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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L |
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管理番号 | 1324166 |
審判番号 | 不服2016-5935 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-04-21 |
確定日 | 2017-02-07 |
事件の表示 | 特願2014-511428「複数のフォーマットを有するパケットのワイヤレス通信のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月22日国際公開,WO2012/158565,平成26年 7月17日国内公表,特表2014-517608,請求項の数(40)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2012年5月11日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2011年5月13日 米国,2011年5月21日 米国,2011年12月19日 米国,2011年12月27日 米国,2012年1月11日 米国,2012年5月8日 米国)を国際出願日とする特許出願であって,平成27年6月29日付けで拒絶理由(以下,「原審拒絶理由」という。)が通知され,これに対し,同年10月7日に手続補正がなされ,同年12月18日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされ,これに対し,平成28年4月21日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-40に係る発明は,平成27年10月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-40に記載された事項により特定されるものと認められるところ,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「 物理レイヤプリアンブルとペイロードとを備えるワイヤレス通信を受信するように構成された受信機であって,前記プリアンブルは,前記ペイロードが反復コーディングされたデータを含むかどうかを示すロングトレーニングフィールド(LTF)を含み,前記データが反復コーディングされるかどうかは,前記LTF,または前記LTFの1つまたは複数のシンボルの回転によって示される,受信機と, 前記ペイロードが反復コーディングされたデータを含むかどうかに従って,前記ペイロードを処理するように構成されたプロセッサとを備える,ワイヤレス通信のための装置。」 第3 原査定の理由の概要 1.原審拒絶理由 「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2.(…中略…) 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1(進歩性)について ・請求項 1,2,5-7,10-12,15-17,20-22,25-27,30-32,35-37,40 ・引用文献等 1-4 ・備考 ペイロードの反復コーディングに関する情報を通信パラメータ情報とする通信システムもよく知られたものであり(例えば,引用文献1(特に第5,7図及びその説明),引用文献2(特に第50段落),特に引用文献1では,プリアンブルとしてのLTFフィールドについても記載がある。 ここで,通信技術分野において,引用文献3(特に請求項1-4,段落21,22,24,25,29,34,60,64-73,図8,10,11;段落64,65では,「・・ヘッダやペイロードに対してシンボル繰り返しを行う場合,プリアンブルで適用された繰り返しパターンと同一の特徴付けを行う・・」とあり,また,特徴付けとして「シンボルの位相」や「複素符号系列」の「乗算」が示されており,少なくとも一部分の回転が示されている。),引用文献4(特に段落19,20,32-34)に開示されるように周知であって,引用文献1,2に記載されるシステムにおいて,通信パラメータ情報である反復コーディングに関する情報を,引用文献3,4に記載された周知技術を適用して通知することは当業者が容易に想到し得たものと認められる。 なお,変調方式や符号化率等をどのような具体値に設定するかは,当業者が適宜設計する事項に過ぎない。 (…中略…) <引用文献等一覧> 1.国際公開第2011/053069号(周知技術を示す文献) 2.米国特許出願公開第2007/0097915号明細書(周知技術を示す文献) 3.特開2010-258599号公報(周知技術を示す文献) 4.特表2003-515973号公報(周知技術を示す文献) 5.(以下省略)」 2.原査定の概要 「 この出願については,平成27年 6月29日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって,拒絶をすべきものです。 なお,意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。 備考 ●理由1(特許法第29条第2項)について ・請求項 1-40 ・引用文献等 1-5 本願出願人は意見書中で,本願発明が「前記データが反復コーディングされるかどうかは,前記LTF,または前記LTFの1つまたは複数のシンボルの回転によって示される」のを特徴とするに対し,上記拒絶理由通知書で提示した引用文献1-5には,その記載が無い点で,両者が差異を有しており,本願発明は,上記引用文献1乃至5に基づいて容易に想到し得たものでない旨主張しているので,以下,検討する。 引用文献3(特に請求項1-4,段落21,22,24,25,29,34,57,60,64-74,図8,10-12,14,15)では,ペイロードに係る通信パラメータである繰り返し回数(反復コーディングに対応,1回は繰り返しなし)を明示的に伝えなくても繰り返し回数が分かるよう,プリアンブル(LTFに対応)の繰り返しパターンを該回数と対応付ける技術が開示されており,そして,該パターンは位相の変化や,複素符号の乗算という「回転」に対応するものであることが開示されている。 また,引用文献4(特に段落19,20,32-34)においても,ペイロードに係る通信パラメータである変調方式を明示的に伝えなくても変調方式が分かるよう,トレーニングシーケンスの回転をする技術が開示されている。 このような通信パラメータを所定のシンボルにおける回転によって通知する技術は,通信技術分野において,オーバーヘッド削減等のための周知慣用の技術であって,本願発明の上記特徴点と同一ではないものの,引用文献3,4に記載されるような技術が種々の周知システムで採用することは,当業者が適宜為し得たものであって,例えば,引用文献1,2に記載されるような,(プリアンブル,トレーニングシーケンスとして)LTFを含み,反復コーディングを採用し得る周知のシステムにおいて採用し,該反復コーディングに係るパラメータを,LTFの回転によって示すようにすることは,当業者が容易に想到し得たものである。 そうした場合,当該請求項に係る発明と,引用文献1-5に記載された発明とを比較して,格別な点はない。 従って,本願出願人の上記主張は,採用されない。 <引用文献等一覧> 1.国際公開第2011/053069号(周知技術を示す文献) 2.米国特許出願公開第2007/0097915号明細書(周知技術を示す文献) 3.特開2010-258599号公報(周知技術を示す文献) 4.特表2003-515973号公報(周知技術を示す文献) 5.(以下省略)」 そうすると,原査定の拒絶の理由の趣旨は,補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,当業者が引用文献1又は引用文献2に基づいて,引用文献3及び4に記載された周知技術を参酌することにより容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 原審拒絶理由及び原査定においては,引用文献1と引用文献2とを個別に論じていないから,以降では,引用文献1を主たる引用例とした場合についての判断し,引用文献2を主たる引用例とした場合についての判断は省略する。 第4 当審の判断 1.刊行物の記載事項 (1)引用発明 原査定において引用された国際公開第2011/053069号(以下,「引用例」という。)には,「TRANSMISSION METHOD OF DATA IN MULTI-USER WIRELESS COMMUNICATION SYSTEM」([当審仮訳]マルチユーザ無線通信システムにおけるデータの送信方法)(発明の名称)に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。(引用例は,韓国語で記載されているため,記載事項については,日本語のファミリー文献である特表2013-509794号公報の記載を代用する。) ア 「【0001】 本発明は,マルチユーザ無線送信システムにおけるデータ送信装置及び方法に関し,特にマルチユーザ無線送信システムにおけるデータ送信の効率を向上させるための方法及び装置に関する。」(第3ページ) イ 「【0013】 本発明は,干渉の程度に応じてSTA内のデータフィールド(field)のPPDUにMCSを変更して,複数のSTAが同時に送信するマルチユーザ無線通信環境においてデータの送信速度を向上させることができ,トレーニングフィールド,シグナルフィールド(signal field),データフィールド(data field)の繰り返しによりシグナルフィールドとデータフィールドのエラー率を減少させることによって,送信データの信頼性を高めることができる。」(第5ページ) ウ 「【0035】 図5は,本発明によってPPDUのデータフィールドを繰り返す場合の例示図である。 【0036】 図5では,上述の図2の場合において本発明によってPPDUのデータフィールドを繰り返すための2通りの場合を例示している。まず,第1の場合である(a)は,PPDUのデータフィールド(data field)を整数倍繰り返す場合の構成例で,(b)は,最も長さの長いPPDUと長さを一致させるために,データフィールドを部分繰り返す場合である。すると,それぞれの場合について述べる。 【0037】 (a)の場合を述べると,STA2のデータフィールド510と同じ大きさを有する繰り返しデータフィールド511が繰り返されて連続することが分かる。これは,STA3の場合にも同じである。すなわち,STA3の場合には,より短いデータフィールド520が含まれるので,第1繰り返しデータフレーム521と第2繰り返しデータフレーム522とが連続して送信される場合である。 【0038】 次に,(b)の場合を述べると,最も長いSTA1のデータフィールドに長さを合せるための場合である。すなわち,STA2では,データフィールド530以後に同じ大きさを有する第1繰り返しデータフィールド531が位置し,その以後に一部のみが繰り返される第2繰り返しデータフィールド532が位置する。これは,STA3の場合にも同様に適用される。すなわち,STA3に送信されるデータフィールド540以後にデータフィールド540が完全に繰り返された第1繰り返しデータフィールド541と第2繰り返しデータフィールド542とが含まれ,以後,一部のデータフィールドのみが繰り返される第3繰り返しデータフィールド543が位置する。」(第8ページ) エ 「【0044】 また,以上で説明したように,データを繰り返す場合にこれに対する情報を制御シグナル(control signal)を介して送信しなければならない。したがって,以下では,制御シグナルを介してデータが繰り返されることを知らせるための方法について述べる。 【0045】 (1)整数倍の繰り返しがなされる場合に,下記のような情報を含んで制御シグナルを介して知らせることができる。 -繰り返し(Repetition)方法を知らせる。例えば,データフィールド(data field)単位の繰り返しであるか,又はシンボル(symbol)単位の繰り返しであるかを表す情報を含まなければならない。 -繰り返し(Repetition)の回数情報を含まなければならない。 -周波数シフトインデックス(Frequency shift index)情報を含まなければならない。 【0046】 (2)部分繰り返しがなされる場合に,下記のような情報を含んで制御シグナルを介して知らせることができる。 -繰り返し(Repetition)方法を知らせる。例えば,データフィールド(data field)単位の繰り返しであるか,又はシンボル(symbol)単位の繰り返しであるかを表す情報を含まなければならない。 -繰り返し(Repetition)の回数情報を含まなければならない。 -周波数シフトインデックス(Frequency shift index)情報を含まなければならない。 -部分繰り返しシンボル(Partial repetition symbol)の数情報を含まなければならない。 【0047】 以上で説明した制御シグナルを送信するためのVHT-SIGを含むPPDUフォーマットは,前で説明した図3のような形式で送信されることができる。」(第9ページ) 前記ア及びイより,引用例には,複数のSTAが無線によりデータを送信すること,言い替えると,複数のSTAからデータを無線により受信することが記載されている。ここで,受信側の装置を「受信装置」と称し,受信するための手段を「受信手段」と称することは任意である。 そして,前記データは,前記イ及び図5より,トレーニングフィールド,シグナルフィールド及びデータフィールドで構成され,図3,図5等の記載より,トレーニングフィールドは,LTF,すなわち,ロングトレーニングフィールドを含むものと解される。 また,前記ウ,図5及び図7より,「データフィールド」は繰り返して受信する場合を含み,前記エより,「データフィールド」を繰り返して受信する場合には,VHT-SIG,すなわち,「シグナルフィールド」において,繰り返しの回数情報を含む制御シグナルが通知されるものである。この場合,受信装置は,当該制御シグナルに基づいて「データフィールド」を処理することは自明である。そして,処理するための手段を「処理手段」と称することは任意である。 そうすると,前記アないしエ及び本願の優先日における技術常識を参酌すると,引用例には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「 トレーニングフィールド,シグナルフィールド及びデータフィールドからなるデータを受信する受信手段であって,前記トレーニングフィールドは,ロングトレーニングフィールド(LTF)を含み,前記データフィールドを繰り返して受信する場合には,前記データフィールドの繰り返しの回数情報を含む制御シグナルが,シグナルフィールドに含まれる,受信手段と, 前記シグナルフィールドの制御シグナルに従って,前記データフィールドを処理する処理手段とを備える, 受信装置。」 (2)周知事項 原査定において引用された特開2010-258599号公報(以下,「周知例1」という。)には,「無線通信装置と無線通信方法とコンピュータ・プログラムおよび無線通信システム」(発明の名称)に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。 オ 「【0029】 また,パケット生成部11は,パケットのプリアンブルとパケットのヘッダとペイロードの少なくとも1つ以上でシンボル繰り返しを特徴付けして行う。例えば,パケット生成部11は,シンボル毎または所定のシンボル単位で繰り返しを行う。また,パケット生成部は,シンボル繰り返しの特徴付けとして,シンボルの繰り返し回数,シンボルの振幅,シンボルの位相,シンボルの複素符号系列の少なくともいずれかを変化させる。さらに,パケット生成部11は,パケットの種別およびアンテナ指向性パターンの少なくともいずれかに応じて,シンボル繰り返しの特徴付けを行う。」(第8ページ) カ 「【0034】 パケット処理部33は,ヘッダ復号部331とペイロード復号部332を備えている。ヘッダ復号部331は,プリアンブル検出部32でプリアンブルが検出されたとき,この検出されたプリアンブルに続くヘッダに対して復号を行い,ヘッダ情報を取得する。ペイロード復号部332は,プリアンブル検出部32でプリアンブルが検出されたとき,この検出されたプリアンブルに基づいて判別したペイロードの復号を行い,データ信号を出力する。具体的には,プリアンブル検出部32でプリアンブルが検出されたとき,ヘッダ復号部331とペイロード復号部332は,後述するようにヘッダの開始やペイロードの開始タイミングを識別可能とするプリアンブル検出部32で生成されたタイミング識別信号に基づいて,ヘッダとペイロードの復号を行う。」(第8ページ) キ 「【0058】 ここで,複素符号系列は,できる限り直交性の高い系列が数多く取れるように選定する。このように,複素符号系列を選定すれば,例えば複数の無線通信システムにおいて,同一空間,同一時間で同一周波数チャネルを利用することになっても,異なる複素符号系列を利用することで,複数の無線通信システムの動作を共存させることができるようになる 図10は,プリアンブルにおいて,基本パターンの繰り返しを行い,繰り返された基本パターンにそれぞれ異なる複素符号系列の乗算を行い,乗算する複素符号系列を,基本パターンの繰り返し回数に応じて変化させた場合を示している。 【0059】 例えば基本パターンの繰り返し数が1回であるときは複素符号系列C1(0)を用いる。また,基本パターンの繰り返し数が2回であるときは複素符号系列C2(0),C2(1)を用いて,1回目の基本パターンspに複素符号系列C2(0)を乗算して,2回目の基本パターンspに複素符号系列C2(1)を乗算する。また,基本パターンの繰り返し数が4回であるときは複素符号系列C4(0)?C4(3)を用いて,1回目の基本パターンspに複素符号系列C4(0)を乗算して,2回目の基本パターンspに複素符号系列C4(1)を乗算する。さらに,3回目の基本パターンspに複素符号系列C4(2)を乗算して,繰り返しの最後の基本パターンspに複素符号系列C4(3)を乗算する。」(第11ページ) ク 「【0065】 ヘッダやペイロードに対してシンボル繰り返しを行う場合,繰り返しパターンについては自由であるが,プリアンブルで適用された繰り返しパターンと同一の特徴付けを行うことが望ましい。こうすることで,ヘッダやペイロードを復号する時点ではすでに繰り返しパターンが分かっていることから,ヘッダやペイロードにおいて繰り返しパターン検出のための動作を省略することが可能となり,ヘッダやペイロードの利得を容易に稼ぐことが可能となる。」(第12ページ) ケ 「 」(図10) 前記キ及びケ(図10)より,周知例1において,「繰り返し回数が1回」の場合においても,基本パターンspが,複素符号系列C1(0)によって変化されていることを考慮すれば,前記クにおいて,プリアンブルを繰り返さない(繰り返し回数が1回の)場合においても,プリアンブルに対して,繰り返しパターンの特徴付けが可能であり,そうすると,プリアンブルを繰り返さない場合においても,その特徴付けが,ペイロードの特徴付けに用いられるものと解される。 前記オないしキより,周知例1には,周知事項として,次の事項が記載されていると認める。(以下,これを「周知事項1」という。) 「 シンボルの繰り返しパターン(繰り返し回数≧1)は,シンボルの繰り返し回数,シンボルの位相,シンボルの振幅又は乗算する複素符号系列を変化させることにより特徴付けられ, プリアンブルの繰り返しパターンで適用されたものと同じ特徴付けがペイロードの繰り返しパターンにも適用され, 無線通信装置は,受信したプリアンブルの繰り返しパターンで適用された特徴付けに基づいて,ペイロードを復号すること。」 原査定において引用された特表2003-515973号公報(以下,「周知例2」という。)には,「変調のブラインド検出方法とシステム」(発明の名称)に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。 コ 「 【0033】 バースト16が選択された変調と符号化方式を用いて変調された後,トレーニングシーケンスが選択された変調方式に対応する回転を用いて回転させられる(例えば,GMSKについてはπ/2,8-PSKについては3π/8)。回転させられたトレーニングシーケンスで変調したバースト16は送信機44に転送されて,そのバースト16をTDMAフレーム18の一部として空中インタフェースによって送信する。」(第20ページ) 上記コにおいて,トレーニングシーケンスは,バーストの変調と同じ変調の回転が用いられているから,トレーニングシーケンスの変調の回転は,バーストの変調方式を示しているといえる。 よって,上記コより,周知例2には,周知事項として,次の事項が記載されていると認める。(以下,これを「周知事項2」という。) 「 トレーニングシーケンスの変調の回転により,バーストの変調方式を示すこと。」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明において,データが「物理レイヤ」において送受信されること,及び,トレーニングフィールとシグナルフィールドが「プリアンブル」を構成することは,技術常識であるから,引用発明の「トレーニングフィールド」と「シグナルフィールド」は,本願発明の「物理レイヤプリアンブル」に相当する。 また,引用発明の「データフィールド」は,本願発明の「ペイロード」に相当する。 さらに,引用発明の「データ」は,無線により通信(受信)されるものであるから,本願発明の「ワイヤレス通信」に相当する。また,引用発明の「受信装置」は,本願発明の「ワイヤレス通信のための装置」といい得るものである。 引用発明において,「データフィールド」が,符号化,すなわち「コーディング」されたものであることは自明である。よって,引用発明において,「データフィールド」を「繰り返して受信」することは,本願発明において,受信される「ペイロード」が,「反復コーディングされたデータを含む」ことに等しい。 さらに,引用発明において,「制御シグナル」は,「データフィールドを繰り返して受信する場合」に含まれるものであるから,「シグナルフィールド」によって,「データフィールドを繰り返して受信する」か否かを判断できることは自明である。 そうすると,引用発明と本願発明とは,「前記プリアンブルは,前記ペイロードが反復コーディングされたデータを含む情報を含み,前記データが反復コーディングされるかどうかは,前記情報によって示される」点において共通する。 そして,引用発明の「受信手段」は,後述する相違点を除いて,本願発明の「受信機」に相当する。 また,引用発明において「前記シグナルフィールドの制御シグナルに従って」は,本願発明の「前記ペイロードが反復コーディングされたデータを含むかどうかに従って」に相当する。 また,受信装置が「プロセッサ」を備えることは自明であるから,引用発明の「処理手段」が,本願発明の「プロセッサ」を含むことは自明である。 以上の検討より,本願発明と,引用発明とは,以下の点で一致ないし相違する。 [一致点] 「 物理レイヤプリアンブルとペイロードとを備えるワイヤレス通信を受信するように構成された受信機であって,前記プリアンブルは,前記ペイロードが反復コーディングされたデータを含むかどうかを示す情報を含み,前記データが反復コーディングされるかどうかは,前記情報によって示される,受信機と, 前記ペイロードが反復コーディングされたデータを含むかどうかに従って,前記ペイロードを処理するように構成されたプロセッサとを備える,ワイヤレス通信のための装置。」 [相違点] 「前記ペイロードが反復コーディングされたデータを含むかどうかを示す情報」が,本願発明は,「ロングトレーニングフィールド(LTF)」に含まれるのに対し,引用発明は,「信号フィールド」に含まれ,また,「前記データが反復コーディングされるかどうか」は,本願発明は,「前記LTF,または前記LTFの1つまたは複数のシンボルの回転によって示される」のに対し,引用発明は,「信号フィールド」の「制御シグナル」によって通知される点。 4.判断 上記相違点について検討する。 周知事項1は,繰り返しの有無に関わらず,プリアンブルに「複素符号系列」を乗算し得るものであることは,周知例1の図10より明らかである。したがって,周知事項1における「プリアンブルの繰り返しパターン」に適用される「特徴付け」は,本願発明の「データが反復コーディングされるかどうか」を示すものではない。 また,周知事項2において,トレーニングシーケンス(プリアンブル)の変調の回転は,バースト(データ)の「変調方式」を示すものであって,「データが反復コーディングされるかどうか」を示すものではない。 また,周知事項1と周知事項2とを部分的に組み合わせた態様を引用発明に組み合わせることはできない。 さらに,プリアンブルのうち「ロングトレーニングフィールド(LTF)」を,「データが反復コーディングされるかどうか」を示すために使用することは,周知例1及び周知例2のいずれにも記載されておらず,また,本願の優先日における技術常識ともいえない。 よって,当業者といえども,引用発明に周知事項を適用することより,相違点に係る本願発明の構成を想到することはできない。 したがって,本願発明は,当業者が引用発明に基づいて周知事項を参酌することにより容易に発明をすることができたとはいえない。 本願の請求項6,11及び16に係る発明は,本願発明を,発明のカテゴリを変えて特定したものであり,本願の請求項21,26,31及び36に係る発明は,本願発明を,受信側の装置に係るものとして特定したものであり,実質的に,本願発明と同じ又は対応する技術的特徴を有しているから,当業者が引用発明に基づいて周知事項を参酌することにより容易に発明をすることができたとはいえない。 本願の請求項2ないし5,12ないし15,17ないし20,22ないし25,27ないし30,32ないし35及び37ないし40に係る発明は,本願発明をさらに限定した技術的特徴を含むから,本願発明と同様に,当業者が引用発明に基づいて周知事項を参酌することにより容易に発明をすることができたとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり,本願の請求項1-40に係る発明は,当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-01-24 |
出願番号 | 特願2014-511428(P2014-511428) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04L)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 谷岡 佳彦 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
中野 浩昌 林 毅 |
発明の名称 | 複数のフォーマットを有するパケットのワイヤレス通信のためのシステムおよび方法 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |