単位電池E1?E4の電圧が保持され、5つの読み出し用アナログスイッチT1?T5がそれぞれ接続状態となり、直列コンデンサ回路1の特定の端子A2?A5がそれぞれ読み出し用アナログスイッチT2?T5を介して制御部2内のA/D変換器A/D1?A/D4に接続され、これらの端子A2?A5の電位がA/D変換器A/D1?A/D4で計測される」ことが記載されているといえる。

したがって、上記(ア)ないし(ウ)を総合すると、刊行物5には以下の技術が記載されている(以下、「刊行物5に記載の技術」という。)。

「5つの読み出し用アナログスイッチT1?T5がそれぞれ遮断状態とされ、5つの充電用アナログスイッチS1?S5がそれぞれ接続状態となり、直列コンデンサ回路1の4つのコンデンサC1?C4がそれぞれ対応する単位電池E1?E4に接続されて充電され、
コンデンサC1?C4が十分に充電されると、5つの充電用アナログスイッチS1?S5がそれぞれ遮断状態となってコンデンサC1?C4にそれぞれ対応する単位電池E1?E4の電圧が保持され、5つの読み出し用アナログスイッチT1?T5がそれぞれ接続状態となり、直列コンデンサ回路1の特定の端子A2?A5がそれぞれ読み出し用アナログスイッチT2?T5を介して制御部2内のA/D変換器A/D1?A/D4に接続され、これらの端子A2?A5の電位がA/D変換器A/D1?A/D4で計測される、
互いに直列接続された複数の電圧源の電圧をそれぞれ検出する装置。」

カ 刊行物6(特開2002-350472号公報)の記載事項
刊行物6には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(a)「【0003】電気自動車に使用される組電池では、異常等の発生を監視するために、複数の単電池を1単位とした電池ブロック毎の電圧を検出する電池電圧検出装置が設けられている。図3は、このような電池電圧検出装置の一例を示す構成図である。」

(b)「【0008】この場合、まず、差動増幅器20に接続された第2FET45aおよび第3FET45bをそれぞれオフ状態として、組電池11の第1番目の電圧検出端子12に接続された第1番目の第1FET43と、第2番目の電圧検出端子12に接続された第2番目の第1FET43とを、それぞれオン状態とする。これにより、第1番目の電池ブロック11aがコンデンサ46に接続されて、その電池ブロック11aの電荷がコンデンサ46に充電される。
【0009】コンデンサ46に電荷が充電されると、オン状態になった一対の第1FET43をそれぞれオフ状態とした後に、第2FET45aおよび第3FET45bをそれぞれオン状態とする。これにより、コンデンサ46の電圧が差動増幅器20に与えられる。
【0010】差動増幅器20では、第1オペアンプ21のプラス入力端子には、第2オペアンプ23から第3抵抗を介して2.5Vの基準電圧が与えられており、入力されるコンデンサ46の電圧が、2.5Vを基準として、5Vまでの範囲で検出される。」

(ア)刊行物6には、「電池電圧検出装置」(【0003】)が記載されている。

(イ)刊行物6の「差動増幅器20に接続された第2FET45aおよび第3FET45bをそれぞれオフ状態として、組電池11の第1番目の電圧検出端子12に接続された第1番目の第1FET43と、第2番目の電圧検出端子12に接続された第2番目の第1FET43とを、それぞれオン状態とする。これにより、第1番目の電池ブロック11aがコンデンサ46に接続されて、その電池ブロック11aの電荷がコンデンサ46に充電される」(【0008】)との記載より、刊行物6には、「差動増幅器20に接続された第2FET45aおよび第3FET45bをそれぞれオフ状態として、組電池11の第1番目の電圧検出端子12に接続された第1番目の第1FET43と、第2番目の電圧検出端子12に接続された第2番目の第1FET43とを、それぞれオン状態とすることにより、第1番目の電池ブロック11aがコンデンサ46に接続されて、その電池ブロック11aの電荷がコンデンサ46に充電される」ことが記載されているといえる。

(ウ)刊行物6の「コンデンサ46に電荷が充電されると、オン状態になった一対の第1FET43をそれぞれオフ状態とした後に、第2FET45aおよび第3FET45bをそれぞれオン状態とする。これにより、コンデンサ46の電圧が差動増幅器20に与えられる」(【0009】)との記載より、刊行物6には、「コンデンサ46に電荷が充電されると、オン状態になった一対の第1FET43をそれぞれオフ状態とした後に、第2FET45aおよび第3FET45bをそれぞれオン状態とすることにより、コンデンサ46の電圧が差動増幅器20に与えられる」ことが記載されているといえる。

(エ)刊行物6には、「差動増幅器20では、・・・(略)・・・入力されるコンデンサ46の電圧が・・・(略)・・・検出される」(【0010】)ことが記載されている。

したがって、上記(ア)ないし(エ)を総合すると、刊行物6には以下の技術が記載されている(以下、「刊行物6に記載の技術」という。)。

「差動増幅器20に接続された第2FET45aおよび第3FET45bをそれぞれオフ状態として、組電池11の第1番目の電圧検出端子12に接続された第1番目の第1FET43と、第2番目の電圧検出端子12に接続された第2番目の第1FET43とを、それぞれオン状態とすることにより、第1番目の電池ブロック11aがコンデンサ46に接続されて、その電池ブロック11aの電荷がコンデンサ46に充電され、
コンデンサ46に電荷が充電されると、オン状態になった一対の第1FET43をそれぞれオフ状態とした後に、第2FET45aおよび第3FET45bをそれぞれオン状態とすることにより、コンデンサ46の電圧が差動増幅器20に与えられ、
差動増幅器20では、入力されるコンデンサ46の電圧が検出される、
電池電圧検出装置。」

(2)対比
本願発明と引用発明とを対比する。

ア 「リチウムイオン二次電池である電圧源2の正出力端子及び負出力端子間の電圧を検出する電圧検出装置1」である引用発明は、「電池電圧検出装置」であるという点で本願発明と共通する。

イ 引用発明の「AD前段部11」および「AD変換器12」は、それぞれ、本願発明の「電圧検出回路」および「電圧処理部」に対応する。

ウ 引用発明の「リチウムイオン二次電池である電圧源2」は、本願発明の「電池セル」に相当し、引用発明の「リチウムイオン二次電池である電圧源2が複数直列接続され」た構成は、本願発明の「直列接続された複数の電池セル」に相当する。

エ 引用発明の「電圧源2の正出力端子に接続される入力端子11_(IN)」および「電圧源2の負出力端子に接続される基準電位点6」を併せた構成は、本願発明の「前記電池セルの両端子に接続された一対の入力端子」に相当する。

オ 引用発明の「AD変換器12の入力端子12_(IN)」および「AD変換器12の基準の電位となる基準電位点7」を併せた構成は、本願発明の「一対の出力端子」に相当する。

カ 引用発明の「フライングキャパシタ」は、「電圧源2の正出力端子に接続される入力端子11_(IN)」と「電圧源2の負出力端子に接続される基準電位点6」とに接続され、電圧源2によって充電されるといえるから、本願発明の「コンデンサ」と、「前記電池セルによって充電されるコンデンサ」である点で共通する。

キ 刊行物1の「入力端子11_(IN)に加わるアナログ電圧は基準電位点6の電位を基準とする電圧である」(【0041】)との記載を踏まえれば、引用発明の「第1のスイッチ」および「第2のスイッチ」を併せた構成は、同時にオンになって、フライングキャパシタを「入力端子11_(IN)」および「基準電位点6」に接続するものであるといえ、上記カ(「前記電池セルによって充電されるコンデンサ」である点で共通すること)も踏まえれば、本願発明の「入力スイッチ」と、「充電期間中にオンとなって前記コンデンサを前記一対の入力端子間に接続する入力スイッチ」である点で共通する。

ク 刊行物1の「AD前段部11から伝達されて入力端子12_(IN)に加わる電圧は基準電位点7の電位を基準とする電圧である」(【0041】)との記載を踏まえれば、引用発明の「第3のスイッチ」および「第4のスイッチ」は、同時にオンになって、フライングキャパシタを「入力端子12_(IN)」および「基準電位点7」に接続するものであるといえ、本願発明の「出力スイッチ」と、「オンとなって前記コンデンサを前記一対の出力端子間に接続する出力スイッチ」である点で共通する。

ケ 引用発明の「AD変換器12」は、アナログ電圧信号を変換してデジタル電圧信号をデジタル回路部14に出力するもの、すなわち、デジタル回路部14にアナログ電圧信号をデジタル電圧信号として取り込むものといえるから、本願発明の「電圧処理部」と、「前記電圧検出回路に接続され、前記電圧検出回路の出力端子間電圧を前記電池セルのセル電圧として取り込む電圧処理部」である点で共通する。

コ すると、本願発明と引用発明とは、次の一致点および相違点を有する。

<一致点>
「直列接続された複数の電池セルに対して設けられており、前記電池セルによって充電されるコンデンサと、前記電池セルの両端子に接続された一対の入力端子と、充電期間中にオンとなって前記コンデンサを前記一対の入力端子間に接続する入力スイッチと、一対の出力端子と、オンとなって前記コンデンサを前記一対の出力端子間に接続する出力スイッチとを有する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路に接続され、前記電圧検出回路の出力端子間電圧を前記電池セルのセル電圧として取り込む電圧処理部と
を備えることを特徴とする電池電圧検出装置。」

<相違点>
【相違点1】
本願発明は、コンデンサが、直列接続された複数の電池セルの「各々に対して個別に」設けられ、電圧処理部が、電圧検出回路の「各々に」接続されているのに対し、引用発明にはそのような特定がない点。

【相違点2】
本願発明は、入力スイッチが、「充電後にオフとなって前記コンデンサを前記一対の入力端子から絶縁」し、出力スイッチが、「充電期間中にオフとなって前記コンデンサを前記一対の出力端子から絶縁し」、「充電後に」オンとなって前記コンデンサを前記一対の出力端子間に接続するのに対し、引用発明にはそのような特定がない点。

【相違点3】
本願発明は、「前記電圧検出回路の各々に設けられた前記一対の出力端子の内、高電位側の出力端子と電源ラインとに接続された複数のプルアップ抵抗」を備え、「前記プルアップ抵抗が前記コンデンサに接続される前記出力スイッチのオン期間中に前記コンデンサが前記プルアップ抵抗を介して再充電され、ドリフト誤差による電圧低下分がキャンセルされたときの」出力端子間電圧を取り込むのに対し、引用発明にはそのような特定がない点。

(3)判断
ア 相違点3について検討する。

イ 刊行物2および刊行物3には、プルアップ抵抗について開示されているものの、「前記電圧検出回路の各々に設けられた前記一対の出力端子の内、高電位側の出力端子と電源ラインとに接続された複数のプルアップ抵抗」を備え、「前記プルアップ抵抗が前記コンデンサに接続される前記出力スイッチのオン期間中に前記コンデンサが前記プルアップ抵抗を介して再充電され、ドリフト誤差による電圧低下分がキャンセルされたときの」出力端子間電圧を前記電池セルのセル電圧として取り込むという点は、刊行物2ないし6のいずれにも開示されておらず、周知技術であるともいえない。
よって、相違点3に係る本願発明の構成は、当業者が引用発明、刊行物2ないし6に記載の技術および周知技術から、当業者が容易に想到できたものとはいえない。

ウ したがって、相違点1および2について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明、刊行物2ないし6に記載された事項および周知技術に基づいて、当業者が容易に想到できたものとはいえない。

(4)小括
上記「(3)判断」において示したとおり、本願発明は、当業者が引用発明、刊行物2ないし6に記載された事項および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願の請求項2に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるから、本願の請求項2に係る発明は、本願発明と同様に、当業者が引用発明、刊行物2ないし6に記載された事項および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 平成28年6月21日付け当審拒絶理由について
1 平成28年6月21日付け当審拒絶理由の概要
この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



(1)再充電されたフライングキャパシタFCの出力端子間電圧Vをセル電圧V_FCとして検出することについて
ある電圧vで充電されて定常状態になったコンデンサの電圧は常にvとなるのが通常であるから、基準電圧Vccで再充電されて定常状態になったフライングキャパシタFCの出力端子間電圧Vは常にVccになると考えられ、このような定常状態の電圧はセル電圧V_FCとは無関係な電圧であり、なぜセル電圧V_FCを検出できるのか、不明である。

(2)プルアップ抵抗Rpの抵抗値の設定について
「サンプリング期間中に影響のでないようにプルアップ抵抗Rpの抵抗値を設定する」とは、具体的にどのような影響がでないようにどのような抵抗値を設定することを意味しているのかが不明である。また、サンプリング期間中に影響がでないように設定された抵抗値に基づく微小電流が溜められたフライングキャパシタFCの出力端子間電圧Vと、セル電圧V_FCとがどのような技術的関連を有するのか不明である。

(3)ドリフト誤差による出力端子間電圧Vの電圧低下分をキャンセルすることについて
ドリフト誤差の原因となる各種抵抗とは独立した抵抗であって常時接続されたプルアップ抵抗Rpと、安定した基準電圧Vccとを用いてフライングキャパシタFCを再充電する手法では、フライングキャパシタFCの出力端子間電圧Vを定常状態において基準電圧Vccにまで上昇させることが可能であったとしても(上記(1)参照)、なぜ経時的な抵抗値変化に起因するドリフト誤差を動的にキャンセルして真値に近いセル電圧を高精度に検出する効果をもたらすことができるのか不明である。

2 平成28年6月21日付け当審拒絶理由の判断
平成28年7月29日の意見書の釈明により、平成28年6月21日付け当審拒絶理由の(1)ないし(3)は解消した。
そうすると、もはや、平成28年6月21日付け当審拒絶理由(1)ないし(3)によって本願を拒絶することはできない。

第5 平成28年9月5日付け当審拒絶理由について
1 平成28年9月5日付け当審拒絶理由の概要
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



例えば、出力スイッチのオン期間中に(段落【0031】参照)、コンデンサ(フライングキャパシタ)がプルアップ抵抗を介して再充電され(段落【0032】参照)、ドリフト誤差による電圧低下分がキャンセルされて真値に近いセル電圧を得る(段落【0034】参照)といった構成が反映されていないため、請求項1に記載された発明は、上記課題を解決できるものとはいえず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになる(請求項1に記載された発明は、(1)出力スイッチのオン期間中にコンデンサ(フライングキャパシタ)が再充電される点が明確になっておらず(再充電されるか否かは、電源ラインの電圧値とコンデンサ(フライングキャパシタ)の高電位側の電圧値との関係にも依存するものであり、電源ラインに接続されたプルアップ抵抗に接続したという構成のみでは、コンデンサ(フライングキャパシタ)が再充電されるとは限らない)、(2)仮に再充電される場合があったとしても、ドリフト誤差による電圧低下分がキャンセルされて真値に近いセル電圧を得るもののみならず、例えば、定常状態の電圧(電源ライン(Vccライン)の電圧)に近いセル電圧を得るものも含まれる。)。

2 平成28年9月5日付け当審拒絶理由の判断
平成28年10月26日の手続補正により、請求項1に「前記コンデンサが前記プルアップ抵抗を介して再充電され、ドリフト誤差による電圧低下分がキャンセルされたときの」出力端子間電圧を取り込む構成が追加され、平成28年9月5日付け当審拒絶理由は解消した。
そうすると、もはや、平成28年9月5日付け当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由および当審で通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-20 
出願番号 特願2011-75305(P2011-75305)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (G01R)
P 1 8・ 537- WY (G01R)
P 1 8・ 121- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 越川 康弘  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 高橋 克
須原 宏光
発明の名称 電池電圧検出装置  
代理人 高橋 久典  
代理人 志賀 正武  
代理人 清水 雄一郎  
代理人 佐伯 義文  

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