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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05B
管理番号 1324489
審判番号 不服2015-10172  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-01 
確定日 2017-02-01 
事件の表示 特願2010-281854「有機発光表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月22日出願公開,特開2012- 59687〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
(1) 手続の経緯
本願は,平成22年12月17日(パリ条約による優先権主張 2010年9月7日 韓国)の出願であって,平成26年8月12日付けで拒絶の理由が通知され,同年11月19日に手続補正がなされるとともに意見書が提出され,平成27年1月28日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年6月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同時に手続補正がなされ,当審において,平成28年4月19日付けで拒絶の理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年7月20日に手続補正がなされるとともに意見書が提出されたものである。

(2) 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は,平成28年7月20日になされた手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載の事項により特定されるものであるところ,請求項1に係る発明は,その特許請求の範囲に記載されたとおりの次のものであると認める。

「 第1画素,第2画素及び第3画素が行列状に配置された有機発光表示装置であって,
前記有機発光表示装置は,
基板,
前記基板上に形成されているゲート線,
前記ゲート線と絶縁して交差しているデータ線,
前記基板上に形成されて赤色画素である前記第1画素に駆動電圧を伝達する第1駆動電源線,緑色画素である前記第2画素に駆動電圧を伝達する第2駆動電源線及び青色画素である前記第3画素に駆動電圧を伝達する第3駆動電源線を含む駆動電源線,
前記ゲート線及びデータ線と連結しているスイッチング薄膜トランジスタ,
前記スイッチング薄膜トランジスタ及び前記駆動電源線と連結している駆動トランジスタ,
前記駆動トランジスタと連結している第1電極,
前記第1電極上に形成されている有機発光部材,
前記有機発光部材上に形成されている第2電極を含み,
前記第1駆動電源線の厚さ,第2駆動電源線の厚さ及び第3駆動電源線の厚さが互いに同一であり,前記第1駆動電源線の線幅,第2駆動電源線の線幅及び第3駆動電源線の線幅は各々,第1画素の消費電流,第2画素の消費電流及び第3画素の消費電流に比例し,
前記第3駆動電源線の線幅は,前記第1駆動電源線の線幅及び前記第2駆動電源線の線幅より大きく,
前記第1駆動電源線の電圧降下値,前記第2駆動電源線の電圧降下値及び前記第3駆動電源線の電圧降下値は互いに同一であることを特徴とする,有機発光表示装置。」(以下,「本願発明」という。)

2 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は概ね次のとおりである。

本件出願の請求項1ないし4に係る発明は,その優先権主張の日(以下,「優先日」という。)前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用例1:特開2002-151276号公報
引用例2:国際公開第03/091977号
引用例3:特開2010-54788号公報
引用例4:特開2010-49056号公報

3 引用例の記載事項
優先日前に頒布され,当審拒絶理由で引用例1として引用された刊行物である特開2002-151276号公報には,次の事項が図とともに記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

(1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のEL素子と,複数の電源供給線と,複数の引き回し配線と,外部接続端子とを有する表示装置であって,
前記外部接続端子と前記複数の電源供給線とは前記複数の引き回し配線を介して電気的に接続されており,
前記複数の電源供給線は,前記複数のEL素子が有する画素電極に電気的に接続されており,
前記複数のEL素子を駆動させるときに前記複数の電源供給線を流れる電流の絶対値が大きいほど,前記複数の電源供給線にそれぞれ接続されている前記複数の引き回し配線の幅が大きいことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1において,前記複数のEL素子を駆動させるときに前記複数の電源供給線を流れる電流の絶対値が大きいほど,前記複数の電源供給線の幅が大きいことを特徴とする表示装置。
・・・(中略)・・・
【請求項9】
複数の画素と,複数の電源供給線と,複数の引き回し配線と,外部接続端子とを有する表示装置であって,
前記複数の画素は,前記複数の電源供給線のいずれか1つと,EL素子と,スイッチング用TFTと,EL駆動用TFTとを有しており,
前記EL素子は画素電極と,対向電極と,前記画素電極と前記対向電極の間に設けられたEL層とを有しており,
前記スイッチング用TFTは前記EL駆動用TFTのスイッチングを制御しており,
前記EL駆動用TFTによって,前記複数の電源供給線のいずれか1つの電位が,前記EL素子が有する画素電極に与えられ,
前記外部接続端子と前記複数の電源供給線とは前記複数の引き回し配線を介して電気的に接続されており,
前記EL素子を駆動させるときにおける,前記EL素子が有する前記EL層の電流密度が大きいほど,前記複数の電源供給線にそれぞれ接続されている前記複数の引き回し配線の幅が大きいことを特徴とする表示装置。
・・・(中略)・・・
【請求項12】
請求項9乃至請求項11のいずれか1項において,前記EL素子を駆動させるときにおける,前記EL素子が有する前記EL層の電流密度が大きいほど,前記複数の電源供給線の幅が大きいことを特徴とする表示装置。」

(2) 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体素子(半導体薄膜を用いた素子)を基板上に作り込んで形成されたEL(エレクトロルミネッセンス)表示装置及びそのEL表示装置を表示部に用いる電子機器(電子デバイス)に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年,基板上にTFTを形成する技術が大幅に進歩し,アクティブマトリクス型表示装置への応用開発が進められている。そして,アクティブマトリクス型表示装置の中でも特に,自発光型素子としてEL素子を有したアクティブマトリクス型EL表示装置の研究が活発化している。EL表示装置は有機ELディスプレイ(OELD:Organic EL Display)又は有機ライトエミッティングダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)とも呼ばれている。
【0003】
EL表示装置は,液晶表示装置と異なり自発光型である。EL素子は一対の電極間にEL層が挟まれた構造となっているが,EL層は通常,積層構造となっている。代表的には,イーストマン・コダック・カンパニーのTangらが提案した「正孔輸送層/発光層/電子輸送層」という積層構造が挙げられる。この構造は非常に発光効率が高く,現在,研究開発が進められているEL表示装置は殆どこの構造を採用している。
・・・(中略)・・・
【0008】
図14に,代表的なアクティブマトリクス型EL表示装置(以下,EL表示装置)の構造を示す。図14(A)はEL表示装置の画素部とその駆動回路の配置を示している。901は画素部,902はソース信号線駆動回路,903はゲート信号線駆動回路,905は引き出し端子である。

【図14】


【0009】
画素部901は複数の画素906を有している。904は画素部901に設けられた電源供給線であり,全ての画素906が有するEL素子の画素電極に電位を与えている。電源供給線904は引き回し配線907に接続されており,引き回し配線907は引き出し端子905を介して外部の電源に接続されている。
【0010】
ゲート信号線駆動回路903からゲート信号線913に入力される選択信号によって画素906が選択される。そしてソース信号線駆動回路902からソース信号線912に入力されるビデオ信号によって,電源供給線904の電位が選択された画素906に与えられ,画素906に画像の一部が表示される。
【0011】
図14(A)に示した画素906のうち,R(赤),G(緑),B(青)にそれぞれ対応する画素の回路図を図14(B)に示す。
【0012】
図14(B)において,R用画素906rと,G用画素906gと,B用画素906bは,共通のゲート信号線913を有している。また,R用画素906rはR用ソース信号線912rを,G用画素906gはG用ソース信号線912gを,B用画素906bはB用ソース信号線912bをそれぞれ有している。
【0013】
R用画素906rと,G用画素906gと,B用画素906bとは,スイッチング用TFT910及びEL駆動用TFT911をそれぞれ有している。またR用画素906rはR用EL素子915rを,G用画素906gはG用EL素子915gを,B用画素906bはB用EL素子915bをそれぞれ有している。
【0014】
ゲート信号線913に選択信号が入力されると,ゲート信号線913にそのゲート電極が接続されたスイッチング用TFT910が全てオンの状態になる。この状態を本明細書ではゲート信号線913が選択されていると呼ぶ。
【0015】
そして,R用ソース信号線912r,G用ソース信号線912g及びB用ソース信号線912bに入力されたビデオ信号が,オンの状態のスイッチング用TFT910を介して,R用EL素子915r,G用EL素子915g及びB用EL素子915bにそれぞれ入力され,EL駆動用TFT911のゲート電極に入力される。
【0016】
ビデオ信号がEL駆動用TFT911のゲート電極に入力されると,R用電源供給線914rの電位がR用EL素子915rの画素電極に,G用電源供給線914gの電位がG用EL素子915gの画素電極に,B用電源供給線914bの電位がB用EL素子915bの画素電極にそれぞれ与えられる。その結果,R用EL素子915r,G用EL素子915g及びB用EL素子915bが発光し,R用画素906r,G用画素906g及びB用画素906bが表示を行う。
【0017】
ところで,EL表示装置には大きく分けて四つのカラー化表示方式があり,図14に示したEL表示装置のようにR(赤)G(緑)B(青)に対応した三種類の有機EL材料からなるEL素子を形成する方式,白色発光のEL素子とカラーフィルターを組み合わせた方式,青色又は青緑発光のEL素子と蛍光体(蛍光性の色変換層:CCM)とを組み合わせた方式,陰極(対向電極)に透明電極を使用してRGBに対応したEL素子を重ねる方式がある。
【0018】
そして一般的には,EL層にかかる電圧が同じであっても,EL層に用いられている有機EL材料によって,EL層の発光輝度は異なる。図15に各色のEL層の電圧-輝度特性を示す。図15に示すように,EL層への印加電圧に対する発光輝度は,各色のEL素子に用いられる有機EL材料によって異なっている。これは,有機EL材料によって,同じ印加電圧における電流密度の大きさが異なるためである。
【0019】
また電流密度が同じであっても,有機EL材料によって同じ電流密度における発光輝度は異なっている。
【0020】
そのため,一般的にEL表示装置は,3色のEL素子の発光輝度のバランスをそろえるために,各色の画素に対応する電源供給線の電位の高さをそれぞれ調整している。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
引き回し配線を介して画素部に流れる電流の大きさは,画素部において白表示を行っている画素の数で決まる。なお白表示を行っている画素とは,発光している状態のEL素子を有する画素を意味する。白表示を行っている画素が多いほど,引き回し配線を介して画素部に流れる電流が大きくなる。
【0022】
引き回し配線を流れる電流が大きくなると,引き回し配線において電位降下が起こる。そのため,白表示を行っている画素の数が多いときと少ないときとでは,多いときのほうが,1つのEL素子にかかる電圧が小さくなり,画素1つあたりの発光輝度が低くなる。
【0023】
とくにカラー表示のEL表示装置の場合,各色のEL素子にかかる電圧の大きさをそれぞれ調整し,各色のEL素子に流れる電流の大きさを変えている。流れる電流が大きい画素ほど,該画素に対応する引き回し配線の電位降下が大きくなる。そのため,各色のEL素子にかかる電圧の大きさをそれぞれ調整していても,白表示の画素が多いときと少ないときとでは,3色のEL素子を流れる電流の比率が変わってしまう。
【0024】
よって,白表示の画素の数が変わると,3つの色にそれぞれ対応する画素の発光輝度のバランスが崩れるという事態が生じる。
【0025】
また,従来のEL表示装置では,EL素子に流そうとする電流の大きさが各色ごとに異なっており,そのためEL素子に加える電圧も異なっていた。しかしEL素子と電源供給線との間にスイッチング素子として設けられたEL駆動用TFTのLDD幅や,チャネル幅は全て同じであり,また全てのEL駆動用TFTのゲート電極に入力されるデジタル信号の電圧の振幅も同じであった。このため,電源供給線にかかる電圧の高さによって,EL駆動用TFTが劣化されてしまう。またEL駆動用TFTのゲート電極に入力されるデジタル信号の電圧の振幅が必要以上に大きいと,消費電力を抑えることができない。
【0026】
上記問題に鑑み,本発明は,高精細なカラー表示が可能なEL表示装置の提供を課題とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは,EL素子に流す電流を大きくしたい画素ほど,該画素のEL素子に電圧または電流を供給する引き回し配線の幅を大きくした。これによって,EL素子に流す電流を大きくしたい画素ほど,該画素のEL素子に電圧または電流を供給する引き回し配線の配線抵抗が小さくなる。配線抵抗が小さくなると,引き回し配線における電位降下が小さくなり,EL素子に流す電流を大きくすることが可能になる。なお実際のパネルでは,引き回し配線を配置するスペースは限られているので,各色における引き回し配線の幅の比を変えることで,各色のEL素子に流れる電流の大きさのバランスを取ることが可能である。
【0028】
上記構成によって,白表示の画素の数に関わりなく,R,G,Bの各画素の発光輝度のバランスを整えることが可能になる。
【0029】
また引き回し配線だけではなく,EL素子に流す電流を大きくしたい画素ほど,該画素のEL素子に電圧または電流を供給する電源供給線の幅の比も大きくなるように設計すると,より一層高精細な画像を表示することが可能になる。」

(3) 「【0038】
【発明の実施の形態】
図1に本発明のEL表示装置の上面図を示す。図1(A)はEL表示装置の画素部とその駆動回路の配置を示している。101は画素部,102はソース信号線駆動回路,103はゲート信号線駆動回路,105は引き出し端子である。

【図1】


【0039】
画素部101は複数の画素106を有している。104は画素部101に設けられた電源供給線であり,全ての画素106が有するEL素子の画素電極に電位を与えている。電源供給線104は引き回し配線107に接続されており,引き回し配線107は引き出し端子105を介して外部の電源に接続されている。なお引き回し配線107のレイアウトは図1に示した形態に限定されない。
【0040】
ゲート信号線駆動回路103からゲート信号線(図示せず)に入力される選択信号によって画素106が選択される。そしてソース信号線駆動回路102からソース信号線(図示せず)に入力されるビデオ信号によって,電源供給線104の電位が選択された画素106に与えられ,画素106に画像の一部が表示される。
【0041】
図1(B)に図1(A)における引き回し配線107の拡大図を示す。107rはR用引き回し配線,107gはG用引き回し配線,107bはB用引き回し配線である。
【0042】
EL素子は引き回し配線と直列に接続されていることから,RGBの各色に対応する引き回し配線を流れる電流の比は,RGBの各色に対応するEL層の電流密度の比に相当する。また一般的に配線抵抗はシート抵抗と配線の長さに比例し,配線の幅に反比例する。ここでシート抵抗と配線の長さは固定している。
【0043】
R用の引き回し配線にかかる電圧をVr,G用の引き回し配線にかかる電圧をVg,B用の引き回し配線にかかる電圧をVbとし,R用の引き回し配線の幅をWr,G用の引き回し配線の幅をWg,B用の引き回し配線の幅をWbとし,R用のEL素子の電流密度をIr,G用のEL素子の電流密度をIg,B用のEL素子の電流密度をIbとすると,オームの法則より以下の式1が成り立つ。なおaは定数である。
【0044】
【式1】
Vr=a×Ir/Wr
Vg=a×Ig/Wg
Vb=a×Ib/Wb
【0045】
ここで,Vr=Vg=Vbとすると,以下の式2が導き出される。
【0046】
【式2】
Ir/Wr=Ig/Wg=Ib/Wb
【0047】
式2より以下の式3が導き出される。
【0048】
【式3】
Wr:Wg:Wb=Ir:Ig:Ib
【0049】
よって式3より,R,G,Bの各画素の発光輝度のバランスを整えるためには,電流密度が大きいEL素子に電気的に接続された引き回し配線の幅が,電流密度が小さいEL素子に電気的に接続された引き回し配線の幅より大きくなるように設計する。望ましくは,引き回し配線の幅の比を,式3を満たすように設計する。
【0050】
また引き回し配線だけではなく,EL素子に流す電流を大きくしたい画素ほど,該画素のEL素子に電圧または電流を供給する電源供給線の幅の比も,式3を満たすように設計すると,より一層高精細な画像を表示することが可能になる。
【0051】
上記構成によって,白表示の画素の数に関わりなく,R,G,Bの各画素の発光輝度のバランスを整えることが可能になる。」

(4) 「【0066】
(実施例3)
本実施例では,図1に示した引き回し配線107の幅の具体的な数値を示す。
【0067】
本実施例では,R,G,BのEL素子の発光輝度がそれぞれ100cd/m^(2),100cd/m^(2),50cd/m^(2)となるように,R,G,Bの有機EL材料の電流密度をそれぞれ7.5mA/cm^(2),3mA/cm^(2),5mA/cm^(2)とした。
【0068】
上述した電流密度の値から,実施の形態で示した式3より,R,G,Bに対応する画素の電源供給線の幅の比は,式4で表される。
【式4】
Wr:Wg:Wb≒7.5:3:5
【0069】
式4にしたがって引き回し配線の幅を設計すると,R,G,Bの各画素の発光輝度のバランスを整えることができる。
【0070】
なお本実施例においてR,G,Bに対応する引き回し配線の幅は式4を満たしていなくとも良い。Rに対応する引き回し配線の幅を一番大きくし,Gに対応する引き回し配線の幅を一番小さくすれば良い。
【0071】
上記構成によって,白表示の画素の数に関わりなく,R,G,Bの各画素の発光輝度のバランスを整えることが可能になる。
【0072】
また引き回し配線だけではなく,Rに対応する電源供給線の幅を一番大きくし,Gに対応する電源供給線の幅を一番小さくすれば,より効果的にR,G,Bの各画素の発光輝度のバランスを整えることが可能になる。より好ましくは引き回し配線と同様に,電源供給線の幅も式4を満たすように設計すると,より一層,R,G,Bの各画素の発光輝度のバランスを整えることが可能になる。
【0073】
なお本発明において用いられる有機EL材料の電流密度は上述した数値に限定されない。
【0074】
また本実施例では,デジタル信号で表示を行うEL表示装置においてデジタル信号の振幅を増幅する例を示したが,本発明はこの構成に限定されない。アナログビデオ信号で表示を行うEL表示装置においてアナログビデオ信号の振幅を増幅する構成も本発明に含まれる。
【0075】
本実施例は実施例1または実施例2と自由に組み合わせて実施することが可能である。」

(5) 「【0076】
(実施例4)
本発明のEL表示装置は画素内にいくつのTFTを設けた構造としても良い。例えば,3つ乃至6つまたはそれ以上のTFTを設けても構わない。本実施例では,EL表示装置が画素内に3つのTFTを設けている構成について示す。
【0077】
図6において,4702はスイッチング用TFT,4701はソース信号線,4703はスイッチング用TFT4702のゲート電極に接続されたゲート信号線,4704はEL駆動用TFT,4705はコンデンサ(省略することも可能),4706は電源供給線,,4707は電源制御用TFT,4708は電源制御用ゲート信号線,4709はEL素子とする。電源制御用TFT4707の動作については特願2000-364003号を参照すると良い。

【図6】


【0078】
また,本実施例では電源制御用TFT4707をEL駆動用TFT4704とEL素子4708との間に設けているが,電源制御用TFT4707とEL素子4708との間にEL駆動用TFT4704が設けられた構造としても良い。また,電源制御用TFT4707はEL駆動用TFT4704と同一構造とするか,同一の活性層で直列させて形成するのが好ましい。
【0079】
図7において,4801はソース信号線,4802はスイッチング用TFT,4803はスイッチング用TFT4802のゲート電極に接続されたゲート信号線,4804はEL駆動用TFT,4805はコンデンサ(省略することも可能),4806は電源供給線,4807は消去用TFT,4808は消去用ゲート信号線,4809はEL素子とする。消去用TFT4807の動作については特願2000-359032号を参照すると良い。

【図7】


・・・(中略)・・・
【0081】
本実施例は実施例1?実施例3と自由に組み合わせて実施することが可能である。」

(6) 「【0082】
(実施例5)
本実施例では,本発明のEL表示装置において,同一基板上に画素部と,画素部の周辺に設ける駆動回路のTFT(nチャネル型TFT及びpチャネル型TFT)を同時に作製する方法について詳細に図8?図11を用いて説明する。
【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


・・・(中略)・・・
【0123】
次いで,その上に透明導電膜を80?120nmの厚さで形成し,パターニングすることによって透明電極367を形成する。(図10(B))
【0124】
なお,本実施例では,透明電極として酸化インジウム・スズ(ITO)膜や酸化インジウムに2?20[%]の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透明導電膜を用いる。
【0125】
また,透明電極367は,ドレイン配線365と接して重ねて形成することによってEL駆動用TFTのドレイン領域と電気的な接続が形成される。
【0126】
次に,図11に示すように,珪素を含む絶縁膜(本実施例では酸化珪素膜)を500[nm]の厚さに形成し,透明電極367に対応する位置に開口部を形成して,バンクとして機能する第3の層間絶縁膜368を形成する。開口部を形成する際,ウエットエッチング法を用いることで容易にテーパー形状の側壁とすることが出来る。開口部の側壁が十分になだらかでないと段差に起因するEL層の劣化が顕著な問題となってしまうため,注意が必要である。
【0127】
なお,本実施例においては,第3の層間絶縁膜として酸化珪素でなる膜を用いているが,場合によっては,ポリイミド,ポリアミド,アクリル,BCB(ベンゾシクロブテン)といった有機樹脂膜を用いることもできる。
【0128】
次に,図11で示すようにEL層369を蒸着法により形成し,更に蒸着法により陰極(MgAg電極)370および保護電極371を形成する。このときEL層369及び陰極370を形成するに先立って透明電極367に対して熱処理を施し,水分を完全に除去しておくことが望ましい。なお,本実施例ではEL素子の陰極としてMgAg電極を用いるが,公知の他の材料であっても良い。」

(7) 「【0139】
(実施例6)本実施例では,本発明を用いてEL表示装置を作製した例について,図16,図17を用いて説明する。
【0140】
図16(A)は本発明のEL表示装置のTFT基板の上面図を示している。なお本明細書においてTFT基板とは,画素部が設けられている基板を意味する。
【図16】


【0141】
基板4001上に,画素部4002と,ソース信号線駆動回路4003と,第1のゲート信号線駆動回路4004aと,第2のゲート信号線駆動回路4004bとが設けられている。
・・・(中略)・・・
【0142】
4005aは画素部4002に設けられた電源供給線(図示せず)に接続された引き回し配線である。4005bは第1及び第2のゲート信号線駆動回路4004a,4004bに接続されたゲート用引き回し配線である。また4005cはソース信号線駆動回路4003に接続されたソース用引き回し配線である。
・・・(中略)・・・
【0163】本実施例は,実施例1?実施例5と自由に組み合わせて実施することが可能である。」

(8) 「【0215】
【発明の効果】
【0216】
本発明の構成によって,白表示の画素の数に関わりなく,R,G,Bの各画素の発光輝度のバランスを整えることが可能になる。」

4 引用発明
引用例1の特許請求の範囲には,【請求項9】の記載を引用して記載された【請求項12】に係る発明が記載されている。また,引き回し配線の幅及び電源供給線の幅については,引用例1の段落【0042】?【0051】において,その原理に基づく説明が記載されている。
以上を考慮すると,引用例1には,次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「【請求項9】複数の画素と,複数の電源供給線と,複数の引き回し配線と,外部接続端子とを有する表示装置であって,
前記複数の画素は,前記複数の電源供給線のいずれか1つと,EL素子と,スイッチング用TFTと,EL駆動用TFTとを有しており,
前記EL素子は画素電極と,対向電極と,前記画素電極と前記対向電極の間に設けられたEL層とを有しており,
前記スイッチング用TFTは前記EL駆動用TFTのスイッチングを制御しており,
前記EL駆動用TFTによって,前記複数の電源供給線のいずれか1つの電位が,前記EL素子が有する画素電極に与えられ,
前記外部接続端子と前記複数の電源供給線とは前記複数の引き回し配線を介して電気的に接続されており,
前記EL素子を駆動させるときにおける,前記EL素子が有する前記EL層の電流密度が大きいほど,前記複数の電源供給線にそれぞれ接続されている前記複数の引き回し配線の幅が大きく,
さらに,
【請求項12】前記EL素子を駆動させるときにおける,前記EL素子が有する前記EL層の電流密度が大きいほど,前記複数の電源供給線の幅が大きく,
【0042】EL素子は引き回し配線と直列に接続されていることから,RGBの各色に対応する引き回し配線を流れる電流の比は,RGBの各色に対応するEL層の電流密度の比に相当し,
配線抵抗はシート抵抗と配線の長さに比例し,配線の幅に反比例するが,シート抵抗と配線の長さは固定し,
【0043】R用の引き回し配線にかかる電圧をVr,G用の引き回し配線にかかる電圧をVg,B用の引き回し配線にかかる電圧をVbとし,R用の引き回し配線の幅をWr,G用の引き回し配線の幅をWg,B用の引き回し配線の幅をWbとし,R用のEL素子の電流密度をIr,G用のEL素子の電流密度をIg,B用のEL素子の電流密度をIbとすると,オームの法則より以下の式1が成り立ち,aは定数であり,
【0044】
【式1】Vr=a×Ir/Wr
Vg=a×Ig/Wg
Vb=a×Ib/Wb
【0045】ここで,Vr=Vg=Vbとすると,以下の式2が導き出され,
【0046】
【式2】Ir/Wr=Ig/Wg=Ib/Wb
【0047】式2より以下の式3が導き出され,
【0048】
【式3】Wr:Wg:Wb=Ir:Ig:Ib
【0049】引き回し配線の幅の比を,式3を満たすように設計し,
【0050】引き回し配線だけではなく,EL素子に流す電流を大きくしたい画素ほど,該画素のEL素子に電圧または電流を供給する電源供給線の幅の比も,式3を満たすように設計し,
【0051】白表示の画素の数に関わりなく,R,G,Bの各画素の発光輝度のバランスを整えることが可能になる,
【0001】半導体素子(半導体薄膜を用いた素子)を基板上に作り込んで形成されたEL(エレクトロルミネッセンス)表示装置。」

5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1) 有機発光表示装置
引用発明は,「半導体素子(半導体薄膜を用いた素子)を基板上に作り込んで形成されたEL(エレクトロルミネッセンス)表示装置」 であるから,引用発明の「表示装置」は,本願発明の「有機発光表示装置」に相当する。
ここで,本願発明の「有機発光表示装置」構成のうち,次の構成については,「半導体素子(半導体薄膜を用いた素子)を基板上に作り込んで形成されたEL(エレクトロルミネッセンス)表示装置」ならば,当然具備する構成にすぎない。
「第1画素,第2画素及び第3画素が行列状に配置された有機発光表示装置であって,
前記有機発光表示装置は,
基板,
前記基板上に形成されているゲート線,
前記ゲート線と絶縁して交差しているデータ線,
前記基板上に形成されて赤色画素である前記第1画素に駆動電圧を伝達する第1駆動電源線,緑色画素である前記第2画素に駆動電圧を伝達する第2駆動電源線及び青色画素である前記第3画素に駆動電圧を伝達する第3駆動電源線を含む駆動電源線,
前記ゲート線及びデータ線と連結しているスイッチング薄膜トランジスタ,
前記スイッチング薄膜トランジスタ及び前記駆動電源線と連結している駆動トランジスタ,
前記駆動トランジスタと連結している第1電極,
前記第1電極上に形成されている有機発光部材,
前記有機発光部材上に形成されている第2電極を含む,
有機発光表示装置。」

すなわち,引用発明の
「『R』の『画素』」,「『G』の『画素』」,「『B』の『画素』」,「『R』用の『電源供給線』」,「『G』用の『電源供給線』」,「『B』用の『電源供給線』」,「スイッチング用TFT」,「EL駆動用TFT」,「画素電極」,「EL層」及び「対向電極」は,それぞれ,本願発明の
「第1画素」,「第2画素」,「第3画素」,「第1駆動電源線」,「第2駆動電源線」,「第3駆動電源線」,「スイッチング用薄膜トランジスタ」,「駆動トランジスタ」,「第1電極」,「有機発光部材」及び「第2電極」に相当する。また,引用発明が本願発明の,(A)第1画素,第2画素及び第3画素が「行列状に配置された」構成,(B)基板上に形成されているゲート線,(C)前記ゲート線と絶縁して交差しているデータ線,(D)前記基板上に形成されて赤色画素である前記第1画素に駆動電圧を伝達する第1駆動電源線,緑色画素である前記第2画素に駆動電圧を伝達する第2駆動電源線及び青色画素である前記第3画素に駆動電圧を伝達する第3駆動電源線を含む駆動電源線,(E)前記ゲート線及びデータ線と連結しているスイッチング薄膜トランジスタ,前記スイッチング薄膜トランジスタ及び前記駆動電源線と連結している駆動トランジスタ,(F)前記駆動トランジスタと連結している第1電極,前記第1電極上に形成されている有機発光部材,前記有機発光部材上に形成されている第2電極,に相当する構成を具備することは,技術的にみて明らかである。
なお,(A)本願発明の第1画素,第2画素及び第3画素が「行列状に配置された」構成については,引用例1の図1から見て取れる構成であり,(B)引用発明が「基板上に形成されているゲート線」を具備する点については,段落【0040】の記載,あるいは図6及び段落【0077】の記載から理解できる事項であり,(C),(E)引用発明が「前記ゲート線と絶縁して交差しているデータ線」,「前記ゲート線及びデータ線と連結しているスイッチング薄膜トランジスタ」,「前記スイッチング薄膜トランジスタ及び前記駆動電源線と連結している駆動トランジスタ」の構成を具備することについては,引用例1の図6及び段落【0077】の記載から理解できる事項であり,(D)引用発明のR用,G用及びB用の「電源供給線」は,「画素のEL素子に電圧または電流を供給する電源供給線」であるから,「前記基板上に形成されて赤色画素である前記第1画素に駆動電圧を伝達する第1駆動電源線,緑色画素である前記第2画素に駆動電圧を伝達する第2駆動電源線及び青色画素である前記第3画素に駆動電圧を伝達する第3駆動電源線を含む駆動電源線」であり,(F)引用発明が「前記駆動トランジスタと連結している第1電極」,「前記第1電極上に形成されている有機発光部材」,「前記有機発光部材上に形成されている第2電極」を具備する点については,引用例1の図10(B)及び図11,並びに,段落【0123】?【0128】の記載から理解できる事項である。

(2) 電源線の線幅
引用発明は,「引き回し配線だけではなく」,「電源供給線の幅の比も,式3」,すなわち,「【式3】Wr:Wg:Wb=Ir:Ig:Ib」「を満たすように設計し」ている。
したがって,引用発明は,本願発明の「前記第1駆動電源線の線幅,第2駆動電源線の線幅及び第3駆動電源線の線幅は各々,第1画素の消費電流,第2画素の消費電流及び第3画素の消費電流に比例し」の要件を満たす。

(3) 電源線の厚さ,電圧降下値
引用発明は,「引き回し配線だけではなく」,「電源供給線の幅の比も,式3」,すなわち,「【式3】Wr:Wg:Wb=Ir:Ig:Ib」「を満たすように設計し」ているところ,式3の前提となる式1は,「シート抵抗と配線の長さは固定し」,「オームの法則より」「成り立」つとされたものであるから,引用発明は,自然法則により,本願発明の「前記第1駆動電源線の厚さ,第2駆動電源線の厚さ及び第3駆動電源線の厚さが互いに同一であり」の要件を満たす。
加えて,引用発明の式3は,「Vr=Vg=Vb」の前提で導き出されたものであるから,引用発明は,本願発明の「前記第1駆動電源線の電圧降下値,前記第2駆動電源線の電圧降下値及び前記第3駆動電源線の電圧降下値は互いに同一である」の要件も満たす。

(4) 上記(1)ないし(3)から,本願発明と引用発明とは,

「第1画素,第2画素及び第3画素が行列状に配置された有機発光表示装置であって,
前記有機発光表示装置は,
基板,
前記基板上に形成されているゲート線,
前記ゲート線と絶縁して交差しているデータ線,
前記基板上に形成されて赤色画素である前記第1画素に駆動電圧を伝達する第1駆動電源線,緑色画素である前記第2画素に駆動電圧を伝達する第2駆動電源線及び青色画素である前記第3画素に駆動電圧を伝達する第3駆動電源線を含む駆動電源線,
前記ゲート線及びデータ線と連結しているスイッチング薄膜トランジスタ,
前記前記スイッチング薄膜トランジスタ及び前記駆動電源線と連結している駆動トランジスタ,
前記駆動トランジスタと連結している第1電極,
前記第1電極上に形成されている有機発光部材,
前記有機発光部材上に形成されている第2電極を含み,
前記第1駆動電源線の厚さ,第2駆動電源線の厚さ及び第3駆動電源線の厚さが互いに同一であり,前記第1駆動電源線の線幅,第2駆動電源線の線幅及び第3駆動電源線の線幅は各々,第1画素の消費電流,第2画素の消費電流及び第3画素の消費電流に比例し,
前記第1駆動電源線の電圧降下値,前記第2駆動電源線の電圧降下値及び前記第3駆動電源線の電圧降下値は互いに同一であることを特徴とする,有機発光表示装置。」

との点で一致し,次の点で相違する。

相違点:
本願発明は,「前記第3駆動電源線の線幅は,前記第1駆動電源線の線幅及び前記第2駆動電源線の線幅より大き」いのに対し,引用発明は,B用の電源供給線の線幅は,R用の電源供給線の線幅及びG用の電源供給線の線幅の両者より大きくされていない点。

6 判断
(1) 上記相違点について検討する。
用いる有機材料や素子構造等によって,有機発光部材の発光効率が変動することは,当該技術分野における技術常識である。そして,赤,緑,青のEL素子のうち,特に青色のEL素子の電流値を最も高くしなければならない場合があることも,当業者には広く知られているところである(例えば引用例2の第170頁4?23行,引用例3の段落【0136】,引用例4の段落【0025】を参照されたい。)。
してみれば,引用発明においても,選択した有機材料や素子構造等に応じて青色画素の消費電流を最も大きくし,それに伴い,B用の電流供給線の幅を最も大きくすることとして,上記相違点に係る本願発明の構成とすることは,当業者であれば適宜なし得たことである。

(2) 本願発明の奏する効果は,引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。

(3) なお,請求人は,平成28年7月20日に提出した意見書によって,以下のように主張している。
「すなわち,本願発明(請求項1)の特徴点は,今回の補正においても明確に示されましたように,
《1》「第1駆動電源線(172R)の厚さ,第2駆動電源線(172G)の厚さ及び第3駆動電源線(172B)の厚さが互いに同一であり,第1駆動電源線の線幅,第2駆動電源線の線幅及び第3駆動電源線の線幅は各々,第1画素の消費電流,第2画素の消費電流及び第3画素の消費電流に比例する」との点,
《2》「第3駆動電源線の線幅は,第1駆動電源線の線幅及び第2駆動電源線の線幅より大きい」との点,
《3》「第1駆動電源線(172R)の電圧降下値,第2駆動電源線(172G)の電圧降下値及び第3駆動電源線(172B)の電圧降下値は互いに同一である」との点,にあります。
そして,以上の《1》《2》及び《3》の構成が有機的に組み合わされることにより,「赤色画素(R)の色座標,緑色画素(G)の色座標及び青色画素(B)の色座標の合計である白色色座標が変動することを効果的に防止できる」ものであります。
すなわち,本願発明(請求項1)は,《1》及び《2》に示される事項とともに,《3》に示される事項を組み合わせた点に特徴を有する,具体的には「第1駆動電源線(172R)の電圧降下値,第2駆動電源線(172G)の電圧降下値及び第3駆動電源線(172B)の電圧降下値は互いに同一である」(明細書の関連記載:0074,0075,0086,0091,0092)との事項《3》を,事項《1》《2》に組み合わせた点に特徴を有するものであります。
・・・(中略)・・・
そして,以上の《1》《2》及び《3》の有機的な組み合わせにより,「赤色画素(R)の色座標,緑色画素(G)の色座標及び青色画素(B)の色座標の合計である白色色座標が変動することを有効に防止できる」との格別なる効果が奏されるものであります。
従いまして,本願発明は,事項《3》を事項《1》《2》に組み合わせるという,引用例1?4から導出し得ない特有な構成に基づき,格別なる効果を奏するものであり,ご指摘の特許法第29条第2項に基づく要件違反に該当しないと思量致します。」(意見書の3頁22行?4頁8行)

しかし,事項《3》は,事項《1》の構成を採用した結果,必然的に生じる結果である。また,引用発明においても,引き回し配線及び電源供給線の幅をRGBの各EL素子の消費電流の比と同じものとすることにより,R,G,Bの各画素の発光輝度のバランスを整えることができるのであるから(例えば段落【0072】等を参照),「赤色画素(R)の色座標,緑色画素(G)の色座標及び青色画素(B)の色座標の合計である白色色座標が変動することを有効に防止できる」との効果は,引用発明自体が既に有している効果である。
したがって,請求人の主張は採用することができない。

7 むすび
本願発明は,当業者が引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-24 
結審通知日 2016-08-30 
審決日 2016-09-21 
出願番号 特願2010-281854(P2010-281854)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池田 博一  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 道祖土 新吾
鉄 豊郎
発明の名称 有機発光表示装置  
代理人 佐伯 義文  
代理人 阿部 達彦  
代理人 崔 允辰  

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