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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B65H
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 B65H
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65H
管理番号 1324262
審判番号 不服2016-8575  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-09 
確定日 2017-02-14 
事件の表示 特願2014-175209「給紙装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月11日出願公開、特開2016- 50071、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年8月29日の出願であって、平成27年8月19日付けで拒絶理由が通知され、同年10月26日付けで手続補正がされ、平成28年3月9日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年同月15日)、これに対し、同年6月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、その後、当審において同年11月17日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)が通知され、同年12月14日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成28年12月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められる。本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、順に「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
給紙テーブルの後部寄り位置において当該給紙テーブルとの間に隙間を存して設けられた案内板の基準面に対し先端を接した状態で積層載置される複数の厚紙のうちの最下層の厚紙を、前記給紙テーブルの下方に設けられた吸引ユニットにより吸引しつつ前記給紙テーブルより周面の一部が露出する給紙ロールによって前記案内板の隙間から一枚ずつ間欠的に次工程装置に送り出す給紙装置であって、
前記給紙ロールは、前記厚紙の幅方向及び前後方向の大きさに応じて前記給紙テーブルの幅方向に軸を介して複数設けられているとともに、前記案内板の前方及び後方において前記給紙テーブルより露出する周面の一部のみを前記吸引ユニットにより吸引された厚紙に対し接触させ、当該給紙ロールは、回転のみによって前記厚紙を送り出すように前記軸毎に複数列配置され、その各列毎にそれぞれ前記軸を介して個別のサーボモータに連結されており、
前記各サーボモータは、その回転子慣性モーメントが1.230e-3kgm^(2)以下の条件を満たす仕様のものが用いられているとともに、それぞれ個別に制御され、かつ、それぞれ個別に回転量を計測するエンコーダを備え、
前記各サーボモータのうち少なくとも前記案内板の直前方のサーボモータは、当該サーボモータに軸を介した給紙ロールを前記最下層の厚紙との接触により前記次工程装置へ送り出す1サイクルの停止状態から高速回転速度まで急加速させるように制御されている一方、その1サイクルの間において、当該サーボモータによる最下層の厚紙の送り出しに必要な回転量に達したことをエンコーダで計測したときに高速回転速度から急停止させるように制御されており、
前記各サーボモータのうち、前記案内板の直後方のサーボモータ、及び前記案内板の直後方のサーボモータよりも後方側のサーボモータは、当該各サーボモータに軸を介した給紙ロールを前記最下層の厚紙との接触により前記次工程装置へ送り出す1サイクルの停止状態から高速回転速度まで前記案内板の直前方のサーボモータと同期して急加速させるようにそれぞれ制御されている一方、その1サイクルの間において、前記案内板の直後方のサーボモータよりも後方側のサーボモータが、当該サーボモータによる最下層の厚紙の送り出しに必要な回転量に達したことをエンコーダで計測したときに、高速回転速度から同時に急停止させるように制御されていることを特徴とする給紙装置。

【請求項2】
前記各サーボモータのうち、前記案内板の直前方のサーボモータよりも前方側のサーボモータは、当該サーボモータに軸を介した給紙ロールを前記最下層の厚紙との接触により前記次工程装置へ送り出す1サイクルの停止状態から高速回転速度まで急加速させるように制御されている一方、その1サイクルの間において、当該サーボモータによる最下層の厚紙の送り出しに必要な回転量に達したことをエンコーダで計測したときに高速回転速度から急停止させるように制御されている請求項1に記載の給紙装置。

【請求項3】
給紙テーブルの後部寄り位置において当該給紙テーブルとの間に隙間を存して設けられた案内板の基準面に対し先端を接した状態で積層載置される複数の厚紙のうちの最下層の厚紙を、前記給紙テーブルの下方に設けられた吸引ユニットにより吸引しつつ前記給紙テーブルより周面の一部が露出する給紙ロールによって前記案内板の隙間から一枚ずつ間欠的に次工程装置に送り出す給紙装置であって、
前記給紙ロールは、前記厚紙の幅方向及び前後方向の大きさに応じて前記給紙テーブルの幅方向に軸を介して複数設けられているとともに、前記案内板の前方及び後方において前記給紙テーブルより露出する周面の一部のみを前記吸引ユニットにより吸引された厚紙に対し接触させ、当該給紙ロールは、回転のみによって前記厚紙を送り出すように前記軸毎に複数列配置され、その各列毎にそれぞれ前記軸を介して個別のサーボモータに連結されており、
前記各サーボモータは、その回転子慣性モーメントが1.230e-3kgm^(2)以下の条件を満たす仕様のものが用いられているとともに、それぞれ個別に制御され、かつ、それぞれ個別に回転量を計測するエンコーダを備え、
前記各サーボモータのうち少なくとも前記案内板の直前方のサーボモータは、当該サーボモータに軸を介した給紙ロールを前記最下層の厚紙との接触により前記次工程装置へ送り出す1サイクルの停止状態から高速回転速度まで急加速させるように制御されている一方、その1サイクルの間において、当該サーボモータによる最下層の厚紙の送り出しに必要な回転量に達したことをエンコーダで計測したときに高速回転速度から急停止させるように制御されており、
前記各サーボモータのうち、前記案内板の直後方のサーボモータよりも後方側のサーボモータは、常時高速回転速度に制御されており、
前記案内板の直後方のサーボモータは、当該サーボモータに軸を介した給紙ロールを前記最下層の厚紙との接触により前記次工程装置へ送り出す1サイクルの停止状態から高速回転速度まで前記案内板の直前方のサーボモータと同期して急加速させるように制御されている一方、その1サイクルの間において、前記案内板の直後方のサーボモータよりも後方側のサーボモータが、当該サーボモータによる最下層の厚紙の送り出しに必要な回転量に達したことをエンコーダで計測したときに高速回転速度から急停止させるように制御されていることを特徴とする給紙装置。」

第3 原査定の理由について

1.原査定の理由の概要

原査定は、平成27年8月19日付けの拒絶理由の理由1及び4によるものであって、その概要は以下のとおりである。

理由1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



発明の詳細な説明の「e」なる記載は,出願時の技術常識に基づいても当業者が理解できないため,当業者が請求項に係る発明の実施をすることができない。

理由4.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1-5
・引用文献 特開2009-120400号公報

2.原査定の理由の判断

(1)理由1について
平成28年6月9日提出の審判請求書において、「本願で用いた符号「e」によるべき乗表示は、「JIS X0210:1986「情報交換用文字列による数値表現」の「7.数値表現第3形式(NR3)」に規定されており、「7.4 NR3の例」の表3には、5600を+0.56E×+4、あるいは+5.6E+03等と表記すると記載されています。また、「1.適用範囲」には、「この規格で規定する数値表現は、人にも了解可能であるから人相互の伝達手段としても有効である」と記載されています。」(第4ページ第2?7行)との釈明がなされ、一般に「e」が「10」を意味することが明らかである。

これにより、原査定の理由1は解消した。

(2)理由4について
(ア)引用例
原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2009-120400号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

ア.「【0025】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態は、シート状ワーク(段ボールシート)Wの表面に対して印刷を実行するタイプの段ボール製函機に本発明を適用した例である(図1、図2)。製函機は、給紙部(シート状ワークの送り出し装置)S1を上流側として、続いて、印刷部(印刷ユニット)S2、製函部(スロッタ部、ダイカッタ部、フォールディング部、デリベリ部)S3(ここでは図示せず)の順序で接続されている。印刷加工を経たシート状ワークWは、スロッタ部において溝切りや罫線引きがなされ、ダイカッタ部において手穴や空気孔等の打ち抜き加工がなされ、フォールディング部において曲げ加工が行われ、デリベリ部において積み重ねられて排出される。なお、シート状ワークWの種類や用途に応じた加工を実現するために製函部S3の構成を変更することは任意である(例えば、上記で説明した機材以外の機材を追加し、より複雑な加工を行えるようにしてもよい)。
【0026】
シート状ワークの送り出し装置(給紙部S1)は、一定の機幅を隔てて立設される左右の側壁2c(左右側面2c)を有するとともに上面に載置面2bを有する載置台2という筐体形の構成を有する。この載置台2には、その下方に吸引手段Qが取り付けられ、シート状ワークWを下方から吸引するサクションボックスとしての役割も有する(図3、図4)。また、載置台2の下流端には、載置台2の上面の高さに沿って上下1対のフィーダローラ10(10m,10j)が横設されている。シート状ワークWは、載置台2の載置面2b上に積み重ねた状態でセットされ、下側(最下層)のものから順次に一枚ごと送り出すようにして下流側に流される。送り出されたシート状ワークWは、同期駆動される1対のフィーダローラ10m,10j間に取り込まれることによって所定の搬送速度を維持しながら、多数色の印刷に応じた印刷部S2の印刷ローラRn(n=1,2・・)と圧接ローラRhに引き継がれる。
【0027】
シート状ワークの送り出し装置S1は、シート状ワークWを積層して載置するための載置台2に、積層されたシート状ワークWのうちの最下層のシート状ワークW1を印刷ユニットS2側に送り出す複数の給紙ローラ3(3a,3b,3c,3d)と、複数の給紙ローラ3に対する突出量をその昇降動により調整することにより、複数の給紙ローラ3と最下層のシート状ワークW1との接離を調整するグレート4とが備えられている。また、載置台2の下流側の上方に垂直に屹立するようにフロントゲージ14が配置されている。フロントゲージ14は、上下に位置調整可能であり、シート状ワークWの厚みに合わせて、フロントゲージ14下端と載置台2(載置面2b)との間の距離dを調整する(図1、図3)。」

イ.「【0029】
複数の給紙ローラ3は、載置台2の左右側面2cに掛け渡された複数の駆動軸8に取り付けられる。すなわち、互いに等間隔で取付けられている上記複数の駆動軸8それぞれに、同一の直径の給紙ローラ3が等間隔で複数個配される。給紙ローラ3は、グレード4の昇降動により、グレート4より上方に突出して載置台2の開口2aに現れたり、グレート4より下方側に位置したりする。また、上記各駆動軸8は、その一端が載置台2の側面2cから突出しており、当該一端にギヤ8aが取り付けられ、このギヤ8a及びこれと噛み合うギヤ9aを介してサーボモータ(給紙ローラ3の駆動手段)M3が取り付けられている(図5)。なお、駆動軸8に直接サーボモータM3を装着させることも可能である。各サーボモータM3は、電気的に接続された制御手段11によって制御される(図2)。そして、当該制御手段11の指令により各サーボモータM3に連結された各駆動軸8がそれぞれ独立して回転駆動する。本実施の形態では、駆動軸8の数は4つであり、この4つの駆動軸8に対して各サーボモータM3が取り付けられている。なお、連結ベルト等を使用して一つのサーボモータM3に対して2本の駆動軸8を同時に駆動させたり、4本の駆動軸8を同時に駆動させることも可能である。」

ウ.「【0031】
給紙ローラ3により送り出されたシート状ワークWを印刷ユニットS2側に受け渡す上下のフィーダローラ10m,10jは、シート状ワーク送り出し装置S1の前端に配置される。フィーダローラ10は、上方側が駆動ローラ10mであり、その端部に複数のギヤを介して駆動手段であるサーボモータM10が取り付けられる。サーボモータM10は、前記制御手段11によって制御される(図2)。ここで、上下のフィーダローラ10m,10jそれぞれにサーボモータM10を取り付けても良く、ギヤ等を介して上下のフィーダローラ10m,10jを一つのサーボモータM10で駆動させても良い。また、制御手段11は、印刷ユニット2の印刷ローラR1とも連動している(図2)。このため、当該制御手段11の指令によりサーボモータM10に連結されたフィーダローラ10mの駆動軸36(もしくは、フィーダローラ10m,10jの駆動軸36,37)や駆動手段M6に連結された印刷ローラRn(n=1,2・・)が回転駆動するが、上記制御手段11は、給紙ローラ3とグレート4の駆動制御も行っているため、これらの制御により印刷位置のずれが生じないように設定が可能である(図2、図3)。」

エ.「【0041】
上記設定の完了後、載置台2上に積層された各シート状ワークWを印刷ユニットS2側に送り出す。図9は、シート状ワーク送り出し装置S1の駆動時の給紙ローラ3の回転とグレート4の昇降の様子を一枚のシート状ワークWを給紙する1サイクル(1周期)を回転角360°として、この回転角360°を基準に表した図である。図9(a)は、給紙ローラ3の加速・等速・減速の割合を表した図である。図9(b)は、給紙ローラ3に対するグレート4の昇降の様子を表した図である。まず、給紙ローラ3が回転し始めた時点では、グレート4は、まだ給紙ローラ3の上端よりも高い位置にあるため、給紙ローラ3と最下層のシート状ワークW1とは接していない。その後、グレートが図9(a)の5度の位置に達したとき、グレート4の上面は、給紙ローラ3の上端3jと同一となりその後も下降する。この5度の時点で、給紙ローラ3と最下層のシート状ワークW1とが接触する。給紙ローラ3の加速・等速の回転によって、シート状ワークW1は、フィーダローラ10m,10j側に送り出される。」

オ.「【0046】
この点、本実施の形態では、図10(a)(b)に示すように、各給紙ローラ3aから3dのうち既にシート状ワークW1と接触しない後方の給紙ローラ3c,3dについてはその駆動を停止させる。ここで、最下層から2番目のシート状ワークW2が接触する順の後方側から順に(給紙ローラ3dの次に3c)停止させることが好ましい。後方側の二つの給紙ローラ3c,3dを同時に停止させることも可能である。停止は、給紙ローラ3の回転量からシート状ワークW1の移動距離を算出して行う。」

カ.「【0061】
図17は、上記製函機によりシート状ワークWが連続して搬送され、印刷され、更に、製函部(スロッタ部)S3により溝切り等がされる際の各駆動部の距離の関係を説明する図である。まず、上記印刷ローラRn(n=1,2,3,4)及び製函部(スロッタ部)S3の位相角度δnを算出する際の基準位置となる仮想の送り出し位置P0について説明する。ここではわかりやすくするために運転速度を一定速度とする。シート状ワークWの実際の物理的な送り出し位置は、フロントゲージ14の側端面14aにシート状ワークWが当接する位置、すなわち位置P1(図17参照)であるが、これより下流の搬送部(印刷部S2及び製函部S3)の任意の位置で、その位置が各駆動部の回転位相とどのような関係であるかを知りたい場合、シート状ワークWがある仮想送り出し位置P0から等速運動で送り出されてくるとして考えた方が都合がよい。」

キ.図3からは、「給紙ローラ3」が「フロントゲージ14」の前方に位置し、「フィーダローラ10」が「フロントゲージ14」の後方に位置することが看取される。

上記の記載事項を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「載置台2の下流側の上方に垂直に屹立するようにフロントゲージ14が配置され、
フロントゲージ14は、上下に位置調整可能であり、シート状ワークWの厚みに合わせて、フロントゲージ14下端と載置台2(載置面2b)との間の距離dを調整し、
フロントゲージ14の側端面14aにシート状ワークWが当接し、
シート状ワークWは、載置台2の載置面2b上に積み重ねた状態でセットされ、下側(最下層)のものから順次に一枚ごと送り出すようにして下流側に流され、
載置台2には、その下方に吸引手段Qが取り付けられ、シート状ワークWを下方から吸引するサクションボックスとしての役割も有し、
給紙ローラ3は、グレード4の昇降動により、グレート4より上方に突出して載置台2の開口2aに現れ、
複数の給紙ローラ3は、最下層のシート状ワークW1を印刷ユニットS2側に送り出し、
複数の給紙ローラ3は、載置台2の左右側面2cに掛け渡された複数の駆動軸8に取り付けられ、
給紙ローラ3がフロントゲージ14の前方に位置し、
給紙ローラ3と最下層のシート状ワークW1とが接触し、
各サーボモータM3は、電気的に接続された制御手段11によって制御され、
当該制御手段11の指令により各サーボモータM3に連結された各駆動軸8がそれぞれ独立して回転駆動し、
給紙ローラ3の加速・等速の回転によって、シート状ワークW1は、フィーダローラ10m,10j側に送り出され、各給紙ローラ3aから3dのうち既にシート状ワークW1と接触しない後方の給紙ローラ3c,3dについてはその駆動を停止させ、
停止は、給紙ローラ3の回転量からシート状ワークW1の移動距離を算出して行い、
載置台2の下流端には、載置台2の上面の高さに沿って上下1対のフィーダローラ10(10m,10j)が横設され、
フィーダローラ10がフロントゲージ14の後方に位置し、
その端部に複数のギヤを介して駆動手段であるサーボモータM10が取り付けられ、
サーボモータM10は、制御手段11によって制御され、
上下のフィーダローラ10m,10jそれぞれにサーボモータM10を取り付けても良く、
1対のフィーダローラ10m,10jは同期駆動される
シート状ワークの送り出し装置。」

(イ)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

後者の「載置台2」は、その構造、機能、作用等からみて、前者の「給紙テーブル」に相当し、同様に「シート状ワークW」は「厚紙」に、「吸引手段Q」は「吸引ユニット」に、「フロントゲージ14下端と載置台2(載置面2b)との間の距離d」は「案内板の隙間」に、「給紙ローラ3」は「給紙ロール」に、「駆動軸8」は「軸」に、「サーボモータM3」は「サーボモータ」にそれぞれ相当する。

後者の「フロントゲージ14」は「載置台2の下流側の上方に垂直に屹立するようにフロントゲージ14が配置され、フロントゲージ14は、上下に位置調整可能であり、シート状ワーク(段ボールシート)Wの厚みに合わせて、フロントゲージ14下端と載置台2(載置面2b)との間の距離dを調整」するものだから、前者の「給紙テーブルの後部寄り位置において当該給紙テーブルとの間に隙間を存して設けられた案内板」に相当する。

後者の「フロントゲージ14の側端面14aにシート状ワークWが当接し、シート状ワークWは、載置台2の載置面2b上に積み重ねた状態でセットされ」る「シート状ワークW」は、前者の「案内板の基準面に対し先端を接した状態で積層載置される複数の厚紙」に相当する。

後者の「載置台2には、その下方に吸引手段Qが取り付けられ、シート状ワークWを下方から吸引するサクションボックスとしての役割も有」する点は、前者の「最下層の厚紙を、前記給紙テーブルの下方に設けられた吸引ユニットにより吸引」する点に相当する。

後者の「給紙ローラ3は、グレード4の昇降動により、グレート4より上方に突出して載置台2の開口2aに現れ、複数の給紙ローラ3は、最下層のシート状ワークW1を印刷ユニットS2側に送り出し、シート状ワークWは、下側(最下層)のものから順次に一枚ごと送り出すようにして下流側に流され」る点は、シート状ワークW1を印刷ユニットS2側に送り出す際に、シート状ワークW1がフロントゲージ14下端と載置台2(載置面2b)との間を通過することは図3等から明らかであるから、前者の「最下層の厚紙を」「前記給紙テーブルより周面の一部が露出する給紙ロールによって前記案内板の隙間から一枚ずつ間欠的に次工程装置に送り出す」点に相当する。

後者の「給紙ローラ3」は、「最下層のシート状ワークW1を印刷ユニットS2側に送り出」すものだから、「シート状ワークW1」を送り出すことができるように、その大きさに応じて設けられていることは明らかである。そうすると、後者の「複数の給紙ローラ3は、載置台2の左右側面2cに掛け渡された複数の駆動軸8に取り付けられ」る点は、前者の「前記給紙ロールは、前記厚紙の幅方向及び前後方向の大きさに応じて前記給紙テーブルの幅方向に軸を介して複数設けられている」点に相当する。

後者の「給紙ローラ3がフロントゲージ14の前方に位置し」、「給紙ローラ3は、グレード4の昇降動により、グレート4より上方に突出して載置台2の開口2aに現れ」、「載置台2には、その下方に吸引手段Qが取り付けられ、シート状ワークWを下方から吸引するサクションボックスとしての役割も有」し、「給紙ローラ3と最下層のシート状ワークW1とが接触」する点は、前者の「前記給紙ロールは」「前記案内板の前方」「において前記給紙テーブルより露出する周面の一部のみを前記吸引ユニットにより吸引された厚紙に対し接触させ」る点に相当する。

後者の「複数の給紙ローラ3は、載置台2の左右側面2cに掛け渡された複数の駆動軸8に取り付けられ」、「各サーボモータM3に連結された各駆動軸8がそれぞれ独立して回転駆動し、給紙ローラ3の加速・等速の回転によって、シート状ワークW1は、フィーダローラ10m,10j側に送り出され」る点は、前者の「当該給紙ロールは、回転のみによって前記厚紙を送り出すように前記軸毎に複数列配置され、その各列毎にそれぞれ前記軸を介して個別のサーボモータに連結されて」いる点に相当する。

後者の「各サーボモータM3は、電気的に接続された制御手段11によって制御され」る点は、後者においては「制御手段11の指令により各サーボモータM3に連結された各駆動軸8がそれぞれ独立して回転駆動」するのだから各サーボモータM3が個別に制御されることは明らかであって、前者の「前記各サーボモータは」「それぞれ個別に制御され」る点に相当する。

後者は「給紙ローラ3は、シート状ワークWの1サイクルごとに加速・等速・減速のサイクルを繰り返し、給紙ローラ3の加速・等速の回転によって、シート状ワークW1は、フィーダローラ10m,10j側に送り出され」るところ、給紙ローラ3は駆動軸8を介してサーボモータM3が回転駆動しており、かつ、「各サーボモータM3は、電気的に接続された制御手段11によって制御され」ているから、後者のサーボモータM3は給紙ローラ3が上記の「加速・等速・減速のサイクル」を行うように制御されているといえる。そうすると、後者のこの点と、前者の「各サーボモータのうち少なくとも前記案内板の直前方のサーボモータは、当該サーボモータに軸を介した給紙ロールを前記最下層の厚紙との接触により前記次工程装置へ送り出す1サイクルの停止状態から高速回転速度まで急加速させるように制御されている」点とは、「各サーボモータのうち少なくとも前記案内板の直前方のサーボモータは、当該サーボモータに軸を介した給紙ロールを前記最下層の厚紙との接触により前記次工程装置へ送り出す1サイクルの停止状態から高速回転速度まで急加速させるように制御されている」との概念で共通する。

したがって、両者は、

「給紙テーブルの後部寄り位置において当該給紙テーブルとの間に隙間を存して設けられた案内板の基準面に対し先端を接した状態で積層載置される複数の厚紙のうちの最下層の厚紙を、前記給紙テーブルの下方に設けられた吸引ユニットにより吸引しつつ前記給紙テーブルより周面の一部が露出する給紙ロールによって前記案内板の隙間から一枚ずつ間欠的に次工程装置に送り出す給紙装置であって、
前記給紙ロールは、前記厚紙の幅方向及び前後方向の大きさに応じて前記給紙テーブルの幅方向に軸を介して複数設けられているとともに、前記案内板の前方において前記給紙テーブルより露出する周面の一部のみを前記吸引ユニットにより吸引された厚紙に対し接触させ、当該給紙ロールは、回転のみによって前記厚紙を送り出すように前記軸毎に複数列配置され、その各列毎にそれぞれ前記軸を介して個別のサーボモータに連結されており、
前記各サーボモータは、それぞれ個別に制御され、
前記各サーボモータのうち少なくとも前記案内板の直前方のサーボモータは、当該サーボモータに軸を介した給紙ロールを前記最下層の厚紙との接触により前記次工程装置へ送り出す1サイクルの停止状態から高速回転速度まで急加速させるように制御されている
給紙装置。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
前者では、「給紙ロール」が「案内板の」「後方において前記給紙テーブルより露出する周面の一部のみを前記吸引ユニットにより吸引された厚紙に対し接触させ」るのに対して、後者では、フロントゲージ14の後方の上下1対のフィーダローラ10(10m,10j)は、そのような特定事項を有さない点。

[相違点2]
前者では、「各サーボモータは、その回転子慣性モーメントが1.230e-3kgm^(2)以下の条件を満たす仕様のものが用いられている」のに対して、後者ではサーボモータM3の回転子慣性モーメントに関する仕様が明らかでない点。

[相違点3]
前者では、「各サーボモータは」「それぞれ個別に回転量を計測するエンコーダを備え」るのに対して、後者では回転量をどのように計測しているか明らかでない点。

[相違点4]
前者では、「各サーボモータのうち少なくとも前記案内板の直前方のサーボモータは」、「1サイクルの間において、当該サーボモータによる最下層の厚紙の送り出しに必要な回転量に達したことをエンコーダで計測したときに高速回転速度から急停止させるように制御され」るのに対して、後者では、給紙ローラ3c,3dを停止するものの、フロントゲージ14の直前方の給紙ローラ3a及び当該給紙ローラ3aを駆動するサーボモータM3がどのように制御されるか明らかでない点。

[相違点5]
前者では、「前記各サーボモータのうち、前記案内板の直後方のサーボモータ、及び前記案内板の直後方のサーボモータよりも後方側のサーボモータは、当該各サーボモータに軸を介した給紙ロールを前記最下層の厚紙との接触により前記次工程装置へ送り出す1サイクルの停止状態から高速回転速度まで前記案内板の直前方のサーボモータと同期して急加速させるようにそれぞれ制御されている一方、その1サイクルの間において、前記案内板の直後方のサーボモータよりも後方側のサーボモータが、当該サーボモータによる最下層の厚紙の送り出しに必要な回転量に達したことをエンコーダで計測したときに、高速回転速度から同時に急停止させるように制御されている」のに対して、後者では、フロントゲージ14の後方のフィーダローラ10の駆動手段であるサーボモータM10がどのように制御されるか明らかでない点。

(ウ)判断

上記相違点5について検討する。

本願発明1は、案内板の後方において、「案内板の直後方のサーボモータ」及び「前記案内板の直後方のサーボモータよりも後方側のサーボモータ」の複数のサーボモータを有している。また、「給紙ロール」は「個別のサーボモータに連結されて」いるのだから、本願発明1は、各サーボモータに対応する複数の「給紙ロール」を有している。そして、これらの「給紙ロール」は、「複数列配置され」るものである。これに対して、引用発明においては、フロントゲージ14の後方に位置するフィーダローラ10は上下1対であって複数列配置されるものではない。
また、本願発明1においては、「前記案内板の直後方のサーボモータ」及び「案内板の直後方のサーボモータよりも後方側のサーボモータ」の両者が「案内板の直後方のサーボモータよりも後方側のサーボモータが、当該サーボモータによる最下層の厚紙の送り出しに必要な回転量に達したことをエンコーダで計測したときに、高速回転速度から同時に急停止させるように制御されている」。しかしながら、本願発明1の「複数のサーボモータ」と引用発明の「上下1対のフィーダローラ10」とは上述のとおりその配置が異なっており、引用発明は、「前記案内板の直後方のサーボモータ」及び「案内板の直後方のサーボモータよりも後方側のサーボモータ」の存在を前提とする本願発明1の上記制御と同様の制御を行うものではない。
そうすると、引用発明は、上記相違点5に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものではない。

また、引用発明において「サーボモータM10」をフロントゲージ14の後方に前後方向に複数配置し、さらに、より後方側の「サーボモータM10」の回転量に基づいて直後方の「サーボモータM10」の停止の制御を行うようにすることが、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。

そして、本願発明1は、上記相違点5に係る本願発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「案内板の直後方のサーボモータよりも後方側のサーボモータを、最下層の厚紙を送り出す1サイクルの間において当該サーボモータに軸を介した給紙ロールが最下層の厚紙と非接触となったと判断されたときに高速回転速度から急停止するように制御することで、当該サーボモータを、最下層の厚紙を次工程装置に送り出した後に案内板の直後方のサーボモータと共に停止させて、次のサイクルに備えることができる。」(段落【0017】)という作用効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(エ)小括
以上のとおり、本願発明1は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

本願発明2は、本願発明1をさらに限定したものである。また、本願発明3は、本願発明1と同様に、「案内板の直後方のサーボモータ」及び「案内板の直後方のサーボモータよりも後方側のサーボモータ」の複数のサーボモータを有し、案内板の直後方のサーボモータは、案内板の直後方のサーボモータよりも後方側のサーボモータが、当該サーボモータによる最下層の厚紙の送り出しに必要な回転量に達したことをエンコーダで計測したときに、高速回転速度から同時に急停止させるように制御されることを発明特定事項とするものである。

そうすると、本願発明2及び3は、本願発明1と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

よって、原査定の理由4によっては、本願を拒絶することはできない。

(3)まとめ

以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

第4 当審拒絶理由について

1.当審拒絶理由の概要

「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



1.以下のア.?オ.の記載について、「判断」は何らかの主体(人や装置など)によってなされるものであるところ、これらの記載では、どのような主体によって「非接触である」ことが「判断」されるのかが不明である。

ア.請求項1の「当該各サーボモータに軸を介した各列毎の給紙ロールを前記最下層の厚紙に対する接触が非接触であると判断されたときに」
イ.請求項1及び2の「その1サイクルの間において当該サーボモータに軸を介した給紙ロールを前記最下層の厚紙に対する接触が非接触であると判断されたときに」
ウ.請求項1及び3の「当該案内板の直後方のサーボモータよりも後方側のサーボモータが前記最下層の厚紙に対する接触が非接触であると判断されたときに」
エ.請求項3の「その1サイクルの間において当該各サーボモータに軸を介した各列毎の給紙ロールを前記最下層の厚紙に対する接触が非接触であると判断されたときに」
オ.請求項4の「前記各給紙ロールが前記最下層の厚紙に対して非接触であると判断して」

(中略)

また、上記ウ.の記載については、「最下層の厚紙に対する接触」が、何と「最下層の厚紙」との「接触」を指すのか(「サーボモータ」か「給紙ロール」か)が不明確である。
よって、請求項1?4に係る発明は明確でない。

(中略)

2.請求項1及び3の「1.230e-3kgm2」は、どのような物理量を指すのか明確でない。
よって、請求項1?4に係る発明は明確でない。

(中略)

3.請求項1及び3にはそれぞれ、「そのうちの少なくとも前記案内板の……直後方のサーボモータが、……その1サイクルの間において当該各サーボモータに軸を介した各列毎の給紙ロールを前記最下層の厚紙に対する接触が非接触であると判断されたときに高速回転速度から順次急停止させるようにそれぞれ制御されており」、及び、「前記案内板の直後方のサーボモータは、当該案内板の直後方のサーボモータよりも後方側のサーボモータが前記最下層の厚紙に対する接触が非接触であると判断されたときに高速回転から急停止させるように制御されている」との記載があるところ、前者と後者とでは「直後方のサーボモータ」を急停止させるように制御する際の条件が異なっており(前者では「当該各サーボモータ」すなわち「直後方のサーボモータ」に係るものであり、後者では「直後方のサーボモータよりも後方側のサーボモータ」に係るものである。))、「直後方のサーボモータ」がいずれの条件に従って制御されるのかが明確でない。
よって、請求項1?4に係る発明は明確でない。 」

2.当審拒絶理由の判断

平成28年12月14日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)により、本件補正前の本願の請求項4は削除され、本件補正前の請求項1ないし3は上記「第2 本願発明」において摘示した請求項1ないし3のとおりにそれぞれ補正された。

このことにより、請求項1ないし3に係る発明は明確となった。

よって、当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび

以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-30 
出願番号 特願2014-175209(P2014-175209)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (B65H)
P 1 8・ 537- WY (B65H)
P 1 8・ 121- WY (B65H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤井 眞吾田中 尋  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 森次 顕
畑井 順一
発明の名称 給紙装置  
代理人 杉本 勝徳  
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