• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02M
管理番号 1324405
審判番号 不服2016-9319  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-22 
確定日 2017-02-21 
事件の表示 特願2012- 57722「電力変換装置、突入電流抑制回路、及び突入電流抑制方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日出願公開、特開2013-192397、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月14日の出願であって、平成27年8月20日付けで拒絶理由が通知され、同年10月23日付けで手続補正がされ、平成28年3月22日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年6月22日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年3月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1
・引用文献等 1-3
引用例1には、第1入力端子(1)と第2入力端子(3)との間に接続された入力コンデンサ(C1)を有する電力変換装置(4、等)であって、抵抗(R1)と半導体素子(Q1)と、スイッチ(Q2)と、直流入力の投入(SWon)から所定期間(Vr7>VQ2thの期間)が経過するまでスイッチ(Q2)を閉成させ、所定期間の経過後、スイッチ(Q2)を開放させると共に、半導体素子(Q1)を導通させる制御部(B)とを備えることが記載されている([0010]-[0032]段落、図2、5-7、等参照。)。
引用例1のものは、半導体素子は寄生容量を有することについては言及していない点で請求項1のものと相違する。しかしながら、半導体素子が寄生容量を有することは、周知の事項である(引用例2([0004]段落)、等参照。)。
よって、引用例1のものにおいても、半導体素子は寄生容量を有していることは、当業者にとって明らかである。
さらに、引用例1のものは、スイッチがb接点でない点において、請求項1のものと相違する。しかしながら、スイッチとしてどのようなものを用いるかは、当業者が適宜選択し得る事項である。引用例3には、スイッチがb接点(ノーマリークローズタイプ)であるものが記載されており、このスイッチを引用例1のものに適用することは、当業者にとって困難ではない。

よって、請求項1に係る発明は、引用例1、3に記載された発明及び引用例2に記載された周知の事項に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 2
・引用文献等 1-3
請求項2に係る発明についても、引用例1、3に記載された発明及び引用例2に記載された周知技術から、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見出せない。

・請求項 3
・引用文献等 1-3
・備考
請求項3に係る発明についても、引用例1、3に記載された発明及び引用例2に記載された周知技術から、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見出せない。

・請求項 4-6
・引用文献等 1-4
・備考
請求項4-6に係る発明についても、引用例1、3、4に記載された発明及び引用例2に記載された周知技術から、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見出せない。

<引用文献等一覧>
1.特開平11-289657号公報
2.特開2004-112987号公報(周知技術を示す文献)
3.実願平3-69489号(実開平5-23793号)のCD-ROM
4.特開2005-33940号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正のうち、特許請求の範囲に関する補正事項は、補正前の請求項1,5,6に記載のあった発明を特定するために必要な事項である「所定時間」を「突入電流が消失した状態になるまでの所定時間」に限定するとともに、「前記スイッチを開放させると共に前記半導体素子を導通させる」を「前記スイッチを開放させると共に、当該当該スイッチを開放した後に一定の時間をおいて前記半導体素子を導通させる」と限定したものであり、かつ、補正の前後において、請求項1,5,6の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 当審の判断」までに示すように、補正後の請求項1?6に係る発明は、独立特許要件を満たす(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する)ものである。

第4 本願発明
本願請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。)は、平成28年6月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
第1入力端子と第2入力端子との間に接続された入力コンデンサを有し、前記第1入力端子と第2入力端子との間に印加される直流入力を電力変換して所望の直流出力を発生させる電力変換装置であって、
前記入力コンデンサの充電経路上に設けられ、前記直流入力が投入された際に前記充電経路に発生する突入電流を抑制するための抵抗と、
前記抵抗と並列接続された半導体素子と、
b接点であり、前記半導体素子の入力端子と制御端子との間に接続されたスイッチと、
前記直流入力の投入から前記突入電流が消失した状態になるまでの所定期間が経過するまで前記スイッチを閉成させ、前記所定期間の経過後、前記スイッチを開放させると共に、当該スイッチを開放した後に一定の時間をおいて前記半導体素子を導通させる制御部と を備え、
前記半導体素子は寄生容量を有する、電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記直流入力の投入を検知する検知部と、
前記検知部により前記直流入力の投入が検知された場合、前記所定期間の計時を開始する計時部と、
前記計時部による前記所定期間の計時が終了した場合、前記スイッチを開放させるための第1制御信号を前記スイッチに供給すると共に、前記半導体素子を導通させるための第2制御信号を前記半導体素子の制御端子に供給する信号発生部と
を備えた、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記スイッチはフォトモスリレーから構成された、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記半導体素子は電界効果トランジスタである、請求項1から3の何れか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
第1入力端子と第2入力端子との間に接続された入力コンデンサを有し、前記第1入力端子と第2入力端子との間に印加される直流入力を電力変換して所望の直流出力を発生させる電力変換装置における突入電流抑制回路であって、
前記入力コンデンサの充電経路上に設けられ、前記直流入力が投入された際に前記充電経路に発生する突入電流を抑制するための抵抗と、
前記抵抗と並列接続された半導体素子と、
b接点であり、前記半導体素子の入力端子と制御端子との間に接続されたスイッチと、
前記直流入力の投入から前記突入電流が消失した状態になるまでの所定期間が経過するまで前記スイッチを閉成させ、前記所定期間の経過後、前記スイッチを開放させると共に、当該スイッチを開放した後に一定の時間をおいて前記半導体素子を導通させる制御部と を備え、
前記半導体素子は寄生容量を有する、突入電流抑制回路。
【請求項6】
第1入力端子と第2入力端子との間に接続された入力コンデンサを有し、前記第1入力端子と第2入力端子との間に印加される直流入力を電力変換して所望の直流出力を発生させる電力変換装置において、前記入力コンデンサの充電に伴って発生する突入電流を抑制するための突入電流抑制方法であって、
前記入力コンデンサの充電経路上に設けられた抵抗により前記充電経路に発生する突入電流を抑制する段階と、
前記抵抗と並列接続された半導体素子の入力端子と制御端子との間に接続されたスイッチを前記直流入力の投入から前記突入電流が消失した状態になるまでの所定期間が経過するまで閉成させ、前記所定期間の経過後、前記スイッチを開放させると共に、当該スイッチを開放した後に一定の時間をおいて前記半導体素子を導通させる段階と、
を含み、
前記半導体素子は寄生容量を有する、突入電流抑制方法。」(下線部は、補正箇所。)

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献について
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平11-289657号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a)「【請求項3】主電源からの直流電圧を突入電流抑止手段を介して後段に接続された電子回路に供給するようにした突入電流抑止装置において、前記突入電流抑止手段は、前記主電源と前記電子回路の間に設けられたDC/DCコンバータ(4)と、このDC/DCコンバータ(4)の出力端子と前記主電源の負側間に抵抗(R5)を介して接続された抵抗(R6)と、前記抵抗(R5)と(R6)の中間にゲート電極が接続され、前記主電源の負側に直列に接続された抵抗(R1)の両端を挟んでソース電極とドレイン電極が接続されたトランジスタ(Q1)と、このトランジスタ(Q1)のゲート電極にドレイン電極が前記主電源の負側にソース電極が接続され、ゲート電極が前記主電源の投入の有無を検出するコンデンサ(C4)と抵抗(R7)からなる微分手段に接続されたトランジスタ(Q2)を設けたことを特徴とする突入電流抑止装置。」(【請求項3】の記載。下線は当審で付与。以下、同様。)

b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気機器の電源回路において、主電源スイッチを投入したときに発生する突入電流を抑止するための突入電流抑止装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】突入電流は主電源スイッチを投入したときや、瞬時の停電が発生したときに発生する。突入電流が大きいと電源スイッチが溶着することがあり、これを小さくする必要がある。
【0003】突入電流を抑止する従来技術としては図13,図14に示すものが知られている。図13において、1は主電源、2は突入電流抑止手段、3は電子回路であり、この例では突入電流が流れる経路の正側と負側に直列に抵抗R1およびR2を接続している。C1は電子回路3がスイッチング電源である場合にリップル電流を除去するためのコンデンサである。この様な回路では電子回路3に含まれるコンデンサC1等が原因となって、突入電流が発生する。なお、抵抗R1およびR2の内いずれかは省略する場合もある。」(【0001】?【0003】の記載。)

c)「【0012】図2は本発明の他の実施例を示すものである。図2において、1は主電源、2cは突入電流抑止手段、3は電子回路であり、この実施例では電子回路3の前段に配置されたDC/DCコンバータ4を含んで突入電流抑止手段2cを構成している。ここで、DC/DCコンバータ4と電源1の負側に設けられたコンデンサC8は交流成分カット素子として機能する。
【0013】DC/DCコンバータ4の出力は抵抗R5を介してコンデンサC3の一端に接続されており、このコンデンサC3の他端が電源1の基準点Aに接続されている。抵抗R6は抵抗R5とコンデンサC3の間に一端が接続され、他端が基準点Aに接続されている。抵抗R5とコンデンサC3の間にはトランジスタQ1のゲート電極が接続され、このトランジスタQ1のソース電極とドレイン電極は基準点Aに一端が接続され他端がコンデンサC1に接続された抵抗R1の両端を挟んで主電源1の負側に接続されている。
【0014】ここで、例えば入力電圧を32V,R1=1Ω,Q1のオン抵抗=0.03Ωオフ抵抗=∞とし、DC/DCコンバータ4の出力を18Vに設計すると、突入電流抑止回路のタイムチャートは図3(a)?(h)に示すようなものとなる。なお、最下段の数値は時間(数m?数十m)の経過を示している。図において、
【0015】(a)は入力電圧であり、スイッチSW投入時に32Vに達する。(b)は抵抗R1の両端電圧で、この抵抗R1の両端電圧は(コンデンサC1が充電されるに従い)R1に流れる電流が減るので時間の経過と共に低下する(トランジスタQ1のゲート・ソース電圧が閾値を超えることでQ1が導通するとR1の両端電圧がほぼ完全に零となる)。(c)はコンデンサC1の両端の電圧で、所定の時間12を経過した時入力電圧と同じ電圧32Vとなる。
【0016】(d)はDC/DCコンバータ4の出力電圧で、時間3が経過した時点で設計電圧18Vとなる。(e)はDC/DCコンバータ4の両端の電圧で時間7が経過した時点で設計電圧18Vとなる。
【0017】(f)はトランジスタQ1のゲートとソース間の電圧で、閾値を超えた時点でオンとなる。
【0018】(g)はトランジスタQ1のドレイン-ソースを流れる電流で、所定の時間12を経過しトランジスタQ1がオンとした時から流れはじめる。(h)はスイッチSWをオンとしたときに回路に流れる全流入電流Iinである。」(【0012】?【0018】の記載。)

d)「【0025】図5において、トランジスタQ1のゲート電極にはトランジスタQ2のドレイン端子が接続され、トランジスタQ2のゲート電極には抵抗R8を介してコンデンサC4と抵抗R7の一端が接続されており、コンデンサC4の他端は電源の正側に抵抗R7の他端は負側に接続されており、コンデンサC4と抵抗R7で微分回路を構成している。また、トランジスタQ2のゲートにはツェナーダイオードD1のカソードが接続され、アノード側は負側に接続されている。
【0026】ここでトランジスタQ2はゲート・ソース間の最大定格VGSが20V程度の通信用の小電力FETで動作スピードの速いものを使用する。抵抗R8はトランジスタQ2のゲート保護用で、過電圧防止抵抗として機能する。微分回路の時定数は抵抗R7とコンデンサC4により決定される。このコンデンサC4の容量はコンデンサC1の5000μF程度の容量に比較して例えば1μF程度の小さなものを使用する。
【0027】ここで、抵抗R7の両端電圧をVR7,トランジスタQ1のゲート・ソース間電圧をVQ1gs,Q2のゲート・ソース間電圧をVQ2gs,Q1のゲートのスレッショルドレベルをVQ1th(=約1.5V),Q2のゲートのスレッショルドレベルをVQ2th(=約1.5V)として検討する。
【0028】はじめに、R8をショート、ツェナーダイオードD1をオープンと仮定してVR7=VQ2gsとして考える(図6参照)。電源スイッチ1が投入されるとVR7=Vinになり、時間の経過と共にVR7(当審注:「VR7」は「抵抗R7」の誤記と認める。)の両端電圧は低下する。ここでVR7>VQ2thの期間(数十mS)はQ2がオンなので、Q1のゲートとソースがショートする。
【0029】従って、VQ1gs=0,Q1はオフのまま、IR1=Iinとなる。スイッチ1をオンとした後数十mSの時間が経過すると、VR7<VQ2thとなり、Q2がオフとなる。
【0030】その頃にはコンデンサC1の充電がほぼ完了してVC1は≒Vinになっている。そして、Iinはかなり小さく(数A以下)になっていて、VR1=IR1×R1≒0と考える。また、DC/DCコンバータ4の出力が18Vで安定しているので、VQ1gsはVcnv1をR6とR5で分圧することで決まり、
(18+VR1)×R6/(R6+R5)≒18×R6/(R6+R5)>VQ1th
となるので、Q1がオンとなり、IDS(Q1の電流)>>IR1となる。
【0031】ここで、抵抗R8とツェナーダイオードD1を加えて考えると、ダイオードD1のツェナー電圧を例えば12Vに設計したとすると、これを超える電圧がVinに加わってもVQ2GS≦12Vになり、Q2のゲート・ソース間の最大定格は20V程度なのでQ2のゲートが保護されることになる。
【0032】図7はVC1=0の状態からスイッチSWをオンとした時の図5に示す回路の動作タイミングを示す概念図である。図に示すようにスイッチSWオンによりIinが回路に流れ(b)コンデンサC1の両端電圧VC1が上昇し始める(a)。同時にトランジスタQ2のゲート・ソース間の電圧VGSが素早く上昇しトランジスタQ2がオンとなる(c)。トランジスタQ2がオンの間はトランジスタQ1はオフなので突入電流はR1を流れる。(d)はトランジスタQ1のゲート・ソース間の電圧VGS。(e)はDC/DCコンバータの出力である。その結果、突入電流を数十A以下に抑えることができる。」(【0025】?【0032】の記載。)

e)段落【0003】の記載を考慮すれば、図5に示される電子回路3は、コンデンサC1を有するスイッチング電源であり、コンデンサC1は主電源1に対して並列に接続されるものを含むものである。

f)段落【0015】?【0018】の記載及び図3より、Vinは入力電圧、Iinは全流入電流、VC1はコンデンサC1の両端電圧、Vcnv1はDC/DCコンバータ4の出力電圧を表すものと認められる。
また、IR1は抵抗R1を流れる電流を表していることは、明らかである。

上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用例には、図5に示された突入電流抑止装置として、以下の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されている。

「主電源からの直流電圧を突入電流抑止手段を介して後段に接続された電子回路に供給するようにした突入電流抑止装置において、前記突入電流抑止手段は、前記主電源と前記電子回路の間に設けられたDC/DCコンバータ4と、このDC/DCコンバータ4の出力端子と前記主電源の負側間に抵抗R5を介して接続された抵抗R6と、前記抵抗R5とR6の中間にゲート電極が接続され、前記主電源の負側に直列に接続された抵抗R1の両端を挟んでソース電極とドレイン電極が接続されたトランジスタQ1と、このトランジスタQ1のゲート電極にドレイン電極が前記主電源の負側にソース電極が接続され、ゲート電極が前記主電源の投入の有無を検出するコンデンサC4と抵抗R7からなる微分手段に接続されたトランジスタQ2を設けたことを特徴とする突入電流抑止装置であり、
電子回路3は、コンデンサC1を有するスイッチング電源であり、コンデンサC1は主電源1に対して並列に接続され、
抵抗R7の両端電圧をVR7,トランジスタQ1のゲート・ソース間電圧をVQ1gs,Q2のゲート・ソース間電圧をVQ2gs,Q1のゲートのスレッショルドレベルをVQ1th(=約1.5V),Q2のゲートのスレッショルドレベルをVQ2th(=約1.5V)とした場合、
電源スイッチ1が投入されるとVR7=Vin(入力電圧)になり、時間の経過と共に抵抗R7の両端電圧は低下し、VR7>VQ2thの期間(数十mS)はQ2がオンなので、Q1のゲートとソースがショートし、VQ1gs=0,Q1はオフのまま、IR1(抵抗R1を流れる電流)=Iin(全流入電流)となり、
スイッチ1をオンとした後数十mSの時間が経過すると、VR7<VQ2thとなり、Q2がオフとなるが、その頃にはコンデンサC1の充電がほぼ完了してVC1(コンデンサC1の両端電圧)は≒Vin(入力電圧)になっており、そして、Iin(全流入電流)はかなり小さく(数A以下)になっており、
また、DC/DCコンバータ4の出力が18Vで安定しているので、VQ1gsはVcnv1(DC/DCコンバータ4の出力電圧)をR6とR5で分圧することで決まり、
(18+VR1)×R6/(R6+R5)≒18×R6/(R6+R5)>VQ1th
となるので、Q1がオンとなる、
突入電流抑止装置。」

第6 当審の判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用例記載の発明とを対比する。

ア.引用例記載の発明の「電子回路3は、コンデンサC1を有するスイッチング電源であり、コンデンサC1は主電源1に対して並列に接続」されるものであるから、引用例記載の発明の「コンデンサC1」は、本願発明1の「入力コンデンサ」に相当し、引用例記載の発明の「電子回路3」は、本願発明1の「第1入力端子と第2入力端子との間に接続された入力コンデンサを有し、前記第1入力端子と第2入力端子との間に印加される直流入力を電力変換して所望の直流出力を発生させる電力変換装置」に相当する。

イ.引用例記載の発明の「抵抗R1」は、「突入電流抑止手段」を構成する「主電源の負側に直列に接続された」抵抗であり、電源スイッチ1が投入されてからトランジスタQ1がオフの期間は「IR1(抵抗R1を流れる電流)=Iin(全流入電流)」となるものであるから、本願発明1の「入力コンデンサの充電経路上に設けられ、前記直流入力が投入された際に前記充電経路に発生する突入電流を抑制するための抵抗」に相当する。

ウ.引用例記載の発明の「トランジスタQ1」は、「抵抗R1の両端を挟んでソース電極とドレイン電極が接続された」ものであるから、本願発明1の「前記抵抗と並列接続された半導体素子」に相当する。

エ.引用例記載の発明の「トランジスタQ2」は、「トランジスタQ1のゲート電極にドレイン電極が前記主電源の負側にソース電極が接続され」るものであり、「Q2がオン」で、「Q1のゲートとソースがショート」するものであるから、本願発明1の「b接点であり、前記半導体素子の入力端子と制御端子との間に接続されたスイッチ」と、「前記半導体素子の入力端子と制御端子との間に接続されたスイッチ」である点で共通するといえる。

オ.引用例記載の発明は、「電源スイッチ1が投入されるとVR7=Vin(入力電圧)になり、時間の経過と共に抵抗R7の両端電圧は低下し、VR7>VQ2thの期間(数十mS)はQ2がオンなので、Q1のゲートとソースがショートし、VQ1gs=0,Q1はオフのまま、IR1(抵抗R1を流れる電流)=Iin(全流入電流)となり、」「スイッチ1をオンとした後数十mSの時間が経過すると、VR7<VQ2thとなり、Q2がオフとなるが、その頃にはコンデンサC1の充電がほぼ完了してVC1(コンデンサC1の両端電圧)は≒Vin(入力電圧)になっており、そして、Iin(全流入電流)はかなり小さく(数A以下)に」なるものであるから、引用例記載の発明の「スイッチ1をオンとした後数十mSの時間が経過する」まで「Q2がオン」であることは、本願発明1の「前記直流入力の投入から前記突入電流が消失した状態になるまでの所定期間が経過するまで前記スイッチを閉成させ」ることに相当する。
引用例記載の発明の「スイッチ1をオンとした後数十mSの時間が経過すると、VR7<VQ2thとなり、Q2がオフとなる」ことは、本願発明1の「前記所定期間の経過後、前記スイッチを開放させる」ことに相当する。
また、引用例記載の発明が「Q2がオフ」となったとき、「DC/DCコンバータ4の出力が18Vで安定しているので、VQ1gsはVcnv1(DC/DCコンバータ4の出力電圧)をR6とR5で分圧することで決まり、」「(18+VR1)×R6/(R6+R5)≒18×R6/(R6+R5)>VQ1thとなるので、Q1がオンとなる」ことは、本願発明1の「前記スイッチを開放させると共に、当該スイッチを開放した後に一定の時間をおいて前記半導体素子を導通させる」ことと、「前記スイッチを開放させると共に、前記半導体素子を導通させる」点で共通するといえる。
そして、引用例記載の発明の「主電源の投入の有無を検出するコンデンサC4と抵抗R7からなる微分手段」は、時間の経過と共に抵抗R7の両端電圧を低下させトランジスタQ2オン、オフを制御する制御部といい得るものである。
したがって、引用例記載の発明の「コンデンサC4と抵抗R7からなる微分手段」は、本願発明1の「前記直流入力の投入から前記突入電流が消失した状態になるまでの所定期間が経過するまで前記スイッチを閉成させ、前記所定期間の経過後、前記スイッチを開放させると共に、当該スイッチを開放した後に一定の時間をおいて前記半導体素子を導通させる制御部」と「前記直流入力の投入から前記突入電流が消失した状態になるまでの所定期間が経過するまで前記スイッチを閉成させ、前記所定期間の経過後、前記スイッチを開放させると共に、前記半導体素子を導通させる制御部」である点で共通するといえる。

したがって、両者は以下の一致点と相違点とを有する。

〈一致点〉
「第1入力端子と第2入力端子との間に接続された入力コンデンサを有し、前記第1入力端子と第2入力端子との間に印加される直流入力を電力変換して所望の直流出力を発生させる電力変換装置であって、
前記入力コンデンサの充電経路上に設けられ、前記直流入力が投入された際に前記充電経路に発生する突入電流を抑制するための抵抗と、
前記抵抗と並列接続された半導体素子と、
前記半導体素子の入力端子と制御端子との間に接続されたスイッチと、
前記直流入力の投入から前記突入電流が消失した状態になるまでの所定期間が経過するまで前記スイッチを閉成させ、前記所定期間の経過後、前記スイッチを開放させると共に、前記半導体素子を導通させる制御部と を備える、
電力変換装置。」

〈相違点〉
〈相違点1〉
本願発明1は、「スイッチ」が「b接点」であるのに対し、引用例記載の発明は、「スイッチ」は、VQ2th以上の電圧が印加された場合にオンとなる「トランジスタQ2」である点。
〈相違点2〉
本願発明1は、「半導体素子の入力端子と制御端子との間に接続された」「スイッチを開放した後に一定の時間をおいて前記半導体素子を導通させる」のに対し、引用例記載の発明は、「スイッチ」である「トランジスタQ2」がオフとなると、「半導体素子」である「トランジスタQ1」がオンとなるものであるが、「トランジスタQ2」がオフした後に一定の時間をおいて「トランジスタQ1」がオンとなるものではない点。
〈相違点3〉
本願発明1は、「半導体素子は寄生容量を有する」ものであるのに対し、引用例記載の発明の「トランジスタQ1」は寄生容量を有するとはされていない点。

(2)判断
〈相違点2〉についての判断
上記相違点2について検討すると、引用例及び原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-112987号公報(以下、「引用例2」という。)、実願平3-69489号(実開平5-23793号)のCD-ROM(以下、「引用例3」という。)、特開2005-33940号公報(以下、「引用例4」という。)のいずれの文献にも、「半導体素子の入力端子と制御端子との間に接続された」「スイッチを開放した後に一定の時間をおいて前記半導体素子を導通させる」構成は記載されていない。
また、当該構成は、本願出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用例記載の発明、引用例2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.請求項2?4について
請求項2?4は請求項1を引用する請求項であり、本願発明2?4も、本願発明1の「半導体素子の入力端子と制御端子との間に接続された」「スイッチを開放した後に一定の時間をおいて前記半導体素子を導通させる」構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用例記載の発明、引用例2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとは認められない。

3.請求項5,6について
本願発明5は本願発明1を「突入電流抑制回路」として、本願発明6は本願発明1を「突入電流抑制方法」として記載したものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用例記載の発明、引用例2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとは認められない。

第7 原査定について
審判請求時の補正により、補正後の本願発明1?6は「半導体素子の入力端子と制御端子との間に接続された」「スイッチを開放した後に一定の時間をおいて前記半導体素子を導通させる」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用例1?4に基づいて、容易に発明できたものとは認められない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-06 
出願番号 特願2012-57722(P2012-57722)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H02M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松本 泰典  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 千葉 輝久
山田 正文
発明の名称 電力変換装置、突入電流抑制回路、及び突入電流抑制方法  
代理人 松沼 泰史  
代理人 小室 敏雄  
代理人 棚井 澄雄  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ