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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C08L 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C08L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 C08L |
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管理番号 | 1324446 |
審判番号 | 不服2015-3656 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-02-26 |
確定日 | 2017-02-21 |
事件の表示 | 特願2012-524319「照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月17日国際公開、WO2011/018746、平成25年 1月17日国内公表、特表2013-501840、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年8月9日(パリ条約による優先権主張 2009年8月12日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、平成25年12月3日付けで拒絶理由が通知され、平成26年3月5日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年10月27日付け(発送日:同年10月30日)で拒絶査定がされ、これに対し、平成27年2月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年5月21日付けで前置報告がされたものである。 そして、当審において、平成28年8月26日付けで拒絶理由が通知され、同年11月2日付けで意見書とともに特許請求の範囲についての手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明について 1 本願発明 本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成28年11月2日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、「本願発明1ないし8」という。)。 「【請求項1】 350から500nmの範囲内にある第1波長の光を放出すると共に、第1波長に対して屈折率n_(a1)を持つ透明層を有する半導体積層構造体と、 前記半導体積層構造体により放出される前記第1波長の光を該透明層を介して受光すると共に、前記第1波長に対して屈折率n_(b1)を有するセラミック部材と、 バインダ材料と100nm以下の平均粒径を有するナノ粒子とを含む組成物であって、第1波長の光に対しては少なくとも1.65の第1屈折率(n_(1))を及び第2の波長の光に対しては1.60?2.2の範囲内の第2屈折率(n_(2))を有し、前記第1屈折率(n_(1))は前記第2屈折率(n_(2))より高く、これら第1及び第2屈折率は前記バインダ材料に対する前記ナノ粒子の体積比を調節することにより調整することができる組成物を有する接着領域部と、を有し、 前記接着領域部は、 前記半導体積層構造体の前記透明層と前記セラミック部材との間に設けられると共に、前記透明層及び前記セラミック部材に直接接触し、且つ、該組成物の前記第1屈折率(n_(1))が前記屈折率n_(a1)びn_(b1)のうちの低い方に合致し、 前記セラミック部材は、前記第1波長の光を550から800nmの範囲内にある第2波長の光に変換すると共に該第2波長に対して屈折率n_(b2)を有する波長変換部材であり、 前記組成物の前記第2屈折率(n_(2))が、該波長変換部材の前記屈折率n_(b2)より小さい、照明装置。 【請求項2】 前記第1屈折率(n_(1))が少なくとも1.8であり、前記第2屈折率(n_(2))が1.70?1.90の範囲内である、請求項1記載の照明装置。 【請求項3】 前記第1屈折率(n_(1))と前記第2屈折率(n_(2))との間の差が少なくとも0.03であり、前記第1波長が450nm又はそれ以下であり、前記第2波長が570nm又はそれ以上である、請求項1記載の照明装置。 【請求項4】 前記ナノ粒子がTiO_(2)、ZrO_(2)、Y_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)安定化ZrO_(2)、HfO_(2)、Ta_(2)O_(5)、Nb_(2)O_(5)、TeO_(2)、BaTiO_(3)及びSiCからなる群から選択された少なくとも1つを有する、請求項1記載の照明装置。 【請求項5】 前記ナノ粒子の体積含有量が当該組成物の体積に基づいて15から75%の範囲内である、請求項1記載の照明装置。 【請求項6】 前記ナノ粒子:前記バインダ材料の体積比が、15:85?99:1である、請求項1記載の照明装置。 【請求項7】 前記バインダ材料がケイ酸塩、アルキルケイ酸塩及び/又はアルキルポリシロキサンを有する、請求項1記載の照明装置。 【請求項8】 前記組成物が、粘着特性を有する、請求項1記載の照明装置。」 2 刊行物に記載された事項及び刊行物に記載された発明 (1)刊行物 刊行物1:国際公開第2008/063884号 刊行物2:特開2009-120726号公報 刊行物3:特表2008-536328号公報 刊行物4:特開2007-204739号公報 ア 刊行物1の記載事項 本願の優先日前に頒布された上記刊行物(平成25年12月3日付け拒絶理由通知で引用した刊行物1に同じ。)には、以下の事項が記載されている。摘記は対応するファミリー特許文献である特表2010-510685号に依った。 (ア)「LED光源であって、該LED光源が、LEDダイと、前記LEDダイと光学的に結合した光学部品と、非晶質オルガノポリシロキサン網状組織を含む接着層と、を含み、前記オルガノポリシロキサン網状組織が式:(R^(1)SiO_(1.5))_(n)(前記式中、R^(1)は有機基であり、nは少なくとも10の整数である。)に由来するシルセスキオキサン部分を含み、前記接着層が、前記LEDダイと前記光学部品とを互いに接着している、LED光源。」(請求項1) (イ)「前記接着層が、表面変性された金属酸化物ナノ粒子類を更に含む、請求項1に記載のLED光源。」(請求項11) (ウ)「・・・例えば、LEDダイは、窒化物類、例えば、AlN、GaN、InN;リン化物類、例えば、InGaP、AlP、GaP、InP;並びに他のもの、例えば、AlAs、GaAs、InAs、AlSb、GaSb、及びInSbを包含するIII-V族半導体類から典型的に作製される、別個のp型及びn型半導体層を包含することができる。LEDダイはまた、II-VI族半導体、例えば、ZnS、ZnSe、CdSe、及びCdTe;IV族半導体類Ge、Si、及び炭化物類、例えば、SiCから作製することもできる。・・・」(第4頁第6?11行、公表特許公報段落【0014】) (エ)「・・・光学部品類は、比較的高い屈折率を有する固体の透明な物質から作製されている。光学部品類に好適な材料としては、光学ガラス等の無機材料類、例えば、ショット・ノース・アメリカ社(Schott North America, Inc.)から入手可能なショット(Schott)ガラス型LASF35又はN-LAF34、及び米国特許出願第11/381518号(レザーデイル(Leatherdale)ら)に記載されているものが挙げられ、前記特許出願の開示内容を本明細書に参照として組み込む。他の好適な無機材料類としては、セラミックス、例えば、サファイア、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ダイアモンド、及び炭化ケイ素が挙げられる。サファイア、酸化亜鉛、ダイアモンド、及び炭化ケイ素は、これらの材料が比較的高い熱伝導率(0.2?5.0W/cm K)を更に有することから、特に有用である。光学部品は更に、熱硬化性の高屈折率ポリマー類、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート類、及び多環式化合物類、又は熱可塑性の高屈折率ポリマー類、例えば、ポリカーボネート類、及び環状オレフィン類を含んでいてもよい。光学部品は、熱硬化性又は熱可塑性ポリマーを、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、及び硫化亜鉛を包含するセラミックナノ粒子類と組み合わせて含む場合もある。」(第4頁第24行?第5頁第4行、公表特許公報段落【0016】) (オ)「光学部品の一例は、LEDダイから出る光を抽出するのに使用可能な抽出装置である。一般に、抽出装置は、光の角度分布を調節して、第1光放射パターンを第二の異なる光放射パターンへと変化させる。抽出装置の形によって、放射された光のパターンは、一般に順方向に向いており、抽出装置の周囲を循環していても、幾分対称又は非対称な分布でその側方へ向かっていてもよい。」(第5頁第25?30行、公表特許公報段落【0019】) (カ)「表面変性された金属酸化物ナノ粒子類は、光の波長よりも小さな平均粒度、例えば約300nm未満の平均粒度を有している。」(第11頁第9?10行、公表特許公報段落【0039】) (キ)「効率を最大にするために、接着層の屈折率は、LEDダイの光放射面(又は前述のような光放射層)の屈折率と、例えば、約0.2以内で正確に一致している。接着層の屈折率が小さすぎると、LEDダイによって放射される光はダイ内に閉じ込められることとなり、接着層自体が非吸収性であっても吸収され失われる。接着層の屈折率を光放射層の屈折率まで高めることにより、LEDによって放射される光の大部分は、接着層が放射光の一部を吸収したとしても、ダイから出て光学部品と結合することができる。」(第12頁第30行?第13頁第5行、公表特許公報段落【0045】) イ 刊行物2の記載事項 本願の優先日前に頒布された上記刊行物(平成25年12月3日付け拒絶理由通知で引用した刊行物2に同じ。)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「屈折率が2.0以上であり、分散平均粒子径が1nm以上かつ20nm以下の金属酸化物粒子を、光学部材用透明粘着剤中に分散してなることを特徴とする屈折率調整光学部材用透明粘着剤。」(請求項1) (イ)「本発明は・・・液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置、プラズマディスプレイパネル(PDP)等の画像表示装置や光ディスクに用いられる偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、保護フィルム等の粘着剤層を作製する際に用いて好適な屈折率調整光学部材用透明粘着剤・・・に関するものである。」(段落【0001】)。 ウ 刊行物3の記載事項 本願の優先日前に頒布された上記刊行物(平成25年12月3日付け拒絶理由通知で引用した刊行物3に同じ。)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「少なくとも1つの発光ダイオード(LED)チップ(12)および接着手段(16)によって前記チップに連結された無機光学素子(14)を有する発光デバイス(10)であって、前記接着手段は、ケイ素および酸素原子を含むマトリクスを含む接着物質からなり、少なくとも一部のケイ素原子に炭化水素基が直接結合している、発光デバイス。」(請求項1) (イ)「前記接着手段が、Si、Al、Ga、Ti、Ge、P、B、Zr、Y、Sn、Pb、および Hf からなる群より選択される少なくとも1つの元素を含む酸化物をさらに含む」(請求項9) エ 刊行物4の記載事項 本願の優先日前に頒布された上記刊行物(平成25年12月3日付け拒絶理由通知で引用した刊行物4に同じ。)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「少なくとも、分子量1000未満である修飾分子(A1)および重量平均分子量1000以上である修飾高分子(A2)により表面が修飾された、有機溶媒に分散すると透明コロイドを与えることができる表面修飾無機微粒子(B)と、透明高分子(C)と、を含むことを特徴とする透明高分子組成物。」(請求項1) (イ)「上記のような特性を有する本発明の透明高分子組成物は、例えば、カメラや眼鏡用のレンズ、光記録・再生用機器のピックアップレンズ、フィルムレンズのハードコート材、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、CRTディスプレイの反射防止層やELディスプレイの輝度向上層等の光学部材(光学用材料)として好適に使用することができる」(段落【0028】) (2)引用発明 ア 引用発明1 (1)アで摘記した(ア)、(イ)及び(カ)によれば、刊行物1には、 「LED光源であって、該LED光源が、LEDダイと、前記LEDダイと光学的に結合した光学部品と、非晶質オルガノポリシロキサン網状組織を含む接着層と、を含み、前記オルガノポリシロキサン網状組織が式:(R^(1)SiO_(1.5))_(n)(前記式中、R^(1)は有機基であり、nは少なくとも10の整数である。)に由来するシルセスキオキサン部分を含み、前記接着層が、前記LEDダイと前記光学部品とを互いに接着している、LED光源であって、接着剤層が300nm未満の平均粒度の表面変性された金属酸化物ナノ粒子類を含む、LED光源。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 イ 引用発明3 (1)ウで摘記した(ア)及び(イ)によれば、刊行物3には、 「少なくとも1つの発光ダイオード(LED)チップおよび接着手段によって前記チップに連結された無機光学素子を有する発光デバイスであって、前記接着手段は、ケイ素および酸素原子を含むマトリクスを含む接着物質からなり、少なくとも一部のケイ素原子に炭化水素基が直接結合している、発光デバイスであって、前記接着手段がSiの酸化物をさらに含む、発光デバイス。」の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。 3 対比・判断 (1) 引用発明1との対比・判断 ア 本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「LEDダイ」は本願発明1の「半導体積層構造体」に相当し、「金属酸化物ナノ粒子類と非晶質オルガノポリシロキサン網状組織を含む接着層」は「バインダ材料とナノ粒子とを含む組成物を有する接着領域部」に、「LED光源」は「照明装置」にそれぞれ相当するから、両者は「半導体積層構造体とバインダ材料とナノ粒子とを含む組成物を有する接着領域部とを有する照明装置」の点で一致しており、以下の相違点1ないし3で相違するといえる。 相違点1 本願発明1の半導体積層構造体は、「350から500nmの範囲内にある第1波長の光を放出すると共に、第1波長に対して屈折率n_(a1)を持つ透明層を有する」と特定されているのに対して、引用発明1にはそのような特定がなされていない点。 相違点2 本願発明1の照明装置は、「半導体積層構造体により放出される前記第1波長の光を該透明層を介して受光すると共に、前記第1波長に対して屈折率n_(b1)を有するセラミック部材」であって、「前記セラミック部材は、前記第1波長の光を550から800nmの範囲内にある第2波長の光に変換すると共に該第2波長に対して屈折率n_(b2)を有する波長変換部材」を有しているのに対して、引用発明1にはそのような特定がなされていない点。 相違点3 本願発明1には、バインダ材料が「100nm以下の平均粒径を有するナノ粒子」を含んでおり、「第1波長の光に対しては少なくとも1.65の第1屈折率(n_(1))を及び第2の波長の光に対しては1.60?2.2の範囲内の第2屈折率(n_(2))を有し、前記第1屈折率(n_(1))は前記第2屈折率(n_(2))より高く、これら第1及び第2屈折率は前記バインダ材料に対する前記ナノ粒子の体積比を調節することにより調整することができる」こと及び「該組成物の前記第1屈折率(n_(1))が前記屈折率n_(a1)及びn_(b1)のうちの低い方に合致」し、「前記組成物の前記第2屈折率(n_(2))が、該波長変換部材の前記屈折率n_(b2)より小さい」と特定されているのに対して、引用発明1にはそのような特定がなされていない点。 イ 上記相違点2及び3について検討する。 引用発明1には、「LEDダイと光学的に結合した光学部品」であることが特定されているが、当該光学部品の一例は「LEDダイから出る光を抽出するのに使用可能な抽出装置」(上記2.アの摘示(オ))であって、「光の角度分布を調節して、第1光放射パターンを第二の異なる光放射パターンへと変化させる」(上記2.アの摘示(オ))ものであり、光を放射させることによってLEDダイからの光を抽出したり、光の角度分布を調節する機能を有しているものであるが、本願発明1で特定する第1波長の光を第2波長の光に変換する機能を有するものに関しては、刊行物1には記載も示唆もない。また、引用発明1の光学部品について例示される好適な材質から検討しても、「光学ガラス等の無機材料類」、「サファイア、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ダイアモンド、及び炭化ケイ素」、「アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート類、及び多環式化合物類、又は熱可塑性の高屈折率ポリマー類」、「熱硬化性又は熱可塑性ポリマーを、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、及び硫化亜鉛を包含するセラミックナノ粒子類と組み合わせて含む場合」(上記2.アの摘示(エ))であり、これらは第1波長の光を第2波長の光に変換する機能を有する材料とは認められない。したがって、引用発明1には、少なくとも、LED光源が第1波長の光を第2波長の光に変換する波長変換部材を有する点について記載されていない。 また、引用発明1の光学部材は、LEDダイから出る光の波長を変換することは示唆されていない。 この点、刊行物3を参酌したとしても、無機光学素子(引用発明1における光学部材に相当する)部分に、光の波長を変換する機能を有することは記載されておらず、たとえ刊行物3の開示を参酌したとしても、引用発明1の光学部材に波長変換部材を用いることを当業者が容易に想到することができるものとはいえない。 また、引用発明1の光学部材として波長変換部材を用いることが容易に想到し得ることといえない以上、相違点3に関しても、引用発明1の光学部材とLEDダイとの間に存在する接着層の屈折率を、LEDダイや光学部材の屈折率と比較して調整しようと試みる動機づけが存在するとはいえない。 したがって、本願発明1と引用発明1とは少なくとも相違点2及び相違点3において異なっており、本願発明1は刊行物1に記載された発明ではない。また、それらの相違点については、刊行物3の記載内容を参照しても当業者が容易に想到することができたものではないから、本願発明1は、引用発明1及び刊行物3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (2) 引用発明3との対比・判断 ア 本願発明1と引用発明3とを対比すると、引用発明3の「発光ダイオードチップ」は本願発明1の「半導体積層構造体」に相当し、「ケイ素および酸素原子を含むマトリクスを含む接着物質であって、接着手段がSiの酸化物をさらに含む接着物質」は、「バインダ材料と粒子とを含む組成物」に、「発光デバイス」は「照明装置」にそれぞれ相当するから、両者は「半導体積層構造体とバインダ材料と粒子とを含む組成物とを有する照明装置」の点で一致しており、以下の相違点4ないし6で相違するといえる。 相違点4 本願発明1の半導体積層構造体が、「350から500nmの範囲内にある第1波長の光を放出すると共に、第1波長に対して屈折率n_(a1)を持つ透明層を有する」と特定されているが引用発明3にはそのような特定がなされていない点。 相違点5 本願発明1の照明装置は、「半導体積層構造体により放出される前記第1波長の光を該透明層を介して受光すると共に、前記第1波長に対して屈折率n_(b1)を有するセラミック部材」であって、「前記セラミック部材は、前記第1波長の光を550から800nmの範囲内にある第2波長の光に変換すると共に該第2波長に対して屈折率n_(b2)を有する波長変換部材」を有しているのに対して、引用発明3には無機光学素子を有するとのみ記載されている点。 相違点6 本願発明1には、バインダ材料が「100nm以下の平均粒径を有するナノ粒子」を含んでおり、「第1波長の光に対しては少なくとも1.65の第1屈折率(n_(1))を及び第2の波長の光に対しては1.60?2.2の範囲内の第2屈折率(n_(2))を有し、前記第1屈折率(n_(1))は前記第2屈折率(n_(2))より高く、これら第1及び第2屈折率は前記バインダ材料に対する前記ナノ粒子の体積比を調節することにより調整することができる」こと及び「該組成物の前記第1屈折率(n_(1))が前記屈折率n_(a1)及びn_(b1)のうちの低い方に合致」し、「前記組成物の前記第2屈折率(n_(2))が、該波長変換部材の前記屈折率n_(b2)より小さい」ことが特定されているのに対して、引用発明3にはそのような特定がなされていない点。 イ 上記相違点5及び6について検討する。 刊行物3には、「無機光学素子」として波長変換部材を用いることは記載も示唆もされておらず、刊行物1にも無機光学素子に相当する光学部材部分に光の波長を変換する機能を有することは記載されていないから、引用発明3の無機光学素子に波長変換部材を用いることを当業者が容易に想到することができるとはいえない。そして、相違点3についての検討と同様に、相違点6に関して、引用発明3の無機光学素子と発光ダイオードチップとの間に存在する接着手段の屈折率を、無機発光素子や発光ダイオードチップの屈折率と比較して調整しようと試みる動機づけが存在するとはいえない。 したがって、本願発明1と引用発明3とは少なくとも相違点5及び相違点6において異なっており、本願発明1は刊行物3に記載された発明ではない。また、それらの相違点については、刊行物1の記載内容を参照しても当業者が容易に想到することができたものではないから、本願発明1は、引用発明3及び刊行物1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また、刊行物2及び刊行物4には、半導体積層体構造を有する照明装置について記載されていないため、本願発明1と刊行物2及び刊行物4に記載された発明とは技術分野が相違していることから、刊行物2あるいは刊行物4に記載された発明に基づいて本願発明1に想到することはたとえ当業者であっても容易とはいえない。 第3 むすび 本願発明1は、上記第2の3のとおり、引用発明1又は3と同一ではないし、当業者が引用発明1及び3に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。 また、本願発明2ないし8は、本願発明1に係る発明をさらに限定した発明であるから、引用発明1又は3と同一ではないし、当業者が引用発明1及び3に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。 したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-02-06 |
出願番号 | 特願2012-524319(P2012-524319) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(C08L)
P 1 8・ 121- WY (C08L) P 1 8・ 537- WY (C08L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 安田 周史 |
特許庁審判長 |
小野寺 務 |
特許庁審判官 |
西山 義之 小柳 健悟 |
発明の名称 | 照明装置 |
代理人 | 津軽 進 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 笛田 秀仙 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 浅村 敬一 |