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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1324277
審判番号 不服2016-8305  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-06 
確定日 2017-02-14 
事件の表示 特願2014-210376「電子部品の冷却構造」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月12日出願公開、特開2015- 29147、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成23年11月7日に出願した特願2011-243024号の一部を新たに特許出願したものであって、手続の概要は以下のとおりである。

平成26年10月15日 特許出願
平成27年 7月13日 拒絶理由通知
平成27年 9月15日 意見書、手続補正書
平成28年 3月22日 拒絶査定
平成28年 6月 6日 審判請求、手続補正書
平成28年 8月18日 前置報告

第2.平成28年6月6日付けの手続補正
1.特許請求の範囲の記載
平成28年6月6日付けの手続補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のように補正された。

「 【請求項1】
外気を吸入する吸気口と上記外気へ排気する排気口とを形成した筐体の内部に、機器と共に収容された電子部品の冷却構造において、
上記筐体内に配置され上記電子部品を収容した制御箱を備え、
上記制御箱の上記筐体内に面する側板を内側板と外側板との2枚の板で構成するとともに、上記内側板に孔を形成し、上記外側板が上記孔を塞ぐように上記内側板を覆う構成とし、上記電子部品の放熱面を上記孔を貫通して上記外側板の内面に押し付けるように、上記電子部品を上記内側板に固定する押さえ板または台座を備え、
上記押さえ板または上記台座はその外周に上記内側板の面に沿って上記電子部品の外周近傍に位置した突出部を有し、上記突出部を上記内側板に固定したことを特徴とする電子部品の冷却構造。
【請求項2】
外気を吸入する吸気口と上記外気へ排気する排気口とを形成した筐体の内部に、機器と共に収容された電子部品の冷却構造において、
上記筐体内に配置され上記電子部品を収容した制御箱を備え、
上記制御箱が上記筐体内に面する側を塞ぐように側板を有し、
上記電子部品の放熱面を上記側板の内面に押し付けるように、上記電子部品を上記側板に固定する押さえ板または台座を備え、
上記押さえ板または上記台座はその外周に上記側板の面に沿って上記電子部品の外周近傍に位置した突出部を有し、上記突出部を上記側板に固定したことを特徴とする電子部品の冷却構造。
【請求項3】
上記制御箱の上記側板の外面にフィンを設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子部品の冷却構造。
【請求項4】
上記電子部品の放熱面上に絶縁性の伝熱材を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子部品の冷却構造。
【請求項5】
上記電子部品を押さえ板により、押し付けるようにしたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の電子部品の冷却構造。
【請求項6】
上記制御箱に、上記電子部品を設けた位置の流路において風速0.4m/sec以下で空気が通る吸気口と排気口を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電子部品の冷却構造。
【請求項7】
上記伝熱材が絶縁性シートと接着剤とからなることを特徴とする請求項4に記載の電子部品の冷却構造。
【請求項8】
上記制御箱の上記吸気口を上記制御箱の下方に設け、上記制御箱の上記排気口を上記制御箱の上方に設けたことを特徴とする請求項6に記載の電子部品の冷却構造。
【請求項9】
上記電子部品の放熱面に絶縁性の伝熱材を設け上記電子部品の放熱面と上記側板の内面との間の距離を一定に保つ絶縁材からなるスペーサを設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子部品の冷却構造。」
(下線部が補正箇所で、手続補正書の記載のとおりである。)

請求項1及び2の補正は、補正前の電子部品を固定する点について限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
請求項8の補正は、不明りょうであると指摘された点についてするものである。
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」とい
う。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.前置報告書
前置報告書の本願補正発明についての概要は、本願補正発明は特開2008-121966号公報(以下、「引用例」という。)に記載された発明と同一の発明であるか、該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号、または特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないというものである。

3.引用発明
引用例には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器室(24)と機械室(30)とを有する室外機筐体(22)と、
前記機械室内に収容された電装ユニット(40;140;240;34
0)と、
を備え、
前記電装ユニットは、
伝熱板部材(44;144;244;344)と、
基板(52)と前記基板に実装される第1の電装部品(54a,54b,54c)とを有し、前記伝熱板部材の一方面側に配設された実装基板(50;250;350)と、
前記伝熱板部材の他方面側に配設された冷却部材(42;442;64
2)と、
前記伝熱板部材の他方面側であって前記冷却部材の周囲に配設された第2の電装部品(58)と、
を備えたものである、空気調和機の室外機(20)。
【請求項2】
請求項1記載の空気調和機の室外機であって、
前記伝熱板部材(44)は、前記実装基板(50)を収容するケーシング(46)の一部である、空気調和機の室外機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の空気調和機の室外機であって、
前記第1の電装部品のうち少なくとも一つ(54a)は、前記伝熱板部材(44;144;244;344)又は前記冷却部材(42)に接触している、空気調和機の室外機。」

(2)「【0035】
<1.空気調和機及び室外機の全体構成>
この空気調和機は、室内機10と室外機20とを備えており、これらは所定の冷媒配管を介して相互接続されている。通常、室内機10は空調対象となる室内に空気を供給可能な位置(例えば室内)に設置され、室外機20は室外に設置される。
【0036】
室内機10は、室内熱交換器12を備えている。
【0037】
室外機20は、熱交換器室24と機械室30とを有する室外機筐体22
と、前記機械室30内に収容された電装ユニット40とを備えている。
【0038】
室外機筐体22は、打抜き屈曲加工された金属板で又はこのような金属板と成型樹脂板との組合わせ等により構成されており、全体形状は略筐状形状を有している。
【0039】
この室外機筐体22内は仕切壁23により2つの空間に仕切られている。そのうちの一方の空間は、熱交換器室24に構成されており、この熱交換器室24内に室外熱交換器26及び室外熱交換器用ファン27及びファン27駆動用のモータ27aが収容されている。また、室外機筐体22のうち熱交換器室24を構成する部分には、通風孔(図示省略)が形成されており、室外熱交換器用ファン27の送風機能により外気が熱交換器室24に導入された後室外熱交換器26周りを通って外部に排出されるようになっている。
【0040】
また、室外機筐体22内で仕切られた2つの空間のうちの他方は、機械室30に構成されている。この機械室30は実質的に密閉された空間とされている。実質的に密閉された空間とは、機械室30内にへのゴミやミスト等の浸入を防止しうる程度に密閉されていることをいい、例えば、0.2mm幅よりも大きな隙間が無いような構成とすることで実現される。金属板や当該金属板と成型樹脂板との組合わせより構成される室外機筐体22において
は、各構成部分の組合わせ間にシリコーンやゴム等のシール部材を介在させたり、或は、各構成部分を精度よく接合したりすることで、上記のように、実質的に密閉された空間に形成することができる。なお、機械室30は必ずしも実質的に密閉された空間である必要はないが、実質的に密閉された空間にした場合のメリットについては後述する。
【0041】
また、機械室30には、上記電装ユニット40の他に、冷媒を圧縮する圧縮機32、圧縮機32に対する吸込蒸気中の冷媒液を分離するアキュムレータ33、室外機20内を流れる冷媒圧力を調整する膨張弁34、冷媒の流れる方向を切り替える四方切替弁36とを備えている。
【0042】
電装ユニット40には、電源電圧を所望の交流電圧に変換しこれを圧縮機32に供給するインバータ回路が組込まれている。勿論、電装ユニット40には、本空気調和機や室外機20の動作を全部又は部分的に処理する制御回路が組込まれていてもよい。また、本電装ユニット40は、冷却部材42を備えている。本電装ユニット40の構成については、後に詳述する。」

(3)「【0049】
<2.電装ユニットの詳細>
電装ユニット40について説明する。図3は電装ユニットを示す図であ
る。
【0050】
この電装ユニット40は、伝熱板部材44と、基板52に第1の電装部品54a,54b,54cが実装された実装基板50と、第2の電装部品58とを備え備えている。
【0051】
伝熱板部材44は、アルミニウムや鉄等の金属板、或は、熱伝導性樹脂板等であり、ここでは、略方形板状に形成されている。また、この伝熱板部材44の一方面には、基板固定用ボス部55が突出形成されており、このボス部55を介して実装基板50がネジ止等で固定される。また、伝熱板部材44は、冷却部材42よりも大きな広がりを有しており、したがって、冷却部材42から基板52に沿って延出するように形成されている。
【0052】
また、この伝熱板部材44は、実装基板50を収容するケーシング46の一部でもある。すなわち、ケーシング46は、下方が開口する略筺状のアッパーケーシング部47と、当該アッパーケーシング部47の下方開口を閉塞するロアケーシング部としての伝熱板部材44によって構成されており、その内部に上記実装基板50が収容固定されている。もっとも、伝熱板部材44は、必ずしもケーシング46の一部である必要はなく、機械室30内にそれ単独で固定配置された板材であってもよく、また、機械室30の一部空間を伝熱板部材44で仕切ることで、実装基板50を収容するための空間を形成するようにしてもよい。
【0053】
実装基板50は、一方主面及び他方主面に所定の配線パターンを形成した基板52に、第1の電装部品54a,54b,54cが半田付け等で実装固定された構成とされている。この実装基板50は、上記伝熱板部材44の一方面側、ここでは、ケーシング46内に配設固定されている。
【0054】
第1の電装部品54a,54b,54cは、第2の電装部品58と共に圧縮機32駆動用のインバータ回路を構成している。第1の電装部品54a,54b,54cは、インバータ回路を構成する部品、例えば、パワーモ
ジュール54aやコイル54b(特に小型のコイル)、コンデンサ54c等である。これらの第1の電装部品54a,54b,54cのうちの一部であるパワーモジュール54aは、基板52のうち伝熱板部材44側の主面で
あって冷却部材42が配設される部分に実装固定されており、当該伝熱板部材44に接触している。パワーモジュール54aを伝熱板部材44に接触させる構成としては、両者を接着剤等で接着する構成であってもよいし、又
は、伝熱板部材44に対する実装基板50の取付構造により、当該伝熱板部材44をパワーモジュール54aの表面に押付けるようにして接触させる構成であってもよい。なお、伝熱板部材44に孔を形成し、パワーモジュール54aを冷却部材42に直接接触させるようにしてもよい。また、第1の電装部品54a,54b,54cのうち、コイル54b(特に小型のコイ
ル)、コンデンサ54c等は、基板52のうち伝熱板部材44とは反対側の主面に実装固定されている。
【0055】
冷却部材42は、アルミニウムや銅等の金属部材又は熱伝導性樹脂部材内に上記冷媒を通す配管42aを形成したものであり、周辺温度よりも冷却する作用を果す部材である。この冷却部材42は、上記伝熱板部材44の他方面(ケーシング46の外側となる面)に露出するように配設され、当該他方面にねじや接着剤等で固定されている。
【0056】
第2の電装部品58は、インバータ回路を構成する部品、ここでは、リアクトルである。この第2の電装部品58は、伝熱板部材44の他方面側(即ち、上記実装基板50とは反対側の面)であって上記冷却部材42の周囲に配設され、当該伝熱板部材44の他方面に接着剤或はネジ止等により固定されている。ここでは、第2の電装部品58は、冷却部材42の周囲から所定距離離れた位置に配設されている。なお、この第2の電装部品58と上記実装基板50との電気的な接続は、例えば、伝熱板部材44等を貫通する被覆付の配線材等によってなされる。
【0057】
このように構成された空気調和機の室外機20における電装ユニットで
は、伝熱板部材44の他方面側、即ち、ケーシング46の外側であって冷却部材42の周囲に第2の電装部品58が配設されているため、冷却作用を果す冷却部材42によって当該第2の電装部
品58を、空気を介して冷却することができる。したがって、より多くの部品を効率よく冷却することができる。また、第2の電装部品58は伝熱板部材44に固定されているため、当該第2の電装部品58で発生した熱は伝熱板部材44の面方向に沿って伝わり、冷却部材42により吸熱されて冷却される。したがって、この点からもより多くの部品を効率よく冷却することができる。
【0058】
また、第1の電装部品54a,54b,54cの一つであるパワーモ
ジュール54aは伝熱板部材44に接触しているため、パワーモジュール54aで発生した熱は伝熱板部材44の厚み方向に伝わり冷却部材42により吸熱されて冷却される。したがって、当該パワーモジュール54aをも効率よく冷却できる。
【0059】
さらに、伝熱板部材44は基板52に沿って延出するように形成されているため、冷却部材42によって冷却される伝熱板部材44を実装基板50の近くに配設することができる。したがって、実装基板50に実装された他の第1の電装部品54b,54cで発生した熱も空気層を介して伝熱板部材44に伝わり、そこから伝熱板部材44の面方向に伝わって冷却部材42により吸熱されて冷却される。したがって、実装基板50に実装された他の第1の電装部品54b,54cについても効率よく冷却できる。
【0060】
また、これらのコイルやコンデンサ等の第1の電装部品54b,54cについては、伝熱板部材44に対して絶縁性を確保する必要があること、及
び、伝熱板部材44に直接固定した場合における基板52と伝熱板部材44との熱応力の相違による信頼性の低下を防止するといった観点から、空気層を介した冷却が好ましいといえる。
【0061】
また、伝熱板部材44は実装基板50を収容するケーシング46の一部であるため、ミストや埃等の影響を排除する必要性が比較的高い部品については実装基板50に実装してケーシング46内に収容してより効果的なミスト及び埃対策を図ることができる。
【0062】
もっとも、ここでは、電装ユニット40が収容される機械室30は、実質的に密閉化されているため、上記のように第2の電装部品58等を機械室30内に露出した態様で設けても、特に、ケーシング46外に露出する態様で設けても、当該第2の電装部品58等に対するミストや埃等の影響を排除することができる。
【0063】
なお、機械室30に関する実質的密閉化構造は、電装ユニット40自体を密閉化する構造と比べて、絶縁性や電気部品に対する耐蝕性等の影響を考慮しない構成を採用できるので、比較的容易かつ簡易な設計及び構成を採用できコストダウンを図ることができるというメリットもある。そして、このような機械室30の実質的な密閉化構造により、電装ユニット40等の電装品の信頼性が向上する。
【0064】
また、機械室30を実質的に密閉化することにより、機械室30内の熱が外部に逃げ難くなり暖房性能が向上するというメリットもある。このような暖房性能の向上のメリットは、冷房性能に対する影響を考慮した冷房及び暖房の全体効率から見ても良好な影響を与える。」

したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

外気が熱交換器室(4)に導入された後外部に排出されるようになっている熱交換器室と、実質的に密閉化することが好ましい機械室と、を有する室外機筐体(22)と、前記機械室内に収容された電装ユニット(40;140;240;340)と、
を備え、
前記電装ユニットは、
伝熱板部材(44;144;244;344)と、
基板(52)と前記基板に実装される第1の電装部品(54a,54b,54c)とを有し、前記伝熱板部材の一方面側に配設された実装基板(50;250;350)と、
前記伝熱板部材の他方面側に配設された冷却部材(42;442;64
2)と、
前記伝熱板部材の他方面側であって前記冷却部材の周囲に配設された第2の電装部品(58)と、
を備え、
前記伝熱板部材は、前記実装基板を収容するケーシング(46)の一部であり、
前記伝熱板部材の一方面には、基板固定用ボス部(55)が突出形成されており、前記ボス部を介して前記実装基板が固定される取付構造により、前記第1の電装部品のうち少なくとも一つ(54a)を前記伝熱板部材に押付けるようにして接触させるか、又は前記伝熱板部材に孔を形成し、前記第1の電装部品のうち少なくとも一つ(54a)を前記冷却部材に直接接触させるようにしている、空気調和機の室外機(20)。

4.対比
引用発明の「室外機筐体」、「第1の電装部品のうち少なくとも一つ(54a)」、及び「電装ユニット」の「ケーシング」は、それぞれ本願補正発明の「筐体」、「電子部品」、及び「制御箱」に対応する。
引用発明の「伝熱板部材」は、「ケーシング」の一部であるから、本願補正発明の「側板」とは、制御箱の筐体内に面する板である点で共通する。
引用発明の「第1の電装部品のうち少なくとも一つ(54a)」は、「伝熱板部材」に押付けるようにして接触させるようにしており、これにより
「第1の電装部品のうち少なくとも一つ(54a)」が冷却されることは明らかであり、その押付けるようにして接触させる面は放熱面といえる。
引用発明は、「冷却部材」を備え、「第1の電装部品のうち少なくとも一つ(54a)」を冷却することが明らかな構造を示すものであるから、電子部品の冷却構造である点で、本願補正発明と共通する。
したがって、本願補正発明と引用発明とを対比すると、以下の点で一致
し、また相違する。

(1)一致点
外気を吸入する吸気口と上記外気へ排気する排気口とを形成した筐体の内部に、機器と共に収容された電子部品の冷却構造において、
上記筐体内に配置され上記電子部品を収容した制御箱を備え、
上記制御箱の上記筐体内に面する板に、上記電子部品の放熱面を板の内面に押し付けるように、上記電子部品を固定、
したことを特徴とする電子部品の冷却構造。

(2)相違点1
本願補正発明は、筐体が熱交換器室と機械室とを有することを前提とするものではないのに対して、引用発明は、筐体が「外気が熱交換器室(4)に導入された後外部に排出されるようになっている熱交換器室」と、「実質的に密閉化することが好ましい機械室」と、を有するもので、「電装ユニッ
ト」の「ケーシング」は「機械室」内に収容されている点。

(3)相違点2
本願補正発明は、電子部品の固定について、
「上記制御箱の上記筐体内に面する側板を内側板と外側板との2枚の板で構成するとともに、上記内側板に孔を形成し、上記外側板が上記孔を塞ぐように上記内側板を覆う構成とし、上記電子部品の放熱面を上記孔を貫通して上記外側板の内面に押し付けるように、上記電子部品を上記内側板に固定する押さえ板または台座を備え、
上記押さえ板または上記台座はその外周に上記内側板の面に沿って上記電子部品の外周近傍に位置した突出部を有し、上記突出部を上記内側板に固定したこと」
とするのに対して、引用発明は、「板」が側板であるかどうか明らかでな
く、「内側板」と「外側板」との2枚の板で構成することの特定はなく、
「押さえ板」または「台座」、及びその「突出部」についての特定がない
点。

5.判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
本願補正発明は、本願の明細書に
「 【0007】
本発明は、上記のような実情に鑑みなされたものであり、外気による冷却において、所要の放熱能力が得られ、かつ、電子部品を劣化させない構造の電子部品の冷却構造を得ることを目的とする。」
と記載されているように、外気による冷却を行うものであるから、
「外気を吸入する吸気口と上記外気を排気する排気口とを形成した筐体の内部に、機器と共に収容された電子部品の冷却構造において、」
との記載は、文字どおりの意味であって、明示的に排除する記載はないものの、筐体内の外気が通らない別室に、電子部品を収容する制御箱を配置するような、別室を有するものでないことは明らかである。
一方、引用発明は「実質的に密閉化することが好ましい機械室」に配置するものであり、そのような機械室に外気を吸入する吸気口と上記外気を排気する排気口とを形成することは、当業者が容易にできることとはいえない。

(2)相違点2について
仮に、引用発明の「実装基板(50)」は、その取付構造により、「前記第1の電装部品のうち少なくとも一つ(54a)を前記伝熱板部材に押付けるようにして接触させるか、又は前記伝熱板部材に孔を形成し、前記第1の電装部品のうち少なくとも一つ(54a)を前記冷却部材に直接接触させるようにしている」ので、本願補正発明の「押さえ板」または「台座」に、引用発明の「伝熱板部材」及び「冷却部材」が、本願補正発明の「内側板」及び「外側板」に、それぞれ対応するといったとしても、引用発明の「実装基板(50)」は、「第1の電装部品のうち少なくとも一つ(54a)」以外の他の電装部品を有するもので、「伝熱板部材の一方面には、基板固定用ボス部(55)が突出形成されており、前記ボス部を介して前記実装基板が固定される取付構造により」とするものであるから、本願補正発明の「押さえ板」または「台座」のように、「その外周に上記内側板の面に沿って上記電子部品の外周近傍に位置した突出部を有し、上記突出部を上記内側板に固定したこと」とすることは、当業者が容易にできることとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明と同一の発明ではなく、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
補正後の請求項2に係る発明も、本願補正発明と同様の「外気を吸入する吸気口と上記外気へ排気する排気口とを形成した筐体の内部に、機器と共に収容された電子部品の冷却構造」であり、本願補正発明と同様の「突出部」を有する「押さえ板」または「台座」を備えるものであるから、引用発明と同一の発明ではなく、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
請求項3-9に係る発明も、請求項1または2を引用するものであるか
ら、引用発明と同一の発明ではなく、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
また、他に独立して特許を受けることができない理由を発見しない。

6.むすび(平成28年6月6日付けの手続補正について)
以上のとおり、平成28年6月6日付けのの手続補正によって補正された特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、独立して特許を受けることができるものであり、この手続補正は適法なものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
上記「第2」のとおり、平成28年6月6日付けの手続補正は適法なものであるから、本願の請求項1-9に係る発明は、この手続補正によって補正された特許請求の範囲の各請求項に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2.原査定の理由
原査定の理由の概要は以下のとおりである。

(1)請求項8の記載が不明確であるので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)請求項1-3に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるか、その発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか
ら、特許法第29条第1項第3号または特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)請求項4及び7に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、請求項5に係る発明は、引用文献1-3に記載された発明に基づいて、請求項6及び8に係る発明は、引用文献1-4に記載された発明に基づいて、請求項9に係る発明は、引用文献1及び5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献一覧
1.特開2008-121966号公報
2.特開2000-075960号公報
3.実願昭62-090019号(実開昭63-200391号)のマイクロフィルム
4.特開2011-112325号公報
5.特開2002-270358号公報

3.判断
(1)について
前記「第2.平成28年6月6日付けの手続補正」の「1.特許請求の範囲の記載」のとおり、請求項8の記載は明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないという拒絶理由は解消した。

(2)及び(3)について
上記引用文献1は、前記「第2.平成28年6月6日付けの手続補正」の引用例と同一の文献である。
そして、引用文献2-5を含めて検討しても、上記「第2.」と同様の理由で、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

4.むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできな
い。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-30 
出願番号 特願2014-210376(P2014-210376)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H05K)
P 1 8・ 113- WY (H05K)
P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 山本 章裕
加藤 恵一
発明の名称 電子部品の冷却構造  
代理人 村上 啓吾  
代理人 竹中 岑生  
代理人 吉澤 憲治  
代理人 大岩 増雄  

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