• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60H
管理番号 1324361
審判番号 不服2015-12690  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-03 
確定日 2017-01-25 
事件の表示 特願2010-280076号「空調装置の全体熱容量の最適化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月21日出願公開,特開2011-140297号〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成22年12月16日(パリ条約による優先権主張 2009年12月17日,(FR)フランス共和国)の出願であって,平成27年 2月24日付けで拒絶査定され,これに対し,同年 7月 3日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成27年 7月 3日の手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成27年 7月 3日の手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を,補正前の
「【請求項1】
ヒートポンプモードで作動するヒートループ(1)を備えている空調装置の制御方法であって,前記ヒートループ(1)は,少なくとも1つの外部熱交換器(10)と,内部熱交換器(11)または水-空気熱交換ラジエータ(15)と,圧縮機(12)と,膨張器(9)と,蒸発器(13)を備えており,前記ヒートループ(1)は,熱容量(HC1)を供給し,空調装置は,補助熱容量(HC2,HC16)を有する電気式加熱装置(2,16)と,制御方法を実行する制御装置(3)を備えており,前記制御方法は,
-設定温度の受取,
-外部熱交換器(10)の位置での空気速度(VA)の測定(EO),
-空調装置内の流動空気の温度(Tfa)の測定(EO),
-内部熱交換器(11)または水-空気熱交換ラジエータ(15)の空気流量(DmA)の測定(EO),
-設定温度,流動空気の温度(Tfa),そして内部熱交換器(11)の空気流量に基づく全体熱容量(HCglo)の計算(EO),
-ヒートループ(1)の熱容量(HC1)の決定,
-ヒートループ(1)の熱容量(HC1)と,全体熱容量(HCglo)との比較,
-ヒートループ(1)の熱容量(HC1)が,全体熱容量(HCglo)よりも低い場合,ヒートループの熱容量(HC1)の補助として,電気式加熱補助装置(2,16)の熱容量(HC2,HC16)の調整(E11,E12,E13,E14)というステップを備えていることを特徴とする空調装置の制御方法。」
から,補正後の
「【請求項1】
ヒートポンプモードで作動するヒートループ(1)を備えている空調装置の制御方法であって,
前記ヒートループ(1)は,少なくとも1つの外部熱交換器(10)と,内部熱交換器(11)または水-空気熱交換ラジエータ(15)と,圧縮機(12)と,膨張器(9)と,蒸発器(13)を備えており,前記ヒートループ(1)は,熱容量(HC1)を供給し,空調装置は,補助熱容量(HC2,HC16)を有する電気式加熱装置(2,16)と,制御方法を実行する制御装置(3)を備えており,前記制御方法は,
-設定温度の受取,
-外部熱交換器(10)の位置での空気速度(VA)の測定(EO),
-空調装置内の流動空気の温度(Tfa)の測定(EO),
-内部熱交換器(11)または水-空気熱交換ラジエータ(15)の空気流量(DmA)の測定(EO),
-設定温度,流動空気の温度(Tfa),そして内部熱交換器(11)の空気流量に基づく全体熱容量(HCglo)の計算(EO),
-ヒートループ(1)の熱容量(HC1)の決定,
-ヒートループ(1)の熱容量(HC1)と,全体熱容量(HCglo)との比較,
-ヒートループ(1)の熱容量(HC1)が,全体熱容量(HCglo)よりも低い場合,ヒートループの熱容量(HC1)の補助として,電気式加熱補助装置(2,16)の熱容量(HC2,HC16)の調整(E11,E12,E13,E14)というステップを備え,
空調装置が,内気モードで作動する時,温度(Tfa)は,再循環空気流の温度(Trecy)であり,空調装置が,外気モードで作動する時,温度(Tfa)は,外気温度(Text)であり,
制御装置(3)は,ヒートループ(1)の作動パラメーターおよび設定温度値(Tcons)に基づいて,ヒートループ(1)と,電気式加熱補助装置(2)との間における熱容量の配分を計算することを特徴とする空調装置の制御方法。」
へと変更する補正事項を含むものである(下線部は,本件補正により変更された箇所を示す)。

2 本件補正の目的
本件補正の上記補正事項は,補正前の請求項1に係る発明を特定する事項である「空調装置内の流動空気の温度」に関して,「空調装置が,内気モードで作動する時,温度(Tfa)は,再循環空気流の温度(Trecy)であり,空調装置が,外気モードで作動する時,温度(Tfa)は,外気温度(Text)で」あること,及び,補正前の請求項1に係る発明を特定する事項である「制御装置」に関して,「ヒートループ(1)の作動パラメーターおよび設定温度値(Tcons)に基づいて,ヒートループ(1)と,電気式加熱補助装置(2)との間における熱容量の配分を計算する」ことを特定するものであって,かつ,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

3 独立特許要件
(1)本願補正発明
本願補正発明は,本件補正後の明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,平成27年 7月 3日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2 1 補正の内容」の補正後の請求項1参照。)により特定されたとおりのものと認める。

(2)引用文献
原査定の拒絶理由に引用された本願出願(優先日)前に頒布された刊行物である特開平5-116526号公報(以下「引用文献1」という。),特開2000-52757号公報(以下「引用文献2」という。)及び特開2003-211953号公報(以下「引用文献3」という。)には,それぞれ以下の事項が記載されている。

[引用文献1について]
(2-1a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,例えば電気自動車に搭載される電気ヒータを有する空気調和装置の制御装置に関する。」

(2-1b)「【0011】図1に示すように,電気ヒータを有する空気調和装置の制御装置は,ヒートポンプ式の冷凍回路1と,ダクト2と,電子制御手段3とを有している。
【0012】冷凍回路1は,電動式の圧縮機4,四方弁5,コンデンサ(室外熱交換器)6,膨張弁7,及びエバポレータ(室内熱交換器)8を順に接続して構成されている。
【0013】この冷凍回路1は,四方弁5の切換えにより冷房運転と暖房運転(ヒートポンプ運転)とに切換えられるように構成されている。即ち,四方弁5の流路を破線で示す冷房位置に切換えた状態では,圧縮機4の吐出口4aから吐出される冷媒は,四方弁5,コンデンサ6,膨張弁7,エバポレータ8,及び四方弁5の径路で圧縮機の吸入口4bに戻り,冷房運転が行なわれる。一方,四方弁5の流路を実線で示す暖房位置に切換えた状態では,前記吐出口4aから吐出される冷媒は,四方弁5,エバポレータ8,膨張弁7,コンデンサ6,及び圧縮機4の径路で圧縮機4の吸入口4bに戻り暖房運転が行なわれる。」

(2-1c)「【0015】ブロアユニット2aの上流側端部には,内気導入口10及び外気導入口9が形成されている。また,ブロアユニット2a内には,前記両導入口9,10を開閉するインテークドア11と,ブロア12とが設けられている。
【0016】前記クーラーユニット2b内にはエバポレータ8が配置されており,ブロア13により導入される外気又は車室内空気が,上記冷房運転時には冷風となって,暖房運転時には温風となって夫々エバポレータ8を通過するようになっている。」

(2-1d)「【0019】前記電子制御手段3は,圧縮機4及び電気ヒータ12を制御するもので,電子制御ユニット(以下,「ECU」という)30と,ECU30からの制御信号により圧縮機4の回転数及び電気ヒータ12への通電量を夫々制御する圧縮機駆動部31及び電気ヒータ駆動部32とから成る。
【0020】ECU30には,外気温度Ta,室内温度Tr,設定温度Td,エバポレータ(室内熱交換器)8の入口側空気温度Tin,及びブロア12のブロア風量Ga等の入力信号が入力されている。」

(2-1e)「【0021】 外気温度Ta,室内温度Tr,設定温度Td,入口側空気温度Tin,及びブロア風量Ga等の運転条件が定まると,冷凍回路(1)の暖房能力Qcと冷凍回路1の効率COPの関係は,図2(a)及び下記(1)式で示されるように,略一次式で表わされる。
【0022】 COP=-aQc+b…(1)式
ここで,COPは冷凍回路1の効率,Qcは冷凍回路1の暖房能力,a及びbは夫々定数である。」

(2-1f)「【0024】ECU30は,前記運転条件即ち外気温度Ta,室内温度Tr,設定温度Td,前記入口側空気温度Tin,及びブロア風量Ga等の入力信号に基づいて必要暖房能力QTを演算するように構成されている。
【0025】必要暖房能力QTを得るために冷凍回路1と電気ヒータ12の両方を運転すると,
QT=Qc+QE…(2)式
となる。ここで,QEは電気ヒータ12の暖房能力である。
【0026】上記(1)式,(2)式,及び効率=暖房能力/電力の式より,必要暖房能力QTを得るために冷凍回路1と電気ヒータ12の両方を運転した場合の総合効率COPTは,下記の(3)式で表わされる。
【0027】
【数1】


なお,上記(3)式において,電気ヒータ12の効率は常に1であると考えている。
【0028】ECU30は,上記総合効率COPTを演算すると共に,総合効率COPTが最大となる,即ち
【0029】
【数2】

となる冷凍回路1の暖房能力Qc(以下,この暖房能力Qcを冷凍回路1の最適暖房能力Qcmaxという)を演算する。
【0030】ここで,
【0031】
【数3】

となる。」


(2-1g)「【0034】不図示の操作スイッチがオンされて作動が開始されると,ECU30は,まず図3のステップ301で外気温度Ta,室内温度Tr,設定温度Td,入口側空気温度Tin,及びブロア風量Ga等の入力信号を読み込む。この読込み後,ステップ302に進み,外気温度Ta,室内温度Tr,設定温度Td,入口側空気温度Tin,及びブロア風量Ga等の入力信号に基づいて必要暖房能力QTを演算する。
【0035】さらに,ステップ303に進んで前記総合効率COPTを上記(3)式により演算し,この演算後,ステップ304に進んで前記冷凍回路1の最適暖房能力Qcmaxを演算する。この演算後,ステップ305に進み,必要暖房能力QTが最適暖房能力Qcmax以上か否かを判定する。
【0036】このステップ305の答が肯定(Yes),即ち必要暖房能力QTが最適暖房能力Qcmax以上のとき,ステップ306に進んで冷凍回路1の暖房能力Qcを最適暖房能力Qcmaxにし,さらにステップ307に進んで最適暖房能力Qcmaxを得る圧縮機4の目標回転数Nobjを演算する。この演算後,ステップ308に進んで電気ヒータ12の暖房能力QEをQE=QT-Qcmaxとなるように演算すると共に,ステップ309でこのQEを得る電気ヒータ12への通電量IEを演算する。
【0037】さらに,ステップ310に進み,前記ステップ307で演算された目標回転数Nobjを表わす制御信号を圧縮機駆動部31へ出力すると共に,ステップ311に進み,前記ステップ309で演算された電気ヒータ12への通電量IEを表わす制御信号を電気ヒータ駆動部32へ出力して終了する。
【0038】このように,必要暖房能力QTが最適暖房能力Qcmax以上のとき,圧縮機4は,総合効率COPTが最大となる冷凍回路1の最適暖房能力Qcmaxを得る回転数で駆動されると共に,必要暖房能力QTと最適暖房能力Qcmaxの差即ち不足する暖房能力が電気ヒータ12によって得られる。従って,消費電力が小さく,且つ効率良く暖房される。
【0039】また,前記ステップ305の答が否定(No),即ち必要暖房能力QTが冷凍回路1の最適暖房能力Qcmaxより小さいとき,ステップ312に進み,冷凍回路1の暖房能力Qcを必要暖房能力QTにする。さらに,ステップ313に進み,冷凍回路1の暖房能力Qcが必要暖房能力QTとなるように圧縮機4の目標回転数Nobjを演算し,この演算後,ステップ314に進んで電気ヒータ12の暖房能力QEを0にする。このステップ314の実行後,前記ステップ309に進み,電気ヒータ12への通電量IEを0にする。さらに,ステップ310に進み,前記ステップ313で演算された目標回転数Nobjを表わす制御信号を圧縮機駆動部31へ出力すると共に,ステップ311に進み,前記ステップ309で演算された電気ヒータ12への通電量IE(IE=0)を表わす制御信号を電気ヒータ駆動部32へ出力して終了する。
【0040】このように,必要暖房能力QTが最適暖房能力Qcmaxより小さいとき,冷凍回路1の暖房能力Qcが必要暖房能力QTに決定され,冷凍回路1のみが運転されて必要暖房能力QTが得られる。このとき,冷凍回路1の圧縮機4は,最適暖房能力Qcmaxより小さい必要暖房能力QTを得る目標回転数Nobjで駆動される,即ち上述した必要暖房能力QTが最適暖房能力Qcmax以上の場合よりも低い回転数で駆動されるので,必要暖房能力QTが最適暖房能力Qcmax以上の場合よりも,消費電力がより小さくなり(図2(a)及び図2(b)を参照),より効率良く暖房される。」

(2-1h)【図1】には,段落【0015】及び【0016】等の記載を参照すると,空気調和装置が,内気導入口10及び外気導入口9をインテークドア11で選択的に開閉することが記載されている。

(2-1i)上記記載事項(2-1a)?(2-1h)を総合すると,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「ヒートポンプ運転するヒートポンプ式の冷凍回路1を備えている空気調和装置の制御方法であって,
前記ヒートポンプ式の冷凍回路1は,コンデンサ6と,エバポレータ8と,圧縮機4と,膨張弁7とを備えており,前記ヒートポンプ式の冷凍回路1において,暖房能力Qcは,必要暖房能力QTがヒートポンプ式の冷凍回路1の最適暖房能力Qcmax以上のときは最適暖房能力Qcmaxとなるように,又,必要暖房能力QTがヒートポンプ式の冷凍回路1の最適暖房能力Qcmax未満のときは必要暖房能力QTとなるよう圧縮機が駆動され,空気調和装置は,暖房能力QEを有する電気ヒータ12と,制御方法を実行するECU30を備えており,前記制御方法は,
-設定温度Tdの読み込み,
-エバポレータ8の入口側空気温度Tinの読み込み,
-ブロア風量Gaの読み込み,
-設定温度Td,エバポレータ8の入口側空気温度Tin,及びフロア風量Gaに基づいて必要暖房能力QTの演算,
-ヒートポンプ式の冷凍回路1の最適暖房能力Qcmaxの演算,
-必要暖房能力QTがヒートポンプ式の冷凍回路1の最適暖房能力Qcmax以上か否かを判定,
-必要暖房能力QTがヒートポンプ式の冷凍回路1の最適暖房能力Qcmax以上のとき,電気ヒータ12の暖房能力QEをQE=QT-Qcmaxとなるように演算すると共に,このQEを得る電気ヒータ12への通電量IEを演算するステップを備え,
空気調和装置が,内気導入口10及び外気導入口9をインテークドア11で選択的に開閉し,ECU30は,エバポレータ8の入口側空気温度Tinに基づいて必要暖房能力QTの演算を行うものであり,
ECU30は,エバポレータ8の入口側空気温度Tin,ブロア風量Ga等の入力信号および設定温度Tdに基づいて,ヒートポンプ式の冷凍回路1の最適暖房能力Qcmaxと,電気ヒータ12の暖房能力QEをQE=QT-Qcmaxとなるように演算する空気調和装置の制御方法。」

[引用文献2について]
(2-2a)「【0016】この電気自動車用冷暖房装置は,冷房,暖房ともに冷媒を用いたサイクル運転を行うことにより車室内の冷房と除湿暖房を行う除湿ヒートポンプシステムであって,図3に示す従来の除湿ヒートポンプシステムを極寒地向けに改良した新タイプのものである。
【0017】このシステムの冷凍サイクルは,電動コンプレッサ7(以下単に「コンプレッサ」という),車室内に配置された室内コンデンサとしてのサブコンデンサ4,オリフィス付きの第1電磁弁20,車室外に配置された室外コンデンサとしてのメインコンデンサ5,リキッドタンク10,温水を利用して冷媒を加熱する熱交換器21(以下「温水冷媒熱交換器」という),膨脹弁11,および車室内に配置されたエバポレータ3をこの順序で冷媒配管8により連結するとともに,温水冷媒熱交換器21の出口とコンプレッサ7の吸入口とをバイパス管22で接続し,その中に冷媒を封入して構成されている。すなわち,冷媒経路が,図3に示す従来のシステムと異なり,コンプレッサ7から吐出された冷媒を直接サブコンデンサ4に導き,サブコンデンサ4,第1電磁弁20,メインコンデンサ5,リキッドタンク10,および温水冷媒熱交換器21を通過させた後,エバポレータ3側または直接コンプレッサ7側(つまり,バイパス管22側)へ流れるよう選択的に分岐させるように構成されている。このため,バイパス管22には,冷媒流路切替手段としての第2電磁弁23が設置されている。なお,第1電磁弁20はオリフィス付き電磁弁であって,弁を閉じたときに全閉状態とならずオリフィス(絞り)となるものであるが,第2電磁弁23は通常の電磁弁であって,弁を閉じたときに全閉状態となるものである。また,膨脹弁11は通常の温度作動式膨脹弁であって,エバポレータ3の出口配管に設けられた感熱筒のフィードバックを受けて弁が作動することで,冷媒流量を調節するようになっている。」

(2-2b)「【0029】一方,暖房運転時(特に外気温度が極めて低い場合)には,第1電磁弁20を閉じ(オリフィス),コンデンサファン18を停止させ,温水冷媒熱交換器21を作動させた(具体的には,例えば,シーズヒータ24を通電させ,ポンプ26を作動させる)状態で,第2電磁弁23を開いて(全開),温水冷媒熱交換器21から流出した冷媒を主にバイパス管22側,つまり直接コンプレッサ7側に導く。すなわち,コンプレッサ7から吐出された冷媒は,主に,サブコンデンサ4→第1電磁弁(オリフィス)20→メインコンデンサ5→リキッドタンク10→温水冷媒熱交換器21→第2電磁弁23と流れてコンプレッサ7に帰還する(主暖房サイクル)。このとき,エアミックスドア17は,例えば,図1中のA位置に設定され,エバポレータ3通過後の空気がすべてサブコンデンサ4を通過するようにしている。
【0030】この主暖房サイクルのモリエル線図上の挙動は,概略,図2に示すとおりである。
【0031】すなわち,上記の循環過程において,コンプレッサ7で断熱圧縮されて高温高圧となった(a点→b点)ガス冷媒は,サブコンデンサ4に入り,ここで取入れ空気に熱を放出して凝縮液化され,中温高圧の液冷媒となる(b点→c点)。この中温高圧の液冷媒は第1電磁弁(オリフィス)20によって絞られ断熱膨脹されて,低温低圧の気液混合状態となって(c点→d点),メインコンデンサ5に入る。メインコンデンサ5に流入した低温低圧の気液混合状態の冷媒は,メインコンデンサ5のケーシングや外気から吸熱した後(d点→e点),リキッドタンク10を経て,温水冷媒熱交換器21に入る。この温水冷媒熱交換器21にはシーズヒータ24で加熱された温水槽25内の温水がポンプ26により循環しているため,温水冷媒熱交換器21に流入した冷媒は温水との熱交換によりさらに加熱されて吸熱し,蒸発することによりすべてガス冷媒となった後(e点→a点),第2電磁弁23を経て(つまり,エバポレータ3をバイパスして),コンプレッサ7に戻される。このようなヒートポンプを形成して,取入れ空気をサブコンデンサ4で加熱して車室内に吹き出すことによって,車室内が暖房される。なお,図2のような挙動を示す冷凍サイクルを形成することで,冷凍サイクル自体がより大きな暖房性能を発揮しうる方向で形成されるので,極寒地にも対応しうる暖房性能が得られる。
【0032】また,暖房運転時には,以上の主暖房サイクルに対して,温水冷媒熱交換器21から流出した冷媒の一部は,膨脹弁11→エバポレータ3と流れてコンプレッサ7に帰還する。したがって,この過程において,膨脹弁11に入りエバポレータ3に入った冷媒は,エバポレータ3で熱交換(吸熱)により取入れ空気を冷却・除湿して,コンプレッサ7に戻される。つまり,除湿作用が働き,車両の空気取入口をREC(内気循環)にしても車室内空気を除湿することができる。なお,膨脹弁11→エバポレータ3と流れてコンプレッサ7に戻る冷媒経路は,バイパス管23を通る経路に比べて通路抵抗がかなり大きいので,そこを流れる冷媒の流量は少ない。そのため,エバポレータ3での取入れ空気の冷却作用は小さく,サブコンデンサ4で加熱された吹出風温度の低下は,エバポレータ3が全く機能しない場合と比べてそれほど大きくない。
【0033】以上より,暖房運転時においては,エバポレータ3で除湿された取入れ空気をサブコンデンサ4で加熱して車室内に吹き出すので,車室内が除湿暖房されることになる。」

[引用文献3について]
(2-3a)「【0024】図1は,本発明の第1実施態様に係る空調システム構成図である。冷凍サイクル1には,車両の原動機のみにより駆動される第1圧縮機部と電動モータのみにより駆動される第2圧縮機部とが一体に組み付けられているハイブリッド型の圧縮機4が設けられている。冷凍サイクル1において,車両の原動機としてのエンジン2の駆動力を伝達する電磁クラッチ3と,電動モータ5との2つの駆動源を持つハイブリッド圧縮機4により圧縮された高温高圧の冷媒が,室外熱交換器としての凝縮器6により外気と熱交換して冷却され,凝縮し液化する。受液器7により気液が分離され,液冷媒が膨張弁8によって減圧される。減圧された低圧の冷媒は,室内熱交換器としての蒸発器9に流入して,送風機12により送風された空気と熱交換する。蒸発器9において蒸発し気化した冷媒は再びハイブリッド圧縮機4に吸入され圧縮される。」

(2-3b)「【0032】図2は,本発明の第2実施態様に係る空調システム構成図である。図2に示すような空調装置において,図6のような制御ブロック図に従い,各入力変数をメインコントローラに入力し,車両の熱負荷値を演算することで,圧縮機(コンプレッサ)の駆動制御を行う。
【0033】空調制御のための各種センサとして,蒸発器9通過後の空気温度を検知するための蒸発器出口空気温度センサ14が備えられ,検知された信号は空調制御を行う空調制御装置15へ入力される。さらに空調制御装置15には,凝縮器入口空気温度Tcon,凝縮器入口空気風速Vcon,蒸発器入口空気温度Teva,蒸発器入口空気湿度Heva,蒸発器入口空気風速Veva等の信号群16がそれぞれ入力される。また出力信号として,電動モータ回転数制御信号17,クラッチ制御信号18がそれぞれ出力される。
【0034】制御は,図6に示すように,凝縮器入口空気温度Tcon,凝縮器入口空気風速Vcon,蒸発器入口空気温度Teva,蒸発器入口空気湿度Heva,蒸発器入口空気風速Veva等の信号群に基づき,車両における空調負荷LAが次式によって推定演算される。
LA=f(Tcon,Vcon,Teva,Heva,Veva)
【0035】LAと所定値dとの関係により,コンプレッサ駆動制御手段により,第1圧縮機と第2圧縮機の同時運転,あるいは,第1または第2圧縮機の運転に制御する。LA≧dの時,同時運転とし,LA<dの時,第1または第2圧縮機の運転とする。これによって,負荷の大きい時には同時運転として空調能力不足を回避し,負荷の小さい時には第1または第2圧縮機の運転として,他の機器や他の運転状態に影響を及ぼすことなく,小さな消費動力で所望の空調能力を発生させることができるようになる。」

(3) 対比,判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると,各用語の意味,機能または作用等からみて,引用発明の「空気調和装置」,「コンデンサ6」,「エバポレータ8」,「膨張弁7」,「暖房能力QE」,「電気ヒータ12」,「ECU30」,「エバポレータ8の入口側空気温度Tin」,「フロア風量Ga」,「必要暖房能力QT」は,それぞれ本願補正発明の「空調装置」,「外部熱交換器(10)」,「内部熱交換器(11)」,「膨張器(9)」,「補助熱容量(HC2,HC16)」,「電気式加熱装置(2,16)」,「制御装置(3)」,「空調装置内の流動空気の温度(Tfa)」,「内部熱交換器(11)または水-空気熱交換ラジエータ(15)の空気流量(DmA)」,「全体熱容量(HCglo)」に相当する。
引用発明の「ヒートポンプ運転する」態様は,本願補正発明の「ヒートポンプモードで作動する」態様に相当し,引用発明の「ヒートポンプ式の冷凍回路1」は,本願補正発明の「ヒートループ(1)」に相当する。
本願補正発明の「ヒートループ(1)は,熱容量(HC1)を供給」するという構成における「熱容量(HC1)」は,本願明細書の【0072】?【0086】の記載事項及び【図5】から,ヒートループの最適熱容量が全体熱容量以下のとき,ヒートループの最適熱容量値であり,ヒートループの最適熱容量が全体熱容量以下でないとき,全体熱容量であると認められる。すると,引用発明の「ヒートポンプ式の冷凍回路1において,暖房能力Qcは,必要暖房能力QTがヒートポンプ式の冷凍回路1の最適暖房能力Qcmax以上のときは最適暖房能力Qcmaxとなるように,又,必要暖房能力QTがヒートポンプ式の冷凍回路1の最適暖房能力Qcmax未満のときは必要暖房能力QTとなるよう圧縮機が駆動され」る構成は,「ヒートポンプ式の冷凍回路1」が「暖房能力Qc」を供給することが明らかであるから,本願補正発明の上記「ヒートループ(1)は,熱容量(HC1)を供給」する構成に相当する。
引用発明の「設定温度Tdの読み込み」は,設定温度Tdを受け取っているといえるから,本願補正発明の「設定温度の受取」に相当する。
引用発明の「エバポレータ8の入口側空気温度Tinの読み込み」及び「ブロア風量Gaの読み込み」は,「エバポレータ8の入口側空気温度Tin」及び「ブロア風量Ga」を読み込む前にそれらを測定していることは技術常識であることを踏まえれば,本件補正発明の「空調装置内の流動空気の温度(Tfa)の測定(EO)」及び「内部熱交換器(11)または水-空気熱交換ラジエータ(15)の空気流量(DmA)の測定(EO)」にそれぞれ相当する。
引用発明の「設定温度Td,エバポレータ8の入口側空気温度Tin,そしてフロア風量Gaに基づいて必要暖房能力QTの演算」は,「演算」が「計算」に相当することから,本願補正発明の「設定温度,流動空気の温度(Tfa),そして内部熱交換器(11)の空気流量に基づく全体熱容量(HCglo)の計算(EO)」に相当する。
本願補正発明の「-ヒートループ(1)の熱容量(HC1)の決定,
-ヒートループ(1)の熱容量(HC1)と,全体熱容量(HCglo)との比較,
-ヒートループ(1)の熱容量(HC1)が,全体熱容量(HCglo)よりも低い場合,ヒートループの熱容量(HC1)の補助として,電気式加熱補助装置(2,16)の熱容量(HC2,HC16)の調整(E11,E12,E13,E14)というステップを備え」という構成における「熱容量(HC1)」は,上述した本願明細書及び図面の記載からみて,ヒートループの最適熱容量値を意味するものと理解できるから,引用発明の「最適暖房能力Qcmax」に相当する。
引用発明の「ヒートポンプ式の冷凍回路1の最適暖房能力Qcmaxの演算」は,「演算」することで最適暖房能力Qcmaxを決定することであるから,本願補正発明の「ヒートループ(1)の熱容量(HC1)の決定」に相当する。
引用発明の「必要暖房能力QTがヒートポンプ式の冷凍回路1の最適暖房能力Qcmax以上か否かを判定」は,その判定の際に「必要暖房能力QT」と「ヒートポンプ式の冷凍回路1の最適暖房能力Qcmax」とを比較していることから,本願補正発明の「ヒートループの熱容量と,全体熱容量との比較」に相当する。
引用発明の「必要暖房能力QTが最適暖房能力Qcmax以上のとき,電気ヒータ12の暖房能力QEをQE=QT-Qcmaxとなるように演算すると共に,このQEを得る電気ヒータ12への通電量IEを演算する」態様は,「最適暖房能力Qcmax」が,「必要暖房能力QT」よりも低い場合,「最適暖房能力Qcmax」の補助として,QE=QT-Qcmaxとなるように「電気ヒータ12」の「暖房能力QE」を調整するものといえるから,本願補正発明の「ヒートループ(1)の熱容量(HC1)が,全体熱容量(HCglo)よりも低い場合,ヒートループの熱容量(HC1)の補助として,電気式加熱補助装置(2,16)の熱容量(HC2,HC16)の調整(E11,E12,E13,E14)」する態様に相当する。
引用発明の「空気調和装置が,内気導入口10及び外気導入口9をインテークドア11で選択的に開閉」する態様は,「空気調和装置」が内気モードで作動する時と外気モードで作動する時とを有するといえ,エバポレータ8の入口側には,内気導入口が開いているときは内気が導入され,外気導入口が開いているときは外気が導入されるといえる。すると,引用発明の「空気調和装置が,内気導入口10及び外気導入口9をインテークドア11で選択的に開閉し,ECU30は,エバポレータ8の入口側空気温度Tinに基づいて必要暖房能力QTの演算を行うものであ」る態様は,本願補正発明の「空調装置が,内気モードで作動する時,温度(Tfa)は,再循環空気流の温度(Trecy)であり,空調装置が,外気モードで作動する時,温度(Tfa)は,外気温度(Text)であ」る態様に相当するといえる。
引用発明の「エバポレータ8の入口側空気温度Tin,ブロア風量Ga等の入力信号」は,本願補正発明の「作動パラメーター」に相当し,引用発明の「最適暖房能力Qcmaxを演算し,ヒートポンプ式の冷凍回路1の暖房能力Qcmaxと,電気ヒータ12の暖房能力QEをQE=QT-Qcmaxとなるように演算する」ことが,「ヒートポンプ式の冷凍回路1」と「電気ヒータ12」の暖房能力の配分を計算するものであることを併せ考えれば,引用発明の「ECU30は,エバポレータ8の入口側空気温度Tin,ブロア風量Ga等の入力信号および設定温度Tdに基づいて,最適暖房能力Qcmaxを演算し,ヒートポンプ式の冷凍回路1の最適暖房能力Qcmaxと,電気ヒータ12の暖房能力QEをQE=QT-Qcmaxとなるように演算する」態様は,本願補正発明の「制御装置(3)は,ヒートループ(1)の作動パラメーターおよび設定温度値(Tcons)に基づいて,ヒートループ(1)と,電気式加熱補助装置(2)との間における熱容量の配分を計算する」態様に相当する。

よって,本願補正発明と,引用発明とは,
「ヒートポンプモードで作動するヒートループを備えている空調装置の制御方法であって,
前記ヒートループは,少なくとも1つの外部熱交換器と,内部熱交換器または水-空気熱交換ラジエータと,圧縮機と,膨張器と,を備えており,前記ヒートループは,熱容量を供給し,空調装置は,補助熱容量を有する電気式加熱装置と,制御方法を実行する制御装置を備えており,前記制御方法は,
-設定温度の受取,
-空調装置内の流動空気の温度の測定,
-内部熱交換器または水-空気熱交換ラジエータの空気流量の測定,
-設定温度,流動空気の温度,そして内部熱交換器の空気流量に基づく全体熱容量の計算,
-ヒートループの熱容量の決定,
-ヒートループの熱容量と,全体熱容量との比較,
-ヒートループの熱容量が,全体熱容量よりも低い場合,ヒートループの熱容量の補助として,電気式加熱補助装置の熱容量の調整というステップを備え,
空調装置が,内気モードで作動する時,温度は,再循環空気流の温度であり,空調装置が,外気モードで作動する時,温度は,外気温度であり,
制御装置は,ヒートループの作動パラメーターおよび設定温度値に基づいて,ヒートループと,電気式加熱補助装置との間における熱容量の配分を計算する空調装置の制御方法。」である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1)
ヒートループについて,本願補正発明は,「外部熱交換器」と,「内部熱交換器または水-空気熱交換ラジエータ」の他に,「蒸発器」を備えているのに対し,引用発明には,蒸発器を備えることが特定されていない点。

(相違点2)
本件補正発明は,「外部熱交換器(10)の位置での空気速度(VA)の測定(EO)」を行うのに対し,引用発明は,そのような態様は特定されていない点。

そこで,上記各相違点について検討する。
(相違点1)について
引用文献2には,メインコンデンサ5と,サブコンデンサ4と,電動コンプレッサ7と,膨張弁11と,エバポレータ3とを備え(上記記載事項(2-2a)参照),暖房運転時に,冷媒がエバポレータ3とサブコンデンサ4を流れることにより除湿暖房する(上記記載事項(2-2b)参照)冷凍サイクルが記載されている。ここで,上記「エバポレータ3」は,本願補正発明の「蒸発器」に相当する。
引用発明と引用文献2に記載の冷凍サイクルは,ともに電気自動車に用いられる空調装置であり(上記記載事項(2-1a),(2-2a)参照),自動車内の環境を快適に空調するという周知の課題解決のために行われる冷房,暖房,除湿という一般的な空調制御の具体化のために,除湿暖房機能を有する引用文献2記載の冷凍サイクルを引用発明1に採用する程度のことは,当業者が容易になし得る事項であり,また,引用発明に引用文献2記載の冷凍サイクルを採用することに特段の阻害要因も見当たらないから,引用発明をして,上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易になし得ることといえる。

(相違点2)について
本件補正発明の「外部熱交換器(10)の位置での空気速度(VA)」は,他の発明特定事項との関係が明記されていないが,本願明細書の【0038】及び図4を参酌すると,「ヒートループ(1)の熱容量(HC1)の決定」及び「ヒートループ(1)と,電気式加熱補助装置(2)との間における熱容量の配分を計算」に用いられると解される。
引用発明には,「最適暖房能力Qcmax」の「演算」に外部熱交換器である「コンデンサ6」の位置での空気風速を利用することは特定されていないが,該空気風速が最適暖房能力Qcmaxに影響をあたえることは自明であり,また,引用文献3にも,冷凍サイクルを有する空調装置の空調制御に室外熱交換器の入口空気風速を利用することが記載されている。すると,引用発明において,空気調和装置の制御を正確に行うために,コンデンサ6の位置での空気風速の影響を考慮し,最適暖房能力Qcmaxの演算にあたり該空気風速を利用する構成とし,上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

そして,本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も,引用発明,引用文献2記載の技術的事項及び引用文献3記載の技術的事項から当業者が予測し得る範囲内のものであって,格別顕著なものとはいえない。

よって,本願補正発明は,引用発明,引用文献2記載の技術的事項及び引用文献3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)小括
したがって,本願補正発明は,引用発明,引用文献2記載の技術的事項及び引用文献3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,外国語書面の翻訳文の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2 1 補正の内容」の補正前の請求項1参照。)により特定されるとおりのものと認める。

2 引用文献等
原査定の拒絶理由に引用された引用文献及びその記載事項並びに引用発明は,前記「第2 3(2)引用文献」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,本願補正発明の「空調装置内の流動空気の温度」について「空調装置が,内気モードで作動する時,温度(Tfa)は,再循環空気流の温度(Trecy)であり,空調装置が,外気モードで作動する時,温度(Tfa)は,外気温度(Text)で」あるとの限定を省き,かつ,「制御装置」について「ヒートループ(1)の作動パラメーターおよび設定温度値(Tcons)に基づいて,ヒートループ(1)と,電気式加熱補助装置(2)との間における熱容量の配分を計算する」との限定を省くものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本願補正発明が,前記「第2 3(3)対比・判断」に記載したとおり,引用発明,引用文献2記載の技術的事項及び引用文献3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様に,引用発明,引用文献2記載の技術的事項及び引用文献3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお,本願発明と引用発明とを対比すると,両者の相違点は,本願補正発明と引用発明との相違点である上記(相違点1)及び(相違点2)と実質的に同じものとなる。そして上記(相違点1)及び(相違点2)についての判断は前記「第2 3(3)対比・判断」に示したとおりである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用文献2記載の技術的事項及び引用文献3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項2ないし7に係る発明について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-25 
結審通知日 2016-08-30 
審決日 2016-09-14 
出願番号 特願2010-280076(P2010-280076)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 正浩  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 大山 広人
田村 嘉章
発明の名称 空調装置の全体熱容量の最適化方法  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 中馬 典嗣  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ