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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F
管理番号 1324519
審判番号 不服2015-16844  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-14 
確定日 2017-02-03 
事件の表示 特願2010-157647「液晶ディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 2日出願公開、特開2012- 22028〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成22年7月12日の出願であって、平成27年6月8日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成27年9月14日に拒絶査定不服審判が請求がされるとともに手続補正書が提出された。その後当審において、平成28年7月21日付けで拒絶理由が通知され、同年9月23日に意見書が提出されたものである。

2 当審の拒絶理由
当審において平成28年7月21日付けで通知した拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

本願の請求項1、2に係る発明は、本願の出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物である「特開2007-227286号公報」(以下「引用文献1」という。)に記載された発明並びに本願の出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物である「特開2008-112154号公報」(以下「引用文献2」という。)の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 本願発明
本願の請求項1、2に係る発明は、平成27年9月14日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
カラーフィルタを備えた液晶パネルと、
LED光源、当該LED光源から光が照射される導光板の上記液晶パネル側の面に積層されており且つ上記液晶パネル側の面に拡散ドットが形成された拡散板を有しており、当該LED光源から照射された光を上記液晶パネルの裏面側から上記液晶パネルへ照射するバックライトと、
上記拡散板の上記液晶パネル側の面に積層されており量子ドットからなる蛍光体を内部に含んだ蛍光体層と、を備え、
上記蛍光体層は、蛍光色が相互に異なる複数の上記蛍光体を混合した状態で内部に含んだものである液晶ディスプレイ。」

4 引用文献の記載と引用発明
(1)引用文献1の記載
引用文献1には、「照明装置、及びこれを用いた表示装置」(発明の名称)に関して、図1?15とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同じ。)。

ア 「【請求項1】
水平面に交差する入光面により包囲される収納空間が所定位置に開設される導光板と、
前記収納空間内に位置するように配設される光源と、
前記光源と対面するように配置され、前記光源が発する光の少なくとも一部を反射する反射部材とを備える直下型の照明装置。
…(略)…
【請求項11】
前記光源は、白色光でない特定色の光を発し、前記特定色の光の光路の途中に前記特定色の光を白色光へ変更する着色層が設けられている、請求項1?10のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項12】
請求項1?11のいずれか1項に記載の構成の照明装置と、前記照明装置により照明される非自発光型の表示素子を備えることを特徴とする表示装置。」

イ 「【背景技術】
【0002】
非自発光型の表示素子である液晶表示パネル(以下「LCD」という。)に光を供給するバックライトモジュールは、光源を導光板の横に配置するサイドライト型と表示素子のに真下に配置する直下型のものに大別できる。直下型バックライトモジュールは、主として、比較的広い画面を有するLCD(例えば、テレビジョン装置やパーソナルコンピュータのディスプレイ等に使用されるもの)に光を供給するために、使用される(例えば、特許文献1を参照)。」

ウ 「【発明の効果】
【0009】
本発明の直下型バックライトモジュールによれば、光源が発する光が、反射部材で反射され入光面を介して横方向へ進み導光板内へ導かれる。さらに、この光は、導光板内で様々な角度で屈折し、結局、導光板から面状で均一性が高い光の束となって、LCDへ向け出射されることになる。ここで、この現象は、導光板の厚さに余り影響されないので、直下型バックライトモジュールを薄型化でき、そうしても輝度ムラを生じにくい。従来技術では、厚さを5cm程度にせざるを得なかったが、本発明によれば、より薄く(例えば約1cm程度)とすることができる。」

エ 「【実施例】
【0014】
図1は、本実施例の直下型バックライトモジュールの断面図である。図示するように、直下型バックライトモジュール101は、LCD102の直下に配置され、後述する構成により光源1が発する光を面状の光に変え、面状の光をLCD102へ照射する。即ち、LCD102の画素により構成される表示画面が、直下型バックライトモジュール101の面状の光により明るく照らされて、視認性良くユーザに表示される。
【0015】
さて、バックライトモジュール101を構成する筐体3は、その内面が鏡面となっており、筐体3の内部には、次の要素が配設される。即ち、基板2は、その表面が反射面となっている。光源1(発光ダイオード)は、基板2の所定位置に実装・担持され、白色光を発光する。導光板7には、水平面に交差する入光面5により包囲される貫通孔8が所定位置に開設される。複数の光源1のそれぞれは、貫通孔8内に位置するように基板2上に配設される。反射部材6は、光源1と対面するように配置され、光源1が発する光を反射する。また、筐体3の上方開口部は、拡散板4により封鎖される。符号10は、導光板7を通る光を外部に拡散させる拡散部を示している。」

オ 「【0021】
図7に本発明の導光板の断面を示す。図示するように、拡散部10(導光板7の上面及び底面の少なくとも一方)には、光を拡散する加工を施す。図7(a)では導光板7の上面に、図7(b)では導光板7の下面に、同形状及び一定ピッチで、複数のV字溝を形成してある。このV字溝の付近では、V字に傾斜する傾斜面からのみ光が出射され、水平な箇所からは光が反射され導光板7内へ戻る。これは、出射されるか否かは、入射角の大小関係により定まる。勿論、溝をU字状とするなど種々変更可能である。
【0022】
…(略)…あるいは、図7(e)に示すように、溝を形成せず、導光板7の拡散部10(上面及び底面の少なくとも一方)を粗面としても良い。粗面加工には、例えばサンドブラスト法が使用できる。粗面のパターンは、任意として差し支えない。
【0023】
さて、上述のように構成すると、図2(c)に示したように、光源1から出射された光の大半は、その指向特性により、反射部材6に当たって反射し、入光面5を介して導光板7内へ導かれる。導光板7内に至った光は、導光板7内で適宜反射しながら、最終的には導光板7の上面の拡散部10から上向きに出射する。これにより、図8(a)に示すように、点光源である光源1の光は、面状の光に変更され、拡散板4で拡散された後、LCD102を均一性高く照らすことになる。したがって、LCD102の表示画面の輝度ムラが少なくなると共に、バックライトモジュール101の厚さを従来技術よりも小さくすることができ、薄型テレビジョン装置やパーソナルコンピュータのディスプレイ等の用途に適した、直下型バックライトモジュールが得られる。
【0024】
…(略)…
【0025】
さて以上は、光源1が白色光を発光する場合について述べた。図9に本発明に用いる光源の断面図を模式的に示す。図9(a)に示すように、光源1は青色発光素子をパッケージに収納すると共に、青色発光素子の周囲を黄色蛍光体(YAG)を混ぜたシリコン樹脂で包囲して構成してあるが、図9(b)に示すように、シリコン樹脂に緑色蛍光体及び赤色蛍光体を混ぜても良い。また、光源1として、図9(c)に示すような、青色光を発光する発光ダイオードを使用することもできる。この場合、青色光の光路の途中に青色光を白色光へ変更する着色層を設ければよい。この着色層の形態を図10を用いて説明する。具体的には、光源1が白色光を発光する場合(図10(a))に対し、図10(b)に示すように、入光面5に第1蛍光体層12(黄色)を追加するか、図10(c)に示すように、入光面5に第2蛍光体層13(緑色)及び第3蛍光体層14(赤色)を追加すると良い。勿論、第2蛍光体層13(緑色)及び第3蛍光体層14(赤色)とは、図示しているように別の層にする必要はなく、互いに混ぜて1つの層としてもよい。
【0026】
これらの層には、次表において「黄色蛍光体」、「赤色蛍光体」、「緑色蛍光体」の各欄に記載された材料系を使用できる。
【0027】
【表1】
(略)
【0028】
さらに、層12?14は、その配置位置を適宜変更であるものであって、例とえば、図11(a)に示すように導光板7の上面に設けても良いし、図11(b)に示すように拡散板4の下面に設けても良い。また、図12(a)に示すように反射部材6の下面に設けても良いし、反射部材6の下面とともに拡散板4の上面に設けても良い。その他拡散板4の上面のみに設けてもよい。包囲空間を、導光板7の屈折率と空気の屈折率との間の屈折率を有する透光性の素材で埋めた場合には、その素材部分を着色するようにしても良い。」

カ 「【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の直下型バックライトモジュールの断面図である。
【図2】(a)本発明の直下型バックライトモジュールの平面図、(b)A-A’線断面図、(c)光路の例示図である。
…(略)…
【図10】本発明の着色層の断面図である。
【図11】本発明の着色層の断面図である。
【図12】本発明の着色層の断面図である。」

キ 図1、2、10?12は、それぞれ以下のとおりである。
また、上記摘記事項エを勘案すると、図1から、バックライトモジュール101は、光源1、導光板7、及び拡散板4を備え、その拡散板4は、導光板7の液晶表示パネル(LCD)102側の面に設けられていることが見てとれる。
図12(a)では、拡散板4は、導光板7の上に積層され、層12は反射部材6の下面に設けられていることが見てとれる。
図12(b)では、拡散板4は、導光板7の上に積層され、層13は反射部材6の下面に設けられ、層14は拡散板4の上面に設けられていることが見てとれる。


(2)引用発明
ア 上記「(1)引用文献1の記載」の摘記事項オの段落【0025】には、光源1として、青色光を発光する発光ダイオードを使用することもでき、この場合、青色光の光路の途中に青色光を白色光へ変更する着色層を設ければよく、この着色層の形態として、入光面5に第2蛍光体層13(緑色)及び第3蛍光体層14(赤色)を追加すると良く、第2蛍光体層13(緑色)及び第3蛍光体層14(赤色)とは、互いに混ぜて1つの層としてもよい旨が開示されている。
また、摘記事項オの段落【0028】には、「層12?14」の配置位置について、「図12(a)に示すように反射部材6の下面に設けても良いし、反射部材6の下面とともに拡散板4の上面に設けても良い。その他拡散板4の上面のみに設けてもよい。」と記載されている。
また、摘記事項キから、図12(a)では、拡散板4は、導光板7の上に積層され、層12は反射部材6の下面に設けられ、図12(b)では、拡散板4は、導光板7の上に積層され、層13は反射部材6の下面に設けられ、層14は拡散板4の上面に積層されている。
すなわち、図12(a)及び層14が拡散板4の上面に積層されている図12(b)のいずれにおいても、拡散板4は、導光板7の上に積層されている。

イ 更に、摘記事項キから、図1では、バックライトモジュール101は、光源1、導光板7、及び拡散板4を備え、その拡散板4は、導光板7の液晶表示パネル(LCD)102側の面に設けられている。

ウ 以上によると、引用文献1には、拡散板4が、導光板7のLCD102側の上に積層されているものであって、段落【0025】の「光源1として、青色光を発光する発光ダイオードを使用」し、「着色層」を設け、「着色層」の形態として、「第2蛍光体層13(緑色)及び第3蛍光体層14(赤色)を追加」し、「第2蛍光体層13(緑色)及び第3蛍光体層14(赤色)とは、互いに混ぜて1つの層」とし、当該「層」の配置位置として、段落【0028】の「拡散板4の上面のみに」設けるものが示されているといえる。

エ したがって、上記「(1)引用文献1」の摘記事項ア?キ及び上記ア?ウをまとめると、引用文献1には、上記ウの場合に関して、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「液晶表示パネル(LCD)102と、光源1、導光板7、及び拡散板4を備える直下型バックライトモジュール101とを備える表示装置であって、
直下型バックライトモジュール101は、LCD102の直下に配置され、
バックライトモジュール101の拡散板4は、導光板7のLCD102側の面に積層されており、
光源1が発する光は、面状の光に変更され、拡散板4で拡散された後、LCD102を均一性高く照らし、
光源1として、青色光を発光する発光ダイオードを使用することができ、青色光の光路の途中に青色光を白色光へ変更する着色層を設け、
着色層の形態は、第2蛍光体層13(緑色)及び第3蛍光体層14(赤色)を追加すると良く、第2蛍光体層13(緑色)及び第3蛍光体層14(赤色)とは、互いに混ぜて1つの層としてもよく、
第2蛍光体層13及び第3蛍光体層14は、拡散板4の上面のみに設けてもよい、表示装置。」

(3)引用文献2の記載
引用文献2には、「ディスプレイ」(発明の名称)に関して、図1?12とともに、以下の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)などのようなディスプレイに関するものであり、特に、バックライトを用いたディスプレイに関するものである。そのようなディスプレイは、例えば、携帯電話、テレビ、コンピュータ・モニタなどの中に使用される。」

イ 「【発明の開示】
【0019】
本発明は、光源と、該光源からの光路中に配置された画像表示パネルとを含むディスプレイであって、上記光源が、一次の波長範囲(primary wavelength range)の光を放射するための一次光源と、該一次光源からの光によって照らされたときに上記一次の波長範囲と異なる波長範囲の光を再放射するための再放射材料とを含み、上記再放射材料が、上記一次光源からの光によって照らされたときに上記一次の波長範囲と異なる第1の波長範囲中の光を再放射するための少なくとも1つの第1のナノ蛍光体材料を含み、上記画像表示パネルが、第1の狭透過帯域または第1の狭吸収帯域を有する第1のフィルタを含み、上記第1の狭透過帯域または第1の狭吸収帯域が、第1の波長範囲に実質的に位置合わせされている(substantially aligned)ディスプレイを提供する。
【0020】
ナノ蛍光体は、蛍光発光の性質を示すナノ粒子である。蛍光発光材料は、電磁放射によって照らされたときに、蛍光発光材料を照らす電磁放射の周波数より低い周波数で(すなわち、より低い光子エネルギーで)電磁放射を再放射する材料である。ナノ蛍光体は、例えば、コロイド状量子ドット、ナノロッド、ナノニードル、ナノスピンドル、フラーレン、ナノワイヤ、およびデンドリマーからなる群から選ばれる1つ以上を含みうる。
【0021】
ナノ粒子は、典型的には、1nmから200nmまでの範囲内のサイズを有している。このスケールで、ナノ粒子のエネルギー準位は、原子のエネルギー準位に関しては離散的である。例として、コロイド状量子ドットの場合には、量子ドットの直径は、典型的には2?10nm(あるいは直径が10?50原子)である。
【0022】
「位置合わせされている」とは、ナノ蛍光体材料の発光スペクトル中のピークが、カラーフィルタの狭透過帯域または狭吸収透過窓の範囲内において中央に位置する(centered)か、あるいは実質的に中央に位置する(substantially centred)ことを意味する。
…(略)…
【0025】
再放射源としてナノ蛍光体材料を使用することは、2つの利点をもたらす。第1に、ナノ蛍光体材料の発光スペクトルは、狭帯域であり、典型的には、その光強度の半値全幅((FWHM)が80nm以下である。第2に、ナノ蛍光体材料の発光スペクトルのピーク波長(およびさらに輝線幅)は、適切なナノ蛍光体材料の使用によって(例えば、ナノ蛍光体材料中における、量子ドットのサイズ、または量子ドットの粒度分布を制御することによって)、任意の所望の値となるように選択できる。従って、画像表示パネル中のそれぞれのカラーフィルタ(好ましくは狭透過帯域カラーフィルタ)の透過窓内において、発光スペクトル中のピークが中央に位置するか、あるいは実質的に中央に位置するように、バックライトのナノ蛍光体材料の発光スペクトルを生成することによって、高いNTSC比および高い光強度を有するディスプレイを得ることができる。図2(c)、図2(d)、および図2(e)は、効率の顕著な損失なしに110%を超えるNTSC比を得ることができることを示している。」

ウ 「【0048】
上記ディスプレイは、上記一次光源から光を受光するための導光体を含んでいてもよい。
【0049】
上記ナノ蛍光体材料(ナノ蛍光体材料が1つの場合)または各ナノ蛍光体材料(ナノ蛍光体材料が複数の場合)が、上記導光体の光放出面上に配置されていてもよい。それに代えて、上記ナノ蛍光体材料(ナノ蛍光体材料が1つの場合)または各ナノ蛍光体材料(ナノ蛍光体材料が複数の場合)が、上記導光体内に配置されていてもよい。」

エ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明の実施形態について、一例として図面を参照しながら以下に説明する。
【0057】
図3は、本発明の実施形態に係るディスプレイ11の概略断面図である。ディスプレイ11は、光源(後段でより詳細に説明する)と、該光源からの光路中に配置された画像表示パネル2とを含んでいる。画像表示パネル2は、例えば液晶層などのような画像表示層10を含んでいる。画像表示層を支持するための基板、画像表示層を駆動するための電極および駆動回路、液晶画像表示層の場合に、液晶層を配向させるための配向膜などのような構成要素は、明瞭化のために図3では図示を省略している。この実施形態において、画像表示層10は、画素化された画像表示層であり、該画像表示層においては、画像表示層の個々の領域(「画素」)を他の領域と独立して駆動できる。
【0058】
ディスプレイ11は、カラー表示を提供するように意図されており、それゆえ、画像表示パネル2にはカラーフィルタ9が設けられている。フルカラーの赤色、緑色、青色(RGB)ディスプレイの場合には、画像表示パネル2は、図3中に示すように、1セットの赤色のカラーフィルタ9R、1セットの青色のカラーフィルタ9B、および1セットの緑色のカラーフィルタ9Gを含むであろう。個々のカラーフィルタは各々、画像表示層10の画素またはサブ画素のそれぞれに位置合わせされている。
【0059】
カラーフィルタ9(後段でさらに詳細に説明する)の性質は別として、画像表示パネル2は、任意の従来の表示パネルとすることができる。本発明は、概ね任意の適切な画像表示層10に適用できる。
【0060】
ディスプレイ11において、上記光源は、光を放射するように駆動できる一次光源6と、一次光源6からの光路中に設けられた再放射材料7とを含んでいる。一次光源6が光を放射するように駆動されたとき、一次光源からの光は、再放射材料に吸収され、異なる波長範囲で再放射される。
【0061】
図3は、一次光源6から分離された再放射材料7を示す。しかしながら、例えば図5(a)に示すように、再放射材料7は、一次光源6上に直接、あるいは一次光源6を直接覆うように、配置することができる。
【0062】
一次光源6は、1つ以上の発光ダイオード(LED)を含むことができる。再放射材料の性質については、後段でより詳細に説明する。
【0063】
ディスプレイ11は、画像表示パネル2が光源からの光によって実質的に均一に照らされることを保証するための光学系をさらに含んでいる。図3の実施形態において、上記光学系は、画像表示パネル2と実質的に同一の広がりを持つ光放出面8aを有する導光体8を含んでいる。光源からの光は、片側面8bに沿って導光体8に入射し、周知の全内部反射の原理に従って導光体8内で反射され、最終的には上記導光体の光放出面8aから放射される。この一般形の導光体は公知であり、導光体8については詳細に説明しない。
【0064】
図3は、透過型画像表示パネル2を有するディスプレイ11において具現化された発明を示し、透過型画像表示パネル2中においては、図3のディスプレイ11の動作原理が図1(a)のディスプレイ1の動作原理に概ね対応するように、上記光源と導光体8とは一緒になって、バックライトを構成する。しかしながら、本発明は、図3中に示す特定の構成に限定されるものではなく、上記光源から画像表示パネル2の領域内への配光に適したいかなる光学系も使用できる。実際、本発明は、透過型ディスプレイに限定されるものではなく、例えば、暗い周囲照明条件下でのみ一次光源6が駆動され、明るい周囲照明条件下では画像を与えるために周囲光が利用される半透過型ディスプレイに適用できる。
【0065】
再放射材料7は、通常、一次光源6からの光によって照らされたときに、互いに異なり、かつ一次光源6の放射の波長範囲と異なる複数の波長範囲の光を放射する2つ以上の異なる材料を含むであろう。通常、上記光源が白色光出力を与えることが望ましいであろう。これは、スペクトルの赤色領域、緑色領域、および青色領域でそれぞれ再放射する3つの異なる材料を含む再放射材料7を使用することで達成できる。これは、白色光出力を与えるであろう。また、一次光源6は、可視スペクトル領域外の光(例えば紫外(UV)領域の光)を放射してもよい(一次光源6の出力が白色の全光出力に寄与する必要がないため)。
【0066】
それに代えて、上記光源からの光出力は、一次光源6からの光出力のうちで再発光領域7に吸収されない部分を含んでいてもよい。そのような例では、再放射材料7は、例えば、スペクトルの赤色領域および緑色領域で再放射する材料を含んでいてもよく、一次光源6は、スペクトルの青色領域の光を放射してもよい。その結果、再放射材料7の構成要素によって再放射された赤色光および緑色光を、上記一次光源からの青色光の吸収されない部分と組み合わせることによって、白色の全光出力が得られる。
【0067】
本発明によれば、上記再放射材料は、少なくとも1つのナノ蛍光体材料を含んでいる。ナノ蛍光体材料の発光スペクトルは、狭帯域であり、好ましくは密度の半値全幅(FWHM)が80nm以下であり、特に好ましくはFWHMが60nm以下である。
【0068】
さらに、本発明に係る、少なくとも1セットのカラーフィルタ9は、狭透過帯域を有するカラーフィルタを含んでいる。上記狭透過帯域フィルタは、好ましくは透過率の半値全幅(FWHM)が100nm以下であり、特に好ましくはFWHMが80nm以下である。
【0069】
知られているように、ナノ蛍光体材料の発光波長は、例えば量子ドットのコロイド溶液であるナノ蛍光体材料中の量子ドットのサイズを制御することによって、任意の所望の値に「調整する(tune)」ことができる。本発明のさらなる特徴は、ナノ蛍光体材料の発光スペクトルが対応するカラーフィルタの透過窓に位置合わせされるか、あるいは実質的に位置合わせされるように、ナノ蛍光体材料の発光スペクトルが「調整されている(tuned)」ことである。その結果、対応するカラーフィルタの透過窓内において、ナノ蛍光体材料の発光スペクトル中のピークが実質的に中央に位置するか、あるいは実質的に中央に位置する。これを図4(a)?図4(c)中に示す。
【0070】
図4(a)は、上記再放射材料が、赤色のナノ蛍光体材料、青色のナノ蛍光体材料、および緑色のナノ蛍光体材料を含む実施形態についての再放射材料7の発光スペクトルを示す。図4(a)の発光スペクトルは、このように、スペクトルの赤色領域、緑色領域、および青色領域の各々に1つずつ、計3つのピークを含んでいる。上記ピークが、狭く、図2(a)または図2(b)の左図中に示す従来の蛍光体の発光ピークよりもはるかに狭いことが分かるであろう。
【0071】
図4(b)は、全てのカラーフィルタが狭透過帯域を有する狭帯域カラーフィルタである実施形態についてのカラーフィルタ9R,9B,9Gの透過スペクトルを示す。図4(b)は、波長に対してプロットされた各カラーフィルタの透過率を示す。この場合にも、上記透過ピークが、図2(a)の中央図中に示す従来の明るいカラーフィルタの透過ピークよりもはるかに狭いことが分かるであろう。
【0072】
さらに注目すべきは、カラーフィルタが図4(b)中でピーク透過率を示す波長が、図4(a)の発光スペクトルがピーク透過率に対応する最大値を持つ波長と実質的に等しいことである。すなわち、上記カラーフィルタは、上記カラーフィルタに「位置合わせされている」。
【0073】
図4(c)は、図4(b)中に示す特性を有するカラーフィルタによって透過される、図4(a)の発光スペクトルからの光の強度を示す。すなわち、図4(c)は、図4(b)のフィルタ特性を図4(a)の発光スペクトルと重畳した結果を示す。まず、図4(c)中のピークの大きさが、図4(a)の発光スペクトルにおけるピークの大きさに非常に似ていることが分かるであろう。すなわち、図4(a)のスペクトルのピーク波長の光は、ほとんどカラーフィルタに吸収されていない。その結果、上記ディスプレイは、高い相対効率を有しており、(図2(a)の従来のディスプレイが1の相対効率を有するものとした場合)約0.9の相対効率を得ることができる。上記効率は、上記光源に従来の蛍光体を使用し、かつ図2(b)中に示す狭帯域カラーフィルタを含む比較用のディスプレイと比較して、遥かに大きい。
【0074】
…(略)…
【0075】
図5(a)は、本発明のさらなる実施形態に係るディスプレイの概略図である。図5(a)は、この実施形態の上記ディスプレイの上記光源だけを示し、上記ディスプレイの他の構成要素は図5(a)から省略している。上記ディスプレイは、例えば、図3中に示す形態を有することができる。
【0076】
この実施形態において、一次光源6は、スペクトルの青色領域の光を放射するLEDである。再放射媒体7は、赤色のナノ蛍光体材料および緑色のナノ蛍光体材料を含んでいる。したがって、上記光源からの光出力は、赤色および緑色のナノ蛍光体材料によって放射された赤色光および緑色光と、上記LEDからの青色光とを含んでいる。上記LEDからの光出力の一部は、吸収されることなくナノ蛍光体材料を通り抜け、それゆえ全出力に寄与する。
【0077】
この実施形態において、上記LEDからの青色光の波長範囲は、LEDの駆動条件を変えることによって限られた範囲で調整することができる。しかしながら、任意の青色LEDについて、青色フィルタに対する青色光の位置合わせが確実に達成されるように、その好ましい駆動条件下で上記LEDの発光波長に位置合わせされた透過帯域を有する青色フィルタを選択することが望ましい。
【0078】
この実施形態において、上記ディスプレイはまたもや、図5(b)中に示す透過スペクトル(図4(b)中に示すスペクトルに対応する)を有する狭帯域の緑色、青色、および赤色のカラーフィルタを含んでいる。この場合にもまた、このディスプレイは、高いNTSC比および高い相対効率を与えることができる。
【0079】
図5(a)において、再放射材料7は、ナノ蛍光体材料の混合物がその中に分散されている透明マトリックス14からなる。再放射材料7は、一次光源6を直接覆うように配置されている。しかしながら、上記光源は、図5(a)中に示す特定の構造に限定されるものではない。」

オ 「【0086】
図7(b)?図7(d)は、この実施形態のディスプレイに適した、使用可能な光源を示す。図7(b)は、再放射材料7が赤色、緑色、および青色の蛍光体を含み、上記一次光源がスペクトルの紫外領域の光を放射するような光源を示す。これは、図4(a)の光源に相当する。図7(c)の光源は、上記一次光源が青色光を放射し、上記再放射材料が赤色および緑色の蛍光体を含む図5(a)中に示す光源に相当する。図7(d)の光源において、上記再放射材料は、ナノ蛍光体材料と従来の蛍光体材料との混合物を含み、上記一次光源は、スペクトルの青色領域またはUV領域の放射を行う。図7(d)の光源は、例えば、青色LEDと、緑色のナノ蛍光体および従来の赤色の蛍光体を含む再放射材料とを含んでいる、図6(a)中に示す光源であってもよい。あるいは、上記光源は、例えば、一次光源6がスペクトルのUV領域の放射を行い、上記再放射材料が緑色のナノ蛍光体材料と従来の赤色蛍光体および青色蛍光体とを含んでいる、図6(d)中に示す光源であってもよい。」

カ 「【0100】
上述した実施形態において、再放射材料7,7a,7b,7cは、一次光源6上に、あるいは一次光源6,6a,6b,6cと導光体8の入射面8bとの間に、配置されていた。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、一次光源6と画像表示パネル2との間に再放射材料7が配置されることのみが必要である。図10は、本発明のさらなる実施形態を示す。この実施形態では、再放射材料7は、上記導光体の出射面8a上に設けられ、さらに上記導光体における出射面8aと反対側の面8c上にも設けられている。この実施形態において、青色光源でもUV光源でもよい一次光源6からの光が、上記導光体内に結合され、上記導光体内を伝播し、最終的には上記導光体における光放出面8aまたは反対面8cの何れかの上に入射し、その地点で光が再放射材料7に吸収される。再放射材料7によって再放射された光は、上記導光体の出射面8aから放射され、次に、画像表示パネル2を通り抜ける。」

キ 上記摘記事項ア?カから、引用文献2には、以下の「技術」が開示されている。
(ア)光源と、該光源からの光路中に配置された画像表示パネル2とを含んでいるディスプレイ11であって、画像表示パネル2は、液晶層などのような画像表示層10を含み、カラー表示を提供するように意図されており、それゆえ、カラーフィルタ9が設けられており、光源は、一次光源6と、一次光源6からの光路中に設けられた再放射材料7とを含んでおり、一次光源からの光は、再放射材料に吸収され、異なる波長範囲で再放射される、ディスプレイ11(段落【0057】、【0058】、【0060】)。

(イ)ディスプレイ11は、一次光源から光を受光するための導光体8を含んでいること(段落【0063】)。

(ウ)再放射材料は、少なくとも1つの第1のナノ蛍光体材料を含み(段落【0019】、【0067】)、ナノ蛍光体は、例えば、コロイド状量子ドットを含みうること(段落【0020】)。
再放射源としてナノ蛍光体材料を使用することは、2つの利点をもたらし、第1に、ナノ蛍光体材料の発光スペクトルは、狭帯域であり、第2に、ナノ蛍光体材料の発光スペクトルのピーク波長(発光波長)は、例えば量子ドットのコロイド溶液であるナノ蛍光体材料中の量子ドットのサイズを制御することによって、任意の所望の値に選択する(「調整する(tune)」)ことができ、ナノ蛍光体材料の発光スペクトルが対応するカラーフィルタの透過窓に位置合わせされるように、ナノ蛍光体材料の発光スペクトルが「調整されている(tuned)」こと(段落【0025】、【0069】?【0073】)。

(エ)再放射材料7は、スペクトルの赤色領域および緑色領域で再放射する材料を含んでいてもよく、一次光源6は、スペクトルの青色領域の光を放射してもよいこと(段落【0066】)。
図5(a)に示される「さらなる実施形態に係るディスプレイ」では、一次光源6は、スペクトルの青色領域の光を放射するLEDであり、再放射材料(再放射媒体)7は、赤色のナノ蛍光体材料および緑色のナノ蛍光体材料を含んでいること(段落【0075】、【0086】)。

(オ)ナノ蛍光体材料(ナノ蛍光体材料が1つの場合)または各ナノ蛍光体(ナノ蛍光体材料が複数の場合)が、導光体の光放出面に配置されていてもよいこと(段落【0049】、【0100】、図10)。

5 対比
(1)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「液晶表示パネル(LCD102)」、「導光板7」、「拡散板4」、「直下型バックライトモジュール」及び「表示装置」は、それぞれ本願発明の「液晶パネル」、「導光板」、「拡散板」、「バックライト」及び「液晶ディスプレイ」に相当する。

イ 引用発明では、表示装置は、「光源1」を備え、「光源1として、青色光を発光する発光ダイオードを使用することができ」るものであるから、引用発明の「光源1」は、本願発明の「LED光源」に相当する。

ウ(ア)次に、本願発明では、「LED光源、当該LED光源から光が照射される導光板の上記液晶パネル側の面に積層されている拡散板を有しており、当該LED光源から照射された光を上記液晶パネルの裏面側から上記液晶パネルへ照射するバックライト」を備える点について対比する。

(イ)引用発明は、「光源1、導光板7、及び拡散板4を備える直下型バックライトモジュール101」を備え、「直下型バックライトモジュール101は、LCD102の直下に配置され、光源1が発する光は、面状の光に変更され、拡散板4で拡散された後、LCD102を均一性高く照ら」すものであり、更に、上記「4(1)引用文献1の記載」の摘記事項イの段落【0009】の「この光は、導光板内で様々な角度で屈折し、結局、導光板から面状で均一性が高い光の束となって、LCDへ向け出射されることになる。」との記載を勘案するととともに、引用文献1の図1、2も参照すると、引用発明において、「光源1が発する光」が照らす「LCD102」の面は、本願発明の「液晶パネルの裏面」に相当する。
したがって、引用発明において、バックライトモジュール101は、光源1が発する光をLCD102の裏面側からLCD102へ照らすものであるといえる。

また、引用発明において、「バックライトモジュール101の拡散板4は、導光板7のLCD102側の面に積層されて」いるものである。

(ウ)よって、本願発明と引用発明とは、「LED光源、当該LED光源から光が照射される導光板の上記液晶パネル側の面に積層されている拡散板を有しており、当該LED光源から照射された光を上記液晶パネルの裏面側から上記液晶パネルへ照射するバックライト」を備える点で一致する。

エ(ア)次に、本願発明では、「上記拡散板の上記液晶パネル側の面に積層されており量子ドットからなる蛍光体を内部に含んだ蛍光体層」を備え、「上記蛍光体層は、蛍光色が相互に異なる複数の上記蛍光体を混合した状態で内部に含んだものである」点について対比する。

(イ)引用発明では、「光源1として、青色光を発光する発光ダイオードを使用することができ、青色光の光路の途中に青色光を白色光へ変更する着色層を設け、着色層の形態は、第2蛍光体層13(緑色)及び第3蛍光体層14(赤色)を追加すると良く、第2蛍光体層13(緑色)及び第3蛍光体層14(赤色)とは、互いに混ぜて1つの層としてもよ」いものである。
したがって、引用発明の「着色層」は、本願発明の「蛍光体を内部に含んだ蛍光体層」に相当し、本願発明と同様に、「蛍光色が相互に異なる複数の上記蛍光体を混合した状態で内部に含んだもの」であるといえる。

(ウ)次に、蛍光体層について、本願発明では、「上記拡散板の上記液晶パネル側の面に積層されて」いる点について対比する。
引用発明では、「着色層の形態は、第2蛍光体層13(緑色)及び第3蛍光体層14(赤色)を追加すると良く」、「第2蛍光体層13及び第3蛍光体層14は、拡散板4の上面のみに設けてもよい」ものであり、拡散板4の「上面」は「LCD102側の面」である。
また、層14が拡散板4の上面に積層されている、引用文献1の図12(b)も参照すると、引用発明において、「着色層」は、本願発明と同様に、「拡散板の液晶パネル側の面に積層されて」いるものであるといえる。

したがって、引用発明において、「蛍光体層」は、本願発明と同様に、「上記拡散板の上記液晶パネル側の面」に積層されているものであるといえる。

(エ)よって、本願発明と引用発明とは、「上記拡散板の上記液晶パネル側の面に積層されており、蛍光体を内部に含んだ蛍光体層」を備え、「上記蛍光体層は、蛍光色が相互に異なる複数の上記蛍光体を混合した状態で内部に含んだものである」点で一致する。

オ 以上から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>
「液晶パネルと、
LED光源、当該LED光源から光が照射される導光板の上記液晶パネル側の面に積層されている拡散板を有しており、当該LED光源から照射された光を上記液晶パネルの裏面側から上記液晶パネルへ照射するバックライトと、
上記拡散板の上記液晶パネル側の面に積層されており、蛍光体を内部に含んだ蛍光体層と、を備え、
上記蛍光体層は、蛍光色が相互に異なる複数の上記蛍光体を混合した状態で内部に含んだものである液晶ディスプレイ。」

<相違点1>
液晶パネルについて、本願発明では、「カラーフィルタを備えた」ものであるのに対し、引用発明では、液晶表示パネル(LCD)102について、そのような特定はなされていない点。
<相違点2>
拡散板について、本願発明では、「上記液晶パネル側の面に拡散ドットが形成された」ものであるのに対し、引用発明では、拡散板4について、そのような特定はなされていない点。
<相違点3>
蛍光体層について、本願発明では、「量子ドットからなる蛍光体を内部に含んだ」ものであるのに対し、引用発明では、そのような特定はなされていない点。

6 本願発明と引用発明との相違点についての当審の判断
以下、相違点1?3について検討する。

(1)相違点1及び相違点3について
相違点1及び相違点3について、まとめて検討する。
ア 先ず、相違点1について検討する。
引用文献1の段落【0023】(上記「4(1)引用文献1の記載」の摘記事項オを参照。)には、「点光源である光源1の光は、面状の光に変更され、拡散板4で拡散された後、LCD102を均一性高く照らすことになる。したがって、LCD102の表示画面の輝度ムラが少なくなると共に、バックライトモジュール101の厚さを従来技術よりも小さくすることができ、薄型テレビジョン装置やパーソナルコンピュータのディスプレイ等の用途に適した、直下型バックライトモジュールが得られる。」と記載されているところ、一般に、「薄型テレビジョン装置やパーソナルコンピュータ」の液晶ディスプレイにおいて、カラーフィルタを液晶パネルなどに設けて、カラー表示を行うことは常套手段(必要であれば、上記「4(3)引用文献2の記載」の摘記事項アの段落【0001】、摘記事項エの段落【0058】を参照。)であるから、引用文献1には、液晶表示パネル(LCD)102について「カラーフィルタを備えた」ものが実質的に記載されているといえる。
したがって、相違点1は、実質的な相違点ではない。

イ 次に、相違点3について検討する。
上記「4(3)引用文献2の記載」の摘記事項エの段落【0070】?【0073】の記載を参照すると、引用文献2には、カラーフィルタの透過スペクトルを、再放射材料の発光スペクトルに位置合わせすると、カラーフィルタによって透過される再放射材料の発光スペクトルのピーク波長の光は、カラーフィルタでほとんど吸収されず、ディスプレイを高い相対効率を有するものとすることができる旨が記載されている。
そして、効率が高いことが望ましいことは、ディスプレイに限らず、一般にいえるから、引用文献2に接した当業者であれば、引用発明において、「着色層」の発光スペクトルが対応するカラーフィルタの透過窓に位置合わせされるように、「着色層」の発光スペクトルが「調整されている(tuned)ものとすることが望ましいことは明らかである。

一方、引用発明において、「第2蛍光体層13(緑色)及び第3蛍光体層14(赤色)」とを「互いに混ぜて1つの層」とした「着色層」を、引用文献2に記載の上記の「技術」(同キ(ウ)、(エ)を参照。)における再放射材料と同様に、ナノ蛍光体材料であり、量子ドットを含むものとし、量子ドットのサイズを制御するならば、当該「着色層」の発光波長を、任意の所望の値に調整することができ、更に、その発光スペクトルが対応するカラーフィルタの透過窓に位置合わせされるように、その発光スペクトルが調整されているものとすることができることは、明らかである。

よって、上記アで検討したとおり、引用文献1には、液晶表示パネル(LCD)102について「カラーフィルタを備えた」ものが実質的に記載されているといえるところ、引用発明において、「着色層」の発光スペクトルを、対応するカラーフィルタの透過窓に位置合わせされるようにすべく、引用文献2の記載に基づき、「着色層」を、量子ドットを含む緑色のナノ蛍光体材料および量子ドットを含む赤色のナノ蛍光体材料を含んでいるものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

以上のとおりであるから、引用発明において、引用文献2の記載に基づき、相違点3に係る本願発明の構成を採用することは、当業者であれば容易になし得たことである。

(3)相違点2について
液晶パネルと、光源、光源から光が照射される導光板、及び導光板の液晶パネル側の面に積層された拡散板ないし拡散シートを備えるバックライトとを備える表示装置において、拡散板ないし拡散シートの液晶パネル側の面に拡散ドットが形成されたものは、周知技術であり、例えば、上記周知例1?3に記載されている。
したがって、引用発明において、上記周知技術に基づき、拡散板4として、液晶表示パネル(LCD)102側の面に拡散ドットが形成されたものを採用することは、当業者であれば適宜なし得たことである。

よって、引用発明において、上記周知技術に基づき、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者であれば適宜なし得たことである。

(4)相違点1?3についての判断のまとめ
以上のとおりであるから、引用発明において、引用文献2の記載及び上記周知技術に基づいて、相違点1?3に係る本願発明の構成を採用することは、当業者であれば容易になし得たことである。
そして、本願発明によって当業者が予期し得ない格別の効果が奏されるとは認められず、相違点1?3を総合判断しても、本願発明は当業者が容易に発明をすることができたものというほかない。
よって、本願発明は、引用発明並びに引用文献2の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求人の主張について
ア 請求人は、平成28年9月23日付けの意見書の「2. 拒絶理由について」において、以下のように主張している。
「(2)…第2蛍光体層13及び第3蛍光体層14の配置位置として、多数の配置可能位置の一つから拡散板4の上面のみを特定することは、単なる設計事項ではありません。
(3)…
(4)…、引用発明は、3つの層(第1蛍光体層12、第2蛍光体層13、及び第3蛍光体層14)を備えています。そして、…。このように、3つの層12?14の各々が、様々な位置に配置可能であるところ、3つの層12?14を全て同じ位置に配置し、なお且つその同じ位置というのが拡散板4の上面となるというのは、極めて多数の配置位置候補から、唯一つの配置位置を選ぶということに他ならず、当然考慮せざるを得ない事項とはなり得ません。
(5) …、本願発明では、蛍光体層が内部に量子ドットからなる蛍光体を含んでおり、LED光源から照射された光は、量子ドットに進入する前に、拡散板によって拡散されることによって格別の技術的意義が発揮されます。
詳述しますと、量子ドットからなる蛍光体は、…。従って、…、入射前後の光の波長変換効率が小さくなってしまいます。この波長変換効率を上げる為に、拡散板によって拡散させることで散乱させた光を蛍光体層に入射させる構成が大変有効となります。
したがって、本願発明においては、蛍光体層が拡散板の液晶パネル側の面に積層されているという構成には格別の技術的意義があります。
以上より、前述した相違点は、単なる設計事項ではありません。」

イ(ア)そこで、先ず、上記(4)の「引用発明は、3つの層を備えてます。そして、…。このように、3つの層12?14の各々が、様々な位置に配置可能である」との主張について検討する。
引用文献1において、3つの層12?14は、それぞれ、第1蛍光体層12(黄色)、第2蛍光体層13(緑色)、第3蛍光体層14(赤色)であり、段落【0025】及び図9(a)、(b)、図10(b)、(c)並びに段落【0028】及び図12(a)、(b)に記載されているように、(更に技術常識を勘案したとしても、)「3つの層12?14」のうち、「第2蛍光体層13(緑色)と第3蛍光体層(赤色)」はセットとして選択されるべきものであるから、「引用発明は、3つの層を備えています。そして、…。…配置可能である」との上記主張は誤りである。

(イ)次に、上記(4)の「3つの層12?14を全て同じ位置に配置し、なお且つその同じ位置というのが拡散板4の上面となるというのは、極めて多数の配置位置候補から、唯一つの配置位置を選ぶということに他ならず」との主張について検討する。
引用文献1には、層12?14の配置として、(1)導光板7の入光面5に追加する(図10(b)、(c))、(2)導光板7の上面に設ける(図11(a))、(3)拡散板4の下面に設ける(図11b))、(4)反射部材6の下面に設ける(図12(a))、(5)反射部材6の下面とともに拡散板4の上面に設ける(図11(b))構成が開示されている(上記「4(1)引用文献1の記載」の摘記事項オの段落【0025】、【0028】を参照。)とともに、段落【0028】に、「層12?14」は、「拡散板4の上面のみに設けてもよい」と記載されているように、(6)「拡散板の上面のみ」に設ける構成(図示なし)が開示されている。
したがって、配置位置候補が、上記のように「極めて多数の配置位置候補」であるとの主張は根拠を見出すことができない。

(ウ)よって、請求人の上記主張を採用することはできない。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに引用文献2の記載及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-02 
結審通知日 2016-12-06 
審決日 2016-12-19 
出願番号 特願2010-157647(P2010-157647)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 督史瀬川 勝久  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 近藤 幸浩
恩田 春香
発明の名称 液晶ディスプレイ  
代理人 松田 朋浩  
代理人 西木 信夫  

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