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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F21V 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F21V 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 F21V |
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管理番号 | 1324454 |
審判番号 | 不服2015-14130 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-07-28 |
確定日 | 2017-02-21 |
事件の表示 | 特願2010-141399号「照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月12日出願公開、特開2012-9155号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年6月22日の出願であって、平成26年2月21日付けで拒絶理由が通知され、同年4月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月16日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年11月26日に意見書及び手続補正書が提出され、平成27年1月19日付けで手続補正指令書(方式)が通知され、同年1月27日に手続補正書が提出され、同年4月28日付けで補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定がされ、同年7月28日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、平成28年9月26日付けで拒絶理由が通知され、同年11月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?6に係る発明(以下「本願発明1?6」という。)は、平成28年11月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 複数の発光ダイオードと、 複数の前記発光ダイオードを配置した回路基板と、 前記回路基板を収容し、且つ、複数の前記発光ダイオードの発光を出射させるための開口または光透過面を有するハウジング部材と、 前記回路基板から隔離して、複数の前記発光ダイオードを覆った状態で移動できるように、前記開口または前記光透過面に配設された1枚の波長変換カバーと、を備え、 前記1枚の波長変換カバーは、 各前記発光ダイオードの発光波長を、第1の発光波長に変換する第1のサブ領域と、第2の発光波長に変換する第2のサブ領域とを含む複数の波長変換領域を有し、 前記第1のサブ領域と前記第2のサブ領域とは、蛍光体組成、蛍光体量または厚みの少なくとも1つが互いに異なり、 複数の前記発光ダイオードは、それぞれ同時に前記第1のサブ領域または前記第2のサブ領域のいずれか一方に対向し、それぞれが前記第1のサブ領域に対向する位置から前記第2のサブ領域に対向する位置、または、それぞれが前記第2のサブ領域から前記第1のサブ領域に対向する位置に前記波長変換カバーを移動させることにより、出射される光の発光色が変化することを特徴とする照明装置。 【請求項2】 前記第1のサブ領域と前記第2のサブ領域とは、互いに異なる組成の蛍光体を含有する少なくとも2層の蛍光体層の積層体であり、垂直断面における厚みが互いに異なる請求項1に記載の照明装置。 【請求項3】 出射される光の色度が、XYZ表色系のxy色度図における黒体放射軌跡を含む請求項1または2に記載の照明装置。 【請求項4】 前記複数の波長変換領域が蛍光体を含有するシリコーン系エラストマーからなる請求項1?3の何れか1項に記載の照明装置。 【請求項5】 前記波長変換領域を支持する支持基材を有する請求項1?4の何れか1項に記載の照明装置。 【請求項6】 前記ハウジング部材は、前記1枚の波長変換カバーを支持して前記面方向に移動させるスライド溝を有する請求項1?5の何れか1項に記載の照明装置。」 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由の概要 (1)この出願の請求項1、2、8?11、13及び15に係る発明(平成26年4月25日に提出された手続補正書により補正された請求項に係る発明)は、下記刊行物1に記載された発明であるか、あるいは下記刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 (2)この出願の請求項3?7、12及び14に係る発明(平成26年4月25日に提出された手続補正書により補正された請求項に係る発明)は、下記刊行物1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物1:特開2009-245712号公報 刊行物2:特開2008-186777号公報 2 当審の判断 2-1 刊行物の記載事項 (1)刊行物1の記載事項 刊行物1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。 (1a)「【請求項1】 LEDチップを光源として配置した基板と、 前記基板の前記光源側に配置される蛍光物質を含む透光性樹脂板とを有する照明器具において、 前記基板と前記透光性樹脂板とは対面するともに、両者を通る仮想軸を中心として少なくとも一方が回転可能なものとし、 前記基板には1つ以上のLEDチップにより前記仮想軸を略基点とし直線状光源として設けられ、 前記透光性樹脂板は面上の前記仮想軸が通る点を略基点とし、前記直線状光源の延びる方向と同じ方向で2種類の蛍光体領域を有し、 2種類の前記蛍光体領域の境界線の位置が、前記基板又は、前記透光性樹脂板の少なくとも一方が前記仮想軸を中心として回転することにより、前記直線状光源上の前記直線状光源の延びる方向で変化することを特徴とする照明器具。」 (1b)「【0001】 本発明は、特に光源としてLEDを用いた照明器具に関するものである。」 (1c)「【0007】 本発明は、上記事情に鑑み、安価に多くの色温度に調整を行うことができる照明器具を提供することを目的とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 上記課題解決するためにこの発明の請求項1の照明器具は、LEDチップを光源として配置した基板と、前記基板の前記光源側に配置される蛍光物質を含む透光性樹脂板とを有する照明器具において、前記基板と前記透光性樹脂板とは対面するともに、両者を通る仮想軸を中心として少なくとも一方が回転可能なものとし、前記基板には1つ以上のLEDチップにより前記仮想軸を略基点とし直線状光源として設けられ、前記透光性樹脂板は面上の前記仮想軸が通る点を略基点とし、前記直線状光源の延びる方向と同じ方向で2種類の蛍光体領域を有し、2種類の前記蛍光体領域の境界線の位置が、前記基板又は、前記透光性樹脂板の少なくとも一方が前記仮想軸を中心として回転することにより、前記直線状光源上の前記直線状光源の延びる方向で変化することを特徴とするものである。 【0009】 ・・・ 【0010】 ・・・ 【0011】 ・・・ 【発明の効果】 【0012】 本発明によれば、簡易な構成により、多くに種類の色温度に調整を行うことができる照明器具を、安価に得ることができるものである。」 (1d)「【0013】 以下、本発明の第一の実施形態にについて、図1及至図4を参照して説明する。図1は、本発明の照明器具の第一の実施形態にかかる要部の斜視図であり、図2は図1におけるA-A線断面、図3は直線状光源を搭載した基板の正面図、図4は透光性樹脂板の正面図である。 【0014】 図1に示すように、本実施形態の照明器具10は、直線状光源2を搭載した基板1と、この直線状光源2から照射される光を受ける上方に透光性樹脂に蛍光体を含有させた透光性樹脂板3を少なくとも有するものである。 【0015】 この基板1と透光性樹脂板3は仮想軸Lがそれぞれの中心O及びPを通るように、回転可能に配置するものであり、図示を省略する回転軸に固定したり、ハウジングを設け、外周を摺動可能に支持することにより、保持されるものである。 【0016】 ・・・ 【0017】 次に、図2に示すものは、図1に示す照明器具10のA-A線に沿う断面を示すものであり、基板1上の直線状光源2から照射された光が透光性樹脂板3を透過できるよう配置されてなるものである。 【0018】 図3は、本実施形態の照明器具10の基板1をさらに詳細に示す説明図であり、基板1は樹脂等からなり、必要により適宜な配線パターンを有する。この基板1上には、中心Oを基点として複数のLEDチップ2aが直線状に配置され、直線状光源2として前記基板1の半径と略同一の長さで配置されている。なお、LEDチップ2aは厳密に中心Oが基点とならず、若干の間隔を設けて配置しても良いものである。 【0019】 なお、本実施形態では、直線状光源2を複数のLEDチップ2aにより構成してなるものであるが、これに限らず、導光体を用いて、1個または、複数個のLEDチップにより直線状光源としても良いものである。また、直線状光源2上にレンズ等を配置することも当然可能である。さらに、本実施形態では、LEDチップ2aに青色発光のものを用いている。 【0020】 図4は、本実施形態の照明器具10に用いる透光性樹脂板3を詳細に示す説明であり、透光性樹脂に蛍光体を分散した材料によりなるものであり、第一蛍光体領域3aは本実施形態の場合、前記LEDチップ2aの青色と蛍光体による略黄色により形成される白色の色温度が5000Kとなるような蛍光体が用いられ、中心Pから回転するに従いその半径すなわち外周(境界線M)位置が所定の割合で徐々に長く(中心から遠く)なるような形状とされている。 【0021】 また、第二蛍光体領域3bは、本実施形態の場合、前記LEDチップ2aの青色と蛍光体による略黄色により形成される白色の色温度が2800Kとなるような蛍光体が用いられ、外周は中心が中心Pで所定の半径を有する円形とされ、前記第一蛍光体領域3aを中心P近傍に有するものとされている。従って、第一の蛍光体領域3aと第二の蛍光体領域3bの境界線Mは、中心P(仮想軸L)から螺旋状に広がっていくものとなっている。 【0022】 ・・・ 【0023】 以上の構成により、本実施形態による照明器具10によれば、直線状光源2上に透光性樹脂板3が配置され、基板1または透光性樹脂板3が回転することにより、前記直線状光源2上の第一蛍光体領域3a及び第二蛍光体領域3bの占める割合が徐々に変化、即ち、境界線Mが直線状光源2上を移動することで、本照明器具10から照射される照射光の色温度を2800Kから5000Kの範囲で、調整することが可能になる。なお、本実施形態においては、これら基板1及び/又は透光性樹脂板3を回転させる機構については、詳細な説明は省略するが、手動によるものや、モーター等による電気的な駆動機構を設けても良い。 【0024】 次に、図5に示すものは、本発明の第二の実施形態を示すものであり、上記第一の実施実施形態とは、透光性樹脂板3の構成が異なるのみであり、他の構成については、上記の第一の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。 【0025】 ・・・ 【0026】 ・・・ 【0027】 以上の構成により、第一の蛍光体領域3aと第二の蛍光体領域3bの境界線M1?M4が、4種類の位置に設けられるものとなる。これにより、前記第一の実施形態と同様に、基板1上の直線状光源2と透光性樹脂板3の少なくとも一方を回転させその位置関係を変化させることにより、直線状光源2上の前記第一の蛍光体領域3aと第二の蛍光体領域3bの割合が変化し、直線状光源2上に位置する境界線がM1?M4に変化するごとにそれぞれの色温度を生じるものとなる。」 (1e)刊行物1には、以下の図が示されている。 (2)刊行物2の記載事項 刊行物2には、以下の事項が記載されている。 (2a)「【請求項1】 発光素子で発光した光の光路中に、第一の蛍光体が存在する領域と存在しない領域を持つ第一の部材と、第二の蛍光体が存在する領域と存在しない領域を持つ第二の部材が設けられるとともに、前記第一の蛍光体が存在する領域と前記第二の蛍光体が存在する領域の重なる面積が変更できるように、前記第一の部材と前記第二の部材が配置されたことを特徴とする照明装置。」 (2b)「【0001】 本発明は、照明用光源装置に関する。主に、展示品や写真撮影時の被写体等の照明用光源装置に関する。また、液晶表示装置、及び表示素子を照明するバックライト等の照明装置にも関する。」 (2c)「【0013】 複数種類の蛍光体を用いて、異なる蛍光体の重なり合う面積を変えることで、大幅な色度変更が可能となり、自在な分光成分の制御ができる照明装置の提供が可能となる。」 (2d)「【0015】 本発明の第一の実施例の照明装置を図1?図5を用いて説明する。図1は、本発明による照明装置の光源部の構成を模式的に示す斜視図である。発光源1は基板2の上に表面実装されている。発光源1は本実施例においては青色発光ダイオードを想定している。ただし、青色に光る光源であれば冷陰極間やEL素子等であってもかまわない。基板2はPCB等のガラエポ基板やFPC等のフレキシブル基板が考えられる。 【0016】 ・・・ 【0017】 第一の蛍光層4を具備した第一の透明板3の上に、第二の蛍光層5を具備した第二の透明板6を配置する。第二の透明板6にも第一の透明板3同様に溝が掘り込まれている。本実施例においては溝の深さ、幅、ピッチは第一の透明板3と同様とした。ピッチは透明板3のピッチと同様である必要があるが、深さと幅は同じである必要はない。また、透明板と透明樹脂の材質に関しても、第一の透明板3と同様である。透明樹脂に分散する蛍光体であるが、本実施例においては、600nm以上にピーク波長を有する赤色蛍光体を使用する。赤色蛍光体としては、CaSやSrS等の硫化物と希土類ドーパントとからなるカルコゲナイド化合物蛍光体や、(Ca、Sr)_(2)Si_(5)N_(8)やCaSiN_(2)やCaAlSiN_(3)O_(12)等と希土類ドーパントとからなる蛍光材料がある。 【0018】 図2は、本発明の照明装置の光源の機能を示す模式的な断面図である。発光源1からでた発光光7は第一の蛍光層4を通ることで発光光と蛍光光の混色光になる。本実施例においては、発光光440nm?490nmにピーク波長を持つ青色光であり、第一の蛍光光は、500nm?550nmにピーク波長を持つ緑色光である。したがって、第一の蛍光層4を通った第一の混色光8は青色と緑色の混色光である。第一の混色光8は第二の蛍光層5を通ることで、第一の混色光8と第二の蛍光光の混色光となる。ここで、第二の蛍光光は600nm以上のピーク波長を持つ赤色光である。赤色蛍光体の多くはその励起波長に緑色を含んでいる。そのため、第二の蛍光層5を通る際、青色光及び緑色光の一部を吸収し赤色光に変換する。図4に図2の場合の分光スペクトルのイメージグラフを示す。青成分、緑成分、赤成分の強度がほぼ均等に分布している。 【0019】 図3も本発明の照明装置の光源の機能を示す模式的な断面図である。図2と異なる点は第二の蛍光層5のある第二の透明基板の位置である。図3は第一の混色光8の大部分が当たる位置に、第二の蛍光層5が配置されていたが、図3においては、第一の混色光の大部分は第二の蛍光層5にあたらない位置に第二の透明板6をスライドしてある。そのため、青成分と緑成分が抜けやすくなっている。図2の第一の混色光8の大部分が第二の蛍光体5にあたる場合と比較すると、全体的な色調としては青緑方向にシフトする。図5に図3の場合の分光スペクトルのイメージグラフを示す。図4と比較して、青成分、緑成分の強度が高まり、連動して赤成分の強度がやや低くなっている。このスライド量を調整することで出射光の色成分の調整をすることが可能となる。」 (2e)刊行物2には、以下の図が示されている。 2-2 刊行物1に記載された発明 刊行物1には、「光源としてLEDを用いた照明器具に関する」技術について開示されるところ(摘示(1b))、その特許請求の範囲の請求項1(摘示(1a))には、 「LEDチップを光源として配置した基板と、 前記基板の前記光源側に配置される蛍光物質を含む透光性樹脂板とを有する照明器具において、 前記基板と前記透光性樹脂板とは対面するともに、両者を通る仮想軸を中心として少なくとも一方が回転可能なものとし、 前記基板には1つ以上のLEDチップにより前記仮想軸を略基点とし直線状光源として設けられ、 前記透光性樹脂板は面上の前記仮想軸が通る点を略基点とし、前記直線状光源の延びる方向と同じ方向で2種類の蛍光体領域を有し、 2種類の前記蛍光体領域の境界線の位置が、前記基板又は、前記透光性樹脂板の少なくとも一方が前記仮想軸を中心として回転することにより、前記直線状光源上の前記直線状光源の延びる方向で変化することを特徴とする照明器具。」(摘示(1a))と記載されている。 また、刊行物1には、上記照明器具の実施の形態として、基板1と透光性樹脂板3は、外周がハウジングに摺動可能に支持されること(摘示(1d)段落【0015】)が記載されている。 以上によれば、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 なお、引用発明における各構成要素の符号は、引用発明に係る発明の実施の形態(摘示(1d)(1e))を参酌して付与した。 「LEDチップ2aを光源として配置した基板1と、 前記基板1の前記光源側に配置される蛍光物質を含む透光性樹脂板3とを有する照明器具10において、 前記基板1と前記透光性樹脂板3とは対面するともに、両者を通る仮想軸Lを中心として少なくとも一方が回転可能なものとし、 前記基板1には1つ以上のLEDチップ2aにより前記仮想軸Lを略基点とし直線状光源2として設けられ、 前記透光性樹脂板3は面上の前記仮想軸Lが通る点を略基点とし、前記直線状光源2の延びる方向と同じ方向で2種類の蛍光体領域3a、3bを有し、 2種類の前記蛍光体領域3a、3bの境界線M、M1?M4の位置が、前記基板1又は、前記透光性樹脂板3の少なくとも一方が前記仮想軸Lを中心として回転することにより、前記直線状光源2上の前記直線状光源2の延びる方向で変化するものであり、 前記基板1と透光性樹脂板3は、外周がハウジングに摺動可能に支持される、照明装置。」 2-3 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「1つ以上のLEDチップ2a」は、その実施の形態に照らして「複数のLEDチップ2a」として特定することができるから(摘示(1d)段落【0019】)、本願発明1の「複数の発光ダイオード」に相当するものといえる。 イ 引用発明の「LEDチップ2aを光源として配置した基板1」は、上記アをも踏まえると、本願発明1の「複数の前記発光ダイオードを配置した回路基板」に相当するものといえる。 ウ 引用発明の「ハウジング」と、本願発明1の「前記回路基板を収容し、且つ、複数の前記発光ダイオードの発光を出射させるための開口または光透過面を有するハウジング部材」とは、その技術的意義において、「ハウジング部材」の限度で共通するものといえる。 エ 引用発明の「蛍光物質を含む透光性樹脂板3」は、LEDチップ2aから出射される光の色温度を調整するものであるから(摘示(1c)、摘示(1d)段落【0023】、段落【0027】)、光の波長変換機能を有することは技術的に明らかであり、それが1枚で構成されることも図1及び図2(摘示(1e))に示されるとおり明らかである。 さらに、引用発明は、「前記基板1と前記透光性樹脂板3とは対面するともに、両者を通る仮想軸Lを中心として少なくとも一方が回転可能なものとし」て構成されるものであるから、透光性樹脂板3は、基板1から隔離して、LEDチップ2aを覆った状態で回転移動できるよう構成されたものと理解することができる。 してみると、引用発明の上記「透光性樹脂板3」と本願発明1の「前記回路基板から隔離して、複数の前記発光ダイオードを覆った状態で移動できるように、前記開口または前記光透過面に配設された1枚の波長変換カバー」とは、「前記回路基板から隔離して、複数の前記発光ダイオードを覆った状態で移動できるように配設された1枚の波長変換カバー」の限度で共通するものといえる。 オ 引用発明の「蛍光物質を含む透光性樹脂板3」は、「面上の前記仮想軸Lが通る点を略基点とし、前記直線状光源2の延びる方向と同じ方向で2種類の蛍光体領域3a、3bを有し」て構成されるものであるところ、上記「2種類の蛍光体領域3a、3b」は、それぞれ各発光波長に変換する「第一蛍光体領域3a」及び「第二蛍光体領域3b」として位置付けされるものであり、それら蛍光体領域3a、3bの各蛍光体組成が異なることも明らかである(摘示(1d)段落【0020】、段落【0021】)。 そして、本願発明1における「前記1枚の波長変換カバーは、・・・第1のサブ領域と、・・・第2のサブ領域とを含む複数の波長変換領域を有し」との事項は、その技術的意義に照らして、「1枚の波長変換カバー」が「複数の波長変換領域を有し」て構成されるものであり、「複数の波長変換領域」のそれぞれが「第1のサブ領域と、・・・第2のサブ領域とを含む」構成であることを特定したものと解するのが相当であるから(本願明細書の段落【0016】等にもそのように記載されている。)、引用発明において、「蛍光物質を含む透光性樹脂板3」を「面上の前記仮想軸Lが通る点を略基点とし、前記直線状光源2の延びる方向と同じ方向で2種類の蛍光体領域3a、3bを有し」て構成することと、本願発明1において、「前記1枚の波長変換カバーは、各前記発光ダイオードの発光波長を、第1の発光波長に変換する第1のサブ領域と、第2の発光波長に変換する第2のサブ領域とを含む複数の波長変換領域を有し、前記第1のサブ領域と前記第2のサブ領域とは、蛍光体組成、蛍光体量または厚みの少なくとも1つが互いに異な」るように構成することとは、「前記1枚の波長変換カバーは、各前記発光ダイオードの発光波長を、第1の発光波長に変換する第1のサブ領域と、第2の発光波長に変換する第2のサブ領域とを含む波長変換領域を有し、前記第1のサブ領域と前記第2のサブ領域とは、蛍光体組成、蛍光体量または厚みの少なくとも1つが互いに異な」るように構成する限度で共通するものといえる。 カ 引用発明は、「前記透光性樹脂板は面上の前記仮想軸が通る点を略基点とし、前記直線状光源の延びる方向と同じ方向で2種類の蛍光体領域を有し」て構成され、「2種類の前記蛍光体領域3a、3bの境界線の位置が、前記基板1又は、前記透光性樹脂板3の少なくとも一方が前記仮想軸Lを中心として回転することにより、前記直線状光源2上の前記直線状光源2の延びる方向で変化するもの」であるところ、かかる構成は、透光性樹脂板3の回転移動により、出射される光の発光色を変化させる構成ということもできるから、本願発明1の「複数の前記発光ダイオードは、それぞれ同時に前記第1のサブ領域または前記第2のサブ領域のいずれか一方に対向し、それぞれが前記第1のサブ領域に対向する位置から前記第2のサブ領域に対向する位置、または、それぞれが前記第2のサブ領域から前記第1のサブ領域に対向する位置に前記波長変換カバーを移動させることにより、出射される光の発光色が変化する」という構成と、「前記波長変換カバーを移動させることにより、出射される光の発光色が変化する」という限度で共通するものといえる。 したがって、本願発明1と引用発明とは、 「複数の発光ダイオードと、 複数の前記発光ダイオードを配置した回路基板と、 ハウジング部材と、 前記回路基板から隔離して、複数の前記発光ダイオードを覆った状態で移動できるように配設された1枚の波長変換カバーと、を備え、 前記1枚の波長変換カバーは、 各前記発光ダイオードの発光波長を、第1の発光波長に変換する第1のサブ領域と、第2の発光波長に変換する第2のサブ領域とを含む波長変換領域を有し、 前記第1のサブ領域と前記第2のサブ領域とは、蛍光体組成、蛍光体量または厚みの少なくとも1つが互いに異なり、 前記波長変換カバーを移動させることにより、出射される光の発光色が変化する、照明装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点1〕 「ハウジング部材」に対する「回路基板」及び「波長変換カバー」設置構成について、 本願発明1は、「ハウジング部材」が「前記回路基板を収容し、且つ、複数の前記発光ダイオードの発光を出射させるための開口または光透過面を有する」ものとして構成され、「波長変換カバー」が「前記開口または前記光透過面に配設され」るものであるのに対し、 引用発明は、「前記基板1と透光性樹脂板3は、外周がハウジングに摺動可能に支持される」ものである点。 〔相違点2〕 「波長変換カバー」の構成及びその作動の態様について、 本願発明1は、「波長変換カバー」が「第1のサブ領域と第2のサブ領域とを含む複数の波長変換領域を有」するものとして構成され、「複数の前記発光ダイオードは、それぞれ同時に前記第1のサブ領域または前記第2のサブ領域のいずれか一方に対向し、それぞれが前記第1のサブ領域に対向する位置から前記第2のサブ領域に対向する位置、または、それぞれが前記第2のサブ領域から前記第1のサブ領域に対向する位置に前記波長変換カバーを移動させる」ように作動させるのに対し、 引用発明は、「前記透光性樹脂板3は面上の前記仮想軸Lが通る点を略基点とし、前記直線状光源2の延びる方向と同じ方向で2種類の蛍光体領域3a、3bを有」するものとして構成され、「2種類の前記蛍光体領域の境界線の位置が、前記基板又は、前記透光性樹脂板の少なくとも一方が前記仮想軸を中心として回転することにより、前記直線状光源上の前記直線状光源の延びる方向で変化する」ように作動させる点。 2-4 判断 事案に鑑み、上記相違点2について検討する。 (1)刊行物1の記載によれば、引用発明は、「安価に多くの色温度に調整を行うことができる照明器具を提供すること」(摘示(1c)段落【0007】)を解決課題とし、かかる課題を解決するために、少なくとも「前記透光性樹脂板は面上の前記仮想軸が通る点を略基点とし、前記直線状光源の延びる方向と同じ方向で2種類の蛍光体領域を有し、2種類の前記蛍光体領域の境界線の位置が、前記基板又は、前記透光性樹脂板の少なくとも一方が前記仮想軸を中心として回転することにより、前記直線状光源上の前記直線状光源の延びる方向で変化する」という解決手段(以下「構成A」という。)を採用したことが明らかである(摘示(1c)段落【0008】)。 さらに、その効果は、「簡易な構成により、多くに種類の色温度に調整を行うことができる照明器具を、安価に得ることができる」(摘示(1c)段落【0012】)というものであり、より具体的には、「直線状光源2上に透光性樹脂板3が配置され、基板1または透光性樹脂板3が回転することにより、前記直線状光源2上の第一蛍光体領域3a及び第二蛍光体領域3bの占める割合が徐々に変化、即ち、境界線Mが直線状光源2上を移動することで、本照明器具10から照射される照射光の色温度を2800Kから5000Kの範囲で、調整することが可能になる。」(摘示(1d)段落【0023】)、及び「基板1上の直線状光源2と透光性樹脂板3の少なくとも一方を回転させその位置関係を変化させることにより、直線状光源2上の前記第一の蛍光体領域3aと第二の蛍光体領域3bの割合が変化し、直線状光源2上に位置する境界線がM1?M4に変化するごとにそれぞれの色温度を生じるものとなる。」(摘示(1d)段落【0027】)というものであるから、引用発明は、上記構成Aを前提とし、直線状光源上の2種類の蛍光体領域の占める割合を変化させることで一の発明としての作用効果を奏するものといえる。 そして、上記構成Aは、「前記透光性樹脂板は面上の前記仮想軸が通る点を略基点とし、前記直線状光源の延びる方向と同じ方向で2種類の蛍光体領域を有」するものとして構成することに意義があり、そもそも2種類の蛍光体領域を含む波長変換領域を「複数」設けることは想定されるものではない。さらに、上記構成Aは「2種類の前記蛍光体領域の境界線の位置が、前記基板又は、前記透光性樹脂板の少なくとも一方が前記仮想軸を中心として回転することにより、前記直線状光源上の前記直線状光源の延びる方向で変化する」ように作動させることに意義があり、そもそも直線状光源を複数のLEDチップにて構成した場合に、それらLEDチップが「それぞれ同時に2種類の蛍光体領域のいずれか一方に対向するように波長変換カバー(蛍光物質を含む透光性樹脂板)を移動させる」ように作動させることを企図するものでもない。 したがって、引用発明に基づいて、上記相違点2に係る本願発明1の構成が当業者にとって容易想到ということはできない。 (2)また、刊行物2には、発光素子で発光した光の光路中に、第一の蛍光体が存在する領域と存在しない領域を持つ第一の部材と、第二の蛍光体が存在する領域と存在しない領域を持つ第二の部材が設けられるとともに、前記第一の蛍光体が存在する領域と前記第二の蛍光体が存在する領域の重なる面積が変更できるように、前記第一の部材と前記第二の部材が配置された照明装置が記載されているが(摘示(2a))、かかる照明装置は、第一の蛍光体が存在する領域と存在しない領域を持つ第一の部材と、第二の蛍光体が存在する領域と存在しない領域を持つ第二の部材とを具備することを前提として、第一部材と第二部材との異なる蛍光体の重なり合う面積を変えることで色度変更を可能とするものであるから(摘示(2c))、かかる構成と、本願発明1における「第1のサブ領域と第2のサブ領域とを含む複数の波長変換領域を有」する「波長変換カバー」を用いて、「複数の前記発光ダイオードは、それぞれ同時に前記第1のサブ領域または前記第2のサブ領域のいずれか一方に対向し、それぞれが前記第1のサブ領域に対向する位置から前記第2のサブ領域に対向する位置、または、それぞれが前記第2のサブ領域から前記第1のサブ領域に対向する位置に前記波長変換カバーを移動させる」構成とは、技術的に異なることが明らかである。 したがって、引用発明において、刊行物2に記載された技術事項を参考としても、上記相違点2に係る本願発明1の構成に至るものではない。 (3)そして、本願発明1は、上記相違点2に係る「波長変換カバー」の構成及びその作動の態様によって、「光源自身を置き換えることなく、照明光の色を適宜変更することができる照明装置を提供することができる」(段落【0012】)との効果、より具体的には、「波長変換カバー2のLED1に対する対向領域を変更することにより、発光色(例えば、白色と電球色)を変化させることができる。このような波長変換カバー2を用いることにより、LED照明装置10のLED1自身を置き換えることなく、発光色を変化させることができる。従って、LED照明装置10を設置した場合において、照明の雰囲気を変えたくなった場合には、波長変換カバー2をスライドさせるだけで発光色を変化することができる。」(段落【0025】)という格別の効果を奏するものである。 2-5 小活 以上のとおり、本願発明1は引用発明と相違点1及び2において相違するものであるから、本願発明1は刊行物1に記載された発明であるということはできないし、また、上記「2-4」で述べたとおり相違点2は容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点1を検討するまでもなく、本願発明1は、刊行物1に記載された発明に基づいて、あるいは刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本願発明2?6は、本願発明1をさらに限定したものであるから、本願発明1と同様に当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。 2 当審拒絶理由の判断 平成28年11月28日付けの手続補正により、本願の請求項1?6は、上記「第2」のとおり補正され、この補正により、上記理由は解消した。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-02-09 |
出願番号 | 特願2010-141399(P2010-141399) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(F21V)
P 1 8・ 113- WY (F21V) P 1 8・ 121- WY (F21V) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 柿崎 拓、栗山 卓也 |
特許庁審判長 |
和田 雄二 |
特許庁審判官 |
小原 一郎 氏原 康宏 |
発明の名称 | 照明装置 |
代理人 | 江川 勝 |